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たった一つの行路 №027

/たった一つの行路 №027

「あなたは……?」

 ロケット団が包囲している中心に一人の少年が降り立った。
 しかも、あろうことか、シードのサマヨールをあっけなく倒してしまった。

「まさか、俺のサマヨールがたったの2回の攻撃でやられてしまうとは……!」

 シードも驚きを隠せなかった。今までユウキの攻撃をほとんど『守る』で耐えていたといえ、シードのサマヨールの防御能力は決して弱いものではない。
 現にユウキが『闇の言霊』を相殺する時に放った10万ボルトでさえ一瞬怯む程度の効果しか受けなかったのだから。

「(それにあのライボルトが全力で放った『かみなり』の後で『10万ボルト』の威力が弱まったことを差し引いてもだ……) お前、邪魔するからには覚悟は出来ているんだろうな!?」

 左頬にかすり傷を持った少年は微笑み、マサトに言った。

「危ないから、3人で固まってて。俺が片付けるから」

 そういって、彼はシードを見据えた。

「覚悟か……。戦う覚悟ならとうの前から出来ている!生きる為にな!」
「危ない!!」

 マサトは叫んだ。彼の後ろから三人のロケット団がポケモンを出して不意打ちに出ていた。
 だが、いつの間にか彼の後ろにはピカチュウがいた。
 そのピカチュウは、連続で『電撃波』を放った。
 3匹全てに命中し、どのポケモンも、ダウンした。

「つ、強い……。あの人、後ろも向かずに倒しちゃった」
「ふん!役立たずめ!下がっていろ!俺がやる!!」

 すると、シードは新たなボールを取り出した。



 たった一つの行路 №027



 中から飛び出したのは、ハガネールとネンドール。
 どちらも、一筋縄では倒せないポケモンである。

「アイツに『アイアンテール』!ネンドールはフライゴンに『冷凍ビーム』だ!」

 ハガネールは忠実に従い、トレーナーに攻撃を仕掛ける。
 一方、ネンドールはフライゴンに攻撃を仕掛けるが、少年はフライゴン、そしてピカチュウもボールに戻してしまった。
 そして、新たにボールを取り出した。だが、もうアイアンテールは避けられそうにもない。

「(ポケモンで防ぐか!?だが、俺のハガネールのアイアンテールを止められるポケモンはそうはいない!!)」

 そして、少年の目の前で、尻尾が止まった。
 何かが、尻尾を受け止めた。
 そのポケモンは、黄色でひげを生やしたスプーンを両手に持ったポケモンだった。

「ハガネールを利用させてもらったぜ!」
「……!?バカな!フーディンでハガネールの攻撃を止められるはずがない!!」
「そうだよ……なんで止められたの!?」

 シードもマサトもただ驚くだけだった。
 少年のフーディンはスプーン2つでハガネールの尻尾を受け止めていた。

「そこだ!マッシュ!」

 フーディンがハガネールの尻尾を受け止めている間に、空中から、強烈なパンチがハガネールの頭に叩き込まれた。

「け!この鉄壁のシードを甘く見るな!そんなパンチごとき効かん!」
「それはどうかな?」
「あ、ハガネールが混乱している……ということはあの攻撃は『爆裂パンチ』!?」
「正解だ。メガネ君!」
「だが、それがどうした!?『サイコキネシス』!!」

 今度はネンドールが反撃に出た。サイコキネシスを発動し、キノガッサの自由を奪い、たたきつけた。

「あ!キノガッサが!」
「これでキノガッサはダウンだな!」
「隙があるぜ!」
「!?」

 少年はキノガッサがやられているのに目もくれず、フーディンの方を指示していた。
 そしていつの間にか、ネンドールは凍らされていた。
 フーディンの『冷凍パンチ』だ。

「速い!?」
「ディン!『サイコキネシス』でハガネールにぶつけろ!」

 ディンことフーディンはハガネールの頭に思いっきりぶつけた。
 ネンドールの氷は砕かれ、ネンドールはハガネールにぶつかった事によりダウンした。

「やりやがったな!?だが、俺のハガネールは今の衝撃で混乱が解けたようだ。お前ら、もう許さん!吹っ飛ばしてくれる!ハガネール!」
「何をする気だ!?」
「!?」

 少年は身構えた。よく見るとハガネールの尻尾のあたりが透明化し始めた。
 それは、体をとても硬くするためだった。
 しかし目に見えるようにどんどんハガネールの体力は削られていった。

