ポケモン小説wiki
言葉の落とし穴 の変更点


[[座布団]]


*複数・アナルなどのプレイが含まれています。
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「おいブラッキー。写生会だってさ」
友人の低い声に前脚の動きを止めて振り向いた。
今、友人が使っているパソコンは僕の物だが。もはや奴の私物化している。
「写生会?」
「そう、写生会」
写生などという美術関係の言葉がまさか彼の口から出てくるとは。誰が予想できただろうか。
「お前ひとりでしかやったことないだろ。大人数でやれるなんていい機会じゃん」
こちらを横目で見ながらカチカチとマウスを動かす友人のグレッグル。
頬を膨らましたり凹ましたりしている表情は。いつ見ても考えを読み取り難い。
趣味である絵を描いていると呼んでもないのにコイツは来た。
別にいつものことだが、勝手に入ってきて気配もなく後ろに立つのだけはやめてほしい。
悪寒が走って後ろを振り向くと奴は満足そうに頬を膨らまし。僕のパソコンに向かいアダルトサイトを貪り始める。
一週間のほとんどがこのサークルだ。しかし、今日は変なものでも食べたのか珍しく健全なサイトを開いている様子であった。
「キミが行ってくれば?」
素っ気なく言い返して作業にもどった。今は他のことは考えたくなかった。
目の前には僕の身長に合ったサイズの三脚台。その上に画用紙が置いてあり。紙には色とりどりの絵の具が塗り付けてあった。
その奥には先ほど野原で取ってきたピンク色の花が花瓶に挿してある。
床には濁った水とパレット。絵の具は原色が分からなくなるほど色が混ぜられていた。
利き脚である右前脚には 四足ポケモン用の筆を持つ。というより縦に巻き付けられている。
持つ部分が二足のポケモンよりも短いこの筆には。ベルトのように前脚につけられるようになっている。口で長さを調節してベルトを絞めて。毛先が中指の少し奥に行くようにしてある。
そうすることによってようやくこの不自由な身体でも絵を描くことができる。
白紙に命を吹き込む。この作業が楽しくて仕方なかった。決して対象物とは同じにはできないが、それでも似たような色を使いそれが存在していたことを深く刻める。
絵を描いている途中は対象物や空気に触れている錯覚すら覚える。あの花びら一枚一枚の感触が脚に流れこんでくるのだ。
そういうことに関してはグレッグルのあの器用な手がどんなに羨ましいことか。
それなのに当の本人はその生まれ持った優遇を全く活用していない。いや、自分の欲を満たす為になら十分に働いているが、そんなことに使うのなら一度でいいから身体を交換してほしかった。
どうしようもない現実に少しばかし腹が立つ。汚れた水に筆を叩きつけるように浸した。
水滴が飛び右脚の毛をかき分けて冷たい物がが染み込んでくる。
「俺は一人でいたほうが楽なんだよ。それに気持ちがいい所だぜ」
「僕はいいって言ってるじゃないか」
「ククク、なに怒ってんだよ」
耳障りな笑い声が妙に鼓膜に響く。下げたままの右脚をあげられなくなった。
「別に怒ってなんかないよ」
「そうか?俺のことを妬んでるようにしか見えないぞ」
「キミのどこに妬む要素があるのさ」
皮肉を言ってやるとグレッグルは耳障りな笑い声を上げながら両手を僕に見せつけるように振った。図星を突かれて思わず息が止まってしまう。
向こうは僕のことをお見通しのようだ。
「偶には気分転換してこいよ。お前ずっと部屋の中にいるから知らねえ間にストレス溜まってるんだよ」
それを聞いて彼の見方が変わりそうになってしまった。相変わらず不気味な笑顔だが彼なりに僕のことを心配してくれているのだろうか。
それならば、こんなに嬉しいことはない。
気持ちの良い所か。広大な草原や山だろうか。それとも湖とか海かもしれない。
そんな所で他の絵描き達と一緒に過ごすのだ。なかなか悪くはない話しだ。
「せっかくだし行ってみよっかな」
ようやく上がった右脚を振って筆の水をきり。最後に白を花びらに入れて仕上げにした。なかなか良く描けている。
「それがいい。行われるのは明日。道具はあっちで用意してあるし、それに初めての奴はタダだ」
道具が用意してあるというのは何とも嬉しい。この身体じゃ画材を持ち運ぶにも一苦労なのだ。
「ほら、此処に住所メモっとくぞ」
グレッグルが勝手にメモ帳と鉛筆をどこからか取り出すのを横目で見ながら。絵の具まみれでベタベタな脚から口を使って筆を外した。
「ほらよっ置いとくぜ」
「ありがと」
パソコンを弄るグレッグルは此方に見向きもせずに汚い文字が書かれた薄い紙を後を向きながら置いてきた。それをじっくりと眺める。覚えなければならない。
こんな薄いものを僕の脚で持てる筈がないのだ。投げ出された鉛筆がカラカラと音を立てて転がっている。
その内パソコンからは雌のものと思われる喘ぎ声が聞こえてきた。
「あのさ、いつも思うんだけどそれを大音量で流すの止めてくれない?」
「ククク、お前もおかしな奴だよな。そんなんでよく溜まんないよな」
グレッグルが此方に振り向き目障りな笑みを浮かべていた。
「君の頭がおかしなだけじゃないの」
「お前、口元のやつ取らないとエロく見えるぞ」
どうやら本当に頭がイかれているみたいだ。
汚れていない左脚で口を拭うと脚には白い絵の具がついていた。
奴はこれを見てどう思ったのだろうか。
「君、本当に変態だよね」
「ククク、俺はオマエみたいな可愛いやつなら雄でも構わないぜ。なんなら俺と寝てみるか?」
頭の中で何かが切れる音がした。
