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遅効性悦楽 の変更点


writer――――[[カゲフミ]] 

三行で分かる登場人物紹介 

ユナ♀:ポケモン用の薬品会社に勤める女性。 
ラルフ(グラエナ)♂:ユナの手持ちの一体。 
ミオ(オオタチ)♀:ユナの手持ちの一体。 

*遅効性悦楽 [#w77ac763]

 時計は午後八時を回ったところ。繁華街の喧騒からも距離を置いた位置にある、街外れの家は静かだった。 
耳障りなものがない分だけ作業には集中しやすい。部屋の中にはユナがパソコンのキーを叩く音と、マウスをクリックする音だけが響いていた。 
画面にはいくつもの枡目が等間隔で並び、折れ線グラフや円グラフも見える。 
「今月はまあ……こんなものか」 
 ほぼ横ばいの折れ線を見てユナは呟く。彼女はポケモン専門の薬品会社に勤めていた。 
プラスパワーやスピーダーと言った一時的に能力を上昇させるものや、タウリンやブロムヘキシンのように永続的に効果があるものもある。 
前者は比較的お手軽な値段なため売れ行きは良好。だが、後者はかなり値が張る品なので買っていく客は限られてくる。 
今月の売り上げはまあまあと言ったところ。ポケモンを根本から強くしたいのであればタウリンなどを与えるべきなのだが、高いお金を出してまでポケモンを育てることを究めようとするトレーナーは稀であった。 
もう少し安い材料でそれらの薬が作れればもっと利益が出る。試行錯誤を繰り返してはいるが、今のところ進展はない。 
机の上には試験管が立てかけられている。何度も実験をしてきたせいか、ガラスの色が大分くすんできている。 
そろそろ買い替え時かなとユナが考えていると部屋のドアをカリカリとひっかくような音が聞こえた。 
「……もう、あれだけ言ってるのに」 
 ユナは立ち上がりドアの元まで歩いて行き、開けた。基本的に無駄な電気はつけないので家の廊下は真っ暗だ。 
そんな闇の中に浮かぶ二つの赤い光。暗闇に佇み、少し頼りなげにゆらゆらと揺れていた。 
「ラルフ、ドアは引っ掻かないでノックしてって言ってるでしょ?」 
 二つの光がそっと部屋に進み出る。闇に溶け込んでしまいそうな黒と灰色の毛並み。手入れが行き届いているらしくなかなか艶が良い。 
ラルフと呼ばれたグラエナは少し気まずそうにおずおずと部屋へと足を踏み入れた。 
「ご、ごめん、ユナ。引っ掻くほうが楽だから……つい」 
「まあ確かにあなたの前足じゃノックするのは難しいかもしれないけど。気をつけてよね」 
 廊下側のドアには、ラルフの前足の高さの部分にだけいくつかの傷が付いている。 
初めのうちは黙認していたユナだったがあまりに傷が目立つようになってからはラルフがドアをひっかくのを禁止するようになった。 
とはいえ何度も繰り返していたため癖になっていて今回のようについやってしまうのだ。 
「でもそんなに強くひっかいてないから傷は付いてないと思うよ」 
「傷だらけでどれがいつ付いたやつかなんて、分からないわよ、もう」 
 小さくため息をついてドアを閉め、ユナは部屋のベッドに腰かける。ラルフも彼女の前に来て床に座った。 
「それで、何か大事な話でもあるの?」 
「え……どうして分かったの?」 
「ちょっとした用事ならわざわざ部屋のなかで話さなくてもいいでしょ」 
 ドアを開けたとき、ラルフは何の躊躇いもなく部屋に入ってきた。大したことない用事ならばわざわざ入らずともそこで言えば良いのだ。 
トレーナーとポケモンとしての付き合いもあるが、それを差し引いてもラルフの考えは読みやすい。 
しかもラルフの方はユナに気づかれてないと思っているものだから、当てられた時のリアクションが大きくて面白いのだ。 
「それとも、私の前でも言いづらいような話?」 
「えっと……その。今夜ミオと約束してるんだ、一緒に……寝ようって」 
 わずかだがユナが冷めた目つきになる。もっとも、ラルフは気がついていないだろうけれど。 
ミオはユナのもう一体の手持ちポケモンであるオオタチだ。ラルフが来るより前からいて、ユナとは長い付き合いである。 
