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たった一つの行路 №046

/たった一つの行路 №046

 私は財閥のお嬢様だった。
 それをいいことに友達は私をただの金づるとしか思っていない。
 金持ちゆえに家族はキツイ習い事や作法を叩き込もうとする。
 それは私にとってはきつい仕打ちでしかない。
 イヤ!私はそんな縛られる為に生きているわけじゃない!
 そう、こんな世界なんて……こんな世界なんて……すべて壊してしまえ……
 人も家も世界も全て壊してしまえ……
 私の邪魔をする者は全て排除してやる!!
 全ての者を粉々に打ち砕いて……
 私は私の自由を奪い取ってやる……



 たった一つの行路 №046



 5

「ついた……。ジラーチありがとう!」
“マサト……僕……眠くなった……”

 ジラーチはどうやら力を使い果たしたようで、マサトの腕の中にもたれて眠ってしまった。
 そして、リュックの中にジラーチを入れた。
 ロケット団に見つからない為である。

「さすがに距離があったから、一気に力を使い果たしたみたいだな」
「ジラーチを除いて6匹で戦わないといけないのは大変だよ……」
「でも、やるのよ!それに、この状況は……?タケシたちはどうなったの!?」

 マサト、ハルカ、ユウキは予定通り、ニビシティにたどり着いた。
 そして、状況は石の町のごとくさびれて、外には誰もいなかった。

「何で誰もいないの……?」
「少なくてもロケット団くらいはいると思ったんだけど……」
「とりあえず、ニビジムに行ってみよう!タケシたちが心配だよ!」

 3人は急いでニビジムへと向かった。誰もいない道を通って……。



 3人は何事もなく、石でできたニビジムにたどり着いた。
 そして、ドアをあけた。

「「タケシー!!」」

 マサトとハルカは同時に叫んだ。ジム内に大きな声が響き渡る。

「誰だ?」

 フィールドの正面に細い目をした男が2人。
 その姿はまさしくタケシだった。
 そしてもう一人は彼の弟、ジローだ。

「タケシ!無事だったのね!」
「その声はハルカか!?」
「僕もいるよ!」
「マサトも?」
「ロケット団の攻撃から助けに来たのよ!でも、誰もいないみたいだし……一体どうなっているの!?」
「……!……。そうか、助けに来てくれたのか……」
「そうよ!でロケット団は?」
「……ハガネール!」
「え?」

 岩の中からいきなり現れたのは、地面、鋼タイプのハガネールだ。
 そのポケモンがマサトたちを襲った。
 突然のことで虚を突かれたマサトとハルカは対応ができなかった。
 だが、見えない壁がハガネールを止めた。

