---- writer is [[双牙連刃]] ---- 「ふあぁぁぁぁ……」 飯食った後眠たくなるのは全生物共通だよなぁ。植物は知らんけど。 朝飯食った後直ぐに眠くなるのはどうかと自分でも思うんだがな。 ま、退屈してんだから欠伸の一つ位してもいいだろ。 本来ならば朝飯の後はマスターが学校に行くのを見送るんだが、 今日は開校記念日とやらで、平日のくせに休みなのよ。 ちなみにマスターはれっきとした学生、トレーナーとしての知識を日夜勉強中の身分なんよ。 でかい家には住んでるが、この家に居る人間はマスター一人っきり。 親が揃って世界中の遺跡やら何やら調べて回ってる考古学者? とやらをやってるらしく家には滅多に寄り付かんそうだ。 妹も居るらしいが……何故だか他の奴等に聞くとはぐらかされる。 話すのも嫌ってか? どんな奴だよ……。 話がずれたな。マスターが今日はこの家に居るって事を言いたかった訳よ。 それに伴って、マスターのポケモンも全員集合ってわけ。 「あれぇ? ライト退屈そうだねぇ」 「ん? なんだレンか……どした?」 いきなり俺を退屈呼ばわりしてきたのは『レン』。 そういや紹介された時に居なかったな。 なんとその個体数が少ないルカリオ……の雌でいらっしゃる。 「退屈ならちょっと手伝ってくれないかなぁ? 今、お菓子作ってるんだけど」 性格おっとりで趣味はお菓子作り……一般的なルカリオのイメージは全て当てはまらんな。 俺が最初見たときも驚いたもんだ。ただでさえレアなポケモンなのにこの性格。 イメージとしてあった『孤独な戦士』って感じは一瞬で崩されたっけ。 ちなみに最初にマスターの手持ちと戦りあった時は、家で留守番してたらしく俺は戦ってないぜ。 「まぁ、退屈はしてるが……」 「ならいいでしょ? おねがぁい」 こらこら、いきなり隣に座って上目使いで頼み事をしてくるなよ……断れる訳無いだろ! 「いいんだが……あれも見ておかなきゃいけんしなぁ」 「あれって? あぁ、リィちゃんとプラス君の事?」 「そう、俺はリィの世話係だしな」 俺たちの見ている先ではリィとプラスが庭でじゃれて遊んでる訳ですよ。 一応世話係を引き受けてる身分だから何かあっちゃいけないってんで自主的に見張ってたんだよな。 世話係と言っても今は大したことしてないんだけどな。 最初の2、3日は確かに大変だったかな? リィもここに慣れてないせいで俺の周りから離れないし、 何するにしても俺が近くに居ないとすぐに泣き出しそうになってたし。 それも大して長くは無かったけどな。 リィの奴、とにかく賢いのよ。 俺がこの家の事とか、他の奴の名前とか教えたらほぼ一発で覚えるし、 俺がしてる行動なんかを見て、それからそいつをまねして自分もその事が出来るようになるし。 今じゃ何の不自由も無く自分の事は自分で出来るし、他の奴にも話しかけられるようになってるんだよな。 おかげで世話係として今やってんのは、 食事の時にリィの分を取ってやる。 リィの身に危険が及ばないように見守る。 リィが不安になって近づいてきたらおんぶしてやる。 この三つぐらいになったな。後半二つについてのツッコミはしないでくれ。 ……また話がずれてるな。いかんいかん。 「大丈夫だよぉ、リィちゃんも楽しそうだし」 「むぅ……それもそうだな」 「やったぁ! じゃあキッチンいこ!」 「おーい前足引っ張んないでくれー、歩けねぇじゃねえか」 結局菓子作りを手伝う事になっちまった……。 俺、一応雄なんですけど……てかその前に四足歩行なんですけど……。 レンが嬉しそうにしてるから良いか。それに、俺に出来る事以外は頼んでこないだろうし。 