「やれ!『ダイヤモンドテール』!!」

 ダイヤ硬度になった尻尾が少年に襲い掛かる。

「(あれはまずい!)ディン、『リフレクター』!!」

 即座にフーディンは物理防御の壁を張った。ハガネールの攻撃が壁にぶつかり凄まじい衝撃が起こった。しかも、一進一退。どちらも引く気配はない。

「(俺のハガネールの秘技に耐えているだと……?だが、いつまで持つかな?)」
「いいのか?」
「何のことだ?」
「ディンが、ハガネールを抑えている間に、俺のもう一匹のポケモンが、倒すってことだよ!マッシュ、『気合パンチ』!!!!」

 すると、ダウンしたと思われていたキノガッサが、ハガネールの真上にいた。そして、渾身のパンチをハガネールの脳天に叩き込んだ。
 そのパンチでハガネールの頭がかなりへこみ、そして、気絶した。

「バカな!俺の防御の上を行くだと?」

 シードは愕然とした。

「くっ、それなら、俺の最強の防御ポケモンで……!何をやっている!みんなかかれ!」

 シードが新たな最後のボールをとるのと同時に、下っ端たちに合図した。
 そして、すぐに下っ端は襲い掛かってきた。

「おい、メガネ君たち!」

 少年はキノガッサを戻しながら言った。

「え?」
「目をつぶれ!」

 そういって、彼はピカチュウを出した。そして、まばゆい光を放った。

「くっ!フラッシュか!?」

 そして、ロケット団の視力が戻って、みたところには、もう誰もいなかった。

「ちっ!逃げやがったか……そういえば、最後に出てきた男、どこかで見たような……?」
“シード様!!もしかしてこれでは!!??”

 下っ端が慌てて端末を持ってきた。
 そこに書かれていたのは、ロケット団を邪魔する者が描かれているブラックリストであった。

「……こいつか!ブラックリスト2位の―――」



「ここは……」

 マサトは目を明けて周りを見た。あたりは先ほどとは違う風景だった。
 よく見ると『この先サイクリングロード』という看板が見えた。
 マサトのほかにもハルカが傍で気絶しており、ユウキも気を失っていた。

「大丈夫か?あれだけ人数が多い上、君たちがいる以上、これ以上の戦いは危ないから、俺のディンでテレポートしたんだ」

 マサトは少年のフーディンを見た。
 マサトが見る限りそのフーディンは誰もが持っているようなフーディンに見えた。

「(フーディンがハガネールのアイアンテールを受けて無事でいるはずはないのに……なんで……?)」
「それよりも、なんでロケット団とバトルしていたんだ?奴らは目的のためならどんな事だってする集団だ。
 ポケモンを傷つけ、窃盗、破壊工作……その他にだってたくさんの悪事を働いている。下手にかかわれば……―――」

 一息おき少年はマサトを見た。マサトも少年の目を見た。
 先ほど最初にあらわれたときに見せた穏やかな目とはうってかわって、真剣な目だった。

「―――命を落としかねないぞ」
「さっきは……」

 マサトは少年にロケット団との経緯を話した。

「なるほど。バトルに自信があったから、すべて倒してやろうと思ったのか」

 少年は黙り込んだ。

「……ん?ここは?」

 そのとき、ユウキが目を覚ました。

「ユウキ?大丈夫?」
「え。……ああ、なんとか」
「さっきの技で戦意を失ったとかあいつが言っていたけど……」
「それは、多分気絶したことによって、精神状態が回復したんだと思う。ポケモンだって、マヒや毒のとき眠れば治るだろ?多分それと同じさ」

 少年がそう答えた。

「……この人は?」
「ロケット団に襲われたところを助けてくれた人」
「それと、話を戻すが、バトルに自信があるといったが……」
「ああ、そうだよ!僕は負けない!僕はトウカシティジムリーダーセンリの息子なんだ!だから絶対負けない!そして、僕はパパを超えるんだ!」
「…………!!」

