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たった一つの行路 №036

/たった一つの行路 №036

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「う~ん……あれ?ここはどこ……?」

 ユウキはゆっくりと起き上がった。

「大丈夫~ユウキ!?」
「もう、何やってんの!?」
「あ……?マサト、ハルカ……2人ともゲームコーナーに来ていたのか……」
「そんな暢気なこと言っていないでまわりをよく見てよ!!」
「まわり……?げっ!どうなってんだ!?」

 ユウキはハルカに言われたとおり、周りを見た。
 すると、数十人の黒服の男、ロケット団員に囲まれていたのだ。
 しかし、ヒロト、ショウ、シュウがそれらを抑えている為に、状況は何とか保たれている。

「ユウキを追って、ここに来たらここはロケット団の秘密のアジトだったのよ!」
「え゛!?じゃあ、速く逃げ出さないと!」
「でも、そうはいかないのよ!」
「なんで?」
「実はマサトがね……」



 たった一つの行路 №036



「ジラーチ……?何だそれ?」

 ユウキは聞きなれない名前を聞いてきょとんとした。

「ポケモンだよ!なんでも願いを叶えることができると言うポケモン!」
「それが、ここにいるというのか?」
「そう、なんでここにいるかわからないけど、マサトが聞こえたんだから間違いないかも!」
「そうか……で、どこから聞こえるんだ?」
「……もっと下から聞こえてくるんだ……」
「じゃあ、下に行こう!」

 ユウキは立ち上がった。つられてハルカとマサトも立った。

「ヒロトさん!ユウキに説明終わったよ!」

 ちなみに、あらかじめマサトはハルカ以下4人にこのことを説明していた。

「じゃあ、作戦はどうする?」

 ヒロトは、キノガッサに指示を出しながら、話をしていた。

「一階ずつ、全員でしらみつぶしに探していくのはどうですか?」

 そうユウキは提案した。

「全員は無理だな。……ここを抑えるのと、先に進むメンバーに分かれよう」
「でも、ここを抑えるには全員でないと……」

 ハルカはその意見に反対しようとした。

「ふぅ~美しくないね~」

 髪の毛を掻き分けながらシュウは言った。

「ヒロト、その役……俺が買った!」
「シュウ!?ショウさん!?」
「こんな奴等、俺がぶっ飛ばしてやる」

 ショウは何気にやる気満々だ。

「ポケモンのことをなんとも思わないような奴等に僕が負けると思うかい?ハルカ君」
「む。そこまで言うなら、絶対負けないでよ!!」

 シュウの言葉になんとなくトゲを感じたハルカだったが、シュウにエールを送った。
 シュウはフッと笑みを浮かべ、バトルの方に集中した。

「じゃあ、ショウとシュウ……この場は任せた!」
“あら、あなたたち!さっきから何喋っているの!?無駄よ!ここからは逃げられないのよ!サンドパン!”

 下への階段から登ってきたちょっとえらそうな女が攻撃を仕掛けてきた。

「下へ行くにはあっちだ!ハルカ、ユウキ、マサト、行くぞ!マッシュ、『ソーラーパンチ』!!」

 全力で放ったキノガッサの攻撃は凄まじいものだった。
 ソーラービームが普通のビームなら、ソーラーパンチは対象物に当たってから弾ける攻撃である。
 キノガッサはソーラーパンチをサンドパンに当て吹っ飛ばし、その方向にいたものをすべてノックアウトさせた。
 すると階段への道が開けた。

“くっ!逃すな!!”

