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たった一つの行路 №023

/たった一つの行路 №023

 3

 ―――選手村のある西にあるペンション。
 マサトが予選リーグでハルとバトルを繰り広げている頃、そこにペンションのリビングで一人の青年がくつろいでいた。
 黒のジーパンに、上は袖なしのカットソー、そして黒いコートをまとっていた。
 その男の身長は180くらいあった。
 その男に一人の少女が近づき、話し掛けてきた。
 グリーンの丈の短いワンピースの下に7分丈のズボンを穿き、腰回りを緩くベルトで締めた少女は服装から優しい雰囲気がするが、少女自体は華を感じる雰囲気を持っていた。

「ラグナ、順調ね」

 ラグナと呼ばれた男は振り返って少女の方を見た。
 ラグナの目は、人を射るかのような鋭い目つきをしていた。

「そんなに怖い目をしないでよ」
「悪かったな、怖い目で」

 ラグナはテーブルの上にあったジョウトリーグのガイドブックをとって見た。

「それにしても、こんなことしていていいのかしら?平然と大会なんかに出ちゃって……」
「別に構わないだろ。バッジはちゃんと8つ集めているんだから。まぁ、ジムリーダーなんて恐れるに足らなかったがな。無論、予選で戦った奴らもな」

 ラグナは持っていた本をパラパラとめくったあと、テーブルの上に放り投げた。

「それとユウナ、あの2人はどうした?」

 その少女、ユウナはラグナの後ろに回った。

「“彼女”は、いつも話している愛しの彼を探しているんじゃないの?あの“気まぐれスナッチャー”は、どこかでふらついてんじゃない?さすがの私も彼がいつも何考えているか分からないし」
「そうか……」

 ラグナは立ち上がり外へ出ようとした。

「ラグナもこの大会で見つかるといいね。愛しの恋人<かのじょ>に」

 ラグナはこれを聞くとユウナに襲いかかり壁に押し付けた。ラグナの目つきはさらに鋭くなった。

「そのことは口に出すな!!第一あの女は彼女じゃねぇ!あの大会であんなことがなければな!!」
「そうね。確か、準決勝で当たるはずの彼女に仕組まれて、準決勝を棄権せざるをえない状況にさせた人だものね。あなたに近づき確実に優勝を手に入れるために仕組んだ。まさに魔性の女ね」

 あくまで冷静なユウナをラグナは突き放した。

「そうさ!!どっちにしろあの女は決勝戦でセンリってやつに負けたんだ。ふん!俺がやっていたら優勝したものの!!」
「そうね」
「どちらにしろ、俺はあいつを見かけたら…………殺してやる!!」

 ラグナの言葉には本音としか聞こえようがない力があった。



 たった一つの行路 №023



 4

 追い込まれたマサトの三匹目のポケモンは鳴き声とともに飛び出した。

「ジュプトルじゃなくて、ヤルキノモ!?」

 予想が外れ、ハルは驚いた。

「ヤルキモノ!頼むよ!」

 ヤルキモノは調子がよく、気合が入っていた。

「ヤルキモノ対ミロカロス、始め!」
「『ハイドロポンプ』よ!」

 ハルは容赦なく先制攻撃を仕掛ける。だが、そう簡単には当たらなかった。
 右へ左へとヤルキモノはフットワークを活かしかわしていった。

「『ブレイククロー』だ!!」

 ヤルキモノが攻撃範囲に入った所でマサトは指示を出した。
 ミロカロスはかわせず、まともに攻撃を受けた。

「ミロカロス、『自己再生』……」
「ヤルキモノ、『挑発』だ!!」

 挑発されて、ミロカロスは回復ができなかった。
 さすがにハルは焦った。その隙をマサトは逃さなかった。

「『メガトンキック』で決めるんだ!!」

 ヤルキモノは跳び上がり強烈なキックをミロカロスの顔に決めた。
 ミロカロスも反撃しようとしたが、ヤルキモノと太陽が上手く重なり、狙いが定まらなかった。

「ミロカロス、戦闘不能!ヤルキモノの勝ち!」
「(やるわね……でも、最後の一匹まで私は諦めないわ!)行くのよ!リザードン!」

 ハルは再びリザードンをフィールドに呼び戻した。
 だが、背中の翼は凍ったままで飛べそうに無い。そんな中、審判がコールをつげた。

「ヤルキモノ、近づいて接近戦に持ち込むんだ!」
「リザードン、『火炎放射』の連続攻撃!ヤルキモノを近づけないで!」

 両者の指示の内容はまったく正反対だ。マサトのヤルキモノは特殊攻撃が少ない。
 一方、ハルのリザードンは物理攻撃が少ない。こうなるのも無理は無かった。
 その結果、体力が有り余っている、ヤルキモノがリザードンの火炎放射をかわして、射程距離に入った。
 ある程度接近すれば、火炎放射は撃てない。

