**B×L [#k3e9bd8b]
CENTER:作者:[[十条]]
LEFT:タイトルからお察し下さい。嫌な人はブラウザバックで全力で逃亡することを推奨します。
絡み(獣八禁描写)は無いけどね
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あの空に憧れていた。
近づけると思っていた。
いくら明るくたって、そこは白い影に過ぎなかったのに。
僕は莫迦で、臆病で、ずっと逃げていただけだった。風の吹かない場所で、何にも揺らぐことなく、ただまっすぐに立ち上る孤独な煙だった。
あの時、気まぐれなつむじ風がやってこなかったら――
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CENTER:―B×L―
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人類未踏の森。人里遠く離れたその場所には、ポケモン達が仲良く暮らしていました。
お昼どき、集めた木の実や小川で捕った魚を分け合ったり交換したり、皆思い思いに食事を楽しんでいます。そんな中、一本の木を上るポケモンが――リーフィアの男の子がいました。
「んしょっ、と」
この木の一番上まで上ると、枝が変わった形に渦巻いていて、体を横たえられるほどの高台を作っている。
僕のひみつの場所。少しは太陽に近づけたかな。太陽は僕に力をくれる。草ポケモンだから光合成ができるというのもあるけれど、僕は太陽の明るさが欲しいんだ。
いつか太陽みたいになりたい。そう思いながら空を見上げていた。
鳥ポケモンも虫ポケモンも、今は下に降りて友達と一緒にお昼ご飯を食べている。だから、一番高い場所。誰よりも高い場所で、葉っぱの包みに入れてくわえてきた木の実を広げる。毎日のこと。
その日は違っていた。
「……?」
誰かが木を上ってくる。つるの鞭を張る音がする。草タイプのポケモンだ。
つるが一番上に出てきた。枝に巻き付けて、本体が飛び上がった!
「よう」
「……」
ベイリーフ。この森で一番の人気者が、どうして?
「お前、いつもここで飯食ってんのか?」
「……はい」
口調は荒っぽいけれど明るくて、いつも沢山の友達と一緒にいる。そんなベイリーフがこんな場所に来るなんて、リーフィアにとっては予想だにしていなかったことだ。
ベイリーフは何も言わず、それが当然でもあるかのように、リーフィアの隣で持ってきた木の実を食べ始めた。
ふと、ベイリーフはリーフィアが持ってきた木の実に目をやり、不思議そうに首を傾げる。
「お前は食わねえのか? 俺だけ先に食べ終わっちまうだろうが」
「た、食べます、けど」
リーフィアも食べることにした。二匹いると少し狭いので、落とさないように気をつけながら。
「お前さ。なんでこんなところでメシ食ってんの」
「この場所が……好きなんです。僕のひみつの場所で」
「俺も見つけちまったけどな」
ベイリーフはあっけらかんとして笑う。
「たまには一匹で食べたくなってな。適当に選んだ木の上にたまたまお前がいた」
「ごめんなさい。僕、邪魔ですよね」
怒っている風でもないけど、内心は僕のことを鬱陶しく思っているに違いない。肩身が狭くて、謝るしかなかった。
「誰が邪魔だって言ったよ」
「一匹で食べるつもりだったのではないのですか」
「言葉の綾だよ! ほら、ここは静かだろ!」
ベイリーフは慌てた様子で、つるのムチを使って木の実を次々と口に放り込んでゆく。
何をそんなに急ぐ必要があるのだろう。僕とは一緒にいたくないのかな。早く食事を済ませてここから去ってしまいたいに違いない。
「お、俺フシギソウと約束あるんだ! じゃな!」
やっぱりそうだ。そうだよね。僕なんてどうせ誰にも見向きもされない。
でも、どうか神様。僕にほんの小さなカケラほどでも勇気があるのなら。一生ぶん使いきってもいい。だから。
僕に勇気を。
「あ、あのっ!」
木を降りようとするベイリーフを呼び止めた。
「何だ? 約束があるっつっただろ」
「そ、その、もし良かったら……よ、夜もここに来てくれませんかっ!?」
「あ? 別にいいけどよ……」
言えた。
言えた。
ちゃんと、言えた。
「ありがとうございます!」
「ちっ……」
軽く舌打ちをして、ベイリーフは枝葉の間に消えていった。
不安は残るけれど、いいって言ってくれた。でもまた別の不安が湧いてきた。あんなこと言っちゃって。ベイリーフ君がまた来てくれても、僕なんかと一緒にご飯なんて迷惑かもしれない。いやきっと迷惑だ。だってほら、舌打ちしてたじゃない。
「僕なんて」
