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たった一つの行路 №043

/たった一つの行路 №043

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“……侵入者だ!迎え撃て!”
“たった子供3人だ!俺たちだけで十分だ!”

 建物に入ると、下っ端5人程度が攻めてきた。
 しかし、侵入者3人はすぐにボールを取った。

「クロバット、『エアーカッター』!!」
「ヒトデマン、『体当たり』!!」
「ピカチュウ、『10万ボルト』!!」

 3人の攻撃が5人程度の下っ端にクリティカルヒットし、あっという間に勝負を決めた。
 ふと、エースは足を止めた。

「ロケット団の基地にしては下っ端の数が少ないな」
「確かに……。サントアンヌ号の時や渦巻き列島、それに怒りの湖のときと比べると少ないぜ」
「さっきから思っていたんだけど、なんでロケット団はこんなところに基地を作ったの?」
「カスミのいうことも一理有るな。ここに作る利便さがわからない。でも、もしここが重大な研究所だったとしたらあるいは……」
「でもそれなら、下っ端の数をもっと増やせばいいと思うんですけど?」
「確かに……」
「そんなこと考えてもしょうがないぜ!とりあえず俺は進むぞ!」

 カスミとエースの会話に深く考えないサトシはまっすぐ進んで行った。

「ちょっと!サトシ!この先にまだ下っ端がいるかもしれないのよ?」

 カスミは走って追いかけた。エースも仕方がなく走る。

「でも、エースさん。これからどうするんですか?」
「とりあえず、幹部級の団員を捕まえてボスの居場所と本拠地を吐かせるしかない」

 二人はサトシに追いついて、足を止めた。サトシも止まっていた様だ。

「ここは……岩のフィールド?」
「みたいだな」

 2ブロック目のフロアに入ると、そこは岩だらけだった。

「でも、岩系のジムのフィールドとは違って規模が大きいわね」

 ジムのフィールドは、トレーナーのエリアはしっかりとわかるようになっているが、このフィールドは全て、部屋全体がフィールドだった。
 一つ一つの岩の大きさがライトの身長くらいあって、通れないところもあれば、横一列で10人並んでも通れる隙間も有るくらいだった。
 鍾乳洞が入り組んだようなフィールドだ。
 ちなみにライトの身長は162cmである。

「下っ端はいないみたいだぜ!さっさとここを通ろうぜ!」
「下っ端はもういないでェー!だが、ここは通さへんでェー!!」
「うわっ!」
「ピカッ!」

 サトシが一歩踏み出したとき、何かの攻撃を受けて吹っ飛ばされた。サトシの肩に乗っていたピカチュウも同様だ。
 攻撃の主はいつの間にか、岩の先端に立っていた。

「いたた……」
「サトシ!大丈夫!?」
「なんとか……。おい!不意打ちなんて卑怯だぞ!」
「あ?お前、何言ってんねん!」
「サトシ……ロケット団に常識が通用するわけないでしょ!!」
「やべ、そうだった……」
「お前は誰だ?(こいつ……一体どこから現れた?)」

 エースは気を取りなおして、ボールを取った。

「ワイは幹部のエドや!通称、『高速のエド』!」
「(高速のエド……?どこかで聞いたことが……?)」

 エースは思い出そうとしたが、はっきりと思い出せなかった。
 いや、ヒロトが一応言っていたのだが、おそらくエースは聞いていなかったのだろう。

「ところであんたら何しに来たんや!?まさか……ここの奥でやっている“最強のダークポケモン”を奪いに来たってことはないやろな?まぁ、それはないやろ!
 なんたって、外部の人間で知っているのはトップの3人だけやからな」
「最強のダークポケモンですって!!??」

 そう声をあげたのは、やっと追いついてきたカレンだ。

「一体どうやってダークポケモンを作ろうって言うの!?」
「アカン……喋ってもうた……。いいや、教えたるわ!オーレ地方でダークポケモンを作ったという奴がこの奥にいるんや!」
「作った奴ってまさか……ボルグ!?」
「なんで知っているんや?まあそんなことはどうでもいいな!ここで全員くたばるんやからな!」

 すると、エドは身軽な動きで岩の上を移動し始めた。まるで忍びのような軽業だった。

「やれ!『いあいぎり』や!!」
「ど、どこだ?」

 誰も、そのポケモンの動きについていけるものはいなかった。ただ一人を除いては。
 その攻撃はなんと素手で止められた。素手で止めたのはゴローニャだ。
 攻撃したポケモンはテッカニン。最速のポケモンである。

