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いたみわけ

/いたみわけ

駄文執筆者文書き初心者
官能描写があります。苦手な方はご注意下さい。


 彼女の言葉を聞いた途端に、俺は思わず自分の耳を疑った。そして彼女の雰囲気や挙動を見るからに、それが間違いでないと悟ると、今度はこれは現実ではなくて夢じゃないかと思い始めていた。
――こんなことは絶対に有り得ない。
 そう、こんな結末なんて誰が予想していただろうか、いや誰も予想していなかった。特に、何時も彼女と側にいた俺にとっては、こんな事になるという予想は一抹も無かったのだ。
「御免なさい、本当に御免なさい……」
 その台詞を口にするや否や、彼女の眼からは大粒の涙が零れていた。ゆっくりと頬を伝っては、涙は雨粒の様に地面を濡らしていく。ぽつ、ぽつと涙は垂れて止まる気配はない。
 俺は口を開けず何も言えなかった。それどころか、脚が棒になったかの様に動かせず、身体も石になってしまい微動させるすら出来ない。まるで俺だけが時が流れていない感覚――。何も出来ない自分がもどかしい。
 願うのならば、今すぐにでも彼女を安心させてあげたい。御天道様みたいな彼女には相応しくない悲しみを断ち切りたい。
――でも俺は彼女に届かない。いや、俺はもう彼女に触れる資格なんか無いのだ。
 俺はただ、彼女の啜り泣きを眺める事しか出来なかった。悪く言ってしまえば、俺は黙り込んで彼女を歯牙にもかけなかった。そして、
「……さようなら、ブラッキー」
 彼女は俺に背を向けて、俺からどんどん離れていく。俺と彼女の溝は次第に埋められないくらい深くなってしまう。もう、彼女の元へは永久に近寄れない。
――待ってくれ、エーフィ!
 胸の内ではそう叫ぶ。しかし、それは言葉として口から生まれる事は無かった。それは言葉に成り損ねた苦しげな吐息でしか無かった。どんなに声を枯らすくらいに叫ぼうとも、言葉は発せられない。俺は一時的に口封じをされてしまった、或いは発する事を忘れてしまったかに。
 こんな時、何もしない自分が憎くて堪らない。この時になって漸く、彼女の気持ちなんて分かっていなかったと、気付いた自分に腹が立ってしまう。
 それでもやはり俺は彼女の後ろ姿を眺めるだけしかしなかった。焦躁感に駆られながらも、彼女を理解し得なかった俺の心は半ば絶望感に満たされている。今の俺には何かの為に、たとえその何かがエーフィだとしても行動する気力は残っていない。
 徐々に景色へと溶け込んで、掠れてしまう彼女の後ろ姿。そんな中、俺の目差しは彼女の二股の尻尾へと向けられ、離さずにはいられなかった。だって、
――俺と彼女を暗示しているんだもの。尻尾の先端が別れているのは俺達が結ばれないって事だろ?
 先端同士が限り無く近付けるとしても、一つとなれはしない。なれはしないんだ。俺と彼女だって――。
 そう自覚したときには彼女の姿はもう見えなかった。そして俺は見えもしないのに、ただ立ちすくんで彼女がいた所一点に目を向けていた。



