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いつか消える雲 3

/いつか消える雲 3

(…青?あ、夢か)
夢を見ていた。自分で夢をみていると分かるなんて、結構珍しいかも。
自分には大きくて白い翼が生えていて、草原の上に広がる青い、いや青すぎる雲ひとつない空を、優雅に泳ぐように飛んでいる。
恐怖は微塵もなかった。自分をあと押す風。ただそれだけ。
暗い色や闇はなく、周りは薄くて明るい色のパレット。心を写し出しているみたいだ。
しばらくすると山が見えてくる。その谷間から顔を出し、光を放つ、太陽。その光に半分目を瞑りながらも太陽へ向かって翼をはばたかせる。
もっと…もっと……


しかし静かで優雅な夢は、大きく、鈍い爆発音でぶち壊された。
ドォォォォォ…ドゥガァァァァァン!
家が一度大きく揺れて、その後小さく軋み続ける。
完全にパニックになったリナはすぐさま窓を開けて、周りを見た。
空を見ると、まだ村は闇の中だった。
微かに見えるのは沢山のポケモンの列。聞こえるのは村の人達の大きな声。
何を言ってるのかは分からない。
「ま…まさか…」
状況を仮定したリナは、開いていた部屋のドアを抜け、玄関へ突っ走る。
そこで…
ドシッ
誰かとぶつかる。
「う…ううん…あ、お母さん?」
顔を上げ、母の顔を確認しる。
しかしその顔はとても焦っている顔だった。
「ねえ…今の何?地震?それと今外に…」
「…リナ、焦らずよく聞いて。」
焦っている母が言えたのかは知らないが、リナの言葉を遮るように母が口を開く。
「…人賊が現れたの」

心に鋭い何かが走った。まさかのまさかだった…
顔は一気に青ざめ、森で植え付けられた恐怖心が、何倍にも膨れ上がる。


来るわけないって!

フランに言ったその言葉は今、一瞬で砕け散った。
「………..!!」
「今お父さんや、村の大人達が戦ってるわ…リナは危ないから部屋で待ってて」
そういうと、母もドアを押し、外に出ようとする。
「お母さん!行っちゃダメ…!」
「大丈夫よ。すぐ撃退して戻ってくるからね。」
もう一言言い、そして外へ出ていった。事を言う間もなく…
根拠もなく、そんな事を言われても、心配と恐怖は絶えなかった。いや、絶えるはずもない。
人賊______多分さっき自分が襲われた集団だろう。


助けたとでも思ったのか?


自分の冷たく投げ掛けられた言葉。
あのリザードは恐らく敵だ。
もしもあんなに強いリザードと村の人々が戦ったら…


血を見る惨事となるだろう…


_____絶対にそんなことさせない!村や皆を守る為にもきっと私の力が必要だ!
母の言葉は、記憶の片隅にやり、ドア
を少しだけ開けて、周りを見る。
と、いきなり
「ぐふぉっ…!」
エビワラーがドアの手前にすっとんできた。傷だらけだ…
「ひっ…!」
思わず高い声をあげてしまう。しかし周りには気づかれてないみたいだ。
次はエビワラーを見て、その後視線を手前へ戻す父の姿。
「ハァ…ハァ…くそう!一体何匹いるんだ!」
父が苦しそうに叫んでいる。
父の周りには恐らく人賊だと思われる、無数のポケモンが転がっていた。
その傍らでは母が、その奥では村の人々が戦っていた。
対するように大人達と戦っているのは、沢山のポケモン達。倒れている奴を抜いても、60匹は下らないだろう。
それにサイドンやクロバット、ケンタロスなど、技自慢、力自慢な感じの奴らが、勢揃っている。
その中には自分を襲ったであろう二匹のギャロップの姿も見られた。
と、のんびり敵を観察している場合ではない!自分も戦わなければ…!
心に杭を打ったリナはドアを押して外へ飛び出す!



少し前へ出た所で、ポケモン達に葉っぱカッターを、
打つ、打つ、とにかく打つ。
相手は不意に攻撃されたからか、回避できず、ダメージを受けたようだ。おまけにまだリナに気づかず、戸惑っている。
これで大人達にチャンスが生まれた!と思った刹那、
「リ…リナ!?何やってるの!?危ないから家に入ってなさい!」
母の怒号が飛ぶ。ここで屈するはずもないっリナは、
「だって…お母さんも傷だらけじゃないの!ほら、今がチャンスだよ!」
「リナ…よくやった」
父が横から言う。聞いていたみたいだ。その後父は、頭に光を集め始めた。
母は父の方を見ている。そして鼻でため息をついて言う。
「誰が敵かは分かるわね…思う存分力を放って来なさい!」
そう言うと母も父と同じ行動に出る。
リナはこくんと頷くと、前方に一歩、足を踏み出す。そして
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
大声を上げてポケモン達に突っ込んでいく。若葉色のつるのムチをしならせながら。
戸惑いをようやく消したポケモン達は、闇の中走りながら攻撃してくるチコリータに続けて戸惑った。
掴んだもうひとつのチャンス。その
隙に
ヒュンヒヒュンッ!
ビシッ!ビビバシババシッ!
雨のようにムチをポケモン達に打ち込みまくる。
相手全体がぐらつき、三度目のチャンス。つるのムチをしまい、少しの助走をつけてジャンプする。
再び二本のつるのムチを出し、真上に伸ばす、そして…
バビュン!!
バビビシッ!!
一気に降り下ろす。
「ぐ…!?ごぉぉっ…」
「がはぁっ…」
山のように固まっていた奴らがまるでドミノのように声を上げて倒れていく。それはそれで、中々面白い光景だった。
「ふう…大体はやっつけたかな…ん?」
結構奥の方にまだ倒れなかった「ドミノ」が暗闇越しに目に入る。
それは思いきりこちらへ
「ぬおおおおおおおおおおおおう!」
突っ走ってくる…!
それは鬼のような形相で声を上げるサイドンだった。
状況を把握できなかったリナはサイドンの突進をもろに食らう。
ドガガッ!
「きゃ…!」
小さい悲鳴は衝撃にかき消され、リナは地面と水平に、遠くへぶっ飛ばされる。
ズザァァザザァッ
地面に体がつくギリギリの所で、なんとか後ろ足で踏ん張る。
「ふ…ぐうっ …!」
鈍い痛みが全身を駆け回る。
体格差、不意だったなどで、リナへのダメージはかなり大きかったのだろう。
骨が折れないだけ幸いだった。
荒い息をしながら、サイドンがことらへ近づいてくる。
「ハァ…アア…中々手強い小娘じゃわい…だがわいはそこらに転がってる虫ケラとは違うんじゃあ!」
サイドンは指でビシッと地面に伏せているポケモン達を指す。
リナも同じく荒い息をしている。
「ディノ様からの命令じゃ…よくなぶってから連れて来いと…フヒ…フヒヒヒ…」
リナの苦しむ表情が奴を刺激したのか
、奴の歪んだ顔に少しの笑みが浮かぶ。
リナの頭には、気持ち悪いの一言しか出なかった。

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Last-modified: 2012-05-04 (金) 00:00:00
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