「な、なんやて?」
「こう見ても、私は動体視力がいいのよ!!エース!ここは私に任せて!」
「だが、ライト。相手は幹部だぞ?」
「平気よ!エースだって、あいつの動きについて行けなかったみたいだし」
「ワイのスピードが見えるやと?なら、こいつならどうや!『高速スピン・乱』!」

 エドはまた新たなポケモンを出す。スピードはテッカニンにも劣らない。
 しかも、高速スピンは速いだけでなくブレながら接近してきた。

「ライト!私も戦う!」
「カレン!あなたはボルグを倒すんでしょ!?それに私は大丈夫よ!ゴローニャ!右40度を防御よ!」

 ゴローニャが指示通りに動くと、そのポケモン、スターミーを受け止めた。
 高速スピンで摩擦を受けながらも持ち前の防御力で耐えぬいた。

「プクリン、そこに『水の波動』!!」

 ライトはエドを狙って攻撃をする。
 しかも、移動しているのをピンポイントにだ。
 エドの足に攻撃が当たり、エドはバランスを崩した。

「む!」
「今のうちよ!行って!!」
「わかった!奥は俺に任せろ!」
「“俺たち”でしょ!ライトさん!気をつけてください!」

 サトシ、カスミはそれぞれ声をかけて、奥へといった。
 カレンとエースはライトの目を見てそのまま奥へと消えて行った。



 たった一つの行路 №043



 奥へ進んだ4人はその後、下り気味の洞窟を進んで、一面広がる地底湖に足を踏み入れた。
 地底湖と言っても、もともと天然で出来た物をロケット団が改造した様だ。

「……この地底湖を進むには、水ポケモンがいないとダメだな」
「それなら、私のギャラドスで進めるわ!」

 そういって、カスミはギャラドスを湖に出した。

「速く乗って!!」

 カスミはそう行って飛び乗った。続いてカレンとサトシが乗る。

「どうやら、ここのフロアにはロケット団がいないみたいだぜ!」
「そうね!これなら簡単に奥まで行けそうね!」

 サトシとカレンはは安心していた。

「エースさん!早く!」
「いや、先に行け」
「え?」
「早く!」
「わ、わかった!」

 カスミたちを先に行かせた。

「ハクリュー!『神速』!!」

 エースはすると、水に向かって攻撃を仕掛けた。
 すると、水の中から、人が現れた。

「よくわかったな!俺が水の中にいると!」
「いるとしたらそこだと思ったからな。ハクリュー、『破壊光線』」

 攻撃はクリーンヒット。男のポケモン見事命中した。

「ケッ!雑魚が!やれ!ワニ!」
「!!(なぜ効いてない!?)」

 まともに当たったにもかかわらず、ワニ……オーダイルはまったくの無傷だった。
 しかも、オーダイルの攻撃が、ハクリューに当たり、一撃でダウンした。

「(どう言うことだ……?)クロバット、『グランドクロス』」

 十字に切ったエアーカッタを放ち、オーダイルに命中させた。だが、無傷だった。

「無力だ!まったくもってそんな攻撃は効かない!」
「どうしてだ?」
「その謎が解けないと、俺に勝つことは出来ないぜ!」

 エースが攻めあぐねているところへオーダイルにハイドロポンプが放たれて、命中した。
 オーダイルは吹っ飛んだ。

「エースさん!大丈夫ですか?」
「カスミか……。なぜ戻ってきた?サトシとカレンは?」
「二人のそれぞれの水ポケモンで先に行かせました。それよりも、遠くから見ていて相手の攻撃がまったく効いていない様に見えたので」
「ケッ!雑魚が二人集まったところで勝ち目はないぜ!」
「雑魚かどうかはやってみないとわからないぞ?バクフーン、『オーバーヒート』!!」

 エースは切り札の技で勝負に出た。
 オーダイルに攻撃が命中するが、やはり効いていなかった。

「ウソ!?オーバーヒートがまったく効いてない!?」
「まさか……このフィールドのせいか?」
「よくわかったな!ここは水ポケモン以外のポケモンの能力は極端に落ちて、水ポケモンの能力は格段に上がる!つまり、水ポケモンを極めたこの俺にとっては無敵のフィールドだ!」
「水ポケモンを極めたですって!?誰の目の前でそんなことを言っているのかしら?」
「そういうおまえはなんだ?」
「私は世界の美少女カスミ!!水ポケモンマスターよ!」

