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たった一つの行路 №008

/たった一つの行路 №008

「つ、つらい……」

 ヒロトは言葉通り辛そうである。
 ヒロトは一人でオウギ山にいる。

「俺はもっと強くなってやる!誰にも負けないくらいに……」

 なぜこのようになったのかと言うと、時は1日前の朝にさかのぼる。



 たった一つの行路 №008



 ―――「(ここは?バトルフィールドみたいだ)」―――
 ―――「(でもジム戦のフィールドより広い!)」―――
 ―――「(どこかのスタジアムみたいだ)」―――
 ―――「(しかも、準々決勝だ!)」―――
 ―――「(組み合わせはどうなっているんだ?)」―――
 ―――「(ヒカリ対トキオだと!?)」―――



 ヒロトは目を覚ました。
 ここはオートンシティのポケモンセンター。
 ブルーズシティを出発して数週間で着いたのだ。
 でも、ここからブルーズシティに行ったときよりかかっていない。
 なぜなら、ヒロトはブルーズシティに行くときはあまり旅知識の無いショウと行った上に、野生のポケモンにも襲われたのである。
 これでトキオといってさらに遅くなるはずが無い。

「大会まであとバッジ一つか……」
「どうしたんだ急に?」

 いつの間にか起きていたトキオが聞いた。

「別に」
「今日の夢はどうだった?」
「別に。たいしたこと無い夢だったよ。俺はどっかのフィールド……スタジアムにいただけだ」
「誰が戦っていたの?」
「…………。見たこともない人だったな」

 ヒロトはごまかした。
 その試合に誰が出ていたか、ヒロトはわかっていた。
 さらにその結果さえも……。

「そうか」
「(この夢が本当になる自信は無いが、トキオには言わないでおこう……)」



 ―――朝食後。

「ここで分かれることになるんだな……。そうだ!どうせなら一度ポケモンバトルやらないか?」

 トキオがポケモンバトルをやろうと言い出した。
 確かにヒロトとトキオは一度もポケモンバトルをしていない。

「そうだな。一度バトルしようぜ!」
「ルールは2対2のシングルだ!いいな?」
「ああ!いいぜ!」

 ヒロトは勝つつもりで挑んだ。
 しかし、トキオは強かった。
 ゴーストだけでヒロトはキノココとヒトカゲがやられてしまったのだ。

「……そんな……」
「俺の勝ちだな。じゃあ俺は行くぜ!大会で会おうぜ!」

 トキオは南へ行きツバキの森を抜けてライズシティへ進んでいったのだった。



 ヒロトはポケモンセンターでキノココとヒトカゲを回復させてもらった。

「どうすればもっと強くなれるんだ?」

 ヒロトは考えた。
 強くなる為には自分を鍛える、ポケモンを鍛えることだと思った。

「どちらにしろ4つ目のバッジをゲットするほうが先だ。ジョーイさん!ジョウチュシティに一番近い道ってありますか?」
「それならオウギ山を登っていくのがいいわ。あそこはかなり危険ということで有名だわ。あそこの野生のポケモンも気性が荒いし……だから誰も近づこうとしないのよ。あまりおすすめはできないわ」
「そこだ!!」

 指を鳴らして、ポケナビを開いてみる。
 オウギ山はここから東南の方向を示していた。

「ジョーイさん!ありがとう!」

 ヒロトはヒトカゲとキノココのボールを返してもらい意気揚々と東南へ進んだ。

「え!ちょっと!危ないって行ったのに!」



 そして、現在に至る。

「野生のポケモンも強い上に高度もきつい。こりゃほんとにきつい」

 オウギ山は野性ポケモンの巣窟とも言われる場所だ。
 山の高度は3000メートルくらいある。
 これが辛くなかったらなんだろうか。

「これも強くなる為には欠かせない試練だ!絶対生きて抜けてやる!!」



 ―――3日後。

「ふう、やっと頂上付近まで来たぞ」

 ヒロトはばてながらも頂上付近まで登ることが出来た。
 そう思ったその時いきなり3匹のポケモンが襲ってきた。
 そのポケモンはそれぞれヒロトに『切り裂く』『毒針』『みだれづき』を仕掛けてきた。

