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たった一つの行路 №022

/たった一つの行路 №022

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 ある山地の道中でポケモンバトルが行われていた。
 バトルルールは2対2のシングルバトルである。
 ポケモンはフシギソウとジュプトルだ。
 審判は白い帽子をかぶった少年がやっていた。
 トレーナーはと言うと、フシギソウのトレーナーが赤いバンダナの少女でジュプトルのトレーナーは背の低いメガネをかけた少年だった。
 なお、この2人は姉弟だった。
 姉が指示を出すと、フシギソウは『葉っぱカッター』を仕掛けた。
 弟も負けずにジュプトルの『種マシンガン』で葉っぱカッターを撃墜する。
 すると今度はフシギソウが『花びらの舞』を放つ。
 ジュプトルは『電光石火』でかわすのが精一杯だ。その技は美しく威力があった。
 姉は2年前、グランドフェスティバルに出場したほどの実力者である。
 そのときとは比べ、技の威力も美しさも格段と上がっていた。
 その攻撃を連続で仕掛けた。だが、『花びらの舞い』には欠点がある。
 使用すると混乱すると言う欠点だ。
 弟はその時を狙い、フシギソウが混乱したのを見計らって攻撃を指示した。
 『電光石火』は見事に決まり、フシギソウは後方へ飛ばされた。
 しかし、その衝撃でフシギソウの混乱は解け、すぐさま『つるのムチ』でジュプトルの腕をつかんだ。
 そして、戦況は引っ張り合いになった。数分引っ張り合いが続いた後に、ジュプトルはフシギソウの方へ飛び込み、『リーフブレード』を叩き込んだ。
 フシギソウの力+ジュプトルの力のリーフブレードはフシギソウにもろにあたり、ダウンした。
 次に姉はフシギソウを戻し、ワカシャモを出した。弱点を突く戦法だ。
 弟もジュプトルを戻し、代わりにヤルキモノを出した。
 弟はもちろんノーマルタイプが格闘タイプに弱いことは知っていた。だがあえてヤルキモノを出した。
 少年のコールでバトルが再開した。
 ワカシャモもヤルキモノもコールと同時に接近戦を仕掛けた。
 ヤルキモノが『ひっかく』攻撃でワカシャモがパンチとキックにフットワークを加えて攻撃を仕掛ける。
 両者のかわしあいが続いた。次の瞬間、ワカシャモは『二度蹴り』でヤルキモノを攻撃した。
 ヤルキモノは後ろへ飛び退き、『シャドーボール』を放った。二度蹴りの後、避けることは不可能だった。
 ワカシャモはとっさに『炎の渦』で防御した。シャドーボールと炎の渦がぶつかり爆発を起こした。
 ヤルキモノはその爆煙の中を移動して、ワカシャモの目の前に出てきて、『ブレイククロー』で攻撃。
 ワカシャモは後方へ飛ばされたが、踏ん張り、そのまま『炎の渦』で攻撃を仕掛けた。
 しかし、ヤルキモノは炎の渦の中へ突っ込んだ。爪を光らせ炎を切り裂き、ワカシャモに攻撃を仕掛けた。
 『燕返し』だ。ワカシャモは連続攻撃でダウンした。

「ワカシャモ戦闘不能!ヤルキモノの勝ち!よって勝者マサト!」

 少年が眼鏡をかけた少年……マサトの勝利を告げた。

「やった!また僕の勝ち♪これで4戦全勝だね♪」
「な、何よ!偶然よ!次やれば勝つわよ!」

 姉であるハルカはマサトに文句をいった。

「偶然は4度も続かないよ!僕の方が実力が上だってことだよ!」

 そう言われて、ハルカは何も言えなかった。
 ここ最近、マサトの実力が上がってきたのだ。

「ユウキとの勝負にも負けたことないし」

 と、マサトは審判の少年を見て、ドヤ顔を見せる。

「それは、俺のポケモンの弱点を突いてくるからだろ!」
「でも勝ちは勝ちだよ!よし、この調子でジョウトリーグを制覇してやるぞ!」

 マサトはヤルキモノを戻し、山道を進み始めた。
 ハルカは怒って、マサトを追いかけた。
 ユウキはマサトを不安そうに見ていたのだった。



 たった一つの行路 №022



 1

 ジョウト地方、シロガネタウン。
 ジョウトリーグの開会式にトレーナーが集まる中、一人異様なオーラを持った男がいた。

「……ポケモンリーグ……か……」

 その男の服装はマントをつけて、一見派手そうに見えるが、マントの中は黒のズボンや灰色の半袖シャツでわりと地味であった。
 身長は190くらいありそうである。
 でも一番目立ったのは両腕に描かれたドラゴンの刺青だ。