気がついたら、黒い眼差を使ってアイツの自由を奪っていた。それでもヘラヘラと笑うこいつは気持ちが悪い。
こんなへんな趣味がなければいい友人なのにな。心の底からため息が漏れた。





次の日、曇り空の元グレッグルに教えられた住所に行くと。一言で言うなれば怪しい場所だった。
一目見ただけではピンク色の雰囲気を醸し出しているのだが。特にそういう店だと確定させる証拠はなく。ただ単に怪しい。
グレッグルに教えられた住所を何度も思い返してみるのだが。やっぱりここに辿り着いてしまう。
"気持ちがいい所"と聞いていたので外にでも移動するのだろうか。
色々と疑問はあるのだが。それよりも早く大勢のひとと絵が描きたかった。
幼い子供のように興奮していて。もう自身の制御ができていないのが、はっきりと感じられた。
分かっているのに興奮を止められそうにない。
前脚は勝手に建物の扉を押してていた。鈍い低音が僕の敏感な耳に響いた。




狭くて暗い廊下を進み。なぜ、僕は地下にたどり着いたのだろうか。
重そうな扉の前で僕は初めて引き返そうか悩んだ。明らかに絵を描く環境ではない。
先ほどの興奮を押しのけて疑いがふつふつと沸きはじめる。
外に移動するという可能性も自分の中でだいぶ消えかけていた。
そもそも建物内に僕以外のポケモンがいる気がしない。それにグレッグルがどんなサイトを開いていたのかも僕自身、この目で見たわけではないのだ。
何年か前のイベントで日にちがたまたま重なっていたのをグレッグルが見間違えたのかもしれない。
あいつのことだ。そうゆうことはしょっちゅうある。
やっぱり帰ろう。家に帰って面倒くさいがパソコンの履歴を確認しよう。もし、間違っていたのなら次にグレッグルが来たときに咎めてやる。
パソコンの電源を消したらキャンバスに向かい今日は何を描こうか。
頭の中の白紙に命を吹き込む様を思い描いていく。
それだけでワクワクして、萎えかけた気持ちをどんどん膨らませていく。
頬が緩むのを感じた。これならあの馬鹿な友人のことも許せてしまいそうだ。
そのときだった。目の前の扉がうめき声を上げながら僕に迫ってくる。
自分の世界にのめり込んでいた僕にそれを避ける余裕はなかった。
よくわからないが頭の中で鈍い音がして視界が揺らいだ。妄想がシャボン玉を割るようにしてはじけた。
代わりに流れてきたのは耐え難いほどの鈍痛。
「い゛っ!?」
「きゃっ!?」
誰かの悲鳴が聞こえた。悲鳴を上げたいのは僕の方なのだが驚きと痛みで喉からは絞り出るような声しかでない。目の前がチカチカする。
思わず両脚で頭を抑えてうずくまる。堅く閉じた目の間から生暖かい感触がジワリと押し出された。
脚で抑えた部分が膨らまなかったことは唯一の幸いだ。
「ご、ごめんなさい!大丈夫?…」
扉を僕にぶつけた犯人らしきポケモンが謝罪してきた。
涙が溜まった目をうっすら開けると。驚いた表情のポケモンがいた。
僕より更に大きな垂れた耳。身体は茶色い体毛に覆われていて。更にその上の所々にフワフワした毛が生えている。確かミミロップとかいうポケモンだ。
そのフワフワが生えている両手を口元にもっていく仕草は。雌の雰囲気を醸し出している。
この建物内に自分以外にもポケモンがいたことの安堵と頭を強打したことの痛みでなんとも複雑な気持ちだった。
「うっ…いてて、大丈夫。なんとか平気です」
「本当にごめんなさい。まさかいるとは思わなかったから」
そう言ってさらに申し訳なさそうな顔をしてしまう。僕だって自分以外いないと思っていた位だから特別、怒りの感情は湧いてこなかった。
痛みを少しでも鎮めようと左脚を下ろして重心を安定させて。右脚だけで強打したところをさすってみた。
それが意味のないことを分かっていても何もしないよりかはましな気がした。
「もしかして腫れちゃった?」
不意にそんな声がしてミミロップの顔が近づいてきた。何をするのかと思ったら急に手を伸ばしてきて僕の頭に触れた。
右脚を押しのけてミミロップの手が頭を撫で始める。
「ふぇっ!?」
初対面の相手に何を考えているのだろうか。いくら悪いと思っていても。こんなことされるとは全くの予想外だ。
なんだか心地よくて恥ずかしくて。どんどん身体が熱くなっていく。
感度が鈍くなりぶつけたところに痛みをあまり感じなくなった。彼女に撫でられると本当に痛みを感じなくなりそうな気がして。そんな考えを持ち始めた自分に困った。
「え、えーと…本当に大丈夫ですから。腫れてないですから…」
「フフフ、そんなに緊張しなくていいのに」
そう言った彼女は撫でるのを止めてくれそうにない。主旨が変わっている気がする。
置かれていた手を慌てて前脚でゆっくり退かした。
その途端に残念そうな顔をする彼女に少しの恐怖を感じた。火照った身体を冷やすために何か他の話題を見つけださねば。
それは意外にもすぐに見つかった。
「此処って写生会をやるところですか?」
「あら?もしかしてお客さん?」
客というより参加者と言った方が適切だ。
「ええ、初めてなんですけど」
どうにか身体が冷め始めて痛みが戻ってきた。
「なら尚更ごめんなさい。せっかく来てくれたのに…」
また申し訳なさそうな顔をされてしった。これじゃあ自分が悪いような気がしてきた。本当に優しいポケモンだ。さっきの発言と行動は別にして。
「いえ、僕の方も誰かがいるなんて思ってませんでしたから」
痛む頭をさすりがら自虐的に笑って見せた。
ミミロップは一瞬、不思議そうな顔をしたが吊られて微笑んでくれた。
「ありがと。いろいろサービスしなきゃね」