でもやっぱ心配なんだよなぁ。過保護かね? 誰か適当な奴に見てて貰えれば良いんだが……。 そういやマスターも、レオも、フロストも出掛けちまって居ないんだったな。 う~む、そうなると後家に居るのは……。 「師匠おおおおおぉぉぉぉぉぉ!」 あ、こいつが居た。 「何故だか師匠に呼ばれている気がして来たッス! ていうか御暇なら稽古を!」 エスパーですか君は? 呼んではいないがナイスタイミング。 「この状態を見てよく暇に見えるな。ソウ、お前暇なんだろ? ちょっとあいつ等見ててくれや」 前足掴まれてレンにずるずる引きずられてる俺を見て暇とは……てか床と擦れて痛え。 そういや、レンと同様にこいつも紹介されて無いっけ。 ザングースの『ソウ』 起きた俺を見るなり、 「あんたの強さに惚れたッス! 弟子にしてください! 師匠!」 って言ってきた常にハイテンションな馬鹿。 こっちが弟子にするなんて言ってないのに、出会い頭にもう俺の事を師匠と呼んでた。 別にどう呼ばれようが構わないからそのままにしてる。 やめろって言っても聞きそうに無いしな。 「ノオオオォォォ! レンの姉貴に先越されてたッスかー! しょうがない! 見てるッス!」 「うむ、頼むわ」 こっちの言う事素直に聞くから使い易いっちゃ使い易いけどな。 ま、これでとりあえずは心配な事は……若干ソウに任せた不安はあるが、なんとかなるだろ。 しかし、別段逃げ出す気は無いんだからいい加減引きずられるのが結構辛い。 レン本人に悪気がある訳じゃないからなんともし難いし……。 考えてる内にキッチンに着いたな。結局引きずられたまま……。 「あ、レンさん何処行ってたんですか? あれ? 後ろに何か……」 「よぉ」 「ヒ、ヒャァァァァァァ!」 ……そこまで露骨に驚かれると俺様傷つくなー。 臆病なリーフに不意打ち食らわせた……つもりは無くても驚かしたこっちも確かに悪かったがな。 我が家のポケモン、紹介してない最後の一匹の登場です! 皆さん、盛大な拍手を! ワァァァァァァァ! 「ヒィ! ……今何か大勢の人の拍手喝采が聞こえたような……」 いやいや聞こえる訳無いでしょリーフさん! 俺が脳内で遊んだだけですよ!? 何? エスパーの素質? まあいいか。いいのか? 俺、思考読まれてんじゃないか? そんな訳は無い、か。 だってリーフ、草タイプだしな。 ベイリーフの『リーフ』 いつもビクビクしてる感じがするな。 つーか俺が見てる時は必ず一回は何かに驚いてんじゃないかな? そんくらい臆病なんだよ。反応は面白いけどな。 「な、なんだライトさんでしたか……脅かさないでほしいです」 「はは、すまなかったな。まさかリーフも居るとは思ってなかったもんでな」 「あはは、リーフちゃんはビックリしやすいもんねぇ。そだ、もう出来てるぅ?」 「あ、はい! ポフィンとクッキー、今焼きあがる所です」 「はい? 俺、手伝うために此処に来たんだよな? もう出来てんのか?」 「ゴメンねぇ? ホントはもうほとんど出来てる時にライトのとこ行ったの」 「なんと!? じゃあ俺は何のために此処まで引きずられたんだよ……」 「それはねぇ、来てほしかったから!」 ……無茶苦茶じゃね? 軽く拉致られた気分だぜ。 「だって、ライトいつもリィちゃんに付きっ切りだし、たまのお休みもソウ君とかプラス君に取られちゃうんだもん」 「まぁ、そうだな」 「だ・か・ら、今日は私が取っちゃおうと思ったのぉ♪」 「ふぉぉ?!」 「レ、レンさん!?」 リーフがビックリするのも無理無いわ。俺もビックリしてんだけど。 レ~ン! いきなり抱きついて来るのは反則技だぞー! 