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たった一つの行路 №029

/たった一つの行路 №029

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“知っているか?シオンタウンのポケモン屋敷に幽霊が出るって噂だぜ!”
「!!」

 ある2人の話し声を聞き、ふと黄色のシャツを着た緑髪の少年が耳を傾けた。どうやら彼は散歩中のようで、腰にモンスターボールを身につけている以外は何も持っていなかった。

“ああ、知っているぜ。聞いたことがあるぞ!”
“俺の友達の聞いた話じゃ、ウツボットの霊が襲い掛かってきたって話だぜ”
“あん?俺の聞いた話じゃ、ドククラゲが襲い掛かってきたって話だ!何にしろその幽霊は来る者を拒んでいるみたいだな……”
“もしかして、そこに宝でもあるのか!?”
“亡霊が残した宝……それもなんだか面白そうだな!ハッハッハッ!それよりもサファリゾーンに行こうぜ!”

 笑いながら、2人はそこから去っていった。

「幽霊……?」

 彼は難しい顔をして話を聞いていたのであった。



 たった一つの行路 №029



 シオンタウン。
 どこか不吉な雰囲気が漂う町である。ここに2つの有名なことがある。
 一つは盆踊りである。ある時期になると、ポケモンたちの霊を供養するために開催されるのである。
 そしてもう一つの見所はポケモンタワーである。
 ここには、亡くなったポケモンを埋葬し、霊を慰める為に立てられたというポケモン屋敷が存在していた。
 そこで祈りをささげられたポケモン達は、安らかな眠りに着くことができるという話だ。
 しかし、それは数年前までの話である。
 現在は、そのポケモンタワーがあった土地にラジオ塔というカントー唯一のラジオ放送局が建てられていた。
 もちろん、ポケモンタワーを壊し、ラジオ塔を立てようという計画に反対する者もいた。
 ポケモン達をきちんとあの世へ送らせてやる為にはポケモンタワーが必要だという意見が出たからだ。
 しかし、ラジオ塔の社長等が強引に作戦を押し切り、ラジオ塔を建ててしまったのだ。
 そこでシオンの町の人たちは、新たにこのポケモン屋敷と呼ばれる施設を建てたのだ。
 ここでは、ポケモンたちを埋葬することはできないが、祈りを捧げるための石碑や礼拝堂などが建設された。
 その計画はある女性が中心になって作られた場所だった。そこで祈りをささげれば、ポケモンたちは安らかな眠りにつくことができると。
 しかし、その建物を建てた数週間後、ラジオ塔の建設に反対し、ポケモン屋敷を建てるのに中心となって、その屋敷の管理人となった女性が、謎の死をとげた。
 原因はまったく解明されていない。さらに、また違う人が管理人になると、その人は不慮の事故で大ケガをした。
 次々にポケモン屋敷の管理人になろうとする人は出てくるが、確実にケガ人が出るのであった。
 そして、そのポケモン屋敷はいつしかお化けが住み着くと言われるようになり、町の中外問わず噂が広まることとなったのだ。
 もう、シオンタウンの人たちはその場所に近づく者は誰もいなかった。

 そのような噂がある町に、リュックを背負った緑髪の少年と、メガネをかけた背丈の低めの少年と、赤と黒が基調の服に白い帽子を身につけた少年と、赤いバンダナの少女がやってきた。

「ここがシオンタウンかー!少し雰囲気が落ち着いているね」

 メガネをかけた少年が第一声を上げた。

「う~ん……この落ち着きが俺はかえって不気味に思えるな」
「…………。確かになんかありそうだな。もしかしたら幽霊が出るって噂は本当なのかもしれないな」
「え!?ヒロトさん、幽霊ってなんですか!?」
「あ、いや!冗談だよ!冗談!」
「そうだぜ、ハルカ!こんな科学が発達した世の中に幽霊なんているわけがないだろ!」
「ユウキ……後ろになんかいるよ……」
「ヒィ!」