そして、後から入ってきたラルフのことをミオが気に入り今では深い関係である。もちろんそれは彼らのトレーナーのユナも知っていることだ。 
「いいじゃない。仲が良くて。今更恥ずかしがることでもないでしょ」 
 ともに暮らすポケモン同士仲が良いのは微笑ましいことである。 
しかし肉体関係の話を切り出されるとポケモンだとは言え、現時点で恋人のいないユナにとっては素直に喜べない面があるのだ。 
僻みの感情を表に出してしまうと余計に虚しくなるので、ユナは表面上は穏やかに繕っている。 
「それなんだけどさ。ミオってすごく……上手いんだよ。果てるのはいつも僕が先だ」 
「へえ……そうなの。あの子、可愛い顔して結構侮れないわね」 
 ミオとは長い付き合いではあるが、もちろんそっち方面の腕前を知るような機会はない。 
いったいどこで覚えたのやら。少なくともユナはそんなことを教えた覚えはない。 
「ミオが誘ってくれるのは嬉しいけど、いつもいつも負けてばっかりで……悔しくて」 
「まあ、確かにそれは雄として情けないかもねえ」 
 ミオとの惚気を聞かされるのかと最初は乗り気ではなかったユナだが、やや伏し目がちに話すラルフの様子を見ると本気で悩んでいるらしい。 
もともと彼は気が強いタイプではない。きっと最中はミオにいつもリードされているのだろう。 
元来の性格の問題もあるだろうから気にしても仕方のないことのようにも思えたが、それではラルフは納得しないだろう。 
「ユナなら薬に詳しいよね。何かこう……刺激に強くなれるような薬ってないのかな?」 
「ちょっと待って、私が作ってるのは一般的なポケモン用の薬。そんな怪しげな効果の薬は専門外だってば」 
 もちろんユナは薬に詳しいが、それはあくまで市場に出回っているようなごく普通の薬である。 
ラルフが望んでいるようなものは開発していない。もしかするとユナの知らないところではこういった薬の需要もあるのだろうか。 
今まで考えたこともなかったが、薬を作る身としては今後頭の片隅に入れておいてもいいかもしれない。 
「そんなに刺激に弱いの?」 
 そう言ってユナはおもむろにベッドから身を乗り出すと、座った姿勢で無防備になっていたラルフの肉棒にそっと触れてみる。 
「ひゃっ!」 
 普段からは想像もつかないような高い声を上げ体全身でビクッと反応を示し、ラルフは慌てて後ずさった。 
不意打ちだったとはいえ先っぽに少し触れただけでここまで反応するなんて。本人が言うように刺激に弱いというのは本当のようだ。 
これはミオが上手いのではなく、ただ単にラルフが弱いだけのような気がしたのだがここは黙っておいた。 
「や、やめてよ。本当に……弱いんだからさ」 
「ごめん。あなたにとっては深刻な問題よね、軽率だったわ」 
 本の冗談のつもりだったのだが、ラルフにはそれを受け取る余裕もないらしい。 
うなだれてしまった彼を前に、ユナは自分の軽はずみな行為を謝罪する。 
相手もいないし、ラルフとは性別も違うユナ。共感できない部分の多いところがこの問題を難しくしている。 
「強くなれる薬かあ。悪いけど、やっぱりそんなものは……」 
 何度も薬の制作や開発にかかわってはきたが、何度思い返してみてもラルフが望むようなものは記憶になかった。 
そんなものはない、と言いかけてユナはふと思いだした。タウリンやインドメタシン、ポケモンを基礎から強くする薬に含まれるとある成分のことを。 
「ラルフ、ちょっと待ってて」 
 ユナは机に向かうとパソコンのデータをチェックし始める。 
わき目も振らずに薬の成分の羅列に目を通す彼女の瞳は、今はトレーナーではなく研究者のものだ。 
「何か見つかったの?」 
「あった。確かあれは冷蔵庫に……」 
 ラルフの質問に答えることなく、部屋の隅に置かれている小型の冷蔵庫に向かうユナ。 
一つのことに集中すると周りが見えなくなる。そんな彼女の性質をラルフも知っていたので、無視されたことで気を悪くしたりはしない。 
ガチャリと開かれた冷蔵庫の中にはいくつもの試験管が並べられている。食品用の冷蔵庫ではなく、開発に使う薬の保管用だ。 
その中の一つを取り出してラベルを確認すると、ユナは冷蔵庫を閉めた。 
「それは?」 
