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さよならとまたあいましょう

/さよならとまたあいましょう

作者→ロリコン


三秒でわかる登場人物紹介
ビクティ:ビクティニ♀
 僕っ娘
ブラン:ゼクロム♂
 お兄ちゃん。
ネーロ:レシラム♀
 お姉ちゃん


はじまりのはじまり

 昼を照らすお日様、夜を照らすお月様、どっちも一緒、どちらも一緒、けれど交わることはありません、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ交わって、すぐに消えてしまいました。僕と貴方も、きっとそんな関係です。だけども、僕の気持ちは変わりません。貴方と僕、僕と貴方、僕の独りよがりの、愚かな恋だというのはわかっています。それでも、貴方のことが好きです。だから、僕は貴方に何度でもいいます。何度でも言えます。貴方のことが、好きです。だけど、これは決して交わらない思いです。僕の力が働いても、決して交わらない悲しい想いです。悲しんでいるのは僕だけ。もちろん、独りよがりの女のつまらない言葉です。
 だけど貴方は言いました。たとえ離れても、また会えるよ。世界中のどこへでも、お前を見つけてあげるから。そうじゃありません、貴方と別れて、また会ったとしても、もうそれは僕が好きだった貴方ではありません。貴方のことを好きになった人を大切にする、貴方の姿です。僕は貴方に心を預けることができません、もう、あったとしても空しい思いが募るだけです。貴方のことを好きになったことは、全てが泡となって霧散しましょう。でも、それでいいのです、人の心の横槍になることは、僕にはできません。それでも、僕は貴方が好きだと告白します。自分勝手な女と笑ってください、馬鹿なポケモンだと罵ってください。未練を断ち切れない女々しい奴だと蔑んでください。僕は貴方が好きでした。貴方が好きで、そして貴方の思いがどこに飛んでいるかもわかっています。もう貴方と会うことはできません。もし会ったならば、僕はとても悲しくて、胸が砕けてしまうでしょう。だからこそ、貴方に言うのです。貴方が好きだと。この気持は、誰かのものになる前に伝えておきたかったです。僕は貴方の太陽にはなれません、貴方の月になることもできません。僕は星になります。まばゆい光点をちりばめる星となって、貴方と貴方を好きになる人を。ずっとずっと見守ります。
 こんなことを言うのもおかしいです。僕は貴方に告白する資格など、何一つ持ち合わせていないのに、こんなことを言って貴方を揺らがせる。優しくて強い貴方を迷わせる、最低な牝です。それでも、貴方が好きです。この思いを一方通行のままで終わらせるのは僕の心で決めました。でも、もう僕は貴方以外の人を好きになることができません。好きになったら、この慕情とともに身を朽ちさせましょう。命を粗末にしているのはわかっています、僕がこんなにも焦がれる思いをぶつけても、貴方には大切な人がいます。それでいいのです、それでいいのです。僕はただの女の子、あの人は貴方の思い人、誰よりも大切なあの人に、なることはできません。でも、僕はこの思いを貴方に伝えたかった。あの人のものになる前に、貴方に伝えたかった。わかっています。僕の心配はどうかしないでください、すっぱりと割り切ります。
 だけど、貴方以外の人を好きになれない、でも、僕もいつまでも綺麗な体でいるわけではありません。いつかは汚れてしまいます。綺麗なものが汚れるのは、どうしようもないことです。それは止められないことです。だけど、汚れることは、僕自身が選びたいのです。勝手な思いとは分かっています。ひどい奴だと思ってください、ずるい女だと思ってください。だけど、あの人のものになる前に、僕は貴方に汚されたい、僕が好きだった、優しくて強くて、かっこいい、あなたのその姿が消えてしまう前に、僕に、どうか僕に――
――僕に……あなたを好きになれたという証を、刻んでください、汚してください……

おはようとあそぼう



 枯れた土地、痩せた大地、それらが復活したのは、二人がやってきてからでした。一人はゼクロムのブラン、もう一人はレシラムのネーロ。二人はお互いに、理想と真実の英雄でした。誰のためでもない、何かの使命でもない。痩せた大地を、枯れた大地を、彼ら二人の力で、蘇らせて回っていたのでした。僕は物心のついたときからこの大地に住みこんで、一本の緑を守りながら、木の実を食べ、遊んで、好きな時に寝る、そんな毎日を変えてくれたのが、ブランとネーロでした。二人は大地に降り立ち、自分たちの理想と真実を、大地に向けました。彼らは知っていました。栄枯盛衰の大地の儚さを。だからこそ、枯れてしまわないように、花を植え、緑を増やし、大地に活力を与えました。二人はずっとずっと昔、自分たちの理想と真実を求めるあまりに、大地を焦土と化したことがあったそうです。それを悔いた二人は、焦土となった大地を蘇らせるためにこうして奮闘しながら、各地を周っているという話を、二人から聞きました。自分たちの責任であるということと、ほかのポケモン達にどれだけの被害を及ぼしたかを毎夜毎夜のように懺悔をしていました。罪は重くとも、自分の意識で悔い改めれば、いつかは救われると信じていました。だけど、僕は言いました。いくら悔いても罪は洗い流せない、やったことを帳消しにできはしないと。だからこそ、今より先の未来へ何ができるかを考えるべきではないのかと、ただ遊んで食べて寝ているだけの僕が、そんなことを言うのはおこがましい気分でしたが、二人は何か一つの考察の答えを手に入れた様な顔をしていました。それから二人は、祈ることはしても、悔い改めることはしませんでした。幾千幾憶の魂に対して悔いることに、僕は何の意味もないと感じていたのを二人はわかってくれたのでしょうか。魂は浄化され天に上る、枯れた大地は栄枯盛衰を繰り返す、自然の摂理、それが早いか遅いかだったと思いました。僕の言いたいことを理解してくれたのか、それよりも先に枯れた大地に命を与えることに、二人は自分たちの全てを注ぎ込みました。痩せた大地は耕され、植えた苗は緑に変わり、山が盛り上がり、草原が広がり、花が増えました。間もなく、この大地は元の姿を取り戻すでしょう。それが僕と彼らの別れの時だということを、僕は理解していました。
「おはよう、ビクティ」
 ブランに起こされて、僕は目を覚まします。時間はわかりません、朝、昼、夕方、夜の概念だけを頼りに、時を刻みこみます。「今日は、何して遊ぶ?」ブランは一人で積み木を組み立てたり、何の意味もなく飛んでいる僕をいつも見ていました。ポケモン達がこのあたりには滅多に現れません。それは、この大地が死んでいたからです。
僕は一本の木を自分の力で守りながら、毎日を悠々自適に暮らしていました。誰に縛られるわけでもなく、誰に言われるわけでもなく、僕は僕のやりたいことをやりたいだけやっていました。そんな中、ブランとネーロが現れました。二人の行動を見守りながら、ふらふらとしていると、ブランの方が話しかけてくれました。何をしているのかを聞くと、この大地を蘇らせるために奮起しているではありませんか。素晴らしい事だと、僕は彼らを応援することにしました。誰よりも何よりも、彼らの思いを無駄にできません。僕は僕の中に眠る勝利の力を、彼らの理想と真実に託しました。緑の大地の理想、復興する大地の真実は、二人の力と僕の思いを乗せて、まるで水が流れるように変わっていきました。死に掛けた大地が芽吹き、花が咲き乱れる姿を、僕は今までに見たことがありませんでした。この大地の本当の姿は、理想としていた場所は、こんなにも綺麗で、こんなにも美しいのだと。僕は初めて、自分以外の人のために力を尽くしました。その時に僕は初めて、涙を流しました。こんなにも素晴らしい大地が、ここに眠っていたのだと、感涙の涙が流れます。僕の力を借りた二人も、僕にお礼を言いました。おかげで助かった、ありがとう、そんな形式美のお礼ではありませんでした。手伝ってくれなかったら、もっと死んでいた。そんな一言が、僕の苦労を救ってくれました。力を絞り出すように託し続け、そして蘇った大地で、僕と二人はしばらく一緒に住むことになりました。それは見届けて、自分達の力が必要なくなれば、またほかの大地へ飛び立つという二人の決め事でした。僕は三人一緒で、遊んで寝て、ご飯を食べることがこれほどまでに違うものだということを初めて知りました。楽しかった、嬉しかった。しかし、一人であった自分を思い出せば思い出すほど、また一人になることを考えたときに、嫌な気持ちになりました。それは誰よりも何よりも、自分自身がこの幸せがいつまで続くかわからないんだと思ってしまうからでした。ですが、二人の前でそんなことは言いませんでした。迷惑になってしまうからです。
「ブランとネーロと僕で、かくれんぼしましょう」
「そうか、わかったよ、ビクティ」
 ブランはとても優しくて、かっこいいお兄さんのような存在でした。僕は今まで異性というものを見たことがなかった分、ブランが自分の思い描いた理想の男性なんだと、僕自身の心に淡い慕情を募らせました。好きであって、いつまでも一緒にいたいと、そう願いました。
 けれど、そんなことは未来永劫あり得ませんでした。僕は知っていました。ブランとネーロは、一緒にお互いのことを悔いるうちに、お互いが惹かれあい、互いに愛し合っているということを。深い後悔から生まれた、深い愛です。幾千幾憶の時を超えて、二人は結ばれていました。ただの小娘であった僕に、二人のことを邪魔することなどできませんでした。それでも、それでもです。僕はブランが、好きでした。
「どうしたの?お腹痛い?」
 ブランは俯いていた僕にそう言ってくれました。違います、違います。お腹は痛くありません。心が痛いのです。こんなにも歪んだ慕情を持ってしまった僕を、こんなにも接してくれる。僕のことを、そんなにも大切に扱ってくれる、妹のように、恋人のように、甘美な言葉と、甘い行動で、僕を支えてくれます。やめてください、やめてください。そんな風に触られては、僕の歪みは、止められなくなってしまいます。
「大丈夫、行きましょう」
「そうか、わかった、じゃあ行こうか」
 ネーロは一足先に、僕が寄り添っていた木で待っていました。僕のことをずっと支えてくれた、一本の樹木の前で。僕は思いました。どうか神様、時間を止めてください、僕を、二人から引き離さないでください。だけれども、無理でした。神様は二人だからです。僕はしがない一人の女、何を思い、何を願おうとも、無意味です。
「ネーロ」
「ブラン、ビクティ。おはよう」
 こうして一日が始まります。こういう日はみんなで遊んで、皆でご飯を食べます。次の日は、花に水をやり、大地を耕し、木の実を育てます。次の日は、次の日はと、日ごとにすることはどんどんと変わります。そしてそれも何時か、終わりがきます。だけど今は、かくれんぼ。終わりではありません、終わりを考えてはいけないのです。この歪んだ慕情が胸でくすぶるうちは、まだ終わってはいないのだと、実感できるのでした。

