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お魚温泉

/お魚温泉

大会は終了しました。このプラグインは外して下さって構いません。
ご参加ありがとうございました。








 長い長い飛行機の旅の果て。空港に降り立って町中をバスで移動していると、目的地が見えて来た。
 いかにも時代劇に出てきそうな暖簾(のれん)を提げた和風の旅館が何軒も軒を連ね、その殆どの屋根の上からは煙突が何本もそびえ立ち、煙突の先端からは湯気が立ち上っていて一帯が水蒸気生産工場と化している。
 側を流れる川までもが湯気を立ち上らせており、移り変わる景色を窓硝子越しに眺めながら、私達は異国に来たという事を実感した。




「…………」

「…………」

「…………」

「…………~ッ!」

「あーっ! うっさい!!」
「ふぇ?」
 景色を楽しんでいた私の隣の席でバリボリと耳障りな騒音を出していた私の夫は、右手にフエンせんべい、左手にフエンせんべいの二刀流で交互に齧り付いていた……。





   お魚温泉





 


「ああもう! 座席がせんべいカスだらけじゃない。せっかく観光に来たんだから、せんべいくらい空港の売店じゃなくて現地で買いなさいよ」
「だってクレアちゃん、全然喋らなくて退屈だもん」
「…………」
 クレアと呼ばれた白い牝ポケモンが、額の左側に血管を浮き上がらせながら憮然とした表情でシートの上に散らばっているせんべいカスを下に払っている。
 全身が白い体毛に覆われ、四肢は手袋と長靴を履いているかの様な紺。紺は首の襟巻きと頭頂部の飾り毛にも点在しており、白い二つ折りの垂れ耳は耳の内側が隠れている。臀部の付け根からは顔の大きさ程もある白い尾が二本伸びており、本人の動きに合わせてススキの様に揺れていた。目はどこか気だるそうな半月状の黄と橙の目をした猫型ポケモン、ニャオニクスである。
「よいしょっと」
 クレアの側にいる牡ポケモンが、バッグから渦巻き模様の入った大型のメダル状の棒キャンディを取り出すと、両手持ちにして顔の前でキャンディの角度がちょうど水平に向く様にし、ぴたりと動作を止めた。刹那、キャンディを渾身の力で強引に口の中に突っ込み、頬をパチリスの如く膨らませる。
「やめんか! バスの中なんだからせめて別の場所でやりなさい。全くラキったら幼稚なんだから……」
「ムェ~……」
(ええ~……)
 ラキと呼ばれたポケモンが飴を突っ込んだままの頬袋顔で不満そうな表情を浮かべた。
 全身が紺の体毛に覆われ、四肢は軍手とホワイトソックスを履いたかの様な白。白は首の襟巻きと頭頂部の飾り毛にも点在しており、垂れ耳は紺を基調に屈折部と先端が白で、紺のリングの様な線が一本入っている。こちらも矢張り耳の内側が隠れていて内側が見えない。臀部から伸びる二本の尾も垂れ耳と同じ様に紺を基調にして先端が白。白の部分には紺のリングの様な線が一本、同じく外周状を走っている。目は楕円状になっており、黄緑の中に翡翠が入っている。こちらも同じ猫型ポケモン、ニャオニクスである。
 この二匹、なぜ同じ種族なのに容姿が全く異なるのか? それはニャオニクスにはそれぞれの性別ごとの姿が存在するからだ。見分け方は牡だと紺を基調とした『オスのすがた』。牝だと白を基調とした『メスのすがた』である。
 尾の形状、口紅の有無、額の模様の広さなど、微々たる違いで性別を見分ける種族のポケモンが殆どの中で、これ程雌雄の容姿が違う種族は珍しい。

 バスの中で一悶着しながらも拠点となるホテルに到着すると、私達は目一杯観光を楽しんだ。四泊五日のフエン観光のスタートだ。
 美肌効果のある温泉に、美味しいグルメや美しい景色。
 特に美肌温泉は美肌好きな私が旅行前から入りたいとマークしていた物件で、乳白色の温泉に入ってすべすべお肌になれた時は本当に嬉しかった。
 相変わらずあちこち観光して回ってはバカみたいなやりとりをしていたけれど、ちょっと子供っぽいラキは見た目は頼りないけどこう見えても私の夫。残念ながらまだ初体験はしてないんだけどね。
 ラキは普段は頼り無いけど〝やる時はやる〟タイプの優しい人。なので私は突っ込みを入れつつも、彼の事を信頼して付いて行く事にしたの。


