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-Ruined City- ver3 の変更点


この物語には流血表現が入る可能性があります

ACT7 母さん

目の前の生き物は私たちの動きを待っているのかなにもしてこない・・・。
対陣するだけで、その強烈な威圧感が私にはのしかかっていた。それに真っ向勝負をすれば勝ち目はないだろう
一目見ただけでそれがわかってしまう・・・。それだけ生き物の威圧感は凄まじいものだった。
「・・・・・・・」
生き物は何も言わずただその場に立っていた。隙だらけに見えるようでまったく隙がない・・・。
「・・・来ないの?」
不意に生き物が口を開く。生き物はまるで私達を挑発するように片手で手招きをする。
「お前達は一体誰だ?・・・フフフ・・・関係ないか・・・」
生き物は高々に不気味な笑いを上げたかと思うと、ものすごい勢いでバシャーモに襲いかかる。
バチン!! 拳と拳がぶつかり大きな音をたてる。
生き物は、すぐに次の行動へと移る。片手で小さな黒い球体を作り出すとバシャーモの腹部にその球体を押し当てる。
「グワ!?」
口から紅色の液体を吐き出し数メートルほど後ろに飛ばされるバシャーモ。やはりあの生き物は普通じゃない・・・。
私の体は徐々に震えを帯び始める。それは武者震いなどというものではなかった・・・。純粋な『恐れ』・・・
「・・・ものたりない・・・それが本気?・・・フフフ・・・楽しい?」
再度高らかな不気味な笑いを上げると。今度は私にむかって生き物は突っ込んでくる。
私はとっさの判断で生き物の攻撃を横に転がりよける。しかし、生き物はそれを見通していた。
私が顔をあげた時、視界には生き物の足が飛び込んできていた。
ドス!! 生き物の蹴りをもろに顔面に食らった私はそのまま、なにか壁のようなものに当たるまで吹き飛んだ。
私が痛む顔を片手で抑えながら、目をあけると。生き物はバシャーモ達と格闘を繰り広げていた。
3対1でも平然と互角以上に戦う生き物、私は立ち上がるために自分の背中の台のような物に手を乗せる。
「ん・・・?」手をついた時に、私の手に柔らかい物が触れる。
私は立ち上がると、その柔らかい物を見るため後ろを振り向いた。
「そ・・・そんな・・・」私は自分の瞳に映った光景が信じられなかった・・・。台の上にいたのはラミ本人だった・・・。
「ラミ!!どうしてこんなところに!?」
私はラミの手足についている管のような物を引き抜き、体を拘束している紐のような物を腰に携帯している小さなナイフで斬る。
「しっかりしてラミ!」
首についていた管と紐を私は切り取りラミを抱き上げる。その途端、股の間からピンク色のドロッとした液体が垂れる。
私はその液体に指をあてる。液体は妙な粘つき感があり感触はとても不快な物だった・・・。
だけど私はこの液体を知っている・・・この液体は・・・そう・・・紛れもなく・・・
