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たった一つの行路 №031

/たった一つの行路 №031


 29

―――「(熱い……)」―――

 あまりの暑さに目を覚ました。
 眠りから覚めるとそこは恐怖しかなかった。
 目に映るのは全てを消し去る火の渦。
 目前に迫る炎の壁が襲い掛かり死へと誘う。
 炎から逃れようと必死に逃げるけれども、けして炎は逃しはしない。
 必死で家の外へ出て助けを乞う。

―――「(誰か……誰か……パパとママとお兄ちゃんを助けて!)」―――

 でも、視界に入ってくるのは不敵な笑みを浮かべて立ち去ろうとする大人たち。
 しかも警察服を着た連中だった。やがて、火の熱さと煙で気を失っていった……。



 たった一つの行路 №031



「パパぁ!ママぁ!…………はっ!!」

 がばっと勢いよく飛び起きた。
 ハァハァと息を切らせながら自分が凄い汗をかいていたことに、初めて気がついた。

「またあの夢を見るなんて……」

 この夢は彼女の悪夢だった。
 その悪夢の後味の悪さを引きずりながら、彼女は着替えをして寝袋をたたんだ。
 そして、肩まで達していない髪を整えて、ワンピースにズボンと着替え、そして、家族の形見のペンダントを腕には兄のブレスレットをつけた。
 そして、自分で決めた集合場所に行った。



「あんたにしては珍しく遅いな。具合でも悪いのか?」
「あなたが気を使うのも珍しいと思うけど?」

 どこか寂しげで無愛想な少年の言葉をいつもの調子で彼女は返事をした。

「ところでラグナとヒカリは?」

 彼女の指定した場所には2人しかいない。
 集合場所に全員集合しているはずだった。でも、2人足りない。

「あんたが来ないからどっかに行った。ヒカリはそこら辺を散歩してくるって。ラグナは知らないけど」
「そう……この森は深いから迷わなければいいけど」

 彼女らが来ている森と言うのは、昼でも暗いと言われる場所、カントー地方のトキワの森だった。

「またあの夢を見たわ」
「……家族を失った時の夢か?」
「ええ」
「俺にはわからないな。俺は物心がついたころから一人だった。だから、家族がどうとかそういうのには興味がない」
「そうね。あなたはいつでも一人だわ。でも私は目の前で家を燃やされて私以外の家族全員が死んでしまったの。その場に居合わせた警察たちによってね!!」
「…………」
「信じられる!?治安を守るはずの警察が、平気でこんなことをやっているのよ!私は現在の警察を絶対に壊滅させるわ!」
「そうか……。でもあんたはどうやってその火事から逃れられたんだ?」
「助けてくれた人がいるのよ。その人は、命の恩人だわ。その人は名乗りはしなかったけど、ロケット団のメンバーの人だったわ。そして、その人になぜ家が狙われたか聞いたの。
 うちの両親は危険な研究をしていたらしいの。でもその研究は成功すれば確実に世間が発展するような研究だった。でも、警察の連中にとって都合が悪いようでその研究を火で燃やしてしまったのよ。
 私の家の火は消えたけれども、私の怒りの炎は決して消えはしないわ!!」
「復讐するためか……」
「そうよ!悪い!?」
「悪いとは言ってない。ただ……」
「何よ!?」
「……いや」

 彼はそこまで言って口を紡いだ。

「(復讐は……また新たな復讐を呼ぶ。だが、それを止める権利は俺には無い)」
「ところであなたはなぜロケット団に入ったの?私やラグナみたいに復讐するためにロケット団に入ったようには見えないけれど……」
「……あんたに言うような理由は無い」
「そう……目的も何もないのね」
「…………」

 それから話のネタは途絶えて二人とも黙っていた。
 しかし、前方から、ツインテールでグリーンのスカートの女の子がゆっくりと歩いてこちらに手を振っていた。

「おはよー!ユウナ!ハルキ!」
「ヒカリ……」
「どうしたの?なんか少し暗くない?」
「ちょっとね。なぜロケット団に入ったか?って話をしていたの」
「その話はやめだ」
「ハルキ!どこ行くのよ!」

