by[[瀞竜]] After story 守るべき存在~姉貴の旧友~ ---- 「お前の守るべきものは何だ?」 あの日俺がずっと追い求めていた問いの答えは、とても身近で大切なものだった。 「命を懸けて、バシャーモ姉貴を守ることだ!」 今なら胸を張ってそう言える。偽りなき答え。だから俺は姉貴とともに歩むことを決めたんだ。 守り抜いてみせる、この命に代えても…。 「起きろ、ルカリオ…」 やさしく暖かな声が頭に響く。それは俺がいつも聞いている大切な人の声…。 「ふぁ~…おはよう、姉貴」 「ああ、おはよう」 カーテンからこぼれる優しい日の光と、美しくもやさしそうな姉貴の笑顔が重なる。世界で一番大切な人だ。 「起きるのが遅いぞ…もう朝食はできているのに片付かないではないか…」 「ごめんな、まだ昨日の疲れが…な?」 「まぁ、それもあるが…しっかりしてもらわないと困るぞ?」 「ああ…」 体を起こしながら、俺は軽く背伸びをする。昨日は昨日で姉貴といろいろあったからな…。まぁ、なんと言うか…。愛のコミニケーション…とかいうやつか? 「まぁ、いいさ…それよりも時間がないから私は先に道場へ行くぞ?」 「ああ…わかったよ」 ドタバタとした朝、それは俺にとって何よりのことだった。姉貴の後姿を見ていると、腹の虫が騒ぎ出した。おなかを押さえて俺はリビングへ向かった。テーブルの上においてあるネットを取ると、そこにはいつもの朝食が置かれている。イスに座り食べようとしたときだった。 「いただー…っ?」 …なんだろう?誰かに見られている?俺は辺りを見回した。誰もいない…。しかし、誰かがいたことは確かだ…。おっと、こんなことをしてる場合じゃないな…。早口で俺は朝食を済ませると、急いで姉貴の待つ道場へ向かった。 今日も道場は活気にあふれている。目標もあるものもいれば、日々鍛錬というものもいる。しかし中にはそれ以外の目的の奴もいた。 「ルカリオォ!勝負だぁ!!」 来た…。いつもの時間、いつもと同じタイミングでいつものように俺に勝負を仕掛けてくる。 「あのなカメックス…少し間をおいて、敵を観察するとかしないのか?」 「今度なら勝てる絶対にな!」 「その台詞も聞き飽きたわ…」 「とにかく勝負だぁ!!」 それもそのはずだ、こいつと俺の結果を見れば当然のこと。道場破りとして、ここに乗り込んできた戦法でずっと俺に勝負を挑んできている。特性の「げきりゅう」は確かに威力は上がるが、それは自分の体力を消費した上で発動する。だから、発動したところであせることなく攻撃をかわして、懐にもぐれば一撃といわけだ。 「お前今までの成績知ってるのか?」 「知るか、そんなモン」 …だめだこりゃ… 「確認しとけよ…あそこに書いてあるから…」 指差す方向には、道場内で行われたバトルの結果が書かれている。最近は俺とかメックスしかやっていないため堂々と「ルカリオ 5戦、5勝0敗」その下に「カメックス 5戦、0勝5敗」と書かれている。 「わかったか?」 「……」 何だコイツ、いかにも泣きそうな顔してるな…。ていうか、もう既に涙目…。 「あせらずにさ…少しづつ頑張っていけばいいじゃんか…な?」 「うん…」 まるで子供みたいだな…。泣き顔なんて見たことないぞ…。カメックスはとぼとぼと歩き出した。そのときだった。 「何だ、ルカリオ。今日はあいつとは戦わないのか?」 「姉貴…」 いつの間にか俺の隣に、姉貴の姿があった。ため息混じりにわけを話した。 「なるほど…あいつの悪いところだな…」 「俺もなんだか悪い気がしてきたよ…」 「よしっ…!」 何を思ったか、姉貴はいきなりかメックスのほうへ歩いていった。そして何かを話しているようだ…。 「皆の者!バトルの準備をしてくれ!!」 「バトルって…まさか!!」 