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えむないん =P90 and M14= 4

/えむないん =P90 and M14= 4

作者:DIRI

えむないん =P90 and M14= 4 


第九幕 


 「夜は明けた、予定の時間が迫っている。一度合流地点(ランデブーポイント)に行くぞ」
「了解」

結局、俺は寝ずの番と言うことをしようと思っていた訳ではないにかかわらず、あれから眠れないでいた。単純に後ろめたさやらがあるからだ。そしてそれと同時に恐怖もあった。リジーに知られてしまって――俺自身で知らせるつもりではいるが、いざとなって言い出す勇気がでるのかという問題もある――最悪の場合離婚の危機だ。無論今追っているマシューや自然に潜む外敵などに注意はしていたものの、意識のほとんどは言い訳を考えることに回っていた。そしてその元凶であるアリスはアリスで、ある種の興奮でもあったのか寝返りを打つこともなく俺に背を向けて時折もぞもぞと動いていた程度に過ぎなかった。目の雰囲気からしてほとんど眠っていないと言うのは一目瞭然だった。
 長期戦で重要なのは兵力、弾薬、食料、そして士気だ。休まずにいて士気が低下気味で、兵力も不明勢力(アンノウン)と比べてどれほどなものかも分からず、弾薬もハルから買いはしたが、十二分にあるとは言い難い。食料となるレーションは我が国と同盟を組んでいる軍のものと比べると恐ろしく評判が悪く、品評会では前座の噛ませ犬か“落ち”に必ず使われるとも言われる程の代物である。腹にたまればいいと言うものでもないのが実状だ。食料の善し悪しは士気にダイレクトに関わっても来る。しかしあまり美味すぎると必要以外の時に食べてしまうと言う事態が起こりかねないのである種この不味さというのは正解なのかも知れない。
 それでもあまり好んで食べたいと思う代物ではないので、朝食代わりにさっき木の実を食べた所だ。モモンの実は小さいながらも俺の好みでバイタリティにもなった。その点アリスは甘いものが苦手ならしく、レーションをつついていた。食料の点で士気がわずかながら上がったとして、戦闘に対する気力がすぐさま回復する訳ではない。戦闘を避けつつランデブーポイントへ行くことが常套となりそうだ。

 「……アリス」
「?」
「分かっているとは思うが……昨晩のことは他言するな、俺の信頼と人生に関わる」

念のためにここに釘を刺しておく方が良いと俺は判断したのだ。今ここで言っておいた方が確実だろう、戻る間に何が起こるか分からないのだから。そう言う俺の考えを知ってか知らずか、アリスは単に、言う訳無い、と一言だけ言う。その際の小悪魔的な笑みが不安で仕方ないのだが、これ以上こんな場所で時間を食う訳にもいかないので、細部まで点検を終えておいた銃を手に、森の入り口のランデブーポイントへ向かった。
 相変わらず自然の危険を感じながら、俺達はゆっくりと進んでいった。地図は川へ落ちた時に濡れてしまったため、開いた時に破れてしまった。場所は完全に把握出来ていないため、手探り状態で進む他無い。それと俺はアレンの挙動が気になって仕方がなかった。先頭に立っているため、背後はアレンが守っている。襲われそうな気がしてならなかった。
 昨晩の事が頭から離れずにいた。それがある種トラウマになっているのかも知れない。彼女はおそらくまだ俺に好意を抱いたままだろう、そう簡単に切り替えられる者は居ない。そう考えるとやはりまた襲われると考えてしまう。二度目、二度目の不祥事は致命傷だ。それこそ本当に離婚沙汰になる。それが恐怖だった。結局、森を抜けるその時まで一番意識を向けていたのはアレンだった。

 「遅いわよ二匹とも」

森を抜けたその先にカーラと、未だにギリースーツを着ているオリバーがいた。何となくオリバーに意識が行くのはアリスの話を聞いたからだろう。

「すまん、爆破犯に襲われてな。川に落ちて無線がいかれたんだ」
「だから無線に出なかったんですね。心配してましたよ」

ギリーの中からオリバーがモゴモゴとしゃべる。偽装の草のお陰でおそらくスーツの中はかなり蒸し暑いだろう。それでも彼がギリースーツを脱がないのは、やはり今までアレンやオリバーがベストを脱がなかった理由と同じだろう。胸のふくらみやら、体格の事を隠すために彼女等はベストを着用していたのだ。

 「その爆破犯はどこにいるかわかる?」
「いや、確認出来なかった。だが正体は分かったぞ。マシュー・オッド、奴だ」
「連続放火・爆破犯の? これは大捕物になりそうね」
「ああ。だがあいつ、森の中だって言うのに火炎放射器(フレイムスロアー)を使ってくる。それに奴はリザードだ、燃料が尽きても自前で火炎放射する事も出来る」

その辺りが厄介だった。森が火事になるし、燃料切れを狙う事も出来ない。消耗戦になれば五分五分だろうか。こちらはあまり自然破壊をしていると国から文句を言われるため銃で対応するしかないが、相手は何でもありだ。数で押すしかない。

 「ですけど、そもそもマシューの居場所分かりませんよ? 僕らはまだ増援送って貰えないんだからこの広い森を僕達四匹で捜すのは無理がありますよ」

それが正論でもある。国の面積から見れば大したことはない森ではあるが、個人個人からしてみればやはり大きい。ここは上の指示を煽るのが常套だろう。

「カーラ、本部に連絡を。オリバーとアレンは周囲を警戒しろ。俺が現場の指揮を執る」
了解(Yes Sir)

いっそのこと街に帰りたかったが、“愛しい妻に会いたい”などと、どこかの誰かのように言っていられないのが隊長の辛い所だ。ともあれ上からの指示を仰ぐ事しかできないと言うのも実状である。
 カーラの無線は速やかに必要な情報だけがやりとりされているようだった。しかし、彼女の驚いた表情が何か事態の変動というものを暗示させた。俺には正直対処しきれない大事のような気がしてならない。

「……大変よ、デイブ」

カーラが無線を切って出た最初の言葉がそれである。もう面倒ごとは嫌だと言っていられない。彼女に続きを促すと、予想だにしない事が起きていたらしい。

「マシューがラグーンの銀行に爆弾仕掛けて何かわめいてるらしいわ。中央の大きい所ね」
「指名手配までされてるあいつがどうしてそんな所に爆弾を仕掛けられるんだ。警備が手薄とか、もうそれ以前の問題じゃないか。全く冗談じゃない」
「そうねぇ、私あの銀行にお金預けてたのに」

そう言うことじゃないとは言わなかった。言った所でその冗談を本気にするなと言われるだけだろう。そもそもマシューを森から取り逃がしたに関わらず、その森の入り口でまごまごしているというのも何となく不快だった。なんの正義感が俺に働きかけている訳ではない、ただ思い出したのが昨晩の事であっただけだ。
 その時、空から何かが落ちてきた。俺より若干小さいぐらいの茶色い毛玉……。それは勢い余って何度か転がり、オリバーとカーラの間で両手を着き止まった。反射的に俺を含めて全員がそれに銃を向ける。毛玉は何度か深呼吸をしてから立ち上がり、俺達の顔を一瞥した。長い耳に尾の先と首周りの長い毛だけが白く、他は焦げ茶色をした彼はイーブイである。右目にバンダナを掛けるようにして巻き、俺達とは異なる兵装をした彼は楽しそうににっと笑って言った。

「“待たせたな”」

彼には見覚えがあった。

 「……ルー?」

彼は頷いてから俺とアレンに何かを投げ渡した。新しい無線らしい。

「プレゼントだ。壊した奴は俺に渡してくれ、しまっとく」
「悪い。お前、これを渡しに来ただけじゃないだろう?」

肯定の言葉を返しながら、ルーは壊れた無線機をベルトにしまうと自分の無線機へと手を当てた。

「上の連中がお前等連れて来いってな、ミッチーの背中に俺を乗せた訳だ」
「あれミッチェルさんなんですか」

上空に鳥ポケモンがいるのが分かったが、あれが収容所の看守のミッチェルとは。

 「彼、任務には関わらないんじゃなかった?」
「直接任務に関わる訳じゃないから良いんじゃないか? 俺を送るだけだしな」
「あら、それじゃラグーンへの足は私の車になるのかしら? あら怖い、雄四匹に雌一匹が乗った車なんて。何されるやら」

ルーは眉をひそめてまた俺達の顔を一瞥した。

「……“雄四匹”、ね。ちなみに俺は嫁にぞっこん。気を付けるのはこいつだ」
「俺か……。それは置いておいて、さっきから誰に無線を繋いでるんだ? 相手に言葉を伝えてすらいないが」

にやりと可笑しそうにルーは笑った。しかしその理由を教えてくれるという事はなかった。

 「特別な足を用意してある。そりゃもうぶっ飛んだ奴をな」

彼の言葉は要領を得ない。ぶっ飛んだ、と言えばまず出てくるのがハービーだ。走り屋状態の彼はぶっ飛んでいるとしか形容出来ない。しかしハービーを呼んだならハービーと車でやってくるはずだ。ここで落ち合う事にしているとしても、事前に場所を教えているだろうから今更無線で連絡する必要など無いはず。では誰だろうか、俺の知り合いでない可能性も十分に有り得るが……。そう思っていた次の瞬間に、地面を揺らしながらご丁寧にスラット装甲*1を装備した装輪装甲車(ストライカー)が慣性で滑りながら俺達の前に停車した。突然の事に戸惑うしかなかったが、ルーは依然楽しそうに笑っていた。

「はいは~い、アポカリプス・ビースト・アームズ・カンパニーからストライカー装甲車で送迎に参りました~。デイブにカーラにアレンにオリバーは一日ぶり、ルーとは一月ぶりかな~?」

威勢の良い声と共に顔を出したのはハルだった。質問をする前に後部のハッチが開く。

「時間無いよ~、早く乗った乗った!」
「相変わらずだな、ハル」

ルーはケラケラと笑いながら中へ入っていった。俺達は若干戸惑いながらそれに続いていく。ルーが目の前に現れただけでも正直驚きだったが、彼がハルと知り合いだった事も驚きだ。ルー自身の事も、何となく固いような感じがしていたが、見かけ通りの優男ぶりで彼の持つ異名の雰囲気はこれっぽっちもなかった。彼には数え切れない程の武勇伝があるのだ。

 「周囲のものには触れないで下さい、グレネードとかも置いてるからね。それとー、窓から手を出さないようにお願いしま~す」
「窓はない」

俺の突っ込みでルーが吹き出した。彼はここに来てからずっと笑顔を絶やさない。彼に密かにファンクラブがあると聞いたがその笑顔が原因だろうか。

「それじゃ、出発進行! 飛ばしてくよ~!」

身体が慣性にぐんと持って行かれそうになる。最初からかなりのスピードで走り出したらしい。カーラはどこか落ち着かない様子だが、オリバーは周囲に置いてある銃の数々に興味津々だった。アレンも、俺に言われた事をちゃんと守ってくれているようでいつも通りの死んだような目をしている。

 「デイブ、お前ハルといつ知り合った?」

ルーが突然言葉を掛けてきた。彼の左目には吸い込まれてしまうような何かがある。

「この前の世界金融詐欺の時、あの電気鼠(ピカチュウ)が吹っ飛ぶ直前だよ」
「ドレビンか」

ルーが面倒そうな表情になる。俺は特に彼の気に障るような事をした覚えも言った覚えもない。

「あぁ、いや……。ピカチュウが嫌いなんだ、俺。なんでかは分からないが見ていてイライラする」
「じゃあ紙幣を見ていつもイラついてるんだろうな」
「ああ、この国の初代首相がピカチュウってのは気に食わん。だが今更それ言ってどうするよ。……そうか、世界金融詐欺の時か……」

何かを思い出すようにルーは中を眺めた。あの時オメガ・チームはみんな何らかの理由があって参戦していなかった。

「……そう言えばお前、妹の結婚式だとかで休暇取ってたそうだが……」
「そうそう、あの時はタイミング悪かったな。それでお前の所のチームしばらく戦線介入出来なかったろ? あのバカ鼠(ドレビン)も自爆したからお前勲章も何も貰えなかったそうだし」
「ああ……まさに踏んだり蹴ったりだったよあれは」
「でもまぁ、妹の結婚式に欠席するなんて事出来ないじゃん? 昔から俺が保護者代わりだったしさぁ、俺が欠席するのって親が結婚式に来ないみたいなもんだぜ? ま! 父さん達の代わりにちゃんと泣かせて貰ったけど」