    ◇



「はい、クレアちゃんあーん♪」
 豪華な懐石料理が並んだ食卓を中心に据え、二匹とも浴衣姿で向かい合う様に座布団に座ってご馳走に舌鼓を打っていると、ラキが茶碗蒸しに入ってる銀杏を朱色のスプーンで私の顔の前まで持って来た。
「そんな事しなくてもちゃんと自分で食べるわよ……」
「恥ずかしがっちゃダメ、折角の新婚旅行なんだから。大丈夫、誰も見てないって。あーん♪」
「……あーん」
 口に含んで噛みしめると、プルプルとした食感と苦味が口腔内に広がった。



    ◇



「「♪ユウキリンリン ゲンキハツラツ
   キョウミシンシン イキヨウヨウ
   ポケナビ持って 準備完了!!
   センテヒッショウ ユダンタイテキ
   ヤルキマンマン イキトウゴウ――*1」」
 晩ご飯の後は、旅館内のカラオケボックスで一緒に歌った。
 音響効果で声にエコーが掛かって山彦の様に響くのが気持ち良い。
「うん、じゃあ次は僕だけ歌うね。えーっと、じゃあ、○タフライで」 
 何気にラキは冗談抜きで歌が上手いのよね……。 

 

 こうして。
 私達夫婦は、しばし日常を忘れて夫婦水入らずの新婚旅行を楽しんだ。



 


 楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去り、四泊五日のフエン観光も四日目となった。明日の最終日は道中観光をしながら飛行場まで行くので、自由に遠出が出来るのは今日までだ。
 四日目の昼、午前中の観光を終えた私達は昼食時に立ち寄ったレストランで束の間の休息。食事を終えると私は店に置かれている情報誌をのんびりと読んでいた。
「あれ、これは?」
 私はふと、あるページの広告に目が留まった。

■お魚温泉
・フエンでも数ヵ所しかない、お魚温泉を体験できます。
※7:00~22:00までの間で利用可。火曜定休日。

◎ お魚温泉とは? ◎

人間やポケモンの古くなった角質を食べてくれる魚。
歯が無いため肌を傷つける事も無く、皮膚を吸い取るように啄む習性と、
啄む際の小刻みな刺激や振動が皮膚の代謝を促進させる『自然のピーリング効果』
及び『マッサージ効果』、『リラクゼーション効果』が期待され、アトピー性皮膚炎・
乾癬など皮膚病に治療効果がある。


角質を食べてもらった後は、ツルツルお肌をゲット!
体験後のお肌にそっと触れて、その効果を実感してみてください!


 文章の横には魚の写真が添えられていた。何これ? 一応旅行前に下調べしたけどこんなの初めて知ったわ。なんか面白そう……。私の体が小刻みにプルプルと震える。
 とそこへ、トイレからラキが戻って来た。
「クレアちゃん、そろそろ繁華街に出発しよう。あれ、どうしたの?」
「ごめん、ちょっと予定変更しても良いかな」




「ごめんなさい、我儘(わがまま)言って」
「ううん、クレアちゃんが行きたい所に行った方が良いと思うよ。本当は僕も付いて行くべきなんだけど、温泉はもう十分入ったしちょっと遠慮したいかな……と思って」
 私達は別行動を取る事にした。
 ラキが繁華街の観光で、私がお魚温泉。新婚旅行の趣旨に反するけど、運が悪い事にこの二件は今私達がいるレストランからそれぞれ逆方向の場所にあったので、両方とも回ってたら時間が掛かり過ぎてしまう。カロス地方出身の私達が遠い外国のフエン旅行なんてそう何度も出来るものじゃないし、ひょっとしたら今、この瞬間を逃すともうニ度と体験出来ないかもしれない。私はラキに必死になって頼み込んでどうにか了承を得る事が出来た。
「じゃあ、夕食の時間までにホテルに集合ね」
「分かったわ」
 私はタクシーに乗って、情報誌に載っていた住所を頼りにお魚温泉があるという旅館の場所へと向かった。


