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たった一つの行路 №014

/たった一つの行路 №014

 ここはノースト地方でもより季節感が現れる町、マングウタウン。
 春はピンク色の鮮やかな桜が私たちを魅了してくれる。
 梅雨の季節になると人を憂鬱にさせるような雨に苛まれるけれど、夏になるとみずみずしい緑の葉と太陽が私たちの心を躍らせる。
 葉っぱの色が黄色や赤に変わるのは秋の紅葉の季節。この時期になると、お米やたくさんの果物が取れて、私たちの食感を満たしてくれる。
 冬になると、ここでは雪も降り、私たちははしゃいで外に飛び出て遊ぶ。
 そんなマングウタウンを私は明日旅立っていくの。
 旅の目的は世界一のポケモントレーナー!私の名前を全世界に轟かせてやるのよ!
 でも、その前にわたしには気になる人がいるの。
 それは同じ町に住んでいる、幼馴染のヒロト。
 ポケモンスクールにいるときはすっごく仲がよかったと思っただけなのに、卒業してから私はヒロトのことを考える時間が多くなっていたの。
 もっと、ヒロトと一緒にいたい。ヒロトの事を知りたいって。
 だから私はヒロトと一緒に旅に出たい。
 そんな思いを込めて、今日は外に出かけていた。



 たった一つの行路 №014
 第一幕 Wide World Storys
 ヒカリのノースト地方冒険記



「……悪いけど……ヒカリ。一緒に行けねえよ」

 ヒロトはあっさりとそう言った。私と一緒に旅をできない。
 私は必死に説得をしようとした。でもヒロトは首を縦に振ろうとはしなかった。
 私はショック以外何も感じられなかった。
 なにせ理由も聞いても答えてくれなかったのだから。
 わかったわ。ヒロトも元気でね!といって私は笑顔でその場を去ったわ。
 でもその作り笑顔はふとした瞬間で崩れた。
 自分でもわからなく涙が溢れていた。
 この時わかった。
 私はヒロトが好きだったんだと。
 そして、私は決意した。
 ヒロトにポケモンバトルで負けないと!勝って私の気持ちを伝えるということを!



 翌日、私は最初のポケモンをもらう為にトミタ博士の研究所へ行った。
 すると突然私に一匹のポケモンが飛びついてきた。
 私は慌ててそのポケモンをキャッチして尻餅をついた。
 そのポケモンこそが私のファーストポケモンフシギダネだった。
 トミタ博士に聞かれる前に私はこの子を旅のパートナーに選んだ。
 そこで、私は思いついた。ここに旅立つ前にヒロトと1回バトルしてみようと。
 そして、町の外れで待ち伏せをしていた。案の定ヒロトに出会った。

「待っていたわよ!ヒロト!」
「ヒカリ!待ってたって……いっしょに行かないって……」

 そう言われて2度もショックだった。

「(それほどまでに私といっしょに行きたくなかったのかな……?)」

 あとから考えてもそう思うしかなかった。
 そしてバトルをしたわ。
 でも―――

「ザーフィ!とどめのひのこだ!!」

 ヒロトのヒトカゲと相性が悪く負けてしまった。

「次は負けないわよ!」

 と言ったが、このままでは絶対次も負けるだろうと思っていた。
 ヒロトのポケモンバトルのセンスは私以上だった。
 だから私はヒロトをライバルと定めて負けずに旅に出ることができた。



 まず、私はホオノ山へ向かった。
 思ったとおり、苦難の連続だった。
 なにせ、最初の旅だった為、知らないことや今までになかった状況に立たされたりと大変だった。
 何よりも、一人は恐かった。傍にヒロトがいてくれたら……と思うことも何度もあった。
 でも、その度にヒロトもこんな旅をしているんだと考えて勇気がわいてきた。
 そして、ジョウチュシティに辿り着いた。