「うわぁ!あぶねー!」

 ヒロトは危機一髪かわすことが出来た。
 そして野生のポケモンを確認した。

「一匹分からない奴がいるけど、後はスピアーにドードリオだな。ちょうどいい。この3日間の成果を見せてやる!」

 ヒロトはそう言ってキノココ、ピカチュウ、ヒトカゲを出した。
 すると、まずスピアーがダブルニードルで襲ってきた。

「ザーフィ、かわして『炎のパンチ』!」

 ヒトカゲがダブルニードルをうまくかわし、すれ違いざまに炎を纏った拳を当てた。
 スピアーは一撃でダウンした。
 それに触発されドードリオが『みだれづき』もう一匹のポケモンが『切り裂く』でヒトカゲに襲ってきた。

「シオン、ドードリオに『電撃波』!マッシュ、隣りの奴に『キノコの胞子』だ!」

 ピカチュウはヒトカゲの前に出て、ドードリオを電撃波で倒した。
 この山での修行の成果か、ピカチュウの電撃波の精度は確実に上がっていた。
 しかし、キノココのキノコの胞子がもう一匹のポケモンに効き目が無かった。
 ピカチュウはヒトカゲを庇うようにして、そのままダメージを受けた。
 防御力が低いピカチュウにとっては、物理攻撃は痛手だった。

「まずい!シオンもどれ!ザーフィ、『火の粉』!」

 しかし、そいつはフットワークが軽く、簡単にかわされてしまった。
 そして、奥の方へ行ってしまった。

「なんだったんだ?あのポケモンは?『キノコの胞子』が効かないなんて……」

 あとでヒロトは知ることになるが、もう一匹のポケモンはヤルキモノだった。
 特性の『やる気』で眠らなかったのである。

「まずいな。シオンがこれじゃ戦えない。急いで町まで行ったほうがよさそうだな」

 ヒロトはオウギ山の下りに差し掛かった。



 ―――1日後。

「やっぱりこの山はつらい。その上、俺以外のトレーナに全然会えないぜ」

 危険と言われて近づくトレーナはおそらくいないだろう。
 でも、例外はいた。

「ん?人影だ!」

 ヒロトは人を見つけるや、すぐにその人に近づいていった。
 しかし、それは後悔することになる。

「ん?誰だお前!!」

 その人影とは黒い服を着て胸に“R”のマークをつけたロケット団であった。

「(げ!!ロケット団!!)」

 ヒロトはロケット団の下っ端に会ってしまった。

「怪しい奴!おとなしくしろ!!オコリザル!あいつを捕まえろ!」
「捕まってたまるか!ザーフィ頼む!」

 オコリザルはヒロトに向かって『メガトンパンチ』を繰り出した。

「うわ!あぶねぇー!」

 ヒロトはかわした。

「ザーフィ、今だ!後ろから『メタルクロー』!」

 オコリザルにメタルクローが決まった。
 しかし、攻撃に耐えたオコリザルが倍の力の拳でザーフィを弾き飛ばした。

「くっ、『カウンター』かよ」
「くらえ!『連続パンチ』!」
「まずい!」

 そう思ったときヒトカゲがヒロトを庇った。

「ザーフィ!!」
「バカめ!そんなにくらいたいならオコリザルもっといたぶってやれ!」

 オコリザルは連続パンチを続けた。
 しかし、ヒトカゲはダメージを受けるごとに尻尾の炎が増していった。
 そしてヒトカゲはオコリザルにその力をぶつけた。

「あれは……『いかり』!」

 しかし、まだオコリザルは立てるようだ。

「ザーフィ!そのまま『炎のパンチ』!」

 オコリザルはいかりのダメージで少し鈍っていた為にかわせなく、さらに急所に当たった。
 そして、そのオコリザルは下っ端の方へ吹っ飛んだ。

「ぐわー!」

 その下っ端はオコリザルの下敷きになった。

「ふう、危なかった!」

 ヒロトはヒトカゲを戻し山を降りていった。
 しかし、その下っ端は意識はまだあったのだ。

「リーダー!我々に怪しい上になかなか強いガキがこの山にいるんですけども……」

 その下っ端は無線でヒロトのことをリーダーに伝えた。



 ―――3日後。

「ふう、そろそろジョウチュシティのはずだよな?」

 ヒロトは確かにジョウチュシティの近くまで来ていた。

「ロケット団が出てきたときは驚いたけどそれ以降は何もなくてよかったー!」

 ちなみにそれ以降にも2人くらいに会ったが最初のときより楽に勝てた。

「お遊びはここまでだ!!」

 ヒロトの後ろから鋭い声が聞こえた。
 振り返ってみるとそこには数人のロケット団員がいた。
 その中に銀髪で鋭い目の男が言った。

「俺はノースト地区の担当のリーダー、バロンだ!よくも俺の部下をやってくれたな!」
「そっちから仕掛けてきたんだろうが!」
「関係ない!ここでお前は消えてもらおうか!」