「ポケモンの能力の基礎を高める薬に含まれるある成分よ。タウリンやインドメタシン系の薬にならどれにでも入ってるわ」 
 ユナが取り出した試験管の半分ほどを満たす透明な液体。取り出されたばかりなので、冷蔵庫内のひんやりとした空気をまとっている。 
「つい最近この成分にポケモンの感覚を鈍くする効果があることが分かったの。中でも性的な刺激に対して鈍くなると言われているわ」 
「鈍くなるって?」 
「ええ。分かりやすく言えば、さっき見たいに敏感な部分に触られたときの刺激をやわらげる効果かしら」 
 それを聞いた瞬間、ラルフの目が輝く。鈍くなるのと強くなるのとは違う気がするのだが、結果的な効果としてはこういったものを彼は望んでいたのだろう。 
もちろん普通に売られている薬に含まれるこの成分は微々たるものだ。ポケモンが摂取しても何ら問題はない。 
ユナが持っているものはその成分を詳しく調べるために抽出したものである。一つのタウリンなどに含まれる量の数十倍と言ったところか。 
「それが本当ならぜひ欲しいけど、その薬……本当に大丈夫なの?」 
「身体に害はないわよ。タウリンとかにも含まれてる成分なんだから。ただ、一つ注意するなら効果は一日しか続かないってこと、そして薬が切れた瞬間に反動が来るからそれなりの覚悟は必要ね」 
「反動って?」 
「薬を使えば当然いつもより調子が良くなるわ。だからと言って後先考えずにガンガン攻めたりしたら後で痛い目を見るってことね」 
 あまり生々しい表現は自分でも恥ずかしいので多少お茶を濁すような言い方になってしまったが、ラルフには伝わっただろうか。 
効果を知識として知っているだけなので、体感的にどの程度なのかは分からない。行きすぎさえしなければ反動も大したことはないと思うのだが。 
「その薬……試してみる」 
 あまり間をおかずに返ってきたラルフの返事。不確定な要素はあれど、弱点を克服できることが何よりも彼の中では優先されたようだ。 
あるいは、いつもやられてばかりのミオに対しての反撃を企てているのかもしれない。 
「そう、分かったわ。じゃあ、口を開けて」 
 ラルフの前足で試験管を掴み、そのまま飲み干すのは不可能に近い。自分でも分かっているのかラルフは口を開いた。 
生えそろう鋭い牙で手を傷つけないようにしながら、ユナはそっと試験管を傾けて薬を流し込む。すべて注ぎ込まれたのを確認すると、ラルフは口を閉じごくりと飲み込んだ。 
「……味がしない」 
「苦いよりはいいでしょ。もともとポケモンに飲みやすく作られてる薬だからね」 
「そっか。これでミオに……」 
 うっすらと嗜虐的な笑みを浮かべるラルフ。 
普段はどこか頼りない雰囲気が漂う彼だが、やはり雄としての感情もちゃんと持ち合わせているようだ。 
いつもの姿が目に焼き付いているだけあって、今のようなラルフは新鮮だった。 
「ミオとの約束が深夜なら、丁度いい具合に薬が効いてくる頃だと思うわ。でも、もう一度念を押しておくけど、絶対に調子に乗りすぎないこと。でないと後で痛い目見るからね」 
「分かった。気をつけるよ。ありがとう、ユナ」 
「どういたしまして」 
 ユナは立ち上がり、ドアを開ける。ラルフは軽やかな足取りで部屋を出て行った。 
彼の姿が見えなくなったのを確認するとユナはゆっくりとドアを閉めた。きい、と少しだけ軋んだ音が部屋に響く。 
落ち込むラルフの力になってあげたいと思い、薬を渡してしまったけれど本当に大丈夫だろうか。 
安全性については問題ない。問題なのは彼の行動だ。理性が吹き飛んでこの薬のことを忘れてしまったりしないだろうか。 
まあ二度も念を押したし大丈夫だろう。とはいえ、念のため保険をかけておいたほうがいいか。 
一抹の不安を胸に、再びユナは机に向かう。時計は八時半を指していた。
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 真っ暗な廊下に自分の足跡だけが響いていた。そろそろ日付が変わるくらいの時間か。 
ユナの部屋からは何の物音も聞こえない。もう眠ってしまっているのだろうか。 
部屋の前を通り過ぎ、突き当りのミオの部屋へと向かう。この家は一人暮らしをするには広い。 