ルーの発する言葉は俺が今まで抱いていた印象をことごとく崩していくものだから質が悪かった。俺には困惑するしかないのだから。

 「話戻すが、俺は何年か前からハルと知り合いでな。結構長い事付き合わせてもらってる。あいつああ見えて色々あった奴だからな、話聞いてるだけでも飽きないし……」
「ルー、本名とかその他諸々ばらすよ?」

あからさまに不機嫌なハルの一言がルーの言葉を遮った。そんな事をされては敵わないとばかりにルーは慌ててハルに謝った。しかし聞いてしまったものは気になるものだ。いつかまた聞いてみよう。
 ルーが必死にハルの機嫌を取っている時、本部から無線が繋がった。少々慌てている様子が窺える。

『こちらHQ! 指名手配犯マシュー・オッドに多数の仲間がいる事が分かった。現在その仲間がラグーンシティの中央通り(コーラルバレー・ストリート)を占拠している! 敵勢力にはわずかながら最新鋭の兵器が導入されている模様。混合隊(ミックス)、現在そちらの位置を監視衛星よりモニタリングしている。ラグーンシティにそのまま向かうと敵前線に正面突入する事になる。迂回して敵を避け、突入しろ』
「こちら現場指揮のデイブ。情報が足りない。戦況と敵の布陣を簡単に説明してもらいたい」
『戦況は12時35分より敵勢力と自衛陸軍の戦闘が開始された。リーダーであると思われるマシュー・オッドは中央銀行へ突入しなければ爆破はしないと宣言しているため現在当方優勢。しかし最新鋭の兵器に妨害され進攻出来ずにいる。敵勢力はコーラルバレー・ストリート全域を占拠、中央銀行周辺のビルの幾つかもまとめて占拠されている。ビル内部の敵勢力は人質を盾にしているため狙撃は不可能、マシュー・オッドも同様』
「おおよその理解は完了した。任務の指示を」
『今回の任務は“ビル内の人質の解放”、および“マシュー・オッドの逮捕、あるいは殺害”だ。敵勢力へ向けての発砲・殺害を許可する』
「了解。ビル内の人質の解放およびマシュー・オッドの逮捕、あるいは殺害を実行する。over」
『健闘を祈る。out』

無線を切ったあとに、俺はため息を一つ吐いてこう言った。

「オフなのに引っ張り出された奴は気の毒だよな」
「まったくだ」

ルーも釣られるようにため息を吐いたのだった。

 「四の五の言ってもどうしようもないでしょ。運転手さん、迂回して貰えるかしら」

カーラはヒラヒラと手を振って少々面倒そうに言った。おそらくハルに話しかける事自体嫌だったのだろう。彼女は何故かハルの事となるとよそよそしくなる。

「残念だけどね~、それだと時間がないんだよね。マシューは今のままだと二時間後に自爆するよ。『最高、最高、最高!!』ってね。それを止めるにはキミ達があいつに危機感与えとかないと。銀行の中には職員と客がいるんだから自爆されたらもちろんその人達もあの世行き(ごーとぅへる)だねぇ……。私としては誰が吹っ飛ぼうが脳みそぶちまけようが腕もげようがどうだって良いんだけどキミ達はどうなのかな?」
「ハル、行こうぜ。“正面突破だ”」

そのルーの言葉に俺達は唖然とした。

「何考えてる!? 敵のど真ん中に正面突破なんかしてみろ! あっという間に蜂の巣だ!!」
「だからどうした、人質が吹っ飛ぶかも知れないんだ。早いにこした事はない」
「それでも僕達がやられてちゃ元も子もないですよぉ!」
「“やられなきゃ良い”、それだけだ」

そう言う彼の瞳は自信に満ちあふれていて、まるで死ぬ事など鼻から考えていないようだった。

 「みっなさ~ん、街が見えてきたよ~」

ハルのその一言でルーを除いた全員に選択を迫られていた。戦うか、それともここで降りるか……。そして答えは二つに一つしかないのだ。

「仕方ない、どうせハルは止めるつもり無いだろうからな……。強行突破だ!」
「そう来ないとな。デイブ、俺と一緒に上に出て応戦するぞ。他は待機、俺かデイブのどっちかがやられたら表に出て戦え」
「おい、洒落にならないような事言うな」
「そうなる気はない、だろ? お互い嫁さんが家で待ってんだから、な」

彼の価値観はよく分からない。価値観と言うよりももっと根本的なものが俺には理解出来なかった。利他的、と言えば良いのだろうか。俺は利己的に生きてきたと思う。しかし彼は俺とは違う考えで生きてきたのだろう。とても真似出来ないし、真似したいとも思わない。

 「ハル、これ借りるぞ」
「いいよ~、持ってっちゃって~」

ルーは置いてあったミニミ軽機関銃(Mk46 Mod 1)*2を手に取ると天井のハッチを開けて外に出て行った。俺もそれに続くが、ストライカーの上はハルが無茶苦茶な速度を出しているためかなり風が強い。

『振り落とされないでね~。敵さん、来たよ~!』
「デイブ、機銃(ブローニング)*3を頼む。俺は自前の装備で対処する」
「分かった」

彼は見たところ先程ハルから借りたミニミ以外にはガバメントしか持っていないようだが大丈夫だろうか。しかし俺も似たようなもの、むしろ火力はミニミがある以上俺の方が下だ。彼の異名を信じて俺はブローニングの操作に移ろう。
 確かストライカーに装備されているブローニング(M151RWS)は機内から遠隔操作出来るはずだが、キャビンに俺がいる以上俺が操作した方が効率が良い。遠隔操作をしなくては長所を生かせないが、不慮の破損で作動しなくなるのはなお悪い。危険を承知でかかればRWS*4はまだまだ歴戦の戦士に劣るのだ。

「敵、10時の方向。連中、街の外まで道作るみたいに待機してやがるぞ」
珊瑚礁(ラグーン)の周りには小魚(雑魚)が群れを成してるものだ。蹴散らしていこう」
「ま! ぼちぼちにな」

敵勢力は待ち伏せ(アンブッシュ)をしているつもりではないらしい。ルーの言う通り、まるで道のように、あるいは道しるべのように街へと続いていた。
 まず、装甲車輌のキャビンにいて一番恐れるべきは爆発物である。銃弾は機銃を操作していれば正面はある程度装甲で守られているし、

そうでなくとも姿勢を低くしていれば弾丸の脅威は減る。だがグレネードなどが爆発すればひとたまりもない。スラット装甲のお陰で成型炸薬弾(HEAT)が機体に当たって爆発する事はないが、グレネードはどうしようもない。投擲弾なら良いが、グレネードランチャーを使われれば一巻の終わりだ。だが危険ばかりに目を向けるのは行動の妨げになる。今は敵陣突破を考えるべきだ。

 『ガンガン行こうぜ~! ここはクールな曲名(ナンバー)で行こ~! さぁ、歌おう(れっつしんぐ)!』

ハルの声と共に周囲に激しい銃声とでたらめなロックの音楽が流れ始める。ミニミとブローニング、ライフルが周囲にあっという間に鉛玉のカーテンを作り上げ、数秒経たないうちに辺りは骸と断末魔舞い散る鉄火場と化した。

キミのためならば地獄まで でも僕は地獄まで行く気はない だから僕は銃持ち駆けるんだ Runs through! キミに会うまで僕は死にやしない、そうさ地獄行きはお前さ だから僕は銃持ち駆けるんだ Runs through! for lover. 例え噛み付かれようと撃ち抜かれようと、僕は死なない、負けやしない You are bait of 45 calibers!!
「ハル! その曲の作詞した奴にもうちょっとマシな歌詞の書き方教えてやれ!!」
『酷いなぁ、私は確立してる呪文歌以外に人の歌は歌わないよ』

ルーがハルの歌に――今まで俺は彼女が自分で作ったとは知らなかった訳だが――酷評を飛ばした。ふとルーの方に目をやると、彼はいつの間にかブースターに進化していた。彼はイーブイが生涯で一番悩むであろう進化を迷うことなく遂げたのだ。体躯が大きくなった事で、銃の反動(キック)をある程度まで抑える事が出来るようになっている。集弾率が上がっているようだが、それが狙いだろうか。
 一瞬だけ彼に気を取られていたとき、体が大きく揺さぶられた。どうやらストライカーの足下にグレネードか何かを撃ち込まれたらしい。振り落とされそうになるものの、なんとか機銃にしがみついてそれは逃れた。ルーも姿勢を低くしてなんとか落ちなかったらしい。しかし体勢を立て直すためか、ストライカーは敵の真ん中で停車してしまった。

『おぉっと、邪魔くさいのが来たねぇ。二匹とも、何とかして~』
『デイブ! パワード・スーツよ!』

カーラから無線で呼びかけられ、初めてその存在に気が付いた。かなり高いレベルの擬態を施してあるため多少動いても気が付けなかったらしい。機銃の正面には赤外線カメラが搭載されているので、ストライカー機内のモニターでそれで発見したようだ。

「デイブ、二体いる。右側の奴頼むぜ。俺はもう一体を吹っ飛ばす」
「吹っ飛ばす? 了解した」

少々解せない言葉があったものの、対処はしてくれるらしい。肝心のパワード・スーツは輪郭をぼやかしているため、敵の妨害で停車中であっても正確な狙いが付けづらい。だが下手な鉄砲も数撃てば当たるのだ、存在の確認出来る方へ掃射してやれば倒せるだろう。ただでさえ使用弾薬の威力が強いのだから。

 「パワード・スーツ撃破!」

俺が一体片付けたのはそれから三秒後だった。パワード・スーツの装甲が一撃目を致命傷に至らせなかったが、もう一発を防ぐ事は出来なかったのだ。問題はルーの相手にしている方だ。彼の銃ではいささか火力不足だろう。相手が無抵抗にやられる訳がないのだから急いで俺が応援すべきだ。だが次の瞬間にその必要が無くなった。俺の横を熱風が吹き出してパワード・スーツが吹っ飛んだのだ。俺をかすめた熱風はRPG-7の後方噴射(バックブラスト)だったらしい。総合的に見た大火力の火器と比べると割と軽量なRPG-7ではあるが、ブースターが、ましてやイーブイがどこかにしまっておけるような代物ではないはずである。だがルーは既に次の成型炸薬弾を砲口に詰めているのだ。

「それどこにしまってたんだ?」
「ポケットだ、アニメでよくあるだろ」

茶化されてその場は終わった。ハルがまたストライカーを急発進させたからだ。ハルもそうだが、ルーにもかなり謎が多い。
 今更ながら、敵の数はかなり多い。ここまで来るとテロだ。ここまで無法者がこの国に存在するとは思えない、ドレビンの時に三分の一を殺害し、後に残りの五分の一は傷が元で死に、ほとんどは逮捕したはずだ。となると彼等はおそらく外国から雇われた、あるいは否応なしに銃を持たされているかだろう。止めなければ、などという使命感があるわけではない。ただこの国にも腐った奴がいるのだなと思っただけだ。表が腐っていれば根本も少なからず腐っている。悪貨は良貨を駆逐するのだ、一片の塵も残す訳にはいかない。全てはこの国のためで、平和のためだ。

 「ハル、そろそろ街に突入するぞ!」
『わかってるよぉ。中に戻って、多分……』

機体が大きく揺れる。点在し始めた建物の影から装甲車が現れ、ストライカーに体当たりしたのだ。向こうもストライカーらしいが、低姿勢砲台を装備している。

『舌噛んだ……。揺れるよ! 掴まってて~!』
「ちょっ、やべっ……!」

ルーは振り落とされそうになっていた。足を滑らしたらしい。だが今彼に手を差し伸べてやる暇がない。俺もしがみつくのに必死だったからだ。

『やばっ!』

低姿勢砲台を発射されたが、当たる事はなかった。だが幸運はそう続くものではない。かわし続けるのは難しいだろう。

機動砲システム(MGS)ぅ!? ルー、デイブ! 何とかして~!』
「簡単に言うよなお前。ったく、デイブ! 一気に潰すぞ、お前は砲台を狙え、俺が本体を潰す」
「了解!」