 すると、ハルキは二つのモンスターボールを取り出した。プラスルとマイナンだった。

「木の実探しに行くだけだ」

 そうして無愛想な少年、ハルキは森の中へ消えていってしまった。

「そう言えば、ヒカリがロケット団に入った目的って……」
「うん、探している人がいるんだ」
「愛しのヒロトくん……でしょ?」
「うん……。…………!? って!何でユウナが知っているの?ハルキにしか話していなかったのに!」
「そのハルキから話を聞いたのよ。で、ヒカリは彼のどこを好きになったの?ん?」

 意地悪そうな笑みを浮かべながら、ユウナはヒカリに問い詰める。

「…………。(ハルキは絶対に他言をしないと思っていたのに……)」
「黙っても無駄よ!顔に出てるもの!」

 あとで一言文句を言ってやろうとヒカリは思った。

「何事にもひたむきで……一緒にいて楽しくて……それから……」

 ヒカリの顔は真っ赤だった。

「それから……何?」
「いつも正しい道へ導いてくれる。あ……それは私だけがそう思っていることよ!何が正しいかはわからないけれども、私は彼のやっていたことはいつも光の道へと続いている。そう思っていたわ」
「…………」
「それに……マングウタウンのスクールにいたときも、2人で同級生の目から逃れて買い物に行ったときも、どんな時だって、彼といる時は楽しかったわ……」
「そう……会えるといいわね。彼に……」
「ええ」

 ユウナは感情を押し込めた言い方で言った。
 ヒカリも相槌をうったが、どこか不安そうだった。
 それでも、ヒカリは笑顔でポケモン達にポケモンフーズをあげていた。

「(ヒロト……ね……)」

 ユウナはパソコンのような機械を取り出した。いや、それはパソコンとは何か違った。ノートパソコンの半分程度の大きさでしかも、ディスプレイとミニキーボードとデータの収納スペースが分離できた。
 これらの物はユウナがポケナビとPD☆Aとポケモンセンターにおいてある従来のパソコンを融合して作った物である。
 だから、機能はとても優れていた。主に情報収集や解析などが主である。そして、彼女はその名前をインフォメーションナビ(通称:I☆NA)と名付けた。
 このI☆NAはロケット団のコンピューターともつながっている。彼の情報を引き出すことはユウナにとって容易いことだった。

「(ブラックリスト……第二位……ヒロト)」

 そして、名前の後にはロケット団に対する争いが明記されていた。

「(ヒカリはこのことを知らない……。きっと言わない方がいいわね……)」

 実はこのブラックリストは下っ端などには知られていない。
 知っているのはこの情報を手に入れることのできる一部の者と幹部以上の者達だった。
 ユウナは黙々とヒロトの所業を見た。そして、あるところで目がとまった。

「(……ナナシマの“5のしま”でのロケット団基地計画……ヒロトの邪魔により壊滅……。あの時のね)」

 彼女はその時の記憶を辿ってみた。
 ふと目の前に蘇るバトル。
 自分は下っ端がすべて倒されたところで駆けつけた。
 幹部がいなく、そして、珍しく一人で任された任務だった。
 だから、自分が負けたら終わりだと思って勝負を挑んだ。

―――「あんたもロケット団だったのか……?」―――

 ヒロトはフライゴンを出してバトルに挑んでいた。
 彼女はウインディで戦った。序盤ヒロトはガンガンと攻撃技を使っていたが、序盤は彼女が有利だった。
 でもヒロトは途中から補助技を挟むことによりペースを変えて彼女のウインディを負かしてしまった。

