「バンギラスを捕獲する……?それは本気で言っているのですか?」
「ええ。本気よ!」
仮面の男、ビシャスは嘲笑して言った。
「知っているでしょう?他人のポケモンは捕獲できないことを……」
「そんなこと知っているわよ。常識じゃない!」
「でも」と彼女は付け加える。
「私にはそれができる」
「そんなに捕獲すると言うなら捕獲してみなさい!その前にはあなたは倒れているでしょうけど!バンギラス!破壊しなさい!!」
たった一つの行路 №040
少女に向かって、邪悪なるバンギラスが破壊光線を放つ。
相変わらず、ビシャスの攻撃主体は破壊光線らしい。
しかし、その威力は何者にも勝る威力があった。
少女はもう1つのボールから新たなポケモンを出した。
「『光の壁』!!」
出したポケモンは青い鋼系のポケモン、メタグロス。
技は防御系の技、光の壁。しかし、強力な光線はメタグロスの防御壁を打ち破った。
そして、そのままメタグロスに命中し、爆音が発生した。
「くっ!なんて威力なの!?」
少女はそう言っているものの、メタグロスのダメージはほとんど無い。光の壁は壊されたものの、ちゃんとダメージを軽減させていた。
「でも、今がチャンスよ!『コメットパンチ』!!」
破壊光線を打った後は“必ず”反動で動けなる。彼女はそこを狙っていた。
「甘いですね!バンギラス!もう一度です!」
邪悪なるバンギラスは、再度破壊光線を放とうとした。
「私のバンギラスを甘く見ては困ります!」
「くっ!オオスバメ!」
破壊光線が放たれる寸前、バンギラスの腹に強烈な一撃が襲い掛かった。その攻撃の正体は、自らを回転させてくちばしに全ての力を集めたオオスバメの攻撃だった。
その攻撃で破壊光線が中断されて、さらにメタグロスのコメットパンチまで決まった。
邪悪なるバンギラスとはいえ、ダメージは大きかったようだ。
「どう?『燕返し・改』よ!」
「何やっているのです!破壊しなさい!!」
二匹の同時攻撃を受けながらも、破壊光線を放とうとした。
“攻撃の後で二匹ともかわせそうにない”そう少女は判断した。
そして、攻撃は放たれた。だが、攻撃は当たらなかった。
少女は判断した後、即座にボールに納めていたのだ。つまり破壊光線は地面を破壊しただけだった。
「それなら、直接狙いなさい!!そして、もう一匹のバンギラスもやりなさい!!」
今まで少女が相手にしていたのは、ダークボールで邪悪な力を得ていたバンギラス。
しかし、バンギラスはもう一匹いた。そのバンギラスはやっと、先ほどのオオスバメの攻撃から立ちあがったところだった。
邪悪なるバンギラスは、接近して攻撃を仕掛けてきた。
一方バンギラスは拳にまがまがしい力を溜めて撃ちはなった。
「(あの二匹の出番だわ!)」
少女は二つのモンスターボールを取り出した。
そして、その二匹でビシャスのバンギラス二匹の攻撃を防いだ。
接近したバンギラスはハーブの匂い薫るポケモンが一撃耐えて、禍々しいバンギラスの方は大きな甲羅を持ったポケモンが『まもる』を使って防いだ。
ハーブポケモンのメガニウムの反撃を受けてバンギラスは膝をついた。
「『カウンター』よ!その攻撃なら二倍で返せるわ。でも、受けられるだけの体力が無いと返せない。メガニウム、ご苦労様!」
少女は攻撃で弱ったメガニウムをボールに戻した。
『守る』で遠距離攻撃してきたバンギラスを抑えていたカメポケモンはキャノンから水を一気に放出した。
一気にバンギラスを吹っ飛ばした。
「……! ……一言言うわ!」
「なんですか?」
「次の攻撃で全てが終わるわ!断言する」
「……?そんなことができるのならやって見なさい!バンギラス!」
両方のバンギラスとも、突撃してきた。
邪悪なるバンギラスは捨て身タックルに近い技である。
もう一方のバンギラスは突進の様だが、やはりまがまがしい感じであった。
「その技は『ダークエンド』ね。さっき、『守る』を使って防いだ技が『ダークレイブ』。いずれも、当たったらただではすまない技ね」
冷静に少女は分析していた。
「でも、あなたの負けよ!行くわよ!カメックス!!『ハイドロカノン』!!!!」