 対物ライフルにも使われる弾薬を使用するブローニングであっても、最新の装甲を貫徹するのには少々難がある。しかしやるのとやらないのでは大きな差だ。敵車輌の砲台に向かって俺は発砲した。辺りに火花が散るが、そんなものに構っている暇はない。ルーのRPGも敵のストライカーに直撃する。まだ致命傷とは言えないだろうが、かなりのダメージを与えているはずだ。それに砲台はもう使い物にはならないだろう。

『おっけ~! ノってきたぞぉ~!』
「俺もだ! ぶっ飛ばせ! ヤッハ~!」
「お前等……」

ルーとハルが悪ノリを始めたが、そろそろ街に着く。ここからは更に揺れるはずだ。

「ルー! そろそろラグーンだ、車内に戻るぞ」
「ああ、わかった。あのストライカーをスクラップにしてから戻る。先に入っててくれ」

その言葉と共にまたRPGが発射された。おそらく耐えてあと一発だろう。案じる事はない。


 「っと、待たせたな」

二分程経ったあとにルーは車内に戻ってきた。だが彼は何故かイーブイに退化していた。その理由を聞いても適当にはぐらかされたが、彼には色々と秘密があると言う事は分かった。外に漏らされていない何かがある。

「わぁっ! ゴメンちょっとヤバいかも!」
「な、何があったんですか!?」
「ボスゴドラがパワード・スーツ着て前で……のぉぉっ!?」
「うわっ!」

次の瞬間に、車体が大きく傾いてストライカーが横倒しになる。無論突然の事だし対処は出来ず、五匹揃って思いきり全身を打ち付けて倒れていた。怪我をする事こそ無かったものの、衝撃で気力をかなり削がれていた。

 「あぁ! ちょっと! ルー退いてよ!」
「悪い。……お前の毛ツヤツヤだな。何使って手入れしてる? 嫁に買ってやりたいから教えてくれ」
「言ってる場合か、出るぞ」

ルーの戯れ言を受け流しつつ後部のハッチを開けて外に出る。外に敵は居なかったものの、横倒しになってからストライカーが滑っていったらしく、横道を塞いでしまっていた。ここから少し進むと、この街のメインストリートとなるコーラルバレー・ストリートに繋がっているはずだ。

「ハル! ハル、生きてるか?」
「生きてるけど首が取れた……」

ストライカーのドアが開き、まず出てきたのが手で持ち上げられたハルの頭だった。しゃべっているので無事なのだろうが、いきなり頭だけ出て来られてはぎょっとする。そのあとすぐに身体とくっついたが、ハルはストライカーから転げ落ちた。
 その時、ハルが被っていた三角帽がポトリと落ちた。ムウマージの特徴であるとも言えるあの三角帽は本当に帽子だったらしい。帽子の中身はムウマの時のようなクシャクシャの長髪があった。全員がハルの帽子の中身を見てポカンとしていると、ハルは慌てて帽子を被って髪を帽子の中にしまい込んだ。そしてそのあと何故か真っ赤になりながら俺達を見る。

「……見た?」
「癖っ毛だったな」
「絶望したぁぁぁっ!!」

ルーの一言でハルは絶叫しながらのたうち回り始めた。どうやら髪の毛が癖っ毛だったことを気にしていたらしい。別におかしいという事はなかったが彼女が気にしているのだから俺が何を言った所で無駄だろう。
 その時、コーラルバレー・ストリート方面の道に複数のパワード・スーツが現われた。ストライカーを転かしたであろうボスゴドラもいる。全員銃を抜いて構えたが、ハルがそれを手で制した。

「何よ!? 敵がいるの見えないの!?」
「見えてます。見えてるからキミ達に手出しはさせませ~ん」

まさかハルが裏切ったか、などという考えがよぎったが、今更それはあり得ないだろうし、ハルの目が明らかに怒りの色を帯びていた事に気が付いた。そしてその対象は俺達ではない。

「……私は滅多に怒らない方だし、何されたって腹を立てるような事はない。けどねぇ~……この帽子脱ぐ事だけは絶対にしたくない、ぜぇ~……ったいにそれだけはしたくない。でも奴さんは見事にやらかしてくれちゃいましたねぇ……。本当は私が介入したくはなかったんだけど……」

ハルは改めて帽子を脱いだ。故意にウェーブを掛けたのかと思わせるその癖っ毛が、触手のようにうねうねとうごめき、その様は蛇を彷彿とさせた。

「さあさあ、遠き者は音にも聞け! 近き者は目に物を見よ! 魔女っ娘ハルの、滅びの歌(Song of ruin)! 怒りのメロディに乗せてお届けしてあげる!」

帽子を手に恭しくハルは礼をした。
 敵もそんな挑発をされていればメドゥーサのような姿のムウマージにいつまでも呆けている事は出来ない。パワード・スーツ達はハルに向かい突進していった。ハルはそれに対して片手を突き出すと、一言だけ呟いた。

飛散せよ

次の瞬間、突っ込んできたパワード・スーツの一匹の装甲が内側から吹き飛んだ。相手には訳が分からないだろうが、こちらはハルが何者か分かっているために何故そうなったのかは理解する事が出来た。魔法だ。滅びの歌という技自体廃れたものの一つである。滅びの歌という技は歌に含まれる特殊な音波が聴く者の気力を削ぎ落とすというものだ。歌い手により度合いは異なるが、下手をすると精神崩壊を引き起こしかねない歌もある。しかしハルは魔女だ。まさしく聴く者に滅びをもたらす歌を歌いかねない。だがその声は以前聞いたときと同じく、透き通りきった声であり、耳を塞いでしまう事がもったいなく感じてしまう。

 「地獄の門より咲きし花 咎人の血を吸う(いばら)(むしろ) 更なる血を求め我が力の元に出で 魂喰らいし幻影の(ほむら) 我が前の(よこしま)()む 煉獄の主の微笑生者を(ほふ)り 散りゆく魂魄(こんぱく)刈り取る死神の歌 今ここに集いて我に仇なす者共を打ち消さん

その歌は呪文の歌であろう。詩を朗読するような朗々とした調子でその歌は続いていったが、何か変化が起こったという事はない。俺達もパワード・スーツ達もしばらくはその歌を聴いているだけだったが、パワード・スーツ達は行動を再開した。しかしハルは行動を完全に読み切っているように、撃たれようが殴りかかられようが踊るように、のらりくらりと避けている。

灼熱の炎、紅蓮の(つるぎ)に姿を変え 金色(こんじき)(いかずち)、万物を穿(うが)つ槍となり 紺碧(こんぺき)霧氷(むひょう)幾数多(いくあまた)の弾丸へと転化する

ハルは両手を広げ、くるりと回った。その瞬間に全身に恐ろしい程の倦怠感が表れた。そのまま倒れ込みそうになる程に……むしろ重力が数倍になったような、そんな感じだ。全身の毛が無意識に逆立っていくが、それらの症状は俺だけではないらしい。他のみんなも、パワード・スーツも同様に身体に力が入らないようだ。

「……ハルがマジギレか……こりゃ、あいつ等に同情するな」
「ルー、お前なんで平気なんだ……?」
「お前と違ってハルのやる事の扱いにゃ慣れてる。それより、とんでもないのが来るぞ」

ルーはハルを指さして一瞬だけ笑った。ゲームのエフェクトを見て楽しんでいるような表情だ。

“悪魔の口付け”を歌声に乗せ 魔の眷属(けんぞく)と契約せし“ハロイ・エニル・タニタ”の名の(もと)に怒りを孕む魔性の言の葉を送る 我が力の及ぶ者共よ、刮目(かつもく)せよ!

ハルが歌い終わったとき、地面が小刻みに揺れ始めた。地震かと思った次の瞬間にパワード・スーツ達の足下に、魔法陣とでも言おうか、謎の紋様が浮かび上がった。パワード・スーツが狼狽している様が見て取れるが、滅びの歌の効果が続き動く事が出来ないらしい。
 次の瞬間に変化は起こった。紋様の中に閉じこめられているパワード・スーツ達の全員が何かに怯えるように悲鳴を上げ始めたのだ。何が起きた訳ではない、唐突にだ。その次に目に見える変化が現われた。魔法陣から炎が上がり、更には電撃が迸ったのだ。電撃は捉えたパワード・スーツを貫き、炎は舐めるように彼等を焦がしていく。そして極めつけに、棘のようなものが湧き上がり、パワード・スーツを絡め取り装甲がその棘で貫かれた瞬間……彼等は瞬く間に白骨化し、パワード・スーツの装甲ごと塵になって風に散った。

「お後がよろしいようで。ニャハハ」

帽子を被りなおしたハルは、それは楽しそうに一礼をした。

 「まさしく滅びの歌(ソング・オブ・ルーイン)だな。派手で好きだが、死体も残さないのはどうかと思うね、俺は」
「柄にもなく本気で歌っちまったぃ。堪忍してくれぃ」
「そ、それ以前に……俺達には何もないんだろうな?」

ハルはいたずらっぽくからりと笑うだけだったが、ルーが心配ないと言ったのでおそらくは大丈夫だろう。もう滅びの歌の効果は切れたのだ。

「さあさ、この先マシューがお待ちだよ。敵もいるけどそれはそちらで片付けて~」
「もうお別れですか……」
「泣くんじゃないマイハニー、きっとまた会えるさ……」

ハルが悪ノリを始めた。オリバーは困惑しているが、どことなくまんざらでもなさそうな顔をしていたのは気のせいだろうか。

「では、デイブは引き続き頑張って~。他の皆さんもほどほどに。いつも見てるよ!(Eye have you!)

ハルは手を振り、俺達を見送っていた。……“頑張って”の意味を何となく別の意味で考えてしまったのだが、それは思い過ごしなのだろうか。


第十幕 


 全ての敵を相手にしている暇はない。そんな事をしてはいつぞやかの弾が無いという状況に陥りかねない。極力敵との戦闘事態を避け、素早く目的地へと進んでいった。

「……急がないとまずいな。ハルによるとあと15分でマシューが自爆するぞ。銀行周辺に行けば思いとどまるらしい」
「敵が邪魔ね、補給があるか分からないから無駄遣いしたくないんだけど」
「俺が片付ける」

ルーはホルスターからサプレッサーを装着したM9を引き抜いた。さっきまではガバメントが入っていたはずだが、いつの間にか変わっていたのだ。パワード・スーツが大量にいる訳ではないが、ハンドガンでは少々火力不足だ。ルーなら他の武器を持っていそうなものなのだが、何故それを選んだのか。ルーは様々な武器をキャリーすることで有名だ。彼がどこに武器をしまっているのは謎のままだが、それはさておいて彼はその他にも色々な異名を持つ。

「眠ってろ」

ボソリと呟かれたその言葉と共にルーのM9から弾が発射され、数匹いる内、一匹の敵の肩に命中した。しかし血が出る事はなく、代わりに何か突き刺さっていた。無論突然の事に狼狽している敵ではあったが、唐突に昏倒した。