「キルリア!『サイコキネシス』!!」

 そして、そのままハガネールを弾き飛ばした。

「おい!どういうつもりだ!?いきなり攻撃するなんて!」

 今まで黙っていたユウキが口を出した。

「突然悪かった。だが、大人しく捕まってくれ……」
「!?」

 すると、ハガネールはキルリアのサイコキネシスと光の壁を破って、一気にキルリアに直接攻撃を与えた。

「ハルカとマサトはお前の仲間じゃなかったのか!?」

 ユウキがタケシに向かって言う。

「大人しく兄ちゃんの言う通りにするんだ!!」

 弟のジローもタケシと同じ事を言う。
 すると、突然二階から、騒がしい声援が響き渡った。

“やれ!やれ!やっちまえ!”
“ニビジムの力をこの愚か者達に見せてやりなさい!”
“お前たちは私たちの仲間だ!”
「ど、どういうことなの……?タケシ!?」

 ハルカとマサトは茫然とした。
 2階から声援を送っているのは、50人を超えるロケット団員だった。

「タケシ!?どういうことなの!?答えて!」
「ハルカ!危ない!!」

 ユウキはハルカを突き飛ばして、自分もその場所からはなれた。
 攻撃してきたのはジロー。
 イシツブテの『ロックブラスト』だ。

「ハルカ!目を覚ませ!もうあいつ等は敵だ!タケシたちをまとめて全員こいつ等を倒すぞ!」
「で、でも……!」
「やらないとやられるぞ!」

 ハルカは渋々とモンスターボールを取り出した。

「仕方がない…………抵抗するなら…………こちらも全力で……行くぞ」

 タケシは何か苦しそうにそう言った。
 拳を握り締めて、苦しそうに。
 ジローもどこか同じ感じがした。
 そして、ハガネールとイシツブテが攻撃を仕掛けてくる。
 ユウキはやられたキルリアに代えてトロピウスを、ハルカはゴンベを繰り出した。
 ユウキが連続攻撃を繰り出し、ポケモンたちは攻撃を避ける。
 イシツブテの攻撃をゴンベが受け止める。
 ハガネールがアイアンテールを繰り出すが、ギリギリまでひきつけてトロピウスは回避する。
 その繰り返しだった。

「(どういうことだろう……?僕にはタケシたちが本気でバトルしているようには見えない……。そう言えば、タケシって……兄弟が多かったような……?他の兄弟はどこに言ったんだろう?……あ、もしかして……!)」

 マサトは何かを思いついて、ジムを飛び出した。

“おい!あのガキが逃げたぞ!”
“誰か捕まえろ!”
「え?マサト!?」
「どこに行くんだ!?」

 しかし、その隙を2人は逃さなかった。
 ハガネールが硬い尻尾でトロピウスを押しつぶし、イシツブテは接近戦から『自爆』をした。

「マサトのことは心配だけど、どうやら、こっちを最初に片付けないとな!」
「そうね……」



「あれがタケシたちが望んでいない戦いだとすれば……原因は一つ!どこかにタケシたちの兄弟が捕まっているはずだ!」

 マサトは走って町を見て回った。

「考えられるのは、大きな施設。確かケンジの話だと、警察署、ジム、ポケモンセンター、病院がロケット団の攻撃目標だったね。もしかしたら、そのどれかにいるかもしれない!」
“おっと!そんなことがわかったからって、助け出されるわけにはいなかいな!”
“そうよ!これはロケット団の最大の目的のため。あの2人には、いい手ゴマになってもらうのよ!”

 マサトの後を下っ端2人がつけてきていた。

「そんなことのために、タケシたちは利用させない!」

 マサトはボールを取り出して、一匹のポケモンを出した。
 最近、再会したポケモン、ラルトスだ。

“そんな弱そうなポケモンで何ができる!?”
“せめてこのくらい強くなくちゃね!!”

 そう言って、二人が出したポケモンはカイロスとノクタスだ。

「お前たちと戦っている暇は無いんだ!ラルトス!『バニッシュ』!!」

 すると、下っ端2人の目の前から、マサトの姿が消えてしまった。

「え!?」
「なんだと!?」
「(この技は消える技。ユウキのカクレオンの特性を技にすることができてよかった……。この間に一気に見つけるぞ!)」

 マサトは再び走って、探していった。



「もうすぐ……私の願いが叶う……全ては自由になるために……」

 警察署の廃墟。
 警官やジュンサーはどこかに捕まっているようだ。
 そして、そんな中、容姿端麗で美しい容貌を持つこの女は何かを願っていた。
 年は18~19あたりだろう。
 そして、その女の服装は学校のセーラー服で、背中にRという文字が刻まれていた。

「そう、すべては忌まわしき過去を断ち切るために……」
「見つけた!」
「何事?」

 その女は急いで階段を下りていって、声がしたほうへ向かった。
 するとそこにはニビジムの子供達を逃そうとしている少年が。
 もちろんそれはマサトであるが。

「お姉さんは誰!?」
「私は自由を求める者……」
「え?」
「そのために私はロケット団に入った」
「ロケット団!?やっぱりロケット団なの!?それなら、僕は負けない!」
「その自由を勝ち取る為には、何事も犠牲をいとわない」
「(何を言っているんだ!?この人……)!?」
「私はロケット団幹部、『静寂のココ』。負けるわけには行かないのです」
「ロケット団なら倒すまでだ!」