少女は邪悪なるバンギラスに向かって、今出せる最大の技を指示した。
カメックスはキャノンに水を溜めていき、それを爆発的に放射した。
あっという間にバンギラスは水流に巻きこまれて行き、ダウンさせた。
「残念ですね。まだ、もう一匹のバンギラスが残っています。終わりです!」
「私を忘れないでっ!!」
「!?」
ビシャスは驚いて声の主を探した。
そこにいたのは、ハルカと根性で立ち上がったバシャーモだった。
「バシャーモ、『スカイアッパー』!!」
バシャーモは少女とバンギラスの間に割り込んで行った。
攻撃の結果はバンギラスを上空へ吹っ飛ばして終わった。
その結果を見届けて、バシャーモは倒れた。
「ありがとう、バシャーモ」
「カメックス!ゆっくり休んで!」
ハルカと少女はそれぞれポケモンを戻した。
「さぁ!一気に捕獲させてもらうわ!」
そう言うと少女は、右腕を巻くってボールを掴んだ。
そのとき、右腕につけていたリングのような物がひかり始めた。
それと同時にモンスターボールまでひかりだした。
そして、少女はボールを投げてバンギラスに命中させた。
バンギラスはものの見事にボールへ吸いこまれて行った。
何度か抵抗した後、バンギラスは動きをやめた。
つまり、捕獲を完了させた。
「な!まさか!その力は……スナッチ!?と言うことは、“あいつ”と同じ力を……!?くっ!撤退です!」
「え!?あいつ!?あいつって……!?」
少女は何かを聞こうとした。だが、ビシャスはダークボールからマルマインを出した。
「『大爆発』です!」
そして、通常よりも威力の高い爆発が起きたのだった。
もちろんその後、ビシャスと部下の二人を探したがやはり逃げた後だった。
58
「びっくりしたよ!あんなに大きな爆発音が鳴るんだもん……」
と、ケンジは部屋に集まっている人数分のカップにコーヒーを入れながら言った。
「私もあれだけ大きな爆発だとは思わなかったわ。ロケット団幹部、『ダークマスタービシャス』……強かったわ……」
ケンジが注いだコーヒーにハルカは砂糖を入れて口をつけた。
「ロケット団の幹部って一体何人くらいいるんだろう?今まで、鉄壁のシードって奴には会ったんだけど……」
「そいつなら、俺が倒したけれどぎりぎりだったな。攻めるタイミングを間違えたら、確実にやられていた」
「私、今までロケット団って言ったら、喋るニャースとムサシとコジロウの2人組だけかと思っていたわ。でも、思い違いだったかも。幹部クラスのロケット団は段違いに強いんだもの……」
マサト、ユウキ、ハルカがそれぞれ言った。
マサトはコーヒーに手を伸ばしたが、少し苦かったらしく、顔をしかめた。
ユウキはミルクを入れて、美味しそうに飲んでいた。
「ジラーチを狙ってきたわけじゃなかったんだね?」
「そう。ジラーチじゃなくヒロトさんを狙っていた……。もしかして、また狙ってくるんじゃ……!」
「ありえるかも」
ユウキが冷静に答えた。
逆にハルカは慌てている様に聞こえる。
「とりあえず、これから対策を練る必要がありそうだね。もしかしたら、ロケット団と全面的に戦うことになるかもしれない。ジラーチがいる限り……」
「ジラーチは絶対僕が守って見せるよ!」
マサトは言った。
「ところで、1ついいかしら?」
と、コーヒーに砂糖をたっぷり入れて、ミルクをいっぱい入れた少女が言った。
その少女はあのバンギラスをビシャスから奪い取った少女だった。
「なんですか?カレンさん」
少女の名はカレンと言った。
右腕のリングがきらりと光る。
それが、クレイン所長の作った小型のスナッチマシンなのだという。
通称『スナッチリング』と言った。
「私もそのロケット団と言う組織と戦うのに協力するわ!」
「本当ですか!?」
「ええ!ダークポケモンの区別は私にしかできないわ!それにダークポケモンは本来オーレ地方のシャドーと言う組織が作り出した物なの。
それが、このカントーにいるということは、確実にロケット団の中にいるはずなの!!3年前に捕まらなかった、“ボルグ”と“ジャキラ”の2人が!