俺は急いで姉貴に近寄った。 「カメックスと戦うの!?」 「ああ」 「何で!?」 「なんとなくだよ…」 こうして、カメックスと姉貴のバトルの準備が始まった。…あいつどうなるんだろ。 急遽、姉貴とカメックスのバトルが行われることになった。互いバトルフィールドに入る。 「遠慮せずに全力で来い!」 同時に鐘の音が響き渡る。いつもの通りカメックスは初撃にハイドロポンプを放つ。しかし姉貴は無駄な動きをせず、躱して行く。5発ほど躱すと、姉貴が動いた。影分身でカメックスに近づく。そしてカメックスの横に並ぶと、姉貴が体を大きく回して蹴りをいれる。蹴りはクリティカルヒット。カメックスは床に転がり込む。すぐに態勢を直して、姉貴に近づいて行く。そして姉貴の前に行くと肩をつかみ、技を構えた。エネルギーが拳に溜まる。 「うりゃぁ!!」 気合パンチを顔面に放つ。躱せる距離ではないが姉貴は顔を右に曲げ、パンチを躱す。そしてカメックスの腕をつかむと、腹に手を当てて技を繰り出した。 「オーバーヒート!」 「ぐわぁ!!」 またもや吹き飛ばされる。いくらタイプが違うと言え、これだけダメージを食らえば・・・。そう思った矢先、カメックスは技の準備をしていた。 「こいつで・・・終わりだ!!」 放った技は水タイプ最強技、ハイドロカノンだ。威力は通常よりもある。いくら体が丈夫とは言え姉貴がこれを食らったら・・・。 「甘いな・・・」 姉貴がつぶやくと、ハイドロカノンに対して真っ正面に突っ込んで行く。そして当たる直前でジャンプをすると、カメックスの前に着地する。 「攻撃が直線過ぎるな・・・」 姉貴がしゃべり終えると思ったとたんに、姉貴の周りが赤く輝き出した。まさか・・・。 「うわあああぁぁ!!!」 カメックスがやけになり、気合パンチを放つ。その当たる直前に姉貴が動いた。 「ブラストバーン!!」 炎タイプ最強技、ブラストバーンだ。この技が出たら、やられたとか倒されたを通り越して、生きているか?と心配になる。と思った時、鐘の音が響き渡る。 煙が晴れるとそこに半泣き状態のカメックスがへたり込んでいた。・・・当然だろう。 「うっ…ううっ…」 今にも泣き出しそうなカメックス。そんなカメックスに姉貴が近寄る。 「…己の弱さがわかったか?」 カメックスは何も言わない。いや、今は何も喋れないだろう。 「…いつも勝っていた戦法で毎回勝てると思うなよ!!」 ドスの効いた姉貴の言葉にカメックスはついに泣き出した。 「わあああぁぁ……」 何か辛い事でもあったかのように、カメックスは泣き始めた。姉貴はカメックスを優しく抱いているだけだった。 「少しづつでいい…変わっていこう…」 「ヒッグ…うん…」 なんだか丸く収まった感じかな?とりあえず当分は、カメックスは勝負を挑んでこないだろう。こうしてバシャーモ姉貴対カメックスのバトルは姉貴の勝利で幕を閉じた。 「姉貴!」 バトルを終えた姉貴の元へ俺は駆け寄った。 「あんな本気にならなくてもいいのに」 「本気?まさか…」 「えっ?」 「確かに放った技は最強のものだが私はカメックスを狙ったわけではない」 少なくとも姉貴が怒っている時か切れている時ではない限りあの技は使わないはずだが…。 「じゃ何であの技を?」 「力の差を見せ付けるためだけさ」 「あっ…そう」 それなら納得がいく。カメックスに危害を食らわせないであえて自分との力の差を見せるためにあの技を放ったのか…。 「ああでもしないと、わからないからな」 「確かに…」 何はともあれ、これで少しは気が楽になった。そう思ったときには、練習が終わっていた。 あの後、道場を午前だけで閉めて久々に姉貴と2人で買い物に出かけた。滅多にない機会だし俺は姉貴に付き合ってやろうとしたが…。 