 しかし、団員たちが追いかける間もなく4人は下へ行き、ショウとシュウが立ちふさがった。

「ここは通さないよ!」
「俺たちを倒さない限りなっ!!」

 ショウはドンファンとエレブー。
 シュウはフライゴンとロゼリアで階段に背を向け、反撃を始めた。



 ―――B2階。

「で、ここは?」
「これは乗ると矢印の方向に進むというタッチパネルだな」

 地下二階に待っていたのは、そのような仕組みのフロアーだった。

「ということは、ここは迷路なの!?」
「俺……迷路は苦手なんだ……」

 とユウキはぼやく。

「こんなの無視して進めばいい。ディン!『サイコキネシス』!」
「へ?」

 サイコキネシスでみんなの身体を宙に浮かした。浮けば、タッチパネルなど意味が無い。
 とりあえず4人は安全に階段のあるフロアまで着地した。

「結構簡単だったかも……」
「まだのようだ」

 ヒロトはロケット団員2人を指差した。

「「俺たちは双子でロケット団!俺たちに勝てるかな!?」」
「俺は、コウ」
「俺は、ユウ」
「「二人合わせてコウユウ者です!」

 どこかの某キャラ顔負けの寒い駄洒落で、部屋の気温が10℃くらい下がった気がした。

「だ、駄洒落……?」
「寒いかも……」
「よくこんな駄洒落考えるよな……」
「ディン!『サイケ光線』!!」

 ヒロトは駄洒落攻撃を無視して攻撃した。
 だが、2人は並外れた脚力でヒロトたちの上に跳んでかわした。
 そして、ヒロトたちの後ろに着地した。

「「そんな攻撃当たらないぜ!」」
「別に当てるつもりでやったわけじゃない」

 と言いつつ、ヒロトは走り出していた。
 そして、あっという間に階段に到着した。

「「な!?しまった!!逃さないぞ!」」

 つづいて、マサト、ハルカと階段へ行った。だが、ユウキは遅れてしまった。
 双子はポケモンを出して攻撃を仕掛けてきたのだ。
 双子のポケモンは全く同じで、しかも、一直線にユウキに向かって行った。
 しかし、つるの鞭のおかげでユウキは攻撃を受けずに済んだ。
 そして、ユウキは何とか階段にたどり着いた。

「ハルカ!?」
「ここは私に任せて!あんな双子……私が倒してやるかも!」
「でも……」
「ユウキは下に出てくるかもしれない敵と戦って!」
「わかった……」

 ユウキは降りていった。

「「一人で戦うとはいい度胸だな!俺たちのコンビネーション!受けてみよ!」」
「ええ!受けて立つわ!!」

 一対二の少々不利なバトルが始まった。



 ―――B3階。

「……ここは普通のフロアーっぽいな」
「そうですね……何にもないような……。ただ、個室がいくつかありますね」
「この部屋のどこかにジラーチが……!」

 マサトはマッハなスピードで3階中の部屋のドアを開け閉めし見て回った。
 ヒロトは止めようとしたが、速くて止められず。
 その速さ、10秒足らず。
 マサトのジラーチを想う気持ちは時として異常なほどのアビリティを発揮した。

「はぁ……どこにもいないよ……」
「そ、そうか……」

 マサトの速さに2人は圧倒されながらも答えた。

「それじゃあ、もう一階下かな……?最下層の……」
「え?ユウキ、なんでそんなことわかるんだ?」

 ヒロトはビックリしてユウキを見た。

「だってそこに、チラシのようにこの基地の見取り図が置いてあるから……」
「何でそんなことを……」

 ヒロトはあきれて物も言えなかった。

「そうだな。そんなチラシは無意味すぎる!」
「!」
「なっ!」
「おまえは!?」

 三人とも声の主を知っていた。

「ほう、俺の名前を覚えているか?」
「忘れる訳ない……この前は負けかけたんだ!」
「そう……ヒロトさんがいなければどうなっていたことか……」
「ロケット団幹部。『鉄壁のシード』か」

 ヒロトは彼の肩書きを言った。

「そういう君は、ブラックリストに入っている、危険度№2のヒロトだな!まったく、よくも毎回毎回俺たちの邪魔をしてくれるものだ!」
「邪魔しているのは俺じゃなく、ロケット団のお前らだ!俺が行く所にロケット団がいて……かなり鬱陶しい!」
「ふん!よく言ってくれるぜ!これから、実験のクライマックスだって言うのに、それに立ち会えないじゃないか!」
「実験!?」
「そうだ!実験というよりも、成果の方が正しいな。あいつのやることはすべて成功している。もうすぐあの繭が孵るはずさ!ねがいごとポケモンジラーチがな!!そして、そいつを使って、世界征服の第一歩とするのだ!」
「……っ!! そんなことはさせない!! ジラーチはお前たちみたいな悪い奴等に渡すわけにはいかない!」