ともだちとこいびと



 一日中かくれんぼをするわけではありません、違う遊びをやったり、木を削って積み木を作ったり、僕達はいろいろな遊びをします。子供じみています。幼稚な遊びです、でも、僕は本当にそれが楽しかった。二人も、とても楽しそうに僕の我儘なごっこ遊びに付き合ってくれました。迷惑じゃないかと考えましたが。二人はそんなことを気にはしませんでした。おそらく一人で遊んでいる僕の事を可哀そうに思ってくれたのかもしれません。成長期の子供なら、余計な御世話だと反抗的になるかもしれません、僕も成長期の子供であり、もしかしたら僕は無意識のうちに、子供扱いされることを嫌がっているのかもしれません。でも違うのです、違うのです。子供だから子供の遊びでいいのです、僕はそれが楽しくて、遊んでいるのです、一人でも、二人でも、三人でも、きっと変わりません。二人はきっとそれに気づいています。お互いに、言わずともわかっているんだと思います。だから、幼稚な遊びに付き合ってくれているんです。でも、僕は一人でやるよりも、三人でやっていた時の方が、何倍も楽しいということを肌で実感していました。この楽しさを覚えれば覚えるほどに、別れを考えると辛くなる。何度も何度も考えないようにしても、どこかで考えようと頭が働きます。それが嫌だから、もっともっと、楽しみたいから、自分では割り切っているつもりでも、こういう時になるとどれだけぼろが出てしまうのか、僕はそういう自分の都合のよい性格があまり好きではありませんでした。誰かに認められないと、僕は僕自身を形成することすらできませんでした。僕自身が、どれほどずるい子なのか、自分で分かっているからこそ、そのずるさを使って、二人を困らせているのです。眠い時に二人に寄り添って眠る。お腹が空いたときに二人と一緒にご飯を食べる。これはずるい子の証拠かもしれません。一人で息を吸ったり吐いたりするようにやってきたことが、いまさらなぜやろうともせずに躊躇するのか、ずるい僕のことだから、三人の時間を楽しみたい、ずっとずっと楽しんでいたいと思っていたのかもしれません。違います。ええ、きっときっと違います。僕は三人で一緒にいることが楽しいわけではありません、僕はブランと長く長く、ずっと一緒にいたいのです。大きな体の上に乗って、肌と肌を触れ合わせただけで、自分の心臓はばくばくと高まります。心が告げる思いは、好き、愛してる。それは陳腐で使い古された積み木のように汚れていて、歪んだ思いでした。お互いに思い合っている恋人同士を引き裂かんばかりのこの胸の慕情は、きっといつか誰かに害をなすでしょう。そうなる前に、そうなる前に、僕自身で、思いを止めなければいけません。本能よりも理性をあげて、打ち勝たなければいけません、わかっています。わかっています。
「どうだ、ビクティ、俺の高さに勝てるかな?」
「ビクティ、崩していいぞ、子供はハンデありだ」
「や、やめろよネーロ、そんなことをされたら、俺泣くぞ」
 考え事をしながら、積み木を組み立てます。ブランは両手いっぱいにもってもおそらく納まってしまう、小さな積み木を指先で器用につまみ、とても優雅なタワーを作り上げました。小手先の技術、見目を麗しくする美的センス。巌のような顔に秘められたお茶目な子供心、どれをとっても、それは女性を魅了する男性のそれに見えました。僕の目がおかしいのかもしれません。そう言われても仕方ありません。でも、どれだけ言われても、かっこいいものはかっこいいのです。それだけは誰にも譲れませんでした。
「うーん、僕だって、もっともっとすごいのを作って見せますよ」
 積み木を両手に持って、小さく細かく並べていきます。下を広くすると上を積み上げるときに妙に苦労をするので、だいたいの程度でゆっくりと並べていきます。そのまま積み木の山に戻っていき、二段目を積み上げます。どんな形にするのか、どんな形が完成形となるのか、積み木を積むのは、考えているので楽しいです。考えない遊びも、体を動かしていっぱいいっぱい二人と――ブランと触れ合えるので、大好きです。
「どうですか?これ」
 さすがに大きさはブランには勝てません。体躯が違います。僕なんて手の中におさまってしまいそうなほど小さなサイズ、彼はとても大きく、屈んでくれなければ彼の整った顔立ちを伺うことすらできません。自分で飛んで行って眺めるのも悪くはないのですが、飛び続けると疲れてしまいます、そんな僕を気遣ってくれて、彼はいつも屈んでくれます。彼の優しさは無意識のうちに、僕を包み込んでくれます。出来上がった積み木を見えるように体を動かしました。僕という遮りが無くなり、自分の積み上げた積み木が二人の目に入ります。
「ほう、なるほど、ブランとは違った形だな……何をイメージして作ったんだ?」
「うえ?い……めーじ?」
「遊ぶときだって、何かイメージして物を積み上げるときがあるだろう?ビクティのイメージしたこの力強い積み木の形は、何を思って、作ったんだ?」
 そう言われると、無意識に思い続けた人を指さしました。僕の積み木は小さく、あまり高くありませんでしたが、大好きな人をイメージして作ることが、僕にとってのイメージになるのでした。彼は自分が指さされ、しばらくきょとんとした後に、なんだか気恥かしそうに笑いました。
「は、はは、俺をイメージしてくれたのか、この積み木、なるほど、確かに俺にそっくりだな。ありがとう、ビクティ」
「いいじゃないか、ブラン、お前とビクティは結構お似合いだぞ」
 冗談めかしてそんなことを言う彼女の言葉に、僕の心は激しく揺れ動きました。何を言っているんだろうか、彼女は僕とブランをどういう目で見ているんだろうか、そんなことを思っても、答えなんてすぐにわかります。彼女の眼は、僕を妹のように、そして彼を兄のように見ているのです。仲睦まじい兄弟。そういう風に見られて、僕は嬉しいけれども、逆にそう見られるということが、ある一つの事柄を完全に決定づけるような気がして、悲しくなりました。僕と彼は、決して逢瀬を重ねることなどできはしないのだと。
「二人とも中々にいいコンビをしているじゃないか、いっそのことビクティも一緒に来るか?」
「何を言ってるんだよ全く、住み慣れた土地を離れることのつらさが、どれだけ心に来るのか、ネーロにはわからないのかよ」
 ブランの言葉が、彼の悪意などこもりもしない純粋な言葉が、僕の悪意に満ちた心を抉りました。わかってください、わかってください、僕は住み慣れた土地なんかよりも、貴方の後を追いたいです。だけれども、貴方と彼女の間に割って入ることなんてできません。二人の間には、僕なんかでは飛び越えられないほどに深く深く、広く大きな溝があります。だから僕にはどうすることもできません。だから僕は、そんな彼の言葉にはにかんで笑うことしかできません。
「へへ、もしかしたら、ほんとについていっちゃうかもしれませんね、ずっとずっと遊んでいたいですから、二人と」
「おいおい」
「ふふ、嬉しい限りだな」
「じゃあ今度は、ネーロをイメージして作りますね。理想と真実、二つ一緒じゃないと、いけませんから」
「へぇ、洒落たこと言うじゃないか、ビクティ」
「おきゃんな子だ、活発と清楚を兼ね備えると将来有望になりそうだな」
 ブランが笑います、ネーロも笑います。僕もつられて笑いました。二人を強調するように積み木を積み上げるのは、けしてネーロをないがしろにしているわけではないのです。けして、ないがしろにするつもりなどないのです。そう言い聞かせないと、僕は彼をずっと考え続けてしまうような気がして、一つ他人に視界をよらせることができない、悪いポケモンになってしまいそうでした。いいえ、もう、なりかけています。僕は僕をいい子だと思うことなんてできません。僕は悪い子です。恋人同士の間に割って入ろうとする、悪い子です。そんなことを考えていると、ネーロが僕を優しく撫でてくれました。
「君と別れるのは本当に辛いな、私たちを助けてくれた君と別れるのは――」
「――はい、僕も、ずっとずっと、胸が苦しくなります、だけど、考えてもしょうがないです」
「そうだな」
 その言葉は、貴方に言ったんじゃありません。貴方の横にいる、雄々しい真実の黒を司る――ダメでした。そんなことを思ってはいけないのです。そう思えば思うほど、自分の惨めさが露呈します。軽く笑うネーロ、彼女の言葉に対して涙ぐむ彼、激情に身を任せて泣くことができれば、僕もどれほど気が楽になることでしょう。僕を閉じ込めて、ずっと泣くことができれば、僕は自分の涙に溺れて、何も考えなくてもいいのかもしれませんでした。彼と彼女と出会ったことも、二人の関係も、彼を好きだという思いも、その間に割って入ることができなかったとしても思い続ける、この惨めな心を。

