[[名も無き人間]] 今回が過ぎれば後二話で最終話です! ---- そこには両手に剣を持ったウリューノス国王ヴァイスが居た。 その剣の紋章は…剣が二本。そしてガブリアス……矢張りコイツが…妹を…… 何故今まで気付かなかったんだ……俺は俺自身に憤りを覚えていた。 「よくも裏切ってくれたなクレハ!恩を仇で返しおって!」 「黙れ…貴様は俺の妹を強姦し…斬り殺した…貴様は許さん!」 「なっ!?まさかお前…あの時のマグマラシだと言うのか!?」 「あぁそうだ!目の前で妹を亡くしたマグマラシだ!」 王は俺を見ると直ぐに敵意を露にしていた。まぁ、当然だな。 恩を仇で…か。俺は全て知った。仇がコイツだと。 それを伝えると王は焦っていた。俺がそのマグマラシと思ってなかったようだな。 俺自身、王が仇とは思ってもみなかったからな。 「トライス。これは俺の戦いだ。手は出さないでくれ。」 「元よりその積りだ。クレハ殿なら勝てる筈だ。」 「済まない。」 俺はトライスに手を出さないように念を押した。俺の戦いだからな。 トライスも分かってくれていたようで、剣をしまってくれた。 そして俺は剣を抜き、新たな名乗りを上げた。 「ドゥロール騎士クレハ…王の敵を討つ為…妹の仇を討つ為…参る!」 「貴様如きに負けるワシではないわ!」 俺はもうウリューノス将軍でも紅蓮の鬼神でもない。 俺は…ドゥロールの騎士。バオウ王とその姫君を護る騎士だ。 ---- だが王も多少の腕はある様で、二刀を巧みに操って来ていた。 普段の行為からは考えが付かない程の腕だ……。 しかし俺とて無駄に数十年過ごしていたわけじゃない。 「ぐあっ!」 「これは散って逝った仲間達の恨みと悲しみの一撃だ!」 「くっ……調子に乗るな!!」 俺は王の左手を斬りつけ一刀を封じた。仲間達に一矢報いたまでだがな。 王はそれに逆上したようで、力任せに斬りかかってきた。 愚かな……そんなコケオドシに怯む俺ではない。 「ガアアアッ!?」 「これは今まで貴様が苦しめて来た捕虜達の怒りだ!そしてこれは……」 「ま、待てクレハ!話をしようじゃないか!そうだ金をやる!考え直せ!」 俺はその勢いを逆に利用し、王の右腕を刎ねた。これで剣は持てなくなった。 そして俺は最後の一撃を加えようと剣を構えた。 だが王は命乞いを始めた。そして金を見せてきて俺を買収しようともしてきた。 情けない……これが一国の王なのか…… 「この一撃は…妹の悲しみと俺の怒りの一撃だ!!!」 「ま、待て!!…グアアアアアア!!」 俺は逸る怒りを抑え、最後の一太刀を王に振り下ろした。 俺の剣は王を一刀両断した。……終わった…何もかもが。 これで後は俺が処刑されるだけだ。心残りは無い。 ---- 「見事だ。流石はウリューノス最強の将軍だな。」 「……トライス。俺を斬れ。」 「何?」 「俺の役目は全て終わった。俺は重罪人として処刑されるべき男だ。」 戦いの一部始終を見守っていたトライスが俺の腕を褒めていた。 だが俺は剣を捨て、トライスの前に挫き斬るように願った。 トライスは理解出来なかったようで聞き返してきた。 仇を討ち取った今、俺の役割は無い。あるとすれば死ぬ事だ。 数多くの命を奪った重罪人として処刑されるのが最後の役割だからな。 「馬鹿な事を言うな。帰るぞ。お前にはまだ役目がある。」 「役目だと?俺に何の役目があると言うのだ。」 「直に分かる。……王を討ち取った事を伝えにいくぞ。」 だがトライスは俺の剣を取り、俺に手渡して俺には役目があると言って来た。 もう役目等残っていない筈だ。全てを終えたのだから。 だがトライスは半ば強引に俺を引っ張り、バオウ王の下へと連れて来た。 ---- 「ウリューノス国王ヴァイス。クレハ殿が討伐しました。」 「良くやってくれた。……皆の者!勝ち鬨を上げよ!!」 『オオオオオ~!』 トライスはバオウ王に王を討ち取った事を伝えていた。 バオウ王は俺の働きを褒めてくれた。だが正直何も感じない。 長きに渡った戦は終わった。多くの犠牲を出して。 そして俺も妹の仇を討つ事が出来た。もう成すべき事は無い。 「王よ。私は仇を討ち成すべき事は成しました。