 もちろん、前に“自称”が付くのは言うまでもない。
 男は大笑いした。

「水ポケモンマスターか。このホラ吹き女め!」
「なんですって!?」
「まぁいい。それがほんとかどうかは俺が見極めてやる!このロケット四天王の一人、レグルスがな!」

 レグルスは不気味にメガネを光らせた。



「ここは!?」
「研究室みたいね」

 サトシとカレンは奥までたどり着いた。

「何だお前たちは?」
「ボルグ!!」

 カレンは指を指していった。

「お前は……!一体お前がなぜここに!」
「そんな質問はどうだっていいわ!あなたね!ダークポケモンを作り出しているというのは!」
「ダークポケモンか……。もうこの研究はこれで終わりにする予定だ」
「終わりにする?」
「そう、今の時代はダークポケモンではない!合成ポケモン<キメラ>の時代だ!」
「キメラ!?」
「なんだ、キメラって?新しいポケモンか!?」
「そうだよ。新しいポケモンを作り出すのだよ!かつて、ミュウの細胞を使って作り出したミュウツーの様にな!だが、勝手が違う。存在するポケモンの遺伝子を組替えて作り出すのだよ!
 もうすでに、5種類のキメラが作られている。これを元にさらに増やす研究をしようとしているのだよ」
「そんなこと許されると思っているの?」
「別に許されなくてもいいのだよ!私を止めることは誰にもできん!」
「私が止めるわ!」
「俺も手伝うぜ!!」
「ピッカ!!」

 ピンポーン

 その時何かのチャイムがなった。

「おっ!最強のダークポケモンが完成した様だ!後はモンスターボールに収めるだけだ」
「ここは通さないわよ!!サトシ!隣の部屋でそのダークポケモンを捕まえて!」
「え!?俺が!?」
「邪魔をするな!」

 ボルグはランターンとクロバットを使って襲ってきた。

「そのポケモンをゲットすればいいだけよ!私はこの男を倒さなければならないのよ!だから、早く!」
「わかった!」

 サトシはドアを蹴り破って実験室に入っていった。

「え!?まさか……このポケモンがダークポケモン!?」



 70

「スターミー!『高速スピン・舞』や!!」

 ここは鍾乳洞のフィールド。幹部エドとライトが戦っている場所だ。
 スターミーが高速スピンをしながら、ぶれて動く。しかも、それが10匹ぐらいに見えて突進してきた。

「ゴローニャ!『岩弾き』!!」

 しかし、ゴローニャはまわりの岩を砕き、細かいつぶてでスターミーを攻撃した。

「そんな攻撃は効かへんわ!!テッカニン!やれ!」

 エド言う通り、岩のつぶてをスターミーは弾いて進んで行った。さらに同時攻撃でテッカニンが攻撃をしかける。

「でも分身は消えたわよ!ゴローニャ!『メテオスマッシュ』!」

 ライトとゴローニャはスターミーの動きを読んでいた。
 攻撃はいとも簡単に当たりスターミーは地面にたたきつけられて気絶した。
 テッカニンの攻撃はもう一匹のプクリンがリフレクターで止めた。

「どうよ!エース直伝の技よ!」
「生意気や!テッカニン!フルスピードや!」

 テッカニンが振るスピードで動く。そして、一気に姿を消した。

「ワイのテッカニンのフルスピードについて来れるもんか!」
「プクリン!」

 テッカニンはライトの後ろを襲った。しかし、プクリンはテッカニンの鎌を受け止めた。そして、強烈なビンタを繰り出した。

「なぜついてこれたんや!?」
「大体不意打ちかけるときというのは後ろからって決まっているでしょ?確かにあんたのテッカニンのスピードは速かったわよ!でも、速さだけじゃ私には勝てないわ!」
「じゃあ、これならどうや!マルマイン!『ヘキサグラム』!!!」