    ◇



 ハブネークの蛇腹の動きの如く、所々曲がりくねった山道をタクシー内で右に左にと揺られながら小一時間、私は漸く山奥にある目的地の旅館に到着した。やや年期の入った建物だ。玄関の扉を開けると矢張り年期が入った和風の内装で、古いけどとても落ち着いた佇まいと言える。目線を上げると正面からやや右方面に玄関受付の窓口があり、その奥にご主人らしき方が背を向けて事務作業をしている。
 私は窓口の前まで来た。ボクシングの試合とかで見るゴングに似た真鍮のベルに、その横には『ご用の方はこのベルを鳴らして下さい』と書かれた三角錐を横に置いたボール紙が置いてある。
 私は上から手を押さえつけてベルを鳴らす。
「はい」
 ご主人が振り向いてこちらに来た。所々皺の入った初老の牡のマクノシタだ。
「すみません、此処にお魚温泉があると聞いて来たんですけど」
「ええ、ありますよ」
 やった。私は胸の高鳴りを抑えつつマクノシタのご主人に入浴料金を払い、脱衣所で荷物を置くと、やや早足でお魚温泉のある浴槽へと向かった。
 ご主人の話によると、まず浴室内を通り抜けて一旦野外に出て、そこからちょっと登った離れにあるのだとか。私は言われた通りに浴室を通り抜けて外に繋がる扉を開けると、野外の未知なる光の空間へと飛び込んでいった。
 が、面食らった。
 遠い。浴槽がかなり高い場所にあるらしく、階段が果てしなく続いていて先が見えない。ちょっとした登山道だ。
「よーし……」
 私は困難に立ち向かう冒険者になり切って勇ましく微笑すると、双眸を閉じる。続いて大きく酸素を吸い込み、口を窄めながら少量ずつ二酸化炭素を吐き出した。
 刹那、カッと双眸を見開き、手の平を外側に向けて両手を真横に突き出した。
 すると普段は二つ折りになっている私の垂れ耳が、萎れて(こうべ)を垂れる花が生気を取り戻すかの如く起き上がり、天を突き刺す縦長の立ち耳になった。二つ折りで隠れていた内側部分には橙と黄の眼状紋が両耳にぎょろりと浮き上がって鋭い眼光を放っており、まるで悪魔の目玉のよう。すると次の瞬間、私の体が青白い光に包まれ、ふわっと宙に浮いた。
 地面から一メートル程の高さで浮遊を維持すると、私は階段をなぞる様にセルフエスカレーターで目的地を目指して登って行った。






「わあ……」
 私は目の前に広がる光景に言葉を失った。
 岩に囲まれた透明度の高い温泉の中に、全長十センチ程の透き通った小魚が泳いでいる。写真では分からなかったが、実物は思ったより小さい。
 しかも泳いでるのは一匹だけじゃ無い。十匹、二十匹、それ以上――
 数えきれない程の小魚が小川の様に魚群を作って泳いでいた。
 温泉というより生け簀か、金魚掬いの水槽みたい。本当にこの中に入れるの?
 私は試しにそっと手を水に漬けてみた。ちょっとぬるいけど、あったかい。これは確かに温泉だわ。温泉の中を泳ぐ魚なんて初めて見た。うっかり茹で魚になったりしないのかしら?
 もう一度手を水に漬けてみる。今度はさっきより深く手首まで。すると小魚が数匹寄ってきて私の手に吸い付いてきた。歯が無いので、噛まれるというより吸盤が吸い付く様なむにゅ、という不思議な感覚。痛みは無い。
 うん、これなら大丈夫。私は意を決すると、遂に浴槽に踏み入れて足を沈めた。出来るだけ波を立てない様に気を付けながら徐々に湯船に体を沈めていく。小魚達を驚かせない様にゆっくり、ゆっくりと。
 腹……、胸……、肩……、とうとう肩まで湯船に漬かった。
 すると小魚が何十匹かワッと寄ってきて私の体中を吸い始めた。ちょっと怖かったけど、一斉に吸い始めたらもの凄くこそばゆい。
「んふふふ……くすぐったい」
 そのまま暫く入浴していると次第に慣れ、恐怖感が薄れていった。
 どの仔も夢中になって吸い付いていているし、身近で良く見ると中々可愛い。私は差し詰め小魚達のお母さん、と言った所かしらね。
 あらあら、魚の貴方は母乳なんて飲まないでしょ。パクリと乳首に吸い付いている個体に突っ込む余裕も出来た。
 良かった。我儘を言ってまで来た甲斐があったわ。お陰でこんなに素敵な体験をする事が出来たんだもの。
 私は小魚達のユーモラスな仕草を優しく微笑しながら観察し続けた。