「(はたして、ここに世界の運命を変えるほどの力を持つトレーナーはいるだろうか?……いれば……いいのだが……)」

 200人近い人数が集まり、一同が本大会、会場のフィールドに集まっている。
 最後の聖火ランナーが火を灯し、観客が一斉に賑わった。

「(何人かは相当の実力を持つものがこの会場にいるようだ……。なんとなくオーラで分かる)」

 男はあたりを見回してみる。だが、どこからそのオーラが放たれているかは正確にはわからなかった。
 ふと男は、あたりをキョロキョロ見回している少年を目にした。

「(あのメガネの少年は……。……いや、まさかな。あんな小さな少年が……。……そんなはずはない。とりあえず、試すだけ試してみるか……)」

 開会式を終えると、男は風のように人ごみの中へ消えてしまった。



 2

 ホウエン地方出身、トウカシティ出身であるマサトは、10歳になって、彼の姉であるハルカと一緒に旅に出た。
 ジョウト地方を目的と決めていたマサトは、ミシロタウンで船に乗る途中、オダマキ博士の息子のユウキと出会った。
 ムサシ、コジロウ、ニャースの2人と1匹のロケット団のトラブルを解決してユウキと仲良くなった2人は、3人でジョウト地方を旅することとなった。
 ジョウト地方を旅して、ジムリーダーと戦い、また、ロケット団との騒動に巻き込まれながらもマサトはどんどん強くなっていった。
 そんな決して楽ではない冒険を経て、ついにマサトはジョウトリーグの出場権を得て、シロガネタウンまでやってきたのである。

「マサト、開会式のとき何やっていたの?」

 開会式を終えて、ハルカとユウキはマサトを見つけて話し掛けた。

「開会式って、ジョウトリーグの参加者全員が集まるでしょ?だから、知っているトレーナーや強そうなトレーナーがいないかチェックしていたんだ。僕が家で見ていた大会のビデオに出ていた人も数人いたし」
「でも、はたから見たら、落ち着きがないように見えたぞ」

 ユウキがそう言った。

「それで知っている人がいたんだよ!あ、いた!!」

 マサトはそう言って、その知っている人の方向へ向かった。
 その人とは頭がオレンジ色でぼさぼさで尖っていて、図体は相撲取りではないかと思わせる体格だった。

「あ、お前はマサトか?」

 ハルカはその人物を見て驚いた。

「マサムネ!」
「お!ハルカではないか!ホウエン大会以来だべ!」

 マサトが見かけた人物とは、ホウエン大会決勝トーナメントでサトシと激しい戦いを繰り広げたマサムネであった。
 その大会ではベスト16と結果を残している実力者である。

「マサムネ、もしかしてジョウト大会に!?」
「もちろんだべ!おいらの夢は世界一のポケモンマスターになることだべ!ところでサトシはどこだ?」
「サトシはいないよ!」
「何!?それじゃ一体2人は何の為にここに来たんだ?」
「僕が大会に出るためだよ!」

 マサトが堂々と言った。

「ほう、マサトが出るのか!それじゃ、試合であたることになったら、全力で戦うべな!!」
「もちろんだよ!!」

 マサトとマサムネはガッチリと握手を交わした。

「う~ん、これって青春かも!あれ?ユウキは?」

 ハルカはマサトたちを見ていたが、ユウキがいないのに気づき、探し始めた。
 何かあったのかな?そう思ったのは取り越し苦労だった。ユウキは知らない女の子にアタックしていた。
 その女の子は体全体は細く、ショートヘアで程よい長さの青いジーパンに薄緑のノースリーブシャツで、メガネをかけていた。
 腰には寒い時の為だろうか、薄いピンクのカーディガンを巻きつけていた。

