writer is [[双牙連刃]] ちょっと時間軸を無視した、ハヤト家の面々のアナザーな日常を脇道としてお送り致します。超微妙な官能? 表現もございますのでご注意下さい! ---- 1、獅子は見た! うん、良い朝だ。我ながらなかなか朝に強くなった実感がある。レンに任せきりだった頃に比べれば段違いだろう。 よし、早速レンの手伝いに行くとするか。恐らくもう起きて朝食の準備をしてるだろうしな。 他の皆はまだ寝ているだろうし、極力音を立てずに廊下を進む。そこまで気を使う必要があるのかと聞かれると疑問だが……まぁ俺の癖だな。 さて、リビングに着いた。ん、やっぱりもう誰か居るようだな。まぁ、レンと奴ぐらいしか思いつかないが。 扉を開けて……!? 「いや、こういうの……誰かには見せらんねぇな」 「だね。私も、ライトとだけ一緒の時じゃないと恥ずかしいかなぁ」 な、なんだ!? ライトとレンは何をしている!? 朝だぞ!? 皆が使うリビングだぞ!? ソファーの方にレンの姿が見える。座ってるようだが……ライトは何処に居るんだ? 「あ、でも前にリーフちゃんには見られちゃってたんだよね。あの時は恥ずかしかったなぁ」 「あれは本当に不覚だったぜ……こう気持ちいいとついウトウトしちまうんだよなぁ」 う、ウトウト? という事は、疚しい事をしてる訳じゃないようだな。 しかし、声はすれども奴の姿が一向に見えない。ソファーの影に居るのか? レンが恥ずかしくて、ライトがウトウトするほど気持ちの良い事……一体何をしているんだ? 見ている限り、レンが何かしてるようには見えないが。 うぅむ、気になる……同室で寝起きするほどなのだから奴とレンの仲は近付きつつあると言う事は分かる。が、節度はしっかりと持って貰わないとならんからな。 別に俺は野次馬精神で二匹の行動を確認するわけではない。言わばこの家の治安を守る為だ。よし、行くぞ。 なるべく足音を消して、そっとソファーに近付く。慣れると意外と消せるものだよ、気配というのは。 ……な、なんだ? これは……所謂、あれか? 「ひ、膝……枕?」 「!? れ、レオ!?」 「え!? わぁぁ!?」 はっ! しまった、思わず声を出してしまった。いやでも、あまりにも意外な光景でつい……。 「おまっ、な、なんでここに!?」 「ひゃん!?」 慌てて立とうとしたライトの前足が、その、レンの大事な場所に埋没する事になった。 って、何処を凝視してるんだ俺は! これじゃただの覗きで変態じゃないか! 「おわぁ!? わ、悪ぃ!」 顔を赤くしてレンはライトの脚があった場所を押さえた。な、なんか本当にもう……。 「あー……すまない。その、レンの手伝いに来たらお前達の話し声が聞こえて、何をしているか気になってな」 「だ、だからってそっと覗く事無いだろうがよ!」 「そ、そうだよ! 本当にビックリしたよぉ!」 まぁこれは抗議されても仕方ないな。反省しよう。 しかし、なんで膝枕なんてしていた? ……あえて今目の前で起こった事から話はすり替えさせてもらうぞ。 「まぁ、悪かった。しかし、なんで膝枕なんてしていたんだ?」 「それは、その、だなぁ……」 「え、えっと……」 ……こうしてニ匹揃って恥ずかしそうな仕草をされるともうカップルにしか見えんな。まぁ、両者が想いあってるのなら俺もとやかく言うつもりは無いが。 「まぁ、前に色々あってだな」 「わ、私がその……ライトにしてあげたいって我が儘を言って、それからたまに……」 そういう事だったのか。レンの方から……一途と言うかなんと言うか、ライトが来るまではそういった事に全く興味があるようには見えなかったんだがな。 しかし、かなり思い切った行動だと思うのは俺だけだろうか。レンの膝……というか太腿を枕にすると言う事はその、あれだ。寝返りを打つと大惨事だろう。 現にさっきもなっていたしな。まさか、レンがこうも恋愛沙汰に積極的だったとは、意外だ。 「あー、うん、分かった。