―――「何でロケット団なんかに……?」―――

 彼女は睨み返して答えた。
 私は家族を警察の手によって奪われたと。
 そして、その復讐のためにロケット団に入ったと。
 不意打ちでヒロトに攻撃を仕掛けた。ポリゴンの攻撃はうまい具合にヒットし、ヒロトはケガを負った。けれども、彼は言った。

―――「それなら、なおさら負けられない!……君のためにね!」―――
―――「(私のため……?何を言っているの……?勝つのは自分のためじゃないの?)」―――

 彼女にその言葉は理解できなかった。でも、彼はその言葉をきっかけにピカチュウを出して勝負を決めてしまった。

―――「復讐が終えたときに残るのは……虚無感だけさ」―――

 彼は自首するように言った。でも、彼女は煙玉を使ってその場を逃れた。

「(あなたに私の何がわかるって言うの?何も知らないくせに……)」

 でも、彼女にはその言葉が頭から離れなかった。復讐を終えたとき私には何が残るのかを。

「(……何も……残らない……?)」
「ユウナ……ユウナ……?」
「え?なに?ヒカリ……?」

 ふと我にかえり、ヒカリを見た。

「ぼんやりしていたみたいだから。……私、ラグナを探してくるね!」
「そうね。お願い」

 そうして、ヒカリはさらに深い森の中へ入っていった。

「ともかく私はここを抜ける準備をしようかしら」

 I☆NAの電源を切り、立ち上がって空を仰いだ。
 あたりは暗く、しかも雲まで出てきて少々曇り気味だった。



 私は何をやっているんだろう?
 どうして、ロケット団なんかに入っているんだろう?
 私はヒロトがやっていることは正しいと思っていた。
 いつもヒロトは私を光へと導いてくれる。そう思っていた。
 だから、私とヒロトが一緒になれない運命にあるということも、きっと正しいことだったんだわ。
 私はその光の道をあえて壊すためにロケット団に入ってしまった。
 そして、彼を困らせてやろうと最初は思っていた。
 でも後に不安が生まれた。
 私がこのようなことをしたとしても彼は見向きもしないのではと。
 そして、もう昔みたいに私を正してはくれないのではと。
 彼が正しいなんて私の思い込みだったのかもしれない。
 光の道なんて実際は無いのかもしれない。
 でも、どんな形であろうと、私は彼に会う……会わなければいけない!
 そう、そしてもう一度伝えるの……『私は誰よりもあなたが好き!』と。



 30

「…………」

 トキワの森の奥深く、黒いコートでさらにその上にRというマークのジャケットを羽織った少年は、木の上からじっと一人の男を見下ろしていた。
 下にいた男は、ブルーのバンダナをつけた男でパートナーと思われる一匹のポケモンと一緒に木の実を拾っているようだった。
 それに夢中なのを狙って木の上から襲った。
 背後からの完璧な攻撃だ。かわせやしない!
 しかし、その男は後ろに目があるかのように左へ跳んでかわした。隣りにいたポケモンも同時にだ。

「完璧な不意打ちだったはずだが」
「一体何の真似だ?」
「このマークを見ればわかるはずだが……?」
「R……ロケット団か……」
「そのとおり!痛い目に会いたくなければ、お前のポケモンを渡すんだな」

 黒いマントをなびかす男の名は、ロケット団のルーキーズのメンバーの4人の中の一人、ラグナだ。

「探す手間が省けた。まさかそっちから出向いてくれるとはな」
「何の話だ?」
「お前を捕まえる」
「無理な話だ!俺には仲間がいるんだぜ。3人の強力な仲間がな!それに俺は捕まらない!捕まるのはてめぇだ!」

 ラグナはすぐさまポケモンを投入した。
 出てきたのはカイリキーだ。しかし、いつの間にかそのカイリキーの腹に攻撃が決まっていた。
 攻撃をしたのはバンダナ男の傍らにいたポケモンだ。そのポケモンのタックルを受けカイリキーはふらついた。