「つ…つかれたぁ~」 「どうした、だらしないぞルカリオ」 だらしないといわれても、姉貴は3時間も買い物をしていて疲れないのだろうか…。服に靴に、いろいろ歩き変わっているのに…。そう思いつつ俺は、デパートの休憩所に座っていた。 「少し休憩させてよ…」 「そうだなさすがに…よし、飲み物を買って来るから待ってろ」 「ああ…」 そういって姉貴は自販機のほうに歩いていった。ガヤガヤと賑わうフロアをぼんやりと眺めていると、俺は朝と同じ誰かに見られている感覚がした。辺りを見回しても誰もいない。不審に思った俺は、目を瞑りまわりの波動を感じ取る。しかし何もない。 「…おかしいな」 「何がおかしいんだ?」 ジュースを差し出しながら、姉貴は俺に質問してきた。 「いや、誰かに見られてる感じがあってね…」 「ストーカーか?」 「いや…なんと言うか…」 ストーカーではない。もっと…探るような感じの視線が…。 「大丈夫だろう…それよりも次の店にいくぞ」 「えぇ~、まだいくのかよ…」 「当たり前だ、ほら!」 無理やり立たされて、買い物再開となった。まぁ彼女の笑顔を見れたからいいかな…。 デパートでの買い物を済ませた俺達は家に向かっていた。しかしその間にもずっとなぞの視線がしていた。姉貴に言っていないが、俺はずっと波動を探していた。 「……」 「どうした?ルカリオ」 「いや…なんでもないよ」 その会話から俺は姉貴に話題を振りはじめた。自分の気をそれせば視線も気にならなくなるはずだ。姉貴と会話をしているうちに家に到着する。 「ただいま~」 誰も居ない家に元気よく入っていく。 「…ルカリオ」 「ん?何?」 「ずっとしていたのか?」 「えっ…?」 「視線のことだ…言わなくとも分かる」 「…ああ」 やはり姉貴には敵わない…。まぁ長い付き合いなら、そんなものか…。 「よほど気になるなら…警察のほうに…」 「そんな大袈裟すぎるよ…」 「しかし…」 「大丈夫だよ」 姉貴に心配かけないように俺は、早足で自分の部屋に入っていった。 俺は自分お部屋で,瞑想をしていた。日頃の日課みたいなものだ。それでも今日は長く瞑想をした。あの探るような視線のことを忘れるために・・・。 ドンドン!!ドンドン!! なんだ?こんな夕方ごろに…。 「ルカリオー!悪いが出てくれないか!?」 しょうがないな…。俺は立ち上がり,部屋を出た。 「…!!」 部屋を出たとたん,俺はあの視線を痛いほど感じた。玄関の先にいる人物こそなぞの視線の正体だと感じた。ゆっくりと玄関に向かい,俺は客人に話しかけた。 「…どなたですか?」 「すいません,バシャーモさんのお宅ですか?」 女性の声だ。姉貴を知っているらしい。 「そうですが…」 答えた瞬間,玄関は勢いよく開いた。そして鋭いパンチが正面から向かってきた。俺は瞬時の判断でそのパンチをかわした。 「このっ!」 パンチをかわすと共にはっけいを繰り出し,ぶつける寸前でとめた。 「お前は何者だ!?」 技を解かず,客人に怒鳴りつけた。客人はというと動き1つ見せずに,余裕の口調で話した。 「…さすが,バシャ姉の弟子さんね,動きがいいわ」 バシャ姉?こいつは一体…。 「何だ!?騒々しいぞ,ルカッ…」 「姉貴,こいつが…」 姉貴は客人を見て驚いていた表情をした。 「お前…ミミロルか?」 「お久しぶりです,バシャ姉…今は進化してミミロップになりました」 「…5年ぶり…か?」 「そうですね…」 そういうとお互いに軽く笑いあった。 「姉貴,このミミロップ…とはどういう関係で?」 俺は姉貴に質問したが,姉貴の耳には届いていないようだ。 「ここで立ち話もなんだ,中に入れ」 「…はい」 そういうと,ミミロップと名乗るポケモンは俺を過ぎ,姉貴と並んで家に入っていってしまった。 