だから、そいつらは私が必ず倒すわ!それに……」
カレンは言葉を切った。
「それに……なんですか?」
「探している人がいるの」
「もしかして……幼馴染?」
「まさか、恋人とか!?」
ハルカは真剣に聞いていたのだが、ユウキがおどけて聞いた為にハルカのシリアスさが消えてしまった。
「違うわ!でも、なんだか、ほっとけない人ね。ずっと探しているのだけど、オーレ地方では見つからなかったわ」
カレンは俯いた。
とても寂しげな表情だった。
「絶対見つかりますよ!!」
「絶対なんて言いきれ……」
ユウキの言葉をハルカは張り飛ばしてとめた。
「ありがとう。ハルカちゃん」
その時、この部屋……応接間に誰かが入ってきた。しかも、それぞれ別のドアから同時にだ。
一人はスパッツで公認キャップのキュートな女の子。
でも、明らかに元気が無かった。
もう一方からは白い白衣を着た博士風の人だった。
といっても、実際博士だが。
「あ、オーキド博士!」
それぞれ一同は、オーキド博士に注目した。
「ジラーチはどうでした!?」
マサトは食らいついた。
「ジラーチなら今は寝ておるよ。それで、研究結果なんじゃが……」
皆が息を飲んでオーキド博士に注目する。
途中から入ってきた少女……ライトもオーキド博士を見る。
「まだ、詳しいことは解らん!」
全員がずっこけた。
「注目させといてそれは無いですよ!博士!」
「まぁ、そう言うなケンジ!ただ、1つだけ解ったことがあるんじゃ」
「なんですか?」
もう一度、全員がオーキド博士に注目した。
「どうやら、ジラーチはより膨大なエネルギーを受けて、目覚めたと見える」
「膨大なエネルギーって、千年彗星レベルですか?」
「いや、その約100倍はあるのじゃ」
「ひゃ、ひゃくばい!?」
「正確には111倍じゃ」
「……もしかして、だから目覚めている時間が777日なの?」
「そうかもしれん」
オーキド博士は頷いた。
「でも、千年彗星以上のエネルギーなんて存在するんですか?」
ユウキは不思議がって聞いた。
「それが問題なんじゃ。千年彗星の111倍のエネルギーなんて想像もつかないんじゃ!」
「一体どうやってそのエネルギーをロケット団は手に入れたんだろう……?」
ユウキとオーキド博士は考えた。
「そんなことより!ジラーチはこれからどうすればいいですか?」
マサトが痺れを切らして、オーキド博士に聞いた。
「う~ん、ロケット団が狙っているとなると、ジラーチのふるさと、ファウンスに戻すのは危険じゃな。トレーナーが守ってあげるのがいいじゃろう」
「じゃあ、ジラーチはやっぱり僕の手元にいた方がいいみたいだね!」
「ジラーチのところに行ってくる!」と言い残し、マサトは部屋を出て行った。
「そうなると、やっぱりロケット団と戦うのは避けられないようですね」
「そうかも……」
ユウキとハルカはこれからのことを考えると不安でいっぱいだった。
「おお!忘れるところじゃった!カレン君!」
「はい!初めまして!オーキド博士!」
カレンはお辞儀をした。
「話はトミタ君とクレイン君から聞いておる!早速、このポケモンを見てくれ!」
そういって、オーキド博士は1つのボールからあるポケモンを出した。
「このポケモンはロコンですね」
と、ユウキは言った。
「でも、なんか嫌な感じがするかも……」
「ええ!このロコン、間違い無くダークポケモンだわ!」
カレンは先ほど捕まえたバンギラスを出した。
「このバンギラスと同じく、黒いオーラが見えるもの……」
「黒いオーラ?俺には何も見えないけど……」
「ユウキ!さっき何を聞いていたの?カレンさんにしか見えないって言っていたじゃない!」