「『ブレイククロー』だ!」
「『ドラゴンクロー』よ!」

 威力は互角だった。そして、リザードンがヤルキモノに顔を向けた。即座にハルとマサトは反応した。

「顔に『燕返し』だ!」
「そこで『火炎放射』よ!」

 指示を先に出したマサトの攻撃が先に決まった。
 燕返しを顔に受けたリザードンはあさっての方向に火炎放射を放った。
 ヤルキモノはそのままたたみ掛けるように攻撃をしようとするが、リザードンが負けじと尻尾でヤルキモノを弾き飛ばした。
 さすがのヤルキモノも不意打ちを受け、後方へと飛ばされた。

「今よ!最大パワーで『オーバーヒート』!!!!」

 先ほど戻した為、威力は戻っていた。いや、それ以上だった。
 特性『猛火』でパワーアップした炎がヤルキモノに襲い掛かる。

「ヤルキモノ、『こらえる』んだ!!」

 ヤルキモノは防御の体制をとった。その体制でリザードンの灼熱の炎を受けた。
 リザードンが炎攻撃を止めると、体力ギリギリで立っていたヤルキモノがいた。

「もう一度、『オーバーヒート』よ!!」

 ハルはもう一度指示した。連続で使用すると攻撃が落ちるが、ヤルキモノの残りの体力を奪うには容易いと考えた。

「もう一度、『こらえる』!!」

 こちらは連続で使用すると、隙が出る。だが、何とか、攻撃を耐え抜いた。

「『火炎放射』よ!」
「かわすんだ!」

 スピードを活かし、攻撃をかわした。

「(リザードンもヤルキモノも後一撃受ければ終わりね……このまま攻撃を仕掛ければこっちが勝てるわ!)『火炎放射』よ!!」

 だが、リザードンの動きが止まった。リザードンは苦しんでいるようだった。
 マサトはその様子を見て不敵な笑みを浮かべた。

「(この様子は……麻痺状態!?……もしかしてギャロップの『飛び跳ねる』のせい!?)」

 マサトはこの時を狙っていた。

「接近しながら、『シャドークロー』!!」

 リザードンは腹に攻撃を受け、倒れこみ、気絶した。

「リザードン戦闘不能!ヤルキモノの勝ち!よって勝者マサト!!」
「やったー!」

 マサトは飛び上がった。

「(……『飛び跳ねる』の追加効果に気づかなかったことが敗因ですね。そう言えば、最初のアメモースの『冷凍ビーム』のとき……あの時も動けなかったわ。私もまだまだですね)」

 ハルは反省をしつつ、リザードンを戻した。

「(きっとマサト君なら、カオルコさんにも勝てるでしょう……ということは……)」

 そして、ハルはマサトに近づいた。

「私の代わりに決勝トーナメント、がんばってくださいね。」
「え!?でもまだ、僕もう一試合残っていますけど……?」

 その問いにハルは答えず、微笑みながらフィールドを去っていった。
 その後、マサトはハルの予想通り、カオルコをも倒し決勝トーナメントへ進出した。



 5

「随分と賑わっているわね」
「ああ、そうだな」

 ラグナとユウナは宿舎から離れて街中にいた。
 現在、大会中ともあって、出店などが出ていて結構にぎやかだった。

「それにしても、あなたが探しているターゲットはどうやらこの大会には出ていなかったようね」
「ああ。決勝トーナメントのラダーを確認したがいなかった。あいつの実力ともなれば、確実に予備は突破するはず。そして、予選リーグもな。だが、いないということは出ていないということになる」
「まったく私たち4人は本当にワケありなメンバーよね……。…………!!」
「ん?どうした?」

 ラグナはユウナが、目に怒りを滾らせ、手を握り締めているのを見た。その目線の先には、警官の姿があった。

「そう言えばお前は警察が嫌いだったな」
「そうよ!大切なもの全てを奪った警察を私は許さない!」

 ユウナは唇をかみ締めた。

「(大切なもの……家族を警察によって奪われた悲しみか。確かに、俺よりこいつはハードな人生を歩んでいるかもな)」

 ラグナとユウナは歩いていると、露天の裏側に出た。
 そこには一人の少年の姿があった。少年は木によりかかり何か考え事をしているようだった。

「よう、ハルキ!いいポケモンをスナッチできたか?」

 ラグナは少年、ハルキに気軽に話し掛けた。
 ハルキはラグナに話し掛けられて初めて気がついた。

「いや、スナッチはしていない。ずっとここで考え事をしていた」

 ハルキはラグナの方を見ずにぶっきらぼうに答えた。

「そうか。だが、それじゃ、そのスナッチマシンはただの飾りか?もっと活用しろよ!オーレ地方の元スナッチ団のボス、ヘルゴンザの右腕だったんだろ?」
「そんなこともあったな」

