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たった一つの行路 №011 の変更点


「やっぱり夢の通りになるなんて……」

 ヒロトは以前自分が見た夢と同じことになるとは思っていなかった。

「<トキオ対ヒカリ>……まさかそんなことになるなんて……」

 そして、ちょうどヒロトの対戦相手が表示された。
 それを見てヒロトは顔をしかめた。

「俺の対戦相手……女の子かよ……」
「よお!ヒロト!元気か!?」

 後ろから元気よくトキオが話し掛けてきた。

「……ああ……。元気だよ……」
「どう見ても元気じゃなさそうだが……」

 そう言ってトキオはトーナメント表を見た。
 ヒロトが元気のない理由は一発で分かった。

「ふふふ……ヒロト。お前、次の試合で負けそうだな」

 そうトキオが茶化した。

「何だよ!いいかげんなこと言うな!!」
「だって次の相手はお前の苦手な同じくらいの年の女の子じゃないか」
「…………」

「それに噂じゃあ、どこかの地方のジムの孫娘だと言う噂だぜ。たぶんかなり強いんじゃないか?」
「…………」
「まあともかくがんばるんだな!それより……」

 トキオは話題を変えた。
 それと同時に顔が真剣になった。

「俺の次の対戦相手ってヒカリってあるけど……お前の幼馴染じゃないか?」
「そうだけど……」
「じゃあ、どんなポケモン持っているか教えてくれよ!」
「(おいおい……それじゃ不公平だろ……)」

 とヒロトは思った。

「それじゃあ、あなたのポケモンを教えてくれたらいいわよ」
「「!」」

 後ろから声がした。
 ヒロトとトキオは同時に振り向いた。
 そこにいたのは、ヒカリだった。
 するとヒカリとトキオが互いを凝視しあった。

「(……おいおい……嫌な展開だな……)」

 トキオ対ヒカリ、一触即発か。

「……私がヒカリよ!次の試合お手柔らかいね」

 と握手を求めるヒカリ。

「ああ。よろしく!でも手加減はしないぜ!」

 と握手に応じるトキオ。
 どうやらヒロトの思っていた事態は逃れたようだった。

「じゃあ俺はもう戻ることにするよ。次の試合の作戦を考えないといけないからな。」

 ヒロトはそう言ってトキオとヒカリと分かれた。

「せいぜいがんばれよ!ヒロト!」

 とトキオがそう茶化しているのが聞こえた。



 ―――5日目。
 この日に試合はなかったのでヒロトは技の特訓を誰にも見つからないような場所でやってきた。
 そして、選手村に戻った。

「うわー!次の試合どうしよう……」

 ヒロトは選手村に戻って次の試合の対策を考えていた。

「次のフィールドはおそらく残った岩のフィールドなんだよな……。もうポケモンは決まっているんだけどなぁ……」

 ヒロトはポケモンたちを全員出していた。

「なぁ……次の試合勝てるかな……?相手はジムリーダーの孫だって……」

 リザードとピカチュウが体当たりをしてきた。

「うわっ!シオン?ザーフィ?」

 ヒロトはリザードとピカチュウを見た。
 リザードやピカチュウの言っている事は分からない。
 でも、気持ちは分かっているつもりだ。

「そうか分かったよ……。いつもどおりやれば勝てるって言いたいんだな?」

 リザードはコクリと頷き、ピカチュウは当たり前のことを言わすなと言わんばかりにぷいっとそっぽを向いた。

「そうだよな!相手が誰だろうと負けない。俺はそう決めていたんだったよな。ごめんなお前ら!心配かけて……」

 ヒロトはそれで開き直り、すぐに明日に備えて早めに寝た。



 ―――6日目。
 ヒロトは岩のフィールドに来ていた。
 岩のフィールドはもちろん名前の如く岩でできている。
 その上、デコボコしている為『ころがる』攻撃をするとどっかに行ってしまいそうだ。
 そして対戦相手を見た。
 そこにはなんともスタイルのいい女の子がいるではないか。そう、この子がヒロトの対戦相手なのだ。
 先にその女の子が話し掛けてきた。

