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たった一つの行路 №019

/たった一つの行路 №019

 アンダーへ侵攻し、ダークライナーに乗って逃げたヴィーナスを追ってダークポケモン研究所へやってきたカレンは、ダークポケモンにされる前のポケモンたちを解放することに成功した。
 ポケモンたちは捕まっていた時の鬱憤晴らしといわんばかりに、研究所内を暴れまわって、次々と研究員やシャドーの戦闘員を倒していった。
 その後、ポケモンたちは散り散りと野性へ帰っていった。
 砂漠という厳しい環境だが、恐らくそれぞれの住処を見つけて何とか暮らしていくことだろう。
 その後、カレンはハルキと再開し、残りのダークポケモンを確認しあった。
 エアームド、メタグロス、バンギラス……
 それが残り3匹のポケモンだった。
 それから、ハルキは連絡を待てとカレンに指示を出した。



 そして、数週間が経った。

「ここがラルガタワー……シャドーがお金持ちを集めてダークポケモンを戦わせるために立てた闘技場……そして、シャドーのアジト……」

 巨大な建物のてっぺんには丸いドームみたいな建物があった。
 そこがスタジアムであり、ボスがいると思われる場所だとカレンは悟った。

「決着をつけるわ……!!」

 スナッチマシンを確認して、カレンはラルガタワーへと突入した。



 たった一つの行路 №019



 リフトに乗ってどんどんと先へと進んでいくカレン。
 リフトを乗り換えるたびにシャドーの戦闘員と戦ってきたが、今のカレンの相手ではなかった。
 そして、スタジアムのタワーのエレベーターがある部屋に着くと、一般のトレーナーがまばらに存在した。
 恐らくシャドーの存在を知らないトレーナー達がラルガタワーの完成とともに興味本位でやってきたのだろう。
 上へと登ろうとエレベーターに近づいた時のことだった。

「カレンさん」
「?」

 肩を叩かれて後ろを見ると、黒服でグラサンをかけた男がいた。

「(シャドーの戦闘員!?)」

 慌ててモンスターボールを繰り出そうとする。

「僕です。シルバです」

 慌てて自分の名前を打ち明ける。

「シルバさん?何でここに?」
「カレンさんをサポートするためです。それより、上へ!この先にシャドーのボスがいるはずです!」
「ありがとう」

 シルバに礼を言うとエレベーターに乗っていった。

「気をつけてくださいね!」



 エレベーターを登った先の中層の階で待っていたのは、やはりシャドーの戦闘員だった。
 だが、二人がかりで襲ってきたにもかかわらず、カレンはあっという間にそいつらを倒してしまった。
 すると、パンパンパンと、拍手をするグレーの髪で赤い瞳の男が現れた。

「見事だ。貴様がカレンだな?」
「誰?」
「私はジャキラ。シャドーを統括する者だ」
「……!! つまりあんたが黒幕ね!」

 カレンはポケモンを繰り出そうとするが、ジャキラは掌をパーの形をして言った。

「待て。こんなつまらない場所で戦うのか?」
「……どういう意味?」
「どうせ戦うなら、上へと登って来い。スタジアムで決着をつけようではないか」
「コロシアム……ね」
「そうだ。そこで貴様の負ける姿を晒し者にしてやろう」

 笑ってジャキラはエレベーターに乗り込んだ。

「だが、その前に私の繰り出す刺客を倒せたらの話だがな」

 とりあえず、カレンは去って行ったジャキラを無視して、近くにあった回復マシンでポケモンたちの体力を回復させた。
 ボールをしまって、エレベーターへ向かおうとしたそのとき、上の階に行ったままだった2つあるエレベーターの一つが降りてきた。
 そして、そのエレベーターが止まった時、中から大柄の男が姿を現した。

「……なんだ。裏切り者のハルキじゃないのか!」

 エレベーターから降りてカレンを見たときの男の一言はこれだった。

「(裏切り者のハルキ?)……あんた誰よ!!」
「俺様はスナッチ団のボス、ヘルゴンザだ!お嬢ちゃん、ここを通りたければ俺様を倒して行くんだな!まぁ、無理な話だろうがな!」

 ぐわーはっはと笑うヘルゴンザ。

「……それより……裏切り者のハルキってどういうこと?」
「ん?お嬢ちゃん、ハルキのこと知っているのか?あいつはな、スナッチ団にいたんだ。それも凄腕のスナッチャーで俺様の右腕としてよく活躍してくれた!」
「!?」
「だが、ついこの前、スナッチマシンを奪い、そしてスナッチ団のアジトを爆破して組織から忽然と姿を消したんだ!!」
「(……爆発?もしかして、私が捕まった時の……?)」