「ライトの毛、ふわふわぁ♪」 「ちょっ、おいおい……」 「あわわわわ……」 リーフ……レンを止めるとかしてくれてもいいんじゃないか? 赤くなってるとこっちも恥ずかしくなって来るんだが……。 半月でここまで好かれる事なんてあるのか? 好かれて困ることは無いんだが、俺も雄な訳ですよ。 他の奴よりリミッターが外れにくいとは思うが、こう至近距離に居られるとなかなか、な。 「レン……出来れば離れてほしいんだが」 「どーしてぇ? ライト、私の事嫌い?」 う……嫌いとは言えないし、俺も本来ならば別に離れてほしいなんて思ってはいない。 だが、今は……。 「レンさんとライトさんが抱き合ってる……抱き合ってる……抱き合ってる……」 一人大変な事になってる子が近くに居るんですよ! リーフがやべぇ! 顔っていうか全身が赤くなってるんだが!? 不味ーい! このままじゃリーフが先に限界突破して倒れちまう! 「レ、レン? 後ろを見てくれると助かるんだが……」 「え? 大丈夫だよぉ。誰も居ないよぉ?」 「俺の後ろじゃなくて自分の後ろ」 「へ? あー! リーフちゃん大丈夫ぅ!?」 よーしやっと気づいたな。……それでも俺を離しはしないのね。 今度は俺が本格的にヤバイ! レンの胸にはルカリオが持つ棘があるんだが……。 それをうまい事避けてレンのあれが押し付けられてる訳ですよ! 俺の理性よ耐えてくれー、今レンを押し倒したりしたら二重の終了が決定しちまう! 「レン? とりあえず離れないとリーフが倒れちまうって」 「んー……折角ライトとくっ付けたのになぁ」 「くっ付く……くっ付く……抱き合う……」 「わぁー、リーフちゃんが凄く大変な事になっちゃってる……しょうがないなぁ」 やっと開放された……リーフもそうだが俺も危なかったし。 菓子はもう焼き上がってるみたいだな。これを言えばリーフも元に戻るか? 「よぉ、もう出来てるみたいだぜ。それ」 「あ、ホントだ。リーフちゃん! 焼き上がったからお皿出すの手伝ってー」 「ふぇ? ほあぁ! は、はいですー!」 リーフもちゃんと現実に戻ってこれたか……何を考えてたか気にはなるが、聞いたら本当に倒れかねんな。 そういや俺の目的は手伝う事だったな。 「皿ぐらいなら俺が出すから、二人は仕上げとかあるんならそっちをしちまえよ」 「あ、ありがとぉライト! じゃあお言葉に甘えちゃおっか」 「大丈夫です? ライトさん?」 「気にすんなって。さくさく終わらそうぜ」 リーフは立ち直り早いな。俺も見習いたいぜ。 なんかしてないと落ち着かなくなっちまったし……。 さて、皿の用意をさっさとしますか。 皿は棚に入ってるから結構高い所にあるんだが、何とか届くから大丈夫そうだな。 前足が塞がるから後ろ足だけで歩くことになるな……あんまりカッコいいもんじゃないな。 「ライトの歩き方可愛い♪」 「ホントです♪」 「なぁ!? こっち見てないでやる事やれってば!」 見られた……後ろ足だけでヨタヨタ歩いてるところ……。 恥ずい! そしてなんか悔しい! 後ろ足だけでも歩けるように鍛えてやろうか! そういや二人は何してんだ? レンは……ボウルと泡立て器持ってなんかしてるな。クリームでも作ってんのかな? リーフは蔓のムチで包丁持って果物切ってるな。飾り付け用か。 どっちも器用だねぇ。俺はああいうのがなかなか難しい身体だからな。 「完せ~い! リーフちゃんそっちはぁ?」 「こっちもオッケーです!」 おぉ、あれよあれよとクッキーとポフィンが盛り付けられていく。 レンが作ってたのはやっぱりクリームか。果物とそれも一緒に皿の上に乗せられていく。 うむ、たまにありついてたがいつも通り旨そうだ。 