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たった一つの行路 №038

/たった一つの行路 №038

 48

 ショウとシュウはポケモンセンターで休んでいた。
 ロケット団との戦いを終えて、一眠りしたところだった。
 ショウはノビをして、時間を見た。
 ロケット団の戦いが昼頃だったとすると、現在は夕方ぐらいだろう。
 シュウはまだ眠っていた。

「結局、ヒロトたちは見つからなかったな……。どこへ行ったんだろう……?」

 その時、ショウのポケギアが突然鳴った。
 あわてて、ショウはポケギアを掴んだ。
 相手は他ならぬヒロトからだった。

「ヒロト!!どこにいるんだよ!!心配したんだぞ!!」

 ショウはヒロトに怒鳴りつける。

「悪い。ちょっとしたことがあってな……。ところで、今ポケモンセンターにいるな?」
「ああ、いるけど……?」
「ちょっと、ポケモンを送るから、受け取ってくれ」

 ショウはすぐに転送マシンを準備した。
 そして、その中から出てきたのは2つのボールだ。

「これはもしかして……?」
「そっちに行ったな?その中身はマリルリとキマワリだ。そう、ユウコさんのだ」
「これをどこで……?」
「潜入して、地下4階で派手に暴れたら、見つけたんだ」

 ヒロトは後頭部に大汗を書きながら、片言で言った。
 あの暴れ方はヒロトにとって不本意だったらしい。

「とりあえず受け取ってくれ」
「姉さんのポケモンが出てきたって事は姉さんをこんな目にした犯人は……」
「ああ、ロケット団ということで決まりだな。後の詳しいことは知らないけど……。というわけで、またな。俺はそっちに戻れないから……」
「どうして……?」
「だから言っただろ、ちょっとしたアクシデントに巻き込まれたって……」

 ショウは首を傾げつつも、ユウコのポケモンを持って、病院に向かったのだった。



 たった一つの行路 №038



 49

 時間は少し遡る。
 それは、マサトたちがジラーチでテレポートした直後のことだ。

「で。……ここはどこなの?」

 ユウキは目を点にして周りを見た。
 無理もない。
 タマムシシティの地下にいたはずなのに、突如、後ろは森、近くには見たこともない、結構賑わっている街があるところに来ているからだ。

「タマムシシティの郊外……ではないかも。こんな森はなかったし……」

 ハルカも首を傾げて言う。

「見て!ユウキ!お姉ちゃん!ヒロトさん!」

 マサトはジラーチを抱えながら、ポケナビで場所を見せた。

「ここはトキワシティの郊外だよ!!」
「えぇ!?どうして!?」

 ハルカは信じられなさそうに言った。

「これがジラーチの力というわけだな」

 ヒロトはジラーチを見た。
 ジラーチは無邪気そうにマサトの腕の中で眠っていた。

「さて、本題だが……マサト。ジラーチをどうする?このまま、一緒に旅をするというわけにはいかないぞ」
「どうして……?」
「わかっていると思うが、そいつはロケット団に狙われたんだ。つまり一緒にいれば、また、狙ってくることになる。そのまえにまず誰かに診てもらった方がいいと思う」
「…………」
「マサト、ヒロトさんの言うとおりよ。手放すか手放さないかは後で判断するとして、一度誰かに診てもらった方がいいわ」

 マサトは少し考えたのち、頷いた。

「(もう一つ問題があるんだけど、今はこれは置いておこうか……)」
「それなら、いいところがあるよ!」
「ユウキ、いい場所があるのか?」

 ヒロトはユウキを見た。

「ここから南にある、マサラタウン。そこならば、オーキド博士という有名な博士が住んでいるんだ!だから、そこに行けば……」
「そこ、サトシの出身地かも!」
「そう言えば、そうだ!」

