小さな頃からいろんなことを教わってきた。
情報処理、ポケモンの使い方、盗み……
全てはこの腐った世の中を再びリセットするため……復讐を果たすため。
それなのに……なんでこんなことになっちゃったの?
今までしてきたことって何だったの……?
わからない……わからない……何もわからない……!!
そして……もう何も信じられない……
たった一つの行路 №051
バン!と大きな音が部屋に響き渡る。
その音は扉を開けたことによって生じた音のようだ。
そのフロアにはフィールドがあった。
でもサトシが以前に来たときのフィールドとは少し様子が違う。
広々として上側には窓がついていて日の光が差しこんでいた。
「(誰もいない……?)」
青いバンダナの少年……エースはジムの最深部まで進んでいた。
しかし、フィールドの先には誰もいない。
「よくここまで来たな」
「…………」
声を聞きエースは上を向く。
テラスの様に出っ張った部分にボスの姿が見られた。
彼はテラスから飛び降りてフィールドに着地した。
「君か。私の左腕とまで言われたアンナを倒してここまで来たのは……」
「あんたがロケット団のボスか?」
「いかにも。私がロケット団のボス、サカキだ。さて、そんなことよりこんなところへ何の用かな?単にジム戦にきたというわけではあるまい」
「あんたたちの作戦を止めに来た。そして、ロケット団を潰す為だ」
「ロケット団を潰すか……。面白い。たった二人でか?あまりに小さい力だ」
「…………」
「無駄なことだ。我々を潰すことは不可能だ。お前は私には勝てん。お前のポケモンの体力が全快だったとしてもだ」
「やってみないとわからないぞ?」
「解るとも。それより、お前のアンナを倒した力は興味深い。我々の仲間にならないか?」
「俺がなんと答えるか、わかっていっているはずだろ?」
「そうか……残念だ」
そう言って、サカキはモンスターボールからポケモンを繰り出した。
―――別の部屋。
「これならどうよ!『怪しい光』!!」
「ぐっ!」
ライトのヤミラミの『猫騙し』からの『怪しい光』が決まった。マルクは怯んで目を覆った。
ウソッキーはまともに光を浴びて混乱している。
「ちっ!ニューラ!」
「……! ……プクリン!」
ウソッキーの体勢が崩れて一気に攻撃をしかけられないようにするために、マルクはニューラを繰り出す。
それを見たライトはプクリンを繰り出して防御にでる。
しかし、プクリンのリフレクターにニューラの爪がめり込んだ。
「ヤミラミ!『シャドーボール』!!」
「ニューラ!『エアーカッター』!!」
シャドーボールを混乱したウソッキーを撃つ。
顔に命中して爆発した。ウソッキーは爆発で後方へと地面を転がりながら壁に激突した。
一方でニューラがプクリンの防御壁を砕いて攻撃に出る。そして、エアーカッターがプクリンをとらえた。
でも簡単にやられるプクリンではなかった。攻撃を受けながらも足を踏ん張って踏みとどまった。
「掻き乱せ!『地震』!」
ニューラは地面を突いた。すると、ニューラを中心に地面を揺らす。
ライトとポケモンたちは意外な技に戸惑ってまともにダメージを受けた。
そして、ニューラがその隙を狙ってヤミラミを一気に切り裂いた。
「なっ!」
「こいつは『見破る』も使えるんだぜ!プクリンも倒せ!」
「させない!『リフレクター』!」
「無駄だって言ってるだろ!」
再びニューラの爪がプクリンのリフレクターを破る。
だが、上から強烈なかかと落としがニューラに決まった。
「!!」
「そう来ると思った!タイミングよくバシャーモを出して正解だったわ!!」
バシャーモのブレイズキックの踵落としでニューラを撃退した。
バシャーモの攻撃には驚いていたようだが、マルクは無気味な笑いを浮かべる。
「さて、このバトルもそろそろ俺の手で幕を下ろそうか」
そうして、最後に出したのは大顎ポケモン、オーダイルだ。