悪い事をしたな」 「いや、いいんだけどよ」 「出来ればこの事は、皆には言わないでくれないかな? その、変に話が大きくなっちゃっても困るから」 俺が二匹の関係に気付いてる時点で手遅れなような気もするが。主殿やソウ辺りならまだ気付いていないか……公言しない方が良さそうだな。 だがなかなか希少なものを見たな。ライトの奴がここまで無防備になるのは早々無いんじゃなかろうか? それだけレンとのやり取りに安堵しているということか……。 主殿の手持ちにしようとは俺ももう思ってはいないが……レンの為にも、こいつには長くここに居てもらいたいものだな。 「邪魔をした責任もある。朝食の準備は俺がするから、お前達はもうしばらくゆっくりとしていろ」 「え、でも……」 「気にするな。さっきも言った通り興味本位で邪魔をしたのは確かだ。たまには任されよう」 「いや、なんか俺達も悪かったな。その、こそこそすることでもないんだが」 「まったくだ。どうせなら堂々としていればいいものを……ただ、さっきの偶然のような事はしてくれるなよ」 ……しまった、今のは失言だった。思い出したようにライトはやってしまった前足をプラプラとしながら恥ずかしそうにしているし、またレンは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。 フロスト辺りが居たらにこやかに凍らされてるところだな……これ以上何かをやらかす前にキッチンへ退散するか……。 ---- 2、空気とは読めると得をするもの……であってほしいです byリーフ ふーむ……一体何があったんでしょう? どーもレンさんの態度や反応が鈍いというか心ここに在らずというか、とにかくぽーっとしてますね今日は。 しかもライトさんへ接する時に妙に恥じらいが見えます。おまけに、ライトさんの方もかなり照れていると言うか申し訳なさそうにしてますし、何かありましたね。確実に。 これはちょっとリサーチすべきですかねぇ。なんてったってライトさんとレンさんはこの家初のカップルと言える存在。興味+お手本には打って付けの存在ですからね。 「ライトー。っと、あれ? リーフ姉ぇ、ライト見なかった?」 「え? あぁ、ライトさんならそこですよ」 テレビを見ながら(本当はリサーチメモですけど)考え事してたらリィちゃんが来てました。エーフィになってから本当に様変わりするように綺麗になったんですよねぇリィちゃん。同じ牝としてちょっと羨ましいです。 因みにライトさんは今、ソファーでフロストさんのベッドと化しています。まぁ、ライトさんも寝てるんですけどね。ライトさんもこのソファーで寝るの結構気に入ってるみたいなんですよね。 そう言えば……ライトさんとフロストさんもこう見るとかなり仲が良好そうに見えますよ。元々フロストさんってあんまり他者を寄せ付けるタイプではありませんし、こうして自分から体を預けるような事は絶対にしなかった筈なんですけど。 「なんだフロスト姉ぇと一緒に寝てるのか。退屈だから何処か散歩でも行かないか誘いに来たんだけどな」 「あ、いいですね。天気もいいですし、私と一緒に行きましょうか」 「リーフ姉ぇが一緒に行ってくれるの? やった、なら一緒に行こうよ」 うーん、リィちゃんの笑顔は可愛いって言うより格好良い部類に入りますね。こう、顔立ちが整っていて目がキリッとしてるから牡の子みたいに見えるんですよ。 これもライトさんの影響なんですかね? フロストさんは牝らしさが無くなるって危惧してましたけど、私としてはリィちゃんはこのボーイッシュな感じが良いと思うんですよね。 しかし、出掛けるとなるとリサーチが出来ませんね……むぅ、微妙にタイミングが悪かった感はありますけど、致し方ないとしておきますか。 「しっしょー。ありゃ? リィっちとリーフじゃないッスか。師匠は居ないッスか?」 「あ、ソウ兄ぃ。ライトならそこに居るけど、寝てるから起こしちゃダメだよ」 「あれ? 