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たった一つの行路 №034

/たった一つの行路 №034

 俺はノースト大会を優勝し、ネールに行き先を任せて、旅に出た。
 船に乗り、道に迷いの連続だった。
 そして、俺はホウエン地方に行きついた。
 ポケモンバトルは何度も負けもしたし、様々な人にも出会った。
 そのおかげで、女の子とうまく接することができないという弱点も少しずつ改善していくことができた。
 その甲斐もあって、俺はホウエン大会に出場し、優勝することができた。
 その次に訪れたのはジョウト地方だった。
 そこでも俺は大会に出ようと必死にジムバッジを集めをした。
 だが、俺が行くとこなすとこロケット団がいて困った。
 そのたびに俺は蹴散らして行った。
 そんなこともあったが結局ジョウト大会も優勝した。
 俺の今度の目的地はカントー地方だった。
 このときまでにヒカリと会えなかっただけに、俺はよりいっそう期待に胸を膨らませ、トージョーの滝を進んでいた。
 だが、そこに現れたのがノースト地方で因縁を持った幹部のバロンだった。
 以前、俺に邪魔された恨みだと言って襲い掛かってきた。
 俺は対抗しようとしたが、バロンのいきなりの不意打ちに対抗できず、バトルも劣勢のまま、俺は大ケガをして、滝へと落ちて行った。


 そして、俺は滝の下で倒れていたところを、ナックラーと一人の未亡人に助けられたらしい。



 たった一つの行路 №034



“ピカカー!!”

 ピカチュウが崖先で叫んだ。主人が落ちてしまって自分の力ではどうにもならないことは分かっていた。

「へっ!弱々やなっ!」

 ロケット団幹部のエドはセリフを吐き捨てた。
 そして、ジュカインとスターミーを戻そうとしたそのときだった。
 一匹のドラゴンポケモンが崖の下から飛び出し上空へと舞い上がった。
 その背中には、さっき落としたはずのトレーナーが乗っていた。

「しぶといやっちゃな!」

 そのドラゴンポケモン、フライゴンは上昇したスピードで下降した。
 その勢いで、乗っていたトレーナーはフライゴンから投げ出されて、地面を滑って行った。
 フライゴンは進化したてで、まだスピードの制御ができなかったようだった。

「いたたたた……。もうちょっと制御してくれ……フライト……。(そう言えば、こんな夢……あったような気がする……)」

 そんなヒロトをフライゴンは暢気そうに笑顔で答えた。

「けっ!何度やっても同じや!やれ!ジュカイン、『リーフブレード』!!スターミー、『捨て身タックル』!!」

 コガネ弁で気の短いエドは速攻で攻撃を仕掛けた。

「それはどうかな!?シオン!!」
“ピッカ♪”

 シオンことピカチュウは呼ばれてすぐさま、ヒロトの前に立った。
 ヒロトは記憶喪失でポケモンのニックネームも忘れていた為に、名前で呼ぶことはなかった。
 そのため、ピカチュウは名前で呼ばれたことがとてもうれしかった。
 すぐに攻撃を指示しようと試みたが、ジュカインとスターミーのスピードは並みのレベルを超えていた。
 そのため、ヒロトたちはまず間合いを取る事が先決だった。

「逃げても無駄や!」
「(切り返しが速い!なら……)」

 ヒロトはピカチュウ以外にもう一匹ポケモンを出した。
 そのポケモンは緑色でまるでカマキリのようで羽を持っていた。

「スピードで勝負だ!シオン、フロル、迎え撃て!」
「(ワイにスピードで勝負を仕掛けるだやと!?この“高速のエド”と呼ばれたワイに……)」

 ジュカインがリーフブレードでヒロトを切りつけようとするが、フロルが鎌で受け止める。
 そこからつばぜり合いが始まった。
 一方シオンは尻尾を光らせ、スターミーの攻撃を弾き飛ばした。『アイアンテール』だ。

「シオン、『10万ボルト』だ!!」

 ピカチュウは素早く切り返し、スターミーを吹っ飛ばした次の瞬間にはもうヒロトの指示を待っていた。
 ヒロトの指示に従って、10万ボルトをスターミーに叩き込み、気絶させた。