 


 お魚温泉に入って観察を続けてから、暫くの時間が経った。私の古い角質を食べ尽くしたのか、体に付着している個体はもう数匹だけ。
 そろそろ頃合いかな……。観察凄く楽しいし、小魚可愛いし、もっと入っていたって良いくらい。
 でも、残念ながら時間は有限で、何事にも別れは付き物。名残惜しいけど、私はこの体験を忘れない。せめて記憶にはしっかり焼き付けておくわ。ありがとう、小魚さん。
 感謝の言葉を伝え、そろそろ温泉から上がろうと思い初めていた、その矢先。

 ツルン。

 突然、私の膣から何か冷たい物が侵入する様な感触がして、ぞわっと悪寒がした。まさか……。
 そのままじっとしていると、微かではあるが、確かに膣内で何かがうねる様な感触が。
「ちょ、そんな所に入っちゃダメ!」
 私は慌てて指を膣内に突っ込んで引っ張り出そうとする。でも小魚が小さい上にぬるぬるしているせいなのか、中々掴む事が出来ない。何度必死に指を入れても虚しく空振りに終わり、びちびちと膣内を蠢く感触だけが伝わって来るだけ。
 私は気が動転してパニック状態に陥り、逆に膣を広げれば膣内から出てくるだろうと両手で膣を最大限まで押し広げた。
 でも、それがいけなかった。湯船の中で膣を最大限まで広げた瞬間、それまですっかり私に無関心になって泳いでいた他の小魚達が、待ってましたとでも言わんばかりに弾丸の如く目にも留まらぬ早さで次々と私の膣内に突っ込んだ。
「ひゃあああああああああ!!」
 堪らず股を両手で抑えこむ。
 慌てて湯船から上がろうとするが、どうしたのだろう、体が重い。
 それでも何とか湯船から水飛沫を上げながら石畳に足を乗り上げ、どうにか地上に生還すると、私の体が有り得無い事になっていて、仰天した。

 私のお腹がまるで臨月を迎えた妊婦の如く、大きくぽっこりと膨らんでいたのだ。
「…………!」
 余りの衝撃に言葉が出ない。
 お腹を擦る。ゴムボールの様に弾力性のあるお腹は押すと僅かに引っこむが、指圧を止めると元に戻ってしまう。
 今度は両手をお腹に添えて押してみる。徐々に強く押して小魚を押し出そうとするが、内蔵を圧迫されて()せてしまった。
「ゲホッ、ゲホッ……!」
 直様気を取り直してキッと真剣な表情になると、立ち姿で再度膣に指を突っ込んだ。だが指を突っ込んでこねくり回しても今度は何の手応えも無い。嫌な予感が的中してしまった。これは小魚達が手では届かない子宮内に侵入されたという事――


    ◇


「すみませーん」
「はい、何でしょう?」
 私は受付の呼び鈴を鳴らして声を掛けると、背を向けて事務作業をしていたご主人が椅子を回転させてこちらを向いた。
「あの、お魚温泉に入ってたら膣から小魚が入ってしまいました。すみませんが取って下さいませんか?」
 まるで妊婦の様にパンパンに膨らんだお腹を晒して懇願した。
 あ、ご主人、鼻血を吹き出して蹲っちゃった。歳は取ってるけどご主人もまた牡、私のせくしぃなホワイトボディと妊婦属性の悩殺コンボは刺激が強過ぎたかしら……。

 と、ここで突然映像がストップして静止画になると、静止画が硝子が割れるアニメーション効果と共に耳を劈く高音を立てながら木端微塵に飛散した。
「ダメダメダメダメダメ、そんなの嫌!」
 首を左右にぶんぶんと振ると、全力でその可能性を否定した。温泉に入ってたらうっかり小魚に犯されました、なんて説明するなんて恥ずかし過ぎて死んだ方がまし。
 仮に勇気を出して報告したとしても病院行けと言われるだけかもしれないし……。
 実際にはまだご主人の所へは出向いてはおらず、先程立ち姿で小魚を取ろうとしていた場所で妄想していただけなのであった。


    ◇


 何れにせよ、こんな状態で病院に駆け込んだら色々と騒ぎになってしまうかもしれない。好きでこうなった訳じゃないのに……。 
 妄想してたら段々腹が立ってきた。
 ぽっこりと膨らんだままのお腹。もう自力ではどうする事も出来ない。こんな所に入りやがって……。
「この!」
 私は半ばヤケになってゴムボールの様に膨らんだお腹を殴りつけた。
 すると、その直後!