 ハルキはこうして話を逸らし続けた。

「まあいい。気が乗ったらスナッチしろよ。そうすれば、少しは組織に貢献できるんだからよ!」
「気が乗ったらな」
「ともかく俺は、このジョウトリーグに出たついでに優勝を頂いてやる」
「勝手にすれば?」

 興味なさそうにハルキはあさっての方向を見た。

「それじゃ、また後で」

 ユウナは言葉を残して、先に進んでいくラグナを追って行った。
 ハルキはまだ考え事をしていた。ふと、ハルキはボールの中からポケモンを出した。エーフィとブラッキーだ。

「俺は、スナッチ団を抜けたときから、自分の生きる意味を探してきた。そして、オーレ地方で彷徨っていたとき“あの女”にであった。そして、バトルしたが、そのときは互角だった。
 そしてその女は言った」
―――「その力をポケモンたちを助ける為に使って!」―――
「その言葉通り俺はシャドーと敵対した。そしてスナッチャーとしてダークポケモンをスナッチ続けた。
 だが最後のダークポケモンをスナッチし終えたとき俺の目標は再び失った。そこへまた“あの女”が姿を現した。
 俺は俺のやり方で自分の生きる意味を探すと言い、再びバトルしてあいつのポケモンをスナッチした。
 そして、オーレ地方を飛び出し今日に至る。この組織に入ったのはいいが、俺はこれからどうすればいいだろう?
 意味も無くスナッチを続けていくべきなのだろうか……?」

 ハルキはエーフィとブラッキーに尋ねるが首を傾げるばかりであった。



 6

 マサトは本戦のフィールドに立っていた。そこで決勝トーナメントが行われる。
 一回戦のフィールドは岩のフィールドだった。
 そして一回戦が始まったのだが、マサトの相手は緊張のあまりぎこちなく指示してばかりでろくな指示もできなかった。
 でも、相手のポケモンたちはそんなトレーナーを気遣って一生懸命カバーしようとした。
 結局の所、マサトはジュペッタ、アメモース、ジュプトルの三匹だけを使って勝ったのだった。
 マサトは勝利のガッツポーズをした。そのときに一滴の汗がこぼれを落ちた。

「マサトやるかも!!これならマサト、優勝できるんじゃない?」

 ハルカは弟の活躍に目を見張った。

「果たしてそうだろうか?相手が緊張して力を出し切れなかっただけかもしれない。それに……」
「それに……何?」
「いや、なんでもない」

 ユウキはそこまで一時ながら口を紡いだ。



 ―――丁度同時刻のポケモンセンター。
 そこで、決勝トーナメントの対戦表を見ていた少年がいた。
 その少年は首にグレーのスカーフを巻き、パープルのポロシャツ、黒のジーンズを穿いていた。
 そして、腰にP☆DAを身に付け、トレードマークのメガネ……いや、サングラスをかけていた。
 それはともかくその少年はトーナメント表を見ながら唸っていた。

「どうやら、ヒカリさんもヒロトもこの大会に出ていないようだなぁ……」

 そして、少年は溜息をついた。

「せっかく、ノースト大会の借りをヒカリさんに返そうと思っていたのに」

 もう一度彼は深い溜息をついた。
 そしてふと現在映し出されていた試合を見た。

「ん?よく見ると、この試合で勝った方が俺とやるのか?で、勝者は……トウカシティのマサト?まだ駆け出しのトレーナーかな」

 トーナメント表は試合が終るとすぐに表示され、次の試合の予定がコンピュータによりはじき出されてた。
 そして、早くも決まった二回戦の組合せとは―――


“マサト対トキオ”