 最初のジム戦、ジョウチュシティのジムリーダーはヒビキと言う豪快な人だった。
 フィールドも広かったし弟子もいっぱいいた。
 ルールは2対2のシングルバトルだった。
 何とかホオノ山で捕まえたロコンとフシギダネで勝つことができたわ。
 ジョウチュシティをなんなくと散策した後、次の目的地をノースト地方最北端のブルーズシティに決めたわ。
 何せそこはノースト地方で水ポケモンが一番捕獲できる場所と聞いたから。



 ブルーズシティへの道はとても険しかったわ。
 様々なトレーナーと出会い、勝ち負けを繰り返して、ポケモンたちのレベルを上げていった。
 そんな経過もあって、私はブルーズシティの釣りにチャレンジした。でも―――。
 …………。
 釣れない。
 …………。
 釣れない。
 …………。
 釣れない。
 3時間以上もやっていたが収穫ゼロ。
 まあ、最初はこんなものよ。とそう思い、この日は引き上げた。
 けれど、これが一週間も続いた時にはさすがにあきらめようと思った。
 でもその時釣竿が引いた。
 私は思いっきり竿を引いた。
 そこに出てきたのは二枚貝ポケモンのシェルダーだった。
 フシギダネの『つるのムチ』で弱らせてモンスターボールを投げたら簡単に捕まった。
 その日はゆっくり休んで次の日にジム戦へ行った。
 ここのジムはダブルバトル形式だったわ。
 でも、ブルーズシティに来る途中で色々なトレーナーと戦う中でダブルバトルもやっていたので戸惑わずにバトルすることができたわ。
 でもバトルはかなり劣勢だった。

「シェルダー戦闘不能!」

 私は負けると思ったわ。
 その時、フシギダネがフシギソウに進化したのよ。
 進化したときの技の威力は桁違いに違っていた。

「イノムー、ポワルン同時戦闘不能。よって勝者ヒカリ!」

 フシギソウのおかげで私は勝つことができた。
 一番苦戦したジム戦はこの戦いだったわ。



 ジム戦を終えて何日かブルーズシティに滞在した後、私は南にあるブーグシティに向かった。
 そこに行く途中もトレーナーが勝負を仕掛けてきた。
 でも、進化したフシギソウの敵ではなかったわ。
 ブーグシティについてまず私は図書館に向かった。
 だってここの町の名所と言ったら、全国有数の図書館だったからよ。
 私はその図書館に行ってみて圧倒された。
 そこには本の山があった。
 ジャンルも私の思った以上にあった。
 そんな本がいっぱいある中で、私はポケモンの進化に関する本を見つけた。
 ポケモンが進化するにはレベルを上げるだけでなく交換させたり、特殊な石を当てたりすると進化すると言う。
 私はこの進化の石を見て欲しいと思った。



 数日後、この町を出ようと思ったとき偶然ヒロトを見かけた。

「あれ?ヒロト?」

 思わず私は声に出して彼の名前を呼んでみた。

「…………!ヒ、ヒカリ!ど、どうしてここに?」

 私がここにいるのはどうやら意外だなとヒロトは思ったらしい。

「あら、ヒロトこそ!」

 私も少しビックリしたわ。
 でも一瞬私はこれが運命なのかもと思ったりもした。

「俺はここから北東のブルーズシティにジム戦をしに行くんだ」

 ヒロトが逆方向に行くということを聞いて私はがっくりした。

「あら、私はもう行ってきたわよ。ほら」

 私は自慢げにヒロトにバッジを見せた。

「これがブルーズシティでゲットしたコールドバッジ、これがジョウチュシティでゲットしたファイトバッジよ!」
「ふーん……2個もゲットしたんだ」
「ヒロトは?」
「2個だよ。まだ、ブルーズシティにも、ジョウチュシティにも行ってないけど」
「じゃあ同じね!私、この大会で優勝するからね!」
「俺だって負けないさ!」
「じゃあ、大会で会いましょう!」
「ああ!」