「えっ?さ、サービス?何するんですか?」
「それはお楽しみ」
満面の笑みを浮かべるミミロップ。絵を描くにおいてのサービスというものが全く予想できなかった。
彼女の笑みはグレッグルと同じくらい何を考えているのか分からない。
「どうぞ、入って」
開けっ放しだった扉の奥に手を差し伸べられた。中の様子は暗くてよく見えない。
肌をなぞるように流れる生暖かい空気に得体の知れない恐怖を感じた。
疑問の念を大量に抱きながらも。ミミロップの笑顔をもう一度見て大丈夫だと自分に言い聞かせる。
黒い脚を一歩一歩前に出し。扉の向こうに吸い込まれるように中に入っていった。
このとき僕は愚かにも気づいていなかった。この闇が僕の黒よりもよりどす黒いことに。




部屋の中は異様な光景だった。廊下とはまるっきり違う固めの絨毯のような床。
色は暗くてよく見えないが。それが僕の肉球をザラザラと撫でた。部屋の外で感じた生暖かさは此処では完璧な熱となっている。
しかもそれがただ暑いのとは違うことは容易に分かった。息を吸い込む度に肺が焦がされる。更には肺に溜まった熱は身体をあぶるようにじっくりと広がっていく。目の前が少しぼやけてきた。まるでのぼせてしまったみたいだ。
瞼が重くなってきたところで頭を振って何とか意識を安定させた。
怪しい部屋を見渡すと壁には蝋燭のような弱々しい光を放つ電球が何個か取りつけてある。その今にも消えそうな光は僕の影をゆらゆらと映し出していた。
画材などは一切なく。代わりといってはおかしいが。部屋のど真ん中にいい値段になりそうなベッドがあった。枕もないし身体に掛ける物もない。
寝るための物ではないのだろうか。そもそも会場、あるいは集合場所にこんな物があるのは不自然ではないだろうか。流石にのろまな僕でも異様な雰囲気を察知し始めた。
「キュウコン姐、フーディン。お客さんだよー」
背中で声がした。ハッと振り返るとミミロップも部屋の中に入っていた。片手で扉のノブを掴み手前に引くと。
扉はさっきのような呻き声は起てずに静かに元の位置にはまった。外からの光が遮断され。あの虫の息だった電球が瞬く間に生気を取り戻す。
扉を閉められたらどうすることもできない。
「あら?ミミロップ。外の空気を吸いに行ったんじゃなかったの?」
今度は不意に前から声がした。ずいぶんと色っぽい音だ。思わず正面を向き直すとベッド越しにポケモンが二匹現れていた。
姐とつけられていたキュウコンは僕と同じ四足で金色の体毛。スラッとした身体つきは口の先から九本の尻尾のまで続いている。
もう一匹のフーディンはミミロップと同じで二足でたっている。茶色っぽい身体。顔には雄より短いとされる髭が生えていて。エスパータイプ独特の知的な感じを醸し出していた。
フーディン常にスプーンを持ち歩いているものだと思っていたが手には何も握られていない。
二匹の奥にある扉が静かに音を起てて閉じた。どうやらあそこにも扉があったらしい。
本来、夜に本来の力を発揮する僕の目は。部屋が夜みたいに暗いのにも関わらず。緊張でなんの役にも立たないガラス玉同様になっていた。
「キュウコン。お客さんがいらっしゃったのだから。いくらミミロップでも外の空気なんて吸ってる場合じゃないことくらい分かりますよ」
「それもそうねぇ」
皮肉を言う二匹に。何よそれ。と後ろから不服の声が漏れた。それにしてもフーディンまで何故、客と呼ぶのだろう。
声からすると此処にいる僕以外ポケモンは雌みたいだ。
フーディンは随分とお淑やかな口調。キュウコンは炎タイプだからだろうか熱っぽい声だ。さっきの声の持ち主もキュウコンだろう。
この三匹は知り合いのようだ。全く初対面な僕はこのやりとりを唖然と眺めるしかなかった。
すぐにゆっくりと二匹がこちらに近づいてきた。キュウコンの尻尾はそれぞれが不規則に揺れ。逆にそれが優雅に思えた。
僕の目の前に二匹が立ち。背中にはミミロップ。完全に囲まれる形になってしまった。
四方八方から漂う雌の香りに本能が疼いてしまう。
嗚呼。この三匹を絵にしたらどんな名画よりもきっと絵になる。
寧ろこの三匹が画家なのだ。それは美しい絵を描くのだろう。
「こんにちは。アナタ此処に来るのは初めて?」
「…ふぁ?あ、はい!」
少し幽体離脱していたかもしれない。キュウコンの呼びかけによってフワンテに持っていかれそうになっていた魂が慌てて戻ってきてくれた。
当然、反応が遅れる訳で気がついたら変な声が出ていた。
「緊張してるの?フフフ、可愛いお客さん」
「かわいい?ぼ、僕がですか?」
「そうよ。貴方以外に誰がいるの?」
雄である自分に適切な言葉であると信じたくはないが。勝手に顔が熱くなる。
照れくさいながらもグレッグルではなく。目の前のキュウコンが言うのなら満更でもなかった。
しかし、そんなこと表立って言えるわけがない。
「・・・いますよ」
「えっ?誰かな?」
「貴女たちです・・・」
苦し紛れだが確かに的を射ている。とっさに出た答えながらも中々の出来だ。
その直後にそれがどんなに恥ずかしい台詞なのか気がついた。
もう体温は上がらず。代わりに頭がピリピリと痒くなった。
たまらず右前脚で掻くとぶつけたところに触れてしまい身体に力が入ってしまう。
独りで暴れている僕を見て目に入るキュウコンもそうだが周りからも息を殺した笑いが起こっていた。
穴があったら入りたい。とはまさにこういうときに使うのだろう。
「本当に可愛い仔だわ」
そう声がして僕の身体は何か温かい物に包まれた。穴の代わりに入ったのはキュウコンの熱い尻尾の中だった。
頬を通り、脚を通り、耳の間を通り。