「ひゃああああああああああ!!」

 突然私の体が眩い黄金(こがね)色の火花に包まれた。体に痺れる様な痛みが走る。そのまま数秒間火花が続くと、フッと消えた。
「は、はひ……」
 体に痛みが走って尻餅を付いてしまった。一体何が起きたのか。
 少し間を置いて、私はこの現象の正体を理解した。
 これは電撃……。流石に魚の種類までは把握してなかったけど、聞いた事があるわ。
 シビルドンというポケモントレーナーに人気の電気ポケモンがいて、その牝のシビルドンが産んだ卵から生まれる進化前のポケモンは、確か、透き通った小魚の姿……。
 電気魚ポケモン・シビシラス!
 腹部からばち、という音が微かに聞こえた。


    ◇


 どの道もう自力ではどうする事も出来ない。ここに留まっててもしょうがないし、早く旅館まで戻ろう……。
 私は階段の側まで重たいお腹を抱えながら来ると、登って来た時と同じ様に耳を縦長にさせ、宙に浮く。ところが。
「あうっ!」
 先程腹を殴りつけられてシビシラス達が興奮しているらしく、体が発光するまででは無かったものの、体に電撃が走って落ちてしまった。一瞬よろめいたが、どうにか転倒せずに両足で着地する事が出来た。階段から転倒なんかしたら洒落にならない。
 ところがその直後、体に異変が。
「あ、あれ……」

 ――念力を初めとするエスパー技は、ルカリオの房やニャオニクスの耳など、体内を流れるオーラを増幅させる特殊な器官を持ったエスパーポケモンが体内のオーラと精神の波長を合わせ、増幅する事で、他のタイプのポケモンには真似できない強力なエスパー技を発動させる事が出来る。
 が、それは裏を返せば感度が上がると言う事。耳の器官を使って強化されたエスパー技を使用した今のクレアは、大量の媚薬が全身に回った状態で電撃ローターを何十本も挿入している極限プレイを実践してるも同然と言っても過言では無い。

「お…………おほぉぉぉぉぉ……………………」
 子宮内に身動きが取れない程詰まったシビシラス達がごりゅ、ごりゅ、と動く度に、つま先から耳の先端までがじわじわと強烈な快感に襲われ、喘き声を漏らしてしまう。私はお腹を両手で押さえながら蹲ってしまった。
 ところが、じわじわの上昇が止まらない。増幅されたオーラが仇となって感度のメーターの針がみるみる上昇し、段々体がシビシラスの蠢きに過敏になっていく。
 お、お願い。動かないで……。
 お腹を両手で押さえて触覚で感度を和らげようとするも、効果も空しく、ぽこぽこという蠢きの感触が手に伝わってくるだけ。
 唯でさえ電撃ローターを何十本も挿入しているのに、自分で媚薬を服用して追い打ちを掛けたのだ。全身が火照るような熱さと疼きに蝕まれ、シビシラスの蠢きと連動してくねくねと体を捩らせてしまう。例えるのなら、膣内で電撃ローターのスイッチをONにしたまま取り出せなくなり、制御不能に陥ってしまった様なもの。それはまさに、快楽地獄だった。
「ああああああああああああっ!!」
 蹲った状態でお腹を押さえたまま大地震に耐えるかの如くガクガクと激しく体を揺らすと、膣からぶしゃ、と愛液を吹き出してイッてしまった。
 またしても良かれと思ってやった行動が裏目に出てしまった。
 私は己の未熟さを深く恥じた。



    ◇


「ゼハー……! ゼハー……!」
 結局、念力を使わずに旅館まで戻る事にして、ボールの様に膨らんだお腹を抱えて肩で息をしながら階段端の手すりに寄りかかる様にして階段を降りている。手すりがあったのは不幸中の幸いだが、登って来た時はあっという間だったのに今度は中々目的地に到着しない。まるでフエンの神様が楽した罰だ、とでも言ってるかのよう。辺りはもう一面茜色に染まっており、夕日が西に傾いている。
 ゆっくり、しかし確実に階段を下っていく。