皆集まってどうしたの?」 「あ、レンさん。いえ、何故かたまたまここに揃っただけですよ」 あらら、次々に皆集まってきちゃいましたね。……おやぁ? レンさん、ライトさんとフロストさんの様子を見てちょっとむっとしましたね~。 ずばり、ジェラシーって奴ですね! そりゃあ、想い慕う相手が他の牝と一緒に寝てれば誰でもそうなりますよねー。思っててなんだか自分でちょっと卑猥だと思っちゃいました。 まぁここは茶化さないでおきましょう。皆居る事ですし。 「それにしても、こうやって見てるとライトとフロスト姉ぇって仲良いよね」 「え、あ、う、うん、そうだね」 おうふ、リィちゃん……純粋が故にこういう天然で地雷を踏み抜いちゃうんですよね。ここはフォローに回らねば。 「まぁ、ライトさんは表裏の無い方ですからね。社交性がこれだけ高いと、すぐに誰とでも仲良くなれちゃいそうです」 「あぁ、分かるかも。ジルさんとかグリ達ともすぐ仲良くなってたよ」 「それでも八方美人にならず、それぞれの関係をはっきりさせてる。器用ですよねーライトさんって」 「え? そうッスか? 師匠は誰ともあまり変わらずに接してるように見えるッスけど?」 「例えば、ソウ君にはお師匠で、リィちゃんには……どっちかと言えばお兄さん。フロストさんには気の合う友達って感じじゃないですか? 私の見立てですけど」 うん、我ながらなかなかのフォローじゃないですか? あえてレンさんとの様子は出さないで、他の相手との関係を仮定する。それによってレンさんとは特別な関係であると言う事をさりげなーくアピールするって寸法ですよ! よしよし、レンさんの顔もむっとしたものからちょっと考えるような感じに変わりました。一難は去っ……。 「でもこの感じだと、友達って言うより恋人みたいッスよねー」 なん、だとぉぉぉぉぉぉ!? まさかのところからとんでもないキラーパスが発生!? 何してくれちゃってるんですかソウ君! うわぁお、レンさんがガチでショック受けてる! くぅっ、これほど、これほどやりにくいものなのですか天然キャラとは! 「そうですか? 恋人はちょっと言い過ぎだと思いますよー?」 なんとか、なんとかこの場を修正しなければ! どうだ、どう切り出せばいいんですか!? 「うん、フロスト姉ぇとライトは恋人って感じではないよね。ライトの恋人ならレン姉ぇがぴったりじゃない?」 「え!?」 ふぁ、ファンタスティック……私に出来ない事を一瞬で平然とやってのける……流石リィちゃん、可能性の獣。 そんなクリティカルな事言われたらレンさんがオーバーヒートするかもしれませんが、今のテンションダウン状態を一気にマックスまで持っていくには十分な破壊力です。 「なるほど、レンの姉貴なら師匠ともう仲も良いしぴったりッス!」 「ちょ、ちょっとちょっと! 私とライトはそういうのじゃないよ!?」 「あはは、レンさん慌て過ぎですよぉ。ぴったりだって言っただけですよ?」 口に手を当てて恥ずかしそうにしてる姿なんて本当に乙女ですねー。これはもう本格的にライトさんとお付き合いを始めるのも秒読みですかねー。 それにしても、リィちゃんはやっぱりライトさんをそういう対象としては見てないんですね。さらりとあんな事を言っちゃうとは思いませんでした。 いや……リィちゃんは見た目以上に大人であるのは確かですけど、恋愛に興味を持つにはまだまだ時間が掛かるのかもしれませんね。なるほど、良いデータが取れました。 「っと、ついつい話に花が咲いちゃいましたけど、あまり煩くするとライトさん達も起きちゃいますからそろそろ散歩に行きましょうか、リィちゃん」 「そうだね。レン姉ぇ、ソウ兄ぃ、僕達ちょっと出掛けてくるね」 「散歩行くんスか? なら俺も行くッス! 師匠が起きてないなら指南は受けれないし、いいッスか?」 「もちろん。いいよね、リーフ姉ぇ」 「えぇ、ソウ君も一緒に行きましょう。レンさんはどうします?」 