「いつの間に……?しかし、パワー不足だ!」

 カイリキーは体制を立て直しているポケモンを蹴り上げた。
 平均体重、6.5kgの体重は軽がると宙を舞った。さらに追い討ちでカイリキーは飛び上がり攻撃の態勢に入る。

「(あの攻撃を受けたら、ケガだけじゃ済まない……)」

 バンダナの男は紫色のこうもりポケモンを取り出した。でんこうせっかだ。
 しかし、そこでさらに邪魔が入る。でんこうせっかを、妖精のようなポケモンが受け止める。

「カイリキー、とどめの『クロスチョップ』!」
「仕方がない。『こらえる』!」

 カイリキーに軽々と蹴られたポケモンはとっさに自分の急所を隠し、身を守る。
 そこへカイリキーの強烈なチョップが入った。普通に受けただけでも相当なダメージなのにさらに地面にたたきつけられることによって倍以上のダメージを受けてしまった。

「無事か?」

 どうやら、何とかこらえることができたようだ。しかし、立っているのもやっとである。
 だが、カイリキーは容赦をしない。クロスチョップが終わったところで、降りる方向をそのポケモンに向けて行ったのである。

「そのイーブイにとどめを刺せ!『メガトンキック』」
「(戻すのは……間に合わない) イーブイ、『じたばた』」

 イーブイは少し動き、攻撃をかわした。
 そして、カイリキーに渾身の一撃を叩き込んだ。
 その際、イーブイはカイリキーのチョップを受けてしまいダウンした。共倒れだ。

「クチート、ダーテング!」
「……バンギラス、メタグロス」

 2匹のポケモンが、倒れた瞬間に次の行動は起こっていた。
 さらに、両者とも2匹のポケモンを出して、乱戦となったのだ。
 長い戦いとなり、拮抗した戦いが続いた。
 しかし、3対3のバトルだったが、残ったのは結局、ダーテングとメタグロスだった。そして、さらに2人は新たなポケモンを出した。

「『火炎車』」
「『ハイドロポンプ』!!」

 ダーテングは3対3のバトルを特有の素早さ+防御技『リーフベール』で攻撃を凌いでいた。また、メタグロスは硬い防御力と高速移動で攻撃を耐えていた。
 しかし、新たに出したポケモンに耐えられる体力は双方とも持ち合わせていなかった。

「一気に決めてやる」
「(切り札で来るのか……?)」
「『オーバーヒート』!!」

 バンダナ男のポケモンの切り札と思われるバクフーンは言い表せないほどの強烈な炎を吐き出した。

「凄まじい攻撃だ……!だが、わかるか?炎は水に弱い……」
「果たしてそうかな?炎が水に弱いというのはレベルが同じときのことを言うんじゃないか?」
「今にわかる!オーダイル、『ハイドロカノン』!!」

 ラグナの切り札、オーダイルは巨大な口から、凄まじい水流を飛ばしだした。
 その威力はさきほどのハイドロポンプの比にならなかった。
 強烈な技がぶつかった。互角に見えたこの勝負は、相性の差でオーバーヒートが力負けし、バクフーンに攻撃が命中した。
 そして、霧が生じた。
 冷たい水と熱い炎がぶつかると生じる現象である。なにせレベルの高いポケモンの炎の温度は、通常の炎ポケモンと比べると、格段に高い。そして、冷たい水とぶつかる事により生じる。
 このような状態は高いレベルのポケモン同士が戦うことでよく起きるものである。

「俺の勝ちだ!諦めて降参しろ!」
「そうかな?『オーバーヒート』!!」
「なっ!!」

 一撃で倒したと思っていたはずのバクフーンはまだやられていなかった。さらに驚くことに、先ほど押されていたはずのオーバーヒートと同じ威力の炎を吐き出したのだ。
 そして、相性がいまいちでも、充分にダメージを与えることができた。