「ちっ、役立たずめ!!」
「シオン、ジュカインに『電光石火』!」

 エドはスターミーを戻すのに気を取られ、ジュカインのことがおろそかになっていた。
 ピカチュウが突っ込み、ジュカインは多少なりダメージを受けた。

「この野郎!!ジュカイン!生意気なピカチュウに『リーフブレード』!!」
「フロル、『かまいたち』!!」

 フロルの鎌から風の刃が放たれ、ジュカインを切りつけた。
 ジュカインはこれに怯み、ピカチュウへの攻撃を止めてしまった。

「『銀色の風』!!」

 そして、最後の攻撃が決まり、ジュカインは吹っ飛ばされ気絶した。

「なめやがって!!」

 エドは2匹を戻しながら次のポケモンのボールをつかんだ。

「エド様、俺に任せてください!!ポリゴン、オニゴーリ、やれ!!」
「ネール、フライト!!」

 ヒロトはピカチュウとストライクを戻し、代わりに傍にいたフライゴンとポワルンを前に出した。

「フライゴンは氷が弱点だろ!?そんなのわかってんだぜ!!オニゴーリ、フライゴンに『冷凍ビーム』!!ポリゴン、ポワルンに『電磁砲』!!」
「フライゴン、『電磁砲』を受け止めて『火炎放射』!!ネールは『にほんばれ』!!」

 ポワルンが天候を晴れにしたおかげで、フライゴンの炎の威力が上がり、オニゴーリの冷凍ビームを押し切った。
 しかも、ポワルンへ撃った電磁砲はフライゴンがブロックした。
 地面タイプのフライゴンに電気技は無意味だった。

「今度はこっちからだ!フライト、『破壊光線』!ネール、『ウェザーボール』!」
「ンニャロ!ポリゴン、『トライアタック』!!オニゴーリ、『絶対零度』!!」

 だが、オニゴーリの絶対零度は放つことはなかった。
 その前にポワルンの炎属性のウェザーボールが炸裂したからだ。当然の如くダウンした。
 しかも、フライゴンがポリゴンの攻撃を押し切り、一気に勝負を決めた。
 ポリゴンはバリーを道連れにして海まで吹っ飛んだ。

「まだやるか!?」

 ヒロトはフライゴンとポワルンを戻し、エドを睨みつけた。

「(この任務しくじるわけにはいかへんのや!)テッカニン!!」

 エドは再び、テッカニンを出した。

「こいつでお前を八つ裂きにしてやる!!」
「まだやるか……。(しかも、こいつはさっきのテッカニン……。厄介な奴だ。なら……)シオン!!」

 ヒロトも再び、ピカチュウを出した。

「テッカニン、ピカチュウなんかに構うな!!動き回りあいつだけを狙って攻撃しろ!」
「シオン、『高速移動』であいつの動きについていけ!」

 テッカニンはやはり速かった。
 だが、シオンの高速移動のスピードでテッカニンの後ろについて行った。
 テッカニンが攻撃も仕掛けるものの、ヒロトは確実にかわしていた。

「シオン、そのまま『スピードスター』!!」
「(いったいこいつ何者や!?崖から落ちる前と別人や!!)テッカニン、本気のスピードを見せたれ!」

 ピカチュウは自分の毛をむしりとってそれを吹き飛ばして攻撃する。
 それは星となってテッカニンを襲う。
 だが、かわされた。
 さらにテッカニンがスピードを上げたのだ。そして、テッカニンは見えなくなった。

「テッカニンの特性『加速』!所詮ピカチュウ如きがスピードで勝てるわけがないんや!!」
「シオン!そのままのスピードで走りまわれ!!」
「無駄や!ワイのテッカニンは最強や! ……!? なんや!?」

 だが、徐々にテッカニンのスピードは遅くなっていった。
 そして、テッカニンが見えるようになるにはそう時間がかからなかった。

「一体何をしたんや!?」
「『高速移動』をしながらの『電磁波』……名付けて、『電磁線』だ。高速のスピードで動きながら弱い電気を放つことにより電気の糸を引くことができる。
 それは数秒で消えるが、動く範囲が広く、かつ、スピードが速いテッカニンなら確実に電気の糸にかかる。そういうことだ!」
「それがどうした!あいつに『燕返し』!」
「シオン、『電撃波』!!」