「(あいつの最強のポケモン……きっと強力な技を覚えさせているに違いない!!)バシャーモ!プクリン!」
ライトは細心の注意を払っていた。バシャーモは炎を燃やし、プクリンは目を瞑っていた。
「やれ!『ハイドロポンプ』!!」
「プクリン!『光の壁』!!」
だが、プクリンの光の壁はハイドロポンプが当たってから出したせいでほとんど効果が出せなかった。
そして、オーダイルはハイドロポンプを放出しながら、地面に手をついた。
すると、地面から数十本の根っこが飛び出して、プクリンに襲いかかった。
プクリンはその根っこに巻き付かれて叩かれて、ダウンした。
「これは、『ハードプラント』!?」
ライトとバシャーモはそれぞれ左右にかわしながら攻撃を見た。
しかし、次の攻撃がバシャーモに迫っていた。
オーダイルは2つの攻撃をやめて、地面を突く。
すると、地面が割れた。でも、バシャーモは地面が割れる前にジャンプして回避した。
しかしながら、オーダイルの攻撃はまだ続く。力を溜めて、一気にバシャーモへと突撃する。
なんとかバシャーモはうまく体を逸らして回避した。
だが、安心したのも束の間、今度は壁を蹴って切り替えし、強烈なパンチを命中させた。
バシャーモは思いっきり地面に撃ちつけられた。
「バシャーモ!!??……『ハードプラント』に『地割れ』……『ロケットずつき』に『気合パンチ』……なんて奴なの!?」
「これで終わり……ではなさそうだな」
ライトの目を見て、戦意を読み取るマルク。
さらにバシャーモの体が光だして、傷が回復して行った。
「何をした?『自己再生』か?」
「そんな技なんておぼえないわよ!プクリンの『願い事』よ!あんたのオーダイルの攻撃が来る前にしておいたのよ!」
「そうか……。無駄なことだったな。何度でも攻撃すればいいだけだ!オーダイル!『気合パンチ』!」
「それなら!こっちだって『気合パンチ』よ」
次の瞬間、両者のパンチが激突した。凄まじい衝撃が起きて、バシャーモは吹っ飛んだ。
だが、オーダイルは踏ん張って衝撃に耐えた。
「その程度の攻撃じゃ、俺のオーダイルはびくともしない!!『ハイドロポンプ』!!」
「バシャーモ!こらえて!」
オーダイルの強烈な水攻撃が襲った。しかし、なんとか耐えるが、バシャーモの体力は次が限界の様だ。
「だから、無駄だって言っているだろ!こいつを倒すのは不可能だ!最強の技が『気合パンチ』だとしたら、たかが知れている!」
「確かにそうね。でもこれならどう!?バシャーモ!『起死回生』!!」
バシャーモが拳に全ての力を集中させて捨て身で突っ込む。そのパンチがオーダイルの腕にヒットした。
いや、正確には肘で受け止めたと言った方が正しい。攻撃とともに凄まじい衝撃があたりに生じるが、オーダイルはびくともしなかった。
「ウソ!?止められた!!??」
「やれ!!」
オーダイルはバシャーモの腕をつかんでそのままハンマーの要領で叩きつけた。
「終わったな。最強の攻撃がこれだったとはな。一瞬ひやりとしたが……お前の負けだ」
「…………」
ライトはバシャーモを見る。すると、まだバシャーモは立ちあがろうとしていた。
「まだ……まだ、終わりじゃないわよ!バシャーモが立ちあがる限り、負けないわよ!!」
「まだやるというのか……。仕方がない、これで引導を渡してもらう!『ハードプラント』!!」
「(……最近出来た技でまだ荒削りだけど、この技を出すなら今しかない!)言っておくけど、どうなっても知らないわよ!……バシャーモ!!!!」
ライトの呼びかけにバシャーモは答える。
そして、体から灼熱の炎を放出して自分の体に纏った。
そのバシャーモにハードプラントが襲いかかる。
だが、攻撃の媒介とする根っこがバシャーモに達する前に燃え尽きてしまった。
バシャーモは一気にオーダイルに突っ込んだ。