後は罪を償うだけです。」 「確かそなたはどのような罰も受ける。そう言ったな?」 「はい。この場で斬られようが私は抵抗しません。」 「ならばクレハよ。これを受け取るが良い。」 俺はバオウ王の前に跪きいつでも斬られる体勢になった。 バオウ王は俺の前に立ち、俺を見てきた。 だがバオウ王は持っていた剣を納め、代わりに何かを俺の前に刺した。 「これは……」 「ドゥロール騎士団の証である護剣だ。だから言っただろう、役目があると。」 「しかし王よ!私は多くの兵士を殺めました!それなのに何故!?」 「ならば兵士に尋ねてみれば良い。さすれば答えが分かるはずだ。」 それは俺が持つ剣より少しだけ長い両刃の剣だった。 トライスはそれの意味する事を教えてくれた。ドゥロール騎士団の証…と。 だが俺は納得がいかなかった。死ぬべき敵将を生かしておくのだからな。 しかも俺は数多くの砦を落し多くの兵士を殺してきた仇敵だ。 だがバオウ王は兵士に自分の事を聞いてみるように言って来た。 周りを見ても俺を敵視している兵士は一人も居なかった。 そればかりか目が合うと笑顔で頷いてくれていた。何故俺に…… 「クレハ殿は勘違いをしている。クレハ殿は我が国においても英雄だからな。」 「英雄…だと?」 「数多くの手柄を挙げ国に貢献した。その活躍は俺も感服していた。」 「しかし……」 そしてトライスは俺がドゥロールでも英雄とされていた事を教えてくれた。 敵の俺が何故英雄にされているのか理解出来なかった。 いくら名を馳せていても所詮敵は敵だ。褒め称えるのはおかしい。 そしてドゥロール騎士団の護剣を俺に与える等考えられない事だ。 「クレハよ、お前はどのような罰も受けると言った。ならば剣を取るのだ。」 「クレハ殿。護剣を取れ。新たな道を切り開くんだ。」 「お前に与える罰は…一生ドゥロールの為に尽くす事だ。良いな。」 「そこまで俺の事を……」 そして王は罰を受けるなら剣を取るように言って来た。 そしてトライスも剣を取り新たな道を切り開けと言って来た。 これがドゥロールの正義なのか…… 俺はウリューノスの剣を手に取り地面に刺した。 そして俺は…ドゥロール騎士団の護剣を手に取り再び地面に刺し跪いた。 「これよりクレハ…バオウ王に忠誠をお誓い致します!」 「うむ。さてトライスよ。騎士団長の立場が危うくなったな?」 「な、何を申されますか!私とてクレハ殿に引けを取らぬ自信はありますぞ!」 「さてさて、面白くなってきたな。皆の者!戻って宴の準備だ!凱旋するぞ!」 『オオオ~!』 これが恐らく…いや、最初で最後の忠誠だろう。 俺は死ぬまで…ドゥロールの為…ガーネットの為に生きる。 それを伝えるとバオウ王はトライスに立場が危うくなったと伝えていた。 そのやり取りを見るだけでは騎士団と王とは思えない程だった。 だがそれは在り得ない。本気の俺を手玉に取っていたからな。 それに俺は下の立場の方が性に合っている。 そして俺達はドゥロール領内へと戻って行った。 ---- 戻った途端ガーネットに飛び付かれて大変だったが、それも悪くない。 最後の最後まで諦めなければ…新たな道が開く…か。正にその通りになったな。 だが、更に驚かされる事もあった。 「よぅクレハ!お前も生きてたんだな!」 「なっ!?シックル!?何故生きている!!」 「あんだよ人を化け物みたいな目で見やがって。」 俺は聞き慣れた声で名を呼ばれた。その方を見ると…シックルが居た。 正直驚いた。死んだ筈のシックルが両手に肉を持って頬張っていたからな。 言動はシックルその者だ……だが何故…討ち取られた筈…… 「伊達にお前と一緒に将軍やってたんじゃないんでな。企みはお見通しだ。」 「知っていたのか!?」 「あぁ、だからグラール砦に行ったのさ。直ぐにでも奪還出来るようにな。」 「そうだ。シックル殿は直ぐに降伏し、明け渡してくれたのだ。」 シックルは俺が講じた計画も全てお見通しだったらしい。 俺が脱走計画を考える前に読んでいたのか…… 普段怠けていると思っていたが…なかなかどうして名将だったわけか。 だが良かった。シックルが生きていてくれて。 「また長い間宜しく頼むわ。