作者:[[DIRI]]
**その辺に落ちてた欲 [#k35e2693]
ただ黙々と歩く私。
こうやって散歩をしているのはいつもの日課みたいなもので、今日は特別天気がよくて、表を歩くだけでとても気分が良い。なので誰も居ないのに「今日はすごく良い天気だな~」と言ってみたりする。
……正直虚しいと思ったのは心の隅に追いやっておく。
私はこれまでずっと一人……って訳でもない。
友達もいるし、ちゃんと両親も健在である。正直言ってしまうと何ら不幸のない、いわゆる平凡な生活、というものの中に身を置いて生きてきた。
そんな平凡な生活の中で、一番私が気にしていたのは、私が17になっているこの歳までに一度も異性に興味を持たれたことが無い。そういうことだ。私自身の色気とか、その他諸々……言うなれば胸とかである。それが無いのかとか、そんな肉体的なことを要因として私が異性に縁のない生活をしているのか、そう言うことを気にしているのだ。
……白状してしまえば、キスすら一度もしたことがない。そのくらいに、私は異性から目を惹かれない存在なのだ。
キスと言えば確かに、父さんや母さんの頬にならキスぐらいしたことがあるが、異性の唇に私の唇が触れたことなど一度もない。
友達はみんな恋人が……いや、みんなではないか。まあ、恋人がいないにしてもいるにしても、キスぐらいはしたことがあるのだ。早い人ならもう夜の営みまで……。
……とりあえず深呼吸して赤くなってしまった頬を元の色に落ち着かせる。まあ、元の色と言っても私がロコンである故にあまり変わり映えはしない、むしろじっくりと私の顔を見たりしない限り私が赤くなっていることなど気付かれもしない。
私だってもうそろそろ18歳であり、一番……かはわからないが特に可愛らしい時期である。
それにもう大人になる自覚もある、だからこそ、そろそろ異性のことを知っておきたいと思う。だがそれは私のせいか、誰のせいかはわからないが知りたいと思えば思う程知ることが出来ないのであった。
そんな事を考えていたら友達の「結婚するまで処女守るの?」と言う言葉が異様な程に憎たらしく感じてきた。
私だって、欲はある。三大欲求であるその全ての欲も、他の些細な欲も。
まあ、三大欲求があると言っても“食欲”と“睡眠欲”に押されすぎて“性欲”なんてものはかなりちっぽけに萎縮してしまっているが。……言っておくが、食べては寝て、を繰り返している訳ではない。
そんな訳でもあって、自ら異性を求める、なんて事は私に限ってあり得なかった。あり得るはずはなかった。
さて、もうそろそろ話を散歩まで戻しておこうか。私自身の言い訳にうんざりしてきたし。
今は草原の中をゆったりと歩いていた。
そろそろお昼だろうか、何だか最近は食欲がでないので散歩の距離を延ばして、いつもはあまり来ない草原まで来ているのだが、天気がよくて、このまま転けてしまえばそのまま就寝と言うことも十分あり得る。特に私なら。
昔から何よりも眠気優先の生き方をしてきた私である。最近はそれはまずいと悟り、睡眠欲を押さえつけて来ているが、眠れる体勢になるとどうもそのまま夢の中に飛び込んでしまう。
見る夢の中でも寝ていたりするのだから重症である。そう、自覚はしている。
そろそろ帰ろうか、ここまで来てしまうと帰り着く時間も少し遅くなってしまうし。
ぽかぽか陽気の眠気を払うために一度身体をグイと伸ばし、小さく満足げなため息を吐く。このため息が好きだったりするので私は寝るのかもしれない。
さて、同じ道を帰るのもつまらないな、少し回って帰ろう。これが時間を遅くしてしまう要因であると気付いたのはこれから少し経ってから。でも気にしてはいない、いつものことだ。
こんな良い天気なのに今はみんな仕事でもあるのかこの草原には誰も居ない。私だけがこの草原の草が風でたなびく綺麗な音と、陽光が草に反射している風景を独り占めしていると思うと、すごく優越感を感じる。みんな仕事とか大変だろうな、と思ったりもしたが、18で成人のこの世界、そろそろ18の私は今、仕事もフリーでやることも何もないのである。