そして、オーダイルにパンチをする。
その瞬間、バシャーモの体の炎が一気に放出した。
オーダイルは吹き飛んで壁に撃ちつけられた。
「な!?なんだと!?ぐわっ!!」
バシャーモの炎が放出したときの影響がマルクにも及んでいた。
熱気と爆発でこらえきれず、壁に撃ちつけられた。
ライトはその威力を予想していたようで、しゃがんで飛ばないようにしていた。
攻撃が終わったバシャーモはフラフラで今にも倒れそうだった。
しかし、踏みとどまった。
「どう!?オーバーヒートと起死回生を合わせた最強の切り札、『オーバードライブ』よ!」
ライトは得意げに言った。でも、体をふらつかせた。
そして、腹と頭を抱えてうずくまった。
「(うう……まだケガの具合が良くないみたい……)」
マサラタウンに戻ったときにセレビィに回復させてもらったとはいえ、フォッグス島のエドとの戦いでジュカインやマルマインによって受けたダメージは思ったよりも大きかった。
「(でも……この先でエースが戦っている……急がないと!!)」
ライトは自分のバックから、元気のかけら×6をそれぞれのポケモンに与えて、奥に進んでいったのだった。
13
……カタカタカタカタ……
部屋の一室でキーボードを叩く音が響き渡る。
時たま、カチッ、カチッとボタン音も響き渡る。
この部屋は大半がコンピュータを占めた広い部屋だった。
それなのにその部屋にいるのは一人の女だけだった。
その女の姿を説明すると、緑の長いシャツ……いや、ワンピース言ったほうが良いだろうか?それほどの微妙の長さの着衣に踝までのブラウンのハーフパンツ。
そして、ワンピースの上から黒のベルトでウエストを締めていた。髪は黒い色で肩まで達していた。首にはペンダントをかけていて、左腕にはブレスレットをしていた。
「まさか、こんなに私の知らない情報があったなんてね。やっぱり本部のコンピュータは凄いわ」
そして、そのコンピュータから自分作った機械、I☆NAにデータをダウンロードしていた。
「(初めて本部に来たけど、まさか本部じゃないと引き出せないデータがあったとはね。それにしてもこの作戦はボスが作った作戦じゃないと言うのは驚いたわ。
まさか、ロケット団の他にこんな組織があったなんてね……)さて……ほかに面白い情報はないか―――」
彼女はある文章を見て声を失った。
「え……?何これ……?」
彼女が見ているデータにはあらゆるロケット団が実行した作戦が書かれていた。
今現在行なっている作戦やフォッグス島のキメラ計画、タマムシの繭孵化作戦はもちろん、バロンのジョウチュ丸襲撃計画などロケット団が無名の組織立った頃の計画まできっちりとかかれてあった。
その中で彼女はこんなデータを見つけた。
“作戦№107”
彼女はその作戦をじっくりと読んでみた。
「う……嘘でしょ……?」
彼女は驚きのあまり尻餅をついた。そして、改めて内容を読んだ。
「『アソウ博士以下親族を抹殺せよ……アソウ博士は研究を抜けてロケット団を脱退するという行為に対して制裁を加えることにした。班長ジャキラを中心に警官に変装し、研究所を放火せよ……』」
彼女は息を飲んで続きを読む。
「『結果報告……アソウ博士、その家族と助手を抹殺。また、アソウ家の者は優秀だと聞いたので幼い少女をロケット団の配下に置く事に……』」
読み終わって、彼女は拳を握り締めた。
「(この少女って……私の……こと……?と言う事は……パパやママ、お兄ちゃんを殺したのは……!!)」
ふと彼女はI☆NAを抜き取った。
そして、レアコイルを繰り出して、部屋を破壊するように命令した。
ものの数秒でコンピュータは大破した。
当然の如く警報が鳴り響く。そして、この部屋に下っ端がわらわらと集まってくる。
下っ端が彼女に話しかける。
“ユウナさん!どうしたんですか!?”
“……!!侵入者ですね!?一体誰がこんなことを!!”