「十分は起きない。他の奴の注意が逸れてる内にCQCで倒しとくぞ」

そう言い残すと、ルーはまだ数匹いる敵の前へ突っ込んだ。
 援護射撃は出来ない。白兵戦の最中では味方への誤射(フレンドリーファイア)が懸念される。だが根本的に、彼に援護は必要ないだろう。彼の実力は俺をゆうに凌ぐ。その力を見せつけるように、ルーは一番手前にいるマグマラシを瞬時に地面に投げて叩き付けた。体躯はおよそ頭一つ分の差があるはずが、マグマラシはいとも簡単にルーから投げられて伸びてしまった。それで敵が気付かないはずがない。その内のユンゲラーがスプーンを振り上げ、彼に殴りかかった。ユンゲラーのスプーンというのは念力の伝導率が良いため、念力を込めればそれこそハンマーにもナイフにもなるような代物である。しかしルーは振り下ろされた拳を腕で受け流し、ユンゲラーの腕を引っ張り勢いを付けてそのままユンゲラーの腹へと体当たりを喰らわせる。息が詰り行動不能のユンゲラーを彼は巴投(ともえな)げでユンゲラーを投げ飛ばした。
 残ったのはブイゼルだけ。しかしブイゼルも果敢にルーへ向かっていく。ライフルで殴りかかってきたブイゼルの攻撃をかわし、回転しながら尻尾で足を払った。不意をつかれたからか、ブイゼルは人形のように地面に倒れ込んだ。ルーはその隙にサンダースへと進化した。不思議な事に、進化する際に発生する光がかなり微弱なものだった。
 ルーは背後へ裏拳を繰り出した。ユンゲラーが復活していたのだ。体躯が大きくなった事で、ルーの一撃はイーブイの時の倍以上は重いだろう。ユンゲラー自体肉体的に強いと言う事はないはずでそろそろ限界が近いはずだ。彼は追撃を加えようとはせず、その代わりにユンゲラーを羽交い締めにした。背後に回り込み足を払って体勢を崩させた後にナイフをユンゲラーの首に押し当てたのだ。無論サンダースは二足歩行に向いている訳ではないため若干足下がおぼつかないが、首にナイフを押しつけられて抵抗する者などいるはずがない。
 その時、ブイゼルがライフルを構えた。しかしルーはユンゲラーを盾にしているためブイゼルは攻撃をためらっている。そしてブイゼルの一瞬の隙を突き、ルーはユンゲラーをブイゼルに向かって突き飛ばした。無論距離が大して離れていないために二匹はぶつかってよろめいてしまう。その隙を狙ってルーは電撃を飛ばした。ユンゲラーは体力的に限界が近かっただろうし、ブイゼルは弱点である電気だ。数秒後、二匹はぐったりと地面に伏した。

「まだまだだな」

ルーは意識のない彼等に一言くれてやった。

 「さすがです! このくらいルーさんなら不可能じゃないですよね!」
「ちょっ、声デカい。声に気付かれたらどうする」

オリバーは口に手を当てて声を押さえ込んだ。雌にしか見えない……と言うか、本当に雌なのだが、雄という先入観が未だに拭いきれない。

「進むぞ。この先を進めば目的地だ。時間も迫ってる、急ぐぞ」

ルーは物陰に目をやりつつ先へ進んでいった。

「……ルー、さっきのM9……何を撃ったんだ?」
「俺のM9は麻酔銃に改造してあるんだ。スライドロック機構*5とサウンドサプレッサーを装備して弾丸にはピストン・プリンシプル弾*6を使ってる。上手く当ててやれば撃たれた相手は死なずにその場で夢の中だ。象もぶっ倒れる麻酔薬だからしばらくは起きない」

噂で聞いた事があった。ルーは殺人を良しとしていない。やむを得ない場合以外は絶対に誰かを殺すような真似はしないらしい。事実彼は今倒した敵達にとどめを刺そうとはしなかった。カーラが彼等を撃とうとした瞬間にルーはカーラを睨み付けてやめさせた。隻眼であると言う事が眼光を鋭くしているものの、その程度でカーラがやめるはずはない……。しかし、カーラは彼から睨まれた瞬間にビクリとして銃を下ろした。何がカーラをやめさせたのかは謎だが、ルーの噂は本当だったようだ。
 その後もルーのお陰で誰一人殺害することなく目的地の銀行周辺へやってきた。時間までまだ少し余裕がある。ハルの言う事が正しかったならば、マシューは自爆する事はないはずだ。

『ミックス。こちらHQ、無事銀行周辺へたどり着いたようだな』
「ああ、いかんせん敵が多かったな。基本的に俺はワンマンアーミーだが味方がいるならもう少し対処して欲しいもんだ。複数人での行動は俺はそこまで得意じゃないしな」
「私達が足手まといみたいな言いぐさね、ルー?」
「近ーよ、俺からして見りゃな。特にお前なんて見た奴殺しにかかろうとする辺り潜入とか絶対無理だろ。一瞬で終わらせても戦闘は戦闘だ、ジャングルなんかで野戦になれば補給もない事が多いんだから無駄に戦う必要はないんだよ」

二匹の言い合いが終わるまで待っているHQはなんというか、このやりとりを楽しんでいるような気もする。

『その辺にしておけ、ルー。仕事の話に戻るぞ。現在マシュー・オッドは銀行の奥へ引っ込んでいる。それで攻撃されないと思っているらしいが、奴は天窓に気が付いていない。そこから狙撃が可能だ。しかしヘリを出す訳にはいかない、狭い空間の上にその辺りはビル風が強い。幸い、両脇のビルがスナイプポイントとしてちょうど良い』
「でも、周囲のビルでマシューの仲間が人質を取って立てこもってるんですよね?」
『その通りだ。それに爆弾を仕掛けているらしい。キミ達には爆発物処理の経験がある者は居ないはずだ。今そちらにゼータ・チームが向かっている。爆弾の処理は彼等に任せればいい。キミ達には人質の解放およびマシュー・オッドの狙撃の任務を命じる。手段は問わない。非常時以外には殺すな。こちらからタイミングがあるまでは狙撃するんじゃないぞ。撃ち漏らしを想定してエータ、ミュー、オミクロンを周囲に配置するまで待つんだ。狙撃の際は無線を繋げておけ』
「了解した。俺は一匹で良い、東側のビルを制圧する」
「わかった。ガンマ・チームの二匹は共に行動して人質の解放を頼む。オリバー、狙撃はお前に任せる。俺が観測士として同行する」
「了解!」


 静まりかえった廊下。音を立てる事もなく、速やかに俺とオリバーは進んでいた。少し前にカーラ達とは別れた。彼女たちは敵の姿を見かけてそれを尋問して人質の居場所を突き止めていた。どうやらビルの三階、多目的ホールに数十匹が監禁されているらしい。スナイプポイントとして適当なのは七階、大分遠くになってしまうが、一小隊での行動は遮蔽物の少ない屋内では危険な場合が多い。増援は期待せずに進んでいくしかないだろう。人質がいる階におそらく敵は集まっているはずだろうが、他の階にいないと言うのは安易な考えすぎる。しかし、目標の階にたどり着くまでに戦闘はなかった。

「……敵の姿は見えません」
「わかった、気を抜くな」

 スナイプポイントになる部屋の前までやってきたときに無線が入ってきた。カーラ達からだ。

『こちらガンマ。人質の一匹一匹にC4が仕掛けてあるわ。下手に動かすと爆発する可能性がある。今バーニーと合流して解除を進めてる。バーニーには頑張ってもらってるけど、多分彼だけじゃ丸一日かかるわ。そっちはどの位かかりそう?』
「敵はいない、順調にいけば十分以内に終わる」
『そう……。所で、今はまだ時間があるかしら?』
「ん? あぁ、大丈夫だが……」
『任務とは関係ない話よ。あとでも良いんだけど、手遅れになられても困るから』

俺は首を傾げた。

『デイブ、私とあなただけの話よ。オリバーには狙撃の準備をさせて、彼に聞かれないように……』

何となく意図は分かった。彼女に言われた通り、俺はオリバーに狙撃の準備を指示した。

 「それで、なんなんだ?」
『ねぇ、私煙草の銘柄変えようかなって思うんだけどどう思う? 今吸ってるのはタール13%でニコチン30%でしょ?』
「……ああ、知らないがそうみたいだな」
『今度のはタール11%でニコチン29%のにしようかなって。入ってる数が二本減るけど、それで良いかしら?』
「良いんじゃないか? 俺は別に文句は言わないさ」
『そう、じゃ』

無線は切れた。俺はため息を吐いた。このやりとりが面倒で仕方ない、傍受される事もないだろうし、いちいちそんな事を伝える必要があるのだろうか。俺は無線のチャンネルを112.92に合わせた。

『ハーイ、ご機嫌いかがかしら』
「上々さ。ここが俺の家で隣にリジーがいたなら完璧だろうが、あいにく硝煙まみれの戦場だ」
『それはそれは……。さて、本題にはいるわよ、デイブ』
「大方、アシッド兄弟の事だろう?」

周波数を変えて改めて連絡を取ったカーラはおそらく無線の先で頷いているだろう。

『……アレンの事は、どの位知ってる?』
「大体本人から聞いたよ、アリスの事も、オリバーの事も……それに“オリビア”のことも」
『そう……。あーあ、私が今まで頑張ってフォローしてきた苦労はどうなっちゃうのかしら。本当に私って報われない雌ね』
「その程度で悲劇のヒロインか。俺からしてみればヴァレンタイン姉妹のほうが悲劇だね」

無線の先から聞こえてくる乾いた笑いにどういう感情が込められているのか。俺はあまり理解したいとは思わなかった。

 「で、あいつ等の秘密を知った俺をどうする? まさか闇に葬るとか言うなよ?」
『その手の冗談は嫌いよ、私が悪役なんて。別に何もしないわ。けど、口外するとか言うなら私も考えがある……』
「それはない」

カーラの言葉を遮った理由は無論口外してしまえば自分にかなり不利に働く要素があるからだ。カーラが何をするかとか言うのもあるが、一番はアリスとの既成事実のことだ。あれが俺にとっては一番痛い。

『まぁ、それなら良いんだけどね。アリスは気付いてないんだけど……アリスもある種病気なの』
「アリスが?」

思わず声をあげてしまいそうになったが、なんとかボリュームを抑える事が出来た。

「一体、それは?」
『なんて言ったらいいのかしら、精神科医なんかに診てもらった訳じゃないんだけど、アリスはいくつかの事柄に対してかなりの独占欲と支配欲の持ち主。簡単に言えば、何かに執着を持って固執する。オリビアや……あなたのことみたいに』
「それは嫌って程分かってる」

しまった、口を滑らしてしまったかと思ったが、カーラは俺の言葉の意味合いに気付く事はなかった。病的だとは思ったが、カーラも分かっていたとは。

 「と言うかお前、アリスが俺の事好きだってこと知ってたのか?」
『まあね』
「……まぁいい。用件はそれだけか?」
『ええ。けど、アリスにもこの周波数は教えてるから彼女からコールがあるかも知れないわ。特に……アリスが変な考え持ってるから』

その“変な考え”は完全に理解出来ていた。

「……よく分からんコールが来ない事を祈る。over」

無線を切ったあとに俺はため息を吐いた。アリスが思いこみを持っていたままだとしたら間違いなくコールがかかってくる。気が重くならない奴がいない訳無い。カーラはまだアリスと俺の既成事実に気付いていないようだが、あそこまでした彼女が俺に無茶苦茶な要求をしてくる可能性は否めない。俺と同じ状況を楽しめる奴はおそらく歪んでいる。

 「オリバー、準備出来たか」
「はい、ターゲットまでの距離は目測で約60メートル。天窓に気付いていないので隙だらけです。この付近はビル風も弱くて距離も近いので風が狙撃に支障を来すことは無いと思います。ここがビル街で良かったですよ、じゃなきゃ陽光で気付いてますから」
「それじゃあ、出来るだけ早く奴を太陽の下に引きずり出そう。他、報告すべき事項は?」
「周囲に民間人が五匹。希少種はいません。精神的にはまだ余裕があるように見えました。ターゲットがアクションを起こさない限り狙撃の障害にはなりません」

これは実に良いあんばいだ。こんな絶好の状態で狙いがずれるならばそれはもはや一兵士として未熟すぎる。60メートルなど取るに足らない距離だ。特に狙撃の訓練を積んだ狙撃手、選抜射手ならなおさら。

「狙撃用の手製(ハンドロード)弾薬(Ammo)も用意出来てます。弱装弾以上の精度ですよ」
「狙撃手らしいな。タイミングはHQが指示する。それまではトランプでもしてよう」
「持ってもないくせに何を言ってるんですか」

オリバーは狙撃するときにはある種の“(げん)”を担ぐ。ハンドロードの弾を一発だけ、薬室に込める。彼の意気込みであると同時に、そうする事で自分を背水の陣に追いやっているのか……。それは本人にしか分からない。とにかく彼は狙撃を失敗した事はない。

