38
―――とある建物の地下。
ここで、ある実験が行われようとしていた。
周りには実験器具やらなにやら怪しげな薬まで様々な物が置かれてあった。
そして、白衣を着た若い科学者のような男がそこにいた。
さらにもう一人、傍に男がいた。
「できるのか?ゼンタ……」
若い科学者の男……ゼンタは軽く頷いた。
「当たり前だ!俺は天才科学者だ!俺に出来ないことは、なに一つない!!」
ゼンタは激昂し、男に食いかかった。
「お前のそのカブトプスも、私が復元してやったんだ。忘れたか!?」
「無意味なセリフだ。そんな事わからないはずがないだろ!それに確かロケットルーキーズの一人にもあの化石ポケモンを渡したんだろ?そんなことはわかってる!」
「わかっているならよろしい!お前に見せてやろう!この繭が孵る瞬間を!!」
ゼンタは傍にあったスイッチをONにした。
すると、装置から、凄まじいエネルギーが流れ出して、中心に置かれている繭に向かってのびていった。
そして、ガラスでできた装置の中にエネルギーが加わっていった。
繭は明らかに反応し始めた。
今、何かが始まろうとしていた。
たった一つの行路 №035
39
「ヒロトさんは見ないの?」
「ああ、ポケモンバトルする時は常に独りだ。タッグバトルを除けばな。それに俺はちょっと用がある」
「そう……それじゃ僕、がんばってくるよ!!」
「ああ!」
マサトはジムへと入って行った。
現在ヒロトたちがいる街はタマムシシティ。
少し前にヤマブキシティでジムリーダーを撃破し、そのままタマムシシティに到着し、すぐにマサトがジム戦を戦いたいといったためにヒロトは付き添った。
しかし、考えることがあり、ヒロトは一人になった。
それは、ヤマブキシティで別れた踊り子姉妹のことだった。
マサトと別れたヒロトは人目のつかない公園に寝転がった。
頭の中に浮かぶのはヤマブキシティで別れた踊り子姉妹、否、2人の女の子である。
ヒロトは一度溜息をつき、改めて空を見上げた。
雲が空の5割を制していた。隣りではピカチュウが寝息を立てて眠っていた。
そして、改めて彼女らの言葉を思い出した。
―――「私、あなたのことが好き!是非付き合ってくれない!?」―――
直線的な告白……それは、踊り子姉妹の妹……コトハの告白だった。
―――「え!?なんで突然……?」―――
―――「そう、恋とは突然やってくるのよ!そう、風のように!あなたは私の心を風のように奪い去っていったのよ!だから私はあなたと一緒にいたい!」―――
ヒロトはかなり戸惑っていた。
でも、彼はなんとなくそんな予感はしていた。
ヤマブキシティに行く途中に幾度も色目使いをしたり間違ったふりして豊満な胸を押し付けたりとアプローチをし続けていたからだ。
その告白に心はぐらりと動いた。
何せ目の前にいるのは、なんとも魅力的なプロポーションをした女の子なのだから。
まして、こんなに積極的に見つめられようものなら、こちらも顔を赤くならないほうがおかしい。
しかし、ヒロトはその煩悩を振り切って答えた。
―――「悪いけど……俺には好きな人がいるんだ……だから、君とは付き合えない……」―――
ヒロトははっきりと断わった。
そうすれば、彼女もわかってくれる。
そう信じていた。
―――「そう……なの……。で、でも、私は諦めないわよ!例え好きな人がいたとしても、あなたの心にいつか入り込んでやるんだから!!」―――
そう言って、元気に去っていった。
それはヤマブキシティに着いた夕方の出来事だった。
それだけだったらヒロトは何も気にせずこのまま旅を続けていただろう。
しかし、ヒロトが考え続けているのは姉のオトハのほうだった。
その日の夜中、ヒロトは眠れず、部屋を出て外に出ていた。
ちなみにこのときはヒロトは一人部屋だったので誰にも気遣うことなく、外へ出ることができた。