 少年はピクッと体を震わせた。

「マサト!お前まだそんなこと……」
「センリさん……の子供……?」
「……? パパを知っているの?」
「……昔一度だけ戦ったことがある。そしてあの人とのバトルは一生忘れることはない。なんて言ったって、初めて俺がポケモンリーグの大会で優勝した時の決勝の相手だったのだから」
「『俺が優勝した……?』……ということはパパが負けたってこと……?ああ―――!!」

 急にマサトは声を上げた。

「どこかで見た顔かと思っていたけど、思い出した!!あなたは、ノースト地方、マングウタウン出身のヒロトさん!?」
「へ!?何で俺の名前を?」

 ヒロトは目を点にした。

「やっぱりそうだ!ノースト大会、ホウエン大会、ジョウト大会と連続で優勝して、そのあとぱったりと姿を消していたトレーナー……。そして、大会でパパが負けた3人のトレーナーのうちの一人!」
「…………。って、何でそんなに知っているんだよ!」
「ビデオで何回もチェックしたんだ!それにさっきのピカチュウやキノガッサを見て思い出したんだ!」
「…………」
「ちなみに、パパが大会で負けた相手というのは、月島のオトハっていう人と、クロガネシティのラグナっていう人だよ。ただ、その二人は予選リーグの戦いだったから、ビデオが残ってなかったんだよな……」
「別にその情報はいらないよ。……ん?マングウタウン?あ!それじゃあもしかして。ヒロトさんのお姉さんってルーカスさん?」

 今度はユウキが尋ねた。

「え?だから、何で知っているの??」

 密かにヒロトは心の中で情報漏えいしすぎじゃないかと思ったらしい。

「以前、ジョウトを旅する前にノースト地方のトミタ博士のもとで勉強していたんですよ。その時、ルーカスさんが優しく接してくれて……」
「……姉さんが?」
「そのとき、ルーカスさんがよく話をしてくれたんですよ。マングウタウンの話、自分の子供の時の話、そして弟の話。たぶん一番この話が多かった。
 (よくよく考えると、ヒロトさんのことを心配していたんだよなぁ……)」

「…………」
「それより、ヒロトさん!僕とポケモンバトルしてください!」

 突然マサトがバトルを誘った。

「(センリさんの子供か)ポケモンバトルに自信があるんだってな。それじゃ、バトルしようか!シオン!」

 遠くをぼんやり眺めていたシオンことピカチュウがヒロトに呼ばれて駆け寄ってきた。
 ピカチュウはやる気を出して、構えた。

「じゃあ、僕は一番付き合いが長いポケモンで!行け!ヤルキモノ!」

 ボールから出るとともにやる気のある声が聞こえた。

「(ヤルキモノか……ということは、センリさんからもらったのかな?)そっちからどうぞ!」
「誰であろうと、絶対に負けない!『きりさく』攻撃!」

 ヒロトはあえてマサトに先制を譲った。
 それはまず相手のレベルを知るためである。ヤルキモノの攻撃がシオンに襲い掛かる。
 だが、シオンはそれを軽くかわす。けっして、ヤルキモノのスピードが遅かったわけではない。

「…………」
「ヤルキモノ、『シャドーボール』!」

 続いて、ヤルキモノは遠距離攻撃を仕掛ける。黒いボールを作り出し、それを投げるが、シオンは走るスピードをあげ撹乱し始めた。

「(『高速移動』か) ヤルキモノ!『挑発』から『ブレイククロー』!!」

 挑発を受けた相手は攻撃技しか使えなくなる。つまり、相手に向かっていくことしか出来なくなるわけである。
 やはりピカチュウも挑発にかかり、動きを止めた。そこへヤルキモノの爪が襲い掛かった。

「シオン、弾き飛ばせ!!」

 かわすことは不可能だ。かといって、打撃攻撃をしても、ピカチュウじゃヤルキモノを上回る攻撃は出来ない。そうマサトは考えていた。
 だが、シオンが繰り出した技は『アイアンテール』。そして、あろうことか、ヤルキモノのブレイククローを押し切り、顔面に尻尾がヒットした。