左右から伸ばされた尻尾は僕の背中をキュウコンの方に向かって引き寄せる。それに逆らえなかった僕はキュウコンの胸にもたれかかるようにくっ付いてしまう。
一段と強くなった雌の香りが鼻を通り脳に衝撃が走った。頭がおかしくなりそうだ。
「なっ!?」
キュウコンには羞恥心というものがないのだろうか。知り合いがいる目の前で大胆にも初対面である僕を抱きしめる形になっている。
僕は恥ずかしくてすぐにでも大爆発を起こしそうだ。抵抗しようにも尻尾の力が以外にも強く中々動けない。
「大丈夫。すぐによくなるわ」
必死にもがいている僕の心境を見据えてなのか。その口調は落ち着いていた。
それにしても温かい。炎タイプだから僕よりも体温が高めなのだろう。
彼女の胸に顔を埋めると心臓の音が聞こえる。トクン、トクンと均等な間隔で流れる優しい音が耳に心地良かった。
気がついたら落ち着いていた。あんなに恥ずかしかったのに身体に力が入っていない。それどころかキュウコンに完全に身を任せている。まるで母に甘える子供のようだ。
背中の圧迫感がなくなった。キュウコンの尻尾から開放されたのだ。さっき暑く感じていた部屋の空気が少し涼しく感じられた。どれ程あの中が熱かったのだろうか。
「落ち着いた?」
上から声がして見上げるとキュウコンの顔が目の前数センチのところにあった。
尻尾からは開放されていたが僕自身はまだ彼女の胸に寄りかかっている。
「あっ・・・ごめんなさい・・・」
謝ってすぐに後に退いた。心臓の鼓動はキュウコンのそれとは全く違い。物凄い速さで血を送り出している。
耳に入るが心地のいいものではない。寧ろ不快だった。
「あら?何であなたが謝るの?わたしが勝手にやったことよ」
「そう言われましても・・・」
「フフ、ずいぶん紳士なのね」
そういう訳ではでは多分ないと思うのだが。とにかく恥ずかしい。
「キュウコン姐ずるいよ!」
「ミミロップの言う通りです!」
そんな僕の気持ちなんて知らないミミロップとフーディンが訳の分からない不服を唱えた。
何がずるいんだか全く理解できない。というか僕の囲んで謎の会話をしないでほしい。
もしかして皆さん痴女ですか。そんなこと口が裂けても訊けるわけがない。
「ほらほら、ブラッキー君が呆れてるわよ。そろそろ始めましょう」
やっと本来の目的に移るみたいだ。まだ2人はブツブツと文句を言っている。
ブラッキー君などと呼ばれているところだけ見れば馴染めたのだろうか。絵を描くのに今までで一番疲れる。いや、まだ描き始めてもいない。
とにかく外の空気が吸いたい。色々と混ざりすぎて違う意味でも頭が痛くなってきた。重たい溜息が思わず出てしまう。
「まったく、抜け駆けしたのですから私達から先にやらせてもらいますよ」
「フーディンにさんせーい」
「仕方ないわね。わたしは最後でいいわよ」
いったい今度は何を始めるのだろうか。それを訊ねようとしたとき脚が床から離れて身体が浮いた。
ただ、それが実際に浮いているのではなく後ろにいたミミロップに脇を捕まれて持ち上げられていることはすぐに分かった。
「なっ!?何するんですか!?」
驚いて声を上げるが。やはり僕の気持ちはそっちのけ。
今度はその器用な腕を使い僕を横に倒して抱きかかえられた。俗に言うお姫様抱っこだ。
「や、やめてください!」
「キュウコン姐にあんなことされて喜んでたのに。アタシじゃ不満?」
「そ、そういう訳ではないですけど…」
キュウコンに完全に甘えていた自分を思い出して羞恥心が更に増した。
ミミロップはそれを見透かすように僕を見つめてくる。その悪戯っぽい瞳に思わず目を逸らした。
大体、キュウコンはやりすぎだとしても僕を落ち着かせる為にあんなことをしてくれたんだと思う。
じゃあ、ミミロップの今の行動は?。
全くもって画家としての行動とは関係がない。
頭の中で本格的に危険信号が唸りを上げた。
「降ろしてください!」
「言われなくてもすぐに降ろすわ、意外に重いしね」
そう言うとミミロップは僕を抱きかかえたままベッドに向かって歩き出した。
それに合わせて身体が上下に揺れる。
何回か揺れたところで薄暗い天井を見つめながら身体かミミロップから離れていった。
もう一度だけ跳ねると柔らかい感触が背中を包んだ。それは僕がベッドに投げられたことを表していた。
ベッドは中々冷たく。気温の違いのせいか背中から後ろ脚の先まで痺れるような感覚が走った。
僕が被写体になれということだろうか。
そんな考えも直後にベッドに乗り、僕の前脚をがっちり掴んだミミロップにより塵と化す。
すぐにキュウコンもフーディンもきた。左にキュウコン。右にフーディン。そしてあろうことか僕の上にはミミロップ。
完璧に絵を描く気はなさそうだ。
「ちょっと、何を!?」
「何って、いいことに決まってるじゃない」
背筋が更に冷たくなった。
「そんなことしないでください!」
「そんなこと言って本当は早くやって欲しいんですよね?」
「僕はそんな変態じゃない!」
フーディンの問いに思わず声を荒げてしまう。そのとたんに目の前のミミロップの表情が歪んだ。
「じゃあ、何のために此処に来たの?」
「何って、写生会に決まってるじゃないですか!」
「あってるじゃない」
「こんな状況でどうやって絵を描くって言うんですか!?」
「絵?」
三匹がそろって声を上げた。何かおかしなことを言っただろうか。僕はこの中で一番まともな思考を持っているはずだ。
「もしかしてあなた絵を描きに来たの?」
キュウコンが僕をなだめるように言った。
「当たり前でしょ!だって写生会ですよね?」