「ま、とりあえず出るからには勝たないと」

 トキオはポケモンたちをジョーイさんから受け取り宿舎へと戻っていった。



 丁度トキオと入れ替わりに、両腕にドラゴンの入れ墨をした男はポケモンセンターへと来た。
 トーナメント表を見に来たようだ。

「次の対戦相手は、マサムネ……。そして、準決勝があのメガネの少年かさっき入口で見かけたサングラスの男。試す価値は有りだな」

 彼はマントを翻してポケモンセンターを後にした。



「やぁ!マサムネ!」
「おぉ!マサトか!」

 一回戦が終わった後、マサトとマサムネは偶然街角であった。
 ユウキもマサトの後ろについている。

「緒戦は余裕勝ちだったな」
「ああ!楽勝だべ!メタグロスたちが気合でがんばってくれたからな!」

 マサムネの口癖は『気合だ!』である。まさにその通りでこれまでのバトルは粘り強く勝ってきたのだ。

「それにしてもマサトもなかなかやるじゃないか!」
「僕も楽勝だよ!何せ優勝候補のハルさんにも勝ったんだから!」
「確かにあのハルさんを倒したのは大きいべよ!でも、おいらは負けねぇよ!」
「じゃあ、マサムネ、準決勝で会おうよ!ところで、マサムネの次の相手って?」
「ああ、それがリュウヤっていう奴なんだ。でも、ジム戦とかは、ガーディやモココなどで戦っているみたいだ。予選リーグも、結構苦戦しているみたいだから、たぶん楽勝だべ!そっちは?」
「まだ見ていないよ。どっちにしたって僕が勝つもん!」
「そうか。じゃあ、また後で!」

 マサムネは町の中へと消えていった。そして、再びマサトとユウキは街中を歩き出した。

「なぁ、マサト」
「何?ユウキ?」
「次から俺がベンチに居ようか?」

 大会のルール上、ひとりまで付き添いが可能になっている。

「遠慮しておくよ!僕一人で戦うんだ!実際フィールドにいるのはトレーナーだけなんだ!助けなんて必要ない!それに緒戦も楽勝だったし!」
「果たしてそう言えるかな?」
「なに!?」

 マサトはユウキの方を見た。

「緒戦のとき実は緊張で指示が上手く出せなかったんじゃないのか?」
「…………」
「まぁ、今回は相手も緊張して駄目だったみたいだからポケモンたちの力で勝てたみたいだけど、次からはそうは行かない」
「うるさい!僕一人でやるったらやるんだ!誰の力も借りない!!」

 マサトは一人街中へ走っていった。

「…………」

 ユウキはジム戦を制覇した時から、マサトに何か違和感があると感じていた。
 それは、さっきの話を聞いて分かった。

「(あいつ……大丈夫か……?)」

 ユウキは走るマサトをただ見つめていた。だが、それが思わぬ展開に導くことになるとはユウキ自信知る由もなかった。



 7

 翌日、マサトは本大会のフィールドにいた。
 準々決勝一回戦の組み合わせは“マサト対トキオ”だ。
 会場は賑わい、激戦の予感させた。
 そして、マサトはフィールドの真ん中に立ちトキオと向き合った。

「よろしく!悔いのない戦いをしよう」

 トキオはサングラスを取り、握手を応じてきた。試合慣れしているようで堂々としていた。

「よろしくお願いします!!」

 マサトもちゃんと握手に応じた。ユウキに指摘されていたほど今回はさほど緊張を感じていなかった。
 位置に着くまでにシャッフルが行われた。その結果、マサトが先攻になった。

「よし、頼むよ!アメモース!」

 マサトの一匹目はアメモースだ。

「いけ!ヘルガー!」

 それに対して、トキオは炎タイプのヘルガーをフィールドに出した。

「それでは試合開始!」
「アメモース、『ハイドロポンプ』だ!」

 ヘルガーの弱点を突くように攻撃の指示を出した。

「ヘルガー、『火炎放射』!」

 一方、トキオは真っ向からハイドロポンプに対抗した。火炎放射とハイドロポンプがぶつかる。
 基本的にはハイドロポンプが相性面からいって押すはずである。だが、じりじりと火炎放射のほうが押し始めていた。

「アメモース、最大パワーで『ハイドロポンプ』だ!」

 そう指示するものの、結局、ハイドロポンプと火炎放射の押し合いが続くだけだった。しかし先にトキオが動いた。

「攻撃を止め!かわして、『火炎放射』だ―――!」
「アメモース、『水の守り』でガード!」

 アメモースは対ハル戦で見せた技『水の守り』を発動させた。その力はリザードンのオーバーヒートも防いだことで実証済みだ。炎攻撃はこれで防げる。マサトはそう確信していた。
 だが、ヘルガーは火炎放射をせず、普通に攻撃を仕掛けてきた。アメモースは、避けることができずまともに攻撃を受けた。