ラルフとミオがいてちょうどいいくらいだとユナが前に言っていたような気がする。廊下の手前側から順番にユナ、ラルフ、ミオの部屋になっていた。 
彼女の部屋のドアまで来て少し深呼吸する。初めてではないにせよやっぱり緊張するのだ。 
「ミオ」 
「待ってたわラルフ。入ってきて」 
 もうすぐそこで待ち構えていたような返答の速さ。頭でドアを押して開き、ラルフはミオの部屋へ入る。 
ラルフやミオの部屋は押すだけで開き、離せば自動的に閉まるように設計されている。ユナの心遣いだ。 
ふわり、と別の空気が漂ってきた気がする。何度来てもいい匂いがしてほっとする部屋だなとラルフは思った。 
薄暗い部屋の中でもはっきりと確認できるミオの毛づやの良さは、ラルフに勝らずとも劣らない。 
こういった彼らの光る部分を見ていると、ユナのしっかりとした手入れの行き届きが見て取れる。 
「……!」 
 部屋の雰囲気にほっとしたのも束の間。ラルフの顔を見るや否や、ミオがいきなり唇を押しつけてきたのだから。 
柔らかくて暖かい、彼女の舌が口の中に入り込んでくる。牙で傷つけないように少し口元を緩めると、ラルフも負けじとミオの口内へ舌を進出させる。 
二匹の舌が幾重にも絡まりかすかな水音を響かせた。互いの唾液が十分に混ざりあったところでミオは唇を離した。 
「ふふ、いきなりごめんね。ちょっと久しぶりだったから、なんだか嬉しくて」 
 少しだけ息を荒げながら、いたずらっぽく微笑むミオ。それを前にしてラルフも思わず笑顔になる。 
何も言わずに突然キスされたら、最初の頃は戸惑ってしばらく硬直していたかも知れない。今はもう唇や舌の感覚を堪能する余裕ができていたが。 
「じゃあ、早速だけど……始めようか?」 
「ああ。いいよ」 
 ミオは部屋の奥に敷かれた布団まで歩いていくと、ごろりと仰向けに寝転がった。 
ポケモンのためにドアを改築までしてくれたユナだが、さすがに専用のベッドとなると踏みとどまってしまうのだろう。 
だからと言ってラルフにもミオにも不満はない。こういった部屋を与えてくれるだけで、十分感謝に値する。 
「……ラルフ、来て」 
「あ、ああ」 
 おぼつかない足取りで吸い寄せられるようにミオのもとへ行くラルフ。 
顔だけこちらを向けて誘う様子はなんとも艶めかしい。ミオの全身を目の前にして、ラルフはごくりと唾を飲み込んだ。 
「じゃ、じゃあ……まずは僕からだね」 
 彼女の長い尻尾に跨り、ラルフはゆっくりと股ぐらに顔を近づけていく。 
舌が割れ目に触れる。ミオは少し体を震わせたようだが、声は上げなかった。 
前足を使って左右に広げるようにしながら、ラルフは上下に舌を這わせた。 
最初は自分の唾液の感覚しかなかったが、徐々に湿り気が増してくるのが分かる。 
舌に精一杯の力を入れて、奥の奥まですくい取るように舐める。ザラザラしたラルフの舌の感触とあい極まって、ミオにはこれが好評だった。 
「ああ……いいわ、ラルフ」 
 悦に浸ったミオの声、そして表情。ラルフの雄を奮い立たせるには十分な効果だ。 
秘部の肉感を味わいつつも、自分の肉棒が徐々に強度を増してくるのを感じていた。 
「ラルフ、よかったわ。もう……十分よ」 
 じっとりと湿った割れ目は見ているだけで湿った音が聞こえてきそうだった。 
ラルフの口元を濡らしているのが彼自身の唾液なのかミオの愛液なのかもう分からない。 
「次は私の番ね。覚悟はいい?」 
「う、うん」 
 ミオがいつも後攻に回るのは彼がすぐに果ててしまうのを知っているからだ。 
一度果ててしまえば再び攻め返す気力は擦り切れてしまう。感じているのがラルフだけではつまらない。 
今度はラルフが仰向けになりそそり立った雄をミオの前に差し出す。一瞬目を輝かせたと思うと、ミオは即座に肉棒を咥えた。 
「……っ!」 
 口の中に入る限界まで含むと、舐め始める。舌をあらゆる方向に動かしながら、万遍無く。 
いつもならばこれだけで体をのけぞらせたくなるほどの刺激なのだが、今回はそれほどでもなかった。 
確かに刺激は感じる。しかし普段ならばミオの舌の動きを肉棒から感じ取る余裕などなかったはずだ。 
