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こぎつねばあ

/こぎつねばあ

執筆者文書き初心者
この作品は人×ポケモンになってます。その為、獣姦描写が苦手な方はご注意ください。


「――きろ」
 何処からともなく声が聞こえる。それと同時に誰かが俺の頬をぽんぽんと軽く叩いてくる。多分、俺は誰かに起こされているのであろう。しかし、俺はまだ寝ていたいという欲があるので眼を頑なに閉ざし続ける。
 一向に起きようとしない俺の態度に痺れを切らしたのか、俺の頬を叩いていた主が、
「ほう……朝から儂の大文字をくらいたいようじゃの」
と言ってくる。それもどすの利いた声で。声の主が怒っているのは明らかだった。
 大文字、という響きを聞いて、寝惚けていた筈の俺の意識は一気に現実へと戻っていく。そして俺は慌てながら毛布を跳ね除けては直ぐ様に上体を起こす。
 俺はとりあえず視界をはっきりと映らせる為に寝惚け眼を擦る。そして居るであろう先程の声の持ち主を探す。すると膝の上に、つまりは俺の目の前にそいつはいた。
 くるんくるんとしていてカールでもしてるかのような頭の毛に、特徴的である六本もある尻尾。人間からは俗称では狐、生物学的にはロコンと呼ばれているポケモンだ。
「やっと起きる気になったようじゃの」
 そう言ってロコンは呆れたような眼差しで俺を見てきた。その言葉の裏には、俺の寝起きの悪さに心底呆れているに違いなかった。
 毎回起こしてくれるのにこうもなかなか起きない俺が悪いとは自分自身でも思っている。しかしそうだとしても、
「……ロコン、起こすのにしても頼むからここで大文字はやめてくれ」
 大文字なんか浴びせられたら一溜まりもない。ポケモンならまだ分からなくはないが、生身の人間であったら確実に死に至るであろう。
 だが、ロコンは懲りずにこうも言ってくる。
「では、火の粉なら良いのか?」
「室内で火の技は使うなよ」
 大文字よりかは遥かに弱い火の粉であったら命に別状は無さそうだが、今度は火事になる恐れがある。そうなった場合には、家を失うどころか家事を起こしたとして社会的に追放されてしまう。
 大文字も駄目、火の粉も駄目、あれもこれも駄目と言われたロコンは、
「ふん、これだから人間の住まう部屋は嫌いじゃ。儂の力も存分に発揮できんからの」
と言って、さもつまらそうな表情を浮かべた。
 あれこれ縛られるロコンの気持ちが分からない訳でもなかったが、どうしても我慢してもらうしかなかった。そうしなければ俺が生活出来なくなってしまうのだから。今度、ロコンさえ良ければバトルでもさせて自由に技を使わせてあげようとは思う。
 とりあえずロコンを宥める為に頭を撫でようかなと手を伸ばすのだが、彼女の性格上嫌がると思うのでやっぱり手を引っ込めた。
「それにしても、ぬしよ」
「ん?」
 唐突に話題を変えてくるロコン。こんな朝早くから俺と話す程の話題になる程の事でもあったのかと感心したくなる。
「これは儂に当ててるのかの?」
 しかしそれが触れられたくない話題であるのは俺の想定外であった。
 ロコンが嘲るかの如く薄ら笑いをしながら、自身の身体を前へと傾けてくる。そうしては、そいつを自分自身の身体に擦り付けてきた。牝特有の柔らかな肉が当たって気持ち良いと言えば気持ち良かったが、
「……」
 俺は言葉が出なかった。ほんの僅かではあるが思考回路が停止したと言っても良い。口が全くと言って良い程に回らない代わりに、俺は即座にロコンを膝の上から降ろした。
 あまりの恥ずかしさに俺の頬は蒸気が出そうなくらいに熱を持っていた。とにかく誤解という事を理解して貰う為に、
「これは、まあ、うん、そう、生理現象だからな」
と、しどろもどろになりながら口にする。そして俺は朝から熱り立つその部分が鎮まるように意識を向けていく。先の柔らかさが若干名残惜しいと思いつつも、鎮まれと念じ続ける。
 ロコンは俺をからかう格好の題材を見つけたからか、口元が釣り上がったままであった。そして俺に尚も言ってくる。
「なかなか起きない理由はふしだらな夢でも見てたからじゃな」
 そんな卑猥な夢を見た記憶なんてないというか、ロコンに起こされて夢の内容は忘れてしまった。そんな事を言ってもただの言い訳にしか聞こえそうになくて、ロコンに軽くあしらわれそうで無駄な気がした。
 だから俺は、ロコンの言葉を無視しては立ち上がって寝巻きの下に突起が浮かんでいないのを確認する。そして、
「とにかく、朝ご飯にしようか」
と言って俺は台所へそそくさと逃げていった。ロコンがどんな眼で逃げる俺の背中を眺めていたかは知らない。



 ロコンと一緒に暮らし始めてまだ一年ぐらいであった。
 俺がタマゴから孵して育ては訳ではないし、はたまた実家から今の家に連れてきた訳でもない。じゃあどうしたのか。それは端的に言えば、拾ったというのが正しかった。
 だがロコンの前で拾ったと言うと怒るので、たまたま一緒に暮らすことになったと言っている。
 まだ幼くて可愛らしい顔立ちの割には、ババア……じゃなくて歳老いた言葉遣いをするロコン。ロコンが教えてくれないので正確な歳は知らないが、相当な歳をいっているのは間違いなかった。少なくとも、ロコンが言うには俺より歳上らしい。
 自分でもどうしてそんなやつと一緒にいるのか不思議でならない。とは言え、自分からロコンと一緒に暮らそうと言い出したのだが。身寄りがなく行き場が無かったロコンに情がいったのか、それとも単に俺が独りで寂しかったのか、一緒に暮らしている今となってはもう忘れてしまったのだから。



「それにしても、人間とは不思議じゃのう」
 ロコンは目の前に差し出したポケモンフーズを口にしながら、そんな事を言い出す。俺は口に入ってるトーストを飲み込んでは訊き返す。
「どうかしたのか?」
 そうするとロコンはポケモンフーズをじいっと見詰めたり、点いてるテレビへと視線を移したりする。そうして最終的には俺へと目を合わせて、
「人間は滑稽なものを作るのうと思ってな。この食べ物とかてれびとか言う物とかな。まあ、こんなんでも口には出来るから儂は構わんがの」
と言っては、ひょいと口にポケモンフーズを放り込んでいく。
 まあ、野生であったロコンからしてみれば人間の生活は不思議なもので溢れかえっているかもしれない。ましてや、電化製品が発展してきてる近年では、自然でないものはロコンからしてみれば全部不自然に映ってるのかもしれない。それがどんなに自分達人間からしてみれば当たり前だと思っていたとしても。
「便利にしたいという人間の欲が反映されたものと言ったところかな。このポケモンフーズのお陰で俺はこれを出すだけで済んで楽だしな」
 ポケモンフーズを適当な皿に盛り付けるだけで俺はロコンに食事を与える事が出来る。なんて楽なんだろう。それに、これを食べさせるだけでポケモンに必要な栄養が補えるし。これも科学の力ってスゲーってやつであろう。
 俺は良いのだが、ロコンに至ってはポケモンフーズを退屈そうに食べていく。そうして、
「こっちの環境じゃ儂が食べてたものは手に入らないしのう」
と、ぽつり不満を溢した。ロコンの口から不満が出るのは仕方無かった。かれこれ、安い時に買いだめしておいたポケモンフーズしか食べさせてないのだから。
「何食ってたんだ?」
 もしかしたら食べたいのがあるのかもしれないと思い、ロコンに訊ねてみた。しかし、当のロコンときたら、
「訊きたいのか? 知らない方が身のためじゃぞ」
と脅しを掛けるように言って、口元を歪ませた。ただのはったりなのかそれとも本当に不気味なものかは分からなかった。ただ俺はロコンの言葉通りに訊かない方が良いと感じた。
「ああ、じゃあいいよ」
 俺がそう言うとロコンが鼻でふふんと笑った。そうして俺を小馬鹿にしたように上から目線で、
「儂が食ってたのは木の実なんじゃがの。儂は肉は好まんし」
と言ってきた。ロコンにそう言われて、やはり俺はからかわれたのかと感じた。ロコンが俺の事をからかうのは今に始まった訳ではないし、もう散々やられて慣れた。しかし、喋るなら最初からはっきりと喋れば良いのにと胸の内で舌打ちせざるを得なかった。
「オオタチっていうポケモンがいるじゃろ? 人間からは可愛い可愛いと言われとるがあやつはコラッタを平気で————」
「知ってるし、朝から聞きたくない事かな」
 ロコンの言葉に割り込んで、俺はどうにかその先を聞かないようにする。朝からそんな生々しい話は聞きたくないし、何より食事が不味くなるからだ。食事と言っては味気無いトーストではあるけども。
 俺がそんな風に口を挟んだからか、ロコンが不機嫌そうな顔をする。対する俺はトーストを齧っては何事も無かったかのようにする。そうしてふたりとも黙っては食事を淡々と進めていく。俺達が無言の中で、テレビは頻りに音楽やら人の声が響かせていた。
 テレビの音と、物を噛み砕いたりと食事の音だけが部屋中に響き渡るそんな時だった。テレビのコマーシャルでは、自然と一体化した新しい物件が取り上げられていた。そのコマーシャルが流れると先程まで黙々と食べていたロコンの口が止まるのと同時に、眼もテレビへと止まった。そうしてロコンが、
「……木の実を満足に食えなくなったのもいつじゃったか」