 『こちらルー。デイブ、応答しろ』

敵が来ないか注意をしながらも暇を持て余していたとき、ルーから無線連絡が入った。

「こちらデイブ。どうした?」
『首尾はどうだ?』
「ああ、順調だよ。今スナイプポイントにいる。敵は少ないし、人質もカーラ達が確保している所だ。爆弾もゼータ・チームのバーナードが来ているから問題ないだろう。性格はあれだが腕は良いしな。だが、他の所にゼータ・チームの各員が回されているらしい、彼だけじゃ全ての爆弾を解除するのに一日かかるそうだ」
『なるほど。こっちも上々だ。敵は全員縛り上げてある。人質は安全なフロアへ誘導して爆弾も一時的に起爆出来ないようにしてある。ちなみに俺も今スナイプポイントにいる。……だがここからの狙撃は今の所無理だな、奴が見えない。狙撃はそっちに任せるぞ』
「ああ、伝えておくよ」
『いいか、今回の任務の結果はオリバーがどんな働きをするかによって決まる。プレッシャーを掛ける訳じゃないが失敗は許さないって伝えてくれ』
「お前が指揮官みたいだな」
『ハハッ、たしかにな』

その時、無線先から銃声が聞こえた。

『やばいやばい、敵がまだいたらしい。上の階には行ってないから降りてきたのかも知れないな。無線は終わりだ、over!』

無線が切れたあとに、俺はまた一つため息を吐いた。

「忙しい奴だ」

 そう呟いた直後、また無線が鳴る。周波数は112.92。……もしや。

『デイブ? 私、アリスよ』
「やっぱりキミか……」
『何だか嫌そうな声だね』
「いや別に。で、どうした?」

理由がすぐに頭に思い浮かぶ。それであって欲しいとは思えない。

『多分思いついてるだろうとは思うけど、オリビアの事……』
「却下だ」
『話ぐらい聞いてよ……』
「黙れ、聞きたくない」

どうせ無茶な事を言ってくるに決まっている。仮に言ってきたとしても俺は断固拒否するつもりだし、むしろ説教ぐらいしてやるぐらいの気持ちでいた。

 「あの……誰と連絡を取ってるのか知りませんけど、少し静かにして貰えますか?」

集中力を高めるために瞑想をしていたオリバーが少し不愉快そうな声で言った。俺はすぐに終わらせると伝え、アリスの対処に努めた。

「大概にして貰いたいね。なんだ、俺はお前が妹を取り戻すための駒か? 俺は駒になって誰かに使われるのは趣味じゃない。指示は受けるが実行するかどうかは俺次第だ。じゃあな」
『待って! わかってる、あなたがそう言う人だってことくらい。でも私は……』
「“わがまま”も度が過ぎれば不快だし迷惑だ。お前のはわがままなんてレベルじゃない。周りを自分のためのものとしか考えてないエゴイズムだ」
『ええそうよ、私はエゴイスト。だから私のエゴに付き合って。じゃなきゃ“あなたが私にした事”を言いふらすからね』
「おい待て、俺がお前に何をした。俺はお前から無理矢理……」
『知ってる? 雌が不快だと思った時点で強姦罪を適合する事が出来るの。現場には私とあなただけ、証拠は私の発言と、私の中にあるあなたのDNAだけになる。あなたが私との間に既成事実を作ったってことはそれだけ私に刃向かう余地がないってことよ。離婚どころか刑務所行きかもね』
「お前のえげつなさにヘドが出るよ、くそっ」

刑務所だけは勘弁して欲しい。あそこにはいると扱いが酷いというのはこの国周知の事実だ。

『良い? オリバーがオリビアに人格を入れ替えるまで、オリビアのトラウマに触れるようなことをして』
「最高キス止まりだ」
『最高交尾でしょ』
「お前本気でレイプさせる気か」
『必要なら?』
「……昔のお前はそんなのじゃなかった……」

昔のほうが好きだ。少なくともここまでエゴをむき出しにはしていなかった。
 俺はゆっくりとオリバーの方を向いた。瞑想中のために目を瞑っている。隙だらけ……俺がこの作戦に賛成ならチャンスだ。だが俺は賛成とは口が裂けても言えない。俺の脅迫者(クライアント)の望みは“オリビアのトラウマに触れろ”と言う事だ。強姦された事がトラウマになっているのなら、することと言えば一つしかない。それしかないから俺は困っているのだ。

「……オリバー」

呼びかけてみたが、瞑想しているためか反応はない。

「……“オリビア”」

強調するようにゆっくりと、俺は“彼女”に呼びかけた。その瞬間に撃鉄(ハンマー)に叩かれた弾丸のような速さで目を見開いて俺を見た。

「どうしてその名前を!?」
「どうして? オリバー、お前は知ってるかどうかは知らないが、俺とオリビアは同郷の生まれだ。ペスカードって言う町を知ってるか? 俺の故郷でもあり、“お前の故郷だ”」

オリバーはまじまじと俺を見ていた。表情は驚愕のまま固まっている。

 「オリバー、俺は知ってる。“お前は雌だ”。アレン・アシッド、いやアリス・ヴァレンタインの妹、“オリビア・ヴァレンタイン”だ」
「違う!!」

オリバーは頭を抱え込むようにして絶叫した。

「違う! 違う違う違う!! 僕はっ、僕はオリビアなんかじゃない! “僕は雌なんかじゃない!!”」
「雌さ。お前はオリビアが作り出した“存在しない存在だ”。思いだしてみろオリビア。お前は7歳の時にレイプされてオリバーを“作り上げた”。もういつまでもオリバーではいられないんだオリビア」

彼はわめき散らすだけでもはや俺の話を聞いてはいない。彼はオリビアの事を良く思っていない訳ではなく、自分を雌だと認めたくないと言うのが強いようだ。……もう言葉では事を済ます事が出来ないようだ。
 オレはオリバーに飛びかかり、彼を押し倒した。小さな悲鳴が洩れる。俺はため息でも吐きたい気分だ。ちなみに、この時に無理矢理無線が繋がらないようにオリバーの無線機をオフラインにした。でなければまずい。最悪な最終手段を執る羽目になったとき、無線が繋がりでもしたら俺の人生は破滅する。

「昔、よくお前の姉とままごとをして遊んでた。お前も混ぜてな。俺は嫌々だったが、アリスもお前もかなり乗り気だった。オリビアとの付き合いは短かったが、よく言っていた事がある。それはなんだと思う?」
「何を……退いて下さいっ……!」
「“ボクも早くママになりたい”、だ」

オリバーは藻掻くのをやめて俺を見た。動揺と恐怖が見て取れるその瞳はわずかに淀みが見えた。それがオリビアか。

「……ママになりたいなら、やる事は一つだよな?」
「で、デイブさん、そんな、まさか……」
「俺も引き返せないんでな」
「り、リジーさんはっ……」
「適当に言い訳するさ」

心が痛む。と言うのもリジーに対する罪悪感からだが。

「やめて下さい! デイブさん、やめて!!」
「引き返せないって言っただろ」
「んぅぅっ!」

俺は深くオリバーの唇を奪った。
 彼は必死に藻掻いていたが、体躯が二倍になろうが筋力がある俺と普通の少女とさして変わらないオリバーとでは大分力の差がある。彼は為す術なく、俺の強引なディープキスを受け止めるしかない。正直乗り気でない俺は完全に上の空で、適当に事を済ませようとしていたのだが。
 抵抗が徐々に弱くなっていく。先程から目を開けて様子を確認しているが、彼は目を瞑ったまま微動だにしなくなっていた。眠っているようにも見える。まさかPTSDで気絶してしまったのかと思ったが、そうではなさそうだ。俺は口を離して、誰が見ている訳でもないが不快さを表すために舌を出した。
 二分程オリバーは動かなかった。死んでいるようにピクリともしないし、全身を縮ませて丸まっていた。俺は彼の上に乗ったままだったが、正直待ち長かった。
 遂に彼が目を開いた。淀んだ瞳はオリビアのものだろうか。寝起きのように目を瞬かせながら彼は俺の顔を見ていた。物珍しそうに俺の顔を見ていたのはほんの五秒足らず。それが過ぎると同時に、俺は思いきり蹴り飛ばされた。

「こ、来ないで! 嫌! 嫌だ!!」

怯えたように俺を見つつ、オリバーは仰向けのままじりじりと後ずさった。俺はと言うと、彼の蹴りがみぞおちに入ってむせ返っていた。これはギャラでももらわなければ釣り合わない。

「心配するな……俺はなにもしない、蹴られなきゃな」
「じゃ、じゃあなんでボクに乗っかってたのさ!? ぼ、ボクに何をする気だったんだよ!」
「落ち着け、とりあえず深呼吸してみろ」

従う様子はなかったものの、急変した彼の様子を見る限り、上手くいっているように見える。
 安心は出来ない。戻ったという保証はない。また解離していればそれは記憶にすら残らないという事すらあり得るらしいのだから。その疑いを晴らすために、一番効率の良い質問をしてみるべきだろう。

「お前の名前は?」
「え? な、なんだよ急に……」
「質問に答えてくれ、“お前の名前は?”」

質問の裏を読もうとしたのか、一瞬のラグがあり返答が返ってきた。

「オリビア……。ボクはオリビア・ヴァレンタインだ」

その答えを聞き、俺はため息を吐いた。これでアリスからこき使われる事はなくなるだろう。おそらく、だが。

 「オリビア、思い出してくれ。お前の姉、アリス・ヴァレンタインのクラスメートだったデイビッドだ。お前の家によく遊びに行ってただろう?」
「……覚えてる……デイブ……」
「覚えてくれてるならよかった……。今の事はどの位知っている?」
「今の事……?」

オリビアは首を傾げた。オリバーに戻る兆候はないが、油断は出来ない。

「オリバー・アシッドの事を知ってるか?」
「オリバー? うん、よく知ってる。ほら、デイブの横にいるよ」

無論俺の横にオリバーなど存在しない。だがオリビアはオリバーが今何をしているかなどを話し始めた。そして昔オリバーとどうやって出会ったのかなども。オリバーは想像上の友達(イマジナリーフレンド)だったようだ。
 彼女の話を聞くうち、彼女がオリバーと入れ替わって引き継いだ記憶が大分明らかになってきた。軍に入った事は彼女は知らないらしい。自分が精鋭部隊の一員であるなどとは全く知らないのだ。

「なんでこんな場所でこんな格好してるの?」
「……色々あったんだよ、色々」

俺はそこで話を打ち切り、無線をオンラインにした。どうやらまだ準備は整っていないらしい。そろそろ昼が近づいてきたが、食料はオリバーが持ってきたレーションしかない。俺が唯一持っているのはチョコレート(パワーバー)だけだ。無いよりマシ、腹ごしらえをしなければ。

 「……不味い」
「文句言うな。世の中にはその不味い飯すら食えなくて餓死する奴が大勢いる」

彼女は俺が思った通りの反応をした。最初は俺も似たような感じだった。

「確かにそうだけど……味薄いよ……」
「塩の代わりに保存料たっぷりだ。俺もあんまり食いたいとは思わないね」

レーションをあまり美味く作るとさっさと食べてしまうからと言うのがこの薄味の原因だった。他の軍のものはまだマシだそうだ。レーションが理由で寝返ろうとは塵程も思わないが。

「さて……食べながらで良いから質問に答えてくれ。オリビア、お前銃を撃った事はあるか?」
「無いよ、パパが触らせてくれなかったし」
「ハンドガンは?」
「無い」
「ライフル」
「無い」
「じゃあお得意のM14 DMRの狙撃は無理か?」
「何それ?」

ダメだ、完全にオリバーの時の記憶を引き継いでいない。銃把を握った事すらない様子だ。これではまずい。俺が狙撃しても構わないが、やはり少々不安だった。身長により対象の位置をある程度限定した訓練を積んだ事の方が長い。つまり俺はおおよそ20~30メートル付近の対象を銃撃する訓練は積んでいる。しかし、狙撃はセオドアや他の誰かに任せる事が多かったため、そこまで技術は秀でていない。
 仕方がない、腹をくくろう……。そう思っていたときだった。入り口のドアを開けた敵がいた。無論、俺達に気付いてしまう。完全に油断していたため、俺は即座に銃で撃つ事が出来なかった。その敵はと言うと、増援を呼ぶためか引っ込んでいってしまった。

「……オリビア、ここは戦場だ。銃を撃てなきゃ死ぬ。ようこそ射撃入門講座へ(Welcome to Pull the Trigger 101)
「は? え?」
「銃は持ってるか? あいつ(M14 DMR)じゃ少し取り回しが悪いか……。こいつを使え」

