ポケモン小説wiki
COM's Kitchen ~マトマのピリ辛ポテトサラダ~ の変更点


''注意事項''
-産卵描写及びそれに伴う捏造設定は健在です
-乙女のイメージを著しく損なうかもしれない粗相描写があります


&size(30){''COM's Kitchen ~マトマの&color(red){ピリ辛};ポテトサラダ~''};


 それはある日のお昼過ぎの事。出かけているご主人様の代わりに家を守っている私はリザードンのリリー。窓から見える景色はあいにくの雨。
「ただいまー」
 玄関の扉を開けてご主人様が帰って来た。
「おかえりなさーい」
 部屋の出入り口から顔を出して玄関を見る。持っている手提げ鞄に何かが沢山入っているようだ。
「買い物行ってきたの? だったら私が連れて行ったのに」
「いやいや雨だよ? それにその状態のあんたに頼めるわけないじゃん?」
 ご主人様が目をやったのは私の丸く張ったお腹。……そう、私の胎内にはまた大きな卵が居座っている。そして大きく張って痛み出す。外で産まれたらどうするのと彼女に窘められ、ぐうの音も出ない。
「さて、ご飯の準備しなくちゃね」
 そのままキッチンへと足を運び、手提げ鞄をキッチンテーブルに置く。その中から出てきたのはパンやモーモーミルクの他、普段彼女があまり買わないモーモーチーズもそこにあった。冷蔵庫を開けて、ポテトパックとあらびきヴルスト、そしてマトマの実を取り出し、調味料入れからごま油と黒コショウを出して並べる。私も初めて見る食材の組み合わせ。何を作るのか尋ねると、ご主人様はスマホを出して私に画像を見せる。
「じゃーん! 今夜はこれを作りまーす! COM's Kitchenの『マトマのピリ辛ポテトサラダ』!」
 画像を凝視している私。辛いのはあまり得意じゃないけど、確かにこれはおいしそう。
「……だけどまだ材料が揃ってないんだよね」
「何?」
 首を傾げると、ご主人様は一度喉を鳴らしてから、必要な材料を読み上げる。
「モーモーチーズ、あらびきヴルスト……」
 次々に読み上げられた物を指差し確認する私。ここまではちゃんと揃っているみたい。
「……タマゴうみの卵」
「タマゴうみの……は?」
 自分のお腹を指差し、開いた口が塞がらない。
「ちょっとご主人様? もしかして産卵待ち?」
 そう訊いてみると、彼女は白い歯を見せた。私は思わず手で顔を覆った。
「確かにさあ、今晩産まれるかもって私言ったけど、その通りになる保証なんかないんだからね? 私だって生き物だもん」
「でもあんたの予想結構当たるじゃん? 信用してるんだよ」
「もう~もう~……」
 二の句が継げず、そのままミルタンクになるのではと錯覚した。こんな事ならいっそご主人様みたいに豊満な乳房があって、ミルタンクみたいなおっぱいミルクが出たほうが……と思ったが、どのみち産まないと出ないよと、独身処女の彼女に教えられた事を思い出して大きく息をつく。キッチンを後にして、部屋に戻った。