ところが、外に出たとき、廊下にはオトハがいた。
―――「ちょっと話してもいいですか……?」―――
そう言われ、ヒロトはオトハについていき、ポケモンセンターの外で話をした。
―――「実は、私の妹、コトハは……あなたのことが好きみたいです……」―――
―――「知っている。さっき打ち明けられた……」―――
なんとなく、ヒロトは「コトハのことをもう一度考えてください」と念押ししに来たのだろうと思っていた。
しかし、予想は裏切られた。
―――「そして、私も……あなたのことが気になって仕方がないのです」―――
ヒロトは慌てて、オトハに目をやった。
―――「あなたとここまで旅をしてきて、どういう人だかわかりました。一緒に旅している仲間ともコミュニケーションがとれ、ポケモンとも優しく接し、バトルも強い。でも、心のどこかで深い悩みを抱えている。そんな気がするのです」―――
『悩み』。それはヒロトも何だかわかっていた。
―――「多分それは、再び好意を寄せていた彼女と会った時に彼女が自分に気づいてくれるのかを心配してのことですね。そして、あなたはいつでも彼女を想っている。どんな時でも……」―――
何も言えず、ヒロトは黙っていた。
―――「こういう言葉があります。『大きすぎる愛はやがて自分をも滅ぼすことがある』。でも、そんなリスクを背負っても、一人の女性を想い続けるのはやっぱりすごいことです。私はそんなあなたが気になります」―――
ヒロトは何かを言いかけたが、オトハが制した。
―――「何も答えないで下さい。あなたの答えはわかっています。私は気持ちを伝えたかっただけです。こんな夜中に呼び出してごめんなさい」―――
そう言うとオトハは、「おやすみなさい」と頭を下げて、部屋へと戻っていった。
「う~ん……いつの間にか寝ちゃってたか」
ポケナビで時間をチェックしたが、まだ30分も経っていなかった。
立ち上がり、背伸びをして、ヒロトはピカチュウを起こした。
ピカチュウは寝ぼけながらも定位置の頭に乗った。
するとどこからか怒鳴り声が聞こえた。
ヒロトは野次馬気分でその方へ行ってみた。
すると人だかりができていて、その中心に自分と同じ年の男がいた。
そして、2人の長身の男に絡まれて、殴られていた。
周りの人に話を聞くと、ポケモンバトルに負け、その腹いせに殴りかり、返り討ちにあっているそうだ。
「(自業自得だな……。だけど……)おい、おまえらやりすぎだぞ!!」
ヒロトは見過ごせず、男たちに言った。
“何だテメェ!?やろうっていうのか!?”
「別にやる気は無い。ただ、やりすぎなんじゃないかって言ってるんだ!」
“確かにやりすぎたな……おい、そのへんにしておこうぜ!”
「こいつは許してやる。だが、俺に指図したてめえはゆるさねえ!」
そう言って、一人の男が殴りかかってきた。
しかし、顔に向けた拳は軽く回避し、足払いをかけた。
そして、間合いを取った。
“くそ!ゆるさねーぞ!”
「やるならポケモンバトル……だろ?」
“後悔するなよ?”
男はガラガラを出した。
「シオン、GO!」
ヒロトは頭の上に乗っているピカチュウをバトルに出した。
「『電撃波』!!」
「無駄だ!ガラガラ、つっこめ!」
ピカチュウの電撃がいくらすごくても、地面タイプには効果がない。
だから、ガラガラはつっこんできて、ピカチュウに骨を振り下ろした。
ピカチュウは防御できず、吹っ飛ばされた。
“地面タイプに電気タイプをぶつけてくるとは、バカだな!”
「それはどうかな?シオン、お前の力、みせてやれ!」
“ガラガラ、『骨ブーメラン』!”
持ち前のスピードで、ピカチュウは骨をかわす。
そして、タックルをかました。
さらに、返って来た骨をかわし間合いをとった。
“仕方ない。本気を出すとするか……後悔するなよ!ガラガラ!”