 言い放つと同時にグラエナが飛び出した。
 直接攻撃。
 容赦なく爪がココに向けられた。
 だが、ココがその場から姿を消す。

「どこだ!?」
「こっちですよ……『サイケ光線』!」

 声の方向をすぐに向く。
 ちょうど真後ろだ。
 そして、攻撃をまともに受けるマサト。
 吹っ飛ばされて壁に激突した。

「ぐっ……。ケーシィのテレポートか……。グラエナ!もう一度だ!」

 マサトは恐れずに攻撃を指示する。
 グラエナは優秀なトレーナーの言うことを忠実に聞く。
 マサトのグラエナはポチエナの時から育てたポケモンで、一番最初にゲットしたポケモンだ。
 それに加えて、グラエナの動きは、ジョウトリーグのときよりも洗練されていた。

「なんどやっても同じです。『サイケ光線』!」

 やはりケーシィとココが消える。

「今だ!グラエナ!僕に向かって、『シャドーボール』!!」

 グラエナは忠実にマサトに攻撃を当てるような角度で攻撃してきた。
 でも、マサトはしゃがんでそれをかわした。
 マサトはわかっていた。再び、ココは後ろを狙ってくると。

「!!」

 そして、シャドーボールが炸裂した。だが、ココは当たらなかった。

「危なかったですわ」

 後ろにいたと思っていた、ココはマサトの右側にいた。

「(外した……?いや、連続のテレポートでかわしたんだ!!もしかしてケーシィは、僕とグラエナの考えを読んでかわしたのか!?それとも、未来予知であらかじめ攻撃を読んでいたのか?)」
「私のケーシィに攻撃を与えるのは不可能ですわ」
「それならこれでどうだ!グラエナ!!」

 そして、グラエナはある技を仕掛けた。

「……?一体何をしたというのですか?『目覚めるパワー』!」
「グラエナ!『突進』だ!」

 グラエナは目覚めるパワーもといケーシィに向かって行った。

「ケーシィは攻撃能力が低いから、効かないとでも思っているのですか?」
「!?」
「甘いですね。『バースト』!!」

 すると、目覚めるパワーが爆発を起こした。
 その規模は目覚めるパワーとは思えない威力だった。
 比べるとしたら、ビリリダマの『自爆』級だった。
 グラエナはダウンした。

「グラエナ!?」
「まだまだですわよ!」

 今度は連続でサイケ光線を繰り出す。
 マサトは持ち前の低い身長を駆使してかわした。
 次に出したのはジュペッタだ。

「『ナイトヘッド』だ!!」

 ゴーストタイプの技がココに襲い掛かる。

「同じですよ」
「同じにはならない!……『シャドーボール』準備!……そこだ!!」

 テレポートで姿を現した瞬間にマサトは方向を指示した。

「キャッ!!」

 シャドーボールがケーシィに当たって爆発した。
 そのショックでココは壁に頭を打ち付けた。

「よし!今のうちだ!」



 ―――ニビジム。

「タケシ……強いかも……」
「くっ!まさかこんなに押されるとは……」

 こちらでは、2人の二匹目、エネコとソルロックが倒されたところだった。

「こうなったら……」
「一気に決めるぞ!」

 そう言って出したのは、バシャーモとラグラージ。2人の最初のポケモンだ。
 しかし、そこで着信音が鳴り響く。ユウキのポケナビだ。
 急いでユウキは受ける。

「マサト!お前、どこにいるんだ!?」
“ユウキ!その戦いは無意味だよ!”

 キーン

 受話音量が最大になっていたせいか、ジム内にマサトの声が響き渡った。

「え?」
「どういう意味!?」
“タケシに伝えて!弟達は助け出したって!”
「弟達って……まさか……タケシ……」
“あのチビのガキか!?”
“あいつを捕まえに行った奴はどうしたんだ!?”
“知らねーよ!そんなことよりどうする!?”
“こいつの弟がいる場所はココ様がいるところでしょ!?ということは、ココ様はやられちゃったの!?”