 虫の居所が悪い。このお腹ばりにぷくっと膨れる私の頬。私の卵がおいしいのはわかるけど、いくら何でも期待し過ぎ! 産む自由くらいあってもいいじゃないの! まあ、こんな所でカッカしてても仕方ないから、少し湿っぽい外の空気でも吸おうかと、窓辺へ移動する。
 窓を開けると、穏やかに降る雨の音と、湿気を含むひんやりした空気が部屋に飛び込む。雨の一滴が窓枠に落ちて小さく散る。「私」って、必要とされてるのかな。そんな事もふと考えたくなってしまう。ぼんやり外を眺めていると、部屋の扉が開く。振り返ると、ばつが悪そうに佇むご主人様。
「……ごめん。ちょっとはしゃぎすぎた」
 頭を下げる彼女に対して、私はわざと目つきを鋭くした。
「ご主人様は、私と私の卵、どっちが大事なの?」
 腰に手を当て、煙を吐いて彼女に訊く。するとご主人様はゆっくり歩き出し、私のお腹にそっと触れる。
「決まってるじゃん。リリーちゃんが元気じゃなきゃ、卵だっておいしくならない。あたしはあんたが元気で健康でいてくれることが何より&ruby(しあわせ){幸福};なんだよ」
「ほんとに?」
 と聞き返す私。それ程までに疑心暗鬼に陥っていた。
「もうリリーちゃん。あたしとあんたがどれだけの付き合いだと思ってるのさ? 子供の頃からでしょ? 大人になって色々変わったけど、一番根っこの部分は変わってないと、あたしは思ってるよ。それに……」
 触れていた手がゆっくりお腹を撫で回す。
「あんたが卵を産む度に、卵が詰まったりして大変なことになったりしないか心配なんだから。あんたはひとりでできるって言うけど、やっぱり心配だから様子を見に来ちゃうんだよ。あんたに何かあったら、卵どころじゃないもん」
「ご主人様……」
「でも……あんたがそう勘違いしちゃうくらい、卵に期待してたのは本当だから、それは素直に謝るよ。ごめんなさい」
 あーあ、もし卵って答えてたらご主人様だとか関係なく思いっきりビンタするつもりだったのに、これじゃあ……。私は只、大きく溜息をつくしかできなかった。
「もう、ご主人様ったら、ずるいよ……」
「ずるい?」
「そんなこと言われちゃったら、許すしかないって……」
 なんで泣いちゃってるの私? そんなつもり全然ないのに……! そしたらご主人様、私を抱き締めてくれた。
「駄目ね、リリーちゃんを泣かせちゃうなんて。あたしはトレーナーとしてまだまだ未熟だった。本当に、ごめんなさい」
「ご主人様のばかぁ……!」
 口元が震え、零れ落ちた大粒の涙がご主人様の服に吸い込まれる。このまま泣いてしまおうかと思ったその時だった。
「あいたたたたたっ!」
 突如痛み出す膨れ上がった子袋。
「きちゃった!? よし、産んじゃおう!」
 ご主人様に連れられて藁の敷かれた定位置に着く。なんで空気を読まないのこの卵とお腹は! 何とも微妙な感情で産卵に臨む私。こうなったらもうままよ!
「ぐるるうううぅぅぅ!」
 歯を食いしばり、呻きを絞り出しながら子袋の収縮を促進させる。やがて出口が開き、産道を潤した粘液が溢れ出して股間の割れ目から糸を引く。胎内の卵が外へ向かって移動を始める。
「うぐっ!」
 子袋を抜ける瞬間に覚えた久々の痛み。この卵……大きい! 途端に滲み出る脂汗。
「苦しい?」
 お腹を撫でながら案じてくれるご主人様。
「卵が……大きい……!」
 涙声で彼女に訴える。すると初めて産んだ時に施したマッサージをお腹にしてくれる。そのお陰で、膣が拡げられる痛みを伴いながらも、卵は次第に下りていく。そしてぬめった膣の一部が体外へ飛び出し、産卵管へと変貌する。初めはお腹に邪魔されて目にすることができなかったが、次第にお腹が萎んで薄紅色の先端が見えてくる。その真下は破水によって藁が含み切れない程の体液が広がりつつあった。
「やだよぉこんなの……!」
 久々に覚える産みの苦しみに、泣き言を零してしまう。
「ポケモンセンターの&ruby(オペ){手術};室で産んだときより全然マシでしょ!?」
「それは違う意味でもっと嫌ぁ……!」
 紅葉を散らした思い出を掘り返されてしまう。それは去年の秋、リザードンの産卵のメカニズムの研究とかいう名目で、産卵直前の私の体に色んな物を貼り付けられて手術室に連れて行かれ、そこで仰向けのまま産気付いて卵を産み落とすまでの一部始終を記録されて……嗚呼嫌だ恥ずかしい!! あの嫌な思い出をとにかく忘れようと必死にいきんだ。そのお陰か卵はアソコの入り口まで下りてきて、体内から出ようとする。拡がり具合からして、やっぱり今まで産んだ卵よりも大きい事が窺い知れた。拡張される痛みに顔を顰めて涙と脂汗を流しつつ、ゆっくりでも出そうと踏ん張る。最も太い部分を通り抜け、体液のぬめりでニュルンとアソコから飛び出した卵の重さが、飛び出した産卵管から伝わり、少し動くだけでも出口から糸を引きつつ大きく揺れる。ご主人様以外にはあんまり見られたくない光景だ。
「ふぬうううぅぅぅぅ!!」
 顔を赤くしてお腹に力を籠め、子袋から搾り出す粘液によって押し出される肉管の中の卵が、出口へ向かって徐々に動いていく。ご主人様に手伝ってもらわなくても大丈夫そうだ。
「がんばって! あと一息だから!」
 彼女の声援を受けて、鼻から煙を出しながらいきみ続ける。出口に差し掛かり、その径を拡げ始める。卵に&ruby(せ){塞};き止められて溜まった大量の体液によって、産卵管が太く膨れ上がっていた。そして押し広げられる痛みが最後まで付き纏う。
「ぐるるるぅぅぅぅ!!!」
 歯を食いしばり、最早唸りに近い声を上げて渾身の力を籠める。飛び出した橙色の殻が最も太い部分を晒す。そこから少しずつスルスルと動き出し、とうとう卵が肉管から解放される。同時に開いた出口から大量に迸る透明な体液。
「うわっ! おっきな卵!」
 ご主人様が仰天している。その全貌を見た私も思わず目が点になった。これじゃあ難産なのも致し方ない。私は壁に凭れ掛かってそのままへたり込む。
「大丈夫!?」
 ご主人様が肩を貸してくれて、用意したきれいな寝床で仰向けになった。そしてタオルで私を汚した汗や体液を拭き取ってくれた。卵と格闘して火照った体を冷やそうと滲み出続ける汗。蒸発して空気に混じる雌の臭い。そして空っぽになっても痛みが燻る子袋と膣。
「無事に済んでほっとした……」
 緊張の色が消え、穏やかな笑顔を浮かべるご主人様。目に映るや、産む前の続きとも言わんばかりに涙が溢れ出す。
「ごめんなさい……!」
 無意識に、そう口走っていた。
「ん? どうしたのさいきなり」
「ご主人様に……あんな態度取っちゃって……!」
 彼女は笑顔で首を横に振った。
「あたしだって悪かったから、しかたないよ。ごめんね、リリーちゃん」
「ぐすっ……ううっ……!」
 すすり泣く私をそっと抱き締めた。ご主人様の体の感触と体温が、一層心地よく感じられ、ずっとこのままでいたいとさえ思えた。外からは穏やかな雨の音が絶えず聞こえていた。