「へ? あ、私はお昼ご飯の準備があるから止めておくよ。気を付けて行ってきてね」 なら、三匹で行くとしましょうか。 途中はどうなるかと思いましたけど、なんとかリカバリー出来てよかったよかった。ソウ君ももうちょっと場の空気と乙女の気持ちっていうのを分かってくれないと大変ですねぇ……。 ま、今はお散歩して気分をスッキリさせましょう。その後は……最初に考えてた事のリサーチでもしましょうかね。 ---- 3、アイアムトレーナー!? 「はぁ~、やっぱりたまにゲーセン行くと面白いよな~」 「全部僕が勝ったけどねー」 ぬぐ、そりゃあそうだけど、ゲームは楽しむ為にやるもんだもんな! 楽しければいいのだよ楽しければ! ……泣いてなんかいない! 休みに朝から町にくり出したのはいいけど、お供がプラスだけじゃバトルはきつい。って事で予算2000円でゲーセンに行ってきた訳だ。 最近はレオも家事やったりで楽しそうだし、皆それぞれに色々やってるからどーしても俺ってば溢れちゃうんだよな。ちょっと寂しい。 だからこうしてプラスとふらふらしてる訳だ。……思ってて情けなくなってきた。俺も家事とか、本当はやらなくちゃならないんだよなー。 ただ、前からずっとレンがやってくれてたし、最近はレオやリィにリーフと、皆がやってくれるようになって益々俺がやる必要が無くなってくんだよ。 クラスの奴からも言われるんだよ、ポケモンに恵まれ過ぎだって。確かにそう思う。俺の周りってばみーんなトレーナーに頼らなくてもなんとかなるくらいしっかりしてるのが揃ってるなーって。 ……はっ! だ、駄目だ、考えれば考えるほど俺がトレーナーを名乗ってる意味が薄くなっていく! いかん、いかんぞー! 「あ、ハヤト兄ちゃん。あれってリィ達じゃないー?」 「へ? いやいや、リィが一匹でこんな町中に出てくる事なんて……んなぁ!?」 ま、マジだ……リーフ達と一緒にリィが居る。ど、どういう事だってば!? いや、最近なんかリィもしっかりしてきたなーとは思ってたけど、まさか人間嫌いを克服したのか!? うーん、進化してからはこう、目なんかもキリッとしてカッコよくなったもんなぁ。そうかぁ……。 あれ? 俺……なんにもしてなくね!? 今だってなんとなーく遊びに来てるし! 「い、いかん、いかんぞぉ! これじゃあトレーナーじゃなくて単にポケモンにお世話になってる学生じゃないか!」 「どしたのー? ハヤト兄ちゃんは学校行ってるんだから学生でしょー?」 「いやでもだ、俺はトレーナーになる為にトレーナースクールに行ってる訳だからポケモンにお世話してもらってるんじゃダメだろ? いかん、いかんぞこれは」 しまった、俺が気ままに生活をエンジョイしてる間にこんなにも世の中が進んでいたとは! どげんかせんといかん! とは言ったものの……何をどう変えればいいのやら? 基本的に色々な事はレンとかがしてくれ……はっ!? これか、これを変えないといけないのか! 染み付いてしまってるレンや皆のポテンシャル任せな生活、これを正さないとならないのか! 確かにライトが来てからソウとかフロストもなんか元気になってるし、バトルも俺が指示しなくても相手へ優位に立てる位置に動いたりしてくれるからありがたいなーとか思ってたけど! でもそれはもうトレーナー要らないじゃん! 俺要らない子じゃぁぁぁぁん! 気付かなかった……俺がトレーナーじゃなくてただのボールを持ってる人に成り下がっていたなんて! オーマイガー! 「よく分かんないけど、リィ達は行っちゃったよー?」 「ほぇ!? どっちへ!?」 「あっちー」 よ、よし。まずはあいつ等にこう、ビシッとトレーナーらしい事を言ってターニングポイントとしようぞ! 追いーかけてー追いーかけてー。居た! 「おーい!」 「ん? あれ、人間さん?」 「どぅふ!? り、リィ……そろそろご主人様とかハヤトさんって呼んでくれてもいいんだぞ?」 「え、やだ」 どぅぶはぁ!? ダイレクトに心にダガーナイフ!? 