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リトルハート Prologue の変更点


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注意 ほんの少し流血表現があります


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天気は晴天、時刻は夕方。晴れ渡る空には橙色が滲み始め、僅かに靄がかかって来たようだ。
小さな村の中に生い茂った森も次第に橙色になり、靄に包まれ始めた。
その時、見惚れてしまいそうな美しい景色の中で随分と場違いな音が聞こえた。

音の発生源は、村に佇む木造の古めかしい喫茶店で働く雄のロコン…の手から滑り落ちた皿だ。
ガシャンともパリンとも聞こえる誰もが聞きたくない、食器の割れる高い不快な音だった。
誰だろうとこの音を聞いたら嫌な予感を感じざるを得ないだろう。このロコンのように。



「う……ぁ。やっちゃった……」

しまった、皿を割るのはこれで二回目じゃないか。また怒られる……。
僕を指差して罵声を浴びせてくる先輩の姿が瞬間的に目に浮かんで消えた。
多分、大声を出して客に変な目で見られる事まで僕のせいにされるんだろう。
気が重くなる。何で僕はこんなにドジばっかり踏むんだか。

「お前また皿割ったのか?」

電光石火の如くやってきたのは一番聞きたくないブーバーの先輩の不機嫌そうな声だ。また説教が始まる。

「ったく、まるでお前は疫病神だな。迷惑な事ばっかりしやがって」
「……すいません。今度からh」
「あー、いーよいーよ。聞くのも叱るのもめんどくせえ。謝る暇があったらさっさと皿を片付けろ」

悪い意味で意外だった。大声での説教を予想し、僕の耳はそれに対して構えていたのに、
僕の耳に入り込んできたのはは罵声ではなくて迷惑そうな陰湿な声だった。
説教するのも嫌になるって事?


先輩はチラリと背後に目線を送った。その目線の先には
さっきまで先輩が片づけをしていた薄汚れた水場がある。
水場に対してなのか、わざと僕に聞こえるようになのか、先輩は僕に背を向けて大きな溜息をついて、去っていった。


どうやら愛想を尽かされたらしい。説教されなかった事は嬉しいけど、悲しい。

まともに怒ってすらくれないのが──。

「……」

モヤモヤした悲しさが胸の中で、木を侵食する火の如く広がっていく。
でもその程度の理由で手を休めるわけにはいかない。
前脚で粉々に割れて床に四散した皿を拾いはじめた。


そもそも何で僕ってこんなにドジなんだろう?
いや、理由なんかあるのか知らないけど、どうして僕だけがこんなにドジなの?
僕が小さい時に死んじゃったけど、母さんも父さんもしっかりしたポケモン(人)で、
僕の躾にも(しつけ)にも職場で働く事にも余念がなかった。
それから暫くして仲良くなった友達も皆しっかりしてたし、
僕にマイナスの要素を惜しみなくもたらしてくれるブーバー先輩だってこんなに間抜けじゃない。
悪い意味で僕は他人とは違う。
皆と違って僕は気弱だし、臆病だし──

「いっ!」

唐突に小さいながらも鋭い痛みが前脚に走り、思わず小さな呻き声を上げながら体を震わせ、前脚を跳ねるように上げた。
薄々そんな予感はしてたけど。

考え事をしてぼんやりしてたせいだろう。皿の破片で前脚の肉球を切ったみたいだ。
痛みが走った部分を見てみると、僕の赤茶けた体毛よりも少しだけ彩度の高い紅い血が滲んでいた。

皆と違って僕は気弱だし、臆病だし。
ドジだし。


「おい!まだ拾い終わらないのか!早くしろ!」

遠くで作業をしているブーバー先輩の声がさっきよりも一層不機嫌になっていたが
虚しさとやるせなさに囚われた僕の耳にその声はほとんど入ってこなかった。

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橙色に染まった美しい村は何処へ。紅蓮の太陽は山の向こうに沈み、辺りはもう真っ暗になっていた。
夜道を照らす大きな月と小さな星の明かりはあまりに頼りなかった。
尤も、瞳孔を大きく変化させて光を目に沢山吸収できる僕みたいなポケモンにとっては
明かりが多くても少なくても関係ないんだけど。

大きく深呼吸すると、周りに茂る草木の持つ青い匂いがした。そして横目で喫茶店の玄関を見た。
他の従業員達は玄関の隣で喋って笑いあっているけど、僕はその輪に入る気になれない。
入ったところで除け者にされそうな気がして怖い。
普段から僕に優しくしてくれるポケモンもいるのに、僕に厳しいポケモンと楽しそうに
話してるのを見ると信用できなくなる。



今、誰かが僕の顔を見てるとしたら、恨めし気にでも見えるのかな。
そんな疑問が浮かんで来るのと同時に僕は小さな荷物を抱えて小さな喫茶店を後にした。

僕の家は村の中の、小さな森の中にある。ここから歩けば十分ほどで着くからそんなに遠くない。


明日は喫茶店の定休日だ。やっとゆっくり体を休められる。
とりあえず食料の買出しに行って、その後親友のポチエナのとこにでも行こうかな。
とりあえず食料の買出しに行って、その後親友のコリンクのとこにでも行こうかな。
いや、その前に部屋の掃除でもしておこうか。この頃少し散らかってきたし。
あ、でもやっぱり──


そこまで考えて、思考を巡らすのが面倒になり、頭に浮かぶ明日の自分の姿を白紙にした。
明日考えればいいや。今日はもう疲れた。
僕は帰路を急いだ。




彼にとって今日は、皿を割って肉球に傷を付けた事以外何も変わらない普通の一日だった。
この日の真っ暗な帰り道から、想像も出来ないような彼の運命が
形を見せつけ始める事を彼が知るはずがなかった。

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まあ色々と…\(^o^)/
初投稿なのでちょっと自信が無いんですが…プロローグを最後まで読んでくれた方、ありがとうございます

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