 ヒロトはロケット団のリーダー、バロンから並々ならぬ殺気を感じた。

「(何かこいつ危ない!)」
「いけ!ギャラドス!」

 バロンの出したポケモンは凶悪ポケモンのギャラドスである。

「(ギャラドスならピカチュウで……いや、ダメだ。ピカチュウが一番消耗が激しい……)全力で行くぞ!ネール!」
「ふ、そんなポケモンで私に勝てるものか!『破壊光線』!」

 ギャラドスはヒロトとポワルンに向けて強烈な破壊光線を放った。

「わ!ネール!避けるぞ!」

 ヒロトとポワルンはギャラドスの破壊光線をかわした。
 かわした破壊光線は数本の木に当たりそのすべてを貫通した。

「(おいおい、あんなのくらったらただじゃすまねぇよ!!)」

 しかし、ギャラドスは破壊光線の反動で動けない。

「よし今だ!『あられ』から『ウェザーボール』!」

 ポワルンはあられを発生させウェザーボールを発射した。
 天候はあられの為ネイルは雪雲に姿を変え、ウェザーボールのタイプは氷である。
 それはギャラドスにヒットした。

「どうだ!?」
「なんだ、その程度か?」
「そんな!(やっぱりシオンじゃないとダメだ!)」
「終わりか?ギャラドスおもいっきり暴れていいぞ!」

 バロンの命令よりそのギャラドスは暴れ始めた。
 『暴れる』は自我を失い標的を関係なしに攻撃する技だ。
 ギャラドスは周りにある木に激突した。
 その結果、木が折れた。そして、それはポワルンに直撃した。

「ネール!戻れ!……まずい……」

 ヒロトは今のままじゃ勝てないことを悟った。

「(……逃げるしかない!)」

 ヒロトはバロンに背を向けた。
 トレーナーから逃げることは普通ならできない。
 だがこの状況は例外だ。
 負けたら何をされるか予想もできない。
 逃げようとした所、下っ端たちが回りこんだ。

「バカめ!逃げられるとでも思っているのか?」

 ギャラドスはまだ暴れ続けている。

「ちっ!マッシュ!ザーフィ!」

 ヒロトはキノココとヒトカゲを同時に出した。

「ふん。体力が付きそうなポケモンに何ができる!ギャラドス、逃がすな」

 しかし、次の瞬間ギャラドスは動かなくなってしまった。
 いや、寝てしまったという方が正しいだろう。
 そして、ヒロトがいた場所に煙幕が張ってある。

「…………。逃げたか」

 ヒロトはキノココの『キノコの胞子』でギャラドスを眠らせ、ヒトカゲの『煙幕』で撹乱させ、逃げたのだ。

「ふん!まあいいだろう。次に会ったときただじゃ済ませない」

 バロンはそう言うと部下を連れて山の奥へ消えてしまった。



「ふう、やっと見えた!」

 ヒロトはジョウチュシティの見える丘までやってきた。

「よし、ジョウチュシティのジムバッジ、ファイトバッジゲットしてやるぜ!」



 ―――「(……!!わっ!ギャラドスだ!ってギャラドスに乗ってる!?)」―――

 またまた夢の中。
 ヒロトは乗っているポケモンに顔をしかめる。
 昨日、襲われたのだから当然だろう。

 ―――「(しかも、乗っているのは俺だけじゃない!)」―――

 まず、ギャラドスのトレーナーはオレンジ色の髪の女の子だ。
 その女の子は帽子をかぶった少年と口げんかをしているようだった。
 目の前では2匹のピカチュウが喋っている。
 マスターの愚痴でもこぼしているのだろうか、ポケモンの言葉はわからない。
 ヒロトが乗っているのはギャラドスだが、隣にはでっかい鯨ポケモンのホエルオーの姿がある。
 そちらには黄色い髪に帽子の女の子、前に夢で見たバンダナの男、やはり前にも見た他人のポケモンを捕まえたツインテールの少女、そしてホエルオーのトレーナーである白い帽子の少年がいた。