いつもポフィンの味がランダムで当たりはずれがあるんだがな。 「でっきた~! リビング持ってって皆で食べよ~」 「そうだな……昼飯代わりでも良さそうだな」 「ではでは、運んでしまいますね」 昼近くなってたし……うぅ、さっきの感触がまだ残ってるし……。 いかんなぁ、俺もまだまだか。 って意識してたら忘れんではないか。早く忘れて落ち着かねば……。 「ライト何してるのぉ? 早く早くぅ」 「う? あ、今行くわ」 ぼ~っとしてたらまた何が起こるか分からんからな。気をつけねば。 で、リビングに戻ってきた訳だが、 「師匠おぉぉ! 遅いッスよ!」 「いいじゃねえか! 大体そんなに遅くなかったろ!」 「ライトこっちこっち! 僕の横!」 リィ含めて出掛けた連中以外全員集合で待ってんのね。 ん? 全員集合かと思ったら何か足りな……。 「ライト覚悟ぉーーーー!」 「うお!」 入ってきた扉の裏から何か奇襲受けてるし! 避けれ……る! 「ふぎゃあ!」 「何かと思ったらお前か。プラス」 いやぁ、勢い良く飛び出して来てくれるもんだからいつ見ても良いこけっぷりだ。 こいつは、最初に会ったときから嫌に好戦的だったが、半月の内に何回こんな奇襲を受けたことか。 なんでこんなに俺を敵視してんのか一回だけ聞いてみたんだが、 「電気タイプ二人も居たらどっちが強いか決めたいんだもん!」 だそうだ。 一度勝ってる時点で俺の方が強いと思うんだがな。 ま、大した手間じゃないから遊んでやる程度に相手してやってんのよ。 「くっそぉ! 今度は絶対に当ててやるんだからな!」 「期待しないで待っててやるよ。ほれ、そんなとこ座ってないでテーブルのとこ行くぞ」 「ふんだ! 言われなくたって行くモン!」 結構かわいいとこあるんだぜ? 雄だけど……。 「待たしたな。さて、号令といくか。今日の号令はリィか? よろしくな。」 「はぁ~い! じゃあ皆……」 「いただきま~す!」×5 「ってなんでライト言わないの?」 「う、バレたか。隣に居るリィには隠せんか」 「とぉ~ぜん! 僕はライトとずっと一緒に居るんだもん!」 そうだよなぁ、半月前からほとんど一緒なんだよな。 お陰でリィに俺の影響が出て来てるし……。 話し方とか性格とか、徐々に雄じみて来ているというか何と言うか。 最初の泣き虫が直ったのは良いんだが、俺の話し方とかもついでに拾っていっちまってんだよな。 極めつけは一人称! いつの間にか『僕』になってたし! 不味いんでねぇの? リィは雌なんだよ。僕って言ってたら雄にしか見えねぇんだよ。 そもそもイーブイっつうのはただでさえ雌の少ない種族なのによ? その貴重な雌がわざわざ雄っぽくなる必要も無いだろ。 ここは何とか修正しなければ……。 「どうだリィ、美味しいか?」 「うん! レンねぇの作るお菓子、僕好きだよ」 「……なぁ、リィ? 一応雌なんだからよ? 僕じゃなくて私って言ってみたらどうだ?」 「へ? なんで?」 「いや、レンもリーフもフロストもそうじゃねぇか。自分だけ違うのは気にならないのか?」 「う~ん……、気になんないね。僕は僕だし」 「そ、そっか……」 撃沈! 俺は俺理論リィに教えたのも俺だし! やっちまったなぁ……リィが此処まで賢いと知らなかったのが痛いぜ。 なっちまったのはしょうがない気もするが、やっぱり気になる……。 「ライトぉ、美味しくない?」 しまった……考え事してて菓子に手ぇ出してなかった……ヤベッ! レンが泣きそうだ! 「いや、すまねぇ。ちぃと考え事してただけなんだ。頂くよ」 「師匠食べねぇんなら俺が頂き……」 「ダメエエエェェェェ!」 ソウが喋り終わる前にレンの電光石火がソウを直撃! 