すると男は、なんかのアイテムをガラガラに渡した。
「……!あれは『太い骨』!?」
“こうなったガラガラは誰にも止められない!ガラガラ、『ボーンラッシュ』!!”
ガラガラは、右手に太い骨、左手には本来持っていた骨で襲い掛かった。
二刀流ならぬ二骨流である。
「シオン、かわせ!」
“無駄だ!”
右へ左へとかわすが、ガラガラの骨の振りは予想以上に速かった。
ピカチュウは左の骨を受けて後方へ飛ばされた。
「久々に強いトレーナーに会ったな……こちらも本気で行くぞ!シオン、『高速移動』!!」
“(無駄だ……俺のガラガラは近づく者すべてを叩き落す!)”
男の言うとおり、ピカチュウが近づいたところをガラガラは右の骨を振り下ろした。
しかし、それは空を切って、地面を叩いただけだった。
“な!?影分身か!?”
“違う。それはただの残像だ!”
男と一緒にいた奴は冷静に見ていた。
そして、ピカチュウは尻尾でガラガラを叩いた。
その衝撃で右に握った骨を離してしまった。
「追撃だ!『アイアンテール』!!」
尻尾をバネ代わりにし、ロケットの如くガラガラの方へ飛んでいった。
怯んでいたガラガラは、左手に持っていた普通の骨で防御した。
だが、凄まじい威力のアイアンテールに骨は耐え切れず折れて、さらに自身もダウンした。
“……なんてパワーだ……”
“ちっ!潔く引いてやるぜ!”
2人の男は去っていった。
「おい、大丈夫か?……あれ?」
「う~ん……なんとか……って?君は……!?」
2人とも、何秒か視線を交わしたあと叫んだ。
「「あ―――!!!」」
40
―――タマムシデパート正面。
「ああ、もうハルカ、やめようぜ……」
「ユウキ!もうちょっとがんばってよ!」
ユウキはたくさんの荷物を抱えていた。しかし、その荷物はすべてハルカの物である。
「なぁハルカ……。この荷物どうするんだ?こんなに持っていけないぞ!」
「大丈夫!何とかなるかも!」
「(いや、どうにもならないって……)」
「はぁ……相変わらず、美しくないね~」
気づくといつの間にか目の前に緑色の髪をした少年がいた。
「お前……誰だよ!」
ユウキは首をかしげ、少年を見た。
「……!シュウ!」
「シュウ?」
「久しぶりだね。ハルカ君」
目の前に現れたのは、ホウエン地方のグランドフェスティバルで争ったハルカのライバルの一人、シュウだった。
「なに!?また文句言いに来たの!?」
「計画も無しによく買い物ができるもんだね」
「いいのよ!私はこれで満足しているんだから!」
「ほんとに、美しくないね~」
「美しい、美しくないって……全然関係ないじゃない!!今日こそ決着をつけるわ!ユウキ、それを持って先にポケモンセンターに戻ってて!」
「え!?」
「早く!」
「わかったよ!」
ハルカに促され、ユウキはポケモンセンターに戻っていった。
そして、ハルカ対シュウのバトルが始まろうとしていた。
41
―――タマムシシティ病院。
「……酷い……一体誰がこんなことをしたんだ?」
「俺にもわからないんだ……。俺が駆けつけたときには酷い姿で気を失っていたんだ……」
ヒロトと先ほどまで殴られていた少年は病院に来ていた。といっても、ケガをしたからここに来たわけではなかった。
「それで、ユウコさんの具合は大丈夫なのか?ショウ」
ショウ、それが先ほどまでの少年の名前である。
彼には4つ違いの姉がいた。しかしその姉は今、ベッドに横たわって寝ている。
ヒロトの答えにショウは首を横に振った。
そして、ショウはユウコを起こしてみた。
ユウコは気がついて、ショウたちを見た。
「こんにちは……。ショウ君……お友達?」
「お姉ちゃん……ショウでいいよ!」
「ヒロトです。ユウコさん、昔、ノースト地方で旅をしているときに会いましたよね……?」