「…?」 わけも分からないまま,俺も姉貴達の後をついていった。 リビングに向かうと,すでに姉貴とミミロップが雑談をしていた。俺は2人の話が一旦終わるまで,待っていた。話の内容的には,昔の思い出に近い。 「それで,こちらの方はどなたですか?」 話が終わりすかさず姉貴に質問をぶつける。 「ああ,こいつは私の旧友だ」 「旧友…つまり昔の友達ですか?」 「そうなるな」 姉貴と過していたが,そんな話は一度も聞いたことがない。 「二人はどのようにして,出会ったのですか?」 「それは…」 姉貴はミミロップとであった時のことを話してくれた。 あれは,まだ&ruby(リオル){お前};と出会う前…私がワカシャモの時だった。 ミミロップとであった時も,雨が降っていてな…。 「……ん?」 1本の木に寄りかかっている,ミミロルを見つけたんだ。ひどく痩せこけていて,今にも死にそうな感じだった。だから私は木の実を一つ差し出したんだ。しかし… 「……」 「…食べないのか?」 「…うるさい」 「何があった?」 「あなたには関係ない!」 頑なに木の実を食べようとしなかったんだ。どうやら餓死しようと考えていたらしいんだ。 「お前は何のために生きている?」 「理由なんてない…」 「それなら生きているなんておかしい…意味があるからこそ,生きているんだ」 そう言うと,いきなり私にぼそぼそと訳を話してくれた。 「私はそんなにバトルは強くない…しかしパーティーの中は下克上で,バトルに負ければ食事はなし…挙句の果てに私は捨てられた…」 すべてを吐き出したか黙り込み,そして今度は涙を流した。 「もう,私は生きる価値がない…」 「……」 すすり泣く音は雨のせいで聞こえない。 「生きていれば,必ず誰かのために生きれる」 すると,首を振り力のない声で呟く。 「私を必要としてくれる人なんて…」 「なら,私が必要としてやる!!」 「え?」 ミミロルに手を差し伸べてやったんだ。 「おまえは今日から私の弟子だ!ついて来い!!」 戸惑った様子だったが,しばらくすると顔を上げて,泣きそうな顔で… 「いいんですか?」 そう呟いたんだ…。 「ああ…」 私がミミロルの手を取るときには,雨は上がり日が差し込んでいたよ…。 「ふ~ん…そんなことが…」 &ruby(ミミロル){ミミロップ};の出会いの話を聞いた俺は,なぜかしんみりしていた。 「あれから5年か…」 「ええ…あの時は突然いなくなってしまいすいません…」 「いや,今こうして元気な姿を見せているだけで十分だ」 「ありがとうございます」 にっこり笑うミミロップ。そのまま,しばらく沈黙…。 「そうだ,急に私のところに来たのだ?」 思い出したかのようにミミロップに問いかける姉貴。 「ええ,実は少しの間私のこの家に泊めて頂きたいのですが…」 「この家にか?」 「ええ…」 姉貴の弟子なら,断るはずはないと思うが…。 「私は構わないが…ルカリオは…」 「…姉貴にお任せしますよ」 「そうか…なら,ミミロップ狭いが泊まっていくがいい」 「ありがとうございます」 こうして,我が家に新たな住人が加わった…。また騒がしくなりそうだ…。 今朝は姉貴が起こしに来なかった。まぁ、ミミロップがいるからしょうがないか。 俺はベットから起きると、いつものように顔を洗いリビングに向かう。そこにはテーブルに着く姉貴とキッチンに立つミミロップの姿があった。 「おはよう、ルカリオ」 「おはよ…今日はミミロップ?」 「ああ、家のことを手伝いそうだ」 そんな会話をしていると、朝食が出来上がる。 「美味そうだな」 朝食には少し豪華なものが食卓に並んだ。 「ありがとう…味に保障はありませんが」 「そんなことはないさ」 姉貴は颯爽と朝食にありつく。