思いだすのも情けないが、舌だけで完全に果ててしまったこともある。しかし今はそんな予兆は全くない。まだまだいけそうだ。 
「ラルフ……どうしたの? 今夜はやけに落ち着いてるわね」 
 多少体の反応は見せたものの、声一つ上げないラルフに疑問を持ったのかミオが尋ねる。 
いつも聞こえてくる彼の喘ぎを楽しみにしている面もあったのかもしれない。 
「あ、ああ。何だか調子がいいみたいだ」 
 きっと薬の効果なのだろう。もちろん本当のことは言えないのでラルフは適当にごまかしておく。 
確かに刺激には強くなっているが、本能的な反応はいつも通りだ。全体を舐め終えてミオが口を離した頃、ラルフの肉棒は痛いくらいに張りつめていた。 
「それは楽しみ。今夜は長く楽しめそうね」 
 別段気にすることもなくミオは微笑む。調子が良い、ということで一応は納得がいったらしい。 
最もこんな行為の最中だ。細かいことを気にしている余裕などなかったのかもしれないが。 
「それじゃあ調子がいいところ、見せてくれる?」 
 再びごろりと仰向けに寝転がるミオ。ぬめぬめと湿った輝きを放つ割れ目が、ラルフの次の行動を無条件で促した。 
今度は胴体の部分に跨る。ミオの顔がすぐそこにあった。息が触れあって暖かい。 
ゆっくりと腰を落とし、ラルフは肉棒を彼女の秘部に近づけていく。先端が触れた。 
ラルフもミオも一瞬だけ反応し、そしてそんなお互いの顔を見て微笑む。 
「それじゃあミオ、行くよ」 
「ええ」 
 さらに腰を落とし、ラルフは肥大した雄の象徴をミオの中へと侵入させる。 
ずぶり、と音がして肉棒の先端が飲み込まれた。十分に愛液で湿っていたせいか滑りが良い。 
普段ならば恐る恐るゆっくりと踏み入れてゆくのだが、薬の効果が実感できているため強気なラルフ。 
彼女の内部への攻め入りも遠慮を失いつつあった。 
「……っく」 
 ミオが少しだけ表情を歪めた。もう半分程度ラルフの雄は彼女の中に進出している。 
大抵の場合はラルフがここに到達する前に達してしまうので、こんなにも深い部分まで攻め入られることがなかったのだ。 
刺激に慣れていないミオの敏感な部分。そこへじわじわとラルフの肉棒が手を伸ばしてくる。 
「ら、ラルフ、本当に今夜はどうしたの。いつもならもう……ああんっ!」 
 容赦なくさらに腰を沈めたラルフ。今まで感じたことのない衝撃にミオは思わず嬌声を上げてしまう。 
聞く機会のなかったミオの喘ぎ。艶のある響きが、そして苦悶の表情が、ラルフの中へと浸透してゆく。 
それなりに肉棒からの刺激は感じているがまだ余裕はある。普段と立場が逆転し自分がリードしているという事実が彼に心地よい優越感を与えていた。 
「ふふ……たまにはこういうのもありでしょ。いい声だよ、ミオ」 
「そう、ね。それなら、ラルフの本気を見せて」 
 分かった、と言いかけてラルフはユナの言葉を思い出す。調子に乗りすぎると後で痛い目を見ると彼女は言っていた。 
反動とは一体どのようなものなのだろうか。仮にそれが激しいものだったとしても、それが性的なものならそれはそれで気持ちいいのではないか。 
そして何よりも今この機会を逃してしまえば、こんなふうに優位に立てるチャンスは二度と来ないかも知れない。ここは退くべきではない、行くんだ。行かなければ。 
ユナの忠告と、ミオの催促。ラルフの中では後者のほうが勝ったようだ。 
「ああ。じゃ、行くよ」 
 ラルフは大きく息を吸い込むと、渾身の力で腰を前に突き出す。肉棒は根元まで完全に割れ目へと吸い込まれ、ミオの深部を突いた。 
体を大きく仰け反らせ、軽い痙攣でも起こしたかのように細い息を震わせるミオ。何かを言おうとしているらしかったが言葉になっていなかった。 
それだけで終わらせるつもりはラルフにはなかったらしく、少しだけ腰を浮かせて再び突撃。激しく腰を動かしピストンの運動を繰り返す。 
じゅぷじゅぷと淫らな音を立てながら、肉棒は激しくミオの膣内を前後した。左右の肉壁を舐めまわすかのように。 
「あ、あああっ……ひゃあああっ!」 
 心の底から絞り出したような喘ぎとともに、ミオは果てた。秘部からとめどなくあふれ出た愛液がラルフの、そしてミオの股ぐらを濡らす。 