少し草原の景色に見とれていたら、風に揺れる草の中にポツンと黒い点があることに気が付いた。
最初は岩だろうかと思ったが、どうもそんな感じではない。艶めく岩など気持ち悪い限りだ。……確かにそうゆう黒曜石だったかそうゆう石もあるけど、あんなに大きかったら気持ち悪い。私より大きいくらいの岩なんだし。岩かはわからないけど。
そして、好奇心からその黒い塊に近づいていく私。眠気だけでなく好奇心も人一倍強いのである。
「ZZZzzzz……」
「! ブラッキーだ……」
ブラッキーが草原のど真ん中で爆睡していた。その体毛はつやつやしていて気持ち悪い程だ。無論声に出してそんなことは言わない。寝ていて気付かれないにしても失礼が過ぎる。
寝ている彼は、華奢だが、筋肉質な身体で、男らしい顔だった。
……そんなことを言っているのはブラッキーのすぐそばまで行ったからであり、彼の身体を眺め回したからなのだが。
モゾモゾと寝る体勢を変えるブラッキー、その様子が可愛いとも思ったし、不覚にも、そのブラッキーの顔がかっこいいと感じてしまった。
三大欲求の一つである“食欲”と“睡眠欲”をかいくぐって、わずかな“性欲”が私の脳に顔を出した。
非常にこのブラッキーには申し訳ないのだが、私の相手をしてもらうことにしよう。
……微弱な性欲など、キスして終わり、なのだが。
そっと体勢を崩して音を立てないように、ブラッキーが小さく開けている口に私の口を近づけさせる。
ファーストキスが見ず知らずの相手になるというのも少しどうなのかとは思ったが、それはこの際捨て置こう。これから先、本当に結婚まで処女……そればかりかキスすらしていないのでは恥ずかしすぎる。せめてキスぐらいは終わらせておきたい。本当に将来誰かと結婚出来るか、それすらもわからないのだから。
「‥‥‥」
しかし私は理性を働かせてその行動を止めた。
それから、聞いていないとはわかっていても、言い訳をせずにはいられなかった。
「私ったら何考えてるの……。見ず知らずの人とキスしようだなんて、確かにかっこいい人だけどさ……」
半分程、いや、八割は自分への言い訳である。
ブラッキーの方から顔を背け、地面を見つめて頬を染めながら自分に言い訳をし続けていた。
「全部聞こえてるぞ……」
私の身体がビクリと跳ね上がった。毛が逆立っていく。
ゆっくりと、本当にゆっくりと声が聞こえた方に顔を上げる。
そこには、彼の、ブラッキーの顔があった。
「……この俺にキスしようってか……?」
ブラッキーの目つきは少し鋭くなり、歯を見せてにやりと笑いつつ言葉を続ける。
「良い根性持ってんな……お前」
私はただうろたえるだけである。
まさか狸寝入りであったとは夢にも思わず、キスしようとして言い訳をつらつら並べ立てていたのだから。
私の言葉を待つように、彼は何をするでなくじっと私を見つめていた。
まさか黒い眼差しではあるまいか、と思える程に、その瞳に見つめられた私は硬直してしまう。
何か言わなければ、そう思った私は、小さく呟くように口を開いた。
「あの……ホントに、ご、ごめんなさい……」
これしか言う言葉はなかったのか、と頭の中で自分に言ってみるが、他に良い言葉が思いつかないのだから他にどうしようもない。
それにここで失言をしてしまえばどうなるか全く保証がないのだ。
ブラッキーはその草のなびく音で消えてしまいそうな程小さな言葉を聞いていたのかはわからないが、歯を見せて笑うのをやめ、私の顔を眺めていた。
そして、突然にかっと笑い、こう言ったのである。
「お前……可愛いな」
私の目が点になる。
全く意味がわからない。どうして彼がそんなことを言うのか。
私はただ呆然として、彼の顔を見るだけだった。
そして彼のその笑顔が、冗談や嘘を言っているようには全く見えないのである。
「良いな~」
ブラッキーはキョトンとしている私の顔を身をかがめて、下から私の顔を覗き込むようにしながら言う。
私は少し怖くなってきて、顔を歪めた。
「俺好みのその表情……可愛いぜ」