私はラミの胸に手をおく、小さいが僅かな膨らみがある胸からは、かすかにだが鼓動を感じる。
なんとか息はある・・・。私は少しだけ安心したが、ほおっておけば間違いなくラミが死ぬ事は分っていた。
私はラミを担いだまま部屋を出ようと全速力で走り出した。その時だった。 
「母さんを・・・どこに連れて行く!?」
突然生き物が私めがけてシャドーボールを放つ。私はそれをジャンプでかわし間合いを取る。
「母・・・さん?なんの事?」
私は生き物に尋ねる。あの様子だとラミの事を母だと思っているのだろうか、しかしその容姿はどう考えても別の存在だ。
「母さんを返せ・・・返せ!!」
「な・・・どういう事だ?どうしてここにラミが!?」
ルフが振り向き私の腕に抱かれているラミに気づく。そしてすぐにグロデスを睨みつける。
「グロデス!貴様かぁ!!?」
彼はそう叫ぶとグロデスの白衣を掴み、顔を力いっぱい殴った。
「それがどうかしたか?偉大な実験には尊い犠牲も必要なのだよ・・・ククク・・・」
「こいつ・・・」
「私を殴ってもこの状況は変わらんよ・・・ククク・・・」
ガス!ルフはグロデスの顔を再度殴りつけると、ゆっくりと立ち上がり生き物のほうを向く。
「ジルド!こいつは俺達がなんとかひきつける!お前は早く行け!」
「ルフ・・・わ、分った!」
私はルフにそう答えると、研究室のドアを開け階段を駆け足で登っていく。
グロデスの地下研究室を出ると、ユキメが丁度グロデスの部屋に入ってきた所だった。
「あれ・・・どうしたの?それに、なんでラミがいるの?」
「説明してる暇がないの!私はラミを病院に運ぶから後は任せたわ」
私はユキメの横を駆け足ですり抜けると廊下を走った。後ろから奴が追ってくる気配は感じられなかったが。
全速力で私は城内を駆ける。夜間の出入り用の門の横にある小さなドアを開けて外にでる。
「ハァ・・・ハァ・・・」グロデスの研究所からここまではしり続けたせいかすでに体力が限界に近くなっていた。
疲労感に襲われるからだに私は鞭を打ちまた走り出す。
時刻は午前4時、まだ日は昇っておらず私の向かっている城門の明かりだけが頼りだった。
後少し・・・城門まで後数百メートルという所で私は城門に向かって叫んだ。
「おーーーい!!」
私が叫ぶと、見張りのグラエナとワンリキーが何事かと私の元に走って来る。
すでに私は限界を達しておりその場にラミをかかえ倒れこむ。
「どうしたんだジルド?なにがおきたんだ?」
ワンリキーが大声で私に説明を求める。いつ聞いてもこいつの声はデカイ。もっとトーンを下げてもらえないものか。
「お願い・・・ラミを・・・病院に・・・」
私はラミをワンリキーに渡す。かすかだがちゃんと息をしている・・・。
ワンリキーはラミを抱きかかえると。私の顔を見た後グラエナの顔を見る。
グラエナが無言でうなずくと、ワンリキーは城下街に向かって走り出す。
その時だった。城の廊下の所で小規模の爆発がおこり上空に向かって青白い閃光が走ったのは・・・。