 攻撃は最大の防御。エドは撹乱を止めさせ、ヒロトに攻撃させた。
 でも、それはシオンの絶対精度を誇る攻撃、『電撃波』によって阻止された。
 ちなみにシオンの『電撃波』は昔はただの集束された電撃であったが、今のシオンの電撃波はさらに集束、圧縮され、レーザーのような攻撃だった。
 簡単に言えば、威力も命中率も上がったということだ。

「マルマイン!『かみなり』をぶちかますんや!!」

 さらにエドは新たなポケモンを投入する。ボールのようなポケモン。
 よくモンスターボールなんかに間違われるポケモンだ。

「シオン、『10万ボルト』!」

 かみなりと10万ボルトがぶつかり相殺した。その際に爆発が起こった。

「マルマイン、『影分身』や!」

 爆発に乗じて、マルマインは地面上に大量のマルマインを発生させた。

「シオン、こっちに来い!フライト!『地震』だ!」

 ヒロトはピカチュウを頭に乗せて、フライゴンに乗り飛び上がった。
 そして、地面をたたきつけ、揺れを起こした。
 地面にいるはずのマルマインは当然効果が抜群であるはずである。
 ただ、まだ爆発の影響があるために状況は確認できないが。

「……!フライト、後ろだ!『ドラゴンクロー』!」

 煙にまぎれて、マルマインが飛んで来た。
 フライトは迎え撃とうとするが、別の方向から何かに体当りされフライトはバランスを崩した。

「何だ!?」

 それから連続で5回の体当りを受け続けた。
 フライトはかろうじて急所は外しているものの、スピードの速い連続攻撃を受け続け、体力を削られていた。
 そして、ヒロトは煙が晴れたのを見て驚いた。

「一体どうなっているんだ!?」

 そこにはクロバットに掴まり、フライトの地震を回避したエドと電気を応用して浮遊している6匹のマルマインがいた。

「どうだ!これがワイのマルマインの奥義『ヘキサグラム』や!6匹のマルマインがあんたを襲うで!マルマイン、『かみなり』や!!」

 6匹すべてから放たれる『かみなり』は凄まじい電撃を生み出した。それはフライトに直撃した。だが、エドは忘れていた。

「あぶねぇ~」

 ヒロトはフライゴンから降り、フライゴンの下に隠れてかみなりを防いだ。
 いくら強力な電撃攻撃とは言え、地面タイプのフライトには何の効果も得られなかった。

「せっかちなのが裏目に来たな!」
「それがなんや!マルマイン、『体当り』!」
「それにその技には決定的な弱点があるぜ!フライト、全力で『砂嵐』!!」

 フライゴンは周りにあった砂を全て巻き上げた。
 すると回りの視界はすべて遮られた。さらに巻き上がっているのは砂だけ出なく、岩も混じっている。
 フライトに攻撃を仕掛けようとするマルマインたちは岩とぶつかった衝撃でダメージを受けていき、消滅した。
 すると残ったのは一匹のマルマインだった。

「そいつが本体だ!フライト、そいつをつかんで『地震』!!」

 フライゴンは砂嵐をやめ、マルマインを掴んだ。
 そして、のしかかるようにして地面へとたたきつけた。
 たたきつけた影響で地震もおこし、マルマインへのダメージは強大だった。
 だが、エドはニヤリとした。

「(あんたの負けや!そいつは、体力が0になると絶対『大爆発』をおこすように指示してあるんや!ワイの勝ちや!)」

 そう思った瞬間、エドは何かを受け止めた。それは、よく見ると自分のマルマインだった。
 フライゴンが地震をしたあと『ドラゴンクロー』でエドの方へ飛ばしたらしい。

「マルマインを返したぜ!」

 エドが慌ててボールを出した時にはときすでに遅し。マルマインは強大な爆発をおこし、掴まっていたクロバットごと遠く彼方へと吹っ飛ばしてしまった。

「ごくろうさん!フライト!シオン!」

 するとピカチュウは頭から飛び降りてヒロトの腕へと飛び込んだ。フライゴンも同じ様に飛び込もうとする。

「うわ!ちょっと待てフライ―――」

 フライゴンに弾き飛ばされて、ヒロトは気絶した。
 フライゴンはビブラーバの時とは違って、進化した事により、体が大きくなっていることをまだ実感していなかった。
 慌てて、主人に駆け寄ったのだった。