すきとわかれ



 出発の時がやってきました。彼はそう言いました。もうこれ以上、この土地に残ることができないと。彼女も表面的には淡々としていましたが、少しだけ体が震えていました。もうわかっていました。もうわかっていました。今までの出来事が夢のように、走馬灯のように流れます。それは今までの思いを思い直すように流れました。わかってはいました。わかってはいました。大地が蘇ればポケモン達も戻ってきます。そうしてその大地はポケモンに助けられ、ポケモンを助けながら、栄えていくことでしょう。そしてそれを見届けた彼らは、この土地を離れていくことでしょう。わかってはいましたが、僕はそれでも、二人を助けました。土地の復活が早まることは、彼らと一緒にいるということを、彼らと一緒に過ごせるという時間を、予定より早く縮めてしまうということを。それでもしょうがないのです。そうするしかないのです。だってだって、この大地が復活すれば、ポケモン達はみんな戻ってきます、みんなみんな、それぞれの安らぎの地を求めて、この大地に足をのせることでしょう。それがこの大地のあるべき姿です。僕も、もう一人にならなくていいのなら、もちろんそうするに決まっています。そう思わないと、ブランたちがきっと悲しみます。だから、僕はこれでいいと、自分に言い聞かせました。そう言わないと、彼を困らせてしまうから、彼が困った顔なんて、見たくないから。
「お別れ、なんですね」
「すまない、ビクティ」小さな小さな声でそう言いました。彼は申し訳なさそうに、消え入りそうな僕の瞳を覗きこみましす。彼が屈んで作る薄暗い影の中にくっきりと光る、硝子玉のようにぴかぴかと透き通る赤い眼の中に、僕のくしゃくしゃの顔が写ります。ぴかぴかした目には、別れを惜しむけれど、それでも何か決断をしたような意志の灯った緋が僕を見つめました。
「別れは辛いけど、明日の朝に出発するんだ……ビクティ……最後の夜まで、一緒だから」
 そういう言い方をしないでください、どうかお願いです。僕はそんなことを言われると心がはちきれそうです。今すぐにでも、貴方に飛びかかりたい、貴方の心を狂ったように貪りたい。そうではないのです、そうではないのです。僕は貴方という存在を心から消し去って、笑って別れられるように、いつか来る別れの日に対して必死にイメージを働かせていました。だけど貴方はこんなにも、悲しそうな顔をして僕を抱き上げます。僕の努力はそれだけでもう、意味のないものになってしまいます。心が揺れ動き、体が瘧のように震えます。病気ではないのに、感情が崩れて止まりません。嫌だ、嫌だ、別れたくない。もっともっと、ずっとずっと、久遠の果てまで一緒にいたい。世界は近くても、貴方の心はとても遠い。それだけを思い、ずっとずっと堰き止めていたものを吐き出したくなるのを、寸でのところで飲み下しました。胃の中に嫌なものがたまって、吐きそうです。多少えずいて、軽く口元を押さえます。
「大丈夫か?」
「平気です。僕……お別れに辛い思いをしてたら、みんなと会ったときに泣いてばっかりだから、だから僕平気です」
「……そうか」
 今日はいっぱい遊ぼう、いっぱいいっぱい、嫌なことも悲しいことも、忘れちゃう位いっぱい。彼も、彼女も、そう言って笑い合います。別れは笑顔で、さっぱりと、水のような付き合いでいよう。きっと彼らは爽やかな別れこそが、別れの形として素晴らしいものになると思っているのでしょう。
 僕は違います。甘酒のようにべたべたしても未練がましく足にしがみ付く、それくらいの執念を持たなければ僕は人の意志を変えることなんて不可能だと思っていました。でも、そんなことを口にしたら、ああ、さぞ卑しいポケモンであるということになるでしょう。僕は彼らの前では、自分をそんな風に表すことなどできはしないのです。自分をそんな風にしてしまったら、どれだけ彼らの心に歪んだものを植え付けることでしょう。自分達の行いを悔いていた彼らを、どうしてまた歪ませるような思いを彼らにぶつけなければいけないのでしょうか、僕自身がそれを望み、また彼らをここに束縛することを僕が望んでいるからなのでしょうか。彼らがそうなり、僕はどう思うのでしょうか、その先の僕は笑顔を――輝くような笑顔をしているのでしょうか。
 そうではないんだと思いました。人に未練がましくしがみ付く様な行動をとってでも、別れたくない、離れたくない、それは一つの友情、愛情の表現。それも一つの思いを伝える手段のひとつ、僕はそれを否定はできません。自分の思いを伝える方法は千差万別。それがどのように映ろうとも、自分の心に対して正直にさえなれば、自分がどれだけ相手を思っているか、それを心で、体で、行動で表せば、相手がもし心揺らいでいるのなら、その意識を変えられるかもしれないという、そのくらいの強い想いを持ち、それを示そうとする。それだけ相手を思うことは、けして悪いことじゃないと思いました。
 ですが僕は、そう思えません。彼女と彼は、逢瀬を重ねて、思い思われる恋仲同士。僕はその仲に入ることすらできない小さな小さな存在。口では仲良し、行動でも仲良し、でも彼の心は、僕にはありません、彼の心が帰依する場所は、いつでも彼女の傍なのです。それは長い長い年月をかけて、二人で築き上げたものです。それをどうやって、ただ少し一緒にいただけの僕が、何かをできるのでしょうか……。
「そうですね、いっぱい、いっぱい遊びます、忘れるくらい、悲しいことも、さみしいことも」
 そういう僕のかはきっと、寂しくて泣きそうな顔をしていたのかもしれません。彼は優しく僕を抱き上げて、笑いました。
「俺も、悲しい顔はしないよ。またきっとビクティに会えるさ、そう思うから、明日の朝までは、君といられる時間を大切にする。俺は、それが一番、いいと思ってるから」