「ねぇ、僕とあっちの店でお茶しない?って、痛い!ハルカ!耳を離せ!」

 ハルカはユウキの行動にムッとし、ユウキに近寄り耳を引っ張り強制的に引き離した。
 その女の子は茫然とその姿を見ていたのだった。



 マサトの予選は順調に進んだ。
 予選は1対1のシングルのバトルで、勝てなくても通過できる可能性はあるが、その後に影響するので、なるべくなら全て勝って置きたいものであった。
 1人目はマッスグマのトレーナーでジュプトルで対抗した。
 マッスグマが隙のある突進技しかやってこなかったという弱点をつき、『リーフブレード』などの大技で勝ち抜いた。
 2人目はアブソルのトレーナーだった。マサトはグラエナで地道に攻撃をしていった。
 グラエナの特性『威嚇』により、攻撃の高いアブソルは能力を発揮できず、マサトのタフなグラエナの前に屈した。
 3人目はカイロスのトレーナーでヤルキモノで挑んだ。角を使った攻撃とパンチ攻撃は隙がなかった。
 しかし、マサトはヤルキモノに『大文字』を覚えさせていて、勝負を有利に運んで勝利した。
 マサトは全勝で予選を終えて予選リーグへコマを進めたのだった。



 予選リーグ当日、マサトたちは会場にいた。
 予選リーグの対戦相手が決まり、マサトは他の2人の試合を先に見ることになったのだ。

「あっちの派手に入場してきたのが、カオルコさんで……」
「こっちの女の人ってまさか……」

 マサトが言おうとしたときユウキが飛び出した。

「あの女の子は、あの時、俺がお茶に誘った女の子だ!!」
「本当だ!って、ユウキ下心丸見えかも!!」

 ハルカはそう言って、またユウキの耳をつねった。
 ユウキの言ったとおり、フィールドには前の日にユウキがお茶に誘った人がいた。

「違うよお姉ちゃん!僕が言いたいのはそういうことじゃなくて!」

 その時コールがなった。それは勝敗を告げるコールだった。

「マダツボミ戦闘不能!サンダースの勝ち!勝者ハル!!」

 カオルコはハルのポケモンを一匹も倒せずに終わった。

「うわ!あの人強いかも!」
「お姉ちゃん強いかもじゃなくて、本当に強いんだよ!」
「どういうことだマサト!?あの人を知っているのか!?」

 ユウキは別の意味で興味心身だ。ハルカはそんなユウキの様子を見てムスっとした。

「あの人はリュウキュウ地方のポケモン大会で2年連続の優勝者なんだ。そして、今大会の優勝候補だよ!!」
「えぇ!それじゃ、マサトはいきなりそんな強い人とあたるわけ!?」
「こうしちゃいられない!急いで宿舎に戻ってあの人のポケモンの弱点を探さなくちゃ!」
「ちょっと待てよマサト!もっとハルさんのことを教えて……痛いって!」

 ハルカはまた、思いっきりユウキの耳を引っ張ったのであった。



 ジョウトリーグは予選、予選リーグ、そして決勝トーナメントという形で進めている。
 予選はその場でポケモンを選んで、バトルをするが、リーグ戦以降は事前にパソコンでエントリーを済ませないといけない。
 そのパソコンには参加者全員のポケモンのデータが記録されている為、対戦相手のポケモンを読んで決めることが出来る。
 リーグ戦は3対3のシングルであるが、トーナメントは6対6のフルバトルである。



 マサト対ハルの試合始まろうとしていた。
 予選会場のため客はまばらであるが、フィールドはしっかりとしている。
 その中央で2人は握手を交わした。

「よろしくお願いします。私、負けません!」

 マサトの対戦相手、ハルは前回ユウキがナンパしたときとほぼ同じ服装をしていた。
 違う所といえば、ピンク色の手編みのカーディガンを羽織っているところである。
 口調は弱々しいが芯がしっかりと通っていて、内なる強さを感じさせていた。

「はい!でも、僕も負けませんよ!」

 マサト元気のある声で答えた。そして両サイドのポディションについた。

「先攻はシャッフルにより、ハル選手からです!」

 先攻後攻はシャッフルによって決められる。
 先攻の方は先にポケモンを出すことになるが、先に仕掛けることが出来る。
 一方、後攻は相手がポケモンを出してから選べるので、弱点を突くことが出来る。