「もしかしてこの嫌な感じって……」
ライトも先ほど捕まえたポケモン、ヤミラミを出した。
「あなた……一体どこでこのダークポケモンを?」
「さっき、襲われている女性を助けようとして捕まえたの。他のポケモンと何かが違うと思って一応捕獲しておいたの」
「とりあえず、この3匹ともリライブした方がよさそうね」
カレンは懐から笛を取り出した。
「それは?」
「時の笛と呼ばれる物よ。一回使えば無くなると言われている。でも私のは特別で、使っても壊れないみたいなの。
でも、多分使いすぎると壊れると思うから、多用は避けているけど、今日は特別に使うわ!」
そう言って、カレンは時の笛を吹いた。
すると、異次元の世界から、あるポケモンがひょっこりと姿をあらわした。
そして、皆は口々にそのポケモンの名前を呼んだ。
「「「「「せ、セレビィ!?」」」」」
「セレビィじゃと!?」
当然のごとく、皆は驚く。
「セレビィ!お願い!この子達を癒してあげて!」
セレビィは頷いて3匹のまわりを飛んだ。
あっという間に黒いオーラは消え去った。
「よし、これで戻ったわ!」
「本当だ……なんか、不気味な感じが消えたわ!でも、なんでセレビィを?」
「セレビィは私の住む村では守り神みたいな存在なの。ちょっとトラブルがあってからは私に力を貸してくれるようになったの」
「そうだったんだ」
「ところで、この3匹はどうするんですか?」
カレンは聞いた。
「じゃあ、私はヤミラミを育てることにするわ!私がゲットしたんだし」
そう言ってライトはヤミラミをボールに戻した。
「バンギラスとロコンのトレーナーになる者はいないようじゃな。それじゃあ、2匹はわしが預かることにしよう」
そういって、オーキド博士はボールに戻した。
「それじゃあ、とりあえず今日はこの辺にしておこうか。エースもいないし、ヒロトさんも気絶してまだ目が覚めないし……。明日、二人がそろったら、今後について話し合おう!」
ユウキがそう仕切って、この場は解散となった。
59
―――「そうなんだ。ライトちゃんには彼氏がいるんだ。で、その子の気を引こうと今、必死なのね」―――
夜、ライトは応接間のテラスで昼下がりのことを思い出していた。ハナコとの会話である。
―――「それなら、とことんアピールしてみれば?年頃の男の子なんて、抱きついたり、キスを迫ろうとすれば、たいていはオちるものよ!」―――
―――「もちろん、それをライトは今まで何度も試みたわ。でも、キスまで行くもののそれ以上は進まない。いつもエースの意識が私からそれて別なところ行っちゃうの。
それはなんでなんだろう?私が嫌いになったから?私に飽きちゃったのかな……」―――
ライトは考えるごとに物事がマイナス思考になっていった。
―――「それじゃあ、これならどう?他の男に引っかかれば、嫌でもライトちゃんに気が向くわよ!」―――
ハナコはそう言うこともいっていた。
―――「私はエースを傷つけるような事はしたくない」―――
―――「それじゃあ、単刀直入に聞いてみたら?」―――
―――「え?」―――
―――「もしかしたら、彼は何か悩んでいるんじゃないの?」―――
「悩みか……」
ライトはポケギアを手に取り、エースに電話したのだった。
60
―――翌日。
廊下を走る者がいた。
赤い服が主の少女、ハルカだ。
ハルカは走るのをやめて、ライトの部屋の前で足を止めた。
「昨日はライトさん、元気無かったから、私が盛り上げるかも!」
昨日の夜、ハルカたちは一緒の部屋で夕食を食べた。
その時、ハルカはライトに積極的に話し掛けていたが、何を話し掛けてもライトの返事は上の空だった。