「…………」
ユウコは頭を抱え、思い出そうとした。
「ごめんなさい……思い出せません……」
「……そうか」
6年も経っているのだから無理は無い。
ヒロトはそう思った。
その6年とは恐ろしいものだとヒロトは悟った。
当時ユウコは14歳でいたいけな少女という感じだったが、今は男たちを釘付けにする様なスタイルを持った女性へと変貌していた。
「じゃあ、お姉ちゃん。俺たちは外に出てくるから、無理しないで寝ていてね」
「はい」と返事をすると、ユウコは再びベッドに横になった。
ヒロトたちは病院の外へと出た。
「わかっただろ?」
「ああ、酷いケガだった。それにあちらこちらに火傷や痣が見えた」
「ヒロト……それだけなの?」
「え?」
ヒロトは首を傾げた。
「お姉ちゃん、最初に気がついたとき、俺のことを思い出せなかったんだよ」
「まさか……記憶喪失!?」
「そうなんだ……」
ヒロトはなんて言葉をかけたらいいかわからなかった。そして、黙っていたときショウは言った。
「お姉ちゃんがこんな風になる直前、ちょっとしたことでケンカをしたんだ。そして、俺がお姉ちゃんとは旅をしないと言って、別れたんだ。もし俺があんなことを言わなければこんなことにはならなかったんだ……」
「ショウ……」
「俺はお姉ちゃんをこんな姿にした奴を許せない!絶対に捕まえてやる!……それが俺のできる罪滅ぼしさ……」
ショウの目には復讐の炎が灯していた。
「そうだな……俺も力を貸してやるか……」
「え?」
「まぁ、犯人を捕まえるくらい協力してやるさ」
「ありがとうヒロト!」
「そう、乗りそこねた船さ!」
ショウはヒロトの手を握り必死でお礼を言っていた。
「ヒロト、それを言うなら、乗りかかった船じゃないか?」
「あ」
42
「やった!レインボーバッジゲットだ!」
マサトは意気揚々とタマムシジムを後にしていた。そして、街中を歩いていた。
マサトのバッジは現在、ピンクバッジ、ゴールドバッジ、レインボーバッジの3つである。
ちなみにヒロトはオレンジバッジを加えて4つ持っていた。
「さて、ポケモンセンターに戻ろうか……」
しかし、ふとマサトは足を止めた。
「え?」
慌ててマサトは後ろを振り返った。でも、見えるのは流れ行く人ごみのみであった。
「……? 誰だろう……誰か僕のことを呼んだような気がする……?」
もう一度マサトは周りを見渡してみた。やはり何もいない。
「おかしいな……」
“……タスケテ……”
「え?」
でも今度ははっきり聞こえていた。
「この声は……聞き覚えがあるような?多分あっちだ!!」
マサトは急いで駆け出していった。
「エネコ!『吹雪』!!」
「ロゼリア、『花びらの舞』!!」
広い広場でシュウとハルカはバトルをしていた。
そして、実力は互角のようである。
「なかなかやるじゃないかハルカ君!」
「そっちこそ!でも私は負けないんだから!エネコ、『体当たり』!」
「(でも君の弱点はわかっている)……『しびれ粉』!!」
ロゼリアに近づいていたエネコはまんまと痺れ粉を浴びてしまった。
「まだよ!『癒しの鈴』!」
「そこが狙い目だ!『マジカルリーフ』!」
シュウの戦略はなかなか鋭い。回復をしているところへ攻撃した。
「『ネコの手』!!」
しかし、エネコの切り返しは速かった。
すぐ回復をしたかと思うと次の瞬間にはネコの手を発動していた。
しかも繰り出した技は『炎の渦』である。
マジカルリーフを巻き込み、ロゼリアに相当のダメージを与えた。
「ロゼリア、『光合成』!」
「とどめよ!『捨て身タックル』!!」
ハルカの指示とシュウの指示はほぼ同時だ。
しかしエネコの攻撃は接近戦だった為、回復してからの攻撃となってしまった。