「(……ハルさんは一体何を出してくるだろう?)」

 マサトは前日の夜遅くまで作戦を練っていた。
 ハルはリュウキュウ大会を2年連続優勝しているだけあって、ポケモンは皆強そうだった。

「(サンダース、ネンドール、ヘラクロスにジュカイン……これだけでも強い。でも中でも要注意なのは……あの2匹なんだけど……)」

 マサトが考えていた所、ハルが最初のポケモンを出した。

「(ヘラクロスか……それならこいつで決まりだ!)」

 マサトは即座にボールを投げた。中から、ギャロップが飛びだした。

「炎タイプと虫タイプ……タイプから言えば、マサトが有利ね」

 ハルカとユウキは観客席からマサトの試合を見ていた。

「ああ。だけど、そう簡単には行かないだろうな」
「試合はじめ!」

 審判がコールをした。

「ヘラクロス、『メガホーン』よ!」
「ギャロップ、かわして、『火炎放射』!」

 ハルはいきなり虫系最大の技を指示してきた。
 ヘラクロスは角を光らせ一直線にギャロップへと向かって行く。
 その攻撃をギャロップはかわした。マサトは効果はいまひとつといえども、最初の一撃は流れが変わると判断しかわすように指示を出した。
 そして、火炎放射を放った。

「かわして、『みだれづき』よ!」

 ヘラクロスはメガホーンの体制から立て直すようにブレーキをかけ方向転換をし、かわしてギャロップに接近した。

「(あのヘラクロス、僕のヤルキモノの速さと同等かも……このままじゃ、攻撃をかわせない……)『高速移動』で回避だ!」

 ギャロップの最高時速は240キロである。
 瞬時にそこまでスピードは出せないが、余裕でヘラクロスの攻撃をかわすスピードはあった。

「(あのスピードでは、攻撃は当たらないわね……それなら足止めをするまで……)『地震』よ!」

 ヘラクロスは体全体の体重を地面にかけ揺れを起こした。
 高速移動中に地震を起こしたりしたら当然動きが鈍る。そうハルは考えていた。

「今だ!ギャロップ!」

 でもマサトはその指示を聞いた途端にそう言った。
 するとギャロップはヘラクロスが地震をかけようと跳んでいる間に急ブレーキをかけ、その余波で飛び上がり、同時に炎を放った。
 その炎はヘラクロスを包み込んだ。

「これは、『炎の渦』!?」
「そのまま『火炎車』で突っ込むんだ!」

 『跳び上がる』と『炎の渦』のアクションを同時に行い、そして、降下とともに『火炎車』で直接攻撃するというものだった。
 飛行と炎タイプの二重攻撃は効果覿面だった。
 ぶつかった衝撃でヘラクロスを後方へと飛ばした。
 そのまま攻撃を受けていれば、ヘラクロスは戦闘不能になっていた。

「まだよ!」

 ヘラクロスはまだ立っていた。
 どうやらヘラクロスは『こらえる』をしていたようだった。
 ハルのヘラクロスは指示しなくても、自分の判断で『こらえる』行動をするようだ。

「『起死回生』よ!!」

 体力がなくなったときのこの技はどんな技にも劣らない最強の技になる。しかしその技には大きな欠点がある。

「『電光石火』で攻撃だ!」

 マサトはその欠点を知っていた。
 ヘラクロスの攻撃を左にかわし、後ろから体当たりを仕掛けた。
 ヘラクロスは前のめりに倒れた。

「(『起死回生』はスピードある相手には通用しない。まさにセオリー通りだね)」
「ヘラクロス戦闘不能!ギャロップの勝ち!」
「やっぱり、ギャロップ相手に『起死回生』は無謀でしたわ」

 ハルはボールに戻しつつ、反省した。だが、気持ちを切り替え、次のポケモンを放した。
 そして、そのボールから火竜が出てきた。

「(でた……。リザードン!)」

 マサトの警戒していたポケモンの一匹、リザードンだった。

「リザードン対ギャロップ、試合はじめ!」

 コールと同時にリザードンは飛び上がった。ギャロップでは、リザードンに効果ある攻撃が限られてくる。

「リザードン、『竜の怒り』よ!」

 ギャロップには特性『もらい火』がある。
 そのことを考慮してハルはドラゴンタイプの技で仕掛けた。
 竜属性のエネルギー弾がギャロップへと飛んで行く。

「『高速移動』で回避だ!」

 ギャロップはマサトの指示で回避した。再びギャロップは走り出すが、走り続けるだけでは、飛んでいるリザードンのほうが有利だ。

「そのまま連続攻撃よ!!」

 ハルは慌てず『竜の怒り』を連発させた。接近攻撃をしてこない限り、リザードンはダメージを受けることは無い。
 炎攻撃は両者にとって効果が薄いためだ。
 高速移動でかわし続けるが、10分くらい経ち、マサトが指示を変えようと考えた。