 ―――「(一体どこへ向かっているんだろう?)」―――
 ―――「(ん?遠くの島からポケモンが飛んできた……)」―――
 ―――「(見たことのないポケモンだ!しかも、十匹以上いる!)」―――
 ―――「(みんな驚いている。特別なポケモンなのか?)」―――

 そのポケモンは一斉に破壊光線を撃ってきた。
 ギャラドスが蛇行し、攻撃を回避する。
 しかし……

 ―――「(……でも、俺落ちてるよぉ~!!)」―――

 遠心力でヒロトは海へと落ちて行った。



「くわっ!ゆ、ゆめ!?」

 ヒロトは目を覚ました。
 昨日、ジョウチュシティについてすぐポケモンセンターに行き速攻で寝たのだ。

「昨日はロケット団のリーダー、バロンって奴、強かった……。あの状態でまともにやったら勝ち目はなかった……。いや、あの状態じゃなかったとしても……」

 ヒロトは昨日の出来事を思い出していた。

「それにしても、昨日、バロンって奴がギャラドス出したから夢に出たのかな?」

 ヒロトは苦笑いをした。



 ―――ジョウチュジム前。

「うわー、このジムきれいだな!」

 ジムの前に来てヒロトの一声はそれだった。
 でもヒロトの感想はその通りである。
 実際ゴミは一つも落ちてなく、建物もほとんど新しい。

「よっしゃあ、入ってみよう!」

 ヒロトはジムの中に入った。
 入ってみた感じ、ゴミがなく、床もピカピカである。

「どなたですか?」

 ジムの門下生が話し掛けてきた。

「俺はヒロト。ポケモントレーナーです!ジム戦をしに来ました!」
「そうですか。それなら中にどうぞ!」

 ヒロトは門下生の後についていきバトルフィールドのあるところまで来た。
 そうすると、中から声が聞こえてきた。

「何かすごいな……」

 ヒロトはフィールドを見た。
 そこには10人くらいの門下生が身体を鍛えていた。

「ヒビキさん!挑戦者です!」
「おお!挑戦者か!」

 ヒビキと言われた人がヒロトの方に向かって行った。
 すごく体がでかくて筋肉体質の人だった。
 そして道着を着ていた。

「君が挑戦者かい?」
「はい!挑戦しに来ました!ところで何でトレーナーまで鍛えているんですか?」
「それはポケモンは強くなるものだ!だから自分も強くならなければならない」
「なるほど……」
「ジムバトルをするなら、ここにいる門下生たちにもバトルを見せていいかな?今後の参考のために」
「はい!いいですよ!」
「試合は3対3のシングルマッチ。交代はチャレンジャーのみ!3匹戦闘不能にさせたほうが勝ちです!」
「さあ!始めるぞ。準備はいいな?」
「はい!」
「それでは試合はじめ!」
「まずはいけ!ワカシャモ!!」
「炎系か……ならばネール、行け!」

 ヒロトはポワルン、ヒビキはハチマキを巻いたワカシャモを出した。

「一気に行くぞ!ネール、『雨乞い』から『ウェザーボール』!」
「ワカシャモ、『ビルドアップ』から『切り裂く』!」

 2人とも一気に攻めてきた。
 早くもこの一撃で両者とも体力が4分の1くらいになってしまった。
 ビルドアップによりワカシャモがパワーを上げ、『切り裂く』で急所に命中させた。
 ポワルンは『雨乞い』により雨水に姿を変え『ウェザーボール』決めた。