さってと御馳走御馳走~っと。」 「真面目なのか暢気なのか分からない奴だな……」 「気まぐれなのさ。それがアイツの良い所だ。」 そしてシックルは食い物を両手に持ちながら更に頬張り始めていた。 その変わり振りにトライスは呆れ顔で眺めていた。 だが俺は知っている。俺を支えてくれたのもシックルだったからな。 きっと良い将になる。 ---- 「クレハ~!」 「これは姫。何かご用命ですか?」 「気持ち悪いな…普段通り喋ってよ。」 「気持ち悪いって……ったく。何の用だ?」 少しするとガーネットが走ってきた。やけに着飾ってるな…… そして紅く光る石のペンダントもしている。馬子にも衣装とは良く言ったもんだ。 俺はガーネットに頭を下げ、何の用か尋ねた。 ガーネットは俺の受け答えに違和感を覚えたのか、気持ち悪いと言ってきやがった。 おてんばな姫だ……トライスの苦労が分かる気がする。 「何の用って…トライスから何も聞いてないの?」 「何をだ?俺は何も知らないぞ。」 「姫御自身で言ってもらうように、何も伝えておりません故。」 「なっ!?トライス!わ、私の口から言うなんて……」 俺が用件を聞くと、逆にガーネットは俺に何も知らないのか聞いてきた。 勿論何も知らない。トライスは何も言ってなかったからな。 トライスは少し笑みを浮かべながらわざと何も伝えなかったと答えていた。 するとガーネットは顔を真っ赤にして何かを言っていた。 まるで意味が分からない。何が何だというのだ。 「ガーネット。品良くしなければクレハ様に嫌われてしまいますよ。」 「母上!」 「……母上?……と、言う事はこのキュウコンは……」 少しすると奥の広間から一匹のポケモンが歩いてきた。 俺は正直その容姿に目を奪われていた。 金色に輝く体毛…何かを見据える真紅の瞳…全てに魅力を感じていた。 そしてガーネットはそのキュウコンの事を母上と呼んでいた。 母上…?バオウ王が父だとすれば…このキュウコンは…… 「これは王女様!?クレハ殿、こちらがドゥロール王女のエルマ様です。」 「っ!これは失礼致しました!ご無礼御許し下さい!」 「その様な行為をなさらないで下さい。どうかお顔を上げて。」 トライスは持っていたグラスを直ぐに置き、その場で跪いた。 矢張りそうだった。このキュウコンはドゥロール王女エルマだった。 俺は暫く呆気に取られていたが、直ぐにその場に跪いた。 だが王女は微笑んで俺の顔を上げさせてくれた。 「貴方がクレハ様ですね。此度は尽力を尽くして頂き誠感謝の至りです。」 「そんなっ!王女様お止め下さい!私はただ恩を返しただけであって!」 「いえ、クレハ様はガーネットの恩人ですから。そしてその夫になる方。」 「は?……失礼ですが…今何と?」 そして王女は俺の働きに感謝してくれ、なんと頭を下げてくれた。 まさか王女に頭を下げられると思ってなかった俺はこれ以上に無いくらい焦っていた。 だが王女は俺に微笑みながら、ガーネットの恩人で、夫になる方と言ってきた。 ……何?恩人は分かるが…夫になる方…だと? 何かの聞き間違いだろうか…念の為に聞き返してみた。 「まだ言ってなかったのですか、ガーネット?この宴の意味を。」 「やっぱり…面と向うと恥ずかしくて…言えませんでした。」 「ガーネット?一体どういう事だ?俺にはサッパリ分からないぞ。」 すると王女はガーネットに伝えてなかったのかと聞いていた。 ガーネットはといえば照れ臭そうに顔を赤くして、言ってないと答えていた。 何が何だかサッパリ分からない。戦勝祝いじゃないのか? するとガーネットが顔を赤くしながら俺に近付いてきた。 「クレハ…前に約束したよね?戦争が終わって生き残っていたら…結婚しようって。」 「あ…あぁ、だがそれは冗談じゃなかったのか!?」 「冗談だったら…クレハにあんな事しないよ。初めてだもん…やったの。」 そして俺に前に小部屋で約束した事を言ってきた。 戦争が終わって俺とガーネットが生きていたら結婚するという約束を。 勿論覚えていた。だがそれは物の例えで本気に等していなかった。 だがガーネットは冗談だったらあんな事しないと言ってきた。 あの事……つまり俺の処理をしたあの行為だろう。 