 ざわざわとロケット団のざわめく声が聞こえる。

「弟達を助けてくれたか……ありがとう!マサト!」

 タケシはユウキのポケナビに近づいてそう言った。

“困った時は助け合うのが仲間でしょ!”
「タケシ……」
「すまない……。俺がいながら、弟達を人質に取られて、協力をしなければ、弟達がどうなっても知らないというから……。俺とジローはこうするしかなかった」
「じゃあ、タケシ!もう気にすることは何もない!こいつ等を全員ぶっ飛ばしてやろうぜ!」
「ああ!」
「僕もやるよ!」

 弟のジローもゴローニャを出してやる気十分だ。
 そして、タケシのハガネールは健在。

“ちっ!あいつ等やる気だぞ!?”
“数で押してやるのよ!”

 そして、一斉にロケット団が押し寄せる。
 50対4の戦いが今始まった。

“うわっ!”
「え?マサト!?マサト!!どうしたの!?」

 ポケナビは応答せず、ツーと、断続的な音が流れるだけだった。



 ―――10秒前。

「困った時は助け合うのが仲間でしょ!」

 その言葉から、タケシが味方について、ロケット団を一掃してくれたことにマサトは安心しきっていた。
 だから、油断が生じていた。
 そう、ココが立ち上がっていたことに。

「ネイティオ!!『影玉乱爆』!!」
「!!」

 大量のシャドーボールがマサトに放たれた。
 そして、巨大な爆発が起こった。

「うわっ!」

 マサトはジュペッタと共に爆発の衝撃で吹っ飛ばされた。

「ジュペッタ……まさか……僕をかばって……」

 ジュペッタが攻撃を受けていなかったら、恐らくもう意識はなかっただろう。
 マサトは攻撃の主を睨んだ。だが、相手の姿を見て呆気にとられた。
 今まで、清楚なお嬢様を装っていたココが、凄まじいオーラを放出してマサトを睨んでいるのだ。
 そのオーラに身震いを起こすほどだった。

「まさか、あのときグラエナが『いちゃもん』をつけていたなんてな!連続テレポートでかわせなかったわけだ!!貴様は生かしておけん……。私の邪魔をするのものはすべて排除してやる!!!!」
「(なんだ……?この性格の変わりようは!?今までよりもまずいぞ!)」
「『影玉乱爆』!!!!」
「ヤルキモノ!!受けてたつんだ!」

 ヤルキモノはでてくると、すべてのシャドーボールを切り裂いていった。

「ぶっ飛べ!!『念道風魔』!!!!」
「ヤルキモノ!こらえるんだ!……うわっ!」
「ヤルゥ!?」

 ヤルキモノは確かにこらえることができた。
 だが、攻撃範囲はマサトにも、いや、ネイティオの視界すべてに及んだ。
 マサトは壁に打ち付けられた。

「ぐ……ヤルキモノ……『シャドークロー』だ!!」

 しかしマサトも負けてはいない。攻撃の隙を突いて、一気にネイティオを撃破した。

「ヤルゥ!」

 マサトを心配して、ヤルキモノは駆けつける。

「『水点乱流』!!」
「……!!戻れ!ヤルキモノ!」

 マサトはモンスターボールでヤルキモノを戻しながら、攻撃をかわす。
 だが、連続攻撃をそうなんどもかわすことはできなかった。
 ましてや、さっきからポケモンの攻撃を受け続けているマサトがかわし続けるのは不可能だった。

「うぅ……」

 十数発の水のうち2つがマサトに当たった。さすがのマサトもグロッキー状態である。

「とどめを刺してやる!!ウツボット!『葉鋭裁断』」
「くっ……ここまでか……?」

 マサトは半ば諦めかけた。
 だが、一匹のポケモンが飛び出した。
 そして、強力な殺傷力を持つその一枚の葉っぱを逆に切り裂いた。

“マサト……まだ諦めるのは早いよ!”
「え?」
“君が諦めたら、残っている僕達はどうなるの?それにこの町のために戦っているユウキたち。それに他の町で戦っているはずのサトシたちになんて言うの……?”
「……そうだね……僕は……負けない!」

 マサトは膝を立てて、そして、ゆっくりと立ち上がった。

「そんなケガで私に立ち向かおうとはいい度胸だな!もちろん手加減はしないけどな!」
「ハァ……ハァ……負けるもんか!!ジュプトル!『リーフブレード』!ギャロップ!『オーバーヒート』!全力で突っ込むんだ!」
「気もそぞろ……私が負けるはずがない!すべてを破壊してくれよう!ウツボット、『葉縁溶羽』!サクラビス!『桜吹雪水』!!」