「まともに当たって一撃でやられないとは……なかなかやるな!」
「『雨乞い』+『ウェザーボール』で倒れないなんて……あのワカシャモ強い!」

 確かに普通ならばワカシャモは倒れているはずである。

「次で決める!もう一回『ウェザーボール』!」
「ワカシャモ、『スカイアッパー』!」

 ワカシャモにウェザーボールがまともにあたりヒロトは勝利を確信した。
 しかし、ワカシャモはそのまま突っ込んできてポワルンに『スカイアッパー』を決めた。

「ポワルン、戦闘不能!ワカシャモの勝ち!」
「なにっ!『ウェザーボール』が当たったはずなのに!」

 ヒロトは驚きを隠せなかった。

「なんだこのアイテムも知らないのか」

 そういってワカシャモの頭に巻いているハチマキを見せた。

「これは『きあいのハチマキ』と言うアイテムだ!たまに攻撃を耐えてくれることがあるのだ!このハチマキが我がジムに伝わる秘伝のアイテムなのだ!」
「“我がジムに伝わる”って……このジムって新しいんじゃないんですか?」
「最近工事して新しくしたのだ」
「へぇ……。(どちらにしろ厄介なアイテムだ……)でも俺は負けない!シオン、頼むぞ!」

 ヒロトは二番手にピカチュウを出した。

「『電光石火』!」
「させない!ワカシャモ、『切り裂く』で返り討ちだ!」

 ピカチュウは真っ直ぐワカシャモに向かって行った。

「今だ!回り込んで『アイアンテール』!」

 ピカチュウは切り裂くをかわし後ろに回り込んでアイアンテールを決めた。
 ワカシャモは後ろからアイアンテールを受け倒れた。
 さすがにポワルンのウェザーボールのダメージもあった為ダウンした。

「ワカシャモ戦闘不能!ピカチュウの勝ち!」
「なかなかやるな!次はこいつだ!」

 そういいつつヒビキはチャーレムを出した。
 もちろん、頭にはハチマキがある。

「チャーレムか……。そのままいくぞ!シオン、『高速移動』!」
「『心の眼』だ!」

 チャーレムは目を閉じた。

「(こころのめ……確か次の攻撃を確実に当てるんだよな。ならば……)『電磁波』!」

 高速移動中にシオンは電磁波を放った。

「チャーレム!そのまま『炎のパンチ』!」

 チャーレムは電磁波に突っ込みマヒしたが、ピカチュウにダメージを与えた。
 とは言え、雨が降っていた為に期待したダメージをピカチュウに与えられなかった。

「よし!シオン、『電気ショック』の乱れ打ちだ!」

 ピカチュウは電気ショックを放ちまくった。それは確実にチャーレムの体力を減らしていった。
 ヒビキはそれを冷静に見ていた。

「(まだ何かあるのか?)一気に行くぞ!『電撃波』!」

 チャーレムに集束した電撃がヒットした。
 しかし、チャーレムは倒れなかった。

「またあのハチマキか?『電光石火』から『アイアンテール』!」
「今だ!チャーレム!!」

 ヒロトはワカシャモを倒したときと同じく背後に周り『アイアンテール』を当てた。
 しかし、アイアンテールを当てた瞬間、ピカチュウにものすごいダメージが襲った。
 その結果ピカチュウもチャーレムも倒れた。

「ピカチュウ、チャーレム、両者戦闘不能!」
「何だ!何が起きたんだ!?」

 ヒロトは何が起こったかわからなかった。

「『我慢』と言う技を知っているかな?」
「我慢?」
「少しの時間、技の名前通り我慢して相手の攻撃を受けて、相手に2倍で返す技だ!それを使ったんだ」
「なるほど。だからシオンも倒れたってわけか!」