ハルカの計画は朝、元気よく話し掛けて、その勢いで仲良くなろうという作戦だった。
ハルカは思い切ってドアを開けた。
「おはよー!!」
と、ハルカは元気よく言った。
だが、ハルカの目に映ったのは、男が少女をまさに押し倒す瞬間だった。
そして、ベッドが軋んだ。
エースとライトは同時にドアの向こうを見た。
「あ……」
「…………」
「……ハルカ……ちゃん……?」
その場が一気に凍りついた。エースはライトの唇から離れた。
それから、少しの間静寂が続いた。
この間に流れる静寂とはどこか刺々しいものがあった。
最初に動いたのは、ハルカだった。
「す、すみません!邪魔しちゃったみたいで……!し、失礼します!」
ハルカは慌てて、ライトの部屋を飛び出して行った。
「…………。みんなが起きたみたいだし、そろそろ行くか」
エースは何事も無かった様に冷静にベッドから離れた。
「(……これからがいい所だったのに……)」
ライトはそう思って、がっくりと肩を落とした。
その後、朝食となったが、ハルカはじっとエースとライトを見ていた。
「あれ?お姉ちゃんどうしたの?全然箸が進んでないよ?」
いつも食べるはずのハルカを気遣ってマサトが聞いた。
「あ……なんでも無いわよ!」
「それにしても、エースさんとライトさんすごく仲がいいんだね」
「見ててこっちは腹が立ってくるな……。俺も……」
マサトとユウキが口々に言った。
ライトはスプーンをエースの口元に運んでいる。
エースもその代わりにライトの口元に運んでいる。
見ているだけで暑いバカップル振りだ。
「…………。ご馳走様……」
「え!?ハルカ!本当にどうしたんだ?!全然食べていないぞ?!」
ユウキが驚いていった。
「ちょっと、食欲無い……。散歩してくる……」
ハルカはそう言うと、庭へ出て行ってしまった。
「「ありえない!!お姉ちゃん(ハルカ)が全く食べないなんて……!!」」
ユウキとマサトが声をそろえていった。
カレンは何かを知ったようなフリをして、黙々と食べていた。
「ねぇ、エース。私のせいかな?」
「そんなことは無いと思うが?」
「(ライトさんたちっていつもあんな風にしているのかな……?)」
ハルカはボーっと山の方を見ながら考えていた。
「(最近、気になる人が多すぎるわ……。サトシにシュウ、ユウキにヒロトさん……。これってすべて恋なのかな?それともまた別な感情なのかな?一体なんだろう……この気持ち……)」
「ハルカ~♪」
「え?わっ!」
後ろからトンと押されてハルカはバランスを崩してこけてしまった。
そして、仰向けに転がった。
「いたたたた……。カレンさん?」
「ハルカ……もしかして恋の悩み?」
「え?……多分」
「多分って?」
「私にもわからないの」
「どうして?」
「気になる人が4人もいるの。でもそれが恋心かどうかはわからないの」
「そうなんだ……。それなら私も同じよ」
「え?」
「私も探している人がいる。私はその人が気になる。でも、それが恋かどうかなんてわからない。尊敬しているのかもしれないし、負けたくないライバルなのかもしれないし、
またはそれ以上の他のことかもしれない。なんてね!私が探している人はそのどれにも当てはまらないと思うけどね!」
「ライバル……尊敬か……」
ハルカは状態を起こして、そのまま立ちあがった。
「そうか……!カレンさん!アドバイス、ありがとう!」
「アドバイスって程じゃないけれど……。あ、そろそろロケット団との対策の作戦会議をやるみたいだから、行きましょう!」
「ええ!」
ハルカは元気を出して、カレンの後についていった。
61
「ヒロトさんがまだ起きないけれど、そろそろ作戦会議をはじめるよ!」