 ハルキのことは驚いたが、カレンの頭は冷静だった。

「まったく、あいつの考えることなんてわからないな!このままスナッチ団にいれば、オーレ地方のポケモンは全て俺たちスナッチ団のもの……いや、シャドーのものとなっていたのにな!!」
「それはきっとハルキが嫌だからやったのよ!!」
「ふん。なぜそんなことを言い切れる?」
「それは……私と一緒にダークポケモンをスナッチしてくれると言ったからよ!!」
「ほう……。あいつがそんなことを……。だがお嬢ちゃんはそれがあいつの本心だと思うか?」
「……私は本心だと……信じたい……」
「ふん。それはお嬢ちゃんの希望だ。それが、本当かどうかなんて本人に聞かないとわからないな!」
「…………」
「おしゃべりは終わりだ!そろそろ、やらせてもらうぜ!」

 ヘルゴンザが両手にポケモンを持ち、構えた。遅れてカレンもボールを取ろうとした。

「どいてろ」
「え!?」

 カレンは後ろを見た。ヘルゴンザも声の方向を見た。

「……ハルキ!」
「お前の相手は俺だ」
「ふん。そう来なくちゃな!」

 ハルキを見てニヤッと笑うヘルゴンザ。

「……って、連絡しといてなんでハルキのほうが遅いのよ!」
「あんたはこの上にいるシャドーのボスを倒せ」

 カレンの質問にハルキは答えようとせず、逆にハルキは先に進むように促した。

「ちょっと!勝手に決めないでよ!」
「俺はヘルゴンザとの因縁にケリをつけないといけない。だから、行け!」
「……わかったわ。でも一つだけ聞かせて!」
「なんだ?」
「あなたがスナッチ団だったって……本当?それと、あなたは何でスナッチ団を辞めたの?」
「……愚問だな。そいつの話を聞かなかったのか? ……そんな事考えているんなら、さっさとその先にいる敵を倒してくるんだな」
「わかったわ……」

 カレンはエレベーターに乗ってボタンを押した。

「……スナッチ団を辞めたのは底が見えたから。居ても俺にとってなんのプラスにもならないと思ったからだ」

 エレベーターのドアが閉まるときにそうハルキが答えた。
 カレンの乗ったエレベーターが上へと進むと、ヘルゴンザはエアームドを繰り出した。

「スナッチ団の底が見えただと……?」
「ようは組織に興味が無くなっただけだ」
「面白いこと言ってくれるじゃねぇか!」

 黒いオーラを纏ったエアームドが素早い動きでハルキへと襲い掛かる。

「そいつがダークポケモンなんだな。残っているデータでわかる」

 そういってからハルキもポケモンを繰り出した。

 ズドンッ!!

「なっ!?」
「あんたと互角に戦うために手に入れたポケモンだ」

 エアームドと互角にぶつかっているのは、ドラゴンポケモンのボーマンダだった。

「あんたのエアームド……スナッチしてやるよ」



 ハルキとヘルゴンザが戦っている間、カレンはエレベーターの中でハルキの心配をしていた。

「ハルキ……大丈夫かしら……」

 チ~ン

 しかし、最上階へついたのと同時にカレンは頭を切り替えた。

「ハルキのことは心配しても仕方がないわ。このスタジアムで私はあのジャキラって男を倒して見せる!!」

 エレベーターの扉が開くと、満席の観客席があるでっかいフィールドがあった。

「ようこそ!ラルガタワースタジアムへ!」

 メデューサ(?)のような頭をした男……ジャキラがフィールドの真ん中に立っていた。

「よくヘルゴンザを退けてこれたものだ。ところで聞くが、シャドーに入る気はないか?」
「ポケモン達の心を閉ざして、兵器として扱う組織なんて絶対に入らないわ!そんな組織……私が壊してやる!!」

 カレンは毅然とした態度で言った。

「……冗談で聞いたんだが……。どっちにしても、私がコテンパンに叩きのめしてやる!」

 ジャキラとのバトルの火蓋は切って落とされた。
 まずジャキラが出したのはバシャーモだった。
 カレンは対して、オオスバメを出す。
 バシャーモの炎攻撃を上手くかわしながら、オオスバメは接近する。