「う~……あいつらは……?」

 シゲルがようやく覚醒した。爆発の影響で打ちつけた体をかばいながら立ち上がり、周りを見た。

「なんだ?この地形の荒れようは。あちこちの岩石が割れている。ロケット団はもういないみたいだ……」
「シゲルぅ~!」

 遠くから、フルーラが来て、シゲルに飛びついた。シゲルは慌てて彼女を受け止めた。

「よかった……無事で」
「ああ、それよりも彼を助けないと!」

 シゲルはホロが倒れているのを見つけた。
 その隣りでは必死にフライゴンが呼びかけていたのであった。



 ―――数日後。
 フルーラの奏でる笛の音が島中に響き渡った。
 ロケット団によって襲われたものの、被害がなかったために、お祭は1日遅れで進められた。
 ヒロトは港にいた。船長さんが運転する船に乗るところだった。
 ヒロトの服装は来た時と変わっていた。
 灰色のジーパンに上は腹に包帯を巻き、半袖の黄色いシャツを羽織っているだけだった。
 そして、頭の上には相変わらずピカチュウがいた。

「ちょっと待て!」

 後ろから声がした。そこにはフルーラの恋人、シゲルの姿があった。

「ホロ……君は何か隠していないか!?」
「…………」

 ヒロトはシゲルたちに何も話していなかった。
 自分がロケット団を追い払ったことも、自分が記憶を取り戻したことも……。

「どうして話してくれない!?」
「…………」
「わかった。ホロ、僕とバトルしないか!?」
「え?」
「僕が勝ったらすべて話してもらうよ!」
「……わかった」

 バトルを断わる気になれなかったヒロトはそのままバトルを受けた。

「3対3のシングルバトル。それでいいね!?」
「ああ!」
「ちなみに今はポケモン研究者だけれどもこれでも一応ポケモンリーグに出ていたんだ」
「そう」

 ヒロトは関心がなさそうに受け流した。

「言っておくけど、」
「なんだい?」
「俺は負けない!」

 そう言ってヒロトはストライクを出した。

「ブラッキー!」

 シゲルはあえて相性の悪いポケモンを選んだ。

「わざとか?」
「バトルは相性だけでは決まらない。そう僕に言ったライバルがいるんだよ」
「確かに。……それじゃいくぞ!フロル、『銀色の風』!」

 跳ねを羽ばたかせ、綺麗な色の風をブラッキーに叩き込んだ。その一撃でブラッキーは後方へと飛ばされた。

「ブラッキー!?まさかこれほどの威力とは……。でも、まだ倒れないよ!『電光石火』!」
「受け止めろ!」

 ブラッキー渾身の攻撃はいとも簡単に釜で抑えられた。

「そのまま、『いあいぎり』!」

 わずか2回の攻撃でブラッキーはダウンした。

「な!?まさか僕のブラッキーが2回の攻撃でやられるとは……。それじゃあ次はカメックス!」
「じゃあ、俺はこいつだ!」

 シゲルが出したのはカメックス。そして、ヒロトが出したのは格闘ポケモンであるキノガッサだった。

「『ハイドロポンプ』だ!」
「まず、間合いを詰めろ!」

 凄まじい水流が襲い掛かる。
 キノガッサは何とか避けることが出来た。カメックスがキノガッサが避けることを想定して狙いを修正したにもかかわらずである。
 そしてすぐにキノガッサはカメックスの正面に出た。

「『スカイアッパー』!」

 真正面、そしてゼロ距離にいてはハイドロポンプは使えなかった。
 キノガッサのアッパーはカメックスの顎にクリーンヒットし怯ませた。
 だが、その攻撃からカメックスは負けじとハイドロポンプを発射し、キノガッサを吹っ飛ばした。
 キノガッサは何とか着地し、態勢を整えた。