 それぞれの強力な攻撃が襲い掛かる。
 強力な酸を持つ葉っぱと吹雪とそれを凍らせた水が一気に襲い掛かる。
 どちらが当たってもジュプトルには効果が抜群だった。
 しかし、ギャロップにはそれがわかってか、ジュプトルの盾となって、先導した。
 そして、ジュプトルの攻撃が完璧にヒットしてサクラビスを一撃で倒した。
 ギャロップの方もオーバーヒートがヒットした。
 だが、ウツボットはダウンせず、逆にギャロップは力尽きた。

「私の技をその炎だけで防げると思ったら大間違いだ!これで終わりにしてやる!!『葉縁溶羽』!!!!」

 狙いはジュプトルではなかった。
 フラフラと立っているマサトだ。
 避けることは不可能。
 ジュプトルが駆けつけるのも間に合わなかった。

「ハァハァ……『サイコキネシス』!!」

 しかし、マサトはまだ残していた。最大の切り札を。

「なんだ!?今の技は!?並みの威力じゃないぞ!?」

 そう。今の技でウツボットの技を破るどころか、そのままダウンさせるまでに至った。

「ハァハァ……ここまで来たら負けるわけには行かない……やられたポケモン達のためにも……」
「ラルゥ!」
「そんなちっぽけなポケモンでウツボットを倒しただと!?」
「どんなポケモンで来い!すべて倒してやる!!」
「どんなポケモンもか……。ハハハ!やれるものならやってもらおうか!!このポケモンを倒せるか!?」

 ここが持ち出したボールはマスターボール。
 市販されていないボールである。
 通常ルートで手に入れるのは不可能なアイテムだ。

「このポケモンは我が家宝として父が捕まえたポケモン。今となっては家宝とか父とか関係は無いがな!!行け!」
「…………」

 飛び出してきたポケモンは遺跡で見つけられる珍しいポケモン。
 そして、主にホウエン地方で見かけられたという封印されたポケモンだった。

「レジロックか……」

 マサトは驚かなかった。
 レジロックは見たことがあった。
 そして、驚かなかったのはもうロケット団のポケモンなら伝説も幻も関係ないと思ったからだ。

「私の切り札……最後のポケモンだ!これで捻り潰してくれよう!!」

 マサトはすべての体力が残っているポケモンを出した。

「ヤルキモノ……君は僕の最初のポケモンだ……。ジュプトル……君は一番の相棒で僕をいつも助けてくれた……。
 そして、ラルトス……君は一番最初に僕と通じ合ったポケモンだ……。みんなにあえて本当によかった。今、この力をぶつけよう!」

 マサトが残った力で振り絞って言う。3匹も頷いてそれに答える。

「行くよ!!」

 ジュプトルとヤルキモノがまず飛び出した。
 しかし、向かい打つべく、レジロックの『電磁砲』が襲い掛かる。
 だが、後方で援護をしていたラルトスの『10万ボルト』がその攻撃を打ち破った。
 その隙を狙い、ヤルキモノが右側をジュプトルが左側をそれぞれ得意な攻撃で決めた。

「(……『リーフブレード』と『気合パンチ』……決まったか!?)」
「その程度か?」
「!?」

 パンチとブレードがそれぞれ掴まれてしまった。
 でも、レジロックを見る限り、しっかり2匹の攻撃の後は残っていた。

「全力でそいつ等をなぎ倒せ!」

 レジロックはヤルキモノの腕とジュプトルのブレードを持ったまま思いっきり振りまわした。
 容赦ない攻撃が2匹に襲った。
 この総称される攻撃の名は『ばかぢから』。
 最強クラスの攻撃であることは間違いない。