と呟いた。そのコマーシャルが終わっても、ロコンは何処か遠くを見るように眼をテレビの方へと向けていた。
 俺はリモコンに手を伸ばしては慌てて電源ボタンを押した。するとテレビはぶつりと切れて画面が真っ黒になった。その際に、ぼんやりとしていたロコンの眼に光が戻ると同時に、目が覚めたかのように身体をびくりと震わせた。
「……ごめん」
 咄嗟に俺の口から詫びの言葉が溢れ落ちた。たとえ、俺が謝る事ではないとしても謝るしかなかった。
 ロコンはそんな俺に向かって怒る訳でもなく、ただこう言う。
「別にぬしの所為ではありゃせん。これも時代の流れじゃ」
 ……時代の流れ。
 そう、これもどうしようにもない時代の流れだ。俺が謝ったところで何一つ変えられない流れ。
 ロコンが以前に棲んでた言う所は今やショッピングモールが出来て、昔の面影すら残っていない。つまるところ、人間達が勝手に行った土地開発に巻き込まれたのである。住み処を奪われ、行き場を失ったポケモン達は遠くへ逃れたり、対抗して命を落としたり、はたまた飢え死にしたりと結末は様々だとロコンは以前に語っていた。
 ロコンの場合においては住宅地に隠れるように逃れたのだ。そのロコンが紛れ込んだ住宅地に俺が住んでるアパートがあったのだ。たまたま夜遅くにごみを出していたら、ごみ捨て場にロコンが居たのである。当時の俺は、こんな住宅地に野生のロコンがいるなんて意外だとは思うだけで、事情も知らない暢気な奴であった。
「あのさ、ロコンは人間を恨んでるか?」
 こんな事を訊いたところで一体どうするんだろうか。身勝手に住み処を奪った罪深い人間の代表として死んで詫びるつもりもないのに。それでも俺の口は独りでにそう動いてしまった。
 そんな質問に、対するロコンは即座に返答してきた。
「恨んでたらぬしの命はもう無いぞ?」
 そうしてロコンは笑った。くすくすと声に出しながら。いつもの小馬鹿にするように嘲笑うのではなくて、純粋に笑っていた。
 そんな反応をされるものだから俺は何も口に出来ずきょとんとしてしまう。黙っている俺に向かってロコンはこう言ってきた。
「悪い奴等がいたとしても良い人間がいると儂は知ってるからの。ぬしに関してまだ甲乙つけがたいが」
 取り合えず、ロコンが全面的に人間を恨んでなくて良かったとは思う。しかし、俺に関しては言わないものだから思わず、
「なんだそれ」
と、言ってしまった。俺の返答にロコンは勿体振るように再びこう言う。
「だからの、儂はまだぬしを見極めてないから保留って事じゃ」
 確かにまだロコンと暮らし始めてから一年しか経っていないからそう言うのかもしれない。
 ロコンにそんな事を言われたから今度は逆に、俺がロコンの事を考えてみる。だが、俺自身としてもロコンをどう思ってるのかよく分からなかった。
 ただ、一緒にいて退屈しない奴、それだけは言えた。
「ごちそうさまじゃ」
 ロコンの言葉に俺の意識は現実へと戻された。そして、気づけばロコンの目の前に置かれていたポケモンフーズが無くなっていた。それに対して俺の皿にはまだ一切れのトーストが残されている。いつもならほぼ同時に食べ終わるのに、今日はロコンと話し込んだのと考え事をした所為か俺だけ食べ終わってなかった。
 一足先に食べ終わったロコンは何処か外にでも出掛けに行くのかと思えば、敷きっぱなしの俺の布団に行く。そうして眠たそうに大きな欠伸をしては身体を布団の上に下ろして瞼を閉じる。
「飯を食い終わったら片付けようと思ったのに」
 俺はロコンにそう言うのだが、
「別にぬしはこれから学校じゃろ? ぬしが帰ってくるまで儂は寝る」
対するロコンは断固として布団から離れようとしなかった。
 まあ、朝起こしてくれたからいいかなと俺は割り切ってしまう。問題あるとしたら、布団がロコンの毛にまみれる可能性があるという事だが。
 それと、よくよく考えたら別に俺の布団でなくても自分の寝床で寝ればいいのではないかと考えてしまう。だが、ロコンはもう瞼を閉じてすっかり寝る態勢に入っているから何も言えない。おまけにロコンから今にも寝息が聞こえそうなくらいだ。そんな中で俺が何か言って、安眠を妨げたとかでロコンを怒らせるのだけは避けたい。下手したら俺の布団が燃やされかねないし。
 何も言わないとは決めてたものの、ロコンの身体に対して俺の布団は明らかに大き過ぎていた。ロコンの身体は布団の大きさの半分も無かったからであろう。
 あまりにも不釣り合いな光景に俺は密かに鼻で笑ってしまう。改めてロコンと俺の体格差を感じさせられる。
 ロコンがキュウコンになったらその差はどれくらい縮まるのだろうか。それと同時に、帰ってきたらロコンにキュウコンへ進化する気はあるか訊いてみようと思った。
 取り合えず学校に行くまでの時間に猶予が無くなってきたので、俺は慌てながらトーストに食らいついていった。






 講義はあっという間に終わって学校を後にしては、電車で揺られる事一時間弱。そうして駅から自転車をこぎながら自宅へと向かっていく。その道中で俺は、ひとりのトレーナーらしき人物とその隣に並ぶキュウコンを見掛けた。そのふたりは和気藹々な雰囲気で楽しそうに会話をしていた。
 キュウコンの方はと言えば、これまた美しい毛並みに透き通る深紅の瞳をしていて、俺は思わずこのまま見とれていたいと思ってしまう。が、自転車に乗ってる俺が急遽止まるのは不審に思われるので、俺はペダルをひたすらこぐ。
 そのふたりと通り過ぎる際に、会話が聞こえてキュウコンの声が聞こえたものの、決して自分の家に居るようなババア、ではなくて風変わりな口調でなくてお姉さんみたいな割りと普通の口調であった。
 進化系であるにも拘わらずうちのロコンとは明らかに異なる口調に、俺は違和感を覚えながらも家路を急いだ。とは言え、自転車に乗っているので自宅に着くのにそんなに時間は掛からなかった。
 自分が住んでるアパートが見えてきて、段々と近づいてきたらペダルをこぐのを止める。そうして、余力だけで自転車を進めていく。アパートの自転車置き場に着いたら両手でブレーキを掛けては降りる。スタンドを立てて、自転車の鍵を抜いたらアパートにある自分の部屋へと向かっていった。
 部屋へと向かう際に先程すれ違ったキュウコンと我が家のロコンを重ねてみるものの、普通ならどうも逆だよなと苦笑せざるを得なかった。進化後より進化前の方が歳が食ってるとは一体何事かと考えてしまう。それでもまあ、石で進化しなければいつまでもその姿でいられるのだからそういう事態があっても可笑しくないとは一応言える。
 何だかんだ、ロコンはキュウコンに進化した方が貫禄があって良いのではないかなというのが俺の結論で、それを出した頃にはもう自宅のドアの前に居た。家の鍵を取り出しては施錠を外し、ドアノブを握り締めては自宅へと入っていく。
 家に帰って来てもロコンの出迎えはない。普通ならきっと自分のポケモンが元気におかえりとか言ってくれるであろう。だが、うちのロコンはそうしないのが逆に普通だった。
 俺は靴を脱ぎ捨ててはすたすたと部屋に向かっていく。そうして俺の布団の上で寝ているロコンに向かって、
「ただいま」
と言った。ロコンはまだ瞼を閉ざしていたが、六つもある尻尾をふりふりと揺らして受け応えした。俺の言葉に反応したという事は、ロコンが起きているのには間違い無かった。
 故に俺は、朝からずっと考えていた事をロコンに話す事にした。
「そういえば、ロコンはさ、キュウコンになる気はないのか?」
 そう言った途端に、先程まで寝ていた筈のロコンが急に跳ね起きた。そして俺に今まで見せたこともないくらいの鋭い目付きで睨んできた。加えて、今にも火が飛び出してきそうに口を開いていた。
 ロコンがそんな反応をするものだから俺は一歩後退りしては、身体が震えてしまう。ロコンがこんなにも嫌悪感を示すなんて想像していただろうか、いやしていなかった。
 そんなロコンの気迫に負けて俺は、
「俺は、別に、その進化してみたらどうだろうって言う興味があって……やっぱ、その、聞かなかった事で」
と大慌てになっては言葉を捜しながら言った。俺の言葉を聞いたロコンは口を閉ざすのと同時に睨み付けてくるのを止めた。
 どうにかロコンの機嫌を取り戻すことが出来て、俺は胸の内でほっと安心した。そうしてロコンに対しては進化の話題はしちゃいけないと自分に言い聞かせる。
「……取り乱してすまんかったな」
「いや、俺こそ悪かったよ……」
 悪かったのは俺だと言うのに何故かロコンが謝ってきた。誰だって触れられたくない話題は一つ二つあるもので、それを俺はロコンにしてしまったのだからどう考えても自分が悪い。
「ぬしは……」
 ロコンが口を開いて出た言葉に耳を傾ける。何を話すかと思えば、
「ぬしは、もし生きられるのなら千年生きたいと思うか?」
とそんな突拍子もない事を喋った。
 進化から話が飛躍し過ぎているというかずれている気がしたが、ロコンの眼はじっと俺を見据えていた。普段のようにからかう素振りなんてちっとも見られないから、ロコンからしてみれば大真面目な話なのであろう。
「よく分からないけど、そんなには生きたくないかな」
 千年なんて生きるのにはあまりにも長すぎる。そんなに時間があったところで、俺なら有効に使えないであろう。あと考えられる事を、俺はロコンに話していく。