 ユウキは慌てて後ろを振り向いた。そこには宙に浮いて漂う物体があった。そしてユウキは尻餅をついた。

「アハハ!ユウキ引っかかった!」
「な~んだ。ユウキ、実はお化けを信じていたりするんだ!」

 ハルカは笑ってユウキを見ていた。幽霊だと思ったもの、それはマサトのジュペッタだった。

「マサトーお前っ!!」

 ユウキは騙したマサトに掴みかかろうとするが、マサトはそれを回避して即座に逃げ出した。

「待て!」
「待てと言われて待つ人なんていないよ~」

 マサトは挑発を止めなかった。

「それじゃ、ポケモンセンターに行くよ!」

 先にそう促したのはこの4人の中で一番年長のヒロトだった。

「「あ!!ヒロトさん先に行かないで下さい!」」

 そういい、ユウキとマサトは急いで追って行った。

「よく考えたら、幽霊というのは信じられないけど、幽霊ポケモンっているのよね……」

 ハルカはそう呟き、彼らを追って行った。



「こんにちは~」

 マサトが元気よく挨拶をして、ポケモンセンターに入っていった。そして、ジョーイにポケモンを出す。

「お願いします!」

 遅れて、ヒロト、ユウキ、ハルカもポケモンを出す。

「はい、お預かりしますね!」

 快くジョーイはポケモンを受け取った。

「さて、これまでどうしていようか?」
「これからの計画を立てようよ!次にどの町に行くかを!」
「そうだな。一度計画を立てたほうがいい」
「じゃあ、次はヤマブキシティに行こうよ!そこにもジムはあったはずだよ!」

 マサトがそう言う。ヒロトたちは、タマムシシティからサイクリングロードを通り、セキチクシティへ行った。
 そこで、マサトとヒロトはピンクバッジをアンズからゲットしていた。そして、北東を行き、このシオンタウンへやってきたのだ。

「それでいいんじゃないか?俺はちょっと外に出てくる」

 そう言ってヒロトは、外へ行ってしまった。

「どうしたんだろう……ヒロトさん?いつもなら、ポケモンセンターでゆっくりしているのに……?」
「ハルカ、いつでも、じっとしているわけないだろ。ナマケロじゃあるまいし」
「ユウキ……その表現は間違っているよ!ヒロトさんは20時間も寝ていないもん!」

 ナマケロは図鑑で20時間眠ると書いてあります。

「ん?そう言えばこれは……?」

 ユウキは一つの張り紙に目が行った。

「『シオンの盆踊り』……開催は明日の夜か……」
「へぇ~面白そうだね!出てみようよ!」
「…………」

 マサトとユウキは盆踊りに思いをめぐらしていた。

「なぁ、もちろんハルカも行くだろ?」
「……え?何のこと?」
「お姉ちゃん、何を聞いていたの?盆踊りのことだよ!」
「あ、うん、楽しそうでいいかも~!」

 どこかぼんやりしているハルカを見て、二人は首を傾げるのだった。



 22

「ちょっと……本当に行く気?」
「そうよ!肝試しよ♪肝試し♪」

 シオンタウン、ポケモン屋敷前。そこに2人の美女達がいた。なにやら、2人は肝試しをするようだ。

「せめて、ポケモンを持っていったほうがいいんじゃ……」
「それじゃ、スリルが全然でないでしょ!ポケモンに頼っちゃうと!」

 そう言って、気の強い少女が言った。その少女の髪は肩より少し長めでポニーテールであり、ブルーのジーパンを穿いて、ノースリーブのヘソだしルックだ。
 もう片方の子は、長い髪がきれいな子で淡いピンクのロングスカートで白いシャツを着ていた。
 2人ともいずれも、凄まじいスタイルを持った女の子だった。男がいたらその胸やお尻などに釘付けになるだろう。

「さ~行くわよ!」
「ちょっと……」

 こうして、2人の美女はポケモン屋敷に入ってしまった。



「ここが、ポケモン屋敷……」

 ヒロトはポケモン屋敷の目の前に来ていた。

「ここの情報にあまりいいものがなかった……。だから、もしかしたら……」

 ヒロトは先ほどの情報を思い出した。

“実は、あのポケモン屋敷を建てるのはかなりの費用が必要だったんだ。けれども、ある人たちがお金を出して建ててもらった場所なんだ。それなのにこんなひどい噂が立ってしまって……その人たちはひどい損害を出したろうね……”

 そこでヒロトにはある仮定が生まれた。
 その情報を手に入れて、ヒロトはすぐにポケモンセンターに戻り、ここへやってきた。
 改めて外観を見ると、屋敷に見えそうで見えなかった。とは言うものの、タワーとも言いがたい。大体三階くらいの建物だ。
 日が沈んだのも作用して、ますます無気味に見えていた。