「私がアスナよ!お互いいいバトルをしようね」
「…………。はい。よろしくお願いします。」

 ヒロトはやはりどこかぎこちない。

「それではこれからヒロト対アスナの試合を始めます!ルールは3対3のシングルマッチ。入れ替え自由。時間無制限。先に3匹ダウンさせた方の勝ちです!!それでは試合はじめ!」
「行くのよ!キレイハナ!」
「ネール!頼むぞ!」

 ヒロトはポワルン、アスナはキレイハナを出してきた。

「ネール!速攻で行くぞ!『にほんばれ』から『ウェザーボール』!」

 まずヒロトは天候を変えた。
 そして、一気にウェザーボールで決めるつもりだった。
 アスナはそれを読んでいた。

「キレイハナ!晴れたら『ソーラービーム』!」

 アスナはいきなり草系の強力な技で来た。
 晴れている為ソーラービームは溜め無しで撃つことができる。
 ソーラービームとウェザーボールがぶつかって消えた。
 ソーラービームの方が威力は大きいだろうが、タイプの関係で同等の力で収まった。

「連続で『ウェザーボール』!」
「こっちも『ソーラービーム』連射よ!」

 しかし何度やってもこの技どうしでは決まらなかった。
 そのうち、日差しが弱くなった。

「(晴れだと決まらない……ならば……)『あられ』だ!」

 ヒロトは次に『あられ』を指示した。
 ポワルンは氷タイプになった。

「今だ!『ウェザーボール』!」
「それなら……キレイハナ!『マジカルリーフ』!」

 アスナはソーラービームからマジカルリーフに切替えた。
 ソーラービームでは晴れた時に比べ、チャージが遅い上に威力まで弱まることを知っての上だった。
 ウェザーボールとマジカルリーフが激突した。
 結果はもちろんウェザーボールが勝った。
 マジカルリーフは全て弾かれてキレイハナにウェザーボールがヒットした。
 しかし、一発で倒れるほどアスナのキレイハナは甘くなかった。

「キレイハナ!戻って!次はこの子よ!」

 アスナはテンポ良く次のポケモンに切替えた。
 二番手はゴローンだ。

「ゴローン!『ロックブラスト』よ!」

 アスナは岩系の技を指示した。
 ポワルンの今のタイプは氷である。
 このまま当たったら効果は抜群でやられてしまう。

「ネール!『水鉄砲』で弾き飛ばせ!」

 ヒロトは水鉄砲を防御技として指示した。
 一発だけ当たってしまったが、それ以外は全て弾き飛ばした。

「(少しダメージを受けちゃったか……でもまだいける!)ネール!『雨乞い』だ!」

 ポワルンは今度は雨を降らした。
 タイプが水になり岩系の弱点を無くした。

「攻撃させないわ!『岩雪崩』!そして、真っ直ぐ『ころがる』攻撃!」

 ゴローンは複数の岩を転がした。
 それにまぎれて、ゴローンも自ら攻撃に加わった。

「相手は岩と地面。一気にいくぞ!最大パワーで『ウェザーボール』だ!」

 ポワルンの攻撃は岩雪崩を一気に拡散させた。
 そして、『ころがる』攻撃をしているゴローンに当たった。
 しかし、ゴローンの『ころがる』攻撃は止まらなかった。
 ゴローンの『ころがる』攻撃はポワルンに当たってしまった。
 ポワルンはぶつかった勢いで回りの岩にめり込んだ。
 ポワルンは目を回して倒れていた。