「『キノコの胞子』!」
「『高速スピン』だ!」

 カメックスはキノコの胞子をものともせず、キノガッサに向かっていき攻撃を与えた。

「もう一度、『キノコの胞子』だ!」
「何度やっても同じだ!『高速スピン』!」

 キノコの胞子が高速スピンによって起こる風によって避けていき、カメックスにかかる気配はまるでない。そして、またスピンがキノガッサにヒットした。

「これで決めろ!『気合パンチ』だ!」
「……!それなら『ハイドロポンプ』で吹っ飛ばせ……!?何!?」

 カメックスは痺れて動けなかった。
 そうしている間にも、キノガッサの攻撃はカメックスの顔面にヒットした。
 カメックスは目を回して倒れた。

「なるほど……キノガッサの特性『胞子』でマヒさせたのか。ホロ……強いな」
「マッシュもどれ!それじゃあ、俺の最後のポケモンはシオンで!」

 自分の名を呼ばれて、ピカチュウはヒロトの頭の上から飛び降りた。

「それじゃ、僕はこいつだ!」

 モンスターボールから出てきたポケモン、それはヒロトが今まで化石でしか見たことがないポケモンだった。

「こいつは!?」
「この前、復元させたのさ!名前をプテラ。懐かせるまでに苦労したよ。今ではこうやって外へも持ち出しているんだ」
「(……プテラ……。そう言えば、その大群に襲われて、俺がギャラドスから落ちると言う夢も前に見たけど、あれも実現するのかな?……なんか嫌だな……)」
「プテラ、『つばさでうつ』!」
「あ!シオン!」

 ヒロトはすっかり思索に入ってしまって、バトルを忘れそうになるところだった。
 プテラがピカチュウに襲いかかるが、なんてことはなくピカチュウは軽く攻撃をかわした。

「『10万ボルト』だ!」

 今度は攻撃に転じた。だが、プテラも軽く攻撃をかわした。

「プテラ、もう一度、『つばさで打つ』攻撃!」
「(あれ?もしかしてあのプテラ……!)シオン、プテラに飛び乗れ!」

 プテラが接近した時を狙って、ピカチュウは一気にプテラの背中に飛び乗った。

「今だ!『10万ボルト』!」
「ピカチュウを振り落とせ!」

 ピカチュウは一気に電気を放電した。
 それでプテラにダメージを与えることに成功した。
 だが、プテラをしぶとく、ピカチュウを上空へと放り投げた。

「そのまま、『捨て身タックル』だ!」

 ピカチュウには抵抗する術がなかった。

「(やっぱり打撃技しか覚えていないみたいだ)シオン、そのまま回転して、『エレキテール』だ!」

 尻尾に電気を伝わせるこの攻撃はプテラの額に命中し、炸裂した。
 その一撃で勝負は決まった。



「悪いな。俺はもうそろそろここを出る」
「何処に行くんだい?」
「ナナシマに行く。さっき昔会った占いの婆さんに言われたのさ」
「へぇ……婆さんにね」
「じゃあ!」

 そうヒロトはシゲルに言い残してアーシア島を後にしたのだった。

「……。不思議なトレーナーだったな……。……?!あれ?さっき“昔会った婆さん”って言わなかったか?ホロ、記憶が戻ったのか……?」

 そんな疑問をもちながらも、シゲルは彼が乗る船を見送った。



 37

 ―――ピース16年。
 話は現在に戻る。

「(ナックラーに出会えたのはミユキさんのおかげで、フライゴンに進化したのはあのアーシア島だったな)」

 いつの間にかベッドで横になっていたと気づき上体を起こす。

「(ナナシマでもキワメ婆さんに技を教えてもらったり、灯山で修行をしたり、7の島でタイムアタックをしたり、ロケット団と戦ったこともあったな……。そういえば、同じくらいの年の女の子もいたけど、あの子はどうしているだろうか)」

 ふと、5の島でロケット団と交戦した時のことを思い出していた。
 詳しい理由を彼は忘れていたが、ロケット団と戦わなくてはいけなくなり、基地に潜入した。
 下っ端は楽に倒すことはできたのだが、そのリーダーの少女の実力は相当なものだった。
 実際、修行を終えたヒロトですら、ほぼ互角だったのだから。

「(…………。考えても仕方がないか。しかし、ロケット団……いずれは存亡をかけて戦わなければならなくなるかな……)」

 不安が過ったが、ヒロトはそのまま再び眠りに落ちて行った。
 マサトからヤマブキシティのジム戦に誘われるまで、ぐっすり眠ったのだという。



 第一幕 Wide World Storys
 アーシア島の思い出(後編) 終わり


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Last-modified: 2015-01-25 (日) 17:02:30
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