「(俺の予想が正しければ、ここに……)」

 覚悟を決めてヒロトは、屋敷の中へ入っていった。
 しかし、それを後ろで見ている人物にヒロトは気づかなかった。
 中に入ると暗く、不気味だった。ヒロトは常備している懐中電灯をリュックから取り出して、その光を便りにしあたりを探っていった。
 何も置かれていないテーブル。なぜかボロボロの椅子、あちらこちらには壁にヒビが入っていた。
 二階に石造りのお墓みたいな物があちらこちらに存在していた。
 それに少しおかしいと思ったのは、塵みたいなものが少し舞い上がりすぎている所だった。

「それにしても、なんで壁に傷が多いんだ?ここは新しく建てられた建物で数年くらいしか建っていないはずなのに?」

 そのような疑問を浮かべながらもヒロトは三階に上がってきた。

「……三階、ここが最上階か。……結局俺の思い過ごしだろうか?(それにしても、塵がすごいなここは……)」

 ヒロトは異常な塵を気にしつつも、下へもどろうとした。
 だが、その時、ヒロトの目の前にある人物が見えた。その人物を見てヒロトは目を丸くした。

「え!?まさか……!?」

 ヒロトは目を擦り、もう一度その人物を見た。
 ヒロトの目に映ったもの、緑のフレアスカートに半袖の短いクリーム色のブラウス……そして、ツインテールの少女だ。
 こうして、ヒロトはその子の名を呼ぶ。

「……ヒカリ?ヒカリなのか!?」

 ヒロトはゆっくりと彼女に近づこうとした。

「――さん、――ない!―――は、―――よ!」

 誰かの声が、遠くのほうから聞こえる。しかし、ヒロトの耳にはぼんやりとしか聞こえない。

「ヒカリ……ずっと会いたかったよ……俺は……俺は…………」

 そして、彼女の目の前に来た所で、ヒロトは誰かに押し倒された。

「ぐっ!誰だ!?……えっ!?」

 ヒロトは、倒れたショックで気がついた。ヒカリがいたと思った場所は、なんと壁がなく、うっかりと足を踏み外せば落ちるようになっていた。
 ここは三階である。落ちれば、ケガではすまないだろう。

「……幻覚?」
「ヒロトさん!大丈夫!?」
「……ああ、なんとか。でも、何でここに?」

 彼を助けたのは赤いバンダナの少女、ハルカだった。

「ヒロトさんが心配だったから、つけていたの。そしたら、穴のあいた方に向かっていって……ヒロトさんぼんやりしていたから……」
「そうだったのか……ありがとう」
「それより、“ヒカリ”って誰?さっきうわごとで口にしていたけど?」
「……俺の幼馴染ってヤツだ」
「幼馴染?」
「ああ。……それよりここから離れた方がいい!ここはロケット団の隠しアジトかもしれないんだ!」
「ロケット団!?」
「だから、俺が……」
「それなら、ジュンサ―さんに……」
「確証がないとだめだ!」
「そう言えば、何でヒロトさんはそんなにもロケット団と戦おうとするの?」
「…………」

 そうハルカに聞かれてヒロトは黙り込んだ。

「マサトから聞いたんだけど、最初に会った時に言っていたらしいよね。『ロケット団にかかわったら命を落としかねない』って。それなのに何で、自分はロケット団と戦おうとするの!?」
「それは……」

 ヒロトは一端、喋るのをやめた。

「とりあえず、ポケモンセンターに戻るぞ!」

 ヒロトは二階への階段へ向かおうとした。

「キャー――!」
「どうした!?」

 ヒロトはすぐさま振り向いた。
 そこには数十匹のオニドリルが今まさにハルカに襲いかかろうとしているのが見えた。
 ハルカは、腰を抜かし、足が震えて動けないようだ。