「……どういうことだ!?」
「わるいな。俺のバクフーンは鍛えているんだ。3度までなら全力でオーバーヒートを撃てる。さらに、こいつは炎攻撃をする際、炎の膜をつくる。
 それで、攻撃中のダメージをなくしている。だが、お前のオーダイルの攻撃はさすがに強かったらしく、この『フレアベール』でもあまり効果がなかったようだったがな」
「それなら、とどめを刺してやる……最後のハイドロカノンでな!」
「そっちがその気なら、こちらも最強の技で決めさせてもらう」
「(最強の技……?……オーバーヒート以上の技だと……?そんなのがあるのか……?)」

 ラグナはバンダナ男を疑った。でも、彼の目を見る限り本気だ。
 すると、別の方角から、爆発が起きた。そして、何本か木が倒れたようだ。

「この音は……暴れているな……」
「!?」
「さっき、お前には仲間がいるって言ったな?だが、俺にも仲間がいる。そして、さっきの爆発は俺の仲間の攻撃だな」
「なん……だと……?」
「どうやら、俺以外もロケット団と戦っているらしいな」
「(こいつの目的はロケット団を捕まえることだったな……だとしたらまずい!こいつ以上のトレーナーがいないとも考えられないからな……)」

 ラグナはとっさに、煙玉を取り出して、投げつけた。
 煙が晴れた時、ラグナはいなくなっていた。

「逃げたか……」

 彼は追おうとは思わなかった。このままラグナを追っていれば勝てる可能性はあると思っていた。しかし、ラグナの仲間がどれくらい強いのかがわからないため彼も、身を引いた。

「とりあえず、戻るか……」

 彼は傷ついたイーブイを抱えて、さらに木の実を持って、その場を離れた。



 ラグナとバンダナ男の戦いが終わったころ、ここでもバトルが繰り広げられていた。しかし、バトルはどちらが優勢か見てわかるほどだった。
 そして、今、バシャーモの強力なメガトンキックがハピナスに直撃した。

「そんな……!」
「さあ、あなたはあと2匹のはずよ!それとも降参して私に捕まりなさい!」

 ポケモンリーグ公認の帽子を被ってそのツバを後ろに持ってきている少女はロケット団の一人に言った。
 そのロケット団の一人とは、先ほどまでヒロトのことを考えていたヒカリだった。
 彼女はラグナを探しに行った結果、いきなり帽子の少女と遭い、ロケット団ということで突然バトルを仕掛けられていた。
 ヒカリはバトルを速攻でバトルを終わらせるために一気に3匹のポケモンを投入したが、相手はいきなりゴローニャの『大爆発』で戦力を削がれてしまっていた。
 そして、ハピナスも倒されて、5対2のピンチに陥られた。

「(このままじゃ負ける……。強くなったはずなのにこんな所で負けるの……?いや、負けられないわ!)」

 ヒカリは意を決してフシギバナを出した。

「フシギバナ、『鞭の嵐』!」

 ヒカリは聞きなれない技を出した。その技とは、以前の『つるの鞭×5』の強化版である。全てのつるの鞭を出して、嵐のように打ち出す強力な技である。

「バシャーモ、『ヒートブレイク!』」

 すると、帽子の少女も聞き慣れない技を出す。バシャーモの体が燃え上がったのだ。そして、そのまま鞭の嵐につっこんでいった。
 2つの技が激突する。バシャーモの炎がつるの鞭を燃やそうとするが、いかんせん、つるの鞭が多すぎる。そして、足止めをうけ、フシギバナには届かなかった。

「とどめの『のしかかり』……え!(トレーナーがいない!?)」

 ヒカリはバシャーモにとどめを刺そうとした。だが、直前で気がついて空を見上げた。バシャーモは囮だったと。
 空から、帽子の少女がチルタリスと一緒に降りてきた。ヒカリはつるの鞭で防御を指示するが、そこへバシャーモへの対抗が意識が薄れて、ヒートブレイクが炸裂。
 さらに上空からの燕返しも決まった。