 俺の脚先から柔らかな感触が伝わる。それが何なのかを調べる為に、脚をずらしてみる。するとそこには踏みつぶされて萎れた一輪の花があった。
 心の中で御免と謝るが、既に遅かった。気が付けば俺は四肢全て花を踏んづけてしまっているのだ。
 流石に可笑しい。俺はそう不審に感じて視線を地面から前方へとずらしてみる。
 その刹那、俺の視界を埋めたのは一面に広がった花畑であった。地平線の先まで色とりどりの花で埋め尽くされて、まるで此処は世界に一つしかない楽園ではないかと思ってしまう。
 肌を撫でる、温かで気持ちの良い風。風によってふわりと巻き上がる花弁。浮かんだ花弁がひらひらと舞い落ちる事によって美しい花吹雪となる。
 こんなに綺麗な光景を見た事はあっただろうか。いや、全部の記憶を思い起こしたとしてもこんな情景は見てはないと、はっきりと言えるだろう。
――そういえば記憶と言ったら、俺はとんでもなく大事な想い出を忘れている気がする。
 確証は持てない。しかしずきずきと頭が痛んで離れない。十中八九、その記憶は忘れているんだと思う。
 何を忘れているのか。俺は記憶を思い起こそうとした矢先に彼女、エーフィの姿が目に飛び込んできた。そして彼女は気が付いた俺へにっこりと微笑んでくれる。
 俺は彼女と出会えてとても嬉しくなり、地を思い切り蹴って走り出す。俺は無我夢中で彼女の元へと走った。それこそ電光石火の如く。
 走り寄ってくる俺に対して、彼女も逃げる様に駆け始める。逃げる様にとは言っても、鬼ごっこでもするかに笑いながらである。走る速度も素早い彼女に釣り合わない位あまり速くはない。
 俺と彼女が地面を叩く度に花弁はひらりと宙へ舞う。だけどその反対に、俺達はこの綺麗な花畑を踏み荒らしていく。一歩また一歩と花は潰されて元気が無くなっていくのだ。こんなにも足元の近くに花が咲いているのに、気にも掛けないでどんどん踏んでいく。どうせ、こんなに数え切れない程咲いているのだから心配する必要は無いと、俺は自分の心に言い聞かせている。
 花が枯れる代わりに、エーフィとの距離は次第に狭まっていく。少し、また少しと彼女との間隔は短くなり、そして終いには彼女を追い抜かして前へ躍り出る。
 俺は即時に静止して、くるりと身体を反転させる。向かってくる彼女を受け止める為に両方の前脚を宙に浮かせる。
 すると彼女は笑いながら思い切り俺の胸へと飛び込んでくる。俺はがっちりと彼女を受け止めたと思いきや、勢いがあり過ぎて俺の身体は後ろへと傾く。このまま後ろへ倒れると予測していると、ごろんと一回転、ごろんともう一回転していく。俺は彼女と一緒に輪になって回っていた。
 時間が経つにつれて回転数は落ちていく。そして漸く、俺が仰向けの彼女を覆うような態勢となって、運動は停止した。
 さっきの行為が楽しかったのか、彼女はくすくすと笑いだす。俺も釣られて、あははと声を上げて笑い始める。
 この花畑には俺達の楽しげな笑いしか聞こえなかった。誰かの悲痛な叫びなんて響きもしないし、響く要素も無かった。
――何もかもが幸せ。
 彼女と一緒にこの楽園にいる事が。彼女と一緒にこうして笑い合えるのが。俺が望んでいたものが手に入ったのが。
 段々と笑いは納まっていき、俺達はただ黙って見つめ合う。次第に楽しげな雰囲気から一変し、粛然な雰囲気へとなる。
 この雰囲気は幾度となく味わってきたから、この次に俺が何をすればいいのかがよく分かる。それに彼女も黙ってはいるが、眼で俺に訴えていた。
 俺は自らの口を徐々に彼女の方へとゆっくりと少しずつ近付ける。それに伴い、俺と彼女は身体を重ね密着していく。
 そして、俺と彼女の口同士が触れ合う。でも触れ合うだけでは物足りない俺達は、舌までも接触させて愛情表現をし合う。相手の舌を舐めようとするとそれ同士が絡まる羽目になる。その動作と並行しながら、お互いの唾液を受け渡しあう。時々、熱い吐息が漏れては彼女との甘い雰囲気を繕ってゆく。
 彼女のとろんと垂れた目、彼女の仄かに紅く染まった頬、俺の身体に添えられた彼女の前脚、俺の少し太めである尻尾に巻き付く彼女の細い尻尾、それらが全部、俺が愛しいと訴えている。
 対する俺も彼女に体重を掛けて、もっと密着するように、もっと彼女と触れ合えるようにとする。身体だけでなくて、心までくっつくようにと。そうすると彼女の日溜まりの様な暖さが身体を通して隅々まで伝わってくる。