「おい!大丈夫か!?」

 ヒロトはハルカに言うが、まるで聞こえていないようだ。

「フライト!『ドラゴンクロー』!」

 ボールとともにフライゴンが飛び出し、一回の攻撃で3匹のオニドリルが撃墜したように見えた。ヒロトは急いでハルカに駆け寄る。

「大丈夫か?立てるか?」

 ハルカは首を横に振っていた。そして、ハルカは後ろを指差した。
 ヒロトが後ろを振り向くと、オニドリルの翼がヒロトの腹をえぐった。

「ぐっ!」
「ヒロトさん!」

 ハルカはそう叫んだつもりだったが、ほとんど恐怖で声がかすれていた。
 そんな攻撃でもヒロトは気を失わずに何とか持ちこたえていた。

「大丈夫か……?“ハルカちゃん”」
「え……?あ……!うん…………」
「(この痛みは本物……幽霊なんかじゃない?ということはこの攻撃には何か元凶があるはずだ!……もしかして……)フライト、『突風』だ!」

 フライトは一気に翼をはためかせて凄まじい風を起こした。
 すると、今まで充満していた塵と思われていたものが壁の穴から一気に抜け出していった。

「そして、元凶のポケモンは……そいつか!フライト、『大文字』!!」

 ヒロトの指を差した方向にフライゴンは攻撃を放った。その方向に確かにポケモンが存在した。
 しかし、そのポケモンはフライゴンの大文字を受け止めて耐え切った。ダメージはほとんどなかった。

「スリーパー……やっぱり、この幻覚の正体にはエスパーポケモンが存在していたか……!フライト、『ドラゴンクロー』だ!」

 接近戦に持ち込み、一気に片をつけようとするが、そのスリーパーのレベルは高かった。
 ドラゴンクローを冷凍パンチで防いでいた。だが、結局、フライゴンのドラゴンクローが押し切り、後方へと吹っ飛ばした。

「『破壊光線』!!」

 隙を突かせない攻撃で、一気に決めた。攻撃が決まると、スリーパーは気絶した。すると、塵が薄れていき部屋が全て見渡せるようになった。

「幽霊の元凶は絶つことができたようだな……」

 ヒロトは一安心した所でハルカを見た。

「大丈夫か?」

 ハルカを見るが、気が抜けたようで気を失っているようだ。

「彼女を安全な所へ運ばないとな……。さて、どうやって運ぼうか……」

 起きるまで待とうと考えた。
 だが、この案は即却下。ハルカがいつ起きるかわからないためだ。

「仕方がない。背負っていくか」

 行動に移そうとしたその時、ヒロトの耳に悲鳴が聞こえた。

“キャー!誰か!”
「また悲鳴!?まさか、また幽霊が?でも、スリーパーはここにいるし……とにかく行ってみるしかないな!フライト、彼女をポケモンセンターまで安全に乗せて行くんだ」

 そうして、フライゴンはハルカを乗せて穴から飛び出していった。
 すぐさまヒロトは階段を下りて悲鳴の聞こえた方へ向かった。
 そして、一階へ来たのだが、悲鳴はさらに下のほうから聞こえてきた。

「…………?下?ということは地下室か?」

 ヒロトは床を調べて、抜け穴を探した。だがなかなか見つからない。

「くっ!こうなったら、ネール!『ウェザーボール』!!」

 ヒロトはお天気ポケモンのポワルンを出して、下へ攻撃を放った。
 ウェザーボールは天気によって属性が変わる技である。
 しかし、天気が通常の場合、その技はノーマル属性の技となる。
 結果的に床に穴が空いた。

「よし!おりゃ!」

 ヒロトはネールを戻して飛び降りた。



「だから私は止めようって言ったじゃないですか~!」
「仕方がないじゃない!なるようになっちゃったんだから!」

 先ほどのナイスバディーの女の子達、肝試しといって、地下の秘密の入口まで見つけ出してそこには行っていた。
 地下は意外にも広く空洞状になっていた。そして、一匹のアブソルが彼女たちを襲っていた。

「ここの秘密を知ったからには生かしておくわけには行かないんだな~」

 男がそう言い、彼女たちに立ちふさがる。彼が、アブソルのトレーナーのようだ。
 アブソルが『かまいたち』を放つ。二人の女の子はギリギリまでひきつけてかわしていく。
 しかし、ポニーテールの女の子の足に攻撃がかすってしまった。

「イタッ!!」
「コトハ!!」
「さぁ~観念するんだな~」
「まずいわ……」

 長髪の女の子はコトハと呼んだ女のこの手をとり、逃げようとした。
 だが、彼女らは角に追い詰められた。

「オト姉ェ~何とかして~!」
「なんともなりませんよ。だからポケモンを持ってきたほうがいいって行ったじゃないですか……。もう、コトハの言うことなんか聞きませんよぉ~!」
「やれ、アブソル!」

