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かたいいわ

/かたいいわ

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ご参加いただきありがとうございました。また次の大会でもお待ちいたしております。
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作者:リング


「すごい……これはなんて大きさの堅い石だ……初めて見る大きさの堅い石だ。いや、これは岩と呼んでも差し支えない。まさしく、堅い岩だ!!」
 ここは、世界有数の石の産地。ハードマウンテン。シンオウの神話に登場する伝説のポケモン、ヒードランが住まうと言われているこの山は、火山の熱と圧力によって主に炎の石や太陽の石が生成される。
 俺はさすらいのトレーナーで、お金が無くなった時は、こういった場所で採取を行い、それを売ることで生計を立てている。
 さて、この山には前述の進化道具となる石以外に硬い石も生成されるのだが、いかんせんそれはどんな場所でも産出されるものなので、ありがたみは薄い。
 だが、たったいま掘り出す事が出来たこの堅い石の大きさ……自分の歩幅は約50cm程だが、それよりもわずかに大きいという事は、このほぼ球形の岩の直径は60cmくらいはあろうか。これは通常試合で使われる堅い石の数百倍はあろうかという重さだ。
 角ばった石は、鋼鉄のツルハシ程度では傷一つつかない。俺も鍛え上げているから、カイリキーでも一本の腕となら腕相撲をしても負けないし、ツルハシやスコップがあればこの辺の野生のポケモンだって大抵は倒すくらいの力がある。
 そんな俺が、全力で叩いても傷一つ付けられず、そして相棒のカイリキーが全力でツルハシを振り上げても、ツルハシが折れて石には小さな跡がつくぐらい。
 決して割れないという硬い石の煽り文句が嘘ではない事を理解させる、圧倒的な丈夫さだ。これだけ大きければ、さぞや岩タイプの力は強化されるだろう。ためしに……

「いけ、カイリキー! ストーンエッジ!!」
 と、命じれば、カイリキーのストーンエッジは、今まで見たこともない大きさ、見たこともない速さ、そして着弾点には地形を変えるほどの強烈な衝撃。理想的な早さと強さを併せ持った、最強の技へと変貌している。ポケモンバトルの規定では、持ち物は一つしかもたせてはいけない。そのため、堅い石を何個も何個も持って更なる強化を行うというような戦法は禁じられているというわけだ。
 しかし、これなら。持ち物は一つというルールには則っている。さすがに数百倍の大きさがあるからと言って、威力が約1,2倍かける事の数百倍という事で、通常のストーンエッジの20倍とか30倍の威力になるとか、そこまで極端な強化ではないのが残念だが、それでもタイプ不一致でこれほどの威力なら相当な強化である
 これを持ち帰って、道具に加工して売り出せば、きっと高い値がつくぞ……!!
「しまったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 火山の洞窟の中、俺は一人大声をあげる。硬い石の密度はとても高く、体積重さは金に匹敵する。まぁ、それでもこの岩塊の大きさは2トン*1前後だから相棒のカイリキーならば持って行けるだろう。しかし、これの岩を道具に加工するには……加工する道具がない!!
 ダイヤモンドで出来たドリルであれば、この堅い石にも穴をあけて紐を通すことも可能だが、しかしこの岩に見合ったドリルなど存在しないし、そもそもそれに通す紐ってどんなのだ!?
 いや、イトマル製糸工業の糸ならあるいは通して吊るせるかもしれないが……それを首に掛けたら一生頭が上がらなそうだ。

 そう、ここで俺は最大の問題に出会ってしまった。この岩、運ぶことはできるし持ち帰ることはできる。しかし、これを持って戦うと、さすがに機動力が半端なく落ちる。
 それでもまぁ、ポケモンによってはそれでも有効に戦える奴はいるかもしれない。ドダイトスとかクレベース、イワパレスのような巨大なポケモンならば、機動力なんて元からないようなものなのだから、活躍できるかもしれないが……
 持ち運びができやすいように加工しないと、ずり落ちてしまう危険性を孕んでいる(クレベースなら大丈夫かもしれないが)。
 一体、どうやって加工すればいいのやら、見当もつかない。イワパレスのヤドにするには微妙な大きさというのも、使いにくさを絶妙に高めている。


 その日から、インターネットに実物の写真をアップし、その岩を加工する業者を募った。自分からあらゆるアイテム加工業者に電話をかけて、可否を伺ったりもしたが、ダメだった。
 偶然通りかかったホウエン地方の元チャンピオンにも話を持ち掛けたが、岩に頬ずりされただけで、結局ダメという回答をもらってしまった。
 そして、かつてシンオウに君臨し、最強の名をほしいままにし、伝説のポケモンをも従えるトレーナーにも頼み込んでみたが、パルキアの亜空切断は細かい作業に向いていないから無理という回答をいただいた。

 この時点で、すでに俺は気付いていた。別に加工してバトルに使って貰わなくとも、これだけ大きければ某ダイゴのように記念としてそのままでも購入してくれるもの好きはいるだろうと。
 しかし、ここまで加工の方法を方々探して東奔西走した俺は、意地になっていた。観賞用や漬物石でなければいい、何かしらこの堅さや重さ、岩タイプの威力をあげる力を有効に使って欲しい……と。
 そのため、有効利用できる者には格安で譲ることを条件に募集してみたところ、やはり利用するのは相当難しいのか、いろんなトレーナーがいろんなポケモンを連れてきたものの、すべて無駄になってしまった。