 ご主人様が私の目を濡らすものを指で拭き取る。不思議と私の心は体と同様に軽くスッキリしていた。
「この卵、使っていい?」
「うん。それでおいしいサラダ作って」
「ありがとう。これで二人分作れそう」
 大きな卵を抱え、部屋を出て台所へ向かう彼女を目で追った。こうして無駄にお腹を痛め、アソコを拡げて産む卵も、只割られて捨てられるよりかはこの方が幾分有意義だろう。しばらくすると、台所から聞こえ出す物音。卵を彼女に預けた後に聞こえてくる音は、自然と心躍らせる。今日は何を作るか決まっている筈なのに。
 段々外は暗くなり、雨音も小さくなる。パンの焼ける香りがこの部屋にも漂ってきた。空っぽのお腹がぐう、と物欲しそうな音を立てる。痛みも取れて、ゆっくり起き上がる。膣管もとうに引っ込んでいた。台所へと歩き出すと、食欲をそそる香りが一段と強まっていく。
「あれ、もう大丈夫なの?」
「うん。もう平気」
 完成間近と思われるサラダに黒胡椒とごま油を振りかけるご主人様を横目に、テーブル脇の私だけの特等席に座った。
「できたよ!」
 ご主人様が持ってきたサラダボウルの中には、赤、白、黄色が鮮やかに映えるサラダが盛られている。スマホで見た画像とほぼ同じだ。そして焼きたてのパンと、私の体に合わせて調合されたポケモンフードもテーブルに置かれる。彼女が小皿にサラダを取り分けてくれた。見ているだけで涎が零れ落ちそうになる。
「いただきまーす!」
 手を合わせて元気よく。早速サラダを恐る恐る口に運ぶ。ポテトのホクホク食感と黄身のホロホロ、白身やヴルストの歯応えが交互に現れ、ごまの香ばしさが鼻を駆けていく。ヴルストとチーズの塩気の後にマトマの実の辛さがやってくる。それを取り纏めているのはモーモーチーズ、そして何より産みたての卵のコクと旨味。おだやかな性格の私でも食べられる味に仕上がっていた。程よい辛さで食が進み、パンやポケモンフードもあっという間にペロリ。
「おいしい!」
 汚れた口元を舌なめずり。ところが満面の笑みな私とは対照的に、ご主人様は難しい表情をしている。
「おいしくない?」
「いや、そういうわけじゃないけど、なんか物足りない……」
 そうかな? 私はこれで十分おいしいと感じたけど、人間の味覚は私達ポケモンとは大きく違うのだろうか。彼女はしばらく頭を捻っているようだったが、何かを閃いたらしく、藪から棒に立ち上がる。そして調味料入れから何かを持ってきた。
「ポテトサラダといったらマヨネーズ! だけどそれだとしつこすぎる。ならこれだね!」
 彼女が手に持っているのは黄色い液体の入った瓶。それってまさか……!
「いや、それはさすがにやめたほうが……」
 嫌な予感がして止めようとするが、彼女は耳を貸さない。蓋を開け、片手に持った計量スプーンに注ぎ込もうとする。瓶を持っている右手が突然震えた。

 &size(18){&color(#bbaa00){''ビチャッ!''};};