私は思った。『この人はどこかおかしい』。
人の怖がっている顔を見て「可愛い」と言っているのだ。どこかのネジが吹っ飛んでいるに違いない。それも複数。
だがその恍惚とした表情を消すために、怖がっている顔を消そうとしても、それは全く持って不可能なのである。理由など言うべき事でもあるまい、ただ怖いのである。
「……そんなに怖がるなよ……俺は別にお前が可愛いから言ってるんだ。それだけだ……」
一瞬笑みの感じが変わったように見えたが、それは気のせいだろう。
そして一つわかったことがある。
この人はいたって正常、私の勘違いだったようだ。
多分、この人は顔を歪めたそれが困った表情をしているように見えたらしい。
そして、今の言葉が指すその理由に、私は顔を赤くした。
「どうした? そんなに赤くなってさ……」
意地悪い性格をしている、これもはっきりとした。
あんな事を言われて、そう、この美形の彼からあんな事を言われて頬を赤くしない雌がいるならば、是非とも紹介して欲しいものだ。
私はもう、脳内がパニック状態だったので、思っていることを率直に言葉にすることしかできない。
「い、いえ……可愛いだなんて言われたの初めてなので……」
彼が驚いたと言わんばかりに目を見開く。
「マジか? おいおい、こんなに可愛いのにか?」
それから彼はずいと顔を私に近づける。
もはや触れてしまいそう……もとい、既に鼻と鼻がくっついていてゼロ距離である。
彼の顔がこんなに近くにあると言うだけで、私がロコンであっても、誰が見たってわかると言う程に真っ赤になっていた。
彼が突如にやりと笑う。
「このままキスでもしてやろうか? ……俺は歓迎だぜ……?」
私は心臓がドキリと跳ね上がるのを感じた。
それと同時に、思い切り身を引いてブラッキーの顔から離れる。
「な、何を!? 私とあなたは初対面じゃないですか!!」
怒ったように声を出すが、茹でたタコなんかよりもずっと赤くなっている私の顔を見られながらであっては、全く効果がない。むしろ逆効果である。
彼は自分の唇をペロリと舐めながら、私に憐憫の目でも向けるように言った。
「何言ってんだ? ……お前、最初俺にキスしようとかしてなかったか? なぁ?」
これを言われてはぐうの音も出ない。私は動揺して、顔をしかめながらモゴモゴと言い訳をするしかなかった。
そんな私を見て、また彼は恍惚な表情を浮かべ、ため息を吐く。
「その表情も良いな……」
また私に近づいて、彼は私の予想だにしない一言を呟いたのだった。
「俺、お前のことが好きになりそうだ……」
私の中で、何かが吹っ飛んでいく音がした。
理解しようがないこの言葉で、理性の門のネジがいくつか吹き飛んでいったのは、自分が一番よくわかっていた。情欲という奴が湧くのである。
私は欲の思うがままに、彼の唇を奪っていた。
でも、そんな行為に慣れない私は、ブラッキーの首に抱きつき、彼の唇から離れないようにするので手一杯だった。
そんな中、私の唇にぬるりとした感触のものが触れた。それは私の唇をこじ開けようとしているのである。
私がそれがなんなのかを理解するのに少し時間がかかった。それは彼の舌だった。
驚いた私が、彼から離れようとするが、落ち着けと言わんばかりに彼から背中を撫でられ、動く気力が完全に消え失せる。
それと同時に、彼に舌が私の口内に入り込んできたのだ。そしてそれを動かし、私の舌を舐めようとする。
驚きや、その行動の理由がわからないなどの理由を含め、私はそれを断固として拒否し、自分の舌で口の中に入り込んできている彼の舌を押し出した。
彼は一瞬だけ不快そうな顔をすると、私から口を離した。
彼はまた唇を舐めていたが、私は息を荒くしていてそれを整えようと必死だった。彼には既に、まあ彼なら当然かもしれないが、キスの経験ぐらいあるらしい。
私の呼吸が少し整った辺りで、私は彼に聞いた。
「き、キスって……舌を相手の口の中に入れるものなんですか……?」