 はい、とだけ答えました。僕はそんなこと思っていません、貴方はそう思っていても、僕はそう思いたくない。僕は、そんな風に思いたくない。それだけを心の中に留めました。喉から出かかった言葉をしまいこんで、健気に笑うような顔を作ります。そうしなければいけないのです。そうしなければいけないのです。僕は、彼の言葉に共感をして、彼の思う、理想とするような別れを告げなければいけないのです。それが僕の歪んだ心に杭を打ち、彼らの出発を妨げることなく、彼らに笑って別れを告げられるんだと、僕はそう思いました。そう思いこみました。そうじゃなければ、もう自分のことが止められませんでした。怖くて怖くて、自分の意見など述べることもできませんでした。自分の意見を述べて何になりましょう。お願いです。僕はあなたが好きです。愛しています。汚れていても、大地が腐っていても、僕にはあなたさえいればそれでいいのです。だから、僕とずっと一緒にいてください。それを言って、いったい何になりましょうか?僕には、そんな言葉をかける勇気も、自分の心を整理するだけで、決別する潔さも、存在しないのでした。自分の心に従って生きることができれば、どれだけいいことでしょうか、僕にはそれができずに、二人の別れを笑って見送ることもできないのかも知れないと、どんどん危惧しました。怖くて怖くてたまりませんでした。それでもです、それでもです。時間は待ちません、時間はすぎるのです。僕はこの短い時間の中で、二人の出会いを、二人との思いに対して、自分の答えを出さなければいけません。もしかしたら、二人ではなく、一人かも知れません、僕は僕、二人は二人、それでもです、それでもです。僕は心の靄を払うために、僕自身の思いを二人にぶつけなければいけません。
「時間がなくなる前に、何かしておきたいことをしておこう」
「ネーロ……今生の別れじゃないだろう?」
「……ビクティにとっては、今生さ」
 彼は首を捻りました。やはりでした。彼女は僕の思いに気が付いていました。僕が思いを告げないことも、恐らく知っているのでしょう。そして、別れればいつかは彼女と彼は結ばれ、僕の好きだった彼は存在しなくなります。きっと彼にはわからないけれども、彼女にはわかっているのです。僕が慕情を募らせた彼は、もう今生の別れをしてしまうのだと。それがわかっていて、彼女はそんな風に言うのです。意地悪でも何でもありません、僕が横槍を入れる方が、いけないことなのです。そして僕はそれを知っているからこそ、わがままを言うことはありません、そんな僕の心情を察してくれているのか、彼女は僕が彼女の心を理解してくれなくても、彼女は僕の心を理解して、笑いかけてくれました。
「もう君に会えないことが、私にはとても寂しいよ、ビクティ」
 優しく頭を撫でて、悲しそうな顔を僕に向けてくれました。彼女は僕の心持を分かっているのに、僕のことを好きだと、僕と別れるのが本当に辛いんだと、僕のような汚れた心の持ち主だったとしても、彼女は一緒にいてくれてありがとうと言ってくれました。大地を蘇らせる力を貸し与えてくれて、本当にありがとう、君の力が、また世界を再生させる、架け橋になってくれた。そんな言葉が、耳に入って流れます。涙が溢れて止まらないほどの思いが流れ込みます。堰き止めていたものが溢れそうになって、これ以上聞かないようにと耳を塞ぎたくもなりました。彼女は僕のことを嫌いになることも、蔑むように扱うこともしませんでした。僕と彼女の心持では、大きな大きな溝があり、僕はその溝のせいで、彼女が崇高な高嶺の花ではなく、だれとでも親身になれる親しげな心を持った優しい女性であるということを理解しました。もともとそう思っていたことが、彼女の心の在り方によってさらにそう思わせるような感覚に陥りました。僕は彼女には勝てないということと、そんな心を持ち、その心のように誇り高く自分の理想を実現するために奮起する彼女に、真実を求める彼が惹かれることは必然であったのです。何度確認しても、何度視認しても、僕には間に割り込む隙間がないのを、改めて確認しました。
「行こう、ビクティ」
 彼女はそれ以上何も言わずに、僕を優しく抱き上げました。
 僕は彼らにつき従って、己を忘れるように遊びまわりました。変なことを言いますが、僕は遊ぶことに全力を尽くしたのは、もしかしたらこれが最初で最後になったのかもしれませんでした。そう思うしかありません。何をしても燥いで回り、僕は彼らと会ったことを忘れるかのように、いっぱいいっぱい自分のことだけを考えました。これからどうしようか、これから何をしようか、僕にはどうすればいいのか、そして、僕はどうあるべきなのか――
 そんなことを考えても、体の動きは止まりませんでした。それでも、僕は自分のやっていることがひどくつまらないことのように見えて、何をやっても楽しくないと思ってしまいました。何もかもが面白くない、考えまいと思っても考えてしまう。それで何が楽しいというのでしょうか、一日中を通して、二人と触れ合っても、僕の心にはぽっかりと穴のようなものが空いたまま、何もかもが区切りのつかないまま別れを告げるという悲しみだけが残されました。これでいいのだろうか、これでいいはずなのに、どこかもの寂しいと思ってしまうのは、やはりまだ未練があるからなのか、そんな悶々とした気持ちを抱えるまま、僕は別れたくありませんでした。そう思ったのも、もう時間が過ぎて昔のことのように思えます。時間は過ぎ、昼と夜はまた逆転します。夜になれば、楽しかったと思うような時間が今までの時間を結合させて降り注ぎます。その時に初めて、僕は別れがこれほどまでに胸を締め付けるものなのだと悟りました。別れたくない、ずっと一緒にいたい。そんな純粋な思いが、ますます別れというものを強調しているようでした……。