「え!?何で岩、地面系なのに水系の技が効かないんだ!?」
「『ころがる』を使っていれば水攻撃を弾くことだってできるのよ!」

 アスナは自信満々に答えた。

「ポワルン、戦闘不能!ゴローンの……!」

 そう審判は言おうとしたが、審判は言い直した。

「ポワルン、ゴローン両者同時戦闘不能!」
「え!?」

 ゴローンは目を回して倒れていた。
 どうやら、水を弾くといっても完全に攻撃を受け付けないわけではなかった。

「両者ポケモンを出してください。」
「次は……シオン!行くぞ!」
「キレイハナ!頼むわよ!」

 両者同時に出した。

「キレイハナ!『マジカルリーフ』!」
「シオン!『スピードスター』だ!」

 マジカルリーフとスピードスターがぶつかり消えた。
 威力は同等のようだ。

「シオン!『電撃波』!」
「キレイハナ!『種マシンガン』よ!」

 ピカチュウの電撃波は種マシンガンをいとも簡単に吹き飛ばした。
 電撃波がキレイハナに当たったがあまりダメージは受けなかった。

「無駄よ!草系に電気は通用しないわ!」
「今だ!『電光石火』から『アイアンテール』!」

 ピカチュウは一気にキレイハナに詰め寄り攻撃を与えた。
 電光石火の勢いからのアイアンテールは強力な威力を出していた。
 電撃波は囮で、もともとこの技で決めようと考えていたのだ。
 キレイハナはポワルンとの戦いでのダメージも蓄積されていたのもあり、ダウンした。

「キレイハナ、戦闘不能!ピカチュウの勝ち!」
「よし!あと一匹!」

 アスナはキレイハナとゴローンがダウンして残り一体になった。
 そして同時にポワルンが起こした雨が今止んだ。

「(よし!ちょうど雨がやんだわ!)最後は私のベストパートナーよ!行くのよ!コータス!」

 アスナの最後のポケモンはコータスだ。

「(あのポケモン……要注意だな)」

 ヒロトは相手が最後のポケモンになり慎重に攻めようと考えた。

「コータス!『火炎放射』!」
「シオン!『高速移動』でかわせ!」

 ピカチュウは火炎放射をかわした。

「連続で『火炎放射』よ!」

 アスナのコータスの火炎放射の連射能力はかなり優れていた。
 ピカチュウは火炎放射でかわすのに精一杯で攻撃できずにいた。

「(……このままじゃやられる!何か手はないか!?)」

 いくらピカチュウのスピードが速いと言ってもこのままでは当たるのは時間の問題である。

「シオン戻れ!いけ!ザーフィ!」

 ヒロトはピカチュウを戻し、代わりにリザードを出した。

「ザーフィ!『煙幕』!そして『メタルクロー』だ!」

 ヒロトは相手の命中率を下げ接近戦で決める作戦で来た。

「そんな攻撃効かないわ!『鉄壁』よ!」

 リザードは一気に詰め寄りコータスにメタルクローをヒットさせた。
 しかし、コータスの鉄壁の前では無意味だった。

「まだだ!『火炎放射』だ!」

 リザードは至近距離で火炎放射をヒットさせた。

「これでどうだ!?」

 火炎放射を受けてコータスは少しダメージを受けた。
 しかし、全く致命傷になるダメージではなかった。

「コータス!『体当たり』!」

 リザードはコータスの体当たりを受けた。

「ザーフィ!間合いを取れ!『煙幕』だ!」

 リザードは指示を受け、コータスと距離を取った。

「『火炎放射』だ!」
「コータス!『オーバーヒート』!」

 コータスのオーバーヒートはリザードの火炎放射を明らかに上回る威力だった。
 リザードの火炎放射は打ち消され、コータスのオーバーヒートで吹っ飛んだ。

「ザーフィ!!……なんでだ!?煙幕で命中率は下がっているはずなのに……!!」
「私のコータスの特性は『白い煙』!煙幕は全く効かないわよ!これでリザードは戦闘不能に……え!?」

 リザードはまだやられていなかった。
 コータスのオーバーヒートに耐えたのだ。
 しかし見るからにリザードの体力はもうない。

「よしこれで決める!ザーフィ!『火炎放射』だ!」
「(この覚悟は火炎放射じゃ止められない……)コータス!もう一回『オーバーヒート』!」

 リザードの火炎放射とコータスのオーバーヒートが激突した。
 ザーフィは特性『猛火』で炎の威力を上げていて、コータスは最初のオーバーヒートより威力が落ちていた。
 そして、その2つが激突したとき爆発が起きた。
 フィールドは煙に包まれた。

「ど、どうなったんだ!?」

 会場にいる人全ての人が煙の晴れるのを待った。
 その時間は短かったが、ヒロトとアスナにとってはとても長く感じられた。
 煙が晴れた時、フィールドにザーフィが倒れていた。
 コータスはダメージを受けたもののダウンするまでに至らなかった。