「そんなに生きてたら自分が知ってる奴等が皆いなくなってるだろうしさ。後は千年も時間があったら、こうして今生きている時間の価値が殆ど無くなっちまうだろうし」
 俺が言い終えると、ロコンがそうかと呟いた。そうして続けざまにこう言った。
「ぬしが千年生きると言うなら儂はキュウコンになっても良かったがの。生きたくないと言うのなら儂はならんぞ」
 ロコン曰く、キュウコンになる気はないらしい。が、どうして千年生きる云々の話題を出すのかが俺には分からなかった。その理由に対して訊こうとしたら、先にロコンの口が開いた。
「ま、ぬしの場合は下心丸出しなんじゃろうが」
 そう言うなりロコンは口元を釣り上げながら俺の事を眺めてきた。ロコンのその言葉で、帰り際に見たキュウコンの姿が改めて浮かんでしまう。
 確かにあの仔は可愛かった。いや、そう考えている場合でない。
「別に俺はそんなんじゃっ!」
 しかしロコンには俺の言葉なんてこれっぽっちも信用してないのか、更につけ加えては言った。
「この辺に可愛いキュウコンが居るしの。どうせ、ぬしはそのキュウコンに目移りでもしたんじゃろ?」
「だから、違うって!」
 目移りしたと言えばしたが、ロコンが言うような下心なんて微塵にも無い。それでもロコンの表情は相変わらずで、俺をからかっては楽しんでいる。だから、今度は反対に俺がロコンに言ってやる。
「俺はロコンの方が可愛いと思うけどな」
 その刹那、ロコンの表情が固まった。そうして頬を紅くさせては急に慌てながら俺に言ってきた。
「んな、お世辞を言うのも大概にせいっ!」
「お世辞なんかじゃないぞ、俺は可愛いと思ってる」
 ロコンだって種族的にはあの有名なイーブイに次ぐ可愛さを持っていると、俺は思う。ふわふわしてくるくるとした頭の毛に、六つもあってどれも柔らかそうな尻尾、更にはぷにぷにとした肉球。これの何処が可愛くないと言えるのか。
 まあそれは世間一般的なロコンが可愛いのであって、うちのロコンは口調が婆さんだから容姿と釣り合ってなくて可愛さ半減であるのだが。そこはロコンに言わないでおいた。
 しかし、当のロコンと来たらどうも自分が褒められていると思ってるらしく、今にも頭からは湯気が出そうなくらいに恥ずかしがっていた。
「可愛い、じゃと……せめて美しいと言わんかい」
 そうしてロコンは呟いた。キュウコンならともかくロコンの姿では美しいとはかけ離れていると言いたくなったが、俺は言わないでおく。それより、すっかり自分に陶酔しきったロコンをどう対応するかが困った。
 でもそんな俺の悩みなんてあっさりとロコン自身が解決してくれた。
「ぬしがそう言ってくれるのなら、儂は尚更キュウコンにならないでおこうかの」
 そうして俺へにっこりと満面の笑みを向けた。そんな俺はと言えばロコンに合わせて無理矢理笑うしかなかった。からかうつもりだったのにこうも勘違いされると収拾がつかないし、ましてやお前の事じゃないと言って怒らせるのも気が引けた。
 でもそんなこんなであったが、純粋に笑った時のロコンは確かに可愛かった。普段はああなのにロコンにはこんな一面もあるのかと、俺はポケモン相手にどぎまぎさせてしまうくらいだった。
 そして俺自身、何を血迷ったのか自分の口からこんな台詞が飛び出してしまう。
「だな、ロコンはロコンのままが良いよ」
 進化前という事もあってまだ幼い顔立ちであるのにのも拘わらず、中身だけは立派に成熟している彼女。そんな彼女が俺は自覚していない内に気に入っていたんだと思う。これは所謂ギャップ萌えって奴なんであろうか。いや、俺がロコンの事を本気で好きになってる訳ではない、断じて。
 ロコンが頬を緩ませてはにこにこと見つめてくる。反対に、俺は頬に熱を帯びていると感じている。甘酸っぱいような何とも言えない雰囲気に満たされて、遂に俺は耐え難くなってきた。故に、
「そ、そうだ、飯つくらないと!」
と言って、俺は朝と同じく台所へと避難していくのであった。





 晩飯やら身体を洗ってあげる時のロコンの様子がいつもより機嫌が良かった。必要以上に俺に話し掛けてきたり身体を擦り寄せてきたり。普段の横柄な態度はどこに消えてしまったのかと訊きたくもなった。
 いくら中身が俺より歳上だとしても外見の通りにやっぱり女の仔なのか、褒められると機嫌が良くなるらしい。
 ただ単に上機嫌になるだけで終わってくれるなら俺としても良かった。でもそれだけで終わらなかったのが現実な訳で。
「……何で俺の上に居るんですかね、ロコンさん」
 そう、仰向けで寝ている俺の上へロコンが乗っかってきたのだ。電気を消す前にはロコンはちゃんと自分の寝床で寝る態勢に入っていた筈だ。だが、どうだ、少し息苦しいと思って瞼を開けたら目と鼻の先にはロコンの顔だ。
「別に良いじゃろ? 儂が何処に居ようとも」
 目がまだ暗闇に慣れてない所為もあってロコンがどんな顔をしているか掴めない。でも声の調子的には、いつも俺を弄ぶ時のと同じものであった。
 こんな夜遅くにロコンが俺の上に来るなんて暮らしてから一度も無かった。今日が初めてであった。
「ぬしが訊いてきたように儂も訊きたい事があっての」
 わざわざこんな寝ている最中に訊かなくても良いじゃないかと口にしたくなるが、俺はロコンの逆鱗に触れぬようにぐっと堪えた。それにロコンの言う通りに、俺だけ訊いているのも不公平な気がしたので何でもどうぞ、と返答した。
 するとロコンは一呼吸置いて、俺に訊いてきた。
「ぬしはどうして儂を拾ったんじゃ?」
 普段ならば俺が拾ったと口にすると、ロコンは怒るくせに今日は自らそう口にした。いくらロコンでも、拾われたという自覚はあるのだろうか。でも俺としては拾った気なんかさらさら無くて。
「拾ったんじゃない。暮らそうと思ったんだよ。こんな所に独りでいるなんて寂しいかなと思ってさ」
 でもそれは俺の勝手な思い込みだって分かっている。自分が頭でそう決め付けただけだと。本当に寂しかったら人間達に媚びを売ったりする筈なのだから。その事をロコンも承知してか俺にこう言ってくる。
「残念じゃったな。儂はぬしと違って寂しいと感じた事はありゃせん。伊達に独りで生きとらんわ」
 自分から望んで親元から離れたというのに、見知らぬ土地にただ独りでいるのは辛いものがあった。だから俺はたまたま見掛けたロコンにすがり付いた。野生で独りぼっちでいるロコンとなら、丁度釣り合いが取れる気がしたのだ。
 自分のエゴにロコンを巻き込んでしまって申し訳ないとは思う。しかし、独りでいるのが平気だと言ったロコンはどうして今もなお俺の元で暮らしているのか。
 その事について訊ねようとした矢先に、ロコンは俺の質問なんて見透かしたかの如く返答してきた。
「言ったじゃろ、時代の流れだと。儂は人間の元で暮らしてみるのも悪くないかと思ったのじゃ。もっとも、野生で過ごすのには棲みにくい環境になってしまった理由もあるがの」
 この辺ではもう野生のポケモンなんて見られなくなってしまった。居るとしたら人間に付き添うポケモンばかりだ。それほど野生で暮らすポケモンにとっては環境が悪くなったのを意味している。
「まあ、なんだかんだその……儂はぬしの傍に置かれて良かったと思う。最初はぬしをしょうもない奴だと思ってたがの」
 そう言うとロコンは俺の額に片方の前肢を置いては髪の毛をすいた。一体ロコンは俺に何をするつもりなのか。これは俺を化かす為の段取りなのであろうか。
 俺の心臓が忙しく動き始める頃には、自分の眼がもう暗闇に慣れてしまった。だから俺はロコンとこんな間近で眼を合わせるのが恥ずかしくて仕方がなかった。出来る事ならば首ごと背けてしまいたいくらいだ。
 しかし、ロコンの前脚が俺の頬を捕えた。その所為で俺はロコンから顔を逸らす事が出来なくなってしまう。
 そうして近づいてくるロコンの顔。ただでさえ至近距離なのにこれ以上近寄られたらどうなるのか。それはもう明白だった。故に俺は眼を瞑ってしまった。そして来るべき感触を今か今かと待つ。
 しかし、俺が予想したその感触はなかなか訪れなかった。その代わりとしてこつんと額に何かが当たった。その衝撃が何であるか確かめる為、俺が眼を開けてみれば、
「くくっ、まんまと騙されおって」
笑いとともにそんな言葉が飛んできた。
 状況を把握してみれば、ロコンが俺の額に自分のおでこを当てては、俺の瞳を覗き込んでいた。それも悪戯が上手くいったと言わんばかりににやけた表情をしながら。
 俺はそのロコンの顔を見て自分が馬鹿だと思えた。狐に化かされるなんて、いつも分かりきっている筈であるのに。
「のう、ぬしは一体何を期待してたんじゃ?」
 ロコンのにやけ面は変わらない。それどころか俺の間抜け面を眺めては愉しそうにしていた。
 何を期待していたのか、そんなのはロコンに言われなくとも分かっている。でも、期待してしまった自分がいるのを呪いたくなった。
「もしや、これじゃろ」
 そうしてロコンは舌先を出してはぺろりと自分の口を舐める。その光景を見て、俺は知らずうちに唾を呑んだ。図星だった。
 幼い顔立ちのくせにやはり中身はしっかり大人で妖艶と言うべきなのか。俺の心はもうどうしようもないくらいにぐらついていた。
 ロコンから仄かに香る牝の匂い。俺の身体には柔らかな牝の肉の感触。そうして今にも触れてしまいそうなくらいな距離に置かれてる牝の口先。これで理性を保てる方が可笑しい。それがポケモンであったとしてもだ。