 すると新手でマルマインを繰り出した。そして、マルマインが6匹になった。

「先に言っておくが、このワイの技を止められた者はいないでェ!」
「何よ!ただの影分身じゃない!!」
「行け!」

 すると、6匹のうちの一匹が突っ込んできた。

「分身が突っ込んできたところで怖くないわよ!『水の波動』!!」

 しかし、プクリンの水の波動をもろともせず、つっこんできた。しかも、プクリンのもとにたどり着いて爆発した。爆発の影響でライトは吹っ飛んだ。

「ぐっ!なによこれ!自爆技!?しかも分身が……?」
「さらに面白い物を見せてやるで!さらに『ヘキサグラム』!!」

 5匹のマルマインのうち、1匹のマルマインがさらに6匹に分身した。

「これで終わりにしてやる!マルマイン!『特攻爆弾』!!」

 その6匹のマルマインがライトに向かって突っ込んできた。

「(まさか……だとしたら、まずい!)プクリン!『リフレクタ―』!!」

 ライトの直感は的中した。
 マルマイン6匹は近づいてきてすべて爆発した。
 しかも、マルマインの突っ込んでくるスピードは速く、リフレクターは間に合わなかった。
 6匹の大爆発がまともに入った。攻撃の影響で周りの岩が破壊されて、すさまじい爆煙が巻き起った。
 爆煙が晴れたとき、プクリンはダウンし、ライトも倒れていた。

「ワイの勝ちやな!」
「まだ、私は負けてないわよ……」

 地面に手をつきなんとか立ちあがろうとした。

「それならワイのこの技を破ってみるんやな!マルマイン!『ヘキサグラム』から『特攻爆弾』!!!!」

 残った4匹のうち3匹が分身した。さらに18匹になった。そして、襲いかかった。

「ゴローニャ!『岩弾き』!!」

 近くにあった岩を砕いて飛ばした。ゴローニャの飛ばした岩がマルマインに直撃して、そのまま爆発した。18匹の大爆発が一気に起きて先ほどよりも大量の爆煙がたちこめた。

「なんやて!?まさか!こんな技で破られるやなんて!」

 エドはすごく予想外だった様だ。しかし、驚いている暇はなかった。煙の中からゴローニャが現れた。

「なっ!!」
「ゴローニャ!『大爆発』!!!!」

 マルマインとエドの近くで大爆発を起こした。そして、さらに状況はわかりにくくなった。
 そして、5分が経過した。
 ライトとエドはまだ立っていた。

「あの大爆発を至近距離で受けて立っているなんて!」
「さすがに危なかったわ!マルマインの大爆発で相殺しなかったら危なかったで!」

 二人とも息をしながら次のモンスターボールを構えた。



 71

「ヒトデマン!?トサキント!?」
「なんだ!この程度か!?雑魚が!」
「くっ!」

 鍾乳洞の湖……カスミ&エース対レグルス。
 しかし、バトルは一方的だった。
 最初にカスミのギャラドスがオーダイルを相打ちで倒したが、ヒトデマンとトサキントがレグルスのゴルダックに一方的にやられていた。
 エースもバンギラスやバクフーンで攻めて行くが、フィールドの影響でまったく力を出せずにやられていた。
 ほとんどダメージはカスミが与えていた。

「水ポケモンマスターと言うのは口だけか!?あきれたものだ」
「勝負はこれからよ!!ニョロトノ!!」

 ニョロトノはボールから出てくると、勇敢にゴルダックに突進して行った。
 と言う事はなく、手をたたいて陽気に踊っていた。

「ニョロトノ!踊ってる場合じゃないわよ!『水鉄砲』よ!!」
「核の違いを見せてやれ!!『水鉄砲』!!」

 ニョロトノとゴルダックは同じ技を繰り出した。だが、技の威力はまったく違っていた。そう、一方的だった。

「なっ!!なにィ!?」

 ニョロトノの攻撃がゴルダックを押しきったのだ。

「そのまま『往復ビンタ』よ!」

 攻撃にひるんだところを畳み掛ける。

「それはダメだ!カスミ!」
「え?」
「ゴル!『みだれひっかき』!!」

 エースの注意が遅かった。往復ビンタのスピードよりも、みだれひっかきの方が速かった。

「アイツのゴルダックはどうやら接近戦が強い。逆に遠距離攻撃の方が弱いようだ」
「それなら連続で水鉄砲よ!」
「それがわかったからって俺がなにも対策をしないとでも思ったか!?ゴル!接近しろ!」