あなたとわたし



「二人でつもる話があるかもしれないから、私は先に寝ることにするよ」
 彼女はそう言って、先に眠りにつきました。嘘です。彼女は僕の心持を分かっているからこそ、最後の最後までその心を尊重してくれたのです。感謝をして、僕は彼の――ブランの横に座りました。月が見え隠れして、ゆるりとした雲が伸びます。月が僕達を柔らかく照らして、祝福しているようではありませんか。こういう言い方をすると、非常にまどろこしいかもしれません。気取った言い回しだと思われ、奇をてらった比喩のようなものだと、そう思われるかもしれません。それでいいのです。そのくらい気取って、奇をてらわなければ、僕達の思いは測れないのかも知れません。彼女と彼には彼女と彼の、僕と彼には僕と彼の間ものという存在があります。その存在は誰に誰何されても、互いに築き上げていくものだと思いました。
「月が、綺麗ですね」
「ああ、月が綺麗だ」
 何の捻りもない率直な言葉です。意味など存在しない。ただただ美しいものを愛でるだけの単純で陳腐な言葉の羅列でした。綺麗なものは何の言葉もてらいもなく、ただただ綺麗だということ、それがこの世界なんだと思います。僕は少なくとも、硝子玉は綺麗だと思いますし、土に汚れた野菜も綺麗だと思います。ささくれているもの、土に塗れたもの、風化しかけているもの、それはその場に合った美しさというものがあるんだと思いました。今はこの夜に浮かぶ月を、ただ純粋に綺麗だと思いました。
「月は、夜だから綺麗なんですよね」
「そうだな」ブランは笑いました。「月は夜だから綺麗なんだ、昼間に浮かぶ月は、きっと霞んで奇麗じゃないさ」その言葉は確かに当たり前で、ごく普通の返答でした。しかし僕には彼が、月に照らされてもの寂しげな瞳を燻らせる彼の言葉が、魔法のように聞こえました。飾りっけのない言葉が魔法のようで、僕の胸は大きく高鳴ります。
「俺たちがこうして二人で一緒になるのも、特に何の変哲もないことかもしれないね」
 それが朝になって壊れてしまうんじゃないんですか、と言葉を乗せると、そうだね、と笑いました。彼はすぐに言葉を訂正しました。誰のためでもなく、彼自身のために、そうしたのでしょう。
「悪いな、最後の夜なのに、君に気の利いた言葉一つ伝えられなくて
「僕がブランの……あなたの気の利いた言葉を聞いて、何か変わるんですか?」
「そんな言い方……いや、すまん」
 少しだけ顔を顰めた彼は、またすぐに眉間に寄せたしわをこれ以上寄せられないというくらい寄せました。別れてしまうのにいまさら口論なんて、そう思って自分から謝る。彼の心が少しだけ見えました。
「ごめんなさい」
「ビクティが謝ることないさ」
「ごめんなさい」
 二度謝るのは、僕の気がおさまらないのかも知れません。それとも、僕自身が悪いと思い込んでいるからこそ、彼にそう思わせたくないのかも知れません。
「……やめよう、こんなことを言っても、しょうがないよ」
「はい、止めましょう」
 お互いに黙って、月を見ました。この時間が永遠にはならないことも分かっているし、この時間が意味のないことも分かっていました。長ーい沈黙の後に、先に口を開いたのは彼でした。何か言いたげに少し呻いた様な声を出して、そのまま低い伸びた声を出しました。
「今日のビクティ、なんだかおかしいよな」
「……」
「遊んでても、いつもみたいに楽しそうな顔をしてなかった。呼ばれて無理に作ってる笑顔って感じがして、すぐに違うこと考えてるみたいだった」
 違うことを考えている。貴方のことを考えていた。そう言えばきっと驚くかもしれません。僕は少しだけ考えて、やっぱりやめました。それを言ったところで何の意味もないからです。
「もしかして、やっぱり別れが辛いのか?」
「――はい」
 はっきりと、言い切りました。別れは辛い、別れたくない。そういう思いがやはり残っています。決別しなくては、割り切らなくては。そう思っても、結局は未練が残る様に心が尾を引きました。彼のその存在を目に移して。
「もし――もしもだ、本当に、ビクティにこの土地に対しての思いが何もないのなら――」
「僕は、行きません」
 それだけを告げて、息を吸いました。
「僕は、貴方が遠くの大地で変わってしまったら、僕が好きだった貴方はもういないことになります」
「好きだった……俺?」
 ブランが不思議そうな顔をして僕を見つめました。僕は少しだけ躊躇をした後に、ゆっくりと告げました。僕自身の思いを、告げました。ブランが好きなことを、ブランがネーロを好きになっているということを、そしてそれはお互いがお互いをそう思っていることを、そしてそれを知っているからこそ、僕はその間に入れないことを、だからこそ、二人の間についていけないことを。二人がいつか結ばれ、自分が好きだった彼という存在がいなくなること、そしてその時、自分の思いが終わりを告げるということ。僕が今まで思ってきたことを、走馬灯のように口から出しました。唖然としていた彼も、もちろん最初こそそれはそれは驚いたような顔をしていましたが。やがてゆっくりと落ち着きを取り戻したように、僕の話に耳を傾けていました。
「ビクティ……君は、俺のことをそんなにも思ってくれたのか」
「はい」僕は力強く頷きました。「形式上の友達よりも、貴方と一緒にいることが、僕にとっては最大の幸せであり、僕の願いなのです。ですが、ああ、やはり貴方の心は、僕に振り向いてはくれません……そうですよね」
「……すまない、俺は、心の底から――彼女を、ネーロを愛してるんだ」
「わかっていますとも。だから、僕も二人の間に横槍を入れることなど、二人の溝を飛び越えて二人に割って入るなど、できはしないのです」
「ビクティ」
「僕が好きなのは、だれにも縛られていない貴方です。僕が好きだった貴方はやがて、彼女と結ばれ、彼女だけの貴方となるでしょう……僕は、僕が好きだった貴方が変わってしまうということを恐れて、変わってしまった貴方を見たくないという思いの方が強いようで――だから貴方達と一緒には行けません。行けば、苦しいだけですから」
 彼は黙って耳を傾けました。言葉よりも何よりも、黙って彼に撫でられることの方が、何倍も彼の思いが伝わりました。それをしてくれる彼は、こんな惨めで厭らしい女である僕を、まだ好いてくれているのでしょう。溜めていた涙が、溢れました。
「ビクティ……」
「行ってしまう、貴方が、僕の好きだった貴方が消えてしまう。でもこれは、僕の我儘です。二人の間を取り壊す気なんて毛頭もございません。僕一人の我儘を、よくもまぁ辛抱して聞いていただきました。ありがとうございます。ありがとうございます」
「寂しくて悲しくて……ずっとそんな気持ちを押さえこんでいたんだね。偉いぞ、ビクティ。君なら、きっと俺よりももっと素敵な人が――」
「僕は、貴方以外と結ばれたくなどありません」
 そこはきっぱりと言い切りました。優しげな彼の赤い瞳が、少しだけ濁ります。動揺をしているのでしょう。少しだけ体が震えているのか、微量の振動によって伝わりました。
「でも、貴方は彼女のものです」
「……今の俺は、誰のものでもないさ」
「では――誰のものでもない、僕のものでも、彼女のものでもない。自由な貴方を好きだった私に、貴方を好きになれた。僕が貴方をずっとずっと忘れないために。僕に――貴方を好きになれた証をください」
 僕がそういうことを言うのを分かっていたのでしょうか、彼は少しだけ寂しそうに瞳をくゆらせました。それで忘れられるのか、それで思いは吹っ切れるのか。それはわかりませんでした。
「……ビクティはそれで……俺で……いいんだな」
 頷きました。それでいいのではなく、貴方ではないと嫌なのです。そういうと、もうこれ以上彼は言葉を伝えませんでした。
 僕と彼は逢瀬を重ねました。夜の下に、陰湿な水音や掠れた嬌声が少し響いて、夜空に吸い込まれます。僕はその時に、彼のことだけを考えました。彼に征服され、汚されることが、どれほどまでに嬉しいことなのか、そう思えば思うほど、彼と繋がっているという感覚を共有できるような気がして、嬉しくて涙を流しました。
「ブラン……ブランっ」
「……ごめん、ビクティ――ネーロっ」
 絶頂を迎え、果てる彼が最後に口にした言葉はやっぱり、何度も逢瀬を重ね、愛し合った彼女の名前でした。彼の先端からあふれる、彼の種子をその身に注がれながら、僕はやっぱりな、と心の中で思いました。わかってはいたけれども、彼の心はやはり彼女のものなのです。そしてそれは誰にも誰何されません。自分達の思いを伝えあった者同士だからこそ、心の中ではやはり思いを通じあっているのだと、嬉しさと同時に、諦めのようなものが僕の中で湧き上がり。夜は明けました。

