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七夕の一コマ劇場グラカイ編 の変更点


ひなひなに投下したまますっかり忘れてた去年の七夕の小ネタ
カイオーガぷにぷにしたい


[[空蝉]]
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 朝方から地上が騒がしい。
 耳を澄ますと「ばおうばおう」と地鳴りのような声が聞こえてきて、カイオーガは溜息混じりにその声の方へと泳ぎ始めた。
 
「何の用だ、いきなり呼びつけおって」
「いや、別に用はないんだが……久し振りだな、カイオーガ」
「久し振りとも何とも思わん。用も無いのに呼ぶな馬鹿」
 相も変わらず散々の物言いだが、そんなことを一々気にしてなどいられないと、グラードンはもう遥か昔に学習していた。万年単位のつき合いなのだ。
 
「用という用ではないが、旨い木の実を持って来た。せっかくだから食っていけ」
「ふん」
 食べ物と聞いて、少し興味を引かれたのか、カイオーガが泳ぎ寄ってきた。
 波打ち際で顔を上げて待っている、多分自覚は無いのだろうが、まるでおねだりのようなその表情に、グラードンは思わずへにゃりと崩れそうな自分の顔面を何とか立て直した。
「ほれ」
 大きな口の中に木の実をいくつかまとめて放り投げてやる。
 地上のものは珍しいのか、もぐもぐと味わう顔は、無表情のようでいてどこか嬉しそうだ。決して行儀良いとは言えない、白波立てながら食べるその様子を眺めながら、グラードンはこの日一番の満足を感じていた。
 
 
「旨かったか」
「まあまあだな」
 思ったとおりのつれない返事。
 まあいいか、と苦笑したところで、カイオーガがふいと背を向けた。
「帰るのか」
「ああ」
「そうか、気を付けろよ」
 そう何気なく返すと、いきなり水が飛んできた。
「何をする」
「馬鹿が。何が気を付けろだ。他に何か言うことは無いのか」
「は?」
 
 何か言うこと? それならむしろお前の方が「ありがとう」とか「ごちそうさま」ぐらい言うべきじゃないのか? ───とグラードンは喉まで出かかったが、そう言ったところで百倍返しに遭うだけだと分かっていたので黙っておいた。生まれてこの方数万年、口でカイオーガに勝ったことはないのだ。
 
「ちょっとこっちへ来い、馬鹿」
 浅瀬でカイオーガがばしゃばしゃと水を叩く。
 グラードンは嫌々ながら海へ足を踏み入れた。
 
 
 手を伸ばせば、届きそうな距離。
 触れたら怒るだろうか、グラードンがそう思った瞬間。
 
 
 カイオーガがいきなり頭突きをしてきた。
「ぶっ!」
 勢い余ってひっくり返る。
 
 塩水を頭から被って、グラードンは軽く混乱した。
 
 混乱しながら考えた。
 頭突きじゃなくて……口と口がぶつかった、今のは。
 
 
「本当に馬鹿だな。今日が何の日か知らぬ訳が無かろう」
 そう捨て台詞を吐いて、カイオーガは今度こそ本当に背を向けて泳ぎ始めてしまった。
 波間にぷかぷかと浮き沈みしながら遠ざかっていく背鰭を見送りながら、グラードンは呆然と動けずにいた。
 
 
 やがてとっぷりと暮れた宵の空に、見事な天の川が現れる。
 
「おおお……う」
 意味もなく、唸っていた。
 まだ頭の整理が出来ていない。そんな中で、何故か「逃した魚」という言葉が脳裏に浮かんで消えた。
 
 巨体を丸めて打ちひしがれる。
 
「俺の馬鹿……」
 せっかくの七夕なのに。
 一線を越えられなかった己の不甲斐なさに、グラードンはしくしく泣いた。
 
 
 
 
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ちゅーネタでした。
ヘタレですみませぬ。


[[空蝉]]

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#pcomment(コメント/七夕グラカイ,15,above);
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