「リザード、戦闘不能!コータスの勝ち!」

 体力の差でコータスが残ったのだ。

「ザーフィ、良くがんばってくれた!シオン行け!」

 再びピカチュウをフィールドに出した。

「コータス!連続で『火炎放射』よ!」
「シオン!『高速移動』だ!」

 2人は最初と同じ指示を出した。
 しかし、結果は全く違っていた。
 コータスはリザードとの戦いで体力が消耗されていた。
 その上、オーバーヒートを2回も使い攻撃力も落ちている。
 一回モンスターボールに戻って休んだピカチュウにとってかわすのは造作もないことだった。
 かわしている間にピカチュウはコータスの目の前に来た。

「シオン!コータスの顔に『電撃波』だ!」
「コータス!首を引っ込めて!」

 コータスは首を引っ込める余裕がなかった。
 ましてや至近距離ならなおさらだろう。

「コータス!」

 コータスは何とか耐えた。
 が、次の瞬間、ピカチュウは空中にいた。

「とどめの『アイアンテール』だ!」

 ジャンプしてから攻撃をそのままコータスの頭に直撃させた。
 いくら防御が高いとは言え、顔や頭は防御能力は低い。
 コータスはこの攻撃で気絶した。

「コータス戦闘不能!ピカチュウの勝ち!よって勝者ヒロト!!」
「ご苦労様、コータス!……強いわね!全力出したんだけど……君の方が強かったみたいね。次の試合もがんばってよ!!」

 アスナはヒロトにそう言ったが、ヒロトはもうすでにいなかった。

「え!?ちょっと!ヒロトは何処に行ったの!?」

 ヒロトはピカチュウをモンスターボールに戻し、急いでフィールドを出て行ってしまった。



 ヒロトが急いで岩のフィールドを出たのには訳がある。
 実はヒロト対アスナの試合と同じ時刻にトキオ対ヒカリの試合もやっていたのだ。
 ヒロトは試合がやっているはずの草のフィールドに急いだ。



 ヒロトは草のフィールドに着いた。
 スコアボードを見るとトキオ対ヒカリと書いてあった。
 そして、ヒロトが見たのと同時に審判がコールした。

「ゴースト戦闘不能!キュウコンの勝ち!よって勝者ヒカリ!」

 トキオはヒカリに負けたのだ。
 しかも、ヒカリは2匹しか出していない。

「…………。これがヒカリの実力……。夢で結果はわかっていたけどまさか……」

 ヒロトは前にトキオに負けているだけあって、ヒカリがトキオに負けたのはとても複雑だった。
 ヒロトの次の相手はヒカリに決まった。



 ―――7日目

「(……いよいよ準決勝だ……。今日勝てば明日は決勝だ!そして相手は……ヒカリか……)」

 ヒロトは会場の控え室からフィールドに移動中だ。
 覚悟を決めスタジアム、フィールドの中に入った。

“さあ、いよいよ始まります!ノースト大会準決勝!まず行われるのはマングウタウン出身のヒロト選手と同じ出身場所のヒカリ選手です!さあ一体どんな試合を見せてくれるのでしょうか!?”

 試合会場内にアナウンスが響いた。
 いやアナウンスと言うより実況と言う方が正しいだろう。
 試合の残りが3試合でそしてバトルフィールドが本会場ということで実況も入るのだ。
 ヒロトとヒカリはもう位置についている。
 いつでもバトルが始まることができる状況だ。

“ヒカリ選手は準々決勝以外は全てストレート勝ちです。一方ヒロト選手は二回戦を除いて危なげない戦いで勝ってきました。おっと、審判がそろそろ試合が始まるようです!!”
「それではこれからヒロト対ヒカリの試合を始めます!ルールは3対3のシングルマッチ。入れ替え自由。時間無制限。先に3匹ダウンさせた方の勝ちです!!」
「ヒカリ!悪いけど、俺はどんな奴が相手でも負けない!全力でいくぞ!」
「私だって負けないわよ!!旅立ちのときの様にはいかないんだから!!」
「それでは試合はじめ!!」