さよならとまたあいましょう



「それじゃあ、また会おう、ビクティ……」
「さよなら、ブラン」
 別れの朝に、あいさつを交わします。言葉は非常に短く、それでも思いはゆるりと長く。伸びていきます。
「さよならって」
「さよならです。ブラン」
 何度も同じように言葉を重ねます。僕が憧れて、僕が好きになった貴方はもういません。だからさよならなのです。また会いましょうは、もう僕の心の中にはありません、昨日の夜の思い出を、僕のお腹に注いでくれた僕への思いを、ずっとずっと忘れないために、そしていつか、彼が僕のことを忘れて、彼女と幸せになるためにも、決別をしなければいけないのです。
「また会いましょう……じゃないのか」
「はい、さよならです。ブラン」
「俺はいつでも……お前がどこにいても、お前が寂しかったら、駆けつけるからな」
 最後の別れを惜しんで、何度も何度も同じことを言います。ネーロがくすりと笑って、出発するぞ、と告げると、最後に飛び立つときに、もう一度こちらを見て、最後に言葉を発します。
「また会おう。ビクティ」
「さよなら、ブラン」
 最後の最後まで、ブランは寂しそうな顔をしていました。また会おう、という言葉を期待していたのでしょうか、もしかしたら悪いことをしてしまったのかも知れません。飛び上がった二人は大空を舞って、そのまま綺麗な青に吸い込まれていきました。雲ひとつないいい天気に、僕達の短い時間は終わりを告げました。
「また会おう……かぁ」
 残された僕は、また昔と同じように、昔から僕を守り続けてきてくれた一本の木に戻りました。この大地はまた蘇り、潤っていくのでしょう。僕を守り、僕が力を与え続けてきた木に寄り添うと、少しだけ息をつきました。
「ふふ、まだ、あったかいかなぁ」
 お腹を撫でると、昨日のぬくもりが感じられました。きっと、絶対に、彼の思いは形をなすのかも知れません。そうなったら、僕はひとりで責任をもって、彼の思いを育てていかなければなりません。もしかしたら、僕自身がそうなることを望んで、あんなことを彼にさせたのかも知れません。
「ん?」
 物思いにふけろうとしていたら、いつの間にか物音が聞こえました。ポケモン達です。蘇った大地に、自然とほかのポケモン達が集まってきていました。僕は、ブランとネーロがやってきたことをこの目で見届け、そしてその結果をまたこの目で見届けることに、感動を覚えました。
「やったよ、ブラン、ネーロ」
 二人のがんばりは無駄ではありませんでした。蘇った大地にはポケモン達が戻り、ゆっくりとまたポケモンと大地のサイクルが出来上がるでしょう。そういう場面を目にすれば、彼らの願いである大地の再生がまた一つ達成されたのでしょう。
「嬉しいな……」
 誰に言うわけでもなく、僕は呟きました。夜の逢瀬も、朝の別れも何もかも、この一瞬の出来事が、きっと目まぐるしい時間の流れが、僕とブランの時間を開けて、忘れてしまうのかも知れません。それでいいのです、それでいいのです。僕と彼は、夢の様な出会いと、夢の様な別れを得て、また一つ思いを断ち切るのでしょう。僕は、彼への思いはもう切らなければいけないと思い。眠ることにしました。眠り、起き、そして眠る。彼が一瞬でも僕と逢瀬を重ねてくれたとき、彼はとても興奮していました。僕は彼を興奮させることができたこと、誰のものでもない彼が僕だけのものになってくれた瞬間を忘れないように、そして、彼女のものになってしまった彼と、本当にさようならをするために――
「おやすみ、なさい」
――お休み、ビクティ。
 瞼を閉じる前に、彼の声が聞こえた様な気がしました。それから先は、暗闇の世界。僕の心は、もう彼のところにはありませんでした。

おわりのおわり



 ビクティへ
 この手紙を読んでいるのなら、わかるかもしれない。郵便というものが普及して、俺達は一つの国を作り上げた。この大地の中心に、俺達は住み着いたんだ。彼女とは……ネーロとは結婚し、俺は王に、彼女は女王になった。もう荒れ果てた大地は見られない、それでもたまに飛び回って、大地を眺める。また豊かな世界が戻ってきてくれんだと。感慨に耽っているよ。もし、君がまだ同じ場所で、同じように寝て、同じように遊んでいるのなら、また会えないだろうか、もし、君さえよければ、すぐにでも返事が欲しい、この手紙を呼んだのなら、返事をくれないだろうか                 ブラン