正直こんな質問をしている自分が恥ずかしい。でも聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥と言うではないか。ここで聞いておくのが正解なのだろう。
彼は少し考えるような素振りをしてから、小さく笑った。その笑い方がどことなく自然な感じでないような気がしてならない。
「そうだな……舌を一緒に絡ませた方が気持ちいいらしいぜ……?」
「気持ちいいんですか……?」
正直キスってそんなものなのかと思った。雌雄の間で“気持ちの良いこと”と言ったらあれしか思い浮かばないような私である。自分で言うのもどうかと思うが、私はうぶなのである。
一度キスして、ファーストキスは終わった。だが、セカンドキスもしてもらおうかと思う私、ついでに今し方言っていた“舌を絡ませる”と言う奴をやってみたい。彼の方が積極的に舌を入れてきたし、断られることはないだろう。
「……あの……それなら、もう一度……キスしても良いですか……?」
彼は予想通りだったとでも言いたげな顔でにやりと笑う。
「ああ……良いぜ……」
今度は彼から私の唇を奪われた。既に彼は口を開けて、私が自分から舌を入れるのを待っているようだった。私は少しためらいつつ、彼の口の中に少しだけ自分の舌を差し入れる。
すると、彼は目敏く私の舌を確認して自分の舌をそれに絡めてきた。
彼の舌が私の舌に触れた瞬間、私はピクリと身を震わせた。どんどん鼓動が速くなっていくのを感じていた。
私はまたためらいがちに、私の舌に絡みつく彼の舌に合わせ、舌を動かしていた。
不思議な感覚である。ぬるりとした舌が私の舌に触れるたび、意識の中で何かが弾ける。
弾けているそれが、理性の門だというのは今の私に理解することは出来なかった。しかし、わかっていたことがあり、それは“性欲”、それがどんどん、今まで萎縮していたのは力を蓄えていたからだと言わんばかりに大きくなって、勢いを増している。それだけはフワフワした意識の中で確実に捉えていた。そして、私の身体の変化もしっかりと理解しているつもりだった。
舌が絡み合っている最中、私はブラッキーに抱きついていた。彼も私を抱きしめてくれる。
そうすることで、私達は更に深く相手の口内を犯すことが出来るのだ。
……息が苦しい。
当然のことだろうか、かなり長いこと彼と舌を絡ませ合っているのだから。
私は時々空く口の隙間から荒い息を吐き、ただ彼が私の口内を犯す快感に酔いしれていた。
彼も同様、いや、彼の場合は私の口を犯すそれに酔っていたのだろうか。私程ではないが、息を荒くしていた。
唐突に、彼は口を離した。息が切れたのだろう、深く呼吸をしている。
私もそうだったが、息が荒く、深呼吸など到底不可能だ。やはり彼との耐久力の差というものは大きくある。
「……気持ちよかったか……?」
彼は少し笑ってから言う。やはり息が切れているので、彼もそれなりに疲れているのだろう。
また目の前に彼の顔が来る、そしてにやりと笑いつつ、こう言うのだった。
「俺はすごく気持ちよかったぜ……?」
私は顔を赤くした。これ以上赤くなったら頭がパンクしそうだ。
だがパンクの要因は私自身が持っていることを承知している故に、鼓動は未だ速くなりつつある。
とりあえず、彼のその言葉に応えなければ、と思い、荒い呼吸の中で何とか声を絞り出す。
「……気持ちよかったです……」
ここまで恥ずかしい言葉だっただろうか?そう思う今日この時である。
私は恥ずかしそうに俯き、パンクの要因になりうるそれを一瞬確認した。
……これはまずいな。
「ん?」
彼は私の顔を覗き込もうとしたのだろう、身をかがめた。先程と同じく、下から私の顔を覗く形で。
それが私にとって恐るべき地雷だと気付かず。
そしてその地雷は爆発し、私の頭はパンクした。
「いやらしそうに濡れてるのか?」
私の股……濡れているそこを見て、意地悪くそう言う彼。私は頭から湯気がでていると思った。……事実そうであったとは後の彼の談である。
パンクした私の頭ではろくな言い訳が出て来ない。
「え、あ……これは……そのっ……」
こんな感じである。むしろ言い訳にすらなっていない。ただのうわごとだ。