 例えばローブシン。ローブシンはその岩を柱の代わりにしようと頑張ったのだが、あいにく岩は一つしかない。
 持つ分には問題なく行えても、片方だけに重量がのしかかるために、どうにも左右でバランスが悪くなってしまうのがネックである。まともにバランスが取れず、隙だらけになってしまうために不採用。

 例えばニダンギル。砥石に使おうと考えたようだが甘い、その程度で削れる堅い石ではないのだ。

 例えばレジロック。その界隈では有名なトレーナーが自分の家を訪ねてきたときには驚いたものだったが、やはりどうにもできなかった。トレーナーは自分の体にくっつけることで堅いレジロックを作ろうとしたようだが、堅い石は孤高の存在だ。たとえレジロックであろうともその身に取り込むことは出来ない。

 例えばドサイドン。岩石砲を使う際にはイシツブテを発射することもあるという彼等だが、さすがに堅い岩は重すぎたし、大きすぎて扱いづらかったようだ。威力が上がっても、弾速が遅すぎてはどうしようもない。

 もちろん、イワパレスには小さいからと言って、イシズマイにかぶせるには少々重すぎるし、何より消化液ですら溶かすことは出来ない。

 さて、どうしたものかと途方に暮れたある日の事。ラグビーやアメフトでもやっていたのだろうか、非常に体格の良い男性が、ボスゴドラを連れてその石を有効活用できると申し出る。どうも、彼は仕事で岩を保管している俺の家の近くに来ているようであり、直接実物を見て決めたいとのことであった。
「私はボスゴドラ専門のブリーダーを営んでおります、ボスゴドラ牧場の経営者。ミヤマ キリシマと申します。以後、お見知りおきを」
 石材店を営む俺の家に訪れた男性は、ミヤマキリシマ。彼は体格に似合わず丁寧にあいさつをし、名刺を渡してくれた。」
「あ、これはどうも。しかし、ボスゴドラですか……これまで、ボスゴドラよりも力のあるバンギラスでさえも扱えなかったこの岩を……扱えるでしょうかね?」
「いえ、扱えませんよ。まぁ、扱える子がいるならそれはそれで、そのポケモンとチャンピオンマスターだって目指せるでしょうがね!」
 扱えないと自信満々に彼は言う。そんな、扱えないならなぜ訪ねてきたし。

「ところで、この岩に諸刃の頭突きをしても大丈夫ですかね?」
「構いませんが……どうせ、その程度じゃ跡が少しつくくらいですし」
「では、遠慮なく。出てこい、ユカリちゃん!」
 ミヤマはボスゴドラを繰り出した。しかし、可愛い名前である。
「ユカリ、今日も火花比べしようか?」
 出てきたボスゴドラの首筋を撫でてあげてから、ミヤマはポケットから拳にはめる武器のようなものを取出し、おもむろに堅い岩を殴りつける。堅い岩はその程度では火花を立てるような物質ではないというのに、盛大に火花が散った。
「よーし、ユカリ! 次はお前だ」
 と、促されるままボスゴドラも頭突きをする。最高クラスの威力を持つ諸刃の頭突きという技を、さらに何倍にも強化されたその一撃。その威力は、受け止めればメタグロスですら一撃のもとにたたき伏せるであろうが、堅い岩はびくともせず、火花はたいして上がらなかった。
「俺の勝ちだね、ユカリ」


 人に飼われているボスゴドラにも、岩に頭突きをして火花を立てることで縄張りを主張する野生の習性の名残が残っていて、彼はその性質をうまく利用している。堅い岩はボスゴドラの頭突きでも火花を立てるような軟な石ではないので、火花の出やすい素材でできた武器を使って火花を立てると、その火花の大きさに本能的にトレーナーが上だと理解して言うことを聞きやすくなるのだとか。
 役に立たない物質であることを逆に利用するとは意外な盲点だ。できればあれを普通にバトルで使ってくれるポケモンがいて欲しいものだが、とりあえずは役に立っているようだし、これはこれでありなのかもしれない……。

あとがき 


今回は圏外でした。あまり面白いお話を考えられなかったため、こんなものかなと思います。
ただまぁ、言い訳をさせてもらえばですね……少し前にポケノベという別の場所でも同じテーマで企画が行われていたわけですよ。それはつまりどういうことかと申しますと……自分で言うのもなんですが、あっちの方が面白かったんじゃないかなー……と思ったわけです。それに私ギルガルド大好きですし!
だってエロイじゃないですかあの子……剣も鞘もあるんですよ奥さん? もはや全身にモザイクを駆けなければいけないレベルのエロさで、一目ぼれですよ本当に。

そんなわけで今回はあまり振るわない結果となってしまいしたが、票は一応取れたのでよしとしましょう。

おもしろかったです。読んでいる内にどんどん作品に引き込まれてしまいました。 (2014/01/12(日) 03:25)


どうもありがとうございます。これからも精進いたします。

起承転結が上手く構成され、文章の表現力も良くとても読みやすかったです。そして最後の意外な使い道。習性などを生かしたその結末がとても素晴らしいと思いました。 (2014/01/18(土) 23:56) 

ボスゴドラは好きなポケモンの一つなので、今回は上手くテーマにからめられてよかったと思います。投票ありがとうございました。


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*1 金の密度19.30×半径30cmの三乗×3分の4×円周率Π=2181672グラム。トンで表す場合は、これを100万で割る必要がある

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Last-modified: 2014-01-18 (土) 16:56:00
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