「ほう、なかなかのスピードだ。なら2匹同時攻撃ならどうだ!?トドゼルガ!」
「(2匹目!?)」

 トドゼルガの『冷凍ビーム』がバシャーモの炎攻撃と同時に襲う。

「『影分身』よ!」

 オオスバメがよけている間に、カレンも2匹目のポケモンを取り出す。
 毒虫タイプのアリアドスだ。
 高速移動で撹乱しながら、トドゼルガへ接近する。
 二匹目に気づいたジャキラはバシャーモに撃退するように指示を出す。
 だが、アリアドスの目の前にバシャーモは出たが、カレンのオオスバメはそこを狙い、『燕返し』でダウンさせた。
 しかし、ジャキラもその隙を狙って、冷凍ビームでオオスバメをダウンさせた。
 結局、2人は倒れた二匹を戻して、さらに新しいポケモンを投入した。

「アリアドス、『シグナルビーム』!カメール、『ロケット頭突き』!!トドゼルガへ集中攻撃よ!」
「ネイティオ、『スピードスター』!!トドゼルガは迎え撃て!」

 ネイティオの星の嵐の中、アリアドスはトドゼルガにシグナルビームを命中させた。
 トドゼルガは反撃に出ようとするが、一瞬怯み攻撃できなかった。
 そこへカメールの頭突きがヒットする。
 だが……

「なんだ。その程度か!?」
「……!」

 トドゼルガはカメールを弾き飛ばした。

「その二匹の攻撃じゃ、私のトドゼルガの防御は崩せないぞ!」
「じゃ、崩してあげるわよ!カメール、ネイティオに牽制!アリアドスは『ナイトヘッド』連続攻撃!!」
「ふん。トドゼルガ、かわして『冷凍ビーム』!!」

 しかし、トドゼルガのスピードは遅く、ナイトヘッドがまともにヒットした。
 トドゼルガが冷凍ビームを放つのとアリアドスが2発目のナイトヘッドを放つのは同じタイミングだった。
 そして同時に当たってダウンした。

「くっ!ネイティオ、『スピードスター』をカメールに向けて連射しろ!!」
「カメール、殻にこもって、『転がる』!!」

 甲羅にこもっての転がる攻撃は強力だった。
 スピードスターを全て弾き、ネイティオに接近していった。

「ちっ!それなら、『サイケ光線』だ!」
「『高速スピン』よ!!」

 『転がる』から今度は横に回りはじめ、サイケ光線を防いだ。

「フィニッシュよ!カメール!!」
「それなら、『鋼の翼』だ!!」

 カメールは再び殻にこもって『転がる』をし、ネイティオに向かって飛んでいった。
 そのまま空中に飛んでいてさらに高速スピンまでかかっている状態でカメールは手足顔を出し、そのままパンチをネイティオにぶち込んだ。
 しかもただのパンチではない。カメールの拳は冷気を帯びていた。
 回転速度を加えた『冷凍パンチ』は一撃でネイティオをダウンさせてしまった。

「どうよ!!」

 カレンはガッツポーズをして、カメールを一時戻した。

「…………。だが、貴様はこれで終わりだ!私の最強のポケモンに倒されるがいい!行け!メタグロス!!」
「来たわねダークポケモン!ついにあなたの野望が終わるときよ!」
「なんだと?」

 カレンは左手にボールを構えた。

「“これ”でスナッチしてあげるわ!!」
「な!それは!」

 カレンは思いっきり振りかぶって、モンスターボール……いや、マスターボールを投げつけた。
 このマスターボールはカレンがダークポケモン研究所の戦いを終えてからローガンからもらった物だった。
 そして、いとも簡単にメタグロスはボールに収まってしまった。