 マサトははっきりとした声でシードに向かって言った。

「ふん!どっちにしろ今日でお前ら3人は墓場行きだ!俺が全力で消してやる!!サマヨール!」
「ちっ!」

 ヒロトはボールに納めていたピカチュウを出そうとした。
 でも、ヒロトより、もっと早く出した者がいた。

「『サンダーインパクト』!!」

 ユウキのライボルトだ。サマヨールはライボルトの攻撃を素手で防御した。

「また『守る』か……。ヒロトさん!こいつは俺に任してください!」
「ユウキ!お前……!」
「大丈夫ですよ!俺だってマサトやハルカと同じく、前にタマムシにいたときより強くなったんだ!だから……!」
「わかった。マサト、下へ行くぞ!」

 そう言って、2人は地下4階、つまり最下層へ降りていった。

「くっ!このフロアの奴等は何しているんだ!?」

 シードは怒鳴った。
 実は、マサトがマッハスピードで開けた時、ロケット団員はいたが、全員お休み中だったという。
 しかし、シードの一喝で全員目を覚ましたようだ。その数、6人。

「お前ら!侵入者だ!地下へ行け!」

 6人は元気よく返事をして、ヒロトたちを追っていった。

「ライボルト、『10万ボルト』!!」
「無意味だ!」

 ライボルトの電撃を受けきるサマヨール。

「もっと、『10万ボルト』だ!」

 連続的に攻撃を指示するユウキ。
 しかし、サマヨールの防御能力で何とか受けきっている。
 そして、ライボルトはやがて苦しくなって放電を止めた。

「エネルギー切れだな!当然だ!サマヨールの特性『プレッシャー』の前にそうならないはずがない!終わりだ!『闇の言霊』!」
「それを待っていたんだ!ライボルト!『かみなり』!!」

 闇の言霊のチャージするわずかな時間を狙い、一気に電撃を放出した。
 闇の言霊を発動するには、ちょっとした時間が必要だった。
 前回はその時を『充電』にあてていた為にやられたのだ。

「なっ!?バカな!?サマヨールがやられるとは!」
「俺のライボルトはそんなにやわじゃない!」
「ちっ!ちょっとはやるようになったようだ。だが、まだこれからだ!」

 シードはまた新たなボールを出して言った。



 ―――B4階。

「……おかしい」
「どうしたんです?ヒロトさん?」

 ヒロトは見取り図を見て言った。

「地下四階の間取り図を見ているんだけど、今いるこの場所はその半分の広さに満たない」
「本当だ……」

 ヒロトは何気なく、壁を叩いてみた。
 すると空洞のような音がコンコンとした。

「マサト、ちょっと下がってろ」
「え?」
「フライト、『破壊光線』!!」

 ヒロトは突如、ドラゴンポケモンのフライゴンを登場させた。
 壁はその破壊光線で破壊することができた。

「やっぱり、奥にも部屋がある」
「じゃあ、そこにジラーチは……」

 しかし、そこへロケット団6人が駆けつけてきた。

“もう逃げられないぞ!”
“おとなしく観念しなさい!!”
「ヒロトさん!後ろ!まだ追ってくるよ!どうするの?」
「先に行ってろ!」
「え……でも……」
「ジラーチを救いたいんだろ?それは俺じゃなく、心を通わせたことがあるお前がやるべきことだ。そうだろ!?」
「うん……わかった!」

 そういって、マサトは走り出していった。
 ヒロトはマサトを見送ってから、6人のロケット団に突っ込んでいった。



「ここは……!」

 マサトはでっかい研究室に入った。
 そこには怪しげな機械やらがたくさん置かれていた。
 そして、中央の装置には、繭らしきものが光っていた。
 繭はジラーチの姿に変化したり戻ったりと激しい変化を繰り返していた。

「ジラーチ!」
「だれだ?俺の研究室に黙って入ってくる奴は!?」

 科学者風の男はあくびをして、マサトを見た。どうやら寝ていたようだ。

「ジラーチに何をしているんだ!?」

 マサトは啖呵をきって、科学者風の男に言った。

「何をしているって?それは決まっているだろ!?ジラーチを孵化させているのさ!ジラーチは願いを叶えることができるといわれているポケモンだ。
 その力をロケット団のために生かそうというのだ!ほら見ろ!ジラーチが繭から孵ったぞ!」