 短い会話のあと、私はその場所から立ち去った。
 そのあと私は少し不思議な違和感を感じた。
 普通に話すのはいいのに、何故ヒロトは私といっしょに行ってくれなかったのだろうと。
 そのときの疑問を私は未だに解き明かしていない。



 南へ行ってすぐにオートンシティに着いた。
 オートンジムのジムリーダーはナルミという私と同じくらいの年の人だった。
 なんだかナルミの気迫は今まで戦ったジムリーダーとは比べ物にならなかった。
 後から聞いたことだけれども私に負けたらこのジム始まって以来の3連敗だったらしい。
 ロコンが倒されて残りがシェルダーとフシギソウになった。
 でも、ロコンでラクライとコイルを倒して最後のポケモンハッサムに挑んだ。
 フシギソウなら楽に勝てると思った。
 でもさすがにジムリーダーだったわ。
 攻撃技が何も効かなかったら。
 でも、何とか『しびれ粉』でマヒさせて、シェルダーの水攻撃で倒すことができたわ。
 ナルミは負けてそのまま泣いてしまったわ。
 まさかジムリーダーが負けて泣くなんて思わなかったから一瞬戸惑ってしまった。
 でもナルミのお兄さんがやさしく慰めてくれたの。
 私はその光景を見て心の中に隙間風が入り込むように寂しい感情が出てきた。
 すぐに私はジムバッジを受け取りこの場から抜け出した。



 そしてオートンシティのさらに南のフールタウンについた。
 そのフールタウンに着くと、心地のよい音色が響き渡っていた。
 町の人たちはもちろん、私もそれに聞き入った。
 演奏している人は誰かと覗いてみると、グレンのフードに旅人の服を着ていている大体25歳くらいの男性だった。いや、実際はもっと上かもしれない。
 その男はギターにしては弦の部分が非常に長い楽器を持っていた。普通のギターと比べたら2倍くらいはあるだろう。その楽器を男はヒートランプと言った。
 そして、ふと私にダブルバトルを挑んできた。
 私は今絶好調だったので負ける気がしなかった。ましてや旅の歌芸人なんかに負けるなんて少しも思っていなかった。
 でも、シェルダーとロコンで挑んで完敗した。

「お主。その二匹を進化させておらんのか?二匹とも石で進化でいるぞ?」

 男はそう言った。
 私はその時まだポケモンの知識が浅かった為、進化できることを知らなかった。

「何だ。知らんかったのか。ならこれをお主にやるわい」

 そうすると男は箱を取り出して、私に渡した。

「進化の石3点セットじゃ。これさえあればたいていのポケモンは進化できる。それをお主に譲ろう」
「……あなたの名前は!?」
「タキジ。運命を詠う者じゃ」
「運命を詠う者?」
「まぁ、深いこと気になさんな」

 そう名乗ったタキジさんは、私が石に見とれていた瞬間にどこかへ消えてしまった。
 進化の石3点セットを置いて。



 ツバキの森を南に抜けてライズジムに入ったとき私は驚いたわ。
 だって野菜がいっぱいあったのだから。
 試合で2匹出すはずのポケモンはパルシェンだけで勝ってしまったのだ。
 私は4つのバッジを手に入れてライズシティの西にある港からホクト地方のトウマ高原に向かった。



 船の中でトレーナーに挑まれた。
 進化すると強くなると知った私はフシギソウも進化させようとがんばった。
 みごとに私のフシギソウはフシギバナへと進化した。
 ホクト地方についてからすぐにトウマ高原に行って手続きを済ませた。
 そして、私は大会が始まるまでの2週間、ずっと技の練習をしていた。



 大会が始まって私はすぐに抽選場所に向かった。
 実のところ一番初めにくじを引いたのは私だった。
 Dブロック……それが私の戦うブロックだった。
 すぐに会場を出て私はヒロトを探した。
 ヒロトの実力なら絶対ノースト大会に来ているはずだと思ったからだ。
 10分くらい探して私はようやく見つけた。
 私は後ろから声をかけた。