「(このままではギャロップがもたない。攻撃しないと……!)飛び跳ねるんだ!」

 ギャロップは脚力を生かし、リザードンに向かって攻撃を仕掛けた。しかし、その攻撃にハルは目を光らせた。

「ギャロップを受け止めるのよ!」

 リザードンは向かってきたギャロップを後退しながら、受け止めた。
 とは言え、多少のダメージは間逃れなかった。でも、ギャロップはリザードンに捕まれ動けない。

「今よ!『地球投げ』!」

 ハルが指示を出す前に、リザードンは動き始めていた。
 ギャロップの攻撃の衝撃を受け、そのままの方向から、ぐるりと一回転、二回転……と回り、地面へと叩きつけた。
 マサトは『火炎車』を指示したが、それどころではなかった。

「とどめの『破壊光線』!」

 起き上がろうとしたギャロップに追い討ちをかけた。攻撃がもろに当り、ギャロップの体力を全て奪い去った。

「ギャロップ戦闘不能!リザードンの勝ち!!」
「ハルさんって容赦ないわね」

 ハルの連続攻撃にハルカは目を見張った。

「バトルは一瞬でも気を抜くと痛い目に会うからね。そのことをハルさんは分かっているみたい。あぁ……流石だ。って……いたたた!何するんだよ!」

 今度はハルカはユウキの頬をつねったのであった。

「俺に恨みでもあるのか??」
「ふん!」

 ハルカはそっぽを向いた。

「(もうユウキなんて口利かない!)」

 ハルカが怒っている一方でマサトはギャロップを戻していた。それをハルがじっと見ていた。

「(状況は2対2ね。この状態で気をつけるべきなのは、モココね。後の私の2匹は電気タイプが弱点だし……)」

 その時、マサトは2体目のポケモンを投入した。
 中から出てきたのはチョウだ。いや、実際はチョウではない。
 よく見ると、蝶ではなく羽根に大きな目玉を持ったポケモンだ。

「(アメモース!?虫と飛行タイプのポケモン……リザードンには不利なポケモンのはず……何故出したの?
 ……もしかしたら、相手が私の最後のポケモンが“あれ”だと予測しているならば、ジュプトルの可能性が高い。
 モココであるならば、なおさら今出すはず。他のポケモンはありえないわね。どっちにしろこちらが好都合!リザードンで押し切るわ!)」

 ハルはそう予測した。

「何でマサトはアメモースを出したの!?」

 ハルカもさすがに驚いた。

「(マサトの目……何か狙っているな)」

 ユウキはそう感じ取った。

「アメモース対リザードン、試合はじめ!」
「(何を考えているか知らないけれど、一撃で決めるわ!)リザードン、『火炎放射』よ!」

 ハルは迷わず炎攻撃を指示した。灼熱の火炎がアメモースに襲い掛かる。
 アメモースは虫タイプを持っているため一回受けただけでも致命傷になりかねない。

「『高速移動』でリザードンの後ろに回りこむんだ!」

 アメモースはあっさりと攻撃をかわした。

「(なんて速さなの!!)」

 リザードンは直前で少し攻撃の方向を修正したにもかかわらず、火炎放射はかすりもしなかった。アメモースはリザードンの後ろに回りこんだ。

「翼を狙って、『冷凍ビーム』!」

 マサトはリザードンの翼を封じる作戦に出た。リザードンが飛べなければ、例え空を飛べるポケモンをもっていなくても対応できると考えたからだ。

「かわすのよ!」

 ハルはもちろん回避の指示を出した。けどかわさなかった。リザードンはその場から動けなかった。
 そして冷凍ビームは命中し、翼が凍らされ、リザードンは地面へと落下した。

「(あのアメモース、速いわね……それなら……)『火の粉』を撒き散らしなさい!」

 リザードンは出来るだけ火の粉をたくさんだし、周りを火の粉だらけにした。
 当然アメモースはかわそうとして、動く軌道が見えてくる。

「吹き飛ばすんだ!」

 アメモースは羽ばたいて風を起こし火の粉を吹き飛ばした。だがその時ハルはもう次の指示を出していた。

「今よ!『オーバーヒート』!!」

 オーバーヒート。言わずと知れた炎系最強の技である。
 一発だけならいいが、連続使用すると威力が落ちてしまうのが欠点だが、それ以外は最強の技と言ってもいい。

「アメモース!『水の守り』だ!」

 マサトが聞きなれない技を指示した。しかし、すぐにアメモースは炎に飲まれてしまった。
 全ての観客がアメモースの負けを悟った。だが、マサトは諦めていなかった。
 リザードンが炎を出し切ったとき、そこには自分の体を水で纏ったアメモースがいた。