これだけ姉貴も食べているなら、問題ないな。俺も一口食べる。 「…美味い!」 姉貴が作る料理と同等か…それ以上だ。 「よかったですわ…」 そう言ってミミロップも食事に加わる。久々に会話のある朝食を楽しんだ。そしていつもの如く、道場を開け、特訓が始まる。そして、いつものように… 「ルカリオォ!勝負!!」 来た…。懲りない奴だ。 「カメックス…お前な」 「今日は絶対勝てる!!」 こいつは、バカか?バカなのか…? 「やめておけ…ルカリオには勝てないぞ?」 さすがの姉貴も困り果てている。 「戦うと言うまで、動かないぞ!!」 その場に座り込んでしまう。…駄々っ子か、お前は。 「あら、何事ですの?」 「あ、ミミロップ」 ミミロップも会話に入ってきた。 「このカメックスが、俺と戦えってうるさいんだ」 「何故ですの?…バシャ姉の弟子に勝てないのに?」 本音をズバリと言ってしまうミミロップ。それを聞いたカメックスも黙ってはいない。 「何だと!?戦ったことない奴に言われたかねぇ!!」 一歩踏み出して怒鳴るカメックス。一歩も引かずにミミロップが話す。 「だってそうでしょ?このルカリオを見てきましたけど、私より上と考えていいですわ…しかし、あなたは明らかに力不足ですわ」 おいおい…そこまで言うと。 「んだと…この&ruby(アマ){女};!勝負しやがれ!!」 道場内のポケモンたちがその声に振り返る。カメックス、完全に切れたな。 「…いいわ」 冷静に勝負を快諾するミミロップ。やれやれ、どうなるんだか。 バトルフィールドにミミロップとカメックスが入る。 「絶対に許さねぇ…」 「あら、威勢のいいこと」 どちらかというとこのバトル…喧嘩に近いな。 「両者とも、手を抜くなよ」 2人の間には姉貴がいる。どうやら審判をするみたいだ。 「では…始め!」 最初はいつも通り… 「ハイドロ…」 カメックスが動く前だった…既にミミロップは目の前にいなかった。 周りのポケモンも驚いていた。ミミロップの動きが見えたのは俺と姉貴ぐらいだろう。 驚いて止まっているカメックスの後ろに現れ、けだぐりが決まる。カメックスは吹っ飛び、床に転がるが体勢を立て直す。しかし、ミミロップはいない。カメックスが立つ先にミミロップの強烈な攻撃が叩きこめれる。 カメックスが反撃したのは、最後の局面のみだった。 「この…&ruby(アマ){女};がぁ!!」 怒り狂ったカメックスが渾身のハイドロカノンを放つ。ミミロップは初めて動きを止めた。迫りくる水の竜によける動作もしない。あと数メートルで食らう…そのときだった。 「…冷凍ビーム」 冷気をまとった光線が水の竜とぶつかる。少しづつ凍っていき、最後には氷の彫り物となった。彫り物は重力に伴いフィールドに落ちて砕けた。同時にミミロップはカメックスの前に立つ。 「技の動きが直線すぎますわ…」 ミミロップは呟くと同時に、拳に力をこめる。…この展開、どこかで 「う…うわああぁぁぁ!!!」 恐れたカメックスは気合パンチを放つ。しかしミミロップは体制を低くして気合パンチをかわす。 そしてカメックスの懐に潜り込む。…なんだろ、デジャブかな? 「スカイ…アッパー!!!」 ミミロップの一撃により、この戦いに終わりが告げられた。 ミミロップが放つと同時に、土煙が舞い視界がさえぎられる。 「姉貴…」 「ああ、勝負ありだ」 煙の中に鐘の音が響き渡る。少しつづ煙が晴れると2人の影が見えてくる。俺も姉貴も苦笑いをする。その理由は… 「…ふぅ」 「うっ…うぅ…」 ミミロップのスカイアッパーはカメックスに当たる寸前で止められていた。 「見事だったな、ミミロップ」 「いえ、バシャ姉には及びませんわ」 ゆっくりと拳を下ろしながら姉貴と会話するミミロップ。俺はミミロップの後ろを通ってカメックスに声をかける。 