「うわぁ、一撃というか一閃というか、なんかズバッて音が聞こえてきそうでしたね」 「な、なじぇ? なぜですかリィさん!」 「うん、ライトからそう呼ぶなって言われてるし」 ライトぉぉぉぉぉ! なんなのその予防線!? しかもリィもガチな顔でそう言っちゃう!? 「それになんて言うか……曲げたくないんだ」 「ま、曲げたくない?」 「誰かの言いなりになる、って言うのかな? もう、昔の僕みたいな事を起こす訳にはいかないから、それに戻っちゃいそうな事はしないようにしようって決めてるんだ。それを曲げたくないって」 「おぉー、なんかリィっちカッコイイッス!」 本当だよ! 漢らしいよ! どうしてこうなった!? な、なんだろうこの完全敗北感……エーフィってこんなカッコイイポケモンだったっけ? もっと可愛い感じのポケモンじゃなかったっけ? まさかリィがこんなにも意思の強いポケモンだったとは、預かったばかりの頃とは180°違うポケモンみたいだ。 これは、変に強要しようものならリィからの俺の評価がスカイダイビングだ。それだけは避けねば。 「わ、分かったよ。リィの好きなように呼んでくれ」 「うん……我が儘言って、ごめん」 「まぁご主人って呼ぶのに抵抗はあるかもしれませんけど、名前で呼ぶのはいいんじゃないですか?」 「それも実は考えたんだけど……ハヤト兄ぃって呼ぶのも妙にしっくり来ないんだよね。多分、僕の問題なんだろうけど」 わぁい、兄ぃって呼ばれてちょっと胸がキュンとしちゃったよ。プラスに兄ちゃんとは呼ばれてるけど、それとは趣が違ってなかなか……。 「リィっちの根っこの部分が、まだ人間に抵抗してるって事ッスかねぇ?」 「流石にそれはリィちゃんの変えられない部分かもしれないですね」 達観しているぅ!? もうなんか、リィがどういう存在なのかを熟知しているかのように!? お、俺は恐ろしい! この、蚊帳の外感が! 「あ、そういえば人間さん、僕達の事追い掛けてきたみたいだけど、どうしたの?」 「え!? あーいや、姿が見えたんで何してるのかなーと思って」 「ただのお散歩ですよ。天気も良かったんで」 「そ、そうか。気を付けて行けよ」 「大丈夫ッスよぉ。リィっちもリーフも俺っちがバッチリ守るッス!」 やだもうカッコイイ! 何!? ソウってこんなイケメンキャラだった!? こ、これはマジで浦島状態かもしれない。普段の生活からちょっとずれてみて分かるこの浦島感。 おぉぉ、神よ! 俺はもう手遅れなんですか!? まだなんとかなるんですか!? 早急になんとか、なんとかしなければ! 「じ、じゃあ、俺は帰るから……」 「はい。ご主人もお気を付けて」 「またね、人間さん」 ……泣いてない、泣いてないぞぉぉぉぉ! ---- 4、恋愛探査グレイシア、フロスト ……起きて早々になんだけど、なんでハヤトはレオに泣きついてるのかしら? 内容は面倒だから聞く必要も無いわね。 にしても、なかなか良い昼寝だったわー。やっぱりこいつの上は寝易いわね。良いベッドだわ。 「……なんかお前、俺に失礼な事考えなかったか?」 「あら起きてたの。起きて早々に妙な勘ぐりするわね? 別に何も考えてないわよ」 ……時々こいつの起こす予知ばりの勘はなんなのかしらね? 的確過ぎて怖いわ。 まぁいいわ。とりあえずまだしばらくはこいつの上で寛いでましょ。する事がある訳でもないし。 ん? なんか前脚振ってるわね。どうしたのかしら? いつもはそんな事しないのに。 「どうしたのあんた? 前脚でも痛むの?」 「ん? あぁいや、別になんともないんだがな」 ほほぅ、何かあるわね。と言っても、こいつの口を割らせるのはかなり難しいのは分かりきってるわね。どうしたものかしら? こういうのはリーフが居ると情報交換が楽なのだけど、何処に居るかしら? レンに聞けば分かるかしらね。 えっとレンは……お昼ご飯作ってるわね。って、もうお昼じゃない。それはご飯作ってる訳だわ。 