 ハルカとマサトは声を揃えて言った。

「わかった。それじゃあ、そこに行こう。その前にトキワシティのポケモンセンターによって行かないとな。みんなのポケモンの体力が尽きているだろう」
「「「あ……」」」

 そうして、まずトキワシティのポケモンセンターへ向かったのだった。



 50

 その日の夜、ヒロトたちは野宿していた。
 トキワシティを越えて、もうすでにマサラへの道へ辿っている所での野宿だった。

「なぁ、マサト……そろそろ、寝ろよ!」

 ユウキは半ばあきらめて、マサトに言った。
 実を言うととマサトは夜になって目を覚ましたジラーチと遊んでばかりだった。

「そうよ!明日は早いのよ!」
「体力持たなくても知らないぞ!?」

 ハルカとヒロトも同時に言った。

「マサラタウンに行ったらいくらでも遊べるんだから!」
「は~い……。ジラーチ!一緒に寝よう?」
“うん!”

 マサトとジラーチは一緒の寝袋に入っていった。そして、早くも寝息を立てていた。
 ハルカはやっと寝たという感じでやれやれと首を振った。

「よっぽど嬉しかったんだな。友達に再会できたというのが……」
「うん。だって、次に会えるのは千年後って言われていたのよ。つまり、もう生きているうちには会えないって……。
 でも、こうやって2年経ってまた会えることができた……。誰でもうれしいかも!」
「…………。そうだな」

 ヒロトはそう言って黙ってしまった。

「もしかして……幼馴染みのヒカリさんのことを考えてました?」

 ヒロトはびくっと体を振るわせた。

「図星みたいですね。ヒロトさんはヒカリさんと何年会っていないんですか?」
「俺が、10歳の時からだから……6年だな……。ずいぶん経つな……」
「6年か……。私は今12歳。その6年後なんて想像出来ないな……。きっとヒロトさんもそのうち会えますよ」
「そうだといいけど……」
「誰かが言ってましたよ。どんなに貧相な人でも、想い続けていれば、3年で恋は実るって……」
「……実際6年経っているんだけど……。それに俺は貧相か……」

 ハルカの言葉にヒロトはかなりへこんだ。

「あ……気にしないでください!言葉のあやってやつですよ!とりあえず、ヒロトさんはそれだけヒカリさんを想っているんだから、きっと会えるはずです!」
「…………。そうだよな。ありがとう……」

 そう言って、ハルカの優しい言葉を聞き、ヒロトは安心して眠りに落ちていった。
 そして、ヒロトは珍しく夢を見た。その夢とは、とてもいい夢だったようだ。
 しかし、それはこれから始まる厳しい試練のための最後の休息だったのかもしれない。
 ちなみにこれは6年前に続けさまに見ていた<運命の夢>の類ではない。



 51

 トキワシティとマサラタウンの道路のことを通称1ばんどうろと呼ぶ。
 ここにはいくつかの伝説(?)がある。
 最近でもっとも有名なものといえば、1日でこの道を突破した者がいるという伝説である。
 それは、伝説のポケモンに乗って駆け抜けたとか、超高速移動を使ったとか、超速のスプリンタだとかいろいろな噂があるが、定かではない。
 そのような道を歩いて、わずか半日で半分まで来ていた。

「ちょっととばしすぎたかな……」
「とばし過ぎたどころじゃないですよ……かなり疲れました……」
「僕、もうだめ……」

 滝の近くに来たところでヒロト、ユウキ、マサトはそれぞれ倒れた。
 しかしハルカだけはなぜか元気だった。元気に水浴びをしていた。

「ところでさ……」

 ヒロトはなにやら意地悪そうな目をしていった。

「実のところを言って、ユウキはハルカが好きなのか?」
「なっ!?お、俺は……」
「前から聞こうと思っていたんだけどさ……」

 ヒロトとユウキはふとマサトを見た。ユウキは顔を少し赤くしている。

「お姉ちゃんのどこがいいの……?」
「そうだ、ユウキ。どこがいいんだ?」
「ええと……その……だって……可愛いと思うんだ……」
「どこが?」
「う……。って、ヒロトさんも答えてくださいよ!」
「ああ。俺は、普通にかわいいと思うよ。ちょっと大食いなところはあるけど、妹みたいで俺は好きだな」
「そうなんだ……。僕はお姉ちゃんのいいところなんて全然わからないや!食ってばかりだし、そして生意気だし……」
「誰が生意気だって!?」
「あ、お姉ちゃん!?」