――まるでとろけるくらい甘い夢を見ているようだ。
 俺達は濃厚な接吻に無我夢中であった。それこそ時間の流れを忘れたかに何時までも永久にし続ける。
 でもやはり辿り着くべき終点は存在する。あんなに一つとなっていた俺達の舌は離れてしまう。くっつけられていた口にも距離が生まれていく。
 口と口が離れると、俺達は先程同様にじっと見つめ合う。お互いの口元に繋げられた唾液の糸が解けるまで、口を開けてまま何も話す事無く。唯、口と口との間に出来た透明な掛け橋だけが時間の流れを教えてくれる。
 ふたりで混ぜ合った唾液がとうとう垂れてしまい、彼女の口元を汚す。俺はそれを除去する為に、彼女の口元に顔を近付けて舌でぺろりと舐め取る。すると彼女は有難うと言う様に俺へ微笑みかける。
――やっぱり彼女は笑顔が似合う。
 俺はそう思うのと同時に“やっぱり”って何だろうと疑問に感じた。俺は今まで彼女を悲しませた事なんてあったのだろうか。
 しかし結局それに当てはまる事柄も浮かばない。やはり気の所為に過ぎなかった……だと思う。
 意識を思考から彼女へと切り換えれば、何やら恥じらいの態度で彼女が俺を見ている。何だろうと思い、彼女の視線を辿っていけば牡の象徴が露となっていた。おまけにそれが彼女の身体へ当たっている。
 それに気が着いた途端に、俺の頬が突然熱くなるのを感じた。流石にこれはまずいだろ、と思って離れようとする。しかし離れる事は出来なかった。何故なら彼女の前脚が俺の身体を捉えたからだ。
 何事かと思って、俺は彼女を再び覗くと、彼女は何か言いたげにもぞもぞとしている。そして彼女は二股の尻尾を俺の尻尾から離し、尻尾の股の部分で俺の肉棒を挟みこんだ。
――ちょっと、これはいくらなんでも不意打ちだろ。
 俺は余りにも唐突な出来事過ぎて、咄嗟の反応が出来ず苦し紛れに声を漏らす。このまま尻尾で俺の肉棒を扱いていくかと思いきや、
 ぐいっと。
 彼女に肉棒を引っ張られ俺は痛みを緩和する為腰を落とす。しかし次の瞬間には肉棒は熱いものに包まれていた。熱いものの正体に気が付くのに、俺は時間を要していまう。
――この位置ってまさか。
 そう、そのまさかであった。彼女が尻尾で肉棒を挟んだのは狙いを定めるが故に。肉棒を引っ張ったのは俺を彼女の中へと導くが故に。俺は彼女の膣へと肉棒を入れてしまっていた。
――どうせだったら口で言ってくれればなあ。だったら俺も、
 そう思い俺は、肉棒を動かし始める。熟れきった木の実の様に彼女の膣内は潤滑油で満たされているから、思ったより滑らかに肉棒が動いていく。ぐちゅぐちゅと結合部から卑猥な音を響かせながら。
 そうすると、彼女は心地良さそうに嬌声を上げて俺からの刺激を受け止める。身体が揺れる度に、規則的に声を自重せず漏らしていく。
 はぁはあと荒い息遣いをして、瞬く間と快感の虜になった俺達。理性は欠け落ちてしまい、身体が勝手に反射していく。もう欲求を満たすために営みを続けるしか術は無い。
 何度でも何度でも飽きること無く、単調に肉棒を運動させては彼女の膣奥を突いていく。運動させる毎に熱い肉壁で締め付けられ、まるで溶けて消えてしまいそうだ。
――でも、きえてしまうのもいいかもしれない。どうせ、
 彼女がもう一度、俺の尻尾に自身の尻尾を絡ませてきて、俺と彼女は繋ぎ止める。それは結ばれた証であるように思える。
――どうせ、むこうはさむいんだ。だから、
 俺達の身体は営みの所為で火照ている。身体からは汗が滲み出て、身体を伝って地面へと垂れていく。吐く息も熱を帯びており、寒いなんてものじゃない酷く熱い。熱過ぎるのだ。
――だから、いまはこのぬくもりをはなさずだきしめる。
 度重なる刺激によって、俺の肉棒は破裂寸前となっている。だから俺は彼女にぶちまける為に私利私欲となって運動を加速させていく。さっきよりかももっとはやく。さっきよりかももっとしげきを。
 彼女が快楽のお陰で放心状態に陥っている。そんな彼女を眺めつつも俺は彼女の事を一切心配しない。もうすぐ着くであろう絶頂に目が眩んでしまっていた。
 そして彼女が甲高い、艶のある声を突如発した後に俺は、かのじょのなかへといきおいよくぶちまけた。



