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「創造~想像~された世界」

/「創造~想像~された世界」

≪警告≫


私が投稿する小説には以下の表現が含まれています。

・ポケモンが獣人化している
・ポケモンが武器を使用する
・人によっては嫌悪感を感じる表現(性的行為などの官能表現や流血・殺害などの残酷描写

これらが苦手な方、嫌悪感を感じる方は私の小説の閲覧をご遠慮ください。









「なんだ、日本人……また獣か」
 質素な二段ベッドの二階でノートパソコンを弄っていて、部屋へ入ってきた仲間にそう声をかけられた。短く切り揃えられた黒髪は全て後ろにひっくり返されている。訓練にも積極的で、結果もそれに伴って上がり調子、上官にも気に入られている部下の一人だ。
「ほんっと好きだな、そういう……狼人間みたいなの」
「狼人間じゃなくて獣人だけどな。竜人とかもいるし」
「へいへい。でもそろそろパソコンも閉じて寝ろよ?まーたあの鬼軍曹にパソコン真っ二つにされるぜ」
 そう言われて俺は時計を見た。もう消灯時間まで5分を切っている。一ヶ月前のことだ。丁度こんな感じでパソコンを弄っていたら、消灯時間が迫ってきて見回りに来た軍曹にパソコンを壊された。日本人はいつもそうだ、こんなものがあるから夜更かしして訓練に集中できなくなるのだ!と大声で喚き散らし、運悪く画面に表示されていた素っ裸の獣人を指差してカンカンに怒っていたな。
 もう俺以外は皆ベッドに入って寝る準備をしている。
「こんなもんでいっか」
 下書きがやっと完成した画像を上書き保存して、パソコンを静かにシャットダウンした。
 このコンクリートの兵舎で、俺はまた暑苦しくて寝心地の悪い夜を越さなければならない。そう思うと、体がさっさと眠って感覚をシャットアウトしようとしてくれた。

 だが、その静けさもすぐに突然の警報音にかき消された。

『緊急出撃要請確認、直ちに出撃準備せよ。繰り返す――』

 俺含め兵舎の全員がまるで予め予期していたかのような速さで飛び起き、下着姿から瞬く間に軍服姿になる。そして、武器庫で担当者から順番に武器が手渡される。

「お前は今回司令部からの伝達で突撃班に割り当てられてる!」

 そう言って手渡されたのはミニミ軽機関銃だ。1974年にベルギーで開発され、今もなおこうして使われ続けている有能な機関銃だ。弾薬は5.56mm×45。つまり他のアサルトライフル弾を使用するため、汎用性が高い。さらに、ベルト給弾方式で最大200発連射が可能だ。その総重量6.9kgの怪物と大量の弾薬を手に、俺は他の仲間の後を追った。


「何が起こってるんだ?」
「情報部からの伝達だと、ヤクでハイになった所属不明の武装集団がホワイトハウスとかそこらへんの政府関係施設に攻撃しようとしてるらしい」
「なんでまたそんな……」
「警察特殊部隊だけじゃ対応できない規模なんだとさ。すでに殉職者が出てる。で、俺らは攻められる前に横から奇襲で戦力を削ぐ。んで、他の部隊が正面から鎮圧」
「ったく、また貧乏クジかよ」
「そうぼやくな。成功すりゃ昇格確定してんぜ?それに、ここでやっときゃ俺ら軍の信頼も上がる」
 ホワイトハウスの敷地を北から侵攻してくるテロリストを、俺たち6人で東の茂みから奇襲をかけ、テロリストを混乱、あわよくば戦力を削ぐ。それと同時に南からホワイトハウスを通って別部隊が参戦、鎮圧。どういうわけか。俺は潜入や偵察よりも突撃に関して評価されてばかりで、最近こんな貧乏クジばかりを引く。
「きたぞ」
 仲間のその言葉に、俺は音もなく茂みの影に頭を引っ込める。そして、ヘルメットに装備された暗視ゴーグルを装着した。視界は狭くなるが、暗闇でもわずかな光を認識して明るく見えるようにしてくれる優れものだ。しばらくすると、明らかに頭がおかしそうな連中が何の警戒も無く敷地を進入してきた。持っているのはそれぞれバラバラで、いかにもかき集めてきた感じがする。だがその中にとんでもないものを見つけた。マンビルXM-18。グレネードを18連射できてしまう破壊兵器だ。あんなものがあるとは、予想外だ。
『こちら狙撃班、聞こえるか?予定外だが、グレネードの馬鹿を先制攻撃で俺がしとめる。その直後、突入してもらいたい』
 耳に装着されたインカムから、ボリュームを抑えた音声が聞こえてきた。ホワイトハウスの屋上にいた狙撃班からだ。
「了解、丁度そうしてほしかったところだ」
 合図を待つ。思わず、ミニミのグリップを握る手に力が入る。テロリスト達がホワイトハウスの目の前にある噴水まで来た。これ以上動かれると、スナイパーが射角を取れない。狙撃はまだか?
「…………………」