 ヒロトとヒカリは同時にモンスターボールを投げた。
 出た瞬間に二人は技を指示した。

「『マッハパンチ』だ!!」
「『殻にこもる』のよ!!」

 ヒロトはマッハパンチを指示し先制攻撃をしたが殻に阻まれて攻撃が効かなかった。

“おっとこれはすごい!いきなりヒロト選手のキノガッサの先制攻撃だ!しかし、ヒカリ選手のパルシェンの硬い殻の前に攻撃がほとんど効いていない!!”
「(どんどん行くぞ!)『頭突き』だ!」

 ヒロトは接近戦ならパルシェンの『オーロラビーム』や『水鉄砲』は防ぐことができると考えたのだろう。

「『マッハパンチ』で連続攻撃だ!」
“おっと!キノガッサ、猛攻に出た!さあパルシェン、なす術なしか!?”

 キノガッサがマッハパンチでジャブ攻撃をしているにもかかわらず、ヒカリは全く慌てている様子はない。
 むしろ余裕に近い。

「(……どういうことだ?……まさか!パルシェンに攻撃が効いていないのか?)マッシュ攻撃を止めてパルシェンから離れろ!」
“おっと!ヒロト選手、キノガッサの攻撃を止めさせました!!”
「よく気づいたわね。私の作戦に!でも少し気づくのが遅かったみたいね。」

 ヒカリの作戦とはパルシェンの高い防御力で相手を疲れさせるのだ。
 案の定、マッシュは攻撃しすぎて疲れている。
 疲れると動きが鈍くなるものだ。

「今よ!パルシェン、『オーロラビーム』!」

 パルシェンはオーロラのような光を放った。

「マッシュ!よく見てかわせ!」

 キノガッサはぎりぎりまで見てかわした。

「連続で『オーロラビーム』を撃つのよ!」
「回避しろ!」
“さあ、すごい試合になってきました!!防御に徹していたヒカリ選手が一転、攻撃に移りました!!一方、ヒロト選手、攻撃できません!!”
「(それなら……)マッシュ!あれでいくぞ!」

 キノガッサはパルシェンの周りを動きながらオーロラビームをかわしている。
 しかし、ついにパルシェン攻撃が当たってしまった。

“おっと!ついに攻撃が当たった!しかし、なんとかキノガッサこらえた!”
「とどめよ!『冷凍ビーム』!」

 だが、ヒカリの声が空しく響いた。

「え!?どうしたのパルシェン!?」
“おっと!パルシェン動けない!?何が起きたんだぁー!?でもよく見ると眠っているぞ!”
「(はっ!『キノコの胞子』ね!)起きてパルシェン!」
「今だ!『種マシンガン』だ!」

 キノガッサは殻の中身を狙って攻撃した。
 眠っているパルシェンは、殻を閉じて防御できなかった。

「よし!パルシェンの中身に『マッハパンチ』だ!」
「パルシェン!起きて『殻で挟む』のよ!」

 ここでパルシェンが目を覚ました。
 そして、マッハパンチを殻ではさんで防いだ。

“ここでまた接近戦になったー!でもこれでは勝負が決まらないぞー!”

 ゼロ距離ではパンチも打てないし水鉄砲も打てない。

「(離した瞬間に『冷凍ビーム』……これで勝負よ!)」

 ヒカリは指示を出そうとした。

「これで決まりだ!マッシュ!『ギガドレイン』!!」

 キノガッサはパルシェンの体力を吸い取った。
 パルシェンの体力はすべてキノガッサに吸い取られた。

「パルシェン、戦闘不能!キノガッサの勝ち!」
「し、しまった!」
“さあ、まずヒロト選手が1勝です!しかし、まだ試合は始まったばかり。まだまだ試合の行方はわかりません!!”
「やるわね!今度はキュウコンよ!」
「(攻撃が当たらなければいいんだ!)このままいくぞ!」
“さあ、ヒカリ選手の2匹目はキュウコンです!ヒロト選手キノガッサから代えようとしません!”
「マッシュ!『マッハパンチ』だ!」