 距離を保とうとするカスミと接近を続けるレグルス。
 そして次の瞬間勝負がついた。

「ゴル!『いばる』から『自己暗示』!」
「ニョロトノ!『水の波動』!!」

 ゴルダックの攻撃が一歩遅く、ニョロトノの攻撃で勝負が決まった。

「やるじゃないのぉ!だが、俺の後二匹のポケモンには勝てないぜ!」

 レグルスの3体目のポケモンは、水ポケモンの中でもずば抜けて美しさを誇るミロカロスだ。

「ニョロトノ!速攻よ!『往復ビンタ』!!」
「その程度で勝てないよぉ!ミカロス!返り討ちにしてやれ!」

 ニョロトノはミロカロスの懐に飛びこんで攻撃を仕掛けるが、柔らかい体を生かしてかわした。
 さらにニョロトノの隙を狙って『竜の息吹』で撃退した。

「ニョロトノ!?」
「(一撃か……。あのミロカロス、相当強いな)」
「弱い!雑魚が!」
「それなら……!」

 カスミがニョロトノを戻すのと同時に勝手に出てきたポケモンがいた。

「って!コダック!またあんたは勝手に出てきて!!」

 しかも、しかも着地したのは水の上。例の如く、カスミのコダックはおぼれていた。

「(何であんなポケモンを手持ちに入れているんだ?)」

 エースはそう思った。

「ギャハハハハ!笑えるじゃないの!水ポケモンがおぼれるなんて!ミカロス!締め上げろ!!」
「コダック!逃げて!」

 だが、あっけなくミロカロスに捕まった。コダックは頭を締め上げられ、苦しみ始めた。

「そのままたたきつけろ!」

 そして、頭からたたきつけられた。すると、コダックの目が青く光った。

「しめた!コダック!『サイコキネシス』!!」
「雑魚が何をしても同じだ!ミカロス!『ミラーコート』!!」

 ミロカロスは光るコートをまとって、跳ね返そうとした。

「え!?」
「くっ!」

 ミロカロスはダウンした。だが、ミラーコートも決まって、コダックはダウンした。

「まさか、あれほどのエスパー攻撃を繰り出すとはな!」
「コダックの攻撃を跳ね返すなんて!」
「(コダックのあの攻撃は確かに普通の威力ではなかった)」
「だがな!お前は負ける!!」

 レグルスは最後のポケモンを繰り出した。

「言っておくが、こいつは今までのどのポケモンよりも強い!お前にかなうはずがない!」
「やってみないとわからないわよ!いくのよ!サニーゴ!!」
「ほう!そこまで言うなら見せてやろうじゃないのぅ!ゴット!」

 サニーゴ対ラグラージの戦いが始まった。



 72

 再び岩のフィールド。ライト対エド。

「はぁ、はぁ……あと、二匹か……」

 岩陰に隠れて、ライトはしきりに周りを見ていた。
 エドの攻撃から逃れて作戦を練っていた。

「あの3匹は厄介よ!……このバシャーモと捕まえたばかりのヤミラミでどうやって倒せばいいだろう!?」

 ライトはやられたチルタリスとゴルダックを見て呟いた。
 ライトはエドの想像を絶するコンビネーションで圧倒されていた。

「ヤミラミは小技しかないし……バシャーモは隙の多い技が多い……この二つを組み合わせるには……」
「見つけたでェ!」
「!!」

 ふと、声がした時、同時にその場を離れた。
 空気の斬撃が岩を切り裂き、ライトのいた場所を岩で潰した。

「(危なかった……)仕方がないわ!これでやるしかない!」

 ライトは最後のバシャーモとヤミラミを繰り出した。
 同時に緑色のトカゲポケモン、ジュカインがブレードで切り裂こうとする。
 しかし、タイミングよく、バシャーモが腕をつかんで攻撃を阻止した。
 そして、ジュカインを巴投げして後ろに引き離した。

「ほらほら!どんどんいくでェ!クロバット!『エアーカッター』や!」
「バシャーモ!耐えて!」

 バシャーモはヤミラミをかばうように前に立ち、攻撃を受けた。

「終わりや!」
「同じ手は乗らないわよ!ヤミラミ!飛んで『猫騙し』!」

 エドはフェイントをかけたつもりだった。
 そのフェイントとはジュカインで攻撃するように見せかけて、地面から別のポケモンで攻撃するというものだった。
 だが、ライトが狙ったのはジュカインではない。地面から出てくると予想したポケモンにである。

「戦いの読み合いは私の勝ちよ!」

 地面から飛び出したのはダグトリオ。そのポケモンにヤミラミは猫騙しを繰り出す。
 完璧に決まった。ダグトリオは目をつぶって、怯んでしまった。

「なんやて!?ジュカイン!クロバット!援護や!」
「ヤミラミ!『シャドークロー』!バシャーモ!『ブレイズキック』!スイッチ攻撃よ!」

 クロバットは接近してバシャーモを攻撃。
 ジュカインはリーフブレードで直接攻撃だ。
 ところが、ライトがスイッチと言った瞬間にエドの狙いが逆になってしまった。
 つまり、バシャーモとヤミラミの位置が入れ替わり、バシャーモがジュカインの攻撃を、ヤミラミがクロバットの攻撃を受け止めることになった。
 その間、バシャーモはダグトリオにヤミラミはクロバットに強烈な一撃を与えることができた。しかも、ダグトリオはダウンした。
 しかし、ヤミラミのシャドークローを受けながらも、クロバットはヤミラミに攻撃を与えた。一方のバシャーモもジュカインのブレードをもろに受けた。