「え!?嘘でしょ!」
「アメモース、『ハイドロポンプ』!!」

 今度はアメモースが水系最強の技で反撃に出た。水流はリザードンにヒットし、リザードンは後方へと押し出された。

「やった!決まった!いいぞ!アメモース!!」

 マサトはガッツポーズとした。でもリザードンは立ち上がった。

「そんなバカな!水系の技を受けて立ち上がるなんて……それならもう一度『ハイドロポンプ』だ!」

 アメモースは指示通りもう一度攻撃を放った。
 だが、ハルは紙一重でリザードンをモンスターボールに戻した。
 ハイドロポンプはリザードンがいた場所を飛んでいっただけだった。

「後もう一息だったのに!マサト惜しいかも!」
「さすがハルさんだ……不利な状況を立て直すために一度ボールへと戻した。しかもこれなら、『オーバーヒート』で消耗した体力も回復できる……さすがだなぁ……ん?」

 ユウキはまた耳をつねられないか、と思ってハルカの方をそっと見た。
 しかし、ハルカはもうユウキのことは気にとめていなかった。
 ハルはリザードンを戻した代わりに今度は別のポケモンをフィールドインさせた。
 そのポケモンは見るからに美しかった。そう、あのホウエン地方で貴重なポケモンとされる。

「(出た……ミロカロス……)」

 マサトが最も警戒していた一匹である。

「(リザードンはきっと最後のポケモンであるジュプトル戦にとっておいたほうが上策だわ。水系攻撃に効果が薄いミロカロスなら勝てるわ!それにあのアメモースはきっと……)」

 ハルにはある仮定が浮かんでいた。
 審判のコールがなり、試合が再開された。

「ミロカロス、『ハイドロポンプ』よ!」

 最初からハルは強力な技を指示した。威力はアメモースの攻撃より遥かに勝っていた。

「かわすんだ!そして、『ソーラービーム』!」

 マサトは草タイプ最強の技を指示した。チャージには時間が掛かるが、威力は高いことはハルカのフシギソウを見て知っていた。

「ミロカロス、かわすのよ!」

 動いてかわそうとする。だが、アメモースは動きながら、力を溜めることができ、攻撃から逃げられなかった。
 ソーラービームはミロカロスに直撃した。
 だが、ミロカロスはとくぼうが高いことで有名である。そのくらいでダウンしないことは分かっていた。

「もう一度、『ソーラービーム』だ!!」

 マサトは連続攻撃を指示した。

「『竜の息吹』よ!よく狙って!」

 いくらアメモースが、チャージしながら動けるといっても、高速移動ほどのスピードではない。そのため、竜の息吹は容易にヒットすることができた。
 その後にソーラービームの攻撃が来た。また、ミロカロスに命中した。だが、意外なことにまだ倒れない。

「『自己再生』よ!」

 すると、ミロカロスはみるみるうちに傷を再生させていった。

「……させない!『銀色の風』で畳み掛けるんだ!」

 2回目のソーラービームで倒せると思っていたマサトは、追撃をするタイミングが遅れてしまった。
 そのせいで、アメモースが銀色の風を放ったのは、ミロカロスの回復が終ったあとだった。

「『吹雪』よ!!」

 ミロカロスの吹雪はアメモースの銀色の風だけでなく、アメモースさえも飲み込んだ。
 吹雪をやめたときには、アメモースの氷付けが完成されていた。

「アメモース戦闘不能!ミロカロスの勝ち!」
「(やっぱり、アメモースの弱点……思った通りね。技が多彩な代わり、威力が通常のより明らかに低い。さっきのリザードンのときでも、普通の水ポケモンならあれでダウンするだろうし、私のミロカロスだって、ソーラービームは2度も耐えられないわ。それより相手は後一体。残りはジュプトルのはず!)」

 マサトはアメモースを戻した。
 そして、別のポケモンを投入した。そのポケモンはハルが予想したジュプトルではなかった。



 第一幕 Wide World Storys
 ポケモンリーグジョウト大会① ―――ホウエン地方トウカシティのマサト――― 終わり





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Last-modified: 2015-01-09 (金) 14:53:25
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