 ピシュッ

 意識を集中させていないと聞こえないような微かなサイレンサーの音がした。同時に、テロリストが一人……倒れなかった!丁度後ろにいたもう一人の腰、手投げグレネードに命中してしまった!
 テロリストは断末魔の叫びを上げること叶わず、爆散した。その爆風で、他の連中が持っていた爆発物へ次々と誘爆していく!

「……派手にやってくれたな……」

 爆発の連鎖が終わるころには、テロリストは姿を消していた。確認のため、俺たちはその現場へとむかった。
「こちらフォックス1。狙撃班へ。予定変更しすぎだ。俺たちに見せ場をすこしくらい分けてくれよ。以上」
『すまない、フォックスチーム。次は気をつける。だが、弾丸一発で済んだんだし、そこは褒めてほしいな』
 緊張がほぐれてきたようだ。皆、さっきまでのピリピリした空気ではなくなっている。回収班がくるまで暇なので改めて爆心地を観察する。地面は大きくえぐれ、もうそこに何があったのか予想もつかない。どうやら、TNTやC4プラスチック爆弾を持ち込んでいたようだ。そこに、なんだか黒いヒビのようなものが見えた。うまく焦点が合わず、はっきり見えない。
「おい、なんかあるぞ」
 離れていた仲間を呼ぼうと背中を向けたそのときだった。突然突風が俺を襲った。
「日本人!後ろだ!」
「な、なんだよありゃぁ!」
 その突風に耐えれず、そのまま後ろにひっくり返ってしまう。そして見えた。さっきのヒビなのだろうか、境界があやふやな真っ黒な穴がその『空間』にぽっかりと、直径3mの口をあけていた。この突風は、その穴が見境なしに周りのものを吸い込んでいるからだろう。少し冷静に考えたらそこまでわかっただろうが、こんな状態で分析なんてできるはずもない。
「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 必死に地面を引っかき、蹴り、それから逃げようとするが、まるで見えない鎖で引っ張られているかのように穴へと引き寄せられていく。その間にも、皆が地面に置いていた武器や弾薬、爆発で出来た瓦礫、噴水の水が俺を通り過ぎて穴へ消えていく。助けを求めたいが、仲間たちは木やポールにしがみついて自分の事で精一杯のようだった。

 そして、俺の視界は周りから黒くなっていき、ブラックアウトした。










 体中が痛い。関節が悲鳴を上げている。意識が戻ってきてまずそう思った。重い瞼をこじ開けると、見慣れない石の彫刻が目に入った。体を起こすと、そこが何かの教会のような、礼拝堂のようだった。ただ、突き当たりの壁にあったのはキリスト教のシンボルともいえる十字架ではなかった。一見聖母マリア様のようだが、よくみれば……
「これは……獣人?」
 優しい微笑を零す犬のような顔。今まで見た事の無い顔だ。人間のように長い髪を腰まで伸ばしている。なんなんだ、ここは。その足元には祭壇だろうか、分厚い本が開かれていた。痛む体を動かし、歩み寄る。そこに書かれていたのは、英語でもなく、ポルトガル語でもなく、はたまた日本語でもなく、見た事の無い意味不明な文字が並んでいた。適当にページをめくってみる。挿絵を見つけたが、そこに描かれているのはどれも獣人だった。俺がよく書いている獣人だ。さまざまな種族が存在するようだ。そして、その中に一人だけ、人間と思しき人物を見つけた。
「……人間……にしては顔が猿っぽいな……」
 その挿絵を見る限り、どうやら伝説的な扱いになっているようだ。皆膝を突いてその人物に頭を下げ、またその人物は……災害だろうか、竜巻や津波、火山へ手を向けている。その災害が遠ざかっているかのような表現がされている。
「そうだ、武器は……」
 辺りを見回すと、俺が持っていたミニミを始め、他の隊員が持っていた武器が転がっていた。この状況から見るに、どうやら俺は別の場所に空間転移したようだ。こんな不可解な事、そう考えるしかない。吸い込まれてからそう時間は経っていないはずだ。武器回収していると、礼拝堂の出入り口である大きな扉から鍵を開ける音がした。
「礼拝も無いのに物音がしたと?」
「はい……今見たように鍵も閉まってたはずなんですが」
 条件反射なのか、俺はとっさにいくつも並んでいる長椅子の陰へ身を隠していた。使われていた文字は存在しないものだったが、使っているのは日本語?訳がわからない。身を隠しているので姿は確認できないが、会話からすると入ってきたのは二人だけみたいだ。
「あら?……クンクン……妙な匂いがします、神父様」
「そのようだな。これは……火薬?鉄の匂いもするのぅ?」
「そんなもの、この教会には置いてないはずでは?」
「あと……人の匂いがするかのぅ。汗と垢の匂いか……おや、女神像の前に武器のようなものが……」
 匂いで存在がばれた!いったいどんな嗅覚をしてんだ?このままここに居たら見つかってしまいそうだ。幸い、ミニミと弾薬、ハンドガン、マグライトを回収していたからこのまま隠れて逃げようとしだが……