 俺はもう自分の身体からロコンを引き剥がそうと思って手を動かした。しかし本来動く筈である手は微動だにしなかった。それも石になってしまったかの如く。
 俺が手を動かせないで困惑している最中にロコンは言ってきた。
「動けないじゃろ? これも儂の自慢の神通力じゃ」
 ロコンの言葉で俺は理解した。道理で自分の手がぴくりともしない訳だと。
 しかし神通力なんて何でそんなものをわざわざ俺にしてくるのか理解に苦しみたくなる。
「ぬしはもう逃げられないぞ。この儂からな」
 逃げられない。確かに逃げられなかった。手が動かないだけでなく身体がまるごと動かないのだから。
 俺を束縛して余裕綽々だからなのかロコンはこうも言ってくる。
「ほれ、何が欲しいか素直に言ってみい。今の儂は心が広いから怒らんぞ?」
 そうしてロコンの前脚が俺の頬へと触れた。そしてロコンは俺の事を見下ろしては何かを期待する眼差しで見つめてくる。
 ロコンが俺の口から何を発せられるのか期待しているかは知らない。が、ロコンから逃げられない俺は自分の口から言わざるを得なかった。
「……ロコンが欲しい」
 ロコンの口だけじゃなくて俺はロコンの全てを欲しがっていた。それも身体や心の底からだ。
 俺の発せられた言葉にロコンは、たわけと罵るだろう。でも俺の予想に反してロコンはそんな事は言わなかった。それどころかロコンの眼がほんの僅かではあったものの点となった。
 ロコンは口をぱくぱくと動かしたがなかなか言葉が出てこなかった。その為、ロコンはごくりと唾液を呑んでは改めて俺にこう言った。
「ほう、唇が欲しいのかと思ったら儂が欲しいとはぬしは随分傲慢じゃな」
 傲慢と言われても無理は無かった。それでも俺の気持ちは揺らがなかった。
「ロコンの全部が欲しいんだ」
 俺はロコンの事を真っ直ぐに見据えた。しかし、ロコンはそんな俺から眼を逸らした。そうしてロコンは眼を泳がせたままで珍しく弱気な口調で、
「……こんな儂を選ぶと後悔するぞ?」
と言った。
 何を今更言うのか。ロコンと暮らすようになってから後悔の連続だ。口調は古臭いわ、人を馬鹿にしたり脅すのが好きだったり、挙げ句の果てはこうやって困らせるわで俺がどんなに苦労しているか当のロコンは全然分かっていないのだ。
 それでも俺の心は化かされたかのように一緒に居たいと思ってるのだ。あわよくば欲しい、と。だから今更後悔なんて全然しないのだ。
「逆に俺がロコンを後悔させる為に墓場までついてってやる」
 俺の台詞にロコンは鼻で笑った。いくら一人称が儂であるロコンでもくさい台詞だと思ったのだろう。
 しかしロコンは俺の方へと視線を戻してはじっと俺の瞳を覗き込んできた。俺の言葉が嘘か真かを確かめるようであった。
「その言葉、信じてよいな?」
 ロコンがそう言うと間髪入れずに自分の口を俺の口に押し当ててきた。
 俺もロコンも眼を開けたままで、口付けをする。好き合う男女が愛の確認をするの口付けとは程遠かった。そっと口と口とが触れ合っただけであったからだ。
 そして俺から口を離すとロコンは言った。
「これは契約じゃ」
 ロコンは何の契約かは明白に言わなかった。恐らく、俺が先程の言葉に従うと言う契約なのであろう。
「じゃが、こっから先は、」
 それだけ言って、ロコンは再び自身の口を俺のものに当ててきた。しかし、今度は重なるだけの口付けではなかった。
 口と口とが重なったと思いきやロコンが俺の口内に自分の舌先を捩じ込んでくる。抗う術を持たぬ俺はロコンの舌に捕らえられる。そうして自分の舌がロコンの舌に絡み付かれた。
 ロコンの舌先はねっとりと唾液を帯びていた。それだけではなくて熱までも持っていた。このまま絡み付かれていたら火傷してしまいそうなくらいの熱さだった。
 それでも俺はロコンの舌から逃れなかった。否、自分から望んでロコンの舌を求めていた。ロコンが俺の舌を舐めれば俺もロコンの舌先を舐めていく。
 舌と舌とが交じり合えば互いの唾液が混ざり合う。そうしてどちらの唾液なのか区別がつかなくなっていく。
 鼻で呼吸するのも忘れて、吐息が漏れる。その吐息もすっかり熱くなっていた。身体が火照ているのと同じくして。
 口付けであるのに瞼も閉ざさないでする。瞼が開いているから普段見られないような互いの姿が確認出来る。俺ならば、すっかり蕩けきったロコンの表情が拝められた。
 ロコンが口を離した。途端に、口と口との唾液が糸を引いた。時間が経つにつれて唾液の糸は弛んでいき、終いには俺の口元へと垂れた。それをロコンが几帳面にも舐めて拭き取ってくれた。
 口から漏れる息は未だに熱いままで、尚且つ荒くなったままだった。それはロコンにも言える事で、彼女の息遣いが俺の耳へと頻りに入ってくる。その音が、俺の興奮を煽っていると言っても過言ではなかった。
 ロコンの息遣いは未だに落ち着いてなかった。それなのにロコンを口を開く。
「ぬしのここは、すっかり元気じゃのう」
 そしてにこりと笑った。にこりと笑ったとは言っても子供みたいな笑い方ではない。ロコンがしたのは人を馬鹿にする時の嫌らしい笑いだ。今に至ってはその笑いに妖しいが付くのだが。
 ロコンは後ろ脚で存在感を示しつつある肉棒を踏む。そうして後ろ脚でぐりぐりと動かしては俺の肉棒を刺激してくる。そんな事をされてしまったら、俺は肉棒を肥大化させていくしかなかった。
 寝間着越しとは言え、ロコンの所為ですっかり肉棒の形が浮き出ていた。その光景を見るなりロコンが俺に言う。
「儂の脚でこんなに堅くさせるとはぬしは変態じゃの」
 そんなところを刺激されたら誰でもそうなる、と言い返してやろうと思ったらロコンが口答えは許さんと言わんばかりに俺の口へと前脚を突っ込んできた。いや、俺を黙らせて強引にも肯定させる。お陰で俺はロコンに言い返すのもままならず、自分の意思とは無関係にロコンの肉球を舐めてしまうだけであった。
「そんなに儂の脚が気に入ったのなら、是非ともして差し上げようかの」
 ロコンは俺の口から前脚を引き抜くのと後ろ脚で肉棒を刺激するのを止める。そして、ロコンは身体全体を後ろへとずらしていった。そうして前脚が俺の下腹部の辺りとなったところで身体を止めた。
 ロコンは先ず、口を使って俺の寝間着の下をパンツごと刷り下ろした。すると肉棒が解放されてロコンに向かって熱り立つ。血管が浮き出ているだけでなく、先端部から露が溢れている肉棒を見るなりロコンは、
「随分と盛んのようじゃな。ぬしのここは」
と言って前脚で触れてきた。肉棒を直に触られた俺は堪えきれずに息を漏らした。
 ロコンのぷにぷにとした肉球が、今の肉棒にとっては丁度良い刺激物となっていた。人間の手は基本平らであるが、ロコンのように肉球を持つとなれば触るだけで格好の刺激となる。
 下腹部でロコンがにやにやとしながら俺の顔を眺める。そして前脚をぐいっと動かしては肉棒を倒してきた。
「あっ」
 俺は拍子抜けな声を上げる。その声を聞いたロコンはくすくすと笑いながら前脚を押し当ててくる。
 最近は先端部を肉球で擦る。次に肉棒の竿に当たる部分を前脚を前後に動かしては刺激する。そんな事をされてしまったら俺の肉棒は透明液をだらしなく吐き続けるしかなかった。
 時折ロコンは前脚の動きを止めると、肉球を先端部に当てては透明液を纏わり付ける。そうしてぺろりと舌先で舐める。まるで俺の肉棒を堪能しているようであった。
「ぬしよ、儂の脚はきもちいいじゃろ?」
 俺を弄べてロコンの機嫌は良さそうだった。対する俺はロコンの脚なんかできもちよくなってる後ろめたさで恥ずかしかった。だから俺はロコンの質問に答えられなかった。
 しかしそんな俺に痺れを切らしてか、ロコンが俺に言う。
「まさか、きもちよくないとでも? ならばこうじゃ」
 今まで使わずにいたもう片方の前脚を肉棒の袋へと押し当ててきた。そうしてその前脚を小刻みに振動させては袋をぐりぐりと刺激してきた。
 それだけならまだ何とかなった。でもロコンがそんなので終わらせてくれる筈が無かった。
 袋を弄るだけでなく、もう一方の前脚を肉棒の先端部へと当てる。そうして筋の辺りを中心に刺激してきた。前脚両方でもって肉棒を弄られるとなると堪ったものではない。
「んはっ」
 先程よりも高い調子の喘ぎ声が自分の口より盛れ出る。これは、すっかりロコンの前脚で扱かれるのに夢中となっている紛れもない事実だった。
 肉棒と前脚とが擦れると、漏れている透明液がくちゅ、くちゃ、と卑猥な音を奏でる。それはロコンが前脚を動かすのを早めれば音と音との間隔も短くなっていく。ロコンがそれに面白がってか前脚の動きを加速させていく。
 そうなると肉棒より伝わる快感も激しいものへと変わっていく。そうして俺の肉棒が限界を迎えるのも時間の問題となっていく。
「ロコン、そろそろっ……」
 俺がそう言っても、ロコンは前脚を休めようとはしなかった。寧ろ、悪化しているような気がしてならなかった。俺の敏感な部分を中心にロコンは肉球で擦りつけてきたのだから。
 休みも与えない、ましてや性感帯を集中的に弄られればどうなるのかは明白だった。
「ロ、コンっ、あああっ!」
 肉棒が大きく脈を打つのに合わせて白濁液が溢れ出てくる。出てきた白濁液はロコンの前脚を汚していくだけでなく、滴っては肉棒をも汚していく。