 嫌な音がした。それは計量スプーンの許容量を大幅に超え、直接サラダに降りかかった。お互い言葉を失い、私は開いた口が塞がらず、彼女は呆然として固まっていた。
「……だから言ったじゃん!」
「ま、混ぜれば大丈夫だって!」
 焦りの色を滲ませながら必死にサラダをかき混ぜるご主人様。次第にそこからつんと鼻を刺激する臭いが拡散されていく。
「大丈夫、大丈夫……」
 じこあんじを掛けるようにぶつぶつ呟き、彼女はサラダを一口放り込んだ。表情を硬くして再び動きが止まる。怖いもの見たさに私もポテトを一切れ摘まみ、口に近づける。この段階で饐えたような強烈な刺激臭が、大きな鼻腔を蹂躙する。覚悟を決めて口に入れる。舌がその存在を感知した瞬間、ゾクッと寒気に似たような何かを体に感じて固まる。我先にと口内に広がるのは激烈とも言うべき酸味。口から鼻の隅々まで広がり、思わず噎せてしまう。そして後からやってくる辛味。心なしかそれも酸味によって悪い意味で強烈に引き立っている。吐き出したくなるのを必死に抑えて喉へと送り込んだ。ごま油の香り、卵やチーズの旨味など到底太刀打ちできないレベルである事は、尻尾の炎を見るより明らかだった。
「何これ~もうどうしてくれるのさ~」
 嘆息を漏らす私。ご主人様に目を向けると、真剣な表情で私を凝視する。
「食べよう」
 不意に目をぱちくりする。&color(#777777){まさか、聞き間違いだよね?}; &color(#bbbbbb){そうであって};
「もったいないから食べよう!!」
 両手で私の肩を掴んで迫って来た。
「ええぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
 私の体から血の気が引いていくのがありありと感じられた。この妙に真剣な表情が、特性プレッシャー持ちなのではと錯覚する程の威圧感を放っていた。長く溜息を漏らし、肩を落として項垂れた。
「わかりましたぁ……」
 呆気なくご主人様に屈してしまった。はあああぁ、勝てないなんて……リリー……ほんとにダメな子。

 結局文字通り辛酸を舐めさせられる、否、食べさせられる羽目になってしまい、地獄のような時間が過ぎていく。ようやくふたりで食べ終える。気を緩めた瞬間、私のお腹が拒否反応を起こす。両手で口を押さえながら一目散にトイレへと駆け込んだ。そして文字に起こすのも憚られるような音を立てながら、便器に向かって口からヘドロウェーブを繰り出し続ける。まさか子袋のみならず胃まで押し縮める羽目になろうとは。ヘドロウェーブが鼻にまで流れ込み、その奥がガツンと強烈に刺激される。事が治まるまで実際は数分から十分程度だっただろうが、その何倍も長く感じられる程の苦痛だった。
 ようやく落ち着いてぐったりしたままトイレから出てくる。歩くにもふらつき、ようやく部屋にたどり着く。振り向くと、苦々しくしているご主人様の姿が目に入る。目に入るや否や、私の目はきつい三角になり、汚れた口元から牙を覗かせ、尻尾の&color(blue){炎は青く};燃え盛った。
「もうっ最低! 私のことが大事って言葉は嘘だったの!? これだからご主人様は彼氏ができないんじゃないの!?」
 それを聞いた彼女も、鬼のような形相で吠える。
「ちょっと! その言い方はないんじゃない!?」
「だってあんなの食べさせられたらオスが逃げてくに決まってるじゃん! 調子乗ってヘマするところもかわいいって思ってたけど、こんなんじゃもう我慢できない!」
「悪かったねヘマばっかりで! あんただってバトルでいいとこでヘマしてるじゃん! 偉そうに言わないで!!」

 結局私達は大喧嘩。お互い溜まっていた不満を洗いざらいぶちまけた末、一週間口を利かなかった。その後、自然と撚りを戻したものの、酸っぱ辛い思い出として一生心に残る事となったのだった。
 そしてCOM's Kitchenのレシピページの最後に書かれていた注意書きを思い出す。

 &size(20){''&color(red){――掲載されたレシピについて、記載外の行為や、手順変更等の改変に伴う、いかなる損害や不利益について、当サイトは一切の責任を負いません。};''};

 そしてこれは後で知ったんだけど、タマゴうみの卵が用意できなければ普通にゆでタマゴで代用できたって……もうっご主人様ったら!


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【原稿用紙(20×20行)】20.5(枚)
【総文字数】		6752(字)
【行数】		144(行)
【台詞:地の文】	24:75(%)|1647:5105(字)
【漢字:かな:カナ:他】35:56:5:3(%)|2391:3809:348:204(字)
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