 どれ程の時間が経ったのだろうか。
 夕日が沈み、辺りが暗くなり始めた頃に最後の一段を降りると、ついに目的地、旅館内の一角にある浴室の扉の前に到着した。
 良かった……。ひょっとしてシビシラスの電撃を受けて道中で気絶して、事件沙汰になるかもしれないと思ってたから。
 旅館に戻ったら、まずタクシーを呼んで受付のご主人にお腹を見られない様にさっと帰る。多分タクシーの運転手は行きとは別の人のはずなので、私妊婦ですと言い張ってポケモンセンターまで送ってもらう。そしたらジョーイさんにだけ真実を話して口外しないようにお願いして治療して貰えれば何とか恥を掻かずに済むわ。よし、我ながら完璧な計画。
 
 その時私は、安心してしまったのだろうか。
 それとも石積みの階段を手すりに寄りかかりながら前屈みに降りる態勢に慣れてしまっていたのか、室内浴場で湯気が立ち上っていたからなのか、はたまた他の客が来ていなくて最初に来た時と変わらず空っぽのままの室内浴場を見てこの恥ずかしい姿を見られずに済むと安堵してしまったのか。 
 私が野外と室内を繋ぐ出入り口の扉を潜って室内浴場に入り、数歩歩くと、私の重たい体が突然重さを感じなくなり、宙に浮いた様な感覚を感じた。すると眼前にある天国の扉が何故か視界の下方向に移動して見えなくなり、天井の白い壁が。すると直後、後頭部に激痛が走る。
「がっ!」
 私は足を滑らせて仰向けに転んでしまった。頭が割れる様な耐え難い痛み。
 後頭部を抑えて呻いていると、体にもの凄い衝撃を受けて驚いたのだろうか。子宮内で先程と比べて動きが鈍って来ていたシビシラス達が突然、全匹一斉に放電した。私の下腹部がばち、と今までに聞いた中で一番大きな予備音を立てると、私の全身が眩い黄金色の火花に包まれた。

「ひゃあああああああああああああああ!!」

 後頭部の痛みが収まる前に襲って来た、まるで雷に打たれたかの如く強力な高圧電流の波状攻撃。私は黄金色の火花に包まれたまま、膣から盛大に潮とシビシラス一匹をぶち撒けた。既に今までの行動で体力を消耗仕切っていた身体に止めを刺す、痛恨の一撃。
 暫く放電が続くと、フッと黄金色の火花が消滅して浴室の景色が元に戻った。
「…………」
 もう呻き声さえ上げる事も出来ない。
 私はタイルの上で仰向けの大の字になった状態で、涙目のアヘ顔で手足をビクビクと痙攣させると、目の前が真っ白になった。



 


 私は薄っすらと瞼を開けた。
 気が付くと私はベッドで横になっていて、上にはふかふかの掛け布団が掛けられている。あったかくて気持ち良い。でも私、何してたんだっけ? それに此処は何処?
 寝起き頭のせいなのか、思考が上手く働かない。
「良かった、やっと起きたね」
 聞き慣れた、カラオケが冗談抜きで上手くて若々しい牡の青年の声。
 首を横に傾けると、ラキが椅子に座ってこちらを見ていた。
「……此処は?」
「ポケモンセンターの病室。クレアちゃん、僕がホテルで待ってても何時まで経っても姿を見せなかったから、心配になって魚温泉の旅館まで行ったの。それでご主人に訳を話して一緒に探してたら、お腹がカビゴンみたいに膨れた君が浴室で倒れててビックリしたよ。本当に心配したんだからね?」
 その言葉にハッと真顔になる。
 お、思い出した……。私の恥ずかしい羞恥プレイの数々が走馬灯の如く蘇る。
「ご、ごめんなさい……」
 私は心から謝罪した。
「そうだわ、私のお腹にシビシラスが……痛っつ!」
 掛け布団をめくろうと右足を勢い良く曲げると、腹部から激痛が走った。
「ほら、無理しないの」
 ラキが途中までで中途半端にめくれた掛け布団を綺麗に剥がした。私のお腹はもう妊婦の様にパンパンに膨らんでいない。元のスリムな白いお腹に戻っていて、代わりに糸で縫合された傷が付いている。
「ジョーイさんが開腹手術で一匹残らずシビシラスを摘出したからもう大丈夫だよ。お腹を開いたから暫くは絶対安静だけど、生殖機能は駄目になってないから傷さえ治れば再び子供を産める体になるんだって」
 私の肩から力が抜けた。牝として最悪の事態を脱した事に安堵する。
 元のスリムになったお腹をさすると、幾多もシビシラス達に電撃攻めにされた事が物凄く懐かしい出来事の様に思えた。ほんのちょっと前まではパンパンに膨らんだお腹を抱えていたから、なんだかちょっと寂しくなっちゃったな……。あんなに酷い目にあったはずなのに。
 でも。
 今度はシビシラスの擬似妊娠じゃなく、ラキとまぐわって出来た本物の妊娠したお腹をさすってみたいな……。
 思考に耽りながら、私は先程からラキが小音で見ていたテレビをぼーっと見ていると、突然変な声を上げてしまった。
「ファッ!?」