「ヤルキモノ!?……あのピカチュウ……ヤルキモノの攻撃を押しのけた?どうして?」
「シオン!そこだ!」

 すると今度は、頬から電気を溜めて、『電撃波』を繰り出した。

「(その技はかわすことが不可能だったね!)ヤルキモノ!シャドーボールで押し返せ!」

 すぐさま、攻撃を放った。だが、威力は段違いであった。シャドーボールがあっけなくかき消され、ヤルキモノに攻撃が命中した。
 だが、ヤルキモノはまだ倒れない。

「くっ、今度は『大文字』だ!」

 炎系の中でもリスクが低く強力な技、そして、マサトのヤルキモノの遠距離攻撃のなかで一番強力な攻撃を指示した。

「シオン、もう一発だ!」

 それをまた、『電撃波』で攻めようとするピカチュウ。ちょうど“大”の字の交差する部分に電撃波は命中した。
 そこで、電撃波と大文字の押し合いになった。両者の一歩も引かないなか、結局相殺という形で終わってしまった。
 その際爆発が生じた。煙が巻き起こり、慌ててマサトは目を覆った。

「シオン、決めろ!『10万ボルト』!!」

 煙の中にもかかわらず、ヒロトは攻撃を指示した。煙の中では命中率は極端に落ちる。だが、ヤルキモノの咆哮が響き渡った。
 煙が晴れた時、そこには倒れたヤルキモノとすぐ側にピカチュウの姿があった。

「……!ヤルキモノ!!」
「勝負ありだ」
「まだだ……ヤルキモノ、立つんだ!」
「やめろマサト!」

 ユウキが止めに入った。

「ユウキ、うるさい!まだヤルキモノは戦えるんだ!」

 ヒロトはマサトを見ていた。

「僕は絶対負けないんだ!!」
「何故、絶対負けないんだい?」
「え?」

 ヒロトの質問にマサトはあっけにとられた。

「なんで、君は負けないと言い切れるんだい?」
「それは……今までバトルしてきて、誰にもバトルで負けたことがなかったからだ。だから、これからも僕は負けない。それに負けたのはポケモンのせいだ……」
「……それじゃあ、なんでポケモン達のせいだっていいきれる?」
「え?……それは……僕が、パパの子供でそれなりの才能を持っているからだよ!!それに、僕はだれよりも、ポケモンの事を見て、戦い方も技のタイミングや、相性を見てきた。だから、僕は負けるはずがないんだ!」
「…………。それじゃ、君のパパのセンリさんは負けたことがないというのかい?」
「…………!それは…………」

 マサトは口ごもってしまった。

「どんなに知識をもっていても、どんなに才能があっても、ポケモンバトルで負けたことのない人なんて絶対にいやしない。もちろん俺だって、最初のころノースト地方を冒険していた時は負けることもあった。それに調子に乗ってホウエン大会に出ようとしたときなんて、負けの方が多かったような気がする。俺は負けることによって、強くなってきた。勝つことよりも負けることで得る方が多いということを俺は身にしみて感じた」
「…………」
「戦ってみて君のレベルがわかったよ。君はセンリさんのレベルに達してない。しかもそのセンリさんは、俺が決勝戦で戦った時のレベルだ。
 今は、もっと強くなっているのだろう。つまり、今の君ではセンリさんを超えることは到底無理な話だ」
「…………」
「それともう一つ。君は、自分のポケモン達を見ているか……?」

 ユウキはマサトをずっと見ていた。
 マサトははっとした。

「君のポケモン達は君のことを信頼しているようだけど、君はどうだい?勝つことに執着しすぎて、大事なことを見落としているんじゃないかい?」

 マサトはヒロトの言葉に膝をついた。

「確かに……。ヒロトさんの言うとおりだよ。僕は勝つことばかりに気を取られていて、ポケモンたちをよく見ていなかった。
 大会の時だって、ずっと相性のいいポケモンばかりで攻めていて、ポケモンのコンディションをよく見ていなかった。さっきのヒロトさんのピカチュウとのバトルを見てよくわかった……」