 水で遊んでいたハルカがいつの間にか話に加わってきた。そして、マサトの言動に怒った。

「マサトぉ~!!生意気なのはあなたのほうでしょ!!」

 そして、マサトを追いかけ始めた。

「それだけ元気なら、もう出発できるな!」
「え?あ……うん!そうですね」

 立ち上がるヒロトを見てユウキはふと思う。

「ハルカが妹ってことは、マサトは弟か?」



「それでどうする……?マサラタウンに着いたら?」
「とりあえず、ジラーチを渡しに行って、その後サトシに会いにいく!」
「よし、そうしよう」

 はやくも、1番どうろの4分の3が過ぎたところだった。

「待て」
「「!?」」

 一人の男が4人の前に立ちはだかったのだ。

「お前……今、ジラーチと言わなかったか?」
「ジラーチなんて俺は一言も言ってないぞ!ましてや、持ってなんかいないぞ!」

 ハルカとヒロトが軽くユウキの頭を殴った。

「そうか……。ジラーチを渡してもらおう……」
「嫌だといったら……?」
「決まっているだろ?」

 ヒロトは相手を見た。
 一見、普通の男で、年は自分と同じぐらい。
 そして、青いバンダナにハーフパンツ。
 だが、どこか不思議な雰囲気を持つ男だった。

「…………」
「ヒロトさん!こいつは俺が引き止めますから、先にハルカたちと……」
「フライト!」

 ヒロトはユウキの話を聞かず、ポケモンを出した。

「みんな、早く乗れ!」
「え!?」
「早く!!」
「わかった!」

 フライゴンはヒロト以外の3人を乗せて、飛び立っていった。
 しかし……。

「それでは逃げ切れない」
「え?」
「きゃあ!」
「!!」

 ハルカの悲鳴が聞こえた。すると、フライゴンが不時着して、3人とも地面に投げ出された。

「大丈夫か!? ……っ!こいつは!」

 ヒロトが見たポケモンは、ドラゴンポケモンのハクリューだった。

「いたた……」
「ユウキ、わかっただろ?こいつはとてつもなく強い。しかし、フライトのスピードについてこれるとは思わなかったな……」

 フライゴンは、ヒロトのポケモンのなかでも1,2のスピードを争う。

「だから、こいつは俺が引き受けるから……マサトたちは頼む」
「わかりました」

 そして、ユウキたちは、走り去っていった。
 バンダナの男は追いかけようとするが、ヒロトが立ちふさがる。

「……邪魔するのか……?」
「お互い様だろ?」

 上空では、気を取り直したフライゴンとハクリューが激突している。
 そして、さらに男はすぐにポケモンを出してきた。
 メタグロスだ。

「(ん?この光景、夢で見た気がする!?)」

 直接ヒロトに仕掛けてきた。しかしヒロトは即座に左へかわした。

「(危なかった……コメットパンチかよ……)」

 そう思いつつも、ヒロトの左手にはボールを取り出す。
 そして、中からキノガッサが飛び出て、パンチを食らわした。
 ガンとすさまじく鈍い音がした。

「……!効いてない!?」
「その攻撃では効かない」

 キノガッサが間合いを取ったところで、今度はメタグロスが念道攻撃をした。
 サイコキネシスだ。
 キノガッサは浮かび上がり吹っ飛ばされて、地面に激突する……筈だった。

 ズガン!