はあはあと荒い息を上げ、虚ろな瞳でぼんやりととこちらを見つめる彼女の表情を堪能しながら、ラルフはゆっくりと肉棒を引き抜く。隙間からこぼれ落ちた液が布団に染みを作った。 
「……ミオ、大丈夫?」 
「え、ええ。ラルフがまさかここまでやれるなんて、びっくりした。完全に私の惨敗ね……。でも、すごく良かったわ」 
 ラルフより先に果ててしまったミオ。体力的にも精神的にもこれ以上は続ける気にはならないだろう。 
それはラルフがよく知っている。まだ射精には至っていなかったが、ラルフには不思議と満足感に満ち溢れていた。 
きっと、今まで知らなかったミオの声や表情を見られたからだろう。 
「喜んでもらえて嬉しいよ、ミオ」 
 心地よい達成感と共に、ラルフはミオの体をぎゅっと抱きしめる。ミオもそれに答えるかのようにラルフと唇を重ねた。 
布団の上で身を寄せあったまま睦言を繰り返すうち、疲れが押し寄せて来たらしく二匹は眠りへと落ちて行った。 

「はあ……」 
 ミオの部屋の外。ユナはため息をついていた。 
喉が渇いたので水を飲みに行こうと起きて廊下に出てみれば、聞こえて来たのはミオの声。いや、声というよりは悲鳴にも近いようなものだった。 
それを考えるとラルフは今までにないほど激しい攻めをしていたことが伺える。やっぱり忠告は守れなかったか。 
「もう、あれだけ言ったのに……」 
 これは今日の夜、ちゃんと準備しておかないといけない。ラルフの身が持つだろうか分からないけれど。 
後のことを考えもう一度大きくため息とつくと、ユナは台所へ向かった。
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 その日の夕食を済ませた後、ユナはラルフの部屋のドアをノックする。ややあってドアが開き、ラルフが顔を出した。 
「ユナ、何か用事?」 
「ええ。あなたに昨日あげた薬、そろそろ効果が切れる頃だと思うから。一緒に来て」 
 ユナは腕時計を確認する。時間は八時二十分。少しのんびりしすぎたか。あまり時間がない。 
手まねきした後足早に廊下を歩いていこうとするユナ。あまりに唐突だったためラルフは彼女の背中に聞き返す。 
「一緒にって、どこに?」 
「いいから。早くついてきて」 
 表情こそいつも通りのユナだったが、言動に無言の圧力のようなものを感じラルフは部屋の外に出る。 
何をするつもりなのかは分からないがここは逆らわないほうがよさそうだと判断したのだろう。ラルフは薄暗い廊下を歩くユナの背中を追いかけた。 
「そういえば、ミオは? 夕飯の後から見かけないけど」 
「なんだか眠いからって、もう寝てるみたいだよ」 
「それならいいのよ」 
 立ち止まるユナ。そこは風呂場だった。ドアを開けて中に入るように促す。 
釈然としないものを抱きながらもラルフは彼女に続く。湯は張られていない。こんな場所に何の用事があるというのだろう。 
「ここで何かするの?」 
「私は何もしないわよ。薬が切れた後のこと考えると、ここの方が楽だからね」 
「それってどういう……」 
 言いかけたラルフをよそに、ユナは再び腕時計を確認する。八時二十九分。そろそろか。 
風呂場の外に出て、ドアノブに手を掛けるユナ。 
「ユナ……っ!」 
 ドアを閉められるのかと思いここから出ようと足を踏み出そうとして異変に気が付いた。 
後足に全く力が入らないのだ。無意識のうちにがっくりと膝をついてしまった。 
「始まったみたいね」 
「な、何が……うあっ!」 
 足ががくがくと震えてとても立っていられない。崩れ落ちるように横たわったラルフの股間に、何か熱いものが触れた。 
それを見たラルフは思わず息を呑む。熱を帯びた物体、それははち切れんばかりに膨張した彼自身の肉棒だったのだ。 
「あ……な、なんで……」 
「昨日のミオとの一連の行為の中で、感じるはずだった刺激が今になって来たのよ。薬が効いてたからミオに対していつもより積極的になるのは分かるけど……たぶん、このあときついわよ」 
「ま、待ってよユナ。こんな……こんなに反動がくるものなの?」 
 肉棒が焼けつくように熱い。そそり立った先端からは信じられないくらいの量の先走りの汁が流れ出ていた。 