 カタァンッ!

 胸のマガジンポケットのフタが開いていることに気が付かず、柱の裏で立ち上がった拍子に中からハンドガンのマガジンが落ちてしまった。大理石の地面に鉄のマガジンが落下すれば、それこそ今のような大きな音が出る……
「こんな誰も居ない礼拝堂に何の用かね?出てきたまえ……我々は何もせん。困っているならば手を貸そう」
 この老人の低い声は神父だろうか。でも、明らかにこの礼拝堂……何かがおかしい。邪教徒の集団の可能性もあり得る。俺はまず時間と場所を把握すべく、姿を隠したまま会話することにした。
「悪いが、その言葉を信用する訳にはいかない。変な事を聞くが、現時刻と場所を教えてもらいたい」
 どうなってもいいように、ミニミから手を離してハンドガンに持ち変える。物陰から早撃ちする場合、重量が重く銃身が長い重火器より、ハンドガンの方が対応しやすい――――と訓練されているのを思い出したんだ。
「えーと?今は午後2時、ローテル教会……半島南沿岸部にあるルード村だが?」
 半島?ルード村?日本語を使っている辺り、ここは日本……のようだけど、そんな『半島』と呼ぶような場所は限られているし、そんなところにルード村なんていう場所は存在しない。そもそも、なんでそんな西洋くさい名前なんだ?
「いつまで隠れているのだね?我々、愛と慈愛の女神に仕える者が危害を加えるとでも?」
 そこまでいうのなら、と、俺はハンドガンを両手でホールドしたまま柱から姿を現す。そして、お互いの姿を確認することができた。