 両者とも倒れたポケモンを戻した。
 それと同時に雨乞いで呼び出した雨が止んだ。

「さあ、最後はお前だ!」

 ヒビキの3体目はガルーラだった。
 しつこいようだがやはりハチマキをつけている。

「ザーフィ!頼むぞ!」

 ヒロトは迷わずヒトカゲを出した。

「ザーフィ……」
「ガルーラ……」
「「『炎のパンチ!』」」

 同じ技を放ったが、ヒトカゲの炎のパンチがわずかに押し負けた。

「くっ、体格の差がありすぎる!!」

 ガルーラは体長2.2メートル、ヒトカゲは0.6メートルである。
 大きさではガルーラに分がある。

「(離れて攻撃するしかない!)ザーフィ、『火の粉』!」
「ガルーラ、『身代わり』!」

 ガルーラは体力の4分の1を使って自分の分身を作り出した。
 火の粉は分身に当たった。

「そのまま『身代わり』と本体で『連続パンチ』!」

 分身と本体が同時に攻めてきた。

「まずい!『煙幕』だ!」

 煙幕を張り、連続パンチを凌いだ。

「煙の中から飛び出して『炎のパンチ』!」

 ヒトカゲは煙幕から飛び出し分身の方に攻撃を当てた。

「今だ!ヒトカゲに『連続パンチ』!」

 分身は消すことが出来たが本体の方の連続パンチを受けてしまった。

「ガルーラ!『炎のパンチ』で吹っ飛ばせ!」

 ヒトカゲは思い切り飛ばされた。

「大丈夫か!?ザーフィ!」

 ヒロトの呼びかけにファイティングポーズをとって、ガルーラを睨みつけた。

「まだいけるな!いけ!『火の粉』を飛ばしながら突進だ!!」
「『身代わり』だ!」

 また、ガルーラは分身を出した。
 しかし、火の粉によって分身は消された。

「なに!?『火の粉』がさっきより威力が上がっているだと!?なぜだ?」
「ヒトカゲの特性『猛火』だ!いけ!」

 そして、突進がガルーラにヒットした。

「よし!それから『炎のパンチ』!!」

 『とっしん+炎のパンチ』が決まった。
 しかし、ガルーラは倒れなかった。

「くっ、またあのハチマキかよ!『火の粉』でとどめだ!」
「ガルーラ!かわせ!」

 ガルーラはギリギリで見極め、火の粉をかわした。

「残念だがヒロト君、ここまでだ!『起死回生』!!」

 ガルーラは起死回生を使った。
 起死回生……それは体力が少なければ少ないほど威力が増す技である。
 その技はヒトカゲにヒットした。

「ザーフィ!!」
「ヒトカゲ戦闘不……!!……え!?」
「なに!!」
「ザーフィ!?」

 なんとヒトカゲはまだ倒れていなかった。

「なんだと!普通、全力の起死回生を受けて立っていられるはずがない!!」

 しかも、ヒトカゲの体が光り始めてきた。

「なんだ!どうしたんだ?ザーフィ!!」

 輝きが止んだ時、そこには別のポケモンが立っていた。

「なにが起きたんだ?」
「進化したんだよ!」
「へ?」

 どうやらヒロトは進化の瞬間を知らなかったようだ。

「進化とは簡単に言うと姿や形が変わり強くなることだ。ヒトカゲの場合はリザードになるんだ」
「なるほど!」
「でもこれで終わりだ!『起死回生』!」
「させない!『火炎放射』!」

 リザードは強烈な炎を放った。
 ガルーラも体力が限界に近かったのでその一撃でダウンした。

「ガルーラ、戦闘不能!リザードの勝ち!」

 また、リザードも審判のコールを聞き倒れた。

「いやー、まさかあそこで進化するとは思わなかったよ」
「はい、俺もびっくりしました。」
「たぶん君の負けたくないと言う気持ちがリザードに通じて進化したんだと私は思う。これからもがんばりたまえ!これがここのバッジ、ファイトバッジだ!」
「ありがとうございます!よーし!これで大会に出られるぞ!」

 ヒロトはジムを出て行った。



「ジョーイさん!ノースト大会ってどこでやるんですか?」

 ヒロトは大会の場所をポケモンセンターに戻ってジョーイさんの聞いてみた。

「大会場所ね……確かホクト地方の最南端のトウマ高原だったわよ」

 トウマ高原は実はノースト地方の最北端にあるブルーズシティの北にあるのだ。
 したがって、ノースト地方の北にホクト地方がある。

「それで、どうやっていけばいいのですか?」
「この町で出ている船で行くのよ。ジムバッジが揃っていればチケット売り場でホクト地方行きのチケットをただでもらえるわよ」
「そうか分かりました!よし!船へレッツゴー!そして速攻で大会に出よう!」
「でも、大会は1ヶ月後よ。それに今、船は出ていないわ」

 ヒロトはこけた。



 ヒロトはジョーイさんの話を聞いてこれからの予定を決めた。
 と言っても2週間この町をぶらついたり、トレーナーと戦ったりして、それから船に乗って大会に行くということだった。



 第一幕 Wide World Storys
 運命の始まるノースト地方⑧ ―――初めての進化――― 終わり





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Last-modified: 2014-12-29 (月) 11:24:54
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