空を見上げる。僕はこの空が好きなのに。太陽までもが僕を嘲笑っている気がした。
その太陽も森に近づき。
空がオレンジ色に染まる頃、また誰かが木を上ってくる葉ずれの音がした。
「良かった……来て、くれたんですね」
「お前が誘ったんだろうが」
ベイリーフはやっぱり、少し不機嫌そうだった。でも、来てくれたんだ。
「お前……この場所が好きなんだって?」
「はい」
「……煙と一緒のやつか」
「煙と……一緒の?」
「わかんねえならいい」
ぶっきらぼうな物言いだったけど、僕と話してもらえるだけで嬉しかった。だって今まで、僕は……
「お前、なんで他のポケモンを避けてんの」
「避けてるわけじゃ、ないですけど」
「みんなが一緒に食事って時にいち早くこんなところに隠れちまう奴の台詞かよ」
「それは……」
僕には友達なんていないし。
「『僕には友達なんていませんしぃ』とでも言うつもりか?」
「……っ」
図星を突かれ、口ごもる。ベイリーフにはまるで僕の心が見え透いているみたいだった。
「でも、僕は口下手で。誰かに話し掛けられてもうまく話せませんし」
「お前今普通に俺と喋ってんじゃねえか」
「それは……」
「思い込みなんじゃねえの」
「きっと、今は二匹だからです。僕とあなたしかいないから……みんながいたら、そうはいかないじゃないですか」
「考えた事ねえな。何だよそれ」
いつも皆に囲まれて、誰とでも話せるベイリーフ君にはきっとわからない。僕が誰かと話しているとき、その誰かと話したい他の誰かにとって僕は邪魔なんじゃないだろうか、とか。
「つか、友達の友達は友達みたいなもんだろ」
僕の心を見透かしたようにベイリーフは言った。わからないと思ったのに。
「友達のいない僕にそんなこと言われても」
「あー面倒くせえな。そんなだから友達できねえんだよお前は」
ベイリーフは徐に身を乗り出して顔を近づけて来た。足を揃えて座っていた僕は気圧されて、ぺたんと尻餅をついてしまう。
「俺が最初の友達になってやるって言ってんだよ!」
ベイリーフ君の言っていることが僕にはよくわからなかった。誰にも言われたことないから。頭の中で何度も反響して、ようやくその意味がわかってきた。ベイリーフ君が、友達に? 僕と?
「え、えっと」
「お前に選択権なんかあんのか? ないよな? 他に友達いねえもんな?」
「う、うん。嬉しい……です。嬉しいです!」
「そうか。良かった」
ベイリーフはさらに顔を近づけてきた。鼻先がぶつかりそうな距離だ。
「ちょ、ちょっと」
僕は前足に体重を乗せていられなくなって、後ろにごろんと、お腹を上に向けて無防備な姿をさらけ出す格好になった。その隙を見逃すまいと言わんばかりにのしかかってきたベイリーフと。
唇が触れ合った。
目を閉じていた僕は何が起こったのかわからなかった。ただ、この状況ではそれしかないと判断していた。不思議と違和感はなかった。
「お、俺はな」
ベイリーフはもう僕の上から身を起こしていた。続いて立ち上がると、彼は後ろを向いてしまう。
「お前のこと……ずっと見てたんだぜ」
「僕も」
この気持ちは嘘じゃないと思う。さっきキスをされた時に感じたものが何よりの証拠だ。
「ベイリーフ君にずっと憧れていました」
明るくて皆に頼られる姿を見て、いつかって思ってた。
いつかそんな風になりたい?
違ったんだ。
僕にはなれっこないんだ。
そう、だからこの気持ちは。
「僕、あなたのこと……んっ」
「言わせねえよ」
つるのムチで口を塞がれた。
「勘違いかもしれないだろ? だから、これからじっくり教えてやる。答えはその後で聞かせてくれ」
何? どういうこと?
もう一本の蔓が体にも巻き付いて、僕は身動きすら取れなくなってしまう。
「じゃねえと、お前にそんな事言われたら加減できなくなっちまうからな」
翌朝。僕の答えは変わらなかった。
「おはようございます、ベイリーフ君。僕、やっぱり」
「おぅ?」
昨夜の疲れが抜けきっていないのかまだ眠そうなベイリーフに、僕は今の素直な気持ちを伝えた。
「あなたのことが好きです」
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CENTER:完
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ご無沙汰しとります十条です。
元はBLじゃなく二人の男子生徒に友情が芽生える話だったんですがケモノBLにしちゃいなよYou!とチャットの方で言われたので書きました。
BLとか書くの始めてなんだが、これでいいんだろうか。
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