 男はそうして、攻撃の指示を出す。彼女たちは目を瞑った。
 だが、そこへ炎攻撃が飛んで来た。アブソルは飛び退いて何とかかわした。

「誰だ~!?」

 彼女たちは、ゆっくりと目をあけた。するとそこにはポワルンと一人の少年がそこにいた。
 そして、彼は彼女たちに振り向いた。

「大丈夫?」
「え?……あ……はい」

 長い髪の少女、オトハはあたふたとしながら言った。

「ケガはない?」
「だ、大丈夫です……」

 コトハはその少年の顔を見た瞬間、頬を赤く染めた。

「よかった。間に合って……」
「おい!お前!この俺が誰だか分かって邪魔しているのかな~!?この俺はロケット団班長のカエシだぞ~!どうなっても知らないぞ~!」

 彼はカエシと呼ばれる男を見た。

「やっぱりいたかロケット団!それにしても、まさか地下があるとは思わなかったよ!けっこう探したぜ!」

 ヒロトはくたびれた顔をして言った。

「このポケモン屋敷は我々ロケット団が資金援助してやった場所なんだな~!名目はボランティアとしてだがな~。もちろんその実体はこの土地を僕たちが乗っ取るためなんだな~!
 このポケモン屋敷で事故が起きたり、幽霊が出たりすれば自然とここに来る人なんて滅多にいなくなるんだな~!
 だけど~このお譲ちゃんたちみたいに肝試しに来る人たちもいるから、2階くらいで幽霊を出して、追い払っていたんだな~」

 カエシはのんびりとした口調で喋り続けた。

「それにしても、なんでお前は、ここを探しているんだ~?もしかしてロケット団に入りたいのか~?」
「そんなわけあるか!ロケット団をつぶす為だ!」
「それなら、僕が黙っているわけには行かないんだな~アブソル、やってしまうんだな~!」

 バトルになってもカエシはのんびりとした口調で指示を出した。

「そこのお二人さん、避けていて!」

 ヒロトは後ろにいたオトハとコトハにそう言うと、ポワルンを戻して別のポケモンを出した。

「ディン、『リフレクター』!!」

 ヒロトのフーディンのリフレクターは強力だ。
 前回の戦いでシードのハガネールのダイヤモンドテールも防いだ実績もある。
 まして、アブソルの通常攻撃程度ではひびさえも入らない。

「なかなか、やるんだな~でも、『辻斬り』なんだな~!」

 密着した状態で辻斬りを放った。なんとかリフレクターで耐え抜いたが、ヒビが入ってしまった。
 さすがに近距離かつ属性有利の攻撃に対しては限界だったようだ。

「どんどん行くんだな~『でんこうせっか』なんだな~!」
「(やっぱり相性が悪いとまずいな)チェンジだ!『でんこうせっか』!」

 ヒロトはすぐにフーディンを戻すと、新たなポケモンに技を指示した。
 スピードはヒロトのポケモンが上だった。その証拠にアブソルを翻弄し、アブソルの後ろから、鎌での『きりさく』攻撃が決まった。

「フロル、そのまま『銀色の風』!!」

 スピードで翻弄されたアブソルに回避する余地はなかった。そのままアブソルは吹っ飛ばされてダウンした。
 鎌を持った虫ポケモンのストライクは構えをとかず相手の次の行動を待った。

「結構な使い手ですね~。ねぇコトハ?」

 姉のオトハが率直な感想を述べた。

「(カッコいい……理想の男にそして、ストライク……)」
「コトハ……聞いていますか?」
「え?なに!?」

 そんなやりとりがされている間にカエシはアブソルを戻していた。さらにヒロトは撃墜を指示した。

「フロル、『でんこうせっか』で気絶させろ!」

 直接、カエシを狙った。ヒロトの経験からして、トレーナー相手に攻撃するやつらには常識が通用しない。
 だから、やられる前にやる。先に気絶させた方が勝ちと考えている。今回もその通りでストライクに指示を出した。

「なかなかやるんだな~でもここからが僕の本気なんだな~」



 第一幕 Wide World Storys
 シオンタウンの出会い(前編) 終わり





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Last-modified: 2015-01-15 (木) 20:15:29
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