 キノガッサは素早い動きでパンチを繰り出した。
 しかしそれは空を切った。
 キュウコンはその場所にもういなかった。

「な!速い!電光石火か!?」
「今よ!『火炎放射』!」

 キュウコンはもうすでにキノガッサの背後に回りこんでいた。

「マッシュ!かわせ!」

 しかし、気づくのが一足遅く、キノガッサはまともに攻撃を受けてしまった。

「キノガッサ、戦闘不能!キュウコンの勝ち!」
“速い!ヒカリ選手のキュウコン、かなりの速さです!両者残り2匹です。ヒロト選手、ヒカリ選手のキュウコンのスピードに勝てるのでしょうか?”
「シオン!頼むぞ!」
“ヒロト選手の2匹目はピカチュウです!果たしてヒカリ選手のキュウコンに対抗できるのでしょうか?”
「(スピードで撹乱して電気技で決める!)」
「(ピカチュウできたわね!ここはじっくりと……)」
「シオン!」
「キュウコン!」
「「『電光石火』!!!!」
“な、なんと!両者スピード技を指示しました!スピードはほぼ互角のようです!”
「連続で『電気ショック』だ!」
「『火の粉』でガードよ!」

 ピカチュウは電撃をいくつも放った。
 しかしそれは火の粉によって相殺された。

「『電磁波』だ!キュウコンの動きを止めろ!」
「させないわ!『まもる』よ!」

 電磁波はキュウコンの防御の前に阻まれてしまった。

「防がれた!?なら『電撃波』だ!」
「『火炎放射』よ!」

 ピカチュウは意識を集中させ、集束した電撃を放った。
 それに対し、キュウコンも火炎放射を放つ。
 二つの攻撃はぶつかり合った。
 だが威力はキュウコンの方が勝っていた。
 ピカチュウの電撃波は押され、ピカチュウに火炎放射がヒットした。

「シオン!?」

 ダメージを追ったものの何とかダウンしないですんだ。

「(あのキュウコン……強い!『電気ショック』も効かない……『電磁波』も防がれる……そして『電撃波』の上を行く攻撃……これじゃ、“あの技”も当たらない……どうする?)」

 ヒロトは考えた。

「(こうなったら、一か八か……まだ成功していないあの技を使うしかない!!)」
「これで決めるわよ!『火炎放射』!」
「シオン!『高速移動』でキュウコンの周りをまわれ!」

 ピカチュウはキュウコンの火炎放射をかわし、なおかつ高速移動をした。

“おーと!ヒロト選手、相手の隙を狙う作戦か!?”
「今だ!キュウコンの上にジャンプ!そして、『フラッシュ』だ!」

 ピカチュウは火炎放射をよけ、キュウコンの頭上へ飛んだ。
 さらに光で撹乱させた。

「(接近戦ね!)キュウコンかわして!」
「シオン!尻尾に電気を集めろ!『エレキテール』だ!!」

 尻尾に電気を溜めた。
 そして、尻尾はすぐさま、電気で満ちた。
 アイアンテールとはまた違った光り方である。
 そして、それをダイレクトでキュウコンにヒットさせた。
 その瞬間に溜まっていた電気がキュウコンに放出された。

「大丈夫!?キュウコン!」

 キュウコンは痺れて動けなくなった。
 エレキテールにはマヒさせる効果もあるようだ。

「とどめだ!シオン!『10万ボルト』!!」

 最近ようやく取得できた、シオンが今現在使える最強の技をヒットさせた。
 ピカチュウの連続攻撃にキュウコンはダウンした。

「キュウコン、戦闘不能!ピカチュウの勝ち!」
“ヒロト選手、ピカチュウの巧みな連続攻撃によりヒカリ選手のキュウコンを撃破しました!ヒカリ選手残り一匹です!”
「よくやってくれたわ!ありがとうキュウコン!」

 ヒカリはキュウコンを戻した。

「ヒロト!私は負けないわ!この子で勝負よ!!」

 そう言ってヒカリは大きな花を咲かせたポケモンを出した。

「行くわよ!フシギバナ!!」

 そう、ヒカリの最初にもらったフシギダネの最終形態である。

“おーとここでヒカリ選手初めて3匹目まで行きました!しかも最後のポケモンはフシギバナだ!これはヒロト選手どう出るのでしょうか!?”
「(シオンで行ってもいいが……)もどれシオン!」

 ヒロトはピカチュウを戻した。
 そして、別のモンスターボールを取った。

「ザーフィ!!出番だ!」

 ヒロトは相性のいいリザードを出した。

“ヒロト選手、フシギバナに対して炎系のリザードを出したぁー!しかもこの二匹睨み合っています!”