「え!?」

 マサトは装置を見た。男の言うとおり、ジラーチは繭の姿ではなく、ちゃんとしたジラーチの姿になっていた。

「本来、ジラーチは千年彗星の出る七日間しかこの姿ではいられないが、私の研究により、今から777日間、この姿を保つことができるのさ!これが俺様、ゼンタの最高傑作さ!!」
「777日間だって?」
「そうさ、その間、そいつには我々の願いを叶え続けてもらうのさ!!」
「そんなことはさせない!ロケット団の悪事なんかの為にジラーチを巻き込ませるわけには行かない!ジラーチは僕が守る!!」
「邪魔をするなら容赦しないぞ!ガルーラ!」
「……!グラエナ!」

 襲い掛かるガルーラを紙一重でかわして、グラエナを繰り出した。

「『連続パンチ』!」

 ガルーラのスピードある攻撃がマサトとグラエナの両方に繰り出される。
 マサトはグラエナに何かの指示を出しているようだが、攻撃を繰り出そうとしない。

「どうした?!俺たちを止めるんじゃなかったのか!?」
「ふっふっふ!」
「?」

 マサトはメガネを不気味に光らせて、不気味な笑みを浮かべた。

「そう、僕はお前たちを止める!」
「それじゃ、やってもらおうじゃない!『メガトンパンチ』!!」
「グラエナ!!」

 マサトは横に跳び、攻撃をかわし、グラエナは逆にガルーラに向かって行った。

「『突進』!!」

 グラエナはガルーラのパンチをかいくぐって、腹にえぐるようなタックルを食らわした。
 ガルーラは一撃で悶絶した。

「パンチのスジなら、最初の連続パンチの時点で見切っていたよ!」

 そう言って、マサトはメガネを光らせた。

「ちょっとはやるようだ!やれ!切り札のルージュラ!」
「ヤルキモノ!」

 マサトは2匹目のポケモンも繰り出した。

「『往復冷凍ビンタ!』!!」
「かわすんだ!」

 しかし、ルージュラはそれでもヤルキモノに接近し、攻撃を繰り出した。
 確実にヒットした。
 だが、ヤルキモノは右手で相手の左手を、左手で相手の右手を封じ、攻撃の手を封じ込めた。

「これで、攻撃の“手”は封じこめた!」
「甘い!『悪魔のキス』!!」

 手では攻撃できずとも、口ならできるという。
 接近しているだけあって、攻撃はかわせなかった。
 いや、かわす必要がなかったというほうが正しい。

「甘いね!『大文字』!!」

 ルージュラの攻撃を受けたのにもかかわらず、ヤルキモノは接近戦から強烈な炎攻撃を繰り出した。
 もちろんそれはヤルキモノの特性の『やる気』おかげであるが。
 そして、攻撃を受けたルージュラは慌ててその場から離れてじたばたし始めた。

「とどめだ!『シャドークロー』!!」

 黒いエネルギーを持った爪が炸裂した。
 切り札のはずのルージュラはあっけなく倒れた。

「どうだ!?切り札を倒したんだ!僕の勝ちだ!ジラーチを返してもらう!」

 そう言って、マサトはジラーチに近づこうとした。だが、ゼンタは言った。

「何か勘違いしていないか?」
「??」
「切り札の負け=俺の負けというわけではない。俺にはまだ奥の手が残っている!」
「切り札も奥の手も一緒じゃないか?」
「そんなつまらないことにこだわるな!俺のプライドにかけてお前を潰す!」
「ヤルキモノ!『ブレイククロー』でジラーチの装置を破るんだ!」

 マサトはゼンタを無視して装置を破壊しようとした。
 だが、ゼンタのだしたポケモンでそれは阻まれた。
 何かのチョップのような攻撃を繰り出され、ヤルキモノは叩きつけられた。

「なんだ!?」
「君にこの俺の最高傑作を破ることはできるかな?ふふふ……」

 そのポケモンは異状に筋力がついたムキムキのゴルダックだった。

「(なんだ……このゴルダック……絶対普通じゃない!!)」



 44

 ―――B2階。

「フシギソウ!アゲハント!?」
「「ハハハ!どうやら、ダブルバトルの経験は薄いようだね!?その程度のレベルで俺たちに勝てると思ってるのかい??」」
「やってみなきゃわからないかも!!ゴンベ!エネコ!」

 ハルカは、やられてしまったフシギソウとアゲハントを戻して、次のポケモンを投入した。

「「無駄さ!この俺たちのシンメトリー殺法は敗れないさ!!」」

 双子の出しているポケモンとは、二匹とも同じポケモンのダンバルだった。
 しかし、一回受けるダメージの量が異状に多い上、左右対称で同じ動きをするため、なかなか曲者であった。