後ろ足の周りを、そして風呂場の床をじっとりと湿らせていく。体の奥深くからじわりじわりと快感の波が訪れつつあるのが分かる。 
「もし昨日、薬を使わなかった場合を考えてみて。その時に想像されるくらいの刺激が今から来ると思うから」 
「そ、そんな……」 
 昨日はミオの中に肉棒を差し込んだまま腰を動かすという、普段なら自殺行為とも取れる動きをしてしまったのだ。 
もしその時に薬が効いていなかったとすれば。おそらくラルフが果てるのは一度では済まない。 
「ここなら飛び散った後の心配はないから、変に我慢しないで好きなだけ果てていいわよ。反動が止まったらまた来るからね」 
 そう言ってドアを閉めてしまったユナ。遠ざかっていく彼女の足音もやがて聞こえなくなった。 
風呂場に連れて来たのはこのためだったのか。確かに自分の部屋でこうなっていたら目も当てられない。 
激しい息遣いの中そんな考えがラルフの頭を掠める。 
「うああああっ!」 
 勢いよくビクンと肉棒が震えたかと思うと、先端から白く濁った液体が勢いよく噴射される。 
大量のそれはラルフの腹に、前足に、そして頬にまで飛び散り付着した。独特の生臭さが風呂場を漂い始める。 
射精後の強烈な快感にうっすらと恍惚とした笑みを浮かべていたラルフだが、それはまだ序曲に過ぎなかった。 
ついさっき出したばかりだというのにまるで勢いを失わないペニス。ひくひくと上下に揺れ、次の発射を待ちわびているかのようだった。 
「はあ……はあ……そ、そんな」 
 それはまるで別の生き物のように、ラルフの股間でうごめいている。 
一度出して敏感になっているとはいえ、肉棒の動きは容赦がなかった。再び大きく震えたペニスから二発目の液体が噴射される。 
「ひゃあああああっ!」 
 こみ上げる快感と衝撃に悲鳴を上げるラルフ。本当なら昨日自分がこうやって悲鳴を上げていたのかもしれない。 
連続しての放射だというのにまるで勢いが衰えない。今度は風呂場のドアに点々と飛び散ったようだ。 
「あ……あ、うあ……」 
 頭の中が真っ白だ。肉棒から伝わってくる刺激に、体が反応することで精一杯だった。 
快感に悶え、本能的な笑みを浮かべることと激しい衝撃に声を上げることしかできない。 
そんなラルフを嘲うかのように、彼のペニスは次に備えてブルブルと震えていた。 
もう、勘弁して。心の中でそんなことを思ったラルフだが、もちろんそれが伝わるわけもない。 
「あ、がっ……ああああああっ!」 
 度重なる快楽にひくひくと身をよじらせるラルフ。 
支えを失ったホースのごとく暴れ狂うペニスは、風呂場の壁を、床を、そしてラルフ自身を白濁色に染めていく。 
もう、声すら出なかった。だらしなく開けられた口元からは涎が零れ、目は虚空を見つめている。 
下半身から伝わってきた快感、そしてぴくぴくと痙攣する動きだけがラルフの意識を繋ぎ止めていたのだ。 
三度にわたる暴発を終えてようやく満足したのか、肉棒はまるで空気の抜けた風船のように萎んでいき、やがて普段の大きさに戻った。 
意識はあった。ただ、意識があるだけでこれからどうしたいのかが分からない。 
体力だけでなく思考力までもが擦り切れてしまったらしい。自分が風呂場にいるのは分かる。 
しかし体が動かない。動かしたいとも思えなかった。 
より一層際立った生臭さを感じながら、ラルフはぐったりと風呂場の床に横たわっていた。 

 静かになった。そろそろ終わったころだろうか。ユナは立ち上がる。 
それにしても激しい悲鳴だった。ミオを眠らせておいたのは正解だ。 
彼女の夕食に睡眠薬を混ぜておいたのだ。あれくらいの物音では起きないだろう。 
多少なりとも罪悪感はあったが、ラルフが薬を飲んでいたことがミオにばれて二匹の関係が悪くなってしまうほうが申し訳ない。 
彼らがその程度の仲、というわけではもちろんないとは思うが、念のためだ。風呂場のドアの前まで行き、ユナは恐る恐る開いた。 
「……っ!」 
 予想はしていたがひどい臭いだ。壁、床、ドア、至るところに精液の飛び散った後が。 
そして床の上には力ない瞳でユナを見るラルフが。黒と灰色の毛並みだから白が良く目立つ。 
「ラルフ、私よ。ユナ。私が分かる?」 
「あ……ゆ、な……」 