「ヤッホー!ヒロト!」

 ヒロトは気がついて私の方を向いた。

「ヒカリ!!元気か!?」
「もちろんよ!」
「抽選は終わったのか?」
「終わったわ!Dブロックよ!ヒロトはまだなの?」
「ああ。俺はこれからだ」

 私はこれから色々とヒロトに話したいことがあった。

「おーい!ヒロト!!」

 しかしある声によってそれは阻まれた。

「ん?この声は……?」
「ヒロト!!元気か?」
「わ!!トキオ!!」

 ヒロトを呼んでいたのは首にスカーフを巻いた少年、トキオと言う人だった。

「よう!元気そうだな!!と言うかよく迷わずにここまでこられたな!!」
「??俺は迷った覚えなんて一度もないぞ」
「…………」
「ところでトキオは抽選終わったのか?」
「俺はまだだ。だから先行くぜ」

 そう言ってトキオと言う人は抽選会場に行ってしまった。

「ねぇヒロト。今来た男は誰?」

 私はヒロトと話していたのに今のトキオって言う奴が割り込んできたのでちょっと不機嫌になった。

「わりぃ、わりぃ。あいつはトキオって言うんだ。一時期いっしょに旅していたんだ」
「そ……そうなの……」
「あいつ強いんだぜ!シングルバトルで2対2のバトルをしたら俺一匹も倒せなかったんだよ。でも今度やったら俺が勝つぜ!!」
「そうなの……じゃあ私は選手村に戻るわ」
「そうか、じゃあ気をつけて!!」

 私はショックだった。
 私とはいっしょに行かないのにあのトキオと言う男と一緒に行くとは、やっぱり私のことは……。
 そう私は思っていたが、まだ諦めてはいなかった。



 次の日から試合が始まった。
 でも、パルシェンとキュウコンで一、二回戦はストレートで突破した。
 二回戦が終わり会場を出て一息ついているとき、ヒロトに声をかけられた。

「よう!ヒカリ!」
「あ!ヒロト!」

 私は目の前に急にヒロトが現れた為少し戸惑った。

「どうしたのヒロト?なんだか暇そうね」
「ああ。二回戦が終わって三回戦が明日だって言うから暇なんだ」
「そう。私も三回戦が終わったから暇なのよ。それじゃあちょっとそこら辺一緒に歩かない?」

 とりあえず、私はヒロトと話がしたかった。ヒロトの気持ちを知る方法がほかに見当たらなかったから。

「別にかまわないけど……」

 そうヒロトが言って、とりあえず、私は安心したような気がした。
 やっぱりヒロトは私のことが嫌いではないのだと。そのまま私たちは町まで行くことになった。

「ヒカリは二回戦どうだったんだ?」
「私?私はストレートで勝ったわよ!」
「すごいな」

 私は思い切ってもっと詳しくトキオの事を聞いてみることにした。

「この前あったトキオって言う人とはどこであったの?」
「トキオ?あいつはフールタウンであったんだ。会って話していたら、何か俺といっしょに行かないかと言われたんだ。俺はいいって言ったんだけど。そしてブルーズシティまで進んでオートンシティで別れたんだ」
「本当にそれだけなの?」
「え?」

 私は真剣な目でヒロトを見た。

「ほ、本当だよ。どうしたんだ?」
「え?いいえ、なんでもないわ!」

 ちょっときつく言った為にヒロトは怪しく感じたみたいだった。

「そうか?なんか前よりと様子がおかしくないか?」
「そんなことないわよ!!」

 そう言って私はヒロトのことを置いて先に行ってしまった。

「(もう!ヒロトったら!私の気持ちも知らないで……)」

 このとき私はヒロトはかなり鈍いと思った。
 または私の想いが足りないのかと。
 そして、やっぱりヒロトが私と一緒に行かなかった理由が分からなかった。



 私は3回戦もストレートで勝ち抜いた。
 試合が終わり組合せ会場に行った。
 私はトーナメント表を見た。
 相手はヒロトと一緒に旅をしていたと言うトキオだった。
 それを知った後、私は会場内でヒロトとトキオを見つけた。
 そして、その話を少し盗み聞きしてた。