彼も幻滅しただろう、何を言われるかわかったものじゃないぞ、とわずかに残った理性がわめき散らしているが、パンク状態の頭からそれが冷静な判断に導くという好転は期待出来ない。
彼も彼で、私の反応を楽しげに見ているし、もう何が何だかわからないのである。
「み、見ないで下さい!!」
悲鳴に近かろうそんな言葉を吐き、私はとりあえず手で濡れているそこを隠した。
そんなことをしても、既に辺りに独特な臭気が漂っていて隠しきれないし、私が踏んでいた草も濡れてテラテラと光っているしで全く意味がない。
「……そんなに俺とのキスに興奮したか……?」
彼は楽しげに言う。
それが聞き取れない程に、私は混乱していた。
だが、次の言葉は驚きのあまりに、パニック状態の頭を一瞬で落ち着かせる程に強烈だった。
「だったらもっと興奮させてやるぜ……」
パニックになりすぎると、逆に落ち着くものだ。
彼が私を転ばせて、隠しているその手を強引に退かすのを見るまでの話ではあったが。
「い、嫌っ!! やめて下さい!!」
私は身体をねじり、抜け出そうとしたが、彼は私の腕を握っているので無駄な抵抗である。
それでも、そうやって逃げ出そうとするほか方法が考えられなかった。
こんな草原の中で火でも吐こうものなら、とんでもないことになると言うのは火の粉を吐きそうになった次の瞬間に思いだしたことである。
そんなこんなをしている間に、彼の顔は、濡れている私の股にうずめられていた。
「ひぁっ!!」
私が悲鳴を上げても、彼と私以外にこの草原にいる人などいないのである。ああ、こんな事への誘いだったならば私も草むらに見とれたりしなかっただろう。
私の濡れている秘所を舐める音と、秘所に感じるくすぐったいような気持ち悪いような快感に脳を犯され、私は藻掻く事を徐々にやめていった。
「舐められておとなしくなったか? クク……以外にいやらしい奴だな……」
その言葉で私は目を覚まし、放されていた手を使って彼の舌から逃げ出そうとしていた。
だが、彼はいやらしく笑い、行動を起こす。
「クククク……逃がさねぇよ……」
その言葉と共に、私は外ではなく、中に舌が入ってきたのを感じた。
さっきとは違うその感触、それに私は全身の力を奪われる。
「はぁう……い、嫌ぁ……」
力を奪われて、そんな弱々しい声しか出ない。
私はもう、まともに動くことが出来ないくらいに疲弊していたのだ。
「良いねぇ……その弱々しい声……好きだよ……」
正常ではなかった、とまた頭の中で思う。私も勘違いが過ぎる。
その言葉を聞き終わった途端、悲鳴を上げそうになる程、彼の舌が私の中で暴れる。
息が出来ない。それほどに私は喘いでいた。既にその自分の喘ぎ声ですら自らの理性の門を壊す起爆剤になっている。
「ぁっ!はぁん!あっ!あっ!いやぁぁぁ!!」
そして私は、身体の中から湧いてくる堪えがたい快感を吐きだした。
私の秘所から愛液……と言う奴か、それが噴き出し、ブラッキーの顔面にもろにかかった。
もう既に、私は何かを諦めていた。……今はただ息を荒げているだけだが。
「クク……やってくれるじゃないか……。どうだ? 絶頂へイった気分は?」
答えない、と言うか答えられない。
私は今、その絶頂に到達した後の余韻に浸っていた。
ブラッキーはと言うと、顔にかかった私の愛液を腕で拭き取っている。
……私は顔を背けた。
なんて事はない、恥ずかしさからである。
「……ん? 怒ってしまったか?」
彼が私の顔を覗き込んでくる。
……もう勘違いでなければいいが、彼はとても優しいのだ。無理矢理こんな事をしておいてそれはないかもしれないが……。
私が怒っているのではないかと、気分を害したのではないかと彼は心配してくれているのである。
「……ブラッキーさん」
顔を背けている間に落ち着かせた呼吸を使ってしっかりと言葉を紡ぎ出し、彼を見つめた。
彼は私が呼んだのに対して少し驚いているようだったが、「どうした?」と私を見つめ返してきた。
これからは私が何か諦めていたそれが暴走することになる。