「大丈夫……じゃ、ないわね。ごめんね、ラルフ」 
 ユナはそっとラルフの頬に触れた。手を湿らせたものを気にしたりはしない。 
彼に対して忠告はしたが、反動がどの程度のものなのか知らずに薬を渡してしまった自分にも責任がある。 
身体的に害はないが、この状況では彼のものは一週間くらいは使い物にならないだろう。 
「立てる? ちゃんと洗って落とさないとね」 
 ラルフの体を支えるようにして起こすと、ユナはシャワーの蛇口を捻る。 
程よい温度のぬるま湯が彼の体に付いた精液を洗い流していく。付着してから時間がたっていないため、軽く手でこすれば難なく流れ落ちた。 
「ほら、目閉じて」 
 頬に付いた液を洗うため、顔の方にシャワーを持っていく。 
「……ねえ、ユナ」 
「ん?」 
「どうして、さっき謝ったの?」 
 いくら忠告していたとはいえ、反動がこんなに激しいだなんてラルフは予想していなかっただろう。 
薬の効果を完全に把握しきれていないまま渡した結果、こんな事態を招いてしまった。 
ともすれば非難の一つくらい飛んできてもおかしくないとユナは思っていたのだが。 
「ユナの注意を僕が守らなかったからこんな目にあったんでしょ? だったらユナが謝る必要なんてないよ」 
「……ラルフ」 
 まったく。お人好しと言おうか何と言おうか。 
こんな酷い目にあっておきながら、非はすべて自分にあると言うのだから。 
ラルフは無意識のうちだっただろうが、責められても仕方がないぐらいの覚悟をしていたユナは胸がいっぱいになる。 
「ん……どうしたの?」 
「ううん、何でもない。それより、洗い終わったらちゃんと乾かして、ブラシかけてあげるからね」 
 彼への償いも込めて、今日は丹精込めてブラシを梳いてあげるとしよう。 
今はすっかり濡れてしまっているが、乾かしてちゃんとブラシを当てれば元の輝きに戻るはず。 
「うん!」 
 嬉しそうに頷くラルフ。 
こんな彼の純朴さにミオは惹かれたのかも知れないな、とシャワーをかけながらユナは思ったのだった。 

  END 

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-あとがき

以前の選手権で結構皆さん媚薬やらいろいろ使ってたので、なにか薬を取り入れてみたくなりました。 
感度を良くするのでなく、鈍くする薬があったらどうだろうと考えたのがこの話を思いついたきっかけです。 
薬を得るまでのいきさつやらを書いていたらかなり長くなりました。連載なしの読み切りでは最も長い話です。 
そしてドアの傷云々は禁忌の扉を少し意識して書いてみたり。あれ以来ドアを描写するとき気になって仕方がない。 

ノベルチェッカーでの調査結果。その他-2ってなんなのよ。
自動感想はとりわけ重要な台詞を選んでくれるような気がする。機械なんだろうけど侮れない。 
【原稿用紙(20x20行)】 38.4(枚) 
【総文字数】 12151(字) 
【行数】 325(行) 
【台詞:地の文】 20:79(%) 
【ひら:カタ:漢字:他】 60:7:33:-2(%) 
【平均台詞例】 「あああああああああああああああ、ああああ」 
一台詞:22(字)読点:32(字毎)句点:48(字毎) 
【平均地の文例】  あああああああああああああ。あああああああああああああ、あああああああああああああああああ。 
一行:47(字)読点:57(字毎)句点:28(字毎)
【甘々自動感想】
わー、いい作品ですね!
短編だったんで、すっきりと読めました。
三人称の現代ものって好きなんですよ。
一文が長すぎず短すぎず、気持ちよく読めました。
それに、台詞と地の文の割合もいいですね。
「ま、待ってよユナ。こんな……こんなに反動がくるものなの?」って言葉が印象的でした!
これからもがんばってください! 応援してます!
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何かあればお気軽にどうぞ
#pcomment(遅効性コメログ,10,)

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