議長はユウキで執り行われた。
「一番いいのは、ロケット団の本拠地を潰すことだな」
「それが一番いいかも!」
エースの意見にハルカが乗った。
「確かに、ここで待っているよりは確実だけれど……」
「でも、どうやってそこの場所を見つけるんですか?」
ユウキとカレンが言った。
「ロケット団を見つけて、場所を吐かせるって手があるけど、そんな都合のいい話は無いしな……」
エースもロケット団の基地に関する情報は無いようだった。
誰もが案を無くしたとき、ドアが開いた。
「情報ならある!」
「あ!ヒロトさん!」
しっかりとした足取りで、ヒロトは部屋の中心に立った。
「そのことなら俺にまかせておけ!」
「本当に大丈夫なのか?」
「ああ!」
エースの問いにヒロトは答えた。
すると、ヒロトはポケナビを取り出して、電話を掛け始めた。
みんなが固唾を飲んでヒロトを見ていた。そして、ナビで言葉をいくつか交わした後、ヒロトは交信を切った。
「1日待ってくれだってさ!」
「一体どこに電話していたんですか?」
「知り合いの、一流の情報屋さ!」
「一体どこで一流ってわかるんですか?」
「自分で一流だって言ってた」
「大丈夫なんですか?その人……」
ユウキは心配になってきた。
「大丈夫だ。なんだかんだで腕も信用もある人だし」
「本当に大丈夫かな?」
マサトも不安そうだった。
「それじゃあ、基地の話は置いといて、敵の戦力ついて話を進めよう!今までどんな奴と戦ってきた?」
ユウキは話を進展させた。
「ホウエン地方のときに幹部のドミノって奴と戦ったことがある。大したことはなかったがな」
エースはさらりとそういう。
「私はロケット団に会ったのが昨日が初めてだから、ロケット団に関する情報は知らないわ。しいて言うなら、昨日の『ダークポケモンマスター』のビシャスって奴だけね」
カレンは言った。
「僕たちは、ロケット団なんてしゃべるニャースとムサシとコジロウだけの組織かと思っていた。でも、ジョウト地方やカントー地方を旅して、ロケット団の強さがよくわかったよ。
僕たちが戦ったのは、コガネシティで『鉄壁のシード』って奴だけだね。多分今は捕まっているだろうけど」
マサトの言葉にユウキとハルカが頷く。
「となると、やっぱりロケット団と一番接触しているのは俺だな」
ヒロトはそう言った。
「まず、最初に会ったのが『凶悪使いのバロン』。『高速のエド』に『逆襲のカエシ』。それにナナシマで同い年くらいの女と戦った。かなり手ごわかった。まさか、同じ年であんなに強い奴がいると思わなかったからなぁ……」
「同じ年でロケット団……そんな人いるんだ」
「あっ!忘れてた!」
ライトが急に叫んだ。
「ここに来る途中でロケット団に会ったのよ!それも、私と同じくらいの年の人に!!」
「結構いるんだね。子供でロケット団に入る人って。僕にはわからないよ」
マサトは冷たい声で言った。
「確か、男の方が目つきの悪い奴で白い髪に青い服を着ていたわ。それに私のポケモンを捕まえようとしたわ。まさか、ボールの中に入るとは思わなかったけど……」
「えっ?」
カレンが急に立ちあがった。ライトはそれにかまわず話を続けた。
「もう一人、女の方が緑のフレアスカートで白いブラウスで、ピンクのイヤリングにツインテールだったわ」
「なんだって!?」
カレンに続いて、ヒロトも立ちあがった。
「えっ!?何?」
「「それで!?その男(女)の名前は??」
カレンとヒロトの声がハモった。
「な、名前って……確か……そう、ハルキとヒカリよ!!」
第一幕 Wide World Storys
マサラタウンの集結③ ―――ポケモンスナッチャーのカレン――― 終わり