「ルバフォアァァァァァ!」 「ソウ君でも許さないからね……」 おぉ、飛んでった飛んでった。 やっぱ……ルカリオは怒らせちゃいけんよ、ソウ。 波導弾じゃなかったことを喜ぶべき……なんだろうな。 「さ! ライト食べて♪」 「お、おぅ」 気合十分の菓子だな……。 因みに何故ソウが飛ばされて誰も何も言わないかと言うと、 結構頻繁に起こることだからだ。 決してレンが怖いからではない……はず。 「うん、美味いよレン、リーフ」 「わ~い! ありがとぉライト」 「美味しいって言ってくれると嬉しいです!」 「僕、ご馳走様! レンねぇありがとう!」 「リィちゃんもありがとぉ♪」 「あ、リィ行っちゃうの? 僕も行く!」 また二人して庭の方に行っちまった。 遊ぶだけならそんなに神経質にならなくていいか? あんまり近くに居るとどんどん俺に似てきちまいそうだしな。 でも気になる……完全に過保護だな。 「お~い、ソウ、そろそろ大丈夫だろ? またよろしくな~」 「ふはははは! おれっちは何度でも蘇るっすよー! 了解っす!」 「……もう起きれたんだ……」 レンが小声で何か言った様だが聞こえなかった事にしよう。 さぁて、結局俺が最後になっちまったし、後片付けでも手伝うか。 「長くなっちまってすまなかったな。片付け手伝うわ」 「大丈夫だよぉ、最後、ライトぜ~んぶ食べてくれたんだもん。それで十分だよ」 「後は私達に任せてくださいです!」 残ったのは俺が全部処理させて頂きましたよ。 腹キツイ! でも残したらレンもリーフも悲しそうにするしな。 これは男の役目として果たさにゃならんだろ! 最初に出掛けた奴等の分を分けていなければこんな苦労は無かったんだが……。 まぁ、良し! 「やっぱ皿くらい運ぶわ。美味い菓子のお礼だ」 「ライト優しいねぇ、だから好きなんだよぉ♪」 「そいつは……あ、ありがとうな」 急な抱きつきとか無ければもっと素直に喜べたんだが……。 リーフは聞く前にキッチンの方に行っちまったし……。 ん!? いつの間にかレンと二人きりになってる!? 「気付いちゃったかぁ、私達二人しか居ないんだよぉ?」 「い、や、そそそそそそそうだななな」 「ふふっ、ライト赤くなってるぅ」 さっきのフラッシュバックで勝手に顔が……。 「ラァ~イト♪」 「ちょちょちょ、待て待てレン!」 さっきよりも状況は不味いよ!? 止めてくれる要素が無いんだから! レンが笑ってる~! しかもかなり妖しい笑みだよ~! よ、よし! 此処はブレイカーなソウ辺りの出番だろ! ていうか誰か来てー! リィー! プラスー! 「師匠おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ! だああぁぁぁぁいピイイィイイィンチっすぅうううぅうう!」 ホンとに来たー! って大ピンチ!? 「どうしたソウ! 何があった!」 「リィっちとプラスがー! ってこっちもピンチッス!?」 「もぉ! 私達の事はいいのぉ! 二人がどうしたのぉ!?」 俺的には良くなかったがレン! ナイス指摘だ! 「変な黒い影みたいのが急にぶわーって入ってきて、二人が見えなくなったっす!」 「入ってきたって……庭にか!?」 「そうっす! で、奥の林の方に入っていったっすー!」 「奥の林……リィと俺が会ったとこだな?」 「そこっす!」 「ちぃ!」 舌打ちと共に俺は走り出していた。 俺の油断だ。庭なら何があっても駆けつける時間はあると踏んでたんだが……。 リィが逃げ出せたように、この家から林は繋がっていた。 一瞬でそこまで逃げ切れる奴が居たなんてな! 庭に出たが……。