 今日のは甘くてとろける夢だった。綺麗なお花畑で彼女とふたりっきりで。それは俺の理想郷であるのに違いなかった。そう、その理想郷にいたからこそ、この薄暗い洞穴に独りでいるのが何とも空しく、そして寒いのだ。
 俺は仰向けの態勢から首を動かし、違和感のある下腹部の方へと視線をずらしていく。すると自分の黒い体毛とは対照的な白いものが纏りついているのが目に入る。
――ははっ、笑えるよ。
 あんなにも必死で彼女の中へと出した筈なのに、結局俺にこびりついてるとは。そう思うと俺は苦笑いせずにはいられない。
――俺も馬鹿だろ。もう彼女はいないって言うのに。
 そう、夢と言うまやかしに踊らされたのだ、俺は。身体を重ね合わせたのも、麻痺しそうになるくらいの快感も、そして彼女の太陽みたいな優しい温もり、何もかもがまやかしだった。嘘だった。
――あんなに、あんなにも一緒だったのに。
 俺の隣には何時も彼女がいた。どんな所に行こうとも、どんな事をしようとも、必ず彼女が隣にいた。それなのに、
――俺は彼女の事なんてちっとも分かっていなかった。
 隣で彼女がどんなに苦しんでいたのか、どんなに悲しみを叫んでいたのか。そして俺は、彼女と密着する肉体同士の関わりがあったのに、
――俺には何一つ彼女の言葉が届いていなかった!
「はあはぁ……」
 息が苦しくなる。呼吸なんてしているのだろうかと疑いたい。すると今度は酸素不足か何かで頭痛が響き渡る。それでもこんな苦しみ、彼女が味わったものと天秤を掛けたら遥かに軽過ぎる。軽過ぎるのだ。
 もっともっといたぶってくれよ。そしたらおれはいたみがわかるやつになれるから――。

 暫く経って呼吸が整うと、俺はこの忌まわしい汚れを拭う為に川へ行く事に決心した。仰向けの態勢から、くるりと身を反転させて四つの脚で立ち上がる。そして俺は外へ向かって一歩一歩踏んでいく。足取りは普段と比べて重たかった。
 遂に外へ出る。すると俺は今年初めての雪が降っているのに気が付いた。ふわふわとちょっとした風でも流れてしまう粉雪に。






 春を謳うのにはまだ程遠い。




後書き
黄金CPでこんな駄文書くなよと非難が飛んできそうな駄文となりました。
やっぱり自分がブイズを使うとまともな作品にならない。

追伸、人の痛みが分かる人間になりたい。



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Last-modified: 2010-02-08 (月) 00:00:00
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