そう言った瞬間、左右から笑い声が聞こえてきた。フーディンは口元に手を当ててこんな状況下でもお淑やかだ。
「何かおかしなこといいました?…」
いかにも馬鹿にしたように笑うキュウコンとフーディンに頭に不安が過ぎった。目の前のミミロップは僕と同じく状況を理解してないみたいだ。
「どうゆう勘違いをしたのか知らないけど。わたし達のしゃせい会はエッチするところよ」
「へっ?だって道具も用意してあるって…」
「だから、それは大人の玩具のこと。此処はあなたの精子を搾り取る会なの。絵を描くんじゃなくて精子のほう。分かった?」
その言葉を信じたくはなかった。だが、そう確定させる証拠は十分すぎるほどそろっている。
今までの彼女達の行動、言動。部屋の環境。そしてあの変態グレッグルからの紹介。
此処は、写生会ならぬ射精会の会場。つまりはただの風俗店。
ここまでされてようやく事態に気がついた自分は相当な間抜けだ。
それにしても、グレッグルと話していた内容はこうまで違うのに、あそこまで会話が成立するのはもはや奇跡ではないだろうか。
「知的に見えて意外とおばかさんなのね」
「私はホームページにちゃんとした字で書きましたよ。どう間違えたんですか」
「どうでもいいけど。とにかくヤッていいんでしょ?」
馬鹿にされる恥ずかしさより恐怖の方が先行した。悪寒が全身を駆け巡る。
思わず掴まれている前脚に力が入ってしまう。それでもミミロップは放してくれない。
「放してください。勘違いなら帰ります!」
「いいじゃない。どうせ初めてだからタダだし」
「そ、そういう問題じゃないでしょ!」
さっきまで美しく見えていた彼女達が悪魔のようにみえた。
恐怖に塗りつぶされた僕の身体は本格的に抵抗を開始した。
「嫌だ!放せっ!」
「きゃっ!?ちょっと、大人しくしてよ!」
前脚を力任せに振り回すが驚くべきことに放さない。
いきなりフーディンの顔が目の前に現れた。その目は怪しい輝きを放っていた。
「かなしばり!」
その台詞と同時に目の輝きが一段と強くなった。それを凝視していた僕は途端に身体の自由がきかなくなってしまった。
あんなに暴れていた脚なのに。命令しても動こうとしない。まるで身体が石になってしまった感覚だ。
「これで大人しくなりましたよ。次は私ですからねミミロップ」
「ナイス!フーディン」
「なっ…この・・・やめろ・・・」
辛うじて動く口で静止を求めるがミミロップは手を放してするすると下の方にさがっていった。僕のような四足のポケモンが仰向けにされると急所という急所が全部丸出しになってしまう。
自由になったというのにやはり前脚は動こうとしない。
これからどんなことをされるのか。そんなことは分かりきっている。差詰め僕は被写体ならぬ被射体なのだ。笑えない。
グレッグルのあの笑みを思い出して怒りが込み上げてきた。
「そんなに怖い顔しないでよ」
ミミロップが僕の股を探りながら言った。グレッグルを思い出したせいで顔が怖くなっているらしい。そのままの顔で睨めつけてやった。
「そんなに睨んだって可愛いだけだよ」
「うるさい。この…変態…」
「こんな所に来るキミも十分変態だけどね」
無駄な反論ですら常に一枚先を行かれてしまう。だが、自分に変態のレッテルを貼られることだけは勘弁ならない。
「ぼ、僕は変態じゃない。友達が此処のことを…」
「ふーん、そうやって友達のせいにするんだ」
「ち、ちが…」
「そんな悪い仔にはお仕置きよ…それっ!」
「ひぁっ!?」
股を探っていた手がある一点を握った。その瞬間身体に衝撃が走る。
あまりの衝撃に情けない声を上げてしまった。
雄の象徴であるその蕾はミミロップの手の中で確かに熱を帯び始めていた。
「すごい反応。もしかしなくてもこんなことされるの初めてだよね」
「う、うるさい」
「あんまり大きい声は出してないんだけどね。もしかしてオナニーとかもしないの?」
「僕はそんなに飢えてない!」
「駄目だよオナニーくらいしなきゃ体に悪いよ。でも大丈夫。今日は今までの分もいっぱい出させてあげるから」
何が大丈夫なのか訳の分からない台詞を吐きながらミミロップは手を上下に動かし始めた。
「…んっ…あ」
滅多にしない自慰よりも強い刺激がまだ蕾であるペニスを包み込んだ。
思わず声が漏れた。
他人から与えられる興奮や刺激に蕾は意志とは関係なく肉の棒へと変わっていく。
皮が剥けてピンク色のペニスが露わになってしまった。毛も生えていない粘膜状のそれは外気を冷たく感じ取った。
「気持ちいいでしょ?」
「やっ…はっ…あぁ」
あまりの刺激にその問いにこたえる余裕がなかった。出てくるのは情けない喘ぎ声。
そもそも自慰経験すら少ない僕にそんな衝撃の耐性はなく。更に相手がプロなのだから声を出して快楽を逃がさなければ頭がどうにかなりそうだった。
動かない筈の後脚はピクリピクリと痙攣を起こしたように震えている。
早くもペニスから液体のような物が出たのを感じた。
「もう我慢汁がでてきたよ。そんなに感じてくれるとアタシも嬉しいな」
そう言うとワザとらしく音を立てながらさらにペニスを扱くペースをあげてくる。
「はっ…んぁ…や…やめてぇ…」
「フフ、女の子みたい………そうだ、フーディン」
「はい?」
ミミロップは手を動かしながらフーディンに耳打ちをし始めた。
だが、僕はそんなことを気にしている場合ではなかった。打ち寄せる快楽の波に呑み込まれないように歯を食いしばって耐えていた。
卑猥な音が部屋に響く。
「…それは面白そうですね。探してきますね」
「よろしくね」
妖しい笑みを浮かべながらフーディンが視界から消えた。