「!?」

 驚いて男が見ると、キノガッサが立っていた。
 そして、その立っている足元にはくぼみができていた。

「俺のマッシュにエスパー技は効かないぜ!徹底的に受身を練習したからな!」

 受身でどうにかなる問題かはわからないが、とりあえず攻撃は効かなかった。

「次はこっちからだ!『気合パンチ』!!」
「……!『鉄壁』!!」

 拳を光らせて、一気に間合いを詰め寄った。
 間違いなくマッシュ最強の一撃がメタグロスに入った。
 メタグロスはもろにそれを受け止めた。
 足を踏ん張って受けたようだったが、すさまじい勢いで地面を削って行った。
 数メートル行ったところで何とか押しとどまった。

「…………。(まさか……これもあまり効いていない!?……戦略を変えるか……)」
「…………。(思っていたよりも、こいつ……手強いな。さすがに今の攻撃を何度も受けられない……)」

 一瞬静まりかえった。そして、一陣の風が吹いたとき、再び状況は動き出した。

「『キノコの―――」

 最初に動き出したのは、ヒロトだ。しかし、攻撃はあえなく阻まれた。
 いつの間にか、ハクリューが男の前に立って神秘の守りを張っていた。

「『冷凍ビーム』」

 一瞬の遅れが勝負の分かれ目を決める。それを知ってはいるものの、反応が遅れて、キノガッサはまともに食らってしまった。

「くっ!……あいつがいない!?」

 相手の攻撃の後、目を凝らして前を見たが、ハクリューしかいなかった。

「そこだ!」
「なっ!?」

 声は後ろからした。後ろにはなんとメタグロスに乗った男の姿があった。そして、攻撃を仕掛けようとしていた。

「マッシュ!」
「!?」

 コメットパンチをキノガッサのパンチで受け止めた。

「そいつは、ダウンしたはず……」
「俺のマッシュは心頭滅却により炎も氷も効かないんだ!!フライト!!」

 メタグロスのパンチを押しのける一方で、ヒロトはフライトに飛び乗った。

「高速移動!!」

 男は、メタグロスにライディングしながらの高速移動をしている。
 はっきり言って、そのようなことができるのはやはりレベルの高いトレーナーである。
 しかし、高速移動中にもかかわらず、フライゴンのスピードは負けてはいなかった。

「『ドラゴンクロ―』!!」

 メタグロスのスピードにぴったりくっついていって、攻撃を仕掛けた。
 攻撃はヒットした。地面へとたたきつけたつもりだったが、メタグロスは踏みとどまり止っただけだった。
 男はその衝撃で飛ばされたが、難なく着地した。一端ヒロトはフライトから降りた。

「メタグロス、つっこめ!ハクリューは『神速』!」

 両者ともすさまじいスピードで動いていく。
 メタグロスの攻撃はフライゴンにもろに決まった。
 かなりのダメージを受けたが、ダウンまでには至らない。
 そして、同じくハクリューの攻撃はキノガッサが受け止めた。そして、ヒロトは笑みを浮かべた。
 ハクリューはだんだんとスピードが遅くなっていき、そして、止まった。いや、むしろ眠ってしまった。

「(まさか、キノコの胞子?!)」
「今だ!フライト、『大文字』!!」

 大の字を描く炎タイプの大技が、放たれた。その燃えさかる炎は一直線にメタグロスと男に向かっていった。

「くっ!」

 男はメタグロスを戻して、眠っていたはずのハクリューに飛び乗った。そして、飛び上がった。

「特性の『脱皮』だ」
「これも、計算のうちだぜ!マッシュ、『スカイアッパー』!!」

 キノガッサのこの技は、空中でも当たる。
 ロケットのように上へ飛ぶこの技は、ハクリューにしっかりと命中した。

「…………。(くっ!ハクリューはダウンか……だが!)」

 ハクリューはキノガッサの攻撃で上へ吹っ飛んでいた。
 そして、さらに男はハクリューの頭から上へと飛んで、キノガッサの頭上に狙いを定めた。
 その場所で、ハクリューを戻して、別のポケモンを繰り出した。