やっぱり追える形跡なんて残してないか! 上等だ……虱潰しに探してやらぁ! 林の中まで一直線だ! この野郎! 意気込んで林の中だが、やはり何の目印も無しじゃ辛いな……。 くそ、何か、何か無いか……。 ん? よく見ると焦げたような後が点々と残ってるな? こいつは……炎で焼かれたんじゃねぇな。 俺が使える電気で貫いたような……そんな感じだな。 電気……! プラスか!? あいつ冴えてるじゃないか! こんな目印残せるとはな! まだ無事で居ろよ、プラス! リィ! だいぶ進んできたな……。 くっ、何処まで行っちまってんだよ! 戻れんのか!? 俺!? そんなに遅れて出た訳じゃないのに全く追いつかねぇ。 サンダースのスピード以上の奴なんておいそれとは居ないと思うんだが……。 いや、どうやらゴールだな。 「こぉんな可愛い男の子二人もゲットできちゃうなんてラッキーだわぁ」 あれは、ヘルガー? なんか様子が変だが……。 「パチリスの君の怯えた目もそそられるし、イーブイの君の強気な感じもいいじゃない」 「あ、あうぅぅぅ」 プラスは完全に怯えちまってるな。それでもリィの盾になろうとしてるのは兄の意地って所か。やるじゃねぇか。 リィは……誰に似たんだかなぁ。睨み付けてるし。 俺じゃないよな! 嘘です。完全に俺です。申し訳ない! そして完全に雄だと思われてる! ホント、リィごめん! な~んてやってる場合じゃねぇな。いっちょいってみっか! 「おーらぁ!」 「ふうぅ!? 何よアンタ!」 蹴り、避けられたか。間に入るのが狙いだしまぁ良し。 「ライト遅いよ? 僕待ちくたびれたじゃん」 「き、来てくれた……リィの言うとおりだ……」 「悪いな二人とも。ちぃっと遅くなったわ」 「な、サンダース!? どうして此処が!?」 「こいつの電気に気付かなかったみてぇだな。あちこち焦げてたぜ」 「あ~ら、その子やるじゃない? ますます鳴かし甲斐が有りそうじゃない」 こいつ……よく見たら雄じゃねぇか! なんとまぁ、そういう趣味の奴ですか……。 「こいつ等をお前の慰み物にする気はネェよ。後悔する前に消えな!」 「折角の美味しそうな男の子、みすみす諦める訳無いじゃない!」 交渉決裂、だな。じゃあ殴り倒すまでよ! 「二人とも、あぶねぇからちょっと離れてろ」 「オッケー、ライト、負けないでよ?」 「ライト……」 よーし戦闘準備完了! 変態ごときにリィをやれるか! 「もたもたしてると、あっという間に火達磨よ!」 火炎放射か……余裕だな。 「オセェよ……」 右にステップして回避、避けちまえば相手はがら空きだ。 顔面に一発いっとくか。 「避けれねえだろ? 食らっとけよ」 「ぐぅっ!」 右前足での突き一発じゃ落ちないか……。 二人攫って此処まで走れてるんだからそれなりの力は持ってるか。 「よくも顔を……! その足砕いてやる!」 でかい口広げての特攻か、噛み付く……いや、砕くって言った所を見ると噛み砕くか。 受けるのは不味いかな、と 「俺なんか美味くないぜ? 代わりにこいつをやるよ!」 言うのと同時に電磁波を放射。 当たれば上々。当たらなくてもコースは絞れる! 「く、うぅぅぅ!」 まさかのブレーキ!? ちいと予想外だったな。 横に避けるか……それなら追撃するまでよ! 「掛かったわね!」 火炎放射? 一度避けられた技に頼るか。甘い……。 「う、嘘……やだ……」 のは俺だった……まさか一直線に並んでたとはな。 避けたら二人がただじゃすまない、か。 いてぇのは嫌いなんだがな。 「グゥゥゥゥ……」 直撃……ダメージは思ったほどじゃないな。 俺の逆鱗に触れるには十分だけどな! どうせもう受けてる火炎放射だ。