そう、今の私は……
「あなたを気持ちよくさせれば、私のことももっと気持ちよくしてくれますか?」
……いわば肉欲に溺れた一匹の雌だった。
「ロコン……」
彼は私に幻滅しただろうか。それが少し気がかりである。
見つめたその顔が、少し赤くなっている、そう気付いたのは彼が次にしゃべる時だった。
「ああ……良いぜ……」
彼は私の目の前に雄の象徴を差し出した。
とても大きくて、硬い。そう言っているのは私が彼の肉棒を撫でているからだ。
「……これがブラッキーさんの……」
もはや羞恥心とか言うそれは捨て去った。さっき諦めたものの一つである。
私は彼に欲情しているだけではなく、彼自身のことも好きになりつつあるようだと、この辺から理解し始めた。相手は強姦しようとしてきたような相手であるが、途中から和姦になっている。問題は……まだあるか……。でも気にしてしまっては気分が萎えてしまう。それに今は、愛欲に溺れるべき所なのだから。
彼の肉棒を優しく掴むと、彼の身体が……一番はこの肉棒であるが、ピクリと動く。
掴んだこの肉棒からは、トクントクンと脈打っているのが感じられた。
私は少しためらってから、このためらいすら捨て去ってしまえと思い、肉棒を舐め始める。
私が彼の肉棒を舐めるたび、ピチャピチャと卑猥な音がする。今更ながらここが密室の中でなくて良かったと思う。開けた所ならこの音が辺りに響くことはない。……とは言っても、彼と私の頭の中ではしっかりと響き渡っていて、理性をとてつもない勢いで破壊していくのだが。
「ん……あぁ……良いぜ、ロコン……」
彼の押し殺したような声が聞こえる。
多分、喘ぐのを堪えているのだろう。誰も居ないのだから堪える必要もないのに……。少しサディストになりかけたのは秘密である。
なりかけた、だから一瞬激しく肉棒を舐めた。
「あぁっ……っく……」
……もっと聞きたいとか思ったのも秘密にしておこう。彼にサディストと思われるのは少し酷である。私的に。
肉棒の先から、透明な液が出てきたのを私は気にせずに舐め続けた。これは彼のためであり、私のためでもあるのだ。
彼を気持ちよくしてあげれば、私もその分気持ちよくなれるのだから、みんな特ばかりである。
私は舐めるのも疲れてきたので彼の肉棒を口に&ruby(くわ){銜};えた。
彼の身体がビクリと跳ね、私の頭に彼は手を添えた。
「ろ、ロコン……出る‥かも……」
切羽詰まった声だ。正直もう、彼になら何をされても良いと感じているので、その言葉は無視して肉棒を吸う。
「ん……あぁぁぁ!!」
私の口の中に、炎タイプである私ですら熱く感じる程のどろりとした、少し苦い液が流れ込んでくる。
教育は受けている、その液がなんであるかぐらいはすぐにわかった。
彼の肉棒から次々溢れ出てくる精液を私は飲み込んでいった。苦い味は嫌いではないが、正直不味い。でも、おいしい、と言える程に、私は色欲にまみれていた。
彼の出す量が多く、体格の差などもあって、私が飲み込むよりも多くの量が口の中に注ぎ込まれてくる。故に、少し溢れて私のあごから垂れていって、彼の精液が私の胸の辺りまで伝っていく。……今更ながら、私はスタイルが悪い訳でも良い訳でもないとだけは言っておくことにしよう。いたって平均……そう信じている。
「う‥はぁ……別に良いんだぜ? 吐きだしても……」
私は首を横に振った。それにそんなことを言っている彼は未だに少しずつ射精をしている。
彼が射精を終えてから、私は肉棒から口を離して口の中にたまった彼の精液を飲み干した。
「うわぁ……」
ブラッキーが引き気味である。まあ口の周りが精液で白くなっていて必死で精液を飲んでいる姿を見ればわからないこともないが……。
「……大丈夫‥か……?」
勘違いではなかった。彼はとても優しいのだ。
心配そうな顔で私のことを見てくれている。それが嬉しかった。
「……大丈夫です。ブラッキーさん、約束ですよ。私を気持ちよくして下さい」
もはや禁欲なんて言葉は私の辞書には存在しなかった。あるのは愛欲・色欲・情欲・性欲・肉欲、そして欲情である。
