ポケモン小説wiki
とある両者の関係 の変更点


作[[呂蒙]] 



 ある休日のこと、リクソンは家でくつろいでいた。季節が季節なだけに外は暑いが、中はエアコンで快適そのもの。常にちょうど良い温度に保たれている。そういう心地よい空間だと、誰しも昼寝がしたくなる。別に何かしなければならないことがあるわけでもなし、リクソンは昼寝を始めた。
 それからしばらく経って、シャワーズが部屋の中に入ってきた。
「ねー、リクソン?」
「……」
 リクソンは起きなかった。どうやら完全に熟睡しているようだ。シャワーズは体をゆすってみるが、リクソンは起きない。そんな気持ちのいいところですやすや寝ていたら誰だって起きないだろう。
「まったく、しょーがないわね……」
「……!?」
 リクソンは何が起きたのかさっぱり分からないようだったが、それでもとりあえずは目を覚ました。リクソンはまだ完全には動いていない頭を必死に働かせて、状況整理をしていた。そして、ようやく理解した。さらに顔面が痛い……。
「お目覚め?」
「何だよ、アオザメ」
 ぶつぶつと悪態をつくリクソン。平手打ちというか、尻尾ビンタというか。シャワーズの尻尾は他の6匹に比べて、長くまた太い。そんなものが顔面に打ち付けられたらたまったものではない。もちろんシャワーズも加減はしているだろうが。本気でやられたら鼻の骨が折れてしまう。
「ここんところ、あんまり寝てないんだ。少しは寝かせてくれ」
「じゃあ、冷蔵庫の中の飲み物がないから、何か買ってきて」
「やれやれ、大所帯だから減りが早いなぁ。んもぅ」
 何だかんだで、リクソンは自分の手持ちのポケモンたちの要求は余程のことがない限り突っぱねることは無い。それを知ってか知らずか、7匹も無茶な要求はしない。起き上がって、リクソンは玄関に向かう。すると、シャワーズが後ろからついてきて言う。
「ついて行っていい?」
「まぁ、いいか」
 留守番は6匹がいるし、むしろ危ないのは他人様の家に侵入を企てる不届き者の方だ。曲がりなりにも鍛えているポケモンたちなので、そんじょそこらの野生ポケモンやいろいろな意味で危ない人間にはまず負けない。セイリュウはポケモンを持つことに対し、規制が厳しいというよりもいろいろとやらねばならないことがある。例えば役所へ届け出るとか、所有するための許可書を発給してもらうために試験を受けなければならないとか、2年ごとに許可書を更新するので、役所へ出頭しろなどなどこの他多くの規制がある。他の国では当たり前の、路上で道行くトレーナーに半強制的にバトルを仕掛けるというのもダメ。かつては法律がなかったため曖昧になっていたが、現在では「私闘罪」という罪に問われてしまうことになった。当然トレーナーは、こんな規則にうるさい国に来るはずもない、かと思われた。
 しかし、許可を取って決まった場所ですればいいだけの話で、他所の国のマナーのなっていないトレーナーにうんざりして少数ではあるが、この国に頻繁に来るトレーナーもいるという。
 買い物を済ませ、さっさと家に帰るリクソンとシャワーズ。外気温35度のところに長くいては体力が奪われてしまう。
 その日の夕方、テレビのニュースで騒ぎを起こしたポケモントレーナーが警察に逮捕された、というのがやっていた。ケンカがエスカレートしてポケモンバトルに発展し、さらにアスファルトに穴を開けた「公共物損壊」の罪で、ということらしい。
「まーったくな、他の人にメーワクかけんならこの国に来なくてもいいってんだよな」
 ブラッキーがそんなことを言う。リクソンというよりも、彼の父親は礼儀に厳しくポケモンにも例外ではなかった。そのせいか、口のきき方は悪いが、外ではちゃんとしているのだ。
「言っちゃ悪いけど、ブラ君て結構真面目なのね」
「あの家いたら誰でもそうなるって」
 グレイシアが言うのに、ブラッキーが返した。
「でもまぁ、人間は大したことがないのに、ポケモン持ってるってだけで突然自分が強くなったと思いこむ、勘違い人間っているのよね。そんなの主人に持ったポケモンがかわいそうだわ」
 このシャワーズの発言、リクソンはドキッとしなかったと言えば嘘になる。じゃあ、自分ってどうなわけ? と思わずにはいられなかった。家柄は良いかもしれないが……。でも、それだけである。7匹はちゃんと成長して少なくとも自分のことは自分で出来るからそれはいいのだが……。

 それから数日後、知り合いと飲みに行った時、どうにも例のことが引っかかっていたせいか、いつもより酔いの回りが早かった。何とか家に帰ったものの、足は千鳥足で、気分も最悪だ。何とかトイレにたどり着いた。
「う~、気持ち悪い……」
 すると、いつもなら寝ているはずのシャワーズが起きてきた。床に倒れているリクソンを見つけると、ソファまで引っ張っていった。
「あ~あ、全くこんなにべろべろになって」
「シ、シャワーズ、目が回る……」
「しょーがないわね、こんなことに技を使いたくないんだけど……」
 シャワーズは周りにある電化製品を自分から遠ざける。あと濡れたら壊れそうなものも、同様に遠ざける。
 シャワーズは目を閉じて、自己の体に備わっている力を解放する。水のベールが周りを包みこむ。この中はマイナスイオンが絶えず供給され、中にいるすべての生き物に安らぎを提供するのである。
 いつの間にか、リクソンは眠っていた。
(おやすみ、リクソン)

 次の朝、リクソンが目を覚ますと、もう皆は起きていた。
「あ、皆、おはよう」
 少し頭が痛いが、昨晩に比べればだいぶ楽だ。洗面所に行くと、そこにはシャワーズがいた。
「どう?」
「ああ、だいぶ楽になった。シャワーズのおかげだな」
「お礼ならいいわよ。でもまさか『アクアリング』をあんな風に使うのはもうイヤだからね」
「ああ、そーならないように善処するよ」
 ここで、何だか答えが出たような気がした。
 ああ、そうか。頼られるんじゃないね。双方が頼るんだよ。つまり支え合うってこと、か。うん、そうだよな。考えてみれば単純なこと。しかし、単純なことって意外と分からないものだ。ゆで卵をどうやって立てることができるかって言うのと同じだね、うん。




 おしまい

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