俺はM9をオリビアに渡した。彼女は物珍しそうにそれを眺めている。

「銃口を覗くな、暴発したらあの世行きだ。セーフティをはずせ、それでトリガーを引けるようになる。使い方は分かるな? 敵に向かって撃て。弾が無くなったら言え、俺が弾をやる。M9の装弾数は15発だ。何発撃ったか覚えておけ。サイトはフロントサイトがリアサイトの中心に来るように狙え。理解したな? 来るぞ、心の準備だ」
「え? え!? え!?」

俺は捲し立てるように銃の使い方を教え、その間にバリケードを形成する。机と椅子で二重三重にしているから貫通はしてこないだろう。目標が更新された。今の目標はスナイプポイントの防衛、それとオリビアの護衛だ。


第十一幕 


 オリビアがまだ困惑している中で、戦闘が開始された。まずドアが少し開いて、その隙間から何かが投げ込まれた。それはちょうど俺とオリビアの間に落ちる。

「グレネードだ! 伏せろオリビア!!」

俺は素早くグレネードを拾って投げ返した。行動を急いたであろう一匹が爆発に巻き込まれて悲鳴を上げた。キルゾーンからは少し遠いようだったが、致命傷だろう。ちなみに、悲鳴を上げたのはそいつだけではなかった。オリビアも全く予想だにしていなかったのか爆音に飛び上がる程驚いていた。

「来るぞ! 応戦しろ!」
「無理無理無理!! 怖いってばぁ!!」

オリビアが悲鳴を上げてバリケードの影に潜り込んだ。それで良い、そもそも彼女は戦力としてみていない。
 幸いなのは敵が攻め込んでくる場所が一つしかない所だ。この調子ならオリビアが発砲する必要もないだろう。彼女がいちいち手を汚す必要など無い。入り口付近に死体の山が出来ていく。オリビアが見たら新たなトラウマが出来そうだが、まだ大丈夫だろう。

「……くそっ……弾が無くなってきたが……。オリビア! カバーを頼めるか?」
「なっ、何言ってんの!?」
「弾倉の弾が無くなってきてる。弾が無くなって誰もカバーしなかったら俺達は蜂の巣だ。威嚇だけでも良い、三秒時間を稼げ!」

言い終わったときに弾が無くなった。100連装ドラムマガジンなど戦闘で使い切る事などあまりないため、タクティカルリロード*7をあまり行わない。第一歯車が内部で動いているため動作不良で弾詰まり(ジャム)を起こす事が多いので、ドラムマガジンはあらかじめ付けているもの一つしか持っていない。他は30発バナナマガジンだ。
 マガジンを取り替えるためにバリケードに身を隠した。オリビアは戦々恐々と言った様子だったが、覚悟を決めたのか敵のいる方へ向けてやたらにM9を撃ちまくった。あの様子では15発全てをすぐに撃ちつくしてしまうだろう。彼女にマガジンをどう替えるのかを教えてなかったため、俺は仕方なくスタン・グレネードを敵の目の前に投げ込んでおいた。オリビアは気付いていなかったため、急いで引っ張り耳を塞がせた。その間にも、俺はマガジンを取り替える作業を急いでいた。ドラムマガジンを取り外し、新たなマガジンをバックパックから探し当てたとき、甲高い爆音が響き渡った。思わず耳を塞ぎそうになるが、一瞬の事だ、もう遅い。若干クラクラしながらも、俺はマガジンを取り替えて敵の集団を見た。
 まともにスタンの先行と爆音を受けたらしい数匹は気を失っていた。他数匹も残り数秒は自由に行動出来ないはずだ。おそらく彼等で最後だろう、まだ次の敵が出てくると言う事はなさそうだ。ならば弾を無駄遣いする必要はないだろう。マガジンを替える必要は無かったようだが、無駄な行動だったという訳ではない。
 俺はバリケードを越えてまだ自由に動けないニューラへ駆け寄ると、ナイフを引き抜いてニューラの胸に突き立てた。もうこのニューラは再起不能だろう。もう一匹いたニャルマーは既に行動を起こそうとしていたため、ナイフを投げつけた。俺の投げたナイフはくるくると回転しながら上手くニャルマーの額へ突き刺さった。

「おぉ、猫の額にヒットだ。ルイスも舌を巻くな」

おそらくオリビアには笑えないジョークを飛ばしながら投げたナイフを引き抜いた。血と脳漿はその辺りに落ちていた書類の端で拭いておいた。
 俺はナイフをしまってからM8を片手に残党がいないか捜索した。新たな敵は来ない。気絶している敵がいるが、縛り上げるまでは大丈夫だろう。

「……クリア」
「……グロい……」
「俺もそう思う」

オリビアが信じられないという表情をするが、俺は素直な感情を言ったまでだ。
 気絶している連中を縛り上げようと、俺は倒れているジュプトルに近づき、脈を取ろうとした。その次の瞬間に俺は足下をすくわれて仰向けに押し倒された。うめく間もなく目を覚ましたジュプトルが俺にまたがり、手首の葉をリーフブレードにして斬りかかってきた。
 幸い腕はまだ自由だったため、俺は迫る刃を交わすためにジュプトルの腕を掴んだ。そこからは一進一退だった。体格が違うためにジュプトルからは押されるものの、こちらは負ければ死んでしまうのだ。脳が全身の筋肉のリミッターを解除している。しかし、全体重を掛けられるとさすがに辛くなってきた。押す力は身体に近づくにつれて弱くなっていく。まずい、このままでは首を斬られる。

 バァン!!

 銃声が響いた。そして腕へかかっていた負荷が軽くなったのが感じられる。ジュプトルは俺の上から崩れ落ちた。見れば背中に銃痕がある。そして震える腕で銃を構えていたのはオリビアだった。

「……だ、大丈夫……?」
「ああ、なんとか。助かったよオリビア、Nice killだ、ありがとう」

オリビアに礼を言い、俺はまだ気絶したままの数匹を捕縛した。もう命の危機はうんざりだ。せめて休暇が欲しい。
 俺が残党を縛り上げている最中、オリビアはその場にぺたりと座り込んだ。生唾を飲み込みながら手にあるM9を見つめている。俺はそんな彼女のそばに行きつつ声を掛けた。

「どうだ、初めて人を撃ち殺した感想は?」
「……最悪」
「だろうな」

ため息混じりの彼女の返事に、案の定だったというような返事を返した。俺も初めて人を撃ったときは罪悪感や恐怖などに駆られてしばらく酷い有様だった。

「……射撃入門のハンドガンの講座は最後の一発以外の評価は落第点(F)だ。最後のもギリギリD+だな」
「Fで十分……」
「そう言うな、技術があって損する事はない」

オリビアは気分が悪そうな表情を崩さなかった。かなり心が荒んでいないと初めての殺人は堪える。

 「オリビア、最悪ついでにお前に頼みたい事がある」
「内容によっては断る」

おそらく断るだろう。

「お前にはマシュー・オッドの狙撃をやってもらいたい」
「マシュー? ……って、狙撃?」
「ああ、その為にお前は……いやオリバーはここに来た。オリバーは役目をお前に託したんだ」

オリビアはためらっていた。と言うよりもやりたくないと言うのが本音だろう。そこに長い間“友達”としていたオリバーが絡んできていたためにためらっているだけ。おそらくそのままでは実行までは移らないだろう。あと一押しが必要のようだ。

「オリビア、この任務には数十名の人命がかかってる。オリバーは今はいない、お前だけが頼りなんだ。俺の持っている銃だとここからじゃ狙撃するのに難がある。狙撃するにはM14 DMR……オリバーの銃じゃないと難しい。その銃は俺じゃ扱えない。頼むよオリビア、お前にこの任務がかかってるんだ」
「そんなの!」
「お前は罪のない民間人を見殺しにするのか!? お前が引き受けてくれれば……」
「ボクには関係ない! ボクは人を撃ちたくもないしもう銃なんて触りたくもない!!」

彼女は目に涙を浮かべながら怒鳴った。かなり堪えたのだろう。俺でさえ何十匹と撃ち殺していれば吐きそうになる事もあるし、もう引き金を引きたくないと思うときすらある。だが俺は軍人であり、俺が誰かを撃ち殺す事で生き残る数十万の人々がいるのだ。その点彼女は“オリバー”ではない。オリバーは軍人だが、オリビアは一般の少女に過ぎないのだ。それに誰かを撃てと言うのは酷すぎるのだろう。
 ……俺は思い出していた。昔の事だ。俺が14歳の頃、この特殊部隊に入隊したてで階級もまだ二等兵だった頃の事だ。当時のアルファ・チーム隊長だった人から言われた事があった。

「“多くの犠牲か、誰か一人の犠牲か、それを選ぶなら誰しも迷わず一人の犠牲を選ぶ。私もそうだ。そしてその一人が自分であろうが、あるいは自分が愛した人であろうが自分が守るべき誰かであろうが、私の意志は変わらない。誰であろうが平等なのだから、犠牲になる誰かも犠牲になった事を後悔する事はないはずだ。後悔するならばそれは贅沢が過ぎる”」

オリビアは一瞬何を言われたのか分からなかったようだった。しかし、数秒後に俺が言った言葉を理解したようだ。

「ボクに犠牲になれって? そんなの嫌だ! ボクは人殺しなんかじゃない! ボクはただのアブソルだ! ボクは女の子なんだ……」
「だからなんだ。俺はそんな事を意に介する程頭が柔らかくないんだ。命令に従え、オリビア。お前は“上等兵”だ。“曹長”の俺に逆らう事は許されない」
「上等兵……?」

俺はもはや手段を選ぼうとは思っていなかった。それに、そのうち彼女に知らされてしまう事だったのだから。

「“お前は軍人だ”。オリバーはこの世に存在しない。お前が作り出した別の人格に過ぎない。オリバーはお前だ。お前は銃を取り、何匹も何匹も殺してきた。お前が知らなかろうとお前は人を殺したんだ」

その言葉を聞き、オリビアはしばらくの間放心状態のようになってしまった。理解出来ていない、と言うよりは理解したくないのかも知れない。長い間友達だと思っていたオリバーと自分が同一人物で、なおかつその彼が軍人で、何匹も人を殺してきていたのだ。当然だろう。そしておそらくオリバーが“雄”だと言う事も要因にあったはずだろう。
 彼女は徐々に体を小さく丸めていった。この様子は先程見た人格の入れ替えの様子そっくりだった。もしやとは思うが、オリバーに戻ってしまうのだろうか? それでは俺が嫌々やったキスはどうなってしまうのだろうか。無駄骨だったというオチは避けたい。そして数分後に彼女――あるいは彼――は元の体勢に戻り顔を上げた。

「……ボクがやる……。ボクがやらなきゃダメなんでしょ?」
「あ、ああ」
「オリバーと話した。ボクがやらなきゃダメだって」
「オリバーと?」

彼女が言うには、何やら頭か心かの奥底に引っ込んでいたオリバーを引っ張り出して――都合の良いようにどうこう出来る空想のオリバーではなくて――話し合ったらしい。そしてオリバーは“今は出ていきたくないからオリビアがやって欲しい”と言ったそうだ。空想の中で幼い頃から親友のような扱いをしてきたオリバーの言葉を無碍にする訳にはいかないと思ったし、何より本当に自分と同一人物になっていたのだから諦める他無いと感じたらしかった。

「“僕がついてるから、僕が見守ってるから”って」
「……同一人物の友情か……にわかには信じがたいが、あり得る事なんだろうな」
「デイブ……付け焼き刃で良いから、ボクに銃の使い方を教えて。オリバーはこの任務を成功させる事を望んでるから……」
「わかってるさ。お前にはオリバーがついてるんだ。出来るさ」

オリビアは朗らかに笑った。これからやる事は彼女にとって辛い事だという事は変わりないのだろうが、もはや割り切る他無いと思ったのだろう。彼女はきっと後悔しない。


 『こちらHQ、エータ、ミュー、オミクロンが配置に着いた。狙撃の準備をしろ』
「了解。ルーは今何をしてる?」
『彼は今交戦中だ。大分長い間戦っているからそろそろ終わるだろう。そちらの状況はどうだ?』
「一度残党が押し寄せてきたが問題ない。そっちのレーダーで敵勢力の検索をして貰えるか?」
『了解……。熱源反応無し、大丈夫だ』
「わかった。オンラインで随時通信を行いながらタイミングを知らせる。over」
『了解、エータ、ミュー、オミクロンに繋いでおく。out』