今思い出すと顔が赤くなっていくのが分かる。 「だが俺は兵士でガーネットは姫だ。とてもじゃないが…立場が違いすぎる。」 「あら……そうは言いますが…そこに居るトライスは私の愛人ですよ?」 「なっ!?」 しかしいくらガーネットが本気でも俺とじゃ位が違いすぎる。 王家の者でもないし、ただの寝返ったドゥロール騎士団の兵士だ。 それを聞くと、王女は信じられない事を口にした。 トライスが王女の愛人…だと?あのトライスが…… トライスを見ると恥ずかしそうに顔を背けていた。 「勿論我が夫であるバオウもトライスが愛人である事は関知しています。」 「クレハ…私じゃ駄目かな?我侭で御転婆だけど…私…クレハの事が好き。」 「ガーネット……」 王女は恥じる事無くバオウ王も関知している事実であると言って来た。 流石はドゥロール王女だけあって気品あり威厳ありと言う事か。 ガーネットも顔を赤くし、俺に愛の告白をしてきた。 今思えば…最初からガーネットを気にしていたのかもしれない。 あの行為の時も身を任せていたしな…… だが…いくらなんでも体格が違いすぎる…… 「だがガーネット…俺とお前じゃ体格が違いすぎて……」 「それは問題じゃないの!私と結婚してくれるかどうかが問題なんだよ!」 「むぅ……」 その事をガーネットに伝えたがまるっきり相手にされなかった。 問題じゃないと言われても…ロコンとバクフーンじゃ明らかに違いすぎる…… 王もこの事を承知だろうし…どうすれば良いんだ…… 「やれやれ…あの様子じゃ先が思いやられますな、王女様。」 「ふふ。当時は私も貴方にあぁやって言い寄った気もしますが。」 「そ、それは…まぁ…あの時は驚きました。」 「でも貴方は優しく抱いてくれました。あの温もりは忘れません。」 「そ、それだけは言わないで下さい……」 王女は王女でトライスと昔話をし始めている。どうなってるんだこれは…… ったく人の気も知らないで…… 「相変わらずクソ真面目だなぁ。結婚すりゃ良いじゃねぇかよ。」 「シックル…だがそれは……」 「約束したんだろ?ずっと護るってよ。だったら返事は一つ。だろ?」 返答に困っていると、シックルが話しかけてきた。また両手に何か持っている…… シックルは簡単に言ってきた。矢張り所詮人事なのか…… だがシックルは俺を見て、ずっと護るには答えは一つと言ってきた。 最もな意見だ。 「……ガーネットは俺なんかで良いのか?俺は数多くの兵士を殺してきたんだぞ?」 「関係ないよ。クレハは私を助けてくれた。私だけのナイトだもん。」 「分かった。俺で良いなら…結婚しよう。愛している。ガーネット。」 「カァ~!熱い熱い!俺は邪魔者みてぇだから退散するぜ!」 俺はガーネットに再度確認した。過去に多くの者の命を奪っているからな。 だがガーネットはそれを許してくれ、俺の事をナイトと呼んでくれた。 ガーネットだけのナイト…か。それも悪くない。 俺はガーネットを抱き上げ愛の言葉を言い、口付けを交わした。 それを見ていたシックルは俺を冷やかしながら去っていった。オヤジかあいつは。 「どうやら決まった様ですね。クレハ様。ガーネットを宜しくお願いします。」 「はっ!この命に代えましても!」 「では私は王に報告に行って来ます。式は宴の後で。」 王女が一部始終を見ていたようで、バオウ王に伝えに行ってくれた。 トライスも喜んでいるようで周りの騎士団と喜び合っていた。 ガーネットは照れている様で、俺の顔をチラチラと見て恥ずかしそうに笑っていた。 考えもしなかったな…敵国の姫と結婚する等…… 俺の運命は二つしか無いと思っていたからな…… ウリューノス将軍として殺戮の限りを尽くすか…… 戦でその命を散らせるか……そのどっちかだと思っていた。 だが…最後の最後まで諦めずにいた結果が今の俺だ。 ガーネットと出会った事で、俺の運命にもう一つの道が出来たという事か…… 今こうしてガーネットを見ると…美人だ。今まで気付かなかった。 俺はもう一度ガーネットに口付けを交わしてから、部下達と喜びを分かち合った。 ---- そして今、俺とガーネットは婚儀の式に赴いていた。 