 ロコンは白濁液が付いた前脚を顔に近付けていく。そしてくんくんと匂いを嗅いだ。そして、
「これまた臭い牡の匂いじゃな」
と顔をしかめてはそう溢すのであった。嫌そうにしているわりには前脚に付着した白濁液をぺろぺろと舐めていく。それも一滴も残さぬよう丹念に。
 ロコンが自分の白濁液を舐めるというその光景が俺の眼には厭らしく映った。その所為なのか、はたまたただ単に出し足りないだけなのかは知らないが俺の肉棒は依然として堅いままであった。
 汚された前脚を綺麗にしたロコンは未だに萎えない俺の肉棒を見るなりこう言った。
「あれだけ出しといて衰えないとはぬしのここはよっぽど元気なんじゃな」
 流石に俺としても言い返す言葉が見つからなかった。ロコンと暮らすようになってから自慰をする回数があからさまに減ったのとここ最近まるっきりしてなかったのもあるが、まさかこんなになるとは思ってなかった。
 ロコンは顔を俺の肉棒へと近付けていく。そんな事をされたら俺の肉棒は余計に萎縮する気配がなくなってしまう。それどころか肉棒をまじまじと見られて興奮している自分がいた。
 顔は熱い、ましてや身体は先の前戯でとっくに汗が滴る程に熱を帯びている。それなのにロコンは汗ひとつかかないで清ました顔でいた。これもきっと、ロコンが炎タイプだからなんであろう、ちょっとやそっとの事では身体の温度は変わりやしない。
 余裕が無い顔を浮かべてる俺に対してロコンはやらしい眼をしながら俺に肉棒を見続ける。鼻先を肉棒と触れるぐらいのところまで近付けては嗅ぐ。
 俺としてはどうにかなりそうだった。穴があったら入りたいし、毛布があったら被りたくなるくらいに羞恥心で満たされていた。そんな俺を、ロコンは横目で眺めては愉しそうに口元を綻ばせる。
 しかしいい加減飽きてきたのか、それとも単に気が変わったのかは不明だがロコンはこう口にした。
「そろそろぬしが可哀想じゃからしてあげようかの」
 そうしてロコンが肉棒を咥えようとする。しかしその刹那、ロコンの眼から何やら眩い光が飛び出してきた。その光に俺は眼が眩んで瞼を閉ざしてしまう。閉ざしている内に、俺はその光が妖しい光であるのに気付いた。
 瞼を閉ざしている間にロコンの脚が俺の胸の辺りへと乗せられる感触が伝わる。その感触で俺は瞼を開ける。すると予想通りに、ロコンが俺の胸に前脚を置いていた。
「儂がぬしのを咥える程お人好しだと思ったか? 儂の脚で満足するぬしにはこっちがお似合いじゃ」
 そう言うなり、ロコンは自身の尻尾をゆらゆら揺らす。ロコンが口にした、こっちとは恐らく尻尾なんだなと俺が理解するのとほぼ同時に、ロコンは六つもある尻尾を俺の下腹部へと垂らした。
 俺の肉棒はロコンの尻尾で埋もれていく。ロコンが俺にのし掛かっている事もあって肉棒が今どんな状況に置かれているのかが肉眼で確認する事が出来なかった。その代わりに下腹部からは何やらきもちがよい感触が伝わってくる。
 ロコンが尻尾を動かせばその摩擦で肉棒が刺激される。その刺激は肉棒にとっては快感となっていた。
 ロコンのご自慢の尻尾で俺の肉棒が苛められていく。その際、俺は先と同様に口から吐息と喘ぎ声を出さざるを得なかった。対してロコンは俺の顔をまじまじと見ては頬を緩ませている。ロコンの顔がぼんやりながらも映っているのを見て、俺は彼女がとんでもないくらいに意地穢い奴だと思えた。悪魔でさえ感じた。
 それでもきもちいいという事実は変わらなかった。故に止めてもらうつまりはさらさら無かった。そんな俺が馬鹿であった。俺が何も言わない所為もあってか、ロコンの行為に拍車が掛かっていく。
「尻尾でやられるなんてどんな気分じゃ、ぬしよ?」
 どうせ俺が答えないとしてもロコンは訊ねてくる。これにはロコンの性格の悪さが露呈していると言っても良かった。
 何も言わないって事は肯定なんじゃろうな、とロコンが呟けば、今度は尻尾の動かし方を変えていく。単調に複数ある尻尾を肉棒に擦り付けていたのを、尻尾と尻尾との間に肉棒を挟みこんでは扱いていく。まるで手でも使っているかのようにロコンは自分の尻尾を自由に動かしてくる。
 俺の手とは違ってロコンの尻尾は毛があるからか少しちくちくとした。でもそんなのは許容範囲内で、ロコンの毛布に包まれるような温かい尻尾のふたつで挟みこまれてしまえば肉棒は心地好くて仕方が無かった。それに加えて、ロコンが上下に尻尾を動かしては扱いてくるものだから肉棒はきもちいいと感じて透明液を流していく。
 ロコンの尻尾までもが汚れていく。それなのにロコンは構う事なく尻尾を動かしては俺の肉棒を弄ぶ。前脚で弄るのもそうだが、ロコンが尻尾を使って肉棒を弄ぶのがあまりにも巧み過ぎてどうやって覚えたのだろうか考えてしまう。野生時代に数々の牡と寝たのだろうか。しかし、ロコンの口から語られない限りは知る由も無い。
「しかし、ぬしはきもちよさそうな顔をしてくれるから儂もしがいがあるのう」
 ロコンがえらく上機嫌で俺にそんな事を言ってくる。しがいがあると言っても俺は頼んだ覚えはなく、ロコンが勝手にしているだけだろと突っ込みたくなる。
 それに自分ではロコンが言うようなきもちいい顔をしているのかは分からない。と言うかそんな顔をしているという自覚が無い。それでも見ているロコン本人が言うのだからそうなのであろう。
 尻尾で肉棒が扱かれる度に肉棒からは水音が響いてくる。肉棒が白濁液を漏らすのも時間の問題であった。
 それを見越してなのか、ロコンはふたつの尻尾で肉棒を挟みこんでいる所に、更にもうひとつの尻尾を肉棒の先端部へと近付けた。そうしてその尻尾の先を使って透明液が漏れ出てくる尿道口の辺りを擦る。まさかそんなところ弄られるなんて思ってもみなかった俺は口をあんぐりと開けては叫ぶ。
 痛いのかきもちいいのかもうよく分からない。ただただ今まで経験したことの無い刺激が俺の身体を駆け巡る。
 そんな刺激に悶絶しそうな俺を見て楽しんでるロコンに手を休める、否尻尾を休める気配は無かった。
 そして俺が肉棒から透明液を吐き続けるのはとうとう限界であった。ロコンの尻尾の先に向かって俺は本日二度目となる射精を迎えた。
「はあうっ!」
 ロコンの尻尾で擦られたのが引き金となって、全身には快感が走る。そして俺の肉棒からは白濁液が滲み出てきた。最初と比べれば量も勢いも無くなったとは言え、それでもロコンの尻尾を湿らせるのには十分であった。
 俺の肉棒から白濁液が出てきた事により、ロコンは尻尾を離した。尻尾の温もりが微妙に名残惜しいのか、肉棒全体が外気に晒された時は寂しい感じがした。
 俺は一旦大きく息を吐く。そして尻尾から解放された安堵からか溜め息が溢れた。
 ロコンによって搾りに搾り取られた俺の精液。にも拘わらず、だ。俺の肉棒はまだまだ萎縮する事を知らなかった。
 同じように俺の身体もそうだった。ある程度は疲れが出ていたが、まだ身体の疼きは収まっていなかった。自分の身体はまだロコンを求めていた。
 二回精液を吸い取った妖狐は自身の歯をぺろりと舐めた。そうして今度は俺にこう言ってくる。
「今度はこっちじゃ」
 ロコンは俺に向けて口を開けては八重歯を見せてきた。
 まだされるのか、と俺は思わざるを得なかった。俺の肉棒が萎えていたら変わっていたのだろうかと考えてしまう。
 だが、ロコンの気は変わらない。前脚の位置を俺の胸からお腹へとずらしていき、最終的には下腹部で前脚を止めた。その位置には勿論、未だに天井を指している肉棒があった。
 ロコンは前脚の両方を使って肉棒が固定するように支える。そうしてロコンは自分の半開きになった口をどんどん寄せていく。あと少しで肉棒が口に入り込む、その時ロコンは口へと入らずに先ずは鼻先に肉棒の先端を当てた。
 これまでに透明液や白濁液を吐き出し続けた肉棒が臭わない筈がないであろう。ましてやポケモンである彼女ならば俺よりも何倍以上にも嗅覚が良いに決まっている。
 こんなもの嗅いでられん、と訴えてきそうな程の異臭をロコンの鼻は感じている筈だ。なのに、ロコンは鼻先から肉棒を離さないでいた。それどころかロコンは眼を閉じては香しい花でも嗅ぐようにうっとりとしていた。そうして、ロコンが口を開いては端的に溢す。
「まさにぬしの臭いじゃな。儂の鼻はぬしので一杯じゃあ」
 そんなにわざわざ嗅ぎたくなる程の臭いでもない。それに、ぬしの臭いだと言われても自分ではよく分からない。
 十分に俺の臭いを嗅いだロコンが鼻先を肉棒から離す。そうしてロコンは俺の肉棒を呑み込む前に口を開けてはこう言った。
「では、次はぬしのを堪能しようかの」
 にっこりと妖しげに笑えばロコンは肉棒を口に入れた。身体は俺よりも一回りも小さいというのに、ロコンの口は思ったより大きくて肉棒が殆ど呑み込まれてしまった。
 いきなりロコンに歯形が付くか付かないくらいかの甘噛みをされる。痛々しいかと思えばそんな事は無くて逆に俺は肉棒をぴくりと反応させてしまう。このままロコンが歯に力を加え続けられたら大変な事になるが、その危険と隣り合わせなのがまた興奮を煽る。
 肉棒の竿の部分に歯を当てて、先端部は舌先でぺろりと舐める。筋の部分を舐めたり、尿道口のとこを舐めては滲み出てくる透明液を舌ですくい取る。先の行為で溢れた白濁液の残骸をも舐め取っては、肉棒を綺麗にしていく。