「また会いましょうかぁ……相変わらず、変わらないんですね、ブランは」
 読み終えた手紙を置いて、軽く息をつきました。数か月という時間で、この大地もポケモン達が戻ってきました。組織を作り、条例を作り、やがてその中で生活をするグループが増えていきます。
 僕は相も変わることなく、自分の場所で、寝て、起きて、遊んでいました。
「ビクティ」
 ほかのポケモン達が声をかけてきてくれました。休めていた体を少しだけ起こして、そちらの方へ向きます。
「ビクティの赤ちゃんは、いつ生まれるの?」
「んー、わかりません」
 ポケモン達は興味深げに僕のお腹を眺めて、優しく撫でたりします。彼の思いは形を成して、すっかりと身籠った体になり。そんな僕を心配してくれているのか、それともどんなポケモンが生まれてくるのかが気になるのか、不思議そうな優しそうな顔を毎日のように向けてくれました。それが嬉しくて、僕もいつも笑い返します。
「産まれたら、僕たちに知らせてね、いっぱいお祝いしよう。ビクティの好きな人の赤ちゃんなら、きっとみんなが祝福してくれるよ」
「ありがとうございます」
 心の中では、もう好きな人はいないと、そういいたかったのかも知れません。実際に死んでしまったわけではありませんが、自分の中で、もうあの憧れた黒は、白と交わり、自分の真実に向かって歩き出しているのだと。それだけを理解していました。僕はただただ、あの時少しだけ気持ちを貰っただけなのかも知れないと、そんなことを考えてしまいました。
「それ、手紙ですか?」一人のポケモンがそれを聞きました。そうですと頷いて、中身を見せます。「わぁっ、王様の筆跡だ」他のポケモン達も吃驚したようにその手紙を興味深げに魅入っています。
「ビクティの友達は、王様だったんですね」
「そうですね、友達です。うん、友達」
 友達、友達、何度も何度も同じように呟きます。友達。そう、彼は、ブランは友達。僕の愛したブランは、自由で、凛々しく、そして強く、優しかった。
 今の彼もその素晴らしさは変わらない。ただ一つ変わることがあるとすれば、彼はもう僕の好きだった彼ではないということ。それだけでした。
 ひとしきりみんなと話をして、僕は一枚の羊皮紙と、木でできた板を用意しました。手紙の返事を書こうと思いました。何かを考えながら書くのは僕はとてもではありませんが苦手だったので、ありのままの思いを全て、文に移そうと思いました。
 僕と彼女と、彼が出会ったあの日のことからずっとずっと時間がたったような気がして、少しだけ羊皮紙が滲みました。薄く伸びた水滴は、自分の涙。涙を流れたのを頭が認識するのと同じくらいに、僕は小さく泣きました。めいっぱい泣くこともできたかもしれません、それでも、僕は小さく小さく、泣きました。泣いて泣いて、思い出が流れます。今までのこと、そして夜の出来事、そして――これから先にあろう出来事。
 ひとしきり泣くと、溜息をつきました。これでよかったんだと、彼の思いは彼女にあり、僕の思いは、もういない彼にある。そしてそのいないからから授かり、孕んだ子供がいる。それで、もう僕にはこれ以上のものを欲しがることなんてないんだと、ずいぶんとずるく、我儘な行動だと、自分で笑いました。
 そう、我儘でした。彼に交わってほしいというのも、関係を知っていながら己の身にその種子を注ぎ込まれ、孕むことも、何もかもが自分がこう合って欲しいという願いを、我儘を彼に受け入れてもらったからこそ、こんなことができたのだろう、この結末だったのだろうと。僕はこのことをまだ二人に知らせていませんでした。だけど、もう隠すことも、嘘をつくことも、僕はできませんでした。僕は羊皮紙についた水滴を払い取ると。ゆっくりと文字を書き始めました。僕の心の中に秘めた、だれにも縛られなかった彼の思いを乗せ、そして新たに世界を見守る役目を担った二人の祝福を。卑しくも身籠り、二人の間で我儘を言い続けた自分の心情を、ありのままに書き始めました。
「これでいいんです。これでいいんです。僕は、もう貴方達の目まぐるしい時の中で、いない存在なのですから」
 自虐的に笑って、そよ風の下で、文字を書き始めました。書きだしはどうしよう、書きおさめはどうしよう、どんなふうに書けばいいのかな……
「――ええと、ブランへ――」

 ブランへ
 手紙をありがとうございます。僕の心はいつでも、あの時のまま止まっています。僕はもう、誰のものになることはないでしょう。僕はずっとあの時の貴方を慕っています。今の貴方は、もう彼女のものです。僕はずっと、貴方が好きでした。貴方の姿に、貴方の体に、貴方の声に、何もかもに魅かれました。初めて出会った異性に対する慕情は、全て貴方に向けました。それでも、僕は貴方と彼女が心の底から愛し合っているということを理解していました。僕はその間に入ることは、どうしてもできなかった。身を引き裂かれるような思いを駆け巡ったとしても、きっとあなたは振り向くことはないでしょう。僕はそれ理解していますし、もちろん貴方や彼女に対して。僕のひどく歪んだ我儘な恋の心をぶつけて、迷惑をかけたくなかったからです。
 王様になり、各地を旅してまわる。その傍らには、彼女がいます。僕は、貴方達こそが、真に結ばれて、この世界の安寧を見守る存在として永劫に君臨するべき、理想と真実の、女王と王の姿だと、心でそう思いました。その中に、僕の姿はありません。貴方はきっと別れの時に、さようならという言葉を使わずに何度も、また会えるという言葉を使ったのは、僕にまた会いたくて、そういう言葉を紡いでいるような気がしてなりませんでした。きっと、それは女々しいという思いでしょう。ひどいことを言うかもしれませんが、僕のことはなるべく、思い出さないでください。
 わかってください、わかってください。貴方にはやるべきことがあり、僕と過ごした日々は、膨大な情報の蓄積とともに、忘れ去ってください。そのほうがいいのです。そのほうがいいのです。僕のような悪い女と、どうかまた会いたいなどと思わないでください。僕は最低なポケモンです。貴方と彼女の関係を知っていながらもなお、貴方に汚してもらい、征服することに喜びを覚えました。そして、その卑しい体に貴方との証を宿しています。そんな僕が、貴方と会い、何をしろというのでしょうか?
 僕は貴方のことが好きでした。でも、貴方は僕のことが好きではありませんでした。それでいいのです。それでいいのです。僕を好きになることも、興味を持つことも、もう終わりにしましょう。この手紙は、読み終わったら捨ててください、卑しい僕の思いを、残り香をにおわせたようなこの手紙は、読んだら燃やしてください、塵にして、灰にして、跡形も残さないでください。僕は。貴方の思い出に入る資格すらありません。僕は、貴方の心に残る必要もありません。どうか、僕を追わないでください。目まぐるしく変わる時の中で、僕のことをどうか忘れてください。僕と出会ったあの日、貴方達に力を貸したあの日、そのことは僕は覚えています。しかし、その先のことは僕の心にはありません。その先のことは、貴方と、貴方のこの世で一番愛する者との思い出となります。だから、もう僕は必要ないのです。僕と出会った幻の日々を、僕と過ごした思い出を、過ぎていく時間の分針と一緒に、全て全て、何もかもを忘れて、幸せになってください。それだけが、我儘な僕の、最後の我儘です。さようなら、僕の大好きだったブランへ。   ビクティ




あとがき




 この話は頭がおかしくなっちゃった時の息抜きに書いたのでチラシの裏レベルのクソ文章です。物語性も何もあったもんじゃありません。どうしようもないくらい突っ込みどころ満載な話なので、それを踏まえたうえで読みたくないという方は全部読まずにこのあとがきを先に読んでからバックしてください。そのくらい終わってる文章です。遅いよ馬鹿野郎この野郎という方は今すぐにほかの方の小説を読んで目をきれいきれいしてください。それだけが作者の願いです。