そのまま前に進めば……奴が居る! 「な、何してるのよコイツ!? 火炎放射の中を進んでくる!?」 「捕まえた♪」 首筋にがっちりと牙を食い込ませる。が、噛み付くじゃあないぜ? 「んぬぅがああああぁぁぁ!」 「ぎ、ひぎぃいぃ……」 首に一気に力を込めて持ち上げる。もちろんヘルガーを。 おーおー首絞まってるねぇ。これだけでも十分だが……。 「落ひろ!」 喋れてないのは首銜えてるからだからな? ヘルガーの体が弧を描いて地面に叩き付けられる。もちろん顔面から。 俺式パイルドライバー発動! 何にも言わんな。窒息+激突じゃあしょうがないか。 殺しては……いないようだな。息はちゃんとしてるようだし。 俺もそれほどのダメージは無いようだしこれぐらいにしとくか。 「喧嘩売る相手間違えたみたいだな。これに懲りたら、もう人、じゃないな。ポケ攫いなんてしないこったな」 これで終わりっと! 卑怯な手さえ受けなければ無傷で済んでたかね? 結構強いほうだったが、まだ俺の方が強い! ざまぁみろ。 「終わったぜ二人とも。もう出てきていいぞ」 ん? なんかさっきより元気無くなってるな。 あぁ、俺が火炎放射受けたの気にしてんのか。 「どうしたリィ? 元気ないじゃねえか」 「僕の所為でライト痛い思いしたよね……ごめん……」 「あんなの痛い内に入んねえよ。それより、助けたのにそんな暗い顔されてる方が俺は悲しいぜ?」 「うん……」 「何で……」 「ん?」 プラスの様子がさらにおかしい。 どっか怪我してんのか!? 「なんで助けに来てくれたんだよ……」 ……はい? 「リィはライトなら必ず来てくれるからって、僕に電気ショック使わせた……」 なるほど、あれはリィのアイディアだったか。 さすがだ、リィ。ホントに七年しか経験を積んでないのか怪しくなるほどの賢さだな。 で、プラスの方はいつも自分を襲ってくる相手を何で助けに来たか知りたいと。 そんな簡単な事、教えなくても分かるだろうに。 「なんでお前はリィを助けようとしたんだ?」 「え? 見てたの?」 「あぁ、……良くやったな」 「……僕はリィのお兄ちゃんだもん! 助けて当たり前でしょ!」 「俺だって同じさ。二人とも大事だから助ける。そんだけだぜ?」 「あ……そっか」 納得したみたいだな。しかし、何とも空気が湿っぽい。 一丁すっきりさせてやりますか。 「二人ともよく頑張ったな」 そういって二人を抱き寄せる。 「う、ぐぅ、怖かったよぉ……ライトぉ」 「う、うぅ、うわああああぁぁぁん!」 「よしよし、泣いてすっきりしたらゆっくり帰ろうな」 泣き虫だったリィも我慢しないで思い切り泣いちまえば良いのにな。 しかし、疲れたー! 今日は色んな事起こりすぎて腹一杯だ! って思いっきり菓子食った後全力疾走したから気持ち悪くなってきた……。 帰ったら帰ったで質問攻めだろうしなぁ。 レンにソウ、心配してっかなぁ。 ま、こんだけ色々起きればしばらく何にも起こらないだろ! 一件落着! ていうかもう動きたくねぇぇぇぇぇ! ---- 中書きです これで三分の二くらいですね。 レンの事がまんざらではない感じでライトの心境を書いてきましたが結構難しいです……。 積極的ではないし、かといって馴れ合いが嫌いな訳でもない。 そんな風に書けていれば良いんですが……。 後書き 長かった……。 根性入れて書き上げましたが限界です……。 最後のほうは……いや、全体的にグダグダです。 これからもグダグダしながらも進めていきます。 いつかうまくなるその日まで……。 では、失礼しましたー。 ---- コメント等がありましたら、そっとこちらへ…… #pcomment