 それも当然だろう。
 何せ、最初に戦ったのがこの二匹なのだから……。

「いくぞー!『火炎放射』だ!」

 ヒロトは最初から全力で行った。
 リザードの攻撃は確実に当たったと思った。

「フシギバナ!かわすのよ!」
「なに!」
“おーと!ヒカリ選手のフシギバナ、ヒロト選手のリザードの火炎放射をかわした!ヒカリ選手のフシギバナ、大きい割には速いぞ!!”
「ヒロト!私のフシギバナを甘く見ないでよ!『葉っぱカッター』よ!」
「『火の粉』で打ち落とせ!」

 火の粉と葉っぱカッターがぶつかった。
 葉っぱカッターにひのこが当たり燃えた。

「『つるの鞭』!」

 太いつるが鞭のようにリザードを襲う。

「かわせ!」

 リザードはそれを難なくかわした。

「これならどう!?『つるのムチ×5』よ!」
“おーと!これはすごい!ヒカリ選手のフシギバナ、つるを5本も出した!これは見たこともありません!!”

 5つの鞭がリザードを襲う。

「(数が多い!これじゃかわせない!ならば)『燕返し』で弾き飛ばせ!」

 リザードは一つ一つの鞭を弾き飛ばした。
 しかし最後の一つに当たってしまった。

「何とか大丈夫のようだな。」

 つるの鞭を一回受けただけなのでたいしたことはなかったが、すべての鞭がヒットしていたらただじゃ済まないだろう。

「(接近戦で決めるしかないな。でも確かフシギバナって……)」
「(ヒロトはきっと接近戦で来るわその時はあの技で……)」

 お互い作戦が決まったようだ。

「もう一回『つるの鞭×5』よ!」
「ザーフィ!『煙幕』だ!」

 2人は同時に指示を出した。
 煙幕を張った事により目標を失い、つるの鞭の当てようがなくなってしまった。

「(やっぱり煙幕を張ってそのまま接近戦のつもりだったのね)」
「…………」
「今よ!周りに『眠り粉』よ!」

 ヒカリはリザードがもうフシギバナに接近していると読んで眠り粉をまいた。
 しかし、ヒロトはこの瞬間を狙っていた。

「今だ!煙幕から出て『火炎放射』!」

 リザードは煙幕を出て火炎放射を放った。
 リザードとフシギバナの距離は変わっていなかった。
 つまりその場を動いていなかったのだ。

「しまった!かわすのよ!」

 眠り粉を出していたフシギバナはかわすことがことができなかった。
 まともに攻撃はヒットしたが、フシギバナはこの攻撃を耐えた。

「『つるの鞭×5』よ!」
「とどめだ!両手で『炎のパンチ』!」

 リザードは二つの燃える拳で突っ込んでいった。
 一方、フシギバナの5本のつるの鞭の威力も特性『深緑』により威力が上がっていた。

“おーと2匹がぶつかった!勝つのはどっちだ――!?”

 両方の技がまともにヒットした。
 技の激突が終わり、フシギバナもリザードも少しの間、立ち尽くしていた。
 そして、次の瞬間リザードとフシギバナは同時に倒れた。

“これは!同時ダウンです!!”
「リザード、フシギバナ、両者同時戦闘不能!!ヒロト選手のピカチュウが残っている為勝者ヒロト!!」
「か、勝った……」
“準決勝、ヒロト選手が勝ちました!ヒカリ選手を破って決勝戦進出です!”
「ヒロト……」
「ん?」