それなら時期にリーフも……あら、玄関が開く音が聞こえたわ。 「ただいまです~」 「腹減ったッスー!」 「ただいま~」 「ん? リーフに……ソウとリィか? 珍しい組み合わせだな」 「そうみたいね。散歩でもしてきたのかしら?」 ぞろぞろとリビングに入ってきたわ。プラスも居るし、これで全員ね。 「主殿、とりあえず昼食をテーブルに並べますので離れて下さい……」 「うぅ……そうだな、とりあえず飯食おう」 「それにしても、あれは何してるのかしら?」 「知らんがな。またレン辺りになんか叱られでもしたんじゃねぇか?」 「まぁ、その線が1番ありそうね。って、また前脚振ってる。だから何してるのよ?」 「いやその、か……いや! なんでもない」 か? 蚊に刺されて痒い? んなら間違い無くこいつはそんなに気にする事無いわよね。 か、か、か……感覚? 感触? うーん、あるとすれば感触かしらね? 何か踏んだのかしら? でもこいつ、今日は家から出てないわよね? うーん……やっぱり分からないわね。 とりあえず昼ご飯でも食べて、その後にリーフと一緒に考えてみましょうか。 ……ふぅ、なんで中華だったのかしら? でも麻婆豆腐って美味しいわよねぇ。体も温まるし美味しい、まさに一石二鳥の料理だわ。 いや、普通のグレイシアなら体が温まるのを喜ぶのはどうなのかしらね? まぁ、あたしはあたしだからよしって事で。 それじゃ当初の予定通りリーフを捕まえてっと。 「リーフ、ちょっといいかしら?」 「はい、なんですか?」 「ちょっと気になる事があってね。何か知らないかと思って」 「気になること? ……あ、もしかしてライトさんの事ですか?」 あら、当てられたわ。という事は、リーフにも思うところがあったみたいね。 「まずは少し聞きましょうか。ライトさんの何が気になったんですか?」 「なんかあいつ、今日妙に前足をプラプラさせるのよね。別に痛めたりしてる訳じゃないみたいだから、別の理由があると思ったのよ」 「なるほど……ライトさんの方にも異変が出てたんですね。実は……」 ほう……レンの方の様子もおかしかったのね。つまり、ライトとレンの間で何かあったと考えるのが妥当ね。 問題は何が起きたのかよね……キーワードはライトが思わず漏らした、かって言う一言。 前足を振る、か、そこから連想すると、やっぱり何かの感触を忘れようとするための行動だと思うのよね。 それにレンが関わってるとなると……なるほど、ある程度分かったわ。 「何があったか気になりますよねぇ? これからちょっと情報収集でもしようかなーって思ってたんですよ」 「いいえ、それは多分無理ね。当事者であるライトとレンはまず話さないだろうし、誰かが知ってるとすれば朝からレンの手伝いをしてたレオ辺りでしょう。レオがそういうのを言うとは思えないわ」 「むぅ、言われると確かにそうですね……」 「それに、確かに気になりはするけど、他人の恋慕に首を突っ込むと火傷するかもしれないしね。リーフだって誰とは言わないけど、そういうのを探られるのは良い心地はしないでしょ?」 ふふっ、驚いてる驚いてる。そりゃあ態度見てれば誰が誰の事をどう思ってるのかって言うのはなんとなく分かるわよ。 羨ましいわねぇ、皆誰かの事を好きになれてるんだから。あたしにも良い相手が居てくれたらなぁ。 現状出会いが無いし、出会ったとしても詰まらない牡なら興味も沸かないしねぇ……ライトの奴は興味は沸くけど、残念ながらあたしのストライクゾーンではないわ。 「ま、それなりにあの二匹も進展してるって事で結論にしましょ。ごめんね、わざわざ呼び止めたのに自己完結しちゃって」 「それはいいんですけど、結局ライトさんとレンさんには何があったんでしょう?」 「そうねぇ……強いて言えば」 俗にいう、ラッキースケベって奴かしらね。どの程度のだったのかは知らないけど♪ ---- 5、やれやれだ……。 はぁ、一日中気が気じゃなくて困ったぜ。