「行くぞ!『C,A,D』!!」
「よく見てかわして!!」

 双子の内の一人、コウが指示を出すと、ダンバルは左右対称に蛇行したり、戻ったりと不規則な動きをし、最後にはエネコとゴンベに攻撃を加えた。
 エネコとゴンベは吹っ飛んだ。
 でも、まだやれるようだ。

「どうなってるの……?あんなに早く、不規則に、しかも正確に左右対称に動けるなんて……」
「さぁ、次行くぜ!『B,A,C』!!」
「(もしかして……あの二人の指示は、動くコースの指示……?それなら……) エネコ、ゴンベ!後ろから来るわよ!」

 エネコとゴンベは後ろを振り向いた。
 そして、ハルカの予想は当たっていた。
 ダンバルたちは不規則のように見えて実は規則正しく動いていた。
 Aは前から、Bは左から、そして、Cは後ろからという風に。

「「なに!?かわされた!?」」
「もう、あなたたちの攻撃は通用しないわよ!エネコ!『吹雪』よ!」

 必勝といわんばかりの攻撃でダンバルと双子に向けて攻撃を放つ。

「それなら、ユウ、あれで行くぞ!」
「わかった!兄さん!」
「『C,A,2B』!」
「『B,D,2D』!」
「(今度は数字が入った!?それに指示がバラバラ……?)」

 ダンバルたちは吹雪に押されながらも、行動に出た。
 今度はシンメトリーではなくバラバラな動きだった。
 しかし、最終的には、エネコに集中して『突進』が当たってしまった。
 エネコは2匹のダンバルに挟まれてダウンした。

「え!?なんなの……?」

 ハルカはわからず茫然とした。

「これでそのゴンベも終わりだ!!『D1,B,A1』!」
「『B,A2,C1』!」

 また、ダンバルがバラバラに動き始めた。

「……!かけるしかないわ!ゴンベ、『指を振る』!!」

 ハルカは賭けに出た。
 指を振るといえば、何が出るかわからないことで有名である。
 強力な技が出るときもあれば、全く役に立たないことがある。
 ゴンベが指を振り終えて、ゲッツもどきのポーズをしたところで技が発動した。
 指の光が消えると、ゴンベはいなかった。そして、ダンバル同士が、相打ちになってしまった。

「「なに!?」」

 しかし、まだやられてはいない。けれど、二匹ともゴンベがどこにいるかわからず混乱しているようだった。

「(どこにいるの……?)」

 ハルカもわからなかった。
 しかし、そのとき、ゴンベが落ちてきた。
 2匹のダンバルの下へと。
 そして、2匹はダウンした。
 双子は声も出せずに唖然とした。

「まさか、今のは『はねる』?はねるにしては強いかも?」

 どちらにしろ、ダウンさせたことには変わりない。

「さ、さぁ、降参しなさい!」
「「何いってんだ?!俺らの本気はここからだぞ?」」
「え!?」

 そういって、双子はまた同じポケモンを繰り出す。今度は、噴射ポケモンのテッポウオだ。

「「一発で終わらせてやろう!『ロックオン』!」」

 2匹のテッポウオは、ゴンベに狙いを定めた。

「(ロックオンは時間がかかる技……それなら……)『ソーラービーム』よ!!」

 ハルカも、時間のかかる技を指示した。ゴンベの口に光のエネルギーが溜まっていく。

「「終わりだ!『破壊光線』!」」

 2匹同時に、攻撃は放たれた。

「ゴンベ!撃って!!」

 少し遅れて、ゴンベも攻撃した。
 威力は互角のように見えた。
 しかし、やはり2対1のハンデは大きい。
 ソーラービームは押されて、やがて、ゴンベの目の前で爆発を起こした。
 爆発でゴンベは後方へ飛ばされた。

「ゴンベ!?」

 ダメージを負ったものの、まだやれるようだ。

「しぶとい……ユウ、あの技で決めるぞ!」
「わかった、兄さん!『ロックオン』だ!」

 弟のコウは再びゴンベに狙いを定めた。

「一か八かあの技で行くしかないわね……ゴンベ!行くわよ!」

 すると、ゴンベは身体に力を溜めていった。

「(最近練習した技だから上手く行かないかもしれない……でも、これにかけるわ!!)」
「ふん、何をするか知らないが、俺たちのこの最強の技で沈め!!コウ行くぞ!『スクリューブレッド』!!」
「やれ!テッポウオ!!」