「次で終わりや!クロバット、『燕返し』!!ジュカイン、『神速斬』!!」
「…………。バシャーモ!『こらえる』!ヤミラミ……」

 ところがヤミラミは腹を抱えてうずくまっていた。
 ヤミラミが抱えていた腹とはクロバットが攻撃した場所のようだった。
 クロバットはにやりとし、一瞬で間合いを詰め、攻撃をした。
 ……否、しようとした。
 ヤミラミは不適に笑い、カウンターを仕掛けた。
 クロバットは油断をして、ヤミラミが受けるはずの2倍の攻撃を受けてしまった。
 そう、完璧な『騙し討ち』が決まった。

「(あと一匹……)」

 しかし、あたりを見回すと、ジュカインの姿が見えない。
 ふと、ライトの目の前を風がかすめた。
 そう思ったとき腹部に鈍い痛みが走った。
 そして、バシャーモとヤミラミも強烈なダメージを受けた。
 バシャーモは『こらえる』体勢だったため、無事だったが、クロバットに気を取られていたヤミラミは対応が出来なかった。
 いや、クロバットがいなかったとしても対応できなかった。
 そして、エドの目の前にジュカインが立った。

「どうや!?ワイの最速のジュカインのスピードは!?そして、最強の技、『神速斬』の味は!?」
「……っ!(なんてスピードなの……?ほとんど見えなかった……)」
「これはまだ半分の威力しか出してないでェ!本気出したら、岩だろうが銅だろうが、真っ二つやからな!」
「(……鋼や鉄は無理なのね・・・)」

 エドの言葉を聞いてふと思った。

「これで終わりや!」
「それなら、こっちも最強の技でいくわよ!!バシャーモ!『オーバーヒート』!!」
「そんなのあたらへんわ!『神速斬』や!!」

 バシャーモが、力を溜めているうちに、ジュカインは再び超スピードで消えた。ライトは目を閉じた。

「今よ!全体に炎を撒き散らすのよ!!」
「(無駄や!『神速斬』は風も炎さえも切り裂く攻撃や!)」

 バシャーモとライトの周りを炎の海にした。
 そして、ライトは微妙な空気の流れを感じていた。
 そう、この空気の流れこそが、ジュカインの動きだった。
 そして、その流れがこっちに動いた。

「(来る!)」

 ライトは目をあけて、流れの方向を指差して叫んだ。

「バシャーモ!『起死回生』!!」

 バシャーモのすべての力を込めた拳をライトの指先の方向に向けて放った。
 ジュカインとバシャーモのぶつかった衝撃が発して、炎が一気に消し飛んだ。
 そして、決着はついた。
 ジュカインは倒れて、バシャーモはかろうじて立っていた。
 エドとライトは2匹が激突した衝撃で周りの岩にぶつかったが、ライトだけは意識を保っていた。

「勝った……のね?……とりあえず……あとはまかせた…わよ…エー…ス……」

 ライトはあとのことはエースたちに任せて、拳をグッと握り閉めたまま、目を閉じた。



 73

 ―――実験室。
 ここでサトシとダークポケモンが戦っていた。

「ヘラクロス!キングラー!」

 圧倒的能力を前に、2匹ともやられてしまった。

「ピカピ!!」
「うわっ!」

 ピカチュウが注意を促したが、遅かった。
 ダークポケモンの攻撃がサトシの身を掠めた。

「ぐ!本当に……ダメなのか!?思い出してくれ!」
「ピカ!ピカ!!」

 サトシは必死にそのポケモンに話しかけていた。
 どうやら、一度会ったことのあるポケモンの様だ。

「思い出してくれ!ミュウ!」
「ピカ!」

 そう、ダークポケモンにされたと言うのは、あの『はじまりの木』で出会った、ミュウだった。



 第一幕 Wide World Storys
 フォッグス島② ―――幹部:高速のエド――― 終わり


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Last-modified: 2015-02-03 (火) 07:25:18
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