 とは言え、ロコンがどれだけ舐めようとも肉棒が完璧に綺麗になる事は無い。何故なら、肉棒からは透明液が止めどなく溢れてくるし、ロコンが舐める事で彼女の唾液が付着するからだ。それでも俺の身体には快い感覚が伝わる。
 一心不乱に、かと思えば意外と几帳面に俺の肉棒を舐めていくロコン。構図としてはロコンに奉仕されてるのだが、実際はそうではなかった。ロコンは俺の肉棒から精気を吸い取ってるような気がしてならなかった。ロコンの性格から考えたら奉仕なんて言葉は考えられないから当然だった。
 時折、ロコンは俺の方を見る。それも上目遣いをしながら。ロコンの童顔が一層上目遣いをする可愛さを引き立てていた。だが上目遣いをした後に、にやりとほくそ笑むものだから台無しと言えば台無しであった。
「ひもひいいしゃろ?」
 俺の肉棒を咥えながらロコンが喋るものだから何を言ってるのかよく聞き取れない。取り合えず俺は、うんと口にしては喘ぎ声を漏らす。するとロコンがにっこりと笑ってくる。
 これまでの経験からロコンが笑うのはろくでもないと承知していた。そして俺の予想に従ってロコンは悪戯をしてきた。
 肉棒を支えている前脚のひとつを袋の方へと移動させる。そしてふにふにと袋を弄ってきた。袋に入っている玉を転がしては遊んでくる。一見、子供のするような遊びではあるが立派な大人のする行為に変わりはなかった。
 ロコンの行為は更に拍車をかけていく。先端部を舐めるだけであった舌が竿の部分までも舐めていく。舌が行き届く部分が舐め終われば、今度は口を上下に動かしては肉棒を扱くように舐めてくる。唾液が絡む舌と口肉に挟まれた肉棒。もしもこの肉棒がアイスバーであったら今頃はきっと跡形も無くどろどろに溶けていただろう。
 ロコンの攻撃は止まらない。俺は防戦一方であった。防戦一方とは言え、これだけやられにやられるとそろそろ果ててしまいそうだった。
 じゅる、じゅるると透明液を吸う音やちゅぱちゅぱと卑猥な音が耳鳴りのように響く。一向に止まる気配はなかった。止まるのならば、その時はきっとロコンが満足した時であろう。
 さっさとださんかい、とあたかも言うようにロコンは俺がきもちいいと思う所を攻めてくる。そんな俺はただ嬌声を発するだけであった。このままロコンの口に出すのは流石にまずい気がしたので、
「ロコン、出るから……はなしてっ……」
と息も絶え絶えになりながら呼び掛ける。しかし、ロコンは俺の言葉には一切耳を貸さなかった。それどころか、ぴんと張っている耳をぺたんと垂らしては塞ぐくらいに露骨な事をしてきた。
 そして俺はとうとう我慢が出来なくなってロコンの口内に自分の精を吐き出すのであった。その際に口は開けていたものの言葉は出てこなかった。出てきたのはすっかり熱くなった吐息であった。
 ぴくぴくと肉棒が小刻みに震えるのに合わせて、白濁液が盛れてくる。三度目という事もあってか、ロコンの口に収まるだけの量しか出てこなかった。
 俺の汚ならしい白濁液が注がれているのにロコンはうっとりとした表情をしては、飲み込んでいく。それもごくごくと喉を鳴らしながら。
 白濁液を飲み、口の中が空っぽになるとロコンは絶頂を迎えたばかりだというのに舌先で白濁液が出ていた穴を刺激してくる。そうする事によって、ロコンは肉棒から出し切れてない白濁液を得ようとする。やめろ、と俺は口にしようとしたが言葉にはならず結局俺はロコンにやられる。そしてロコンに盛れ出てきた白濁液を口にするため肉棒を吸われる。
 その後、ロコンに肉棒全体を舐められる。肉棒に付着した白濁液をもてあます事なく堪能する。その証拠に、ロコンの口から解放された肉棒には白濁液一滴も残っておらずロコンの唾液が纏わり付いていた。
 そしてロコンは自らの口元も舐めて白濁液を全て拭い去る。ここまで俺の白濁液を貪るとなると妖狐というよりかは吸血鬼に近しいものがあった。
 ロコンが白濁液を舐めとる際に肉棒を刺激した事もあり、俺の肉棒は射精を迎えた後だというのにまだ天井やロコンの顔を示す程の堅さがあった。ここまで萎縮しないとなるとロコンによって肉棒までも神通力によって操作されてると考えられた。
 しかし、ロコンはあたかも神通力を使ってないかのごとく、
「ぬしのここは大した耐久力じゃな。いや、ここまでくると餓えたケダモノじゃ」
と言ってはからかってくる。ロコンの言い方からして、どうやら肉棒には神通力が及んでいないらしい。
 となると自分が溜め込んでいた性欲が原因なのだろうか。考えたところで肉棒が萎えていない事実は変わらない。
 俺が息を整えているとロコンは、
「さて、ぬしはもう一通り満足したじゃろ? 今度は儂が満足する番じゃ」
と言ってきた。そして今まで自分の意思ではろくに動かなかった筈の俺の身体が今度は休みたいという自分の思いとは無関係に勝手に動き出す。
 上半身を起こされる。そして俺の下腹部にいるロコンを両手で掴んでは、身体を回転させてロコンを乱暴に布団へと寝っ転がせた。そして俺は布団の上で仰向きに寝ているロコンの身体を覆っていく。簡単に言えば、俺はロコンによって立場を逆転させられた。
 ロコンの四肢は布団に投げ出されていて抵抗は示していなかった。俺の両手はロコンの顔の横に置かれて、ロコンの後ろ脚の近くで膝を付いていた。俺は寝ているロコンを逃がさない体勢となっていた。
 しかし元はと言えばロコンの神通力の所為であり、自ら進んで行った訳ではない。とは言っても、状況が状況なだけにロコンの身体を眺めているだけで俺は口が渇きそうなくらいに緊張していた。
 ロコンは四足歩行のポケモンであるからお腹や胸元の辺りなんて全然見た事が無かった。ましてや、ロコンが寝る時はいつだってうつ伏せであった事もありこんなにまじまじと見た事は無かった。
 体毛があれど僅かに膨らんでいる胸元。しかしその膨らみは他にもあり、場所によってはお腹のところまで及んでいる。所謂複乳ってやつだ。そんなものを見せられたら俺は自分の手を動かさない訳にはいかなかった。
 一先ず俺は、汗でべったりと纏わり付いた寝間着の上が煩わしくて脱ぎ捨てる。ロコンと同じように素肌を全てをさらけ出す。今ごろとなってはもう恥ずかしいなんて感情は芽生えなかった。それどころか俺の意識はロコンの身体の事で一杯であった。
 俺はロコンの首から一番近い膨らみに目掛けて片手を動かしていく。いつの間にかロコンの神通力は解かれており、いとも簡単に膨らみに触る事が出来た。
 人間のものと比べると遥かに膨らみが小さいものの、柔らかい感触が手のひらから伝わる。初めて触れたロコンの胸に、俺は息を呑んだ。そして今度は揉んでみる。しかし、満足に揉めるくらいの膨らみは持ち合わせていなかった。
 俺は揉むのを止め、次は指先で膨らみにある突起へ触れてみる。そこに触れた途端にロコンはくぐもった声を漏らすのと同時に身体をぴくりと動かす。その反応が可愛らしくて、俺は何度も指先で突起を弾く。
 そんな事を繰り返していたらロコンから、
「人間ってやつはつくづく乳が好きじゃのう……」
と呆れられた。そう言われても、俺の手は止まることなく相変わらずロコンの乳首に夢中であった。
 段々と堅くなっていくロコンの乳首。これ以上は堅くならないぐらいの所で弾くのを止める。そうして今度は指の腹で乳首を押し付けた。ただ押し付けるだけではつまらないので俺は指の腹で乳首を転がしたり、はたまた指をふたつ使っては摘まんでみたりする。
 するとロコンは狂ったように身体をぴくぴくと震わせる。それもこれまでに聞いた事がないくらいの甘ったるい声で叫びながら。俺が乳首を弄ぶ度に後ろ脚で破けそうになるくらいにシーツを蹴る。
 散々弄ばれたのだから、こちらだって弄ぶ権利がある筈だ。ロコンが善がっているのを眺めながら、あくせくと手を動かしていく。片手だけでは物足りないのでとうとう両手を使ってロコンの胸を弄る。数々の乳首に自分の手を持っていく。
 複乳となると、その分だけ敏感な所と遊ぶ所がある事を意味する。俺は飽きるくらいにひとつひとつの乳首に触れてはロコンの反応を窺う。ぴくりと身体を動かしたり、涙目で俺の事を睨んできたり、はたまた我慢しながら甘い声を出したりと反応は様々だ。
 俺がロコンの乳しか弄らないものだから、
「こんなの生殺しじゃ……」
と愚痴を溢した。ロコンがそう言うのも無理は無かった。俺はこれまでロコンの乳しか弄って無かったのだから。
 俺はロコンに言われて、とうとう手を出していなかった部分に触れる事を決意する。ロコンのお腹の辺りの乳首を触っていた手の位置を更に下げていく。下げていけば、部分的にぐしょぐしょに濡れた体毛があった。
 体毛が濡れている原因が汗であれば身体全体の体毛が濡れている筈である。だが、局所的であるのでその線は薄かった。おまけに、手が体毛に触れた途端にべたついたのは勿論だが、同時に滑りもあったのでやはり汗とは考えられなかった。
 やはり考えられるのはあれしか無かった。真相を確かめる為に俺はロコンの湿った体毛を指先で掻き分けて、そこにある筈であろうものを探す。そして、それはいとも簡単に見つかり、俺の予想通りに切なそうに愛液を垂らしていた。
「もうこんなになってるのか」
 ろくに触れてもなかったのにロコンの秘部はお漏らしでもしたかのように愛液が滴っていた。それだけロコンは乳首を弄られて感じていたのであろう。
「ぬしがしつこく弄るのがいけないんじゃ」