 ヒカリがフシギバナを戻しながら言った。

「後で話したいことがあるの……いい?場所は後で連絡するわ」
「ああ、いいよ」

 ヒロトもリザードを戻しながらそれに答えた。



「話ってなんだろうな?」

 ヒロトは約束場所に向かいながら考えていた。

「ヒカリ……かなり真剣な顔をしていたなぁ……」

 そんなことを考えているうちに約束の場所についた。
 もうそこにはヒカリがいた。

「話って?」

 約束の場所とは選手村から離れた湖だ。
 太陽が沈みあたりはもう真っ暗だ。

「それにしてもきれいな湖だなぁ。」

 ヒロトが言うのももっともである。
 月の光が湖に反射して光っているである。
 そんな中ヒカリが口を開いた。

「ヒロトって私のことどう思っている?」

 ヒカリは率直に聞いた。

「…………」

 ヒロトは答えない。
 黙ったままだ。
 ヒカリはヒロトが答えるのを待っているようだ。

「……大切な……友達だ……」

 ヒロトの言葉に少し迷いが感じられた。

「(…………)じゃあ、この大会が終ったら私も一緒について行っていいでしょ?」
「……ダメだ……。一緒には行けないよ」

 ヒロトは最初の時と同じく断った。

「何でよ!」
「ごめん!一緒に行けないんだ!!」

 ヒカリの目に涙が浮かんできた。

「私は……私は……ヒロトの全てが知りたいのよ!!それでもダメなの?」
「!!(……え!?)」
「私はあなたのことが好き!!だから……だから……」

 ヒカリの声が響いた。
 涙声だったのでかすれていたが、ヒロトの耳に届くには十分だった。

「(ヒカリは俺のことが……。そうか、そうだったのか……。…………。俺の気持ちは……決まっている。…………。…………)」

 そしてヒロトはその静寂を破った。

「好きな……人がいるんだ……」
「え!?」

 一瞬にして雰囲気が変わった。

「ヒカリの希望には応えられない」
「そ、そんな……」

 その時ヒカリの目から一粒の涙が零れ落ちた。
 ヒロトはその涙を見まいと唇をかみ締め、ヒカリを視線からそらした。

「だからごめん!」

 ヒロトは逃げるようにその場を立ち去った。
 ヒカリがいるところから泣き声が響いていた。



 知らなかったよ。お前が俺のこと好きだったなんて……。
 あと悪いな。ヒカリ……嘘ついて……。
 実は好きな人がいるというのは嘘なんだ……。
 俺は女の子が苦手だし……。
 でも、良く考えたら、好きな人がいるというのは嘘ではないな……。
 その言葉を聞けて俺はうれしかった……。
 そして、俺はヒカリの希望に応えてやりたかった……。
 でも俺はお前と旅ができない訳があるんだ……。
 いや、してはいけないんだ……。
 それはヒカリに話すことはできない。
 本当にごめん!!



 いつしかヒロトは選手村に戻っていた。
 そして、前を見ずに走っていたヒロトは人とぶつかった。

「きゃあ!」
「うわ!」

 どうやら女の子とぶつかったようだ。

「いてててて……。ごめんなさい!前を見ていなかったもので……」
「あ!ヒロト!探したわよ!!」

 そこには赤い髪を伸ばした女の子、アスナがいた。

「(え゛!何でここにアスナさんがいるんだ!?いや、その前に何で俺の事を探していたんだ!?)」

 ヒロトにそのような疑問が浮かんだ。

「もう!試合が終ったらすぐにいなくなっちゃうんだもの!一言言いたかったのよ!!次の試合、私の分までがんばって!って」
「ご、ごめんなさい」
「別に謝ることは無いわよ。君にこれを渡そうとしていたのよ。」

 そう言ってアスナはあるものをヒロトに渡した。

「これは?」
「炎タイプの技の威力を上げるアイテム、『木炭』よ!」
「これをくれるの?」
「リザードを持っているみたいだからいいかなぁと思って」
「あ、ありがとう」
「じゃあ。私はこれで旅発つことにするわ!決勝までいったんだから優勝しなさいよ!!」

 アスナは旅荷物を持っていってしまった。

「アスナの期待にも応えないとな。気を取り直してともかく明日は決勝戦!……がんばるぞ!」

 ヒカリの事は考えていたけれども、諦めるしかなかった。
 ヒロトはそう思っていた。
 この時は―――。



 たった一つの行路 №011
 第一幕 Wide World Storys
 運命の始まるノースト地方⑪ ―――ヒカリの告白――― 終わり



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