 兄のテッポウオが水鉄砲をゴンベに繰り出すと、その水鉄砲に乗り、回転をしながら、ゴンベに向かって攻撃を仕掛けてきたのだ。水鉄砲の勢いで体当たりする捨て身の技である。

「(真っ向勝負……!)今よ!『ロケットずつき』!!」

 ゴンベの力を頭にのせて、一気に激突した。両者とも、力のレベルは高かった。しかし、勝負は傍から見て明らかだった。

「ゴンベ!!」

 水とタックルの融合技と単純な突進技では、明らかにテッポウオたちのほうが強かった。
 ゴンベは、捨て身タックルと水鉄砲の両方を受け、壁にめり込んでしまった。そして、気を失った。

「さて、次はお前の番だ!お前も俺たちの“有効”な攻撃であのゴンベみたくしてやる!」
「まてよ、あいつは捕まえといた方が特だと思うぜ!結構可愛いと思うんだが?」
「そう?俺は兄ちゃんみたく年下好みじゃないからな……」
「あ、そう。じゃあ、俺が捕まえて……」
「ちょっと!私はまだやれるわよ!!」
「「ん??」」

 ハルカはゴンベを戻しつつ言った。

「「一人で、この我々の本気モードに勝てるとでも!?」」
「言っておくけど、私もここから本気で行くわよ!」

 ハルカの脳裏にはあることが浮かんでいた。タマムシシティに来る途中の出来事だ。

―――「そう言えば、ヒロトさん。ヒロトさんの今の手持ちってキノガッサとピカチュウとストライクとフーディンとフライゴンで……あともう一匹って何なんですか?一度も出した事無いですよね?」―――

 ハルカはそう何気なく聞いていた。
 ポワルンも出していたことは聞いているが、今は控えにおいているのだという。
 しかし、もう一匹のポケモンの正体はなんとなくわかっていた。

―――「俺のもう一匹のポケモンか?そういえば、みんなの前では出した事ないな……」―――
―――「どうしてですか?」―――
―――「どうしてってことは無いさ。ただ俺はこう思うんだ……」―――
「切り札は最後まで取っておくもんだ!ってね!」

 そうして、ハルカはモンスターボールを取り出した。

「「生意気な!切り札だろうとなんだろうと、潰してやる!!」」
「さぁ!ステージオン!!!!」

 ボールから出てきたのをみると、美しい桜色をしたポケモンだった。そして、次の瞬間、消えた。

「「なっ!?どこへ行った!?」」
「私の子のポケモンは速いわよ!『サイケ光線』!!」

 そして、姿を消したと思われていたハルカのポケモンはなんと上から姿を現し、攻撃を命中させた。

「くっ!兄さん!もう一回あの攻撃で……あの女を狙えば!」
「仕方がない……そうするしか他に無いようだ!行け!」
「「『スクリューブレッド』!!」」

 再び、融合技が発動した。しかも今度はハルカに向けてである。

「来たわね!『サイコキネシス』よ!!」

 その桜色のポケモン……エーフィはハルカの前に立ちエスパー技を発動した。
 すると、水鉄砲がUターンし、双子に向かって飛んでいった。

「なんだと!?ぐわぁ!」

 攻撃は兄のコウに命中した。そして、彼は気絶した。

「兄さん!よくもやったな!『サイケ光線』……え!?」

 そして、指示を出そうとしたときには、目の前にいたテッポウオが飛んできた。
 エーフィはハルカの傍にいたことから、別なポケモンだったようだ。
 そして、弟のユウに命中。さらに兄のテッポウオも巻き込み、全員ノックアウトさせた。

「……2匹使うなんて卑怯だ……」
「何言ってるの?これはダブルバトルよね?だから文句言わないでほしいかも~」

 そう言って、双子に背を向けた。ハルカのもう一匹のポケモン、バシャーモは蹴りの構えをといて、落ち着いた。

「ご苦労様!エーフィ、バシャーモ!さぁ、ユウキたちを追いかけないと!」

 ハルカはエーフィたちを戻して、地下三階へと向かっていった。



 第一幕 Wide World Storys
 タマムシシティの地下② ―――ジラーチ繭奪還戦――― 終わり


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Last-modified: 2015-01-26 (月) 20:19:17
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