「ば、バカな……。私の最強のポケモンが……。こんなことあるはずがない!まだ終わってない!ポケモンならまだいる!」


「見苦しいぞ!ジャキラ!!」


「!!」

 ジャキラは残っているボールを構える。だが、その時奥から大きな声がした。

「え?誰!?」

 ジャキラはビクッとして、その声の主に跪いた。

「はっ……申し訳ありません……」
「あなたはもうどこへでも好きなところへ行きなさい。クビだ!」
「くっ……」

 奥から姿を現したのは意外な人物。カレンが知っている“あの人”だった。
 その人物と入れ替わり、ジャキラは敗走していった。

「えーと……誰だっけ?」

 カレンは意外な人物を見て素っ頓狂な声を上げた。
 彼はもちろんずっこけた。

「おやおや……私を知らないとは……。私はフェナスシティの市長のバックレーですよ」
「あー」

 名前を出されて、カレンは掌をポンッと叩いた。
 カレンはたまにしかフェナスシティに来ないので知らなくてもおかしくなかったかもしれない。

「え!?でも、何でフェナスシティの市長がここに?」
「おや、まだ気付きませんか?」

 優しそうな市長の表情が、突如悪い人相へと変えた。
 しかも、何故か地上から浮いている。
 一体どうやっているんだろうか。

「我がシャドーの影のボス……ワルダックなのだよ!」
「まさか……フェナスシティの市長がシャドーの黒幕だったなんて……!」

 カレンはボールを構える。

「バトルする気か?我に勝てるとでも思っているのか?さっき貴様が戦ったジャキラよりも実力が上なのは当たり前。何より、貴様のポケモンの半分は戦闘不能のはずだ」
「それでも私は戦う!!ポケモン達の平和と未来の為に私は戦う!!」
「バカな娘だ」
“確かにバカだな。だが、そこがお前のいいところだ”
「え!?」

 カレンは後ろを振り向いた。
 そこにはエレベーターを登ってきたハルキがいた。

「ハルキぃ!!」
「ほう、貴様がスナッチ団を裏切ったハルキか。丁度いい。二人まとめて我がコテンパンにしてやる!!」
「それはどうかな。タッグバトルは一人の時より二人のときのほうが強い。その意味がわかるか?」
「ふん。一人だろうが二人だろうが同じことだ」

 ワルダックは2匹のポケモンを出した。
 ハッサムとボーマンダだ。

「おい、あんた、“あの”ポケモンは持っているんだろ?」
「え?」

 ハルキはカレンにあるポケモンを見せた。
 それを見てカレンはハルキの意図を理解した。

「わかったわ!」

 そして、2人はポケモンを出した。
 まったく同じ様なポケモンを。

「ふん!貧弱ねずみポケモンを2匹も出した所で結果は同じだ!!ボーマンダ、『破壊光線』!ハッサム、『剣の舞』で強化!」
「一気に行くわよ!プラスル、『手助け』!!」
「マイナン、『10万ボルト』」

 マイナンは尋常じゃない電撃を放電した。
 しかも、その電撃はボーマンダの破壊光線を貫き、ボーマンダを一撃でダウンに至らしめた。

「なに!?我のボーマンダが!くっ、ハッサム、『鋼の翼』で弾き飛ばせ!」
「マイナン、『雨乞い』」
「プラスル、『かみなり』!!」

 今度は雨を降らせた。
 そして、かみなりがハッサムに落ちた。
 また、一撃でワルダックのポケモンはダウンした。

「バ、バカな!!」
「教えてやろうか?プラスルとマイナンの特性はそれぞれ『プラス』と『マイナス』。それぞれ、特性で二匹の能力を高めあっている。だから、この2匹が出てきたときは単に2匹分の力じゃなく、それ以上の力が発揮することができる」
「つまり、1+1=2という単純な計算ではなく、1+1が3にも4にもなるのよ!あんたみたいな、ポケモンを戦闘マシンとしか思っていない人には理解できないでしょうけどね!!」
「認めんぞ!ヤドキング!ケッキング!」
「無駄よ!プラスル、ヤドキングに『かみなり』!!」

 プラスルの攻撃がヤドキングを撃つ。
 一撃でヤドキングは倒れる。

「マイナン、ケッキングに『かみなり』」
「ケッキング、『シャドーボール』!!」

 2つの技がぶつかる。
 だが、やはりかみなりが押し切った。

「ケッキング、『破壊光線』!!」
「……えっ!早い!?」
「…………」

 間髪をいれず、ケッキングの連続攻撃がマイナンを襲った。
 マイナンは破壊光線の衝撃に巻込まれた。
 そして、消滅した。

「なに!?」
「マイナンは!?」
「ヤドキングがやられる前に『スキルスワップ』を使って、特性の入れ替えでもしたんだろ?だが、破壊光線を使ったらそうは行かない。確実に少しの隙ができる。だから、あらかじめ『身代わり』を作っておいた」
「そうだったのね!」

 カレンは感心してハルキの話を聞いていた。

「マイナン、『手助け』」
「よし、プラスル、『かみなり』よ!!」

 今までで最大の雷が、ケッキングに命中した。
 無論、ケッキングはなすすべなく倒れた。

「……ここまで我を本気にさせるとは……。いいだろう!地獄を見せてやる!カイリキー!バンギラス!」

 そして、ワルダックは最後に二匹を投入した。

「…………!! ハルキ! あのバンギラス、ダークポケモンよ!」
「よし、スナッチしてやる……」
「ふん、そう簡単にいくかな?」
「「……!!」」

 バンギラスがフィールドへ姿を現した瞬間、マイナンが呼んだ雨雲が砂嵐に吹き飛ばされてしまった。
 さらにそれだけでなく、プラスルもマイナンも吹き飛ばされた。
 カレンとハルキも嵐に吹き飛ばされないように必死だ。