俺はオリビアの事を伝えようかと思った。しかし、今それをした所で意味がない。だが早めに伝えた方が良いだろう、何しろここの指揮を主に執っているのはヴァレンタイン姉妹の父親であるサミュエル・ディズゲイト・ヴァレンタインなのだから。……任務が終わったときぐらいでちょうど良いだろう。

 「オリビア、これから狙撃する。お前が頼りだ。お前が失敗するとリスクが付きまとう。人質の死亡、銀行が爆破された事によってしばらくこの国の通貨の値段が上がる。そうなったらデフレに落ち込む事になる。不自由な暮らしは嫌だろう?」
「うん」
「なら分かってるな? 失敗は許されない」

オリビアは頷き、先程の戦闘で割れてしまった大窓に近づいた。俺はオリバーが置いていた銃と弾丸を拾い、彼女に渡した。

「これがオリバーの愛銃、M14 DMRだ。古い銃だが、型は最新のものだ。狙撃銃としてもアサルトライフルとしても上々な成績を持ってる。それと……これがオリバーの作った狙撃用の弾丸だ。命中精度は抜群だぞ、目標をきちんと捉えれば確実にヒットするはずだ」

その銃を手に取りじっと眺めるオリビアは何を思っているのだろうか。DMRはスプリングフィールドM14を改良して選抜射手用の銃にしたものだ。他の軍用狙撃銃よりも軽量で威力が強いが、最新素材のM14 EBRと言うものもある。しかし形が独特で気に入らないらしく、オリバーはDMRを使っていた。

「オリバーにはあるジンクスがあった。そのハンドロードを一発だけ込めて狙撃に望む。ただそれだけの事だが、奴には重要だったらしい」
「どうして? 外しちゃったら……」
「“外さない”、それだけだろうな」

オリビアは少し考えてからハンドロードをDMRの薬室に込め、それからマガジンを装着した。

「ボクは、オリバーじゃないもの。もしもの事は考えなきゃ」
「それが賢明かもな」

 それから少しオリビアにライフルの扱い方をレクチャーしているときに無線が入った。珍しくエータ・チームからだ。

「こちらデイブ。どうしたルーク?」
『どうしたもこうしたもねぇよ。デイブ、スナイプポイントから奴の姿が見えるか?』

俺は双眼鏡を取りだして銀行の中の様子を探った。オリビアも銃のスコープを使って様子を見ている。しかし、先程までいたマシューがここからでは見えなくなっている。

「どういう事だ?」
『あの爆弾魔、撃てそうで撃てない場所で演説おっ始めようって気らしい』
「なんて言ってる?」
『まだテスト中だ、だがどうもとびきりのジョークを飛ばそうって訳じゃないらしい。……お、始まった……』

そう無線越しに聞こえたあと、ノイズのようなものが聞こえ始めた。おそらくこれが“演説”なのだろうが、何を言っているか聞き取れない。

「ルーク、奴は何と言ってるんだ? ここからじゃ聞こえない」
『ちょっと待て……。えー、“残り時間は一時間、それを過ぎれば、みんなみんなみんな真っ黒。それが嫌なら、大統領を連れてこい。五十八と一、どっちが多いかわかるよね。どっちだって良いけど俺は誰かを真っ黒にしたい”』
「つまり奴は……」
『大統領一人の命と引き替えに民間人五十八匹を助けてやるって事らしい。どんな薬キメてるんだろうな』

この国の首都であり、ましてや大手の銀行を占拠し人質を大人数取ったとしても、大統領が出てくるはずがない。奴はものを吹っ飛ばしすぎて頭も吹っ飛んでいるらしい。

『猶予が残り一時間になった。奴はスナイパーを配置してる事に気が付いてないからな、それだけあればシャワーを浴びる余裕もあるな』
「まあな。だがルーク、オリバーにちょっとした不都合があってもしかすると外すかもしれない。その時は対処頼むぞ」
『おお、麗しのオリバー嬢が不都合だって? さっき交戦したってのを聞いたが、撃たれたのか?』
「いや。だがあまりからかってやるな、さっきから聞いてるぞ」
『マジか? 悪いなオリバー、冗談だからあんまり気にすんなよ』

オリビアは適当に相づちを打った。その後しきりに今の内容の事を聞いてきたが、誤魔化しておいた。雌だという事を気付かれないようにオリバーが他の雄と一緒に同じシャワールームを使っていたとは言えない。

 「オリビア、状況が少々変わってきた。さっき俺は足か腕を撃てと言ったが……目標の更新だ、“頭部への射撃(ヘッドショット)、あるいは心臓への射撃(ハートショット)”、いいな?」
「うん……」

心なしか元気がないのはまた誰かを撃ち殺さなければならないからだろう。

「……こんな事をさせてしまってすまない、出来ればお前の手を汚させるような事はさせたくなかったんだが……」
「ううん、デイブのせいじゃないし、ボク覚悟も出来てるよ。ただ少し怖くって……」

俺は彼女の背をポンと叩いた。

「大丈夫だ、お前にはオリバーがついてる。怖がる事はないさ」
「……うん!」

 俺とオリビアは窓際で匍匐の姿勢を取った。ここから狙撃するには窓の外へ身を少し乗り出さなければならない。だがここからなら奴の場所が丸見えで狙撃に最適の場所だ。スコープを覗くと、奴の満足げなニヤニヤ笑いが見て取れた。どんな計画なのかは知らないが、奴の計画だ、どうせろくでもない事に違いない。

「良いか、一撃必殺(One shot One kill)だ」
「了解……」

無線をオンラインにすると、俺はオリビアと目配せしてから言った。

「こちらデイブ。狙撃の準備が完了した。突撃部隊、そちらの状況は? 送れ」
『こちらエータ。こっちも準備出来てる。あとはそっちのタイミングだけだ』
「了解した。スリーカウントだ。タイミングは俺が指示する。何が起ころうと合図と同時に突入しろ。over」
『オーケイ、俺達の仕事がない事を祈るぞ。out』

オリビアは深呼吸し、スコープを覗いた。

 「スタンバイ……」

まだだ、まだ機ではない。奴は歩き回っている。奴が立ち止まったときが勝負だ。

「スタンバイ……」

今も機ではない。奴はまだ同じ場所を歩き回っている。方向を変えるときに立ち止まるが、まだそれだけでは甘い。

「落ち着け……」

オリビアの指は今にもトリガーにかかってしまいそうだ。緊張していては失敗を招く。
 その時、マシューは立ち止まった。誰かと話をしているようだ。今がチャンスだ。

「行くぞ……。1(ワン)……」

まだマシューは話している。移動すらしない。

2(ツー)……」

オリビアがトリガーに指をかけた。

3(スリー)

オリビアが発砲した。銃声が室内に響き、発射炎(マズルブラスト)が一瞬視界を揺らがせた。問題はターゲットがどうなったかだ。
 結果的に言えば、狙撃は成功した。それが当たり前すぎる俺は大してすごいとも思わなかった。天窓のガラスを割って突き破った弾丸は的確にマシューの心臓を捉えていた。次の瞬間にはエータ・チームが視界に入った。行動が早いのは人質以外にマシューしか敵勢勢力がいなかったからだろう。

「……Nice Shotだ。よくやったオリビア」
「う、うん……」

オリビアはゆっくりと頷いた。やはり慣れない事をするのは疲れたのだろう。

 『こちらエータ。敵勢力の掃討完了。まぁ、奴しかいなかったが。ビューティフル、オリバー』
「爆弾に注意しろ。時限爆弾の可能性もある」
『ゼータ・チームが向かってきてる。心配ないだろ。やっと家に帰れそうだ……』
「ああ。俺も早く帰りたいよ」

ルークは家でぐうたら過ごすのが至福の時だそうだ。俺にはよく分からない。俺も早く帰りたいが、予想以上に時間がかかってしまったし、リジーも心配しているだろう。だが俺には問題が一つあるというのをうっかり忘れていた。
 ルークとの無線を終え、ビルを降りるようにオリビアに言おうと思った瞬間に、また無線がかかってきた。ルーのようだが、何か焦っているようだ。

『こちらルー! デイブ出ろ!』
「なんだ、どうした……」
『伏せろ!!』

バァン!!

銃声が響いた。何が起こったのか分からなかったし、俺は戸惑うばかりだった。誰が発砲したのかも分からない程に俺は油断していた。振り返ると、オリビアは深く息を吐きながら隣のビルへ向けてDMRを構えていた。オリビアが犯人だろうか。

『デイブ! 無事か!?』
「あ、ああ……」
『……オリビアがやったのか?』
「! なんでオリビアの事を……」
『俺は何でも知ってる。オリビアがやったのか?』

ルーにまたはぐらかされながらも俺は肯定の返事を返した。俺は未だに状況を掴み切れていない。

 『俺のいるビルからお前達を狙うスナイパーが居たんだ。気が付いたときには遅いかと思った。オリビアが気付いてなきゃお前は死んでたな』
「それは気持ちのいい話じゃないな」
『……スコープのレンズを貫いて目を撃ってるな……。Nice Killだ、オリビア』

オリビアは急に名前を呼ばれて少し驚いているようだった。俺が聞いている無線は彼女も聞いているのだ。

「そんな……ボクはただその人に気付いて夢中で引き金を引いただけだし……。それに、その人目を撃たれてるって事はスコープ覗いてたんでしょ? それならその人はもうこっちを狙ってたんだから、ボクがその人を先に撃ったのは運がよかっただけだよ」

俺も、そして多分ルーも少し呆気にとられていた。そして俺達は同時にクスッと笑った。

『そりゃそうだな! ハハッ! カルロス・ハスコック*8もびっくりだ!』

オリビアはなんの事やらと言った様子だったが、褒められていると言う事は分かったのか何となく照れくさそうだった。


終幕 


 俺は公園のベンチに座っていた。あれからオリビアとアリスは自分たちが今まで隠していた事をみんなに打ち明けた。無論みんな驚いていたが、中には例外も数匹いた。俺とカーラとルー、そして何故かファーブもだった。あとで聞いた事だが、ファーブは俺達と同じペスカード生まれで、俺とアリスが小学校に入り立ての頃は高校三年生だったらしい。俺達は誰一人知らなかったが、ファーブは道ばたで見かけた俺達を……もとい、オリビアとアリスを覚えていたらしい。
 混乱が起きた訳でもなんでもなく、ただそうだったのかと納得したような声だけが聞こえてきたのが幸いだっただろうか。さすがに彼女たちが隊に残り続けるという意志を示したときは俺も驚いたのだが。どうもオリビアの意志らしい。オリバーはここにいたいのだろうから、自分もここに残って戦うのだそうだ。アリスもオリビアを取り戻せた事により、他の事はどうだって良いようにも見えた。
 問題は俺だった。アリスはまだあの事を他言してはいない。それが唯一の救いだが、俺にはリジーに謝らなければならないという大仕事が残っていた。正直かなり怖い。

「よう、浮かない顔だなデイブ」

軽口を叩きながらやってきたのはルーだった。彼もオフのようだが、眼帯代わりのバンダナは付けたままのようだ。彼は俺の隣に座るとグイと背中を伸ばし、一つため息を吐いた。

「どことなく思い詰めてるように見えるな、何があった?」
「……下手すれば家庭崩壊の危機だ」
「おやおや、続けてみろ」

かくかくしかじか、ルーが誰かに秘密を言いふらすような奴でない事は分かっているので包み隠さず打ち明けておいた。
 全てを聞いた後、ルーはため息と共に呟いた。

「そりゃ気の毒に」
「同情されても意味無いだろ。何かアドバイスは無いのか?」

ルーは頬を掻くと、独り言のように言った。

「俺は嫁と険悪な状態になった事はないからよく分からん」
「お前は役に立つときと立たないときがはっきりしすぎだ。オールマイティな奴になってくれよ、海千山千の……」
「冗談、ゴメンだね」