「わたしが最後なんだからあんまりひどいことしないでよね」
「保障はしないわ」
蚊帳の外だったキュウコンが不満そうに口を開いた。招かれざる客といってもいい僕は雌の慰み物でしかないらしい。
段々、刺激がペニスの奥の方に集まってきた。それに合わせて喘ぎ声も制御が効かなくなってきた。
「んぁあっあ!……やぁっ」
「もうイッちゃいそう?」
「だめっ…も、もう…」
ついに波に呑み込まれそうになったときだった。突然、刺激が止まり絶頂を免れた。
あんなに嫌だと叫んでいたのに。いざ止められてしまうと何かが物足りなくて何とも不快な気分だった。
「まだイッちゃだめだよ」
「あ…はぁっ…はぁっ」
ミミロップが意地らしく笑っていた。やめて欲しいと望んでいたのに。それなのに心のどこかで快楽を求めている自分がいた。
案外、僕もグレッグルとそこまで変わらないのかもしれない。
「ありましたよミミロップ」
「ホント!?」
「こんなとこで嘘をついてどうするんですか。はい」
「ありがとフーディン」
消えたフーディンが戻ってきてミミロップの右手に何かを手渡した。
アダルトグッズか何かかと思ったがそれは僕にも見覚えがある物だった。いや、寧ろ毎日目にしている。
ミミロップの手にはしっかりと筆が握られていた。
「キミは絵を描きにきたんでしょ?じゃあ絵の具が必要だよね」
ペニスの裏に筆を当てて上に向かって動かした。
「ひゃっん!」
「だからまずはキミの白い絵の具が欲しいな」
そのまま肉が割れている辺りで筆をくすぐるように動かしてくる。その、しなやかな毛先の一本一本からもどかしいほどの小さな快感があたえられる。
それだけでも爆発寸前だったペニスには十分すぎる刺激だった。
「だ、やっ…もう…出ちゃ…んあぁぁぁぁっ!!」
身体のそこから湧き上がる熱はついに爆発を起こした。腰が無くなるような感覚を覚え。動かないはずの背中がピンと反り返る。ある一点を刺激されただけだというのに。尻尾の先から耳の先まで快楽によりピリピリと震えていた。
ペニスの先端からは抑えられていた欲望が一気に湧き出し。ミミロップの顔や僕の身体、当然ながら筆を汚した。
此処に来る前に期待していた”気持ちいい”とは別の物理的な快楽が脳を満たしていた。
「うわぁすごい…いっぱい出たね」
「はっ…はぁっ…ん」
必死で息を整えようとする僕を無視してミミロップは歓喜の声を上げていた。自分の顔に付いた絵の具を手ですくい口に運ぶ。
あんなものをよく口の中にいれようと思えるものだ。
それに加え追い討ちをかけるように腹に付いていた絵の具を筆を滑らせて僕の身体に塗りつけてくる。くすぐったさと一緒に生温かい液体が毛を通り肌に伝わってきた。
いつもは美しく見える黒と白のコントラストが今日ばかりは色あせて見える。
不意にフーディンとミミロップが笑い始めた。
「フフフ、やっぱり変態ね」
「雄なんてみんなそんなものですよ」
そんなことを言われては黙ってられない。
「無理やりこんなことして、そんなこと言われる筋合いはない!」
「無理やり…実はね、途中からフーディンに金縛りは解いてもらってたのよ」
「えっ!?」
そんなことがあるはずがない。恐る恐る前脚に力を入れる。動かないはず脚はゆっくりと確かに動いた。
僕は自分の意思であんなことをされてよがっていたのだ。変態という言葉が胸に痛いほど突き刺さった。
「じゃあ次は」
「放せ!」
羞恥心と恐怖に駆られてついにミミロップを蹴り飛ばした。
「ぎゃっ!?」
断末魔のような叫び声を上げてミミロップがベッドから転げ落ちる。
恥ずかしくて、悔しくて。もう何が何だか分からない。
無我夢中で身体を起こしてしっかりとベッドの感触を脚に受ける。ペニスを肥大化させたまま思い切り脚を曲げて勢い良く伸ばした。部屋の中の空気を裂いて飛躍した。
見事に入り口のドアに着地。そのまま後ろ足で立ち、鈍く光を反射する扉のノブを前脚で挟んだ。
そのまま回して前に一気に体重を前にかける。これで扉は開く。こんな拷問部屋のようなところとはおさらばだ。
頭をぶつけたとき同様、またうめき声を上げて開く。
筈だった。
しかし、扉はうめき声どころか、うんともすんとも言わない。
回す方を間違えたのかと思いノブを逆に回すがやはり動かない。鍵も付いている様子はないそれならミミロップがやったように開くはずだった。
そこまで僕は力が弱かっただろうか。
「どうするのよ、ブラッキー君が怒っちゃったじゃない」
「いてて、ちょっとやりすぎちゃった」
「自業自得ですよ。まあ次は私の番ですけどね」
後を振り向くとフーディンが近づいてきていた。後ろではミミロップが頭を抱えている。その隣に心配そうなキュウコンがいた。
「そんな精液塗れで外には出れませんよ」
「ぼ、僕に近づくな!くそっ!なんで開かないんだ」
「それは私が抑えてるからに決まってるじゃないですか」
上品に微笑むフーディンの目はまったく笑っていない。こいつが得意のエスパーで扉を閉めているのだ。
「もういいだろ、此処から出してくれ!」
「まだ私達は満足してませんよ」
「そんなこと知るか!そっちがその気ならこっちだって本気で怒るぞ!」
「あら、雌に手を出すんですか?しかも、ミミロップに苛められてあんなによがっていたくせに?」
「……それは…」
それを指摘されると恥ずかしくて仕方がなかった。落ち着き始めた体温がまた上昇してくる。俯いてしまった。
「隙ありです」
その言葉にハッとフーディンを見てしまった。その目が再び輝いている。
しまった、と思ったときには既に遅かった。身体が硬直した。