「『メテオスマッシュ』!!」
「なにぃ!?」

 新たに出したのはバンギラス。その拳がキノガッサに入った。
 さらに男とバンギラスは狙い済ましたかのようにフライゴンの上にたたきつけた。

「なっ!?フライト、マッシュ!?」

 一気に2匹とも先頭不能になった。
 ずしんっと大きな地震を起こしながら、男を乗せてバンギラスは着地した。

「おとなしく降参しろ」

 そして、今度はロックブラストを繰り出した。

「嫌なこった!」

 ヒロトは鎌を持ったポケモンでその岩を次々と切り裂いていく。

「まだやる気か……」
「当然だろ?お前を倒すまでだ!」

 ストライク対バンギラスだ。
 ヒロトと青いバンダナ男の戦いはまだかなりの時間がかかりそうだった。



「……ヒロトさん、大丈夫かな……?」
「大丈夫さ!ヒロトさんなら負けやしない!」
「マサト、ヒロトさんを信じましょう」
「うん」

 不安な面持ちでいたマサトを二人は励ます。3人はもうマサラタウンは目の前のところまで差し掛かっていた。

「待ちなさい!!あなたたちね!?エースが言っていた繭を持っているという3人組は!!」
「「「!!!」」」

 3人の前に現れたのは、黄色の髪で白いノースリーブのシャツを着てポケモン公式のキャップを後ろに被った女の子だった。

「もうちょっとでマサラタウンなのに……」
「マサト、ユウキ……先に行って!!」
「でも……」
「ハルカ……大丈夫なのか?」
「大丈夫かも!!いくら強くても、時間稼ぎは出来るかも!!」
「わかった……」

 マサトとユウキは急いで去っていった。

「さぁ、観念しなさい!ロケット団!!」
「え?ロケット団?」

 ハルカは目を点にした。

「あなたたちがファウンスから繭を奪ったことは知っているのよ!!」
「そうなんだ……って、え~~!!??それ私たちじゃないかも!!私たちは助けたジラーチをオーキド博士に見せようとしてここにやってきただけよ!!」
「え……?じゃあ、あなた、ロケット団じゃないの?」
「違うわよ!!」
「なーんだ。じゃあ、エースにも言わないとね」
「よかった……わかってくれた……」

 なにやら、両者とも勘違いしていたらしい。

「私の名前はライト。あなたは?」
「私はハルカ。よろしく!」



 一方、マサトたちは走り続けてようやくマサラタウン内に入っていた。

「はぁ、はぁ……あそこが研究所だ!」

 マサトは研究所の風車を指差した。

「もう少しだ!……あっ!」

 マサトは玄関でほうきを掃いている人物に気づき、名前を読んだ。

「ケンジぃ~!!」

 ケンジは気づいて振り返った。

「あ!……確か、マサト?ホウエンのとき、サトシと一緒に旅をしていた……」
「そうだけど、今、ロケット団に追われているんだ!」
「ロケット団だって!?何でそんなことに?!」
「これを見て!」

 マサトはリュックの中に入れていたジラーチを取り出した。

「え!?これは……!」
「このポケモンをオーキド博士のところに見せようとしていたんだ。でも、追っ手がきたんだ」
「…………。その追っ手の特徴は?」
「青いバンダナでハーフパンツの男に帽子を被ったノースリーブの女だよ!」
「そうか。やっぱり……」