「「そ、その姿は……!」」



 驚いた。一瞬着ぐるみかと思ったが、その耳や尻尾、目が動くのを見れば、それが作り物ではないのが分かった。ここの本や像のような、完全な獣人だった。でも、実際に見た事のある動物ではなかった。どこかで見た事のある変わった姿だった。
「し、神父さま……あれって……」
 シスター服を着ているのは、桃色の毛並みをした猫だかよく分からない獣人。額には赤い宝石が輝いている。
「確かに聖書に記されている『メシア(救世者)』によく似ている……しかし……」
 神父と呼ばれた男は、黒い神父服を着た鳥人。なんだろう……トーテムポールなんかによく使われるような感じの鳥の頭だ。翼とも手とも分からないその羽で分厚い聖書を抱えている。
「メシア?なんの事だ?」
「なんと、神話を知らんのかね?」
 神父はティォッ!と変わった鳴き声をあげ、その細かった目を開いた。
「その祭壇にある聖書を見たまえ。そこに、貴方が一体何者に似ているのか、はっきり書かれておる」
「見た事の無い文字なもんで読めないんだけどな……」
 改めて聖書を手に取り、じっくりと内容を見てみる。さっきのページ。そこには、災害を示す竜巻や雷、津波――それを制するように右手を向ける人物――その人物を崇めているかのような獣人や鳥人、竜人の姿……
「……まず神は何も無い世界に大地を作られた――――」
 神父がその神話だろうか、ゆっくりと語り始めた。同時に、俺は手元の聖書の挿絵を見ていく。
「果ての見えぬ海に、ひとつの巨大な大地。そこへさらに神は二人の『人間』を放った。一人を女、男、と、性別を作った。それぞれを、『イヴ』『アダム』と名づけた」
 ここまで聞く限り、俺の知るキリスト教と全く同じだ……しかし、どうやってそこから彼らのような獣人ができたのだろうか。
「神はその二人を大事に見守り、その生活を楽しんでいた。神はさらにその数を増やしていった。そして、いつしか『人間』達だけで数を増やしていき、命を繋いでいけるほどになった」
 もうこの時点でおかしい。神から禁じられた木の実が出てこない……
「そしていつしか、人間は神に近づこうとした。天候を操り、今までとは全く異質な命を作り出し、神の力を手に入れようとした。しかし、その力は自らの身に降りかかり、滅ぼさんとしていた。そのとき、神は大変胸を痛められた。このままでは大地から命が絶えてしまう。その変わり果てた大地に、生き残れる生命を新しく作られたのだ。それが我々のはるか昔の先祖達。皆異なった姿、力、能力を持ち、その過酷な環境に対応していった。しかし、人間は違った。瞬く間にその数を減らし、ついにはたった一人になってしまった」
「救いようの無い話だな……自分の首を自分で絞めて……」
「だがまだ話は続くのだよ。――――その人間は、せめて自分が滅びる前に、自分達人間が犯し引き起こした罪と災害を償い沈めようとした。そう、新人類達ではその人間が作り出した力に干渉できなかった。しかし一人では限界がある。神はその残った人間にひとつの光を与えた。それはありとあらゆる罪を浄化し、それによって引き起こされた災害はすべて消えていった。彼が傷に触れればたちまち何も無かったかのように消え、目を覚まさない病人に触れればただ眠っていただけのように病が消え去り起き上がる。そして、自然に起こった災害……嵐や火山の噴火、地震が起こると、彼はその手を災害へ向けた。その手からは光が発せられ、ピタリと静まった。その人間を新人類は『最も神に近い者』『神の使者』そして『救世主(メシア)』と呼んだ」
 最初に見た挿絵……丁度この話の部分らしい。
「そして、彼が全ての清算を終えた時、彼の背中に真っ白な美しい翼が生えた。その直後、天から同じ翼を持つ者達が舞い降りてきた。あらゆる脅威に立ち向かい戦う力を与えてくださる戦の天使『ゼルエル』、常に大地に命と潤いを与えてくださる潤しの天使『サキエル』、どんな恐怖や絶望の中でも希望を与えてくださる光の天使『シャムシエル』、そして、常に人々に優しさと思いやり、愛を分け与え、苦しみや痛みを和らげて下さる慈愛の女神『マリア』……彼らはその力を解放し、混沌と化した世界を明るく照らされた。そして、その人間は天使らと共に天へ姿を消した…………」

 そこで神父は手にしていた聖書をボフンと閉じた。

「まさか?俺がその最後の人間にそっくりだっていいたいのか?」
「いえいえ、まさか。確かに人間……のようですが、まさかメシアだなんて……メシアなら翼があるでしょう?」
 ここまで言われれば、もうここが全くの異世界だと分かる。しかし、全く同じ『人間』が存在するというのには正直驚いた。
「そうだな。確かに、俺は恐らく――いや、確実にこの世界とは異なる世界から飛ばされてきた人間だからな」
「なんと、異世界の人間ですと?」
「ああ、俺の世界じゃ人間が溢れかえってる。あまりに増えすぎた人口を海のそこに町を作って移住させたりもしてるしな」
 そこで思い出した。彼らの顔、どこで見たのかを。シスターの特徴的な額の宝石と桃色の毛並み、獣の大きな耳……神父の丸っこい頭と表情の無い半円のような目……『エーフィ』と『ネイティオ』だ。この名前から分かるだろうが、驚く事に彼らはあの『ポケモン』……『ポケットモンスター』という人気アニメのモンスター達だ!彼らの姿や聖書の挿絵を見る限り、どうやら皆獣人化されているようだ。幻獣というのは見間違いや戒め、自然現象を生き物の所為にすることで生まれた『幻の獣』。だれかが考えなければ存在しないもの。そういった想像によって構成された世界があるだなんて馬鹿げた説を提唱した学者もいたが、まさか実在するなんてな。

 ともかく、元の世界に帰る事より、この世界でどう動けばいいのか、これが大きな問題になりそうだ。



 全く、面倒な事になった。



                                                               END






あとがき的なもの

始めまして、ヴァイナーと申します。
武器やファンタジー、SFが好きで小説を書くとこんな感じに仕上がってしまいます……
文章や表現がまだまだ未熟な部分もあり、なかなか文字数が増えていきません。
もし気になる部分や直したほうがいい部分が見つかりましたら、遠慮なくコメント欄にてお知らせください。

こんな小説ばかり書いていきますが、どうぞよろしくお願いします!


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Last-modified: 2014-07-30 (水) 21:34:10
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