「フシギバナ!」
「勝負ありね!あなたはあと一匹よ!降参しなさい!」

 すると彼女はバシャーモを戻して、ゴルダックとブーピックを出した。

「(ここで捕まるのもいいかも……。これは私がヒロトにしようとしたことの罰なのね……)」

 ヒカリは残りのボールと地面に落として投了しようとした。でも、そこへ別の少年がヒカリの前に現れた。

「ハルキ!?」
「誰!?」
「ヒカリ、あんた一体何をする気だった?捕まる気だったのか?……とりあえずここから離れるぞ。『10万ボルト!』」
「まずい!ブーピック!『光の壁』!」

 帽子の少女の光の壁は出るまでに速かった。そこまで、光の壁を速く出すのには訓練が必要だろう。
 しかし、2匹の電気ネズミの威力は光の壁相手に気休め程度にもならなかった。ゴルダックは当然、即ダウン。
 ブーピックは体力もわずかしかなく、マヒして動けない状態だった。
 ハルキはボーマンダを出し、ヒカリと乗った。そして飛び上がった。

「逃さないわよ!チルタリス!」

 帽子の少女はチルタリスに載って飛び上がる。でも、ハルキは後ろを向いて、チルタリスにモンスターボールを当てた。

「え!?嘘!?」

 彼女は何のポケモンが出てくるのかと思っていたが結局出てこなく、チルタリスのドラゴンクローで弾き飛ばそうとした結果、チルタリスがボールの中に入ってしまった。
 しばらくして、チルタリスは飛び出したが、チルタリスは何が起きたかわからず、あたふたしていた。

「ハルキ……?今のは?」
「スナッチだ。でも、あの体力じゃ無理だったな。しかし足止め程度にはなったな」

 ボーマンダに命令して、ユウナのところへ向かった。

「ところで、あんた、途中で諦めて捕まるつもりだったな」
「……わかってた?」
「見ればわかる」
「裏切り者は……」
「処刑される。わかっているはずだ」
「…………」
「だが、別に俺はそんなロケット団の教訓に興味は無い」

 ハルキはそっけなく言った。

「ラグナはあの後戻ってきて、俺はあんたを探しに来たんだ。それから、ユウナがもう進むとさ」
「…………」

 ヒカリもラグナもそれぞれのことを考えながら、ユウナの元へと戻っていった。



 31

 ユウナの集合場所からかなり離れたところにテントを張ってあった。
 そこへ一人の少年が戻ってきた。先ほどラグナと戦ったバンダナ男だ。そして、傍らには、いつの間にか元気になっているイーブイも一緒だった。

「ちょっと聞いて!さっきあっちでロケット団と戦ったのよ!」

 そこへ一人の少女が戻ってきた。先ほどヒカリと戦った帽子の少女だ。

「それで、あまり強くないから捕まえようと思っていたんだけど、もう一人出てきて、そいつがすごく強くてしかも私のポケモンを奪おうとしたのよ!」
「それは、本当か、ライト」
「うん。普通のモンスターボールでポケモンを捕まえようとしたの。普通なら、弾かれるはずなのに!」
「そんなことがあったのか」
「エース!とりあえず、今から追えばロケット団を捕まえることができるわ!急ぎましょう!」

 ライトという帽子の少女は、少年エースの手を取って進もうとするが、彼は冷静に首を振った。

「いや、もういい……。それよりここは追わないほうがいい。今日はここでゆっくり休もう」
「どうしてよ」
「焦ってもいいことは起きないからな」

 そうして、エースはテントの中に入って行った。

「もー……。まあ、エースがそういうならそうしようか」

 と、ライトは空を見上げる。
 もう空は星が瞬いていた。

「でも、早く助けないとね。待っててね、ジラーチ」



 第一幕 Wide World Storys
 トキワの森の一件 終わり





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Last-modified: 2015-01-17 (土) 11:41:54
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