彼女、ユウナはギラッと下っ端たちを睨みつけた。下っ端たちは萎縮した。
「あなたたち……質問に答えなさい!ここに書かれているデータと言うのは本物なんでしょうね?」
“え?ええ、そうですけど……”
そう下っ端が答えると、ユウナは鬼の形相でレアコイルに指示をした。
そう、まさに一瞬。部屋に集まった下っ端……いや、この基地にいた下っ端は全員集まっていた様なので、下っ端は全滅した。
「……よくもまぁ、こんな事をしてくれた物だ」
「!!」
ユウナはふと入口の方に目をやった。
「あなたは、あのとき私を助けてくれた人ね!?」
「そうだ。私の名前はジャキラだ」
「やっぱりそうだったのね」
ユウナはもう全てを悟ってボールを構えた。
「私はただ、いいように利用されていただけだったというわけね!!許さないわよ!!特にあのときのリーダーだったあなたは許さない!!」
「そうか……ばれてしまったのか……。もうちょっとばれないかと思ったのだが……。君にばれない様にするには苦労したさ。
実際私は、途中でシャドーの要請でオーレ地方に行く事になってしまったせいでそんな苦労は知らないけどな。
まぁいい。今気付いたにしても、気付かないにしても、お前はもう用済みなんだ!消えてもらう!!」
そう言って、サーナイトとサマヨールを繰り出す。
「ふざけないで!!消えるのはあなたの方よ!!ブラりん!『ファントムハリケーン』!!」
刹那。一瞬で蹴りはついた。
サーナイトもサマヨールもトレーナーのジャキラもノックアウトさせた。
「ぐっ……馬鹿な……」
ジャキラは気を失った。ユウナは容赦なくレアコイルに指示を飛ばそうとする。
「あなたがいたからいけないのよ!……消してやるわ!!」
「おっと!まちな!」
「!?」
ユウナの前に現れたのは、ただのロケット団ではなかった。黒いバンダナを頭に巻いた大男で銀髪で鋭い目をしていた。
「お前は確か……そう、ルーキーズのガキか。たしかヒカリだったな!?」
「違うわよ!私の名前はユウナよ!」
「ヒカリではない?おかしいな。まあいい。だがユウナか。どっかで聞いたな。その名前……」
「どうでもいいけど、あなたも倒すわ!もうロケット団なんて許せない!」
「はっ!裏切りか!ガキは都合が悪くなるとすぐに逃げようとする。逃げるくらいなら壊しちまえばいいのによ!!あ、壊そうとしているのか」
「茶化さないで!コイりん!!『10万ボルト』!!ブラりん!!『ファントムハリケーン』!!」
「そう暑くなるなって!たかが一言二言で」
「えっ!?」
相手は喋りながら、ユウナの攻撃を楽にいなした。
コイりん(レアコイル)の攻撃をサイドンが受け止め、ブラりん(ブラッキー)の攻撃をリングマが抑えつけて返り討ちにしてしまった。
「そうか、思い出した。あの作戦の時のガキだったな、おめーは。警官に変装して屋敷まるごと燃やしたんだっけな!あれは楽しかったぜ!」
「楽しかったですって!?」
「そうそう、言い事教えてやろう。お前の家族に直接手をかけたのは、そう、この俺様だ」
「……っ!!あ、あなたが!?」
ユウナは唇を噛み締めた。
「あなたが……お前が……私のパパを……ママを……兄さんを……!!うぁああ!!!!」
ユウナはボールをもって男に突っ込んでいった。
「お前をパパたちと同じ目にあわせてやる!!!!」
「ふん!やれ!」
「!!」
リングマの破壊光線がユウナの足元に当たって爆発した。
ユウナは頭を打って気絶した。
ちょうどそのとき、ユウナのポールの1つがショックで開いてウインディが飛び出した。
ウインディはユウナに寄り添うと、男を見た。
しかし、男の目にウインディは凶悪なオーラを感じて後ずさりをした。
主人が気絶している今、戦うのは不利と思ったウインディは、ユウナを背中に乗せて逃げて行った。
「逃げたか。ふん!始末はつけないとな!」
「(……小さな頃からいろんなことを教わってきた。全てはこの腐った世の中を再びリセットするため……復讐を果たす為。それなのになんでこんなことになっちゃったの?
今までしてきたことってなんだったの……?もう……何もわからないよ……)」
遠のく意識の中、ユウナは知らずのうちに涙をこぼしていた。
14
「この木……見覚えがあるような……ないような……」
パートナーのフーディンと一緒にいるこの男はヒロトである。
霧の中、彼はまだ迷っていた。そして、彼はある木を見ていた。
「やっぱりあるな……。ははーん、似た場所か」
パートナーのディンはやれやれと首を振っている。
そう、パートナーのフーディンには解っていた。
一番最初にテレポートした場所に戻ってきた事に。
そんなトレーナーにフーディンは呆れていた。
「ディン……この森から抜けるなんかいい手はないか?」
ヒロトはディンに聞いてみた。ディンはやれやれと念力をして、ヒロトが腰に身につけているボールを浮かせてヒロトの手に乗せた。
そのボールはフライトが入っているボールだった。
「そうか!空から探せばいいのか!さすがエスパーポケモンだ!」
ヒロトは大人数と旅しているときはしっかりしているのに、なんで一人のときはこんなにダメダメなのかは謎である。
「さぁて、フライト!」
と、ヒロトはボールを投げようとした。
すると、先ほどまで無反応だったポケナビに着信が入った。ヒロトはフライゴンのボールを投げず、そのままポケナビをとって応答した。
すぐに応答した為、誰がかけてきたかを確認しなかった。
“あ!俺!俺!”