どうやらフロストやリーフにはちょいと感づかれちまったみたいだな。 でも、じっとしてるとこう、あの感触が勝手に引きずり出されちまうんだもんよ。だから前足を勝手に振っちまうんだよなぁ。 ともあれ、午後からはそれとなく隠したがな。他の奴らも別段何をする訳でも……いや、なんかあのアホが騒がしかったな。どうでもいいが。 さて、部屋に引っ込んできたのはいいんだが……どんな顔してればいいかね? いや、いつも通りにしてればいいんだけどよ、どーもレンの顔を見るとあの時の事を思い出しちまう。 ……柔らかかったよなぁ。事故とはいえ、レンの大事なところにダイレクトに脚突っ込んじまった、んだよなぁ。 「……ライト?」 「ふぉぉ!? れ、レン!?」 って驚く必要無いだろうな、この部屋は俺とレンの部屋なんだし。 まったく、何を考えて俺は惚けてるんだ。落ち着け、落ち着くんだ。 「どうした?」 「どうしたって、私が入ってもベッドで動かないでぼーっとしてるんだもん。どうしたのかと思ったよ」 いやそりゃそうだよな。どうかしてたのは俺だよな。 そしてなんで自然な動きで俺のベッドに座るんですかレンさん。自分のベッドまで3歩ですよ? 「……ねぇ、ライト」 「ん? なんだ?」 「今日……一緒に寝ようか」 はぃぃ!? ちょ、なんだ、何があった!? 「ど、どしたよ急に!? それぞれにベッドがあるんだしそんな事しなくてもいいじゃねぇか!」 「だめ?」 座ってる状態からレンはころんと横になった。じっとこっちを見られると脈拍が早くなるんだが。 「いや、その、どうしてもって言うなら……」 「じゃあ、どうしても」 か、完全に俺が言う事読まれてたな。なんでかレンは微笑みながら横になってる。お、俺だって牡なんだぞ? 無防備過ぎるだろうが。 変に意識すると余計に混乱しそうだから一つ深呼吸して、俺も体を休める。真横にレンの顔がある……い、色々不味いぞ、これは。 この状態で眠りに入っていくのは無理だ。多少なりとも空気を変えねば。 「そ、そういえば、レンって寝るの器用だよな。手とか胸の棘を避けて寝るのって大変じゃないか?」 「これ? うーん、ちょっと触ってみて」 ん? どういう事だ? 差し出されたから手の棘にちょっと触ってみるか。 あら、なんだこれ。先端が、丸いぞ? 「これね、進化した時はちゃんと尖ってたんだけど、そのままじゃ危ないから先を取っちゃってるんだ。だから刺さらないの」 「そうだったのか……見ただけじゃ分からなかったな」 「意識してみないと気付かないと思うよ。本当に、誰かに触れても傷つけない最低限だから」 前は寝てる状態でこうだったからまだ良かったけど、今は俺もレンも起きてる状態なんだよ。 「ふふ、なんだか今日はライト、あんまり反対しないんだね。いつもはダメって言うのに」 「ま、まぁ朝の事もあるしな」 もじもじしてる辺り、レンも忘れてる訳は無いわな。そりゃそうだ。 「悪かったな、その……なぁ?」 「も、もういいよそれは。あれはしょうがなかったし、ライトなら……」 うぉ、おいおい、今日のレンはどうしたんだよ。なんかやけに接近してくるな。 「ねぇ、ライト……ライトから見て、私って、どう?」 「どうって、いきなり聞かれてもなぁ」 なんでちょっと目が潤んでるですか!? いかん、思考が変になってきてるぞ。 そりゃお前、大いに世話になってるし一緒の部屋で生活してるんだからな……意識してないとは言えんわな。 でも、やっぱり引っかかっちまうんだよ。俺がなんなのかって言うのが。それに、俺がやっちまった事が。 「……良い奴だよ。少なくとも、俺が今まで会った中では最上の方だ」 「良い奴……それだけ?」 「あぁ。……いや、やっぱり違うな」 「違う?」 「違うのは分かってるんだが、口で言うのがなんていうか、怖いんだよ」 そう、怖い。俺がここやここの奴等、そして……レンを壊してしまうかもしれない事が。 もう誰かを失う事が、自分に大切なものを与えてくれる相手を失う事が、俺は怖い。 