「じゃあどんなポケモン持っているか教えてくれよ!」
「…………」
「それじゃあ、あなたのポケモンを教えてくれたらいいわよ」

 ふと、私は口を突っ込んだ。
 トキオとヒロトは驚いて私の方を見た。

「…………」

 私が出てきたことによって少し雰囲気が重くなってしまったと思った。
 ヒロトが慌てているのがわかる。
 私と彼がケンカするのではないかと思っているのかもしれない。
 私は慌てて握手を求めた。

「私がヒカリよ!次の試合お手柔らかいね」
「ああ。よろしく!でも手加減はしないぜ!」

 トキオは握手に応じた。



 トキオは今まで戦ってきた相手の中で強かった。
 一匹目のパルシェンでトキオのイーブイとパウワウを倒した。
 パウワウもイーブイも普通のポケモン以上に能力が発揮されていた。
 二匹のポケモンが進化していたら、そう簡単には勝てなかったわ。いや、負けていたかもしれない。
 パルシェンはゴーストに倒されたもののキュウコンでゴーストを倒した。
 そのゴーストもかなり強かった。
 パルシェンの時にゴーストが『のろい』を使わなければ負けていたかもしれない。
 そして準決勝、私はヒロトと戦って負けた。
 私の気持ちを伝える為にヒロトをある場所に呼んだ。



 私は10分くらい前に待ち合わせ場所に来ていた。太陽は沈んであたりはもう真っ暗だった。
 でも、いくつかの星達が私を応援するように輝いていた。
 私は湖を見た。
 まるで心が透き通るくらいにきれいだった。
 見ていると私の気持ちも素直になると思った。
 そしてヒロトがきた。

「話って何?」

 そう言いながら、ヒロトは湖を見ていた。

「それにしてもきれいな湖だなぁ」

 ヒロトも同じことを考えていたんだなと思った。
 そして私はヒロトに聞いた。

「ヒロトって私のことどう思っている?」
「…………」

 ヒロトは答えない。
 黙ったままだった。
 私はヒロトが答えるまで絶対ヒロトを逃がさないと決めていた。

「……大切な……友達だ……」

 ヒロトの言葉は少し重かった。
 いや、私には何かに迷っていたように聞こえた。
 私はここで一押しといわんばかりに聞いてみた。

「じゃあ、この大会が終わったら私も一緒について行っていいでしょ?」
「……ダメだ。一緒には行けないよ」

 最初の時と同じく私はヒロトに断わられた。

「何でよ!」
「ごめん!一緒に行けないんだ!!」

 私の目に涙が浮かんできた。

「私は……私は……ヒロトの全てが知りたいのよ!!それでもだめなの?私はあなたのことが好き!!だから……だから……」

 私の声が響く。
 涙声だったのでかすれていたが、静寂の中で発せられる声はかなり響いていた。
 そして、また静寂に戻った。

「…………」

 ヒロトは茫然としていた。
 そして、何かを考えて迷った後、その静寂を破った。

「好きな人がいるんだ……」
「え!?」

 一瞬にして雰囲気が変わった。

「ヒカリの希望には答えられない」
「そ、そんな……」

 ヒロトは視線を逸らして後ろを向いた。私の目を見ないため?それとも……

「だからごめん!」

 ヒロトは逃げるようにその場を立ち去った。
 私は声をあげて泣いた。
 でも、少し経って私は気づいた。
 私はマングウタウンのスクールに通っている頃を思い出した。
 ヒロトは私以外の女の子と話しているところを見ていなかった。
 私はヒロトが私以外の女の子が苦手なことを忘れていたのだ。


 そう、ヒロトが他の女の子と付き合えるわけが無い!