 ケンジはやっぱり……と言う顔を浮かべて深い溜息をついた。

「マサト。彼らはロケット団ではないよ。とりあえず大丈夫だから。ところで、君は?」

 ケンジはようやくマサトと一緒にいる人物に気がついた。

「俺はユウキです。マサトと一緒に旅しているんだ」
「そうか……あれ?」

 すると、突然、ケンジの近くにあったのモンスターボールのひとつから、何かが飛び出した。

「なんだ?」

 すると、姿を現したのは気持ちポケモンのラルトスだった。

“マサト……会いたかった!”
「え!?」

 ラルトスはテレパシーでマサトにそう話しかけた。
 そして、マサトに飛びついた。
 マサトはしっかりとラルトスを受け止めた。

「まさか……あのときのラルトス……!?」

 以前、ホウエン地方を旅しているときにマサトは一匹のラルトスに会った。
 そのラルトスはひどい高熱を出していた。
 でもマサトは一生懸命にラルトスを看病して、命がけでポケモンセンターまで連れて行った。
 そして、こう約束した。

―――「必ず迎えに来るから!」―――

 そして、2年の月日が流れていた。

「これはいったいどういうこと?」

 ユウキは首をかしげていった。

「このポケモンはエースがホウエン地方を旅したときに捕獲したって言ってたポケモンだよ。とりあえず、詳しい話は中に入ってからでいいね?」

 ケンジはそう促すと全員敷地内に足を踏み入れて行った。



「はぁ、はぁ……(なんなんだ……?今までで初めてだ……こんなに強い奴は……)」
「くっ……(まさか、本気で行っても押し切れないとは……)」

 この二人の戦いももう佳境に近づいていた。
 出しているのは先ほどのメタグロスとピカチュウだ。
 先ほどのバンギラスとストライクの戦いはそれぞれフーディンとイーブイを交えた乱戦になったが、結局残ったのはフーディンだけだった。
 その後、男は、クロバットを出して、フーディンを翻弄。
 フーディンの『リフレクター』をクロバットの『ブレイブバード』で破り、ダウン。
 しかし、その後ヒロトはピカチュウで巻き返して今に至る。

「行けっ!シオン!!」
「返り討ち……『コメットパンチ』」

 パンチが当たる瞬間、さらにピカチュウはスピードを上げて、メタグロスの下にもぐりこんだ。

「そこだ!!『サマーソルト』!!」

 ピカチュウは尻尾を反転して、メタグロスを上空へと飛ばそうとした。
 しかし、それは通常では不可能である。ピカチュウとメタグロスの体重差は相当のものであるからだ。
 だが、実現した。尻尾の力を最大まで引き出すことによってメタグロスを上空へと打ち上げた。
 それほどまでにピカチュウの尻尾の力が強力だったということだろう。

「メタグロス、最強の技だ。『メタリックキャノン』」
「シオン、『マルチ10万ボルト』!!3:2だ!!」

 それぞれ最強クラスの技を指示した。
 メタリックキャノンは実体化した鋼系の砲弾を打ち出す強力な技だ。
 3の10万ボルトで相殺を試みるが、威力が弱まる程度。
 そして、2の10万ボルトだけでは決定打にならなかった。
 両者ともダウンには至らない。
 だが、メタグロスは今の攻撃で痺れて動けなくなった。

「(これしかない!!)『ボルテッカー』!!」

 ピカチュウは電気を纏い、メタグロスに激突する。
 一気に電撃が放出されて、メタグロスをダウンへと導いた。
 しかし、その代償はシオンのダウンもついてきた。

「……ラスト一匹か……」
「まさか、ここまでとは……」

 そして、2人は最後のボールを構えた。
 だが……。

「…………?」
「なんだ?この歌は……?」

 それを聞いたが最後。二人の意識はどこかへといってしまった。

「やっと止まった……。まったく、エースもこの人もバトルに夢中になると人の声が聞こえないんだから……」

 その歌声とは、ライトのプクリンとチルタリスだったようだ。
 とりあえず、ライトはチルタリスたちの力を借りて、2人をオーキド研究所に搬送したという。



 第一幕 Wide World Storys
 マサラタウンの集結① ―――1ばんどうろでの激突――― 終わり


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Last-modified: 2015-01-27 (火) 20:37:28
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