俺を見ながらくつくつと笑うルーを殴りたくなった。
 それを察したかどうかは別として、ルーは急に真面目な顔になった。

「……やっぱり、機嫌を取るのが一番じゃないか? お前の嫁がどんな奴だか知らないから一概には言えないが」
「あれの機嫌を取るのは俺が過労死する」

理由は言うまでもあるまい。

「ならプレゼントでもしてみたらどうだ? カーラにあのツヤツヤの秘密を聞いておいたぞ、カーラはコロナルタからヘアオイルを輸入してるらしい」
「コロナルタはロボットとかアニメとかの印象が強いが、そんなものがあるんだな」
「なんだったか、花の種から絞った油らしいが。……いや待て、もしかするとプレゼント如きで機嫌を取るつもりかってキレる可能性もあるな……」
「八方ふさがりじゃないか」

俺はため息を吐く他無かった。
 そんな俺を見かねたのか、どうでも良いと思ったのか、ルーは懐から葉巻を取りだして火を付けた。

「喫煙出来る歳じゃないだろ、葉巻なんて吸うんじゃない」
「葉巻は吸うんじゃない、噴かすんだ。固い事言うなよ」

紫煙をくゆらす彼は18歳には見えない。もっと歳を取った歴戦の戦士を思わせた。

「デイブ、妙に思わないか」
「何が?」

ルーは神妙な面持ちで呟いた。

「今回の騒動……首謀者と“思われる”マシュー・オッド、奴を射殺したと同時に、コーラルバレー・ストリートを占拠していた連中が蜘蛛の子を散らすように四散霧消だ」
「ああ、だが頭を失って自信を無くしただけかもしれない」
「そこが甘いぞ、デイブ。よくよく考えてみろ、こんなバカみたいな大騒動起こす連中だ、たかだか司令塔一つ吹っ飛んだ所で逃げ帰る奴が居るか? たとえ最後の一匹になろうが戦い続ける、そのはずだろ?」
「安直すぎやしないか?」
「大体目的も謎だ。連中のボスがマシューだとしてだ、どうして彼等はマシューの元に集ったんだ? リーダーの資質があったようには見えないし、そもそも奴は大統領と人質を交換しようとしたんだぞ。下手をすれば数匹の犠牲を払ってでも強行突破したかもしれないのに。全く理性を伴わない作戦に対して不平不満を言う奴がいれば必ずほころびが出来て決行前に散るはずだ。それがどうだ?」

確かにそうだとは思った。だが、深く考えると謎ばかりだ。バカが多かったと考えておく方が簡単だし説明もつく。

 「大きな事件がこの一年で二つ起きた。お前が解決した世界規模詐欺の騒動と今回の騒動……。俺はな、あの時休暇を取ってたが資料は見た。お前は覚えてないか? 妙な共通点があるんだ、二つの騒動に、な」
「共通点? そんなものは……」

何も思いつかない。思いつくとしたら……

「爆弾か?」
「ああ、それもある。ドレビンはビルに爆弾を仕掛けて最終的に自ら吹っ飛んだ。マシューはあちこちに爆弾を仕掛けていた。だが、ドレビンが吹っ飛んだというのは腑に落ちないだろ? 奴はどこに爆弾があったか知らなかった……。こう考えて見ちゃどうだ、“爆弾を仕掛けたのはマシューだ”」
「まさか! あり得ないだろう!?」
「可能性はなくもない。調べりゃ分かる事だろうが、そこは警察の仕事だ」

俺はうなった。ルーは俺の考えない所まで考えている。俺が今自分の問題に頭を抱えている事を別にしてもだ。

「……さっき、“それも”と言ったな? 他にあるのか、共通点とやらが」
「わかりやすいはずだ。……連中の兵装だよ」
「……あ! 確かに……なんで今まで気付かなかったんだ……」
「ま! 戦闘中に思い出したらあの世行きの合図だがな。そうとも、連中の兵装は“全く同じものだ”。俺が勝手に見たんだが、パワード・スーツがあるだろ? 素材も、製造会社も、どの国で作られたかも全て一緒だった。それだけじゃ確信じゃない。だから、俺はハルに問い合わせてみた訳だ。そしたら案の定“同一の組織、あるいは人物が買ったもの”だとさ。ハルは絶対に嘘は吐かない。俺は奴の事を信用してる」
「信用じゃ何も買えない、奴も商人だろう」

ルーはその言葉を笑い飛ばし、無かった事にした。彼には信用というものが一番大きなものだという感じがした。

 「考えてもどうしようもない。ハルは絶対に購入者を見つける事は出来ないとさ。先の事件と同じ、深層は闇の中だ……」
「闇に光を当てるのは警察にやってもらおう、連中は面倒ごとしかかき回さない」

ルーはからからと笑うと、葉巻の煙にむせ返った。

「それじゃ……お前は、嫁とのごたごたが残ってるんだったな。ゴホッ……。良いか、夫婦円満のコツは何事も夫のさじ加減だ。そして“夜”だな」
「やめてくれ、今は考えたくない……」
「どうして? ……まさか嫌いなのか?」

ルーはからかうように言った。ため息を返すしかできないのが俺だ、ルーは今俺の言う事を茶化す事しか考えていないだろう。

「正直答えにくいが、好きか嫌いか聞かれれば好きだ。愛した雌を抱ける訳だからな」
「ぶっちゃけ行為自体はそこまで好きでもない訳だ。誰とヤるかが重要な訳ね……」
「当然だ。じゃなかったら俺は今回の事でこんなに悩んだりしない」

納得したというようにルーは頷いた。
 俺はベンチから飛び降り、身体を伸ばした。

「……さて、良いアイデアも思いつかない事だ……。帰って謝ってくるよ」
「健闘を祈る」

葉巻を掲げて別れの挨拶の代わりにしたルーだったが、俺は彼にもう少し引いてもらおうと考えた。ある種特別な生活をしていると認識してもらいたいのかもしれなかった。彼に背を向けて数歩歩いてから俺は立ち止まり、肩越しに話しかけた。

「ルー」
「なんだ?」
「俺がオフの時家に帰ってリジーがまずなんて言うと思う?」

ルーは質問の答えを導き出そうと数秒悩み、その答えを言った。ご丁寧に雌の口調を真似て。

「“おかえりなさいデイブ。ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?”」
「ご名答」
「マジでいるのかそんな事言う奴」
「残念ながら居るんだよ、俺の家にな」

おそらくルーはふざけたのだろうが、リジーもふざけているので合致してしまっている。だが初めてのオフの日、俺は冗談だろうと高をくくり最後を選ぶとその場で襲われた。ハービーが居なければ俺はあのまま玄関でリジーからヤられていたかもしれない。

 「俺の嫁は欲に正直でな。特にそっちのほうには」
「“お盛ん”って訳だ」
「ああ。それで……夜に俺は何回まで付き合わされると思う?」

ルーは先程と同じように考えてから自信ありげに答えた。

「三回」

俺はその答えにため息を吐き、ゆっくりと歩きながら正解を彼に教えてやった。

「残念、六回だ」

背後にいるルーが口をポカンと開けているのが手に取るように分かった。彼には大方俺がどういう雌を嫁に取ったのか理解出来たはずだ。
 さてさて、気が重いが、彼女はどんな反応をするだろうか……。



 ――本当にすまないと思ってる」
「……デイブは他の雌も知っちゃったと……」
「俺の意志じゃないって事は何度も説明してるだろう? 怒らないでくれとは言わない、だが離婚とかそういう事を言うのだけは……」
「アハハッ、なにそれ? 私がたったそれだけの理由で離婚なんて持ちかけると思う? 私の元の職業忘れた訳じゃないでしょ? 今まで私、何回も何回も色んな雄から抱かれてきたのよ? わかってるの、愛のない行為なんてただの欲の発散でしかないの。それに無理矢理されたならそれすらないって言うのもしっかり分かってるし。私も何回かレイプされた事あるし」
「どんな顔をした奴だ、今から殺しに行く」
「そんなの覚えてたらきりないってば」
「……まぁ、いい。つまり俺はお咎め無しなんだな?」
「誰がそんな事言った?」
「え?」
「デイブ、あなたが私の事を愛してくれてるなら誰とヤろうが私は怒らないわ。でも、その分私はあなたを私が満足いくまで犯すから」
「お、おい、今までのはお前が満足してやめたんじゃないのか……?」
「あなたが大変な仕事してるから遠慮しといたの」
「嘘だろ……」
「最低でも十回はヤらなきゃ修まんないなぁ……」
「じょ、冗談だよな……?」
「さぁ? とにかく一回目、始めよ?」
うわぁぁぁ!!!


あとがき

長らくお待たせしました、こんばんは、DIRIです。
やっぱりちょくちょく更新した方が良いんでしょうか、一気に更新しようとするとかなり時間かかりますね……。まぁ、理由は色々あるんですけどね。
官能表現入れようかと思ったんですが、ここはさらりと、消化不良を起こさないようにしようと思いこうなりました(笑
オリビアとデイブでヤらせようかと思ったんですが、さすがにそれをするとオリビアがトラウマでとんでもない事になりそうですし、そもそも場所と時間があり得ないですからね(汗
さすがに任務中に交尾するのも時間ありませんし、デイブのキャラもありますから。
各キャラクターの色んな面が見えてきましたね、取って付けたようなのもありますけど(苦笑
今回で=P90 and M14=は完結です。
次回はサブタイトルだけ明かしておきます。次回は“えむないん =C96=”です。
期待せずにお待ち下さい。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • ここまでやって犠牲者がでないとは....
    スパルタンの集まりか
    ―― 2010-07-24 (土) 16:59:57
お名前:

*1 RPG-7などの成型炸薬弾の威力を殺すためのカゴのような網目状になっている装甲。成型炸薬弾以外に効果は薄いが、成型炸薬弾に対しての防御性能はほとんど完璧
*2 ファブリックナショナル社が設計、製造する分隊支援火器。銃本体の重量を軽量化させる事により一兵士の携行弾数を増加させる事に成功。基本的な装弾数は200発で冷却器は空冷式、銃身の交換が容易。Mk46 Mod 1はアメリカの特殊部隊が採用したもので、銃身を短縮しピカティニー・レールとフォアグリップ、改良されたハンドガードと軽量な固定式ストックを装備したもの
*3 ジョン・ブローニングが設計した重機関銃。キャリバー50などと呼ばれる事もある。製造されてから70年以上経つが本銃の製造コストや性能を凌駕するものは製造されていない。装弾数は110発、有効射程は700~1000メートル。連射速度が比較的遅いためにフルオートとセミオートを操作しやすく、銃身、構造、使用弾薬の精度が極めて高いため狙撃にも使われる
*4 Remote Weapon Systemの略。意訳すると遠隔操作式無人砲塔。21世紀に初めて実戦投入された。一種の軍事用ロボットとされる
*5 激発後のスライドの後退した状態でスライドを停止させ銃自体の作動音を最小限に抑える事が出来る。ただし次弾を発射するにはスライドを元の位置に戻さなければならないため連射する事は難しい
*6 消音効果がある薬莢を持つ弾丸。薬莢内部にピストンがあり、激発時の燃焼ガスがピストンを押し込み弾丸を発射する仕組みになっている。さらにルーの麻酔弾は弾丸の内部にピストンがあり、着弾時に内部で薬品を化合させて内部の麻酔薬を対象に流し込む仕組み
*7 弾倉の中の弾丸が尽きる前に弾倉を交換する技術の事。ふいの戦闘で弾が無くなって応戦出来ないという状態を防止出来る
*8 1942年5月20日~1999年2月23日(満56歳没)。アメリカ軍の狙撃手。アーカンソー州リトルロック出身。ベトナム戦争で活躍したアメリカ海兵隊の中でも最も著名な狙撃手であり“ホワイト・フェザー”、または“白い羽毛の戦士”のあだ名で知られる。ある任務でハスコックとバークは北ベトナム軍の将校(ハスコックをおびき寄せる囮だったとされている)を800ヤードの距離から仕留めた帰途に、敵のスナイパーに捕捉されている事に気付く。500ヤード先の茂みの中で光る敵のスコープのレンズの反射光に向けて発射されたハスコックの銃弾は、そのレンズを貫通しコブラ(ハスコックに掛けられた賞金目当ての雇われスナイパーのあだ名)の眼球に命中していたという。コブラの死体を確認して賞賛するバークに、ハスコックは「レンズに目を当てていたということは彼も私を捉えていたということだ。私が先に撃ったのは運が良かったというだけだ」と述べたという(Wikipediaより抜粋)

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Last-modified: 2010-02-16 (火) 00:00:00
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