「おい、大丈夫か?」 声をかけても反応がない。あれだけ力の差を見せ付けられればこうなるのも無理ないか…。 「はぁ…」 結局、ミミロップ対カメックスの対決はミミロップの圧勝で終止符が打たれた。結果は姉貴と同じものだったが。 「お疲れ様、ミミロップ」 「あら、ルカリオ」 水分補給をしているミミロップに声をかける。 「最後のスカイアッパーは、わざと止めたんでしょ?」 「よくわかったわね」 「…ミミロップも姉貴の弟子ってことか」 「えっ?」 「ううん…なんでもない」 外を眺めながら、またミミロップと話す。 「それにしても、ミミロップも姉貴並に強いな…」 「いえ、バシャ姉には適いませんわ」 「そうか?」 「もしかしたら、あなたよりも下かも…今度&ruby(や){戦};ってみる?」 あの試合を見せられたからな… 「…遠慮しとくよ」 会話を終え、ミミロップとともにほかのポケモンの戦いの指導に当たった。道場を閉める頃には一番星が輝いていた。 家に帰ると、俺は姉貴の代わりに皿洗いなどの家事をこなしていた。理由は姉貴がミミロップと買い物に出かけてからである。 「…にしては、遅いな」 時刻は6時半を指している。いつもなら、1時間程度で買い物を済ませて帰ってくるのだが…。 「おーい!戻ったぞー!!」 ドアが開く音とともに勢いのよい声が聞こえる。出迎えると、大きな袋を提げた2人の姿があった。 「何を買ってきたの?」 質問をすると姉貴は少し笑みをこぼしつつ答える。 「ああ、イアの実の特売がやっていてな…」 「イアの…実?」 その言葉に疑問を持っていると、姉貴は何事もないかのように家に入っていく。 「よいしょ…」 ミミロップも袋を提げて、家に入る。 「あっ…持つよ」 「そう?ありがと」 そう言って袋を俺に手渡してくる。…本当に大量のイアの実が入っている。横目でミミロップを見ると、かすかに笑っている。何がそんなにおかしいのかわからないが、俺は何も言わないようにした。 台所に袋を置くと、俺に代わり姉貴とミミロップが夕食の準備を始めた。俺はその間に、風呂掃除をこなす。 「よしっ!夕食が出来たぞ!」 掃除が終わるタイミングと同時に姉貴の声が聞こえた。すぐにリビングに向かうと、いつもの夕食が並べられていた。俺は自分のイスに無言で座ると、微かに笑っている姉貴とミミロップが正面のイスに座った。 「じゃ、食べるか」 「そうですね」 「……」 俺は無言で食事を食べ始める。2人の会話が途切れるタイミングを見て、先ほどの疑問をぶつけてみた。 「姉貴、何でそんなに笑顔なの?」 「んっ?そんなに気になるか?」 正直に頷いてみせる。 「イアの実の特売だったから…それだけだ」 「いやそもそも…姉貴、すっぱいの苦手だろ?」 いくら強い姉貴でも、苦手なものはある。姉貴は昔から、すっぱい味のものがどうも好きになれないみたいといっていた。そんな姉貴が今更、イアの実を買うのは…不思議すぎる。 「ああ、お前の言うことも一理ある…しかしな、ミミロップがイアの実の有効な使い方を教えてくれたんだ」 「有効な使い方?」 「うむ、それを考えるとなっ…ふふっ…笑いが止まらなくて」 イアの実の使い方なんて考えたことなかったな。 「何なのさ、それ?」 「いつか、ルカリオにも教えて差し上げますわ」 ミミロップがそう言うと、2人は顔を合わせてにっこり笑う。 「まぁ、いいや…ご馳走様」 「ルカリオ、今日は風呂を早めに入ってくれ」 「ああ、わかった」 食事を堪能している2人を過ぎて、俺は自室に戻る。久々の再開を邪魔しちゃ悪いしな…。 「『今夜は、楽しみですね…バシャ姉』」 「『ああ…そうだな』」 ――…夕食から、数時間。いつもの筋トレに励んでいると、時間を忘れてしまうのが俺の悪い癖だ。 