 私はそれに気づいて、急いでヒロトが行った道を追った。
 しかし、そこで私は信じられない光景を見た。
 ヒロトはヒロトが準々決勝で戦ったアスナと会っていたのだ。
 アスナはヒロトにプレゼントしているようだった。
 私はヒロトの言うことが本当だと言うことを信じるしかなかった。
 私は急いでその場を離れ、選手村に戻った。
 部屋に戻って私は泣き明かした。
 自分の気持ちはもうヒロトに伝わらない。
 そう思うと、涙が止まらなかった。
 朝になって私はヒロトに手紙を書いた。
 また別れの意味をこめたプレゼント、雷の石を封筒に入れた。



 私は部屋を出てヒロトの泊まっている部屋まで行こうとした。
 でも、直接渡す勇気が無かった。
 その時、私は誰かとぶつかった。

「いたっ!」
「うわ!」

 私は昨日バトルしたトキオと会った。

「あれ?ヒカリさんどうしたの?」

 私はこの時トキオに渡してもらおうと思った。

「トキオくん、これをヒロトに渡してくれない?」

 そう言って封筒をトキオに渡した。

「え?かまわないよ。確実に渡すから!」
「ありがとう。」

 私はトキオに手紙を渡し、ホクト地方を後にした。



 ジョウチュシティを経由してマングウタウンに戻った。
 そして、トミタ博士の研究所へ行った。
 トミタ博士は待っていましたと言わんばかりに私を歓迎した。

「いやー……すごかったよ!ヒカリちゃんのバトルは!ポケモンといい、君自身といいノースト大会で、ずいぶんたくましくなったものだ!」
「ありがとうございます」
「帰ってきたのはいいが、これからどうするんだね?」
「もっと強くなるために旅に出ます。今度はどんな人が相手でも負けないようなそんなトレーナーになります。どんなことをしてでも強くなりたいです!」

 私の決心は固まった。

「そういえば……」

 トミタ博士が話題を変えた。

「準決勝で当たったヒロトくんだが、最近実力と人気が上がってきているセンリくんに勝って優勝したみたいだよ」
「…………!」

 私はヒロトの話はあまり出して欲しくなかった。
 もちろん理由は振られたことにあるのだが。

「それって本当ですか?」

 別の部屋で仕事をしていたはずのヒロトの姉、ルーカスがいつの間にかその場にいた。

「本当さ!嘘をついてどうする?」
「すごいわ!さっすが私の弟ね♪」

 私はそろそろ家に戻ろうとした。

「ちょっと待ちなさい」

 トミタ博士が呼び止めた。

「これを持っていきなさい」

 そう言ってトミタ博士はポケモン図鑑を私に渡した。

「え?もらっていいんですか?」
「いいとも。ただし、その図鑑は未完成だ。すべてのポケモンが載っているわけではない。でも、君ならばそれを使いこなせるはずだ!」
「ありがとうございます!」
「そういえば……」

 ルーカスが私に聞いてきた。

「何でヒロトと戻ってこなかったの?」

 ルーカスはヒロトとヒカリがマングウタウンにいた時の様子なんとなく知っていたみたいだった。
 でも私はそれに答えず、研究所を出て行った。



 数日後、私は誰にも行き先を告げずカントー地方に向けて旅立った。
 どんな相手でも勝てるようなそんなトレーナーになるために私は自身も変わろうとした。
 でも、ヒロトに対する思いは時が経つにつれて忘れるどころか、日に日に積もっていくことになるとは決して思いもよらなかった。
 さらに私の歩き始めた道がやがて暗い闇の渦に巻き込まれようということも知らなかった……。



 To Be Continued six years later





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Last-modified: 2014-12-31 (水) 15:55:53
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