「ジュプトル!!ヤルキモノ!!」
「お前も終わりだ!『破壊光線』!」
「!!」

 マサトはラルトスを抱えて飛んだ。
 だが、爆発のショックで吹き飛んだ。

「う……」
「ラルゥ!」
「しぶとい!それならこれで終わりにしてやる!レジロック!最大パワーで『地震』だ!」

 強力な地震が、マサトたちを襲う。
 いや、マサトだけではない。
 彼女の一番の目的はこの建物を崩壊させることだったのだろう。
 そして、建物が崩れていく……。

「ハハハ!瓦礫の山だ!もうあのガキは生きていまい!」

 崩れた建物を外から見て、ココは言う。
 ココは地震をした後、すぐにレジロックで穴を掘って外に脱出したようだった。
 事が終わり、この場を去ろうとした時、瓦礫が崩れた。
 ココはそれに目をやる。
 出てきたのはマサトのジュプトルだ。
 そして、ヤルキモノがマサトを抱えて現れた。

「バカな!ヤルキモノもジュプトルも……レジロックの攻撃で倒れたはず!それなのに何故……何故!動ける!?ましてや、何故トレーナーを助ける!?」
「僕とポケモンたちは絆で結ばれている……いや、それ以上の関係を持っている……。ロケット団なんかにわからないだろうけど……それが僕達の力なんだ!」

 ボロボロになりながらもマサトはそう言った。

「ロケット団なんかだと……?私が好きでロケット団に入ったとでも思うのか?」
「??」
「他人にいいように利用され、両親からは冷たい仕打ちを受けたこの私のどこにその行く道があったと思う!?私には人生の選択がなかった!
 だから、こんな世界はすべて壊してやるんだ!そんな私の気持ちがわかるか!?」
「わからないよ!だけど、一つ言えることはわかる。だからと言って、壊すのは間違っている!」
「……!間違っているだと?ふん!それなら私のこのポケモンに勝ってからにしろ!そのすでにボロボロの2匹と貧弱そうなポケモン一匹じゃ、私には勝てない!」
「それなら勝ってやる!これで最後だ!」

 ジュプトルとヤルキモノが最後の力を込めて攻撃に出る。
 『深緑リーフブレード』と『起死回生』。
 いずれも最大パワーまで引き出した攻撃だ。
 その二つを同時にレジロックに叩き込んだ。

「終わりか?今度こそ叩きのめしてやれ!」
「!!」

 強力な攻撃を受けたのにもかかわらず、レジロックは『ばかぢから』で反撃をしてきた。
 ヤルキモノもジュプトルも力尽きた。
 そして、レジロックはマサトにも接近していく。

「これで終わりだっ!!!」

 叫ぶココ。

「ラルトス……もういいかい?」
“バッチリよ!”
「な……何だこれは……?」

 ココはたしろぎした。ラルトスの力が目にとるようにわかったからだ。

「僕がわけもなくラルトスに攻撃を出さなかったと思う?この最後の一撃の為さ!!ラルトス!!『サイコキネシス』!!!!」

 レジロックがマサトを殴りつけようと、1メートルまで接近したそのとき、強力なサイコキネシスが発動した。
 平均威力の約10倍。
 レジロックは瓦礫の山を突き抜けて、遥か遠くまで吹き飛ばした。
 少なくとも、町の外に出ていることは間違いない。

「バカな……私が負けた……だと……?」
「僕の勝ちだ……」
「ラルゥ!」

 あれだけのサイコキネシスを放ったにもかかわらず、ラルトスは平然としていた。
 そして、ココの強暴だったオーラはいつの間にか消えていた。
 ここはがっくりとうなだれて膝をついた。

「私は……自由になりたかったのよ……」
「…………」
「そのために……ロケット団に入って自分の運命を変えようとした……」
「やっぱりそんなの間違っているよ……僕だったら何度もパパやママと話したりして、自分の考えを言うよ。話し合ってわかってくれないなんてないよ……」

 マサトはそう言うと、気を失った。
 ラルトスや力尽きたはずのジュプトルやヤルキモノがマサトに寄り添う。
 そんな様子を見て呟いた。

「そうね……私のしてきたことは許されないことよね……。まさかこんな小さな子に教えられるなんてね……」

 ココはそう言って、涙を流した。
 そうして、間もなくしてニビシティが収まったのは言うまでもない。



 第一幕 Wide World Storys
 VSロケット団② ―――VS静寂のココ――― 終わり


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Last-modified: 2015-02-04 (水) 07:06:23
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