 マサトは眼から溢れ出る涙を拭わず、ヤルキモノに近寄った。

「ごめん……本当にごめん……」

 ユウキはそんなマサトの頭にそっと手を置いて撫でた。

「マサト、これからはしっかりとポケモンのことも見てやれよ!」
「……うん!」
「それよりも、帽子の君」
「俺はユウキです」
「うん、ユウキ。そこの彼女は大丈夫なのか?」
「そう言えば……」

 ずっとハルカは気を失っていたままだった。
 だが、ようやく彼女も目を覚ました。あたりを見回して、不思議そうにユウキとマサトを見た。

「あれ?ロケット団は?」
「もういないよ」
「でも、どうしてここに?よく見たら、タマムシシティの西部じゃない」
「ここまで、テレポートしてきたんだよ」
「テレポート?」
「ヒロトさんが助けてくれたんだ」
「ヒロト……さん?」
「大丈夫かい?」

 ヒロトは手を差し伸べた。ハルカはヒロトの手をとり立ち上がった。

「マサト!俺もハルカもお前についていくかんな!」
「わかった!僕も、やっぱり2人がいないと心細かったみたい」
「よかったな!ハルカ!」
「…………。あ、……ええ!良かったかも!」

 ハルカは何故か慌ててユウキの言葉に答えた。ハルカはずっと、自分の手を気にしていた。

「そうだ!ヒロトさん!いっしょに行きませんか?僕はヒロトさんにバトルのこととか、教えてもらいたいんです!」
「俺も、ヒロトさんが一緒なら大賛成だ!」
「…………」
「悪いが、マサト、バトルのことを教えることは出来ない」
「え……?」
「ということは、一緒に行けないということ……?」
「ただ、一緒についていってやる。ロケット団のことが心配だしな」
「やったー!」

 マサトは大喜びした。

「ただ、いっしょに行くんなら、最初は俺の指示に従ってもらう。というのは、このままサイクリングロードに行く」
「え!?僕まだ、ジム戦まだのに……」
「ロケット団がまだうろついているかもしれない。また後で来たほうが安全だ」
「あーあ……さっき、誰かがジム戦をやっていなければな……」
「…………ん?あ、それ多分、俺。マサトたちを見つけたのが、ジムを出た直後だったし」
「え!?」

 マサトはビックリしたのであった。



 マサムネにはユウキが連絡を入れた。
 彼も安心したようで、「カントー大会でバトルするべ!」という言葉を残して別れた。

 そしてサイクリングロード。ここは自転車でしかいけない場所だ。
 ヒロト、マサト、ユウキ、ハルカの4人は2人乗り用の自転車を2つ借りた。
 ハルカはマサトと乗ろうとしたが、マサトがユウキと乗りたいと言い出した為にハルカはヒロトの後ろに乗った。
 そして、サイクリングロードへと突入した。

「ねぇ……ユウキ」

 ユウキの後ろに乗ったマサトが話し掛けた。

「何?」
「ユウキさ、ジョウトリーグの大会前のときバトルに付き合ってくれたよね?」
「ああ」
「もしかして僕に自信をつけさせるためにしたことなの?」
「…………」

 ユウキは黙り込んだ。

「僕、ユウキがロケット団との戦いを見てわかったんだ。ユウキの実力が。もし、今まで手を抜いてバトルをしていたというんなら、今度から本気でバトルしてよ!」

 ユウキはその言葉を聞いて微笑んだという。
 一方ハルカはヒロトの背中を見ていた。
 そして、自分の手を見て思った。

「(なんなんだろうこの気持ち。懐かしい温もりみたいなもの。あの夢と同じ温かさだった。私、ヒロトさんに会ったことがある……?)」

 そんな考えを抱きながらペダルをこいでいた。

「いい風だなぁ!」

 ヒロトは何も考えていなかったらしい。
 そんな4人の思いを乗せ、サイクリングロードを駆けて行った。



 第一幕 Wide World Storys
 タマムシシティの出会い(後編) 終わり





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Last-modified: 2015-01-13 (火) 11:43:32
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