「悪い、意味分からんよな」 ととっ、なんでレンは俺の体に腕を……!? ひ、引き寄せられて俺とレンの額が当たる。なんだ、なにがどうした!? 「ライトは、優し過ぎるんだよね」 「俺が、優しいって?」 「うん。優しいから、自分の気持ちを隠しちゃう。そして、誰からの気持ちも受け止めちゃう」 誰からの気持ちも、受け止める……? そんな事は無いと思うんだけどな? 「……狡い、ライト」 「ず、狡い?」 「そう、狡い。だから……」 ちょ、なんで更に体を近づける!? ん? レンの胸の棘……? 「今だけは……こうやって眠らせて……」 そう言って、レンは目を閉じちまった。寝息も触れるくらいの位置なんだが……。 どうするかなぁ、体をよじって離れようにも、腕を乗せられたままじゃそれも出来ん。 ちょっと動いたら、その、触れたら不味いところが触れそうだし、首も下手に動かせん。 仕方ない……今日くらい、このまま寝るしかないか。 ……でも、悪く……ないかな。ははっ、こんなに誰かを近くに感じながら寝るなんて事無かったから妙な気分だ。 ---- 6、お休み 眠ったふりをしばらくした後、目を開けるとそこには眠るライトが居る。いつもならこんな姿、絶対に見せてくれないんだけどね。 こうして触れて眠るなんて、本当ならドキドキして出来ないと思う。ううん、今だってドキドキしてる。眠るライトの吐息まで分かるくらいの所に居るんだもん。 「ねぇライト、起きてる?」 ……返事は無し。今ライトは、完全に眠ってるって事なんだよね。何をしても、今なら気付かれない。 こうしてライトと相部屋になってから、色々募るものもある。わ、私だって年頃なんだし、そういう欲みたいなものが顔を出すことだってあるもの。 それに、あんなところ他の誰かに触られた事なんて無かったから、朝ライトに触られてから妙に心も体もざわざわしちゃって、全然他の事に集中出来ないんだもん。 だから……ほんのちょっとだけ、気持ちを落ち着ける為だけ。良い事じゃないけど、こんな時じゃないと、こんな事出来ないから。 「ごめんね。ん……」 そっとライトの唇に、自分の唇を重ねた。ほ、ほんの少しだけ! 長い時間なんてしてたら、ライト起きちゃうもの。 それでも、温かくて凄く落ち着く。……本当は、もっとしっかり、ずっと触れていたいけど……。 それは、きちんとライトと話してから。ライトの気持ちをしっかり聞いて、私の気持ちをライトに伝えてから。 「はぁ……ライト、大好きだよ。これだけの事を伝えればいいのに、それが難しいんだよね……」 眠ってるライトには、こんなに簡単に言えるのにね。それが、起きてるライトに伝えるのが、私も怖い。 それを伝えたら、ライトが何処かに行ってしまうような気がして。 だから、今はただ、傍で眠らせて。ライトの温かさを感じていたいの。 「……ライト、これからも……出来ればずっと、傍に居たいよ。何処にも、行って欲しくない」 そう言って……もう一度だけ、ライトと唇を重ねた。伝えられないけど、繋がっていたくて。 唇を離して、目を閉じた。叶わないかもしれない、けど、こうして今は眠れる。だから、今はこのまま眠りたい。 ……お休み、ライト。また……明日ね。 ---- ~後書き~ という訳で、本編の時間軸に無いちょっとトラブルのあったハヤト家の日常をお送り致しました! この物語の中の話が、本編に登場する事は……恐らくありません。タブンネ! #pcomment IP:153.168.121.188 TIME:"2015-09-14 (月) 14:08:40" REFERER:"http://pokestory.dip.jp/main/index.php?guid=ON" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; Trident/7.0; rv:11.0) like Gecko"