つまり、まだロゼリアは戦える。
「決まったと思ったのに……」
「残念だが、今一歩遅かったようだね」
「勝負はこれからね!……あ、マサト!!」
勝負しているところへマサトが急いだ様子で横切っていった。
「ちょっと、マサト!どうしたのよ!」
しかし、マサトは返事をせずに通り過ぎていった。
「どうしたのかしら……?ごめんシュウ、勝負はまたあとでね!」
ハルカはエネコを戻して急いでマサトを追いかけていった。
「勝負はまたあとでって……君が先に仕掛けてきたのではないか……」
シュウは少し考えたあと、ハルカのあとを追っていった。
―――タマムシシティ病院前。
「とりあえず、ユウコさんの記憶を取り戻した方がいいんじゃないか?」
「でも、記憶喪失を治す方法なんて……」
ショウは落ち込んで答えた。
「一つは何も考えていないときにふと思い出す場合があるみたいだ」
「じゃあ、今の場合がいいということ?」
「もう一つは、記憶喪失になったきっかけをもう一回再現するという場合だけど……」
「ヒロト!お姉ちゃんをもう一度あんな目に遭わすということか!!??」
当然、ショウは怒った。
「そんなことは当然しないって!!あくまで可能性のことを考えているだけだ!落ち着けって!時にショウ、ユウコさんのポケモンは?」
「そう言えば……どこにも見当たらなかったんだ……」
「ポケモンといれば、何かと和んで思い出せると思ったんだけど……」
「お姉ちゃんは、キマワリとマリルリを持っているよ」
「そうか。とりあえず、その2匹のボールも捜したほうがいいな……ん?あれは?」
「どうした?ヒロト……?」
ヒロトはなにやら慌てた様子で走っていくマサトを見た。
「どうしたんだ……マサトの奴……?」
「知り合いか?」
「ああ。今一緒に旅している奴なんだが……」
「ヒロトさん!」
そこへ、ハルカがやってきた。
「どうしたんだ?慌てちゃって」
「マサトの様子がおかしかったから、追いかけてたの。マサトはどこ?」
「マサトならそこに……」
とヒロトは指を差した。マサトは何かの建物に入っていった。
「あそこね!」
「どうやら、嫌なにおいがするな……ショウ、犯人探しはちょっと待っててくれ」
そういって、ヒロトもハルカ同様、マサトの後を追っていった。
「あ、ちょっと待てって!」
そのヒロトをショウは追っていった。
「ん?あそこはタマムシシティのゲームコーナー。なんかあまりいい予感はしないな……」
シュウもハルカたちがその建物に入るのを確認して追っていた。
「やった……スリーセブンだ!今日はついてるなぁ♪これで20回目だぜ!」
ポケモンセンターに戻っていたはずのユウキはなぜかここにいた。
しかも、すごく当たっているようだ。
「さて、そろそろ、コインを何かに換金しようかな?」
そうして、カウンターにコインを持っていった。
「すみません、これを何かに換金してくだ“さいっ”♪」
と、“さいっ”と言った際にカウンターにドンッとおいた。
しかし、それがまずかった。拍子にコインが一枚落ちて転がっていった。
「あ!俺のコイン!」
ユウキは慌ててコインを追っていった。
コインはコロコロと止まらずに裏の方まで行って止まった。
止まった所を狙って取ろうと思ったとき、何かにぶつかった。
ユウキは下だけを向いていて前に人がいることに気づかなかった。
そして、秘密の階段みたいなものをぶつかった男と一緒に転がっていき、地下みたいな所へついて止まった。
ユウキが覚えているのはそこまでだった。
しかも、そのぶつかった男は黒服で“R”のシンボルを胸につけていたという。
第一幕 Wide World Storys
タマムシシティの地下① ―――聞き覚えのある声――― 終わり