「97…98……99………100!!」 腕立て100回を終え、立ち上がる。額の汗をぬぐいながら、時計を見ると… 「…やば、またか」 時刻は9時半。姉貴に早めに風呂に入るように言われていたのに、遅くなってしまった。 「まぁ、いいか…風呂に行くか」 部屋を出て、風呂場に向かう。風呂場は姉貴の部屋を少し過ぎたところにあるので、姉貴の部屋を通らなければならない。 「ふん…ふん…ふーん」 気分よく、鼻歌を歌いながら姉貴の部屋を通り過ぎようとする。 「ふん…ん?」 姉貴の部屋の前で動きを止める。…中の会話が聞こえてくるのだ。 「バシャ姉ったら…綺麗な体になって」 「こらっ!…はっ恥ずかしいことを言わないでくれ」 なにやら、アブナイ会話が聞こえてきた。この会話を聞いているのもいいが、その後何をされるかわからないので、やめよう…かと思ったが、やはり男の性分なのだろ…ドアを握りゆっくりあけて中をのぞいた。 「『何を…?』」 心の中は期待でいっぱい。ゆっくりドアを開けると、そこは禁断の花園。 「下のお豆ちゃんも小さくて…」 「そっ…そんな事…!」 ベットの上で体をいじられている姉貴と、姉貴の体をいじっているミミロップ。姉貴は仰向けで体を晒し、ミミロップは手を姉貴のまたに収めている。 「ひゃ…やっ…やめ…!」 「ふふっ…喘ぎ声も可愛いですわ」 ミミロップの指が姉貴の割れ目から出入りを繰り返す。それに答えるかのように姉貴が喘ぎ声を出す。 「ああっ!!…ひゃぁぁ!!」 「それじゃ…」 ミミロップの指が一度止まる…かと思うと小刻みに手を震わせはじめた。姉貴は身を捩じらせる。 「ひゃ…くっ…ああぁぁぁ!!!」 姉貴は割れ目から愛液を噴出し、動かなくなってしまった。 「はぁ…はぁ…」 「イク時のバシャ姉の声も可愛いですわ…」 ミミロップの声に姉貴は反応できないでいる。あれだけ責められれば、無理もない。 「『女の子同士で…よくも、まぁ』」 男子が見てはいけないものを見てしまった俺は、興奮が抑えられずにいた。このままこの場を去って、風呂でこれをネタに独りで自慰でもしようかな…。 「バシャ姉…ルカリオは誘わなくて、よろしいの?」 ばれずにドアを閉めようとしたとき、自分の名前が出たことに俺は動きを止める。 「ああ、あいつは…また、今度だな」 「しかし、彼は我慢できないみたいですよ?」 …嫌な予感が。 「…どういう意味だ?」 「さっきから、ずっと私たちの行為を見てましたわよ?」 そう言うと2人はドアのほうを睨みつける。数秒の沈黙…そして 「ルカリオ!!」 まずい!ばれた!!…いや、ばれていた。俺はその場を離れて、自分の部屋に猛ダッシュで戻る。部屋に入れば、何とかなる。…ふと後ろを見ると、追っ手は姉貴1人。これなら、大丈夫か… 「覗きは感心しませんわね…」 「えっ!?」 前を向くとそこにはミミロップの姿。…いつの間に前に。 「くそっ…!!」 急ブレーキをかけて小回りでターンをする。しかし、振り向いた視線の先には… 「逃がすか、ルカリオ…!」 「うっ…くっ…」 前門のトラ、後門のオオカミとはこのことか…。じりじりと、姉貴が俺に近づく。…しょうがない! 「しんそっ…がっ!?」 いきなり、後ろから重い衝撃が来た…。しまった…ミミロップの…事…を。 「覗きなどする方には…」 「…お仕置きが、必要だな」 意識が薄れる中、2つの影のうちの1つが俺に近づいてくる…。 「…あなたも、禁断の花園へ」 そこで、俺の意識は途絶えた。 ---- -小説の舞台裏- カ「本当に…すいませんでした」 ミ「わかればいいですわ」 バ&ル「怖ぇ…」 バシャ「次回のヒントは…」 ミミロ「…縄ですわ!」 ルカ「(・_・;)」 ---- #pcomment