「大丈夫ですよ。かなしばりじゃないですから。自分で固まっちゃうなんて本当に可愛いですね」
「えっ…」
身体を動かすとフーディンが言う通り自由に動く。だがそれだけでは安心できない。何かをしたことは事実だ。
最高クラスのエスパーである彼女の技は幸い僕の前では全くの無力だ。
「あなたが使う技は僕には効きませんよ」
キッと睨めつけて彼女の行動に備えた。それでもフーディンは余裕の笑顔だ。
「普通は無力化されてしまいますが今のあなたにならこんな風に効きますよ」
フーディンが指を動かすと僕の四足は床の感覚を失った。あろうことか今度こそ宙に浮いている。
「大人しくベッドに戻ってください」
「な、なんだこれ!?」
そのまま、座っているミミロップの頭を通り越してベッドの上にまたしても仰向けに降ろされた。シーツに染み込んだ汗が背中にも染みて気持ちが悪い。辛うじて後脚だけは固く閉じた。
それにしてもおかしい。常識的に考えてエスパー技が悪タイプである僕に効くはずがない。
「ビックリしました?さっき私の目を見たときにミラクルアイという技をかけました。この技が決まれば悪タイプにエスパータイプの技が無効化されなくなるんですよ」
それを聞いて愕然とした。目が光ったときにかけられたに違いない。
悪タイプだけを標的するような技が何故に存在するのだろうか。確かに悪と付けばイメージがわるいだろうがそこまで軽蔑しなくてもいいじゃないか。
「ほらね、こんなことも出来ますよ」
フーディンが自慢げに言うと僕の後脚は無意識に開かれる。その結果いまだに熱が衰えないペニスをまた、いつの間にか復活したミミロップを合わせて三匹の目の前へと晒すことになった。
「わぁああ!やめろぉぉぉ!」
「暴れないでくださいって」
思い切り閉じようとした脚は強力なフーディンの力で閊え棒があるかのように動かない。それならば、前脚だけでもと思ったが既に全身に力をかけられているらしくすぐに先ほど同様、拘束状態だ。
「ふう、意外に力強くて拘束するのも楽じゃありません」
「もとはと言えばミミロップのせいよ」
「う、ごめんなさい」
そんな三匹の視線を浴びるペニスは瞬く間に再び自己主張を始める。
こんな筈じゃないのに。僕はそんな変態じゃないのに。
今まで知らなかった自分がこんな形で浮き彫りになる。
「あれ?もしかして見られて感じてます?」
「ドMなんだね」
最後の追撃とばかりにフーディンとミミロップに非難を浴びせられた。それで、もう心の中にある何かが音を起てて崩れた。
目頭が熱くなり涙が湧き水のように溢れ出す。止めようとするも止まらず、おまけに嗚咽まで漏れ始めた。
雌に玩具のような扱いを受けているにも関わらず喜んでいる自分が。嫌で、悔しくて、悲しくて。
もう自分でもどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
視界が歪む中フーディンが右手を伸ばして僕の涙を一つすくった。一瞬、身を強張らせてしまう。
毛が吸収しきれなかった涙は頬には流れず、万有引力の法則に従い目の脇に落ちる。
「大丈夫ですよ、涙なんて出なくなるくらい気持ちよくしてあげますよ」
その台詞は僕に絶望しか与えなかった。どこも大丈夫じゃない全てがイかれている。
涙をすくった指が這うようにして腹に到着した。むず痒い快感に身体を悶えることも許されない。
そこにあった精液を指に絡め取ると更に下にさがる。ついにはペニスをも通り越して。たどり着いたのは普段は排泄のために機能しているところだった。
「知ってますか。前立腺という器官を刺激すると雄でも雌と同じ位の快感を得られるんですよ。お尻の中からそれを刺激するのが一番簡単な方法なんです」
そう言うと最も肉が柔らかいであろうそこに精液まみれの指があてられた。
動けない身体は恐怖で震えている。
「最初は痛いかもしれませんが慣れれば大丈夫ですから」
「ぁ…お願い…それだけは…やめ」
最後まで言う前にそこに異物が侵入してきた。本来の機能とは正反対のことを強要されたそこは悲鳴を上げる。快楽とはかけ離れた激痛が腰に襲い掛かり呼吸もままならない。あまりの痛みに涙も止まってしまった。
「がっ…い…たいよぉ」
「力を抜いてください。動かしますよ」
そんな苦しい状況にも関わらず異物は容赦なく肉壁を掻き分けた。
異物の進入を阻止しようと勝手に液体などが分泌される。それは逆効果で指を動き易くするための潤滑油にしかならなかった。
「前立腺は此処らへんですか?」
丁度動きやすくなった肉の中で指がペニス側に曲げられた。その瞬間痛みとは違う不思議な感じが腰を包んだ。
「ひゃん!」
無意識に声が出てしまう。
「ビンゴ、此処ですね」
その反応をフーディンは見逃さなかった。こんどはそこを重点てきになぞるように撫でる。
肉を触る指がはっきりと分かる。
「ひゃっ!…何これ…」
「フフフ、慣れるのが早いですね。ではこっちも開発しましょうか」
直接刺激されている前立腺とかいう器官ではなく。今度は胸に突然刺激がながれた。
「んぁぁああ!」
「体内からエスパー技で操ってるんですよ。その内、オナニーするときもおっぱいでもイけるようになりますよ。そうだ、胸を押さえる位なら許してあげましょう」
前脚の拘束が外れた。言われたとおりすぐに胸を押さえつけるが身体の中からくるそれには意味をなさなかった。気色の悪いことに身体の中まで犯されている。
しかし、生き物が蠢くような感覚に悦んだ胸は乳首がピンと立ち、雌のように感じていた。
「こっちも忘れていませんか?」
「うぁああぁぁ!お、おかしくなぁぁぁぁ!」