「誰?詐欺師?言っておくけど、俺は騙されないぞ?」
“ん?いや、違うって!オレオレ詐欺じゃないって!ショウだ!”
「ああ。なんだショウか」
ショウとはタマムシシティで再開した姉想いの同い年の男だ。
てっきり、他の場所でバトルしているカスミやマサトだと思ったために、ショウへの応対はトーンが低かった。
そんな事も気にせず、ショウは話を続ける。
“姉ちゃんの記憶がやっと戻ったんだ!!”
「え!?治ったのか!?良かったな!(あ、そういえば……)ところでタマムシシティにロケット団はいるのか!?」
“え?タマムシシティ?ああ、さっきロケット団が病院とポケモンセンターに侵入したんだけどなんとか返り討ちにした!”
「そうなのか!?それじゃ、タマムシは大丈夫なんだな!?」
“うん。まだ、敵は残っているみたいだけど、ボスを倒したから、残りはタマムシのトレーナーやジムの人たちが何とかしてくれるだろう。それだけだ”
「それじゃ、良かった。これでヤマブキシティにあるロケット団の本拠地を潰す事が出来るぞ!」
“なに!?ロケット団を潰す?本拠地はヤマブキシティ?知らないぞそんな話!?”
「極秘で仕入れた情報なんだから知らないのは当たり前だろ。でも、タマムシシティが襲われたって聞いてそっちに向かおうと思ったんだけど、テレポートに失敗したいみたいで、霧に迷い込んじゃったんだよ」
“……なんで迷っているんだよ?”
「……俺が知りたい……ショウも戦うか?」
“俺は無理だな。ポケモンたちの体力が尽きているから。影ながらに応援している!がんばれよ!」
そうして、ポケナビが切れた。
「うん……これでタマムシシティには向かわずに済みそうだ。と言う事はこのまま本拠地に向かわないと……」
とヒロトは再び、フライゴンを出そうと振りかぶったのだが、踏みとどまった。
何かの走る音がヒロトには聞こえたのだ。
「(……何かが近づいてくる……)ディン!『電撃波』!!」
すると、フーディンはスプーンを集中させて、光線のような電撃を繰り出した。
とはいうものの、攻撃は当てない。あくまで威嚇で放った攻撃だった。
その気配は避け様ともせず、こちらに接近した。
そして、炎攻撃を放って来た。
「ディン!!」
壁を張って防御をした。そして、その気配が姿をあらわした。
「ウインディか……」
その足跡の正体はウインディだった。
ヒロトは首をかしげた。どこかで見た事があると。
そして、ウインディの背中には一人の少女が乗っていた。
「う~ん……」
呻き声を上げて、頭を抱えながら、その女はぼんやりとしているであろう目でヒロトを見た。
「はっ!!」
ふと、目をカッと開けて、ウインディから飛び降りて一言言った。
「許さない……!!あなたも同じ目にあわせてやる!!ポリりん!」
「へ!?」
彼女は突如、人工で作られたポケモン、ポリゴン2を繰り出した。
そして、強烈な『トライアタック』を繰り出す。
あわてて、ヒロトとフーディンはかわした。
「オイ!一体なんだって言うんだ!?……あれ?ポリゴン2にウインディ……それに確か彼女は……」
ヒロトは記憶を辿っていた。
そう、ヒロトは以前に彼女と戦っていた。
「(たしかあれはナナシマで旅をしていたときの事……『5の島』という場所でロケット団の基地を潰そうとしたときに戦ったリーダーだったよな……?)