 減らないロコンの口。少し黙って貰おう、と思って俺はロコンの秘部に躊躇う事なく指先を突っ込んだ。指先を入れた途端にロコンは口をあんぐりと開けては嬌声を発した。
 ロコンの秘部に指を入れた途端に愛液が絡み付いてきた。そして、指が溶けてしまいそうなくらいの熱が伝わってきた。一旦、指を引き抜けば、案の定指先から愛液が垂れるのと同時に一瞬だけ湯気が垣間見えた。
 ロコンが炎タイプであるから秘部がこんなにも熱いのであろう。しかしその割には水タイプなのかと突っ込みたくなるくらいに愛液をだらしなく垂らす。とは言え、俺はロコンの秘部に指を出し入れしていく。その際に愛液がくちゅくちゅと音を発する。その音とロコンの喘ぎ声が部屋にうるさく響き渡る。
 俺を攻めてるときは精気を吸い取るかの妖狐であったのに今となっては見る陰もなかった。今のロコンはただの牝に成り下がっていた。しかしそうなっているからこそ、人間である俺は妖狐であるロコンを弄ぶ事が出来る。
 指を何度も出し入れしてれば愛液がぐちゅぐちゅとかき混ぜられて泡を出しながら秘部から滴る。秘部から出た愛液はロコンの体毛を湿らせるだけ湿らせた後に布団へと垂れていく。布団ではロコンの止めどなく流れる愛液で染みを作らせていた。
 ロコンが愛液を垂らし続けるものだから俺の周りではすっかりロコンの愛液の匂いが漂っていた。まるでロコンにマーキングされてるかのような感覚であった。
「ぬしよ、わしはもう……」
 漸くロコンが弱音を吐く。その刹那、無意識に俺は口を釣り上げていた。ロコンが俺を虐めていた時の心境が今ならよく分かった。
 ポケモンバトルであったら今にも瀕死しそうなロコンの姿。耳は力無く垂れ、目許は涙で濡れ、口からはぜえぜえと荒い息を吐き、下腹部は愛液まみれになってぐしょぐしょになって乱れた姿。そんな姿でも俺はロコンに容赦無く一撃を決める。
 秘部に入れる指を二本に増やすのと同時に空いている指で秘部の側にある突起をぐりぐりと刺激してやる。その時、もう片方の手で乳首を摘まんでは軽く引っ張るのを忘れない。その時ロコンの身体がすっ頓狂に跳ねた、と同時に秘部から愛液が勢いよく噴き出した。
 ロコンは身体をびくつかせては吐息を頻りに漏らしていく。しかし愛液を噴出した後は時間が経つにつれて段々と身体の震えが小さくなっていく。
 ロコンが絶頂を迎えたのもあり、秘部に突っ込んでいた俺の指はすっかり愛液でまみれていた。それだけでなくて、手のひらや場合によっては腕や手首までにロコンの愛液が掛かっていた。掛かった直後は熱かった愛液も、外気に晒されてしまえば一気に冷めてしまう。
 俺は愛液が纏わり付いた指先を顔に近付けてはぺろりと舐めてみた。だが、ロコンが俺の精液を美味しそうに飲んでたみたいには、俺はロコンの愛液が堪能出来なかった。舐めたり飲んだりできるような味はそれには無かったからだ。
 愛液が付着した手を、布団のシーツで拭う。その際にロコンの秘部がある近くの染みを見るのだが、ロコンが絶頂を迎えた事もあってそれは随分と広がっていた。丁度子供がおねしょでもしたかの大きさ程度にまで、愛液が滲んだ染みはできていた。
 俺はロコンの様子を窺う。頭の毛はぐったりと垂れていて弱々しく息を吐き続ける彼女の姿がそこにはあった。普段の彼女だったら想像もつかないくらいに弱り果てていた。こんなにも大人しくなったロコンを見るのはもしかしたら初めてかもしれない。
「ロコン、大丈夫か?」
 流石に心配になった俺はロコンの安否を問う。するとロコンは顔を俺に向けるなり敵意剥き出しの眼差しでこう言った。
「……たわけ。ぬしは加減ってものを知らないんじゃ」
 人が折角心配しているというのに、ロコンから俺に向けられたのは文句だった。その所為か俺は苛立ちを隠せなかった。だから言ってやる。
「ロコンだって俺にやったときは散々したくせに」
「ぬしは牡なんじゃぞ? 牝である儂に優しくするのが当たり前じゃろ」
 しかし、俺はロコンに反論された。女に優しくするのは男の務めではあると思うが、相手は女ではなく妖狐だ。優しくしてもしなくても別に構わない筈だ。何よりロコンは俺より経験豊富そうであるし。
 それに、俺が乱暴にしててもロコンはきもちよく甘い声をあげていたから説得力なんて殆ど無いのだから。故に、俺はロコンに言ってやった。
「でも、なんだかんだきもちよさそうにしてたじゃないか」
「それは……まあ、そうだがの」
 言葉を濁すロコン。どうやら図星であったようだ。ロコンの恥じらう姿を見るのは珍しかった。そしてロコンは照れ隠しするように俺を呼ぶ。
「ぬしよ」
「ん?」
「まぐわうときは優しくするんじゃろうな?」
 そしてロコンは後ろ脚で俺の肉棒を軽く触れる。ロコンの口淫後から時間が経っているのにも拘わらず、俺の肉棒は自分の欲を露呈するかのように膨れ上がっていた。
 俺は肉棒に当てられたロコンの脚を握り、布団の上へと戻した。そして次に俺は自分の肉棒を握り締め、ロコンの秘部へと宛がう。
 愛液でぐしょぐしょに濡れたロコンの秘部、対して今か今かと待ちわびながら透明液を先端から垂れ流す肉棒。それらを交互に見合わせて、俺はロコンの問いに答える。
「そうするけど、場合によっては無理かもしれないな」
「ぬしはやはりケダモノじゃな」
 そして俺の答えにロコンは鼻でふふんと笑った。ケダモノである妖狐にまさかケダモノと言われるとは思ってなかった。だから俺も苦笑しながらロコンに言い返す。
「我慢する方が無理なんだよ」
 そう、我慢する方が無理だ。始まってしまえば歯止めなんて利かなくなる。快楽に溺れるのと同時に温もりから離れられなくなってしまうからだ。この肉棒を入れてしまえば、俺はもう止まらなくなるであろう。
 ロコンはちらりと俺の手に納められた肉棒を見る。そうしてロコンは俺に言った。
「ぬしは変わり者じゃ、こんな儂なんかを求めるとはな」
「それはお互い様だろ。ロコンだって人間である俺を受け入れるなんてさ」
 俺とロコンは当然ながら種族が違う。俺は人間で、ロコンはポケモン。異種だと言うのにお互いに求めてるなんて何とも可笑しな話だ。
「ふん、ぬしが儂を欲しいと言ったんじゃろ? あれは嘘だったのか?」
「まさか。俺はロコンと違って化かすつもりなんてないよ」
 俺はもうロコンと身体を委ねる準備が心身共に出来ている。今更、後に退くつもりなんて無かった。
 このままだとずっとロコンと言い合う羽目になりそうなので、俺は一旦深くゆっくりと呼吸して息を整える。そうしていつになく真剣で真面目に、見詰めては彼女を呼んだ。
「ロコン」
 呼ばれた彼女も俺の雰囲気を悟ってか、神妙な趣で首をこくりと縦に振った。それを見るなり俺は自分の肉棒と彼女の秘部へと視線を落とした。そして、彼女に言われた通りする為にゆっくりと慎重に腰を動かしては肉棒を秘部へと沈める。
 彼女の秘部はきついなんてものじゃなかった。俺と彼女の体格差を考えたらぎりぎり俺の肉棒が収まるくらいであったから。その所為で、沈めてる筈なのに俺はちっとも肉棒が秘部に入り込んでる気がしなかった。十分過ぎるくらいにある愛液や透明液は潤滑油としての役割をちっとも果たしてなかった。
 俺が肉棒を入れるのに悪戦苦闘している最中で、彼女は眼を瞑っては声を出すまいと歯軋りしていた。恐らく、苦しんでる声を聞かれたくないからであろうが、そんな姿をされたら俺は肉棒を沈めるのを止めてしまおうか、と考えてしまう。
 彼女の歪んだ表情が見たくなくて、俺は肉棒を止めた。そうしたら苦しんでる筈の彼女から罵声が飛んできた。
「ぬしのいくじなしがっ……しんぱいせずともわしはへいきじゃよ」
 ごめん。
 彼女の言葉に、俺はその一言だけ言って再び腰を動かしていく。どんなに彼女の肉壁が締め付けて拒んでこようが、お構い無しに俺は肉棒を沈めていく。その際に彼女が悶えていても俺は心を痛めつつ、彼女に叱られないように肉棒を押し込んでいく。
 そうしてやっとの思いで彼女の皮膚と俺の皮膚が重なった。肉棒は本当にぎりぎりで彼女の秘部へと収まっていた。
 はあ、ふう、と息を荒くさせている彼女が俺の前には居た。まだ始まってもいないというのに既に虫の息と言っても良いくらいであった。彼女から口元から垂れている唾液を、俺は指でそっと拭ってやる。
 大丈夫か、とは言わなかった。彼女は心配されるのを嫌っていたから。ただ俺は彼女の呼吸が幾分か良くなるのを口を閉ざしながら待っていた。そうして彼女の息遣いがゆったりになった所で、俺はゆっくりと腰を動かしていく。なるべく彼女の身体に負担を掛けないように細心の注意を払いながら。
 肉棒を秘部から引き抜いてはまた沈める。そんな単調な行為を俺は繰り返す。単調とは言え、それでも身体に走る快感は馬鹿にならないものであった。彼女に舐められていた時よりも勝るものであったのだ。
 俺はそんな風に刺激を味わえて良かったが、彼女の方はと言えば変わらず苦い表情を浮かべていた。俺が彼女の最奥まで肉棒を到達させる度に彼女は鈍い声を口から漏らす。それは先に聞いたような甘ったるい声とは全くの別物であった。
 彼女の秘部から愛液は十分過ぎると言える程に垂れている。しかし彼女の表情から読み取るに身体は痛みで満たされてるに違いなかった。これもきっと、俺と彼女の種族が異なるのと、身体の大きさの違いによる弊害に違いなかった。