ACT8 神話の生物

研究室からジルドがラミを抱えて走り出す。しかし、生き物はそうはさせじと彼女を追いかけようと走りだす。
だが、それはバシャーモによってせき止められた。彼の放ったブレイズキックを腹部にうけ吹き飛ばされたからだ。
「よくも母さんを・・・」
生き物は立ち上がると、手に小さな黒い塊を作り出した。だが、その黒い塊は今までの物よりも大きく当たればただではすみそうもない。
「消えろ」
巨大なシャドーボールがバシャーモめがけて放たれる。しかし、その攻撃は見切られ簡単にバシャーモに避けられる。
だが、その時想定外の事がおきる。バシャーモが避けたシャドーボールは研究所の入り口に向かって飛んでいった丁度その時
入り口のドアが開きグレイシアが入ってくる。
「に、逃げろユキメ!!」
「え・・・?」
彼女に逃げる暇はなかった・・・。ユキメは巨大なシャドーボールに飲み込まれ、小さなエネルギーの爆発がおこる。
エネルギーの放出によって生み出される衝撃波によってルフ達・・・生き物までも壁に向かって弾き飛ばされた。
「ユキメ!」
ルフはゆっくりと起き上がると、爆発の起きた場所を見る。
そこには、横たわる一匹のグレイシアと何故か氷の破片が散らばっていた。
「ククク・・・凄まじい力だ・・・だが、まだ力をコントロールできてないか・・・」
グロデスは立ち上がると、生き物の元まで歩きながらそう呟く。
「あれだけのエネルギーの塊を放ってもまだ意識がはっきりとしているか・・・恐ろしい生命力だ・・・」
ゆっくりと生き物に向かいながらグロデスはぼそぼそと呟き続けていたた。
「待てグロデス!こいつは一体なんなんだ!」
バシャーモがグロデスに向かって叫ぶと、グロデスは歩みを止めるとバシャーモ達に向かって振り向きつぶやく
「こいつの名前か・・・ククク・・・ミュウツー・・・そう過去に呼ばれていた怪物・・・」
「ミュウ・・・ツー・・・」
生き物が微かに呟く・・・しかし、それは誰にも聞き取る事は出来なかった。
「馬鹿な・・・神話の生き物がどうしてここに?」
ワズがグロデスに向かって叫ぶとグロデスが大声で笑い出す。
「ククク・・・馬鹿な・・・か、私に言わせてもらえば、お前達こそが馬鹿だな・・・こいつは神話の生き物などではない・・・
過去にちゃんと存在していたのさ・・・そして私は見つけたのだ・・・こいつを・・・遥か北の地・・・氷に包まれた城の中でな!!」
グロデスは大げさに両腕を開くと、呆然としているルフ達に最後に言い放った。
「見るがいい!こいつこそが・・・煌きの都市で無類の力を誇示していたミュウツーだ!」
「きら・・・めきの・・・とし?」
部屋の壁を背にグロデスの話をずっと聞いていたミュウツー。
その場の誰もがグロデスの話に聞き入り身動き一つ取らなかった。それだけ彼の言う事が人智を超えていた。
「ククク・・・少しおしゃべりが過ぎたようだな・・・ミュウツー・・・立て!」
一通り話し終えたのかグロデスが、ミュウツーに向かって歩き出す。口からは命令を吐き出していたが、ミュウツーは動かない。
その間にルフは部屋の入り口で倒れているユキメの許に向かう。
「ユキメ!大丈夫か?」
ルフがユキメの体をゆらすとユキメの閉じていた瞳が薄っすらと開く。
「あ・・・あんま揺らさないで・・・体のあちこちが痛いから・・・」
ユキメの安否を確認しとりあえずは胸をなでおろすルフ。
「よく生きてたな・・・なにしたんだ一体?」
揺らすなと言われているのにルフは再度ユキメの体をゆらす。体を揺らされるユキメの表情は苦痛で歪んでいた。
「い・・・痛いよ・・・揺らさないで・・・話すから・・・お願い・・・」
「あ・・・ご、ごめん・・・」
ユキメの二度目の忠告でやっとルフはユキメの体を揺らすのをやめる。
彼女の忠告で多少冷静さを取り戻したルフは、彼女の体に目をやる。
彼女の着ていた鎖帷子は無残にもボロボロになり、鎖があたりにはじけ飛んでいる。そして彼女の体は所々の皮膚が裂け血が滴り落ちていた。
そんな彼女の体を揺すっていたのかと思うと。ルフは目先の事にしか意識が行かなかった自分を恥じた。
「あの・・・大きな黒い塊が・・・ぶつかる前に・・・冷凍ビームで・・・自分の目の前に壁を・・・」
たしかにユキメの言った事に嘘はなかった。彼女の周りには砕けた大小様々の氷が散らばっていた。
それ以上にルフは、ユキメがあの短時間の間にそんな事をしていたのかと驚いた。
「ちょっと待ってろ・・・すぐに助けてやるからな!」
ルフがユキメのかすり傷で覆われた頬をやさしく撫でるとグロデスのいる方を向く。
グロデスはいまだ命令を聞かずその場でうずくまっているミュウツーに手を焼いていた。
「立てと言っているのだミュウツー!私は貴様の生みの親だぞ!言う事を聞け!」
業を煮やしたグロデスはうずくまるミュウツーの腕を掴みひっぱりあげる。
そして悲劇は起きた・・・。 