はっ!そんなことより、対抗しないと!ディン!『サイコキネシス』!」
「ポリりん!『サイコキネシス』!!」
強力な念動波が激突する。そして、その威力は互角だった。
「(何で……彼女は泣いているんだ……?それにとても悲しそうに戦うんだ!?)」
「ポリりん!!しっかりしなさい!!全開でよ!!!!」
彼女は声を張り飛ばして指示を出す。
ポリりんもその声に後押しされて強力な攻撃を放った。
「(なっ!半端な攻撃じゃ太刀打ちできない!)ディン!目覚めしサイコの力発動せよ!必殺『サイコバズーカ』!!」
鬼気迫る彼女の迫力にとてつもない意思を読み取ったヒロトは最強の技を指示した。
目の前に念道力を集めてそれを飛ばす技である。
威力は『サイコブースト』級だがリスクが低い技である。
その攻撃はポリゴン2の攻撃をぶちぬいて、一気に勝負を決めた。
「まだ……まだよ!!!!」
「おい!しっかりしろ!」
ヒロトは彼女に話しかけた。
「確かユウナと言ったはずだよな?一体どうしたんだ!?」
ユウナ。
その名前は当たっていた。
ヒロトは記憶と辿ってようやく名前まで思い出す事が出来た。
「……!あなたは……」
ユウナは我にかえったようだった。
そして、ふと自分の目に手を当てる。水滴が手に付くのが分かった。
それと同時に、ヒロトの言葉がよみがえった。
―――「何でロケット団なんかに……?」―――
―――「負けられない!……君のためにね!」―――
―――「復讐が終えたときに残るのは……虚無感だけさ」―――
ユウナは唇を噛み締める。
ヒロトはそんな彼女に近づこうとした。
「―――ってのよ」
「え?」
ユウナの声が小さかった為にヒロトは聞き取れなかった様で聞き返した。
「あなたに私の何がわかるって言うのよ!!!!ウイりん!!!!」
「うわっ!アチチ!!」
強力な炎にヒロトは後退する。
「……あなたに私の気持ちがわかってたまるものか!!私は復讐を果たすために必死になって今までやってきた。そう、自分の目的のために……。
……それなのにあなたはずっとロケット団と戦っていた。それは何のため?世界の平和のため?自分の正義を貫くため?……どちらにしてもロケット団と対抗することには変わりないわね。
つまり私たちの邪魔をしてきたというわけよね。そんなあなたに敵である私の気持ちなんて分かってたまるか!!」
「…………」
「私はもう誰も信じない!!ウイりん!!『大文字』!!」
強力な大の字の炎を解き放つ。
しかし、ヒロトは冷静だった。
新たにポケモンを繰り出して攻撃を相殺した。
相殺の影響で霧が発生した。
「『神速』!!」
「『体当たり』!!」
スピードを生かして攻撃をしかけるウイりん。だが、同じくらいの体格のラプラスに攻撃を止められた。
「俺がロケット団をつぶしてきたのは、進む道にロケット団がいつもいたからだ。だから、それを押しのけて進んできた。ただそれだけだ。
俺は世界の平和とか、正義がどうだとかそういう考えを持った器用な人間じゃない!」
「…………」
「でも、大切なものだけは何がなんでも守り通すつもりだ。ただそれだけなんだ!だから、何があったんだ?俺でよかったら話してくれないか!?」
そう話すヒロトにユウナは睨み返す。
「話す……?あなたに何を話すって言うの!?」
「だって……泣いていたじゃないか!!何かあったから泣いていたんだろ!?」
ポリゴン2の攻撃でもすでにユウナは泣きながらの攻撃をしていた。
それを感じ取ってヒロトは何かあると確信していたのだ。
「……私に勝てるはずもない相手に話す事は無いわ!!」
「じゃあ、勝つ!証明してやる!」
「やって見なさい!!『大文字』!!」
「レイン!『ハイドロポンプ』!!」
最初の激突の様に相殺されて、またまた霧が発生する。
「きりがないな……」
「それはこっちのセリフよ!……いいわ。私の今現在の最強攻撃よ!これに勝てない様なら……あなたに話すことなんてないわ!」
「のぞむところだ!」
「ウイりん!『スパイラルショット』!!」
ユウナのウインディが使える最強の技、スパイラルショット。
それは炎の渦を螺旋状に放った規模の大きい技である。その規模の大きさは大文字の比にならない。
「それなら、こっちだってとっておきの技で行かしてもらう!レイン!『アイススプレット』だ!!」
一方、ヒロトのラプラ)が使える最強の技、アイススプレット。
それはハイドロポンプを乱射しながら、強力な冷気(ほぼ絶対零度の)を忍ばす技である。
つまり、放たれた水は、強力な冷気のゾーンを通る事により一瞬のうちに氷へと状態変化を起こす。
つまり、自然に出来た氷の槍と言うわけだ。
それらの強力な技が激突した。
第一幕 Wide World Storys
VSロケット団⑦ ―――VS盗空のマルク――― 終わり