 俺としては彼女に愛撫してた時のように、ぬしのたわけとか、ぬしはがっつき過ぎじゃ、とか口にして欲しかった。でも今の彼女にはそんな言葉を発する余裕も無かった。
 だから俺は、ほんの僅かでもいいから彼女がきもちよくなれるように彼女の胸に手を置いた。そして胸にある突起を指先で弾いては弄る。せめて痛いのが薄れるだけでも、と。
 俺が彼女の乳首に触れるや否や、ふうん、と腑抜けた一声が彼女の方から聞こえてきた。俺はそれを耳にするなり、手を更に動かしていく。大してない膨らみを揉んでみたり、乳首を摘まんでみたりとしてみる。そうする毎に彼女の声色が段々と高くなっていく。
 俺がそんな事をしているものだからこちらには眼を向けず、彼女が一言ぼそっと呟いた。
「……これでは乳飲み子みたいじゃ」
 彼女は、乳をまさぐる俺を呆れている様子だった。その一方で、彼女がとやかく言ういつもの姿が見れて、安心している俺がいた。
 彼女に何を言われても俺は胸を弄るのを止めない。勿論、肉棒を動かすのを忘れない。
 彼女の肉壁は蠢くように俺の肉棒を締め付ける。それも何もかも溶けてしまうくらいの灼熱の熱さでもって。それでも彼女の中に入り込んだ当初よりかは大分ましになっていた。まだ滑らかとは言えないが、取りあえずは肉棒を不自由無く動かす事が出来るのだから。
 徐々に彼女の声の調子が高くなっていく。そして苦しい悲鳴のような声から一転して、甘い声で哭く。俺の肉棒の動きに合わせながら。
「は、あ、あっ、ああっ」
 彼女の声が俺の耳へと入り込む。そして耳の中で幾度となく響き渡る。俺はこんな時でしか聞けない彼女の甘い声を、耳に残したくて何度も何度も腰を振っては彼女を哭かせる。
 響くのは何も彼女の声だけでは無かった。肉と肉とがぶつかり合う音、肉棒が彼女の愛液と俺の透明液をかき混ぜる音や布団のシーツが微かに擦れる音等、様々な音響があった。こんな真夜中で、ましてや壁が薄そうなアパートでは音が外へと漏れてるかもしれない。だけど俺と彼女は形振り構わずに続ける。
 彼女の表情が柔らかくなってきた、と言うより蕩けてきた事もあって、胸を弄る必要性は無くなっていた。これ以上弄っていたら彼女に怒鳴られそうな気もしなくないので手を胸元から布団の上へと移した。そして布団の上に投げ出されている彼女の前脚を手に取った。彼女の両方の前脚と俺の両方の手が触れ合って、俺は指の腹で彼女の肉球を触っては前脚を握り締めた。
 前脚を唐突に握られた彼女は少し困惑してたようだった。ポケモンである彼女は恐らく前脚を握られた事なんて無いのであろう。俺自身も、彼女は四足歩行であるから前脚を握る機会なんて無かった。だから新鮮な感じがした。
 俺は彼女の前脚を手に取りながら、彼女と向き合いながら営みに励む。
 俺が腰を振り始めてからある程度の時間が経った。前戯をし過ぎた所為もあってか身体は肉体的疲労感に襲われるのと同時に、肉壁に擦られている肉棒が悲鳴を上げていた。白濁液が噴出するまであっと一歩の所まで限界が迫っていた。
 対する彼女の方も、顔は俺に向けているのだが焦点が今一つ会わなかった。それ故に、彼女もそろそろ限界が近いと判断出来る。
 俺はこれで最後と言わんばかりに一心不乱に腰を振った。そうしては思いきり自分の肉を彼女の肉に打ち付ける。すると、それに合わせて彼女の身体が大きく揺れる。その振動は握っている彼女の前脚を通して、俺の身体にも伝わってくる。
 彼女から出てくる喘ぎ声の音量が次第に大きくなっていく。それに伴い俺から漏れる吐息も耳障りになるくらいに聞こえてくる。
 そして俺は勢い良く腰を振っては彼女の最奥を突いた。途端に肉棒から全身に向かって快感が走った。
 俺と彼女、ふたりして声になってないような叫びをしながら身体が狂ったように震える。肉棒からは白濁液が噴き出して彼女の秘部へと注がれていく。反対に彼女の秘部からは愛液を垂れ流し俺の白濁液と混ざり合っていた。
 俺の肉棒がびゅくびゅくと脈を打つのに合わせて白濁液が絶えず流れ出る。それと同時に、白濁液を出すのに合わせて肉棒が僅かながらも堅さを失っていく。
 彼女の秘部と俺の肉棒の隙間から、行き場を失った愛液と混じった白濁液が溢れ落ちていく。そしてそれは彼女の愛液によって作った染みへと垂れていき、新たな臭いを付着させていた。
 絶頂を迎えたのもあって俺と彼女は互いに呼吸が整わなかった。言葉を交わす余裕なんてちっとも無くて、ただただ口から吐かれる息と息とを吹き付けあっていた。
 可能であれば俺は布団に倒れ込んでしまいたかった。それくらいに俺は身体にどうしようもない疲労感があった。しかし彼女が目の前にいるので、倒れる訳にもいかず俺は彼女の前脚を握り締めたまま体勢を維持していた。
「ぬし、よ」
 息を切らしつつも彼女が俺を呼ぶ。それに対して俺も息をぜえぜえと荒くさせながらも反応する。
「なんだよ」
 彼女は握られた自分の前脚をちらりと見詰める。そして深く息を吸って、呼吸をどうにか落ち着かせた後に、視線を俺に戻すと言ってくる。
「ぬしが、さっき儂の脚を握ったのは何故じゃ?」
「……分からない。気づいたらロコンの前脚を掴んでた」
 あの時、自分でも無意識だった。彼女の前脚を握る事でただ快感に溺れるだけでなく、彼女そのものに溺れたかったのかもしれない。
「なんじゃそりゃ……。にしても人間のする体位はなんか面白かったの。ぬしの偉く真剣な顔が丸見えだったぞ」
 そして、くすくすと声を上げて笑う彼女。別に仏頂面だって何だって良いじゃないかと、負けじと俺も言い返してやる。
「こっちだってロコンがあんなにしおらしい顔をするのを拝めて良かったけどな」
 俺がそう言うと彼女は顔を真っ赤にさせては、たわけ、と口走った。そうして、ぷいっと顔を横へと向けた。彼女のそんな所がまた可愛らしくもあった。
 一気に立場が逆転して、今度は俺が笑う番だった。しかし俺が彼女の事を笑っても、彼女が笑うなとか言い返してくる気配が無かった。
 だから俺の方も笑うのを止めてしまった。緩んでいた頬も元に戻ってしまった。
「……ひととけっこんしたポケモンがいた。ポケモンとけっこんしたひとがいた。むかしはひともポケモンもおなじだったからふつうのことだった」
 顔を俺から背けたまま彼女がそんな事を突如言い始める。生まれてから耳にした事もないフレーズをいきなり聞かされた俺は困惑しながらも、彼女に訊ねた。
「なんだそれ?」
 すると彼女は俺に視線を戻しては淡々と言った。
「言い伝えじゃよ。古くから伝わる、な」
 俺にそんな言い伝え聞かせてどうするんだ、と訊こうとした瞬間に彼女が一足お先に答えた。
「……まあ平たく言えば、儂をこんな風にした責任を取ってくれんか、と言う事じゃ」
 そして彼女はにやりと微笑んだ。大方、彼女は俺を困らせたいが故にそんな事を言ったのだろうが、逆に俺が言ってやる。
「責任だけで良いのか?」
 先ほどまで笑っていたのに、俺の言葉で彼女の眼が点となった。そして彼女は今度、苦笑いしてこう言った。
「ふん、ぬしは人間のくせによく言うの」
「それはこっちだって」
「……儂はぬしに会うために生きてたのかもしれんの」
「なんか言ったか?」
 あまりにも小さな声で呟いたものだから俺には聞き取れなかった。何と口走ったのか訊こうとしても、結局彼女に誤魔化されてしまう。
「何でもないわい。それよりぬしよ、もう一度言ってくれんかの、あの言葉を」
 上目遣いをした彼女におねだりされたら言わない訳にはいかなかった。俺は一旦深呼吸する。そして自分の気持ちが整ったところで、彼女が求めるあの言葉をもう一度口にした。
 しかし、あの時はちっとも恥ずかしくなんか無かったのに、今度は口にした途端に恥ずかしくなった。要求してきた彼女の方も、よくもくさい台詞を言えるのう、とか今にも笑いそうな顔で言ってきたものだから尚更だった。
 恥ずかしい上に、どうにかして彼女を黙らせてやりたい。俺がぱっと思い付いた方法は、五月蝿い彼女の口を自分の口で紡ぐ事であった。そして俺は直ぐに行動に移した。
 自分の口を彼女のに押し当ては喋れなくさせる。しかし、喋れなったというのに彼女は至って冷静であった。それどころか彼女は俺の手に自分の前脚を当ててくる。
 握れ、と口が使えない彼女は眼で訴えてくる。そんな彼女の我が儘に、俺は仕方無く付き合ってやる。
 彼女の小さな前脚を離さぬようにとぎゅっと握り締めた。


原稿用紙(20×20) 90.05 枚
総文字数 30890 文字
行数 524 行
台詞:地の文 3365文字:27525文字


後書き
ロリBBAだったりBBA言葉が書きたかった欲をぶちこんだのがこの作品だったりします。後は脚とかでやって貰うのを書きたかったりとか、とにかく書きたかった事を一通り取り込みました。
たまには小さい仔に手を出すのも良いと思います(
ここまで読んで下さった読者の皆様、本当に有難うございました。


感想等あればご自由にどうぞ。


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Last-modified: 2013-08-29 (木) 00:00:00
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