ブランについて
 お兄さんポジションです。かっこいいけどちょっとお茶目な感じでイメージ。体躯も理想的で誰とでも分け隔てなく接することができる真実の王様です。そんな彼は二人の女性の間で特に揺れ動くこともなく自分の好きという真実を貫きました。それがわかっているからこそ、そんな彼にビクティは魅かれたのかもしれませんね。自分の心を揺らがせない芯の強いお兄さんをイメージしたけどぶっちゃけ文字の関係上そこまでそんな部分は濃密にかけておりません。ただのお兄さんです。まぁゼクロムかっこいいから別にいいんですが(ry

ネーロについて
 お姉さんポジションです。ビクティの淡い恋心に気づいていて、それを尊重しました。それは心の中でブランは彼女のことを好きになることはないんだろうということに気がついていたからかもしれません。それでもネーロは彼女の意思を尊重しました。それが理想であり、彼女が力を貸してくれたことに対しての恩なのかもしれませんね。ちょっと包容力のあるしっかり者の茶目っ気があるお姉さんって感じです。レシラム可愛いからしょうがないね。

ビクティについて
 今回の主役です。彼女の心の中の油ぎったぎたな思いが渦巻いて物語は進みます。彼女の心はどうしようもないくらいブランに向いてます。それでいて、自分が結ばれないと理解していても止められない思いを、彼に慰めてもらう形になりました。結局思いは実りませんでしたが、結果的には彼女は今まで自分が好きだった彼を思い、これから先も一人で生きていくという形をとりました。それはおそらく横槍を入れて、二人の関係を壊しそうになった自分への懺悔かなんかかもしれません。最初に懺悔することに意味はないといっても、自分では懺悔したくなるくらい愚かしいことをしてしまったという自覚があるのかもしれませんね。でもまぁ可愛いから作者は許します。ロリコンです。まったく伝説ロリポケモンは最高だぜ!!


コメント

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • プロローグから既に切なかったですが、やはりどこまでも切ない物語でした。
    ゼクロムとレシラムのように対になっているポケモンは、他のポケモンが割って入れないような強い絆がありそうですものね。
    それでもビクティの想いを尊重してくれる辺りがネーロの優しさだったのでしょうか。それも捉えようによっては残酷なものですが……。
    最後の手紙で僕の大好きだったブランへという締めの言葉が、実らなかった恋を者が経っているように思えます。執筆お疲れ様でした。
    ――カゲフミ 2011-12-01 (木) 16:22:18
  • >カゲフミさん
     切ない系を書くのはこれが初めてじゃないかなと思います。微妙に同じ言葉の羅列が多くてくどいかな、飽きられないかなと思ったんですが、ぶっちゃけこの文章はチラシの裏みたいなものなので気にすることじゃありません。そこまでしてこう高みを求めるものじゃなくてあくまで普通に息抜き用に書いたものですからね。こんな感じになるのはしょうがないね。物語性というのもありませんが、切ない系です。
     ゼクロムとレシラムは二人で一つの存在って考えたほうが深みが増しますね、ミルクと珈琲みたいなものです。どっちも欠けてたら引き立つものがないかなって感じです。私はブラックで飲んじゃいますが(ry
     ネーロに関しては彼女なりの気遣いがあったのでしょう。理想としてはすっぱりと思いに分別をつけられたってことだしね。ビクティも悲しいけど自分で理解してたぶんまだ我儘を言うだけの子供じゃなかったってことでしょうね。私は個人的にビクティのような感じのキャラクターが好きだったりもします。理解していてもやっぱり劣情は止められないんですよきっと。
     ビクティという名前は不思議ですね。-をつけるとビクトリーの訛りになって、ムをつけると自己犠牲の象徴になります。ええ、本当に不思議です。しかしそこまで深く考えて書いたわけじゃないです。一文字抜かし。後で気づいた後付け設定乙。マジで適当ですいませんorz
     ありがとうございます。カゲフミさんも執筆頑張ってくださいませ。
     コメントありがとうございました
    ――ウロ 2011-12-02 (金) 01:06:52
  • やはりウロさんの小説は引き込まれるところがありますね。
    ブランを好きでありたいという理想とネーロと結ばれるという真実両方を受け入れたビクティ、別れの時のさよならを言いきった強さには感動でした。
    きっと今もビクティの心の中では昔のままのブランが微笑みかけているのでしょうね。

    あと何かの意図か私の勘違いかもしれないですが、この話ではゼクロム=真実、レシラム=理想となってますが、公式では逆だったような?

    今回も楽しませて頂きました、ありがとうございます。
    これからも頑張ってください。
    ――レシラム崇拝者 ? 2011-12-02 (金) 23:16:44
  • どうも、お久しぶりです。こはくろです。覚えてないですよね…
    まあそんな事よりも感想感想
    決して実らない恋、それを分かっていて自分の気持ちを押さえ込み、ただそれでも好きだと言う気持ちが純粋で、切なかったです。
    こんなジャンルも書けるとは…実際涙出かかりました
    最後の手紙、あれを書いていたビクティの気持ちは、この方がいいというものと、やっぱり居てほしかったなというもの、そして自分と会った事を忘れてほしいというものがごちゃ混ぜになった、複雑で悲しい感情が伝わって、涙腺崩壊しました。
    こんな素晴らしい作品に出会えた事を嬉しく思います。ありがとうございました!

    (ブランとビクティが交わるシーンで、妄想したせいでちょっと勃ちました。すいまs(ry )
    ――こはくろ ? 2011-12-02 (金) 23:34:22
  • >レシラム崇拝者さん
     私の小説に引き込まれる部分がありますか。それはそれはありがとうございます。そういう小説を書くことができなかった頃の私と比べると大きな成長になっていますね。こういう部分で見てもらえて成長できるということは、ある意味すごいことなんじゃないかと思います。読者の方々には感謝の言葉しかございません。
     好きであるということ、でも諦めて結ばれてほしいと願うこと。どちらも正しく、どちらも間違っているというわけではありませんからね。心の中ではビクティもわかっていたのかもしれません。
     ゼクロム=真実。レシラム=理想。となっているのは、私自身が細かい公式設定を全く知らなかったからです。いわゆる無知乙。まぁどっちにしろ二匹ともいつも一緒にいるからどっちでも問題なしなしってわけであんまり気にしないでください。今度書くときはちゃんと判別します。すいませんでした。

    >こはくろさん
     覚えてますよ。コメントをくれた方は基本的に名無しさんじゃない限り覚えてます。別に名無しさんのコメントでも嬉しいです。基本的にコメントって言うのはもらって嬉しいものだと理解しています。私個人としては、あまり覚えているいないってコメントしないほうがいいと思います。関係ないしねそういうのって。
     隙が純粋か不純かの境目で揺れて、最後に純粋な方に傾いたのは、自分の入る余地なんてないからって思ったからですね。ビクティは自分の恋心には嘘をついたけど、人を祝福することは本当に純粋な気持ちだったと思います。そうじゃないと、やっていけないもんね。人を呪って妬んでまで手に入れたくないと理解していたのでしょう。でも身籠ってはいたからある意味幸せなのかもしれませんね。
     エロシーンはカット致しました。書こうとか思ったけどぶっちゃけ散々体格差がやばいと言われ続けたので妄想勃起してくださいすいませんorz
     コメントありがとうございましたー
    ――ウロ 2011-12-06 (火) 07:20:52
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Last-modified: 2011-12-01 (木) 00:00:00 
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