「くっ!」
「なんて嵐なの!?」
「そして、この嵐の中動けるのは『強制ギプス』で極限まで体を鍛え抜いた我のカイリキーだけだ!!やってしまえ!!うわぁ~!!」

 というか、ワルダックも飛ばされかけていた。
 バンギラスは嵐を調整して、プラスルたちが上手くカイリキーのところへ飛んで来るようにした。

「ハルキ!やるわよ!プラスル、『手助け』!」
「マイナン、『10万ボルト』」

 飛ばされたままで、電撃を放ち、なんとかカイリキーに命中させる。
 だが、ワルダックの言うようにこのカイリキーは並の育ち方ではなかった。
 電撃を耐えきり、『空手チョップ』を2匹同時にヒットさせた。
 ハルキは慌ててマイナンを戻す。

「それなら……ボーマンダ」
「無駄だ!バンギラス、『ダークエンド』!!ボーマンダを押さえつけろ!」

 バンギラスは闇の力を溜めて、そのまま捨て身でボーマンダにぶつかりに行った。

「ハルキぃ!カイリキーを狙って!」

 カレンのプラスルはまだ倒れていなかった。
 しかも、バンギラスの『ダークエンド』を抑えている。

「何!?このネズミがカイリキーの攻撃を耐え、さらにバンギラスの最強の技を受けているだと?」
「こんなの『守る』を使えばいいことよ!プラスル、『手助け』!!」
「なるほど、ボーマンダ。『燕返し』」

 プラスルの助けを借りた攻撃がカイリキーに命中した。
 さすがのカイリキーも、先ほどの電撃をまったく受けなかったわけじゃないのでダウンした。
 だが、隙を見せたプラスルはバンギラスののしかかりでダウンした。

「もどれ」
「もどって!」

 カレンとハルキは改めてポケモンを戻した。
 そして、それぞれ最後の2匹を出した。

「我の最強のダークバンギラスに勝てるものか!!バンギラス、砂嵐で吹き飛ばせ!」
「もう、その天気は飽きたわ!!メガニウム、『にほんばれ』!!」
「いいかげんうんざりだ。ブラッキー、『怪しい光』」

 そうして、バンギラスは混乱して、自分を攻撃し始めた。

「くっ!何をしているんだ!!」
「決めるわよ!『ソーラービーム』!!」
「ブラッキー、力を溜めて“あの技”を放て」

 草系の中でもトップレベルの技が炸裂した。
 しかし、それだけではバンギラスを押し切るには十分ではなかった。
 そこへ『月の光』の応用で光を圧縮したボールをバンギラスに命中させた。
 バンギラスは倒れた。

「え!?なに今の技?」
「……俺がスナッチする」

 カレンがブラッキーの見たことのない技に見入っている間にハルキは左手でボールを投げた。
 それは一直線に飛んでいき、バンギラスに命中。そして、スナッチした。

「バカな!我が負けるなんて……。こうなったら、逃げて……」
“もう逃げられんぞ!”
「なっ!!!!」
「あっ!シルバさんにギンザルさん!それにみんな!」

 ラルガタワーのスタジアムにはいつの間にかカレンの知り合いでいっぱいになっていた。
 そして、ボスのワルダック、以下シャドーは一応全員捕まったのであった。

「やったわね!ハルキ!これでオーレ地方も平和に……」
「あ!アレを見てください!!」

 シルバが空を指差した。

「あのポケモンは……?」

 空を見上げると、とても美しい鳥が空を飛んでいた。

「アレは……ホウオウだな」
「ホウオウ……ですか?」
「きっと、ホウオウもダークポケモンのことでシャドーが許せなかったのだろう。もしかしたら、シャドーと戦うために来たのかもしれないな」

 ギンザルも空を見上げながらそう推測した。

「ホウオウ……とっても綺麗……ね?ハルキ!!……あれ?ハルキ?」

 そして、隣にいたはずのハルキの姿はなかったという。
 ホウオウはUターンをして来た道を戻っていったのだった。



 第一幕 Wide World Storys
 二人のスナッチャー⑤ ―――ラルガタワー――― 終わり





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Last-modified: 2015-01-06 (火) 09:37:50
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