『次のニュースです。昨夜、フエンタウンの山奥の旅館で魚温泉に入浴していたカロス地方在住のニャオニクス牝の姿の観光客が、膣から大量のシビシラスを体内に侵入されて倒れ、病院に搬送されました。警察は安全管理に問題があったとして、この旅館を三ヶ月間の営業停止処分にしました。調べによると、経営者は「脱衣所に注意書きをしていた」と供述しており、危険性の高い魚温泉を()()()()()()()という事を客に十分に説明せずに提供したとして、業務上過失事件として現在余罪を追及しています――』

「ジョーイさんと相談して、これは警察に相談した方が良いと言われたから通報しといたよ。クレアちゃんをこんな酷い目に合わせて絶対に許せないよ! あのマクノシタおじさん」
「もうやだ、死にたい……」
 白い顔をマトマの実の様に真っ赤にしながら両手で覆って顔を伏せていると、ラキが何かがさごそとビニール袋を動かす音を立てて、こちらの方に来た。
「クレアちゃん、顔を上げて」
 涙目で顔を上げると、ラキが透明なプラスチック製の小ぶりの容器を持っている。
「クラボゼリー、痺れに効くからこれを食べて早く元気になってね」
 ラキが容器の蓋を剥がしてクラボの実の部分をスプーンで掬うと、茶碗蒸しの時と同じ様に私の顔の前まで持ってきた。
「あーん♪」
「……あーん」
 涙目で口に含んで噛みしめると、甘酸っぱくてほろ苦い味が口腔内に広がった。





 fin





後書き 


初めまして。初投稿で色々とおかしな所があったと思いますが、こんな作品を読んで下さった上に三票も票を入れて下さって恐縮です。本当にありがとうございます。
タイトルにもなってるお魚温泉ですけど、実はこれ、ドクターフィッシュという名前で実在します。作中の水着を着て入浴というのはあくまで外国の話で、日本では主に九州地方で足湯という形で体験する事ができます。リアルではしっかり安全対策をしてるので、もしも機会があれば本物のお魚温泉を体験してみて下さいね。


では以下コメント返しを。



>ボテ腹……いいですよね…! (2014/11/11(火) 01:04)のお方
マニアックなプレイなので受けるか不安だったんですけど、共感して下さってありがとうございます。
クレアの純白のボテ腹をイメージしながら執筆したんですけど、動かすとこれが中々官能的で、楽しく執筆する事が出来ました。ボテ腹って良いですよね。

>あえてノーコメントで……ふう (2014/11/16(日) 09:09)のお方
そこまで楽しんで頂けるとは思いませんでしたw
腹に身動きが取れない程小魚がぎっちり詰まった状態での蠢きって凄くエロいと思うんです。

>面白いかったんで。 (2014/11/16(日) 09:26)のお方
締切ギリギリまでどうすればもっと面白くなるのか追求して投稿しました。
ありがとうございます!


【追記】
一部加筆修正しました。
少し前に避難所でコメントを下さった方、ありがとうございます。


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*1 アニメRS編OP「アドバンスアドベンチャー」より

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Last-modified: 2014-11-20 (木) 01:16:19
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