ブラッキーは少し笑い、私に顔を近づけてきた。
「そうか……クク……ロコンはエッチな奴だなぁ……」
彼の意地悪な性格が顔を出した。私の頬を赤くさせたいのだろうが、羞恥心などもう捨てている。
私は笑いながら彼に向かって言った。
「それはもう自覚しました。むしろこんな事をしてそれがわからないなら頭が悪すぎますよ」
さすがのブラッキーも苦笑である。良いです、わかってるから。
彼は優しく私を押し倒して、肉棒を私の秘所に向けた。
「ロコンを気持ちよく‥な……。じゃあ、挿れるぜ……?」
「あ、待って……」
彼は首を傾げる。
私にはちょっと不安があったのだ。友達が……言っていたことである。
「&ruby(はか){破瓜};ってすごく痛い」と、彼女はそう言っていた。詳しいことは知らないが、処女である雌には“処女膜”なるものがあって、雄との交尾によってそれが破れる時に激痛が走るらしい。
痛いのは……正直、嫌いである。私はマゾヒストじゃない。
「こうゆう事するの初めてだから……少し、怖い……」
「……そうなのか?」
ブラッキーは怖いと呟いた私の頭を優しく撫でた。
「わかった……じゃあ最初はゆっくり‥な……」
彼が優しくて本当に助かった。優しい人でなければこんな事言ってくれないと思う。
……今更だが、彼は以外と手慣れているようなので、以前誰かとこうゆう事をしたことがあるらしい。それはそれでジェラシーである。
彼は私が頷いてから、ゆっくりと身を沈め、肉棒を挿し入れてきた。
「ぅっ、あっ……」
痛みは私の愛液が潤滑油の代わりになってするりと入ってくるのであまり無い。しかし、今まで何も通ったことのない場所に、彼の肉棒が振れると、私は喘ぎ声を抑えられない。
「……ロコン……」
私も彼も感じたらしい、何かにぶつかるその感触。
ああ、遂に来たのか、私が処女を失うこの瞬間が……。
「……今更だが……俺なんかで本当に……」
その先は言わせなかった。彼の口を手で塞いで、私はニコリと笑った。……意図は伝わったと思う。
私は目を瞑って、これから来る痛みに備えた。
彼が私の耳元で、もう一度、「行くぞ?」と私の意志を確認してから……彼は私の純潔の証を貫いた。
「ぃっ!あっ!!」
私の秘所からはわずかながら血が流れた。それと同時に、身を斬られたかのような激痛が走る。私は思わず彼にしがみつき、全身まで広がるその痛みを堪えるために彼を思いきり抱きしめた。その時、彼の背中に私の爪が立てられるが、しなやかな筋肉の彼の身体に食い込むだけで傷は付かなかった。
背中に私の爪が食い込んでいるというのに、彼は顔をしかめることすらせずに、私をいたわるように、優しく私を抱きしめ、撫でてくれた。
「痛いか……?」
その言葉の一つ一つが私を彼に引き寄せていく。ああ、これを恋というならば私は今まで不幸だったのかもしれない。
「大丈夫か?」
「はい……」
私は少し無理をして笑って見せた。正直まだ痛いのだ。でも破瓜の瞬間よりは大分マシである。
私の顔を見つつ、彼は呟いた。
「そうか……。じゃあ、振っても良いか……?」
何をか、などとは聞く必要もない。うぶな私でも、わからないはずはない。
まだ痛みはあるが、彼をこれ以上心配させてしまえばここまででこの行為は終わってしまうかもしれない。私は努めて平静を……もとい、快感を感じているかを装って、彼に頷いた。
「……じゃあ……行くぞ……」
彼はゆっくり……腰を振り始めた。
痛みが徐々に、本当に快感へと変わっていく。
ゆっくりだったのは初めの十数秒だけだった。それからは、彼も肉欲に任せ、激しく腰を振り、私の秘所を突きまくっていた。
「やっ!ぁっ、ぁっ!んぁっ、はぁん!」
私は突かれるたびに喘ぎ、脳を全てこの快感を感じることに使っていた。
ブラッキーの肉棒は、太くて、長くて、硬くて、熱くて、脈打っていて、何より愛おしかった。
彼の荒い呼吸が私の首筋に、私の喘ぐ中での呼気が彼の胸にかかる。
それだけで私達は興奮し、快感を得る程に愛欲に溺れていた。