「(え!?どうして!?相手は『火炎放射』って指示を出したはずなのに!)」

 ヘルガーのたたきつけるような攻撃はアメモースを地面へと降下させた。そのときに水の守りも拡散してしまった。

「―――ましうち<騙し討ち>ってね。そこだ!!『火炎放射』!」
「アメモース、『ハイドロポンプ』!」

 ジャンプ中の狙い撃ちでアメモースに攻撃がヒット。
 ハイドロポンプは間に合わず、わずか二撃でアメモースはダウンした。

「くっ!次!」

 アメモースの変わりに出したのはヤルキモノ。ヘルガーは物理攻撃に弱いことを考えての選択だ。

「『みだれひっかき』だ!」

 出して早々、接近戦を仕掛ける。だが、ヘルガーはヤルキモノと上手く間合いを取っていた。
 ヤルキモノよりヘルガーのほうが素早さが上の為、ヤルキモノは近寄ることができない。

「『影分身』から『火炎放射』!」

 トキオは容赦なく攻撃を仕掛ける。ヤルキモノを影分身で取り囲み、火炎放射がヤルキモノを襲った。ヤルキモノはなんとかこらえた。

「『燕返し』だ!」

 火炎放射の隙を狙っての攻撃だった。『燕返し』は必中技だ。よほどの状況やハイレベルなバトルでない限りかわされることはほとんどない。
 確かにヘルガーに攻撃が命中した。だがそのときヤルキモノに2倍のダメージが返ってきた。ヤルキモノはダウンした。

「『カウンター』!?……ヤルキモノ!立つんだ!」

 マサトの声も虚しく、審判がヤルキモノの負けを宣言した。
 次にモココを出すが、マサトはがむしゃらに攻撃を指示して、その結果、ヘルガーに面白いようにかわされ、一撃も当たらなかった。
 それとは反対に、ヘルガーの攻撃は『シャドーボール』を中心にじりじりと削っていき、最後は『オーバーヒート』でダウンに追い込んだ。
 そのまま、ブレイクタイムに入った。

「(こんなはずじゃない!こんなはずじゃない!!……僕の力はこんなものじゃない!!!)」

 マサトは一つの言葉を反芻していた。そして、焦っていた。

「マサト……このままじゃ負けちゃうよ」
「そうだな」
「あのトキオさんのヘルガー、強いかも!」
「確かに強いけど、マサトが倒せないレベルではない」
「え?どういうこと!?実際は負けているじゃない!」
「そうだな」
「説明してよ!ユウキ!」
「はっきりいうと、マサトは力を出し切れていない。ただそれだけさ」

 ハルカが疑問を投げかけようとしたところでバトルは再開された。

「僕は負けない!行け!ジュペッタ!」

 マサトはぬいぐるみポケモンのジュペッタを投入した。

「ゲンガー!行って来い!」

 今度はゴーストタイプ同士の対決となった。

「ジュペッタ、『影分身』から『シャドーボール』!」

 さっきのヘルガーを彷彿させるような影分身を今度はジュペッタが披露した。
 そして、連続でシャドーボールを仕掛ける。だが、トキオは正確な方向を指示し、シャドーボールをパンチで粉砕させた。

「ゲンガー、『サイコキネシス』!」

 念動波を発動させ、周りにあった影分身を一気に消し去った。その中に、本体もいて、吹っ飛んだ。

「ジュペッタ!最大パワーで『シャドーボール』!」

 今度は今まで放った以上に大きなシャドーボールを放ったが、ゲンガーはあっさりと回避した。

「とどめの『シャドーパンチ』!!」

 避けることなどできず、ジュペッタはもろにうけ、ダウンした。

「(あのゲンガー、特殊攻撃、攻撃力、スピードがいずれも高い。でもこいつがいる!!)グラエナ!行け!」

 そして、速攻でグラエナに攻撃の指示を出した。
 一方トキオも『かみなり』で対抗した。
 だが、『かみなり』は命中しなかった。
 まず、グラエナのシャドーボールが決まり、そして、『噛み砕く』が攻撃が決まり、ゲンガーはダウンした。

「よし!」

 だが、次の瞬間、グラエナも倒れた。

「え!?何で……??」
「危ない……『道連れ』、成功してよかった……」

 トキオは一瞬のうちに『かみなり』の指示後に『道連れ』も指示していた。

「くっ……(僕は……僕は……負けない!!)」

 マサトは唇をかみ締めて、最後のボールを放った。



 第一幕 Wide World Storys
 ポケモンリーグジョウト大会② ―――マサトvsトキオ――― 終わり





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Last-modified: 2015-01-10 (土) 13:29:07
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