フーディンが指の動きを再開させると身体が潰れそうになるほどの快楽が押し寄せた。ペニスには一切触れていないというのに欲を吐き出そうとビクビク震えていた。
ミミロップにされたものより何十倍もありそうな衝撃は身体の中に収まりそうになかった。
「やだぁああ!壊れ…!んあぁぁ!!」
胸を思い切り押さえつけながらありえない程の絶頂に達した。目の前がチカチカする。身体がバラバラになるんじゃないかと思うくらいそれは長くそして深く続いた。
それなのにペニスは透明の液体をダラダラ出すだけであれほどの絶頂にも関わらず精子は一滴も漏れていない。しかし、まだ指を抜いてくれない。
「随分気に入ったみたいじゃないですか。これがドライオーガズムです。射精を行わないので雌のように何回でもイけちゃうんですよ。まあ、生き物のほとんどはベースが雌ですから雄でもそれを開発してあげれば」
「フーディン五月蝿い…」
キュウコンがフーディンを制止した。その声は切羽詰まってるように聞こえた。正直、僕も痙攣したように絶頂の余韻に浸っていたのでフーディンの説明など殆ど聞こえていなかった。
「もしかしてキュウコン濡れてます?」
「その仔を見てたら久しぶりに我慢ができなくなっちゃってね」
「じゃあ交代しますか?」
「いや、どうせならみんなで気持ちよくなりましょう」
キュウコンが僕の上に飛び乗る。ベッドが微かに悲鳴をあげた。
下からだと当然キュウコンの秘所が見える。初めてみるそれは湿り気を帯びて妖しく輝いていた。
精子を吐き出してないしてないペニスが痛いほどに膨れ上がった。
「ブラッキー君もドライなんたらだったからまだいけるでしょ?」
「ドライオーガズムです。ちゃんと覚えてください」
フーディンの反論をよそに微笑みかけてくるキュウコンに僕は無言で頷いていた。
諦めた。どうせ暴れても無理やり犯されるのだ。それならば無理なく気持ちよくなったほうがいい。今日だけなら変態でも構わなかった。
キュウコンに見つめられると妙に落ち着く。その顔つきや大人びた態度のせいだろうか。
「ミミロップ。最初はわたしがキスするから口を離したら交代してね」
「りょうかーい」
「フーディンはまたドライ何とかを続けてね。あと胸の方も忘れずに」
「はぁ…分かりました」
「じゃあ、わたしも準備万端だからいくよブラッキー君…」
「はい…」
情けなく返事をするしかなかった。完全にキュウコンの虜になっていた。
キュウコンの顔がゆっくりと近づいてくる。口同士が触れると歯の間からキュウコンの熱い舌が滑り込んでくる。それに応えたくて必死に舌を絡ませた。
目を瞑り集中して更に自らの興奮を高める。耳に入るのはくぐもった互いの呼吸だけだ。
互いの唾液を交換していると突然ペニスの先端に熱を感じた。それは先っぽから呑み込むようにペニスを包み込んでいく。
キュウコンが口を離すと混ざり合った唾液が部屋の明かりを反射してすぐに切れた。
「ん…はぁ…どう?わたしの中は」
見るとキュウコンの股間にペニスは跡形もなく喰われていた。
「はっ…ぁ…あったかくて、はっ…気持ち…いいです…」
気持ちのいいどころじゃない。熱を帯びた壁は容赦なくペニスに絡み付いてくる。キュウコンが呼吸をするだけで圧迫されたり緩んだりでそれだけでも射精してしまいそうだった。
「動くわよ…」
キュウコンのそれが合図として三匹が動き出した。
ミミロップには頭を押さえつけられて口を犯され。フーディンには身体の内側を犯され。キュウコンには雄の象徴であるぺニスを犯され。
叫び声か喘ぎ声か分からないものをただ、ミミロップの口の中に吐き出していた。
「んっ…あっ、君のやつも…ああっ、とっても、んぁ…気持ち良いわよ…」
「んぐっ、ふぁっ…ふぁぁぁぁっっ!!」
「むぐっ…はぁ…くちゅ、美味しいよっ…」
「皆さん夢中ですね。私も…はっ…そろそろ我慢ができなくなってきました」
快楽という快楽が脳を揺らす。
もはや僕の身体は全身が性感帯になっていた。部屋中に響く水音ですら耳を快感で揺らした。
「キ、キュウコン姐…くちゅ、んふぁ…アタシ、もう我慢できな…ふぁ…」
「私も…くっ…限界のようです。キュウコンそろそろお願いします…ぁ…」
「はっ…分かったわ…ん…み、みんなで気持ちよく…なりましょ…」
二匹がキュウコンに甘えた声を出す。それに応えたキュウコンは妖艶に揺れていた尻尾を二本それぞれの股間に向かわせた。
「あっ…キュウコン姐の尻尾、ふぁ…きもち…んあっ…んっ、んふぅ……んっっっ!…」
「あ…さすが、です…ね…すごくいい、アッぁん!」
キュウコンの腰を振る速さは増し。身体の内側を犯す力は更にのたうちまわる。
ミミロップは更に激しく口内に舌を絡ませて僕の呼吸もままならない。
全てが絶頂に向かって加速する。叩きつけられる快感は身体の自由を再び奪う。
目の前が白黒してこれが現実かどうかも分からない。しかし、身体中をかけめぐるこれは明らかに夢ではなかった。
「あっ…もうっ、ああっ!…ダメ…イくぅうぁアぁぁ!!!」
「キュウコ…姐、ッア!…アタシも、あっ!アッぁアァァァ!!!」
「私も、っは…もう…ふぁっ!んぁああああ!」
ペニスを包む肉壁がグシャリと潰れる。身体の中の指が一点をぎゅっと押さえつけた。胸の中で得体の知れないものがむさぼるように動く。唯一助かったといえばミミロップが口を離してくれたことだ。
果てた三匹の秘所から噴射した液体にまみれながら。こんな快楽は二度と味わえないだろうと思える程の絶頂に僕も導かれた。
「あっっ、ああッ!ぁあアぁアアアッ!!」
雷を落とされたような衝撃的な快感と共に、ペニスはキュウコンの