だが、この婚儀用の鎧というのは、どうも堅苦しくて敵わん…… 「ドゥロール騎士団クレハ。そなたは生涯妻を愛すると誓うか?」 「誓います。」 「ドゥロール第一姫君ガーネット。そなたは生涯夫を愛すると誓うか?」 「はい。誓います。」 「では、誓いの口付けを。」 前書きは良い…早く進めてくれ。と言いたいがそうもいかないしな…くそ…… 俺は神父の後に契りを述べ、ガーネットも続いて述べた。 誓いの口付け…だと?鎧が邪魔で屈めないというのに…無理難題を…… 誰だ…こんな鎧を考えた奴は? 俺が戸惑っていると、ガーネは俺の膝に乗り口付けをしてくれた。 助かった…もう少しで鎧を脱ぐ所だった。 「では王女様。最後の取り仕切りをお願いします。」 「分かりました。…ガーネット。心の準備は良い?」 「はい。お願いします。」 「ではクレハ様は後ろに下がって下さい。」 「はっ。」 神父はそれを見届けると、王女に最後の取り仕切りを願っていた。 何だ?最後の取り仕切りとは……ガーネットもどこか緊張している様子だ。 そして王女はガーネットに心の準備を聞いてきた。何が始まるのだろうか? ガーネットは王女に頷き、目を瞑って何かを待っているようだ。 王女は俺に下がるよう言ってきた。良く分からないが俺はそれに従った。 「聖炎の神よ!今此処に永久の焔を!」 「っっ!!」 「なっ!?ガーネット!!」 「ク、クレハ様?」 王女は何かの呪文のような物を唱えていた。聞いた事が無いな。 そしていきなりガーネットに火炎放射を放った。勿論俺は驚いたさ。 俺は咄嗟にガーネットに纏わり付いている炎を掃い始めていた。火傷を承知でな。 しかし王女はキョトンとした様子で俺の行為を見ていた。どういう積りだ? だが次第にガーネットの体が輝き始め、姿が変わり始めていた。 そしてその炎が消える頃にはガーネットは居なかった。 その場に居たのは金色の体毛を輝かせる王女と同じキュウコンが佇んでいた。 あ…あの紅い石……そうか…炎の石に火炎放射を当てて進化させたのか…… それを知らずに俺はなんと言う事を……恥ずかしい…… 「ゴホンッ!今此処に新たな聖炎の加護を受けた者が誕生した!祝福を!」 『ガーネット姫万歳!クレハ様万歳!!』 「クレハ…私…綺麗になったかな?」 「あぁ。凄く綺麗だ。」 「クレハ……」 バオウ王は俺達を祝福してくれた。仇敵である俺さえも。 改めて俺はこの国に忠誠を心の中で誓っていた。 ガーネットは進化したてで少し不安な様で、綺麗かどうか聞いてきだ。 正直綺麗だ。俺は直ぐに一言、綺麗だと伝えると嬉しそうにしていた。 「ヒューヒュー!熱いねお二人さん!今日は夜通し子作りに励みな!!」 「なっ!?シックル貴様!!」 「おっと!俺の速さを忘れたわけじゃねぇだろ!照れんなよ童貞クレハ様!」 「待てコラァ!!」 式が終わると同時にシックルが前に出て来て俺達を冷やかし始めた。 周りからは笑いが零れていた。だが俺は勘弁出来なくなった。誰が童貞クレハ様だ…… 直ぐに飛び出してシックルを捕まえようとしたがヒラリとかわされてしまった。 くそ…アイツの速さは知ってるが…掠りもしないとは…… それからは俺とシックルの追い掛けが城内に起こっていた。式場内でな。 「へっへ~!追い付けるもんかよ!……っぶ!?」 「いい加減にしないと……怒るよ?」 「は…はい!も、申し訳ありません!」 「ガーネット!?いつの間に……」 シックルは余裕を見せていた。俺は完全に振り回されていた。 だがシックルも油断していたようだ。いつの間にか前に居たガーネットに捕まっていた。 そして俺が着く頃にはシックルがガーネットに頭を下げ謝っていた。何があったんだ? そもそも王と王女と共に王座に居たガーネットが何故こんな離れた場所まで……? 俺は考えたくなかった。ガーネットよりも足が遅い事を。 「ガーネット姫様!クレハ様!御部屋が整いました!」 「行こうクレハ。」 「あぁ。」 そしてシックルに軽く殴りを入れると、兵士が部屋が整った事を伝えに来た。 部屋……まぁ…結婚を済ました後の事位知っている。今の内に心の準備を整えるか…… ---- 結婚シーンは殆ど省略! #pcomment