ACT9 研究室の悲劇

「立てミュウツー!私の言う事が聞けんのか!」
「触るなぁぁあああああ!!」
グロデスがミュウツーの腕を掴みひっぱったその時だった・・・。ミュウツーの片腕がグロデスの腹を突き破り
あたりに彼の鮮血を飛び散らせる。
「が・・・ば・・・かな・・・私は・・・おま・・・えの・・・」
ミュウツーが腕を引き抜くと、グロデスはその場に倒れ動かなくなった。そしてそれはミュウツーも同じだった。
「あ・・・あぁ・・・・」
自分の腕にべっとりと付いた赤い液体・・・。血に染まった手のひらを見てミュウツーはただ声なき声を発していた。
その場にいる誰もが動く事のできない状況だった。バシャーモもワズもルフもただその場に呆然と立ちつくしていた。
「う・・・うわぁああああああ!!?」
沈黙が支配していたその場に突然の悲鳴が沈黙の支配を打ち破った。
声の主はミュウツーだった。赤に染まった己の手と腕を見ながら瞳からぼろぼろと涙をこぼし
そして、次の瞬間に部屋の天井に向かってシャドーボールを打ち出す。
小規模の爆発を起きると天井に穴が開き。ミュウツーは青い閃光のような光を放ち空へと物凄い速さで向かう。
バシャーモがグロデスの生死を確認するために、グロデスの許に向かう。
ミュウツーが消えたとたんに時間が動き出したようにルフ達は忙しなく状況を判断するために走り回る。
「おい、グロデスの野郎は?」
ワズがバシャーモに聞く。バシャーモは何も言わず首を左右に静かにふる。
「狂った科学者の末路か・・・成仏しろよ・・・」
パンパンとワズが手をたたきグロデスの冥福を祈る。そしてすぐに部屋の外に走り出す。
「とりあえず、そこのグレイシアの御嬢ちゃんを病院に連れて行ってやれ・・・ここは俺達にまかせろ」
バシャーモにそう言われルフは、部屋の入り口でぐったりしているユキメを抱きかかえる。
「しっかりしろよ・・・死ぬなよユキメ・・・」
ユキメを抱きかかえながら廊下を走るルフ。振動が起こるたびにユキメは苦痛に顔をゆがめるが、文句を言う事はなかった。
「後少しで城を出るからながんばれよユキメ・・・」
「うん・・・がんばる・・・」
廊下を走り終わり、城内の入り口まで来た。天井の巨大なシャンデリアに光は灯っていなかったが、
窓から入り込む朝日の僅かな光を受け七色にあたりを薄っすらを照らしていた。
城を出たルフはそのまま門まで一直線にはしり続けた。門に近づくにつれて門から二人分の影が見え始める。 
「ん・・・やっぱり何か起きたみたいだな・・・すまないが俺はここから動けない」
「分ってる・・・私が連れて行くからルフをお願い」
門にいたのはジルドとグラエナだった。ルフは門につくとユキメをジルドに手渡しその場に倒れこむ。
全速力で走り続けたためジルドと同じように肉体に限界が来たのだった。
「おい、一体なにが起きたんだ?あの閃光は一体どうしたんだ?」
グラエナの質問攻めにルフは順を追って説明する。全てを説明し終えると城の中からバシャーモが出てきた。
「とりあえず大体の事は済ませておいた・・・それと、そこのカメール・・・今日は覚悟しておいたほうがいいぞ・・・
お偉方の質問攻めに晒されるからな・・・あらかじめ心の準備を済ませておくんだな・・・」
門まで歩いて来たバシャーモは来るなりそう言うと、門を背にその場に座り込む。
グラエナが彼らを再度見た時には、二人は静かな寝息をたててその場で寝ていた。
ルフから聞いた以上にグロデスの研究所では酷い事が起きたのだろう。グラエナはルフの話を元にその様子を想像する。
(まず、ミュウツーか・・・グロデスの奴が言ったという煌きの都市・・・その王?
あれはそもそも神話じゃないのか・・・そもそも煌きの都市は・・・)
必死に考えていたグラエナの前にワンリキーとジルドが現れる。二人とも疲弊しており、門にたどりつくとなにも言わず
その場にすわり込みやはり寝息をたて始める。
他人から見れば異様な光景だが、いまの彼らには睡眠が必要だった。そのためグラエナは彼らを引きずり
門のすぐ近くに備え付けられた見張りようの部屋に彼らを入れる。
「ふう・・・こんなものか・・・今頃城の中じゃ大騒ぎだろうな・・・あの爆音でたいていの奴は起きてるだろうしな・・・」
グラエナがそっと呟く。部屋を出た彼は門まで歩くと珍しく一人で門番をし始める。



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