「ロコンのその声も……すごく良い……。もっと‥ロコンの……ロコンの声が欲しい……!」
私の喘ぎ声が彼の欲するものか。ならば聞かせてあげる、私のもっと淫らで、あなたを刺激するような喘ぎ声……。
私はもっと声を出して喘ぎ、自分からも腰を振り始めた。それからは彼もどんどん激しくなっていく。私が壊れてしまうのではないかという程に……。
「う……」
彼がピクリと一瞬だけ腰を振るのをやめた。
ほんの一瞬ではあったが、彼がどうかしたのはよくわかった。
「ろ、ロコン……っ、俺‥そろそろ限界が……」
彼の身体を支える後肢がガクガクと震えているのはよくわかっている。それが私にただ突くだけとはまた違う快感を与えている。それに、彼の肉棒は、私の中でビクビクと跳ねているのだから、どうなるのかは察しが付いていた。
「な、中に……っ! 中に出して下さいっ……!」
ブラッキーは驚いたようだった。
まさか私がそんなことを言うとは思っていなかったのだろう。
でも私は、彼を愛しているのだ。初対面でこんな事をしているから、おかしな状況に酔っているだけかもしれないが、彼のことが好きだというのは偽りのない事実である。
彼になら、どんなことをされても良い。彼の子供であるならば、何匹だって産んで良い。私はそう思っていた。
快感で壊れかけの私の顔から、その意志を汲み取ったのか、それとも、彼がそうしたかったのかはわからないが、優しい彼が後者のはずはないと思う。
「じゃあ……出す‥ぞ……?」
私は彼に抱きついた。
嬉しい。ただ、ただそれだけだった。
「く‥あぁぁぁ!!」
「あぁぁぁ!!」
私の中に、彼が精液を流し込んでくる。
その量は、私の中に収まりきらない程、多くて、とても濃い。
子宮の中まで、彼の精液は注ぎ込まれ、私の中を満たした。
そればかりか、もう入りきらない精液が、私の中から溢れ出てくる程だった。
射精と同時に絶頂に達した私も、肉棒と秘所の隙間から愛液を迸らせていた。
彼の目は焦点が合っていない。快楽に溺れすぎた、と後に彼は語る。
肉棒を私から引き抜いた彼は、一度深呼吸してから、既に呼吸を整え始めた私を見て、その後に私の秘所から溢れ出た私の愛液と、彼の精液、それと若干の私の血が混じった液を見て、心配そうな顔をする。
「……すごい中に出してしまったが……平気か……?」
……そんな彼が好きである。
「……平気、です……」
私は仰向けの状態からコロリと転がって立ち上がり、ブラッキーに抱きついた。
彼は少し驚いたようだったが、すぐに笑顔になっていた。
「……ブラッキーさん……大好きです……」
生まれて初めての告白である。それに、相手には今日初めて出会った。
それでも、伝えるべき事は伝えるものなのだ。
「……俺も、大好きだぜ……」
彼は少し恥ずかしそうにそう言うと、私の口にキスをした。
嬉しい、だけでは現せないかもしれない。でも狂喜とは少し違うかもしれない。
なんだか、ただ幸せなのである。
「ずっと……一緒にいてくれますか……?」
「……ああ……。ずっと、一緒‥な……」
……欲、なんてものは、以外とその辺に落ちていて、みんな気付かずに見過ごしてしまうだけなのかもしれない。
でも、それを見つけることが出来て、ちゃんとそれを拾えたら、絶対に良いことに転がっていく。絶対にそうだと、私はそう言いたい。
……彼は運命だって言うけどね。
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あとがき
一日で練り上げた訳ではないです。一日で書きましたが。
小説は一年程前から書き始めていましたが、官能小説は初めてでした。正直表現下手です。
この小説、私の友達とこうゆうメールをやってて、「これ小説書けんじゃね?」みたいなことを言ったことから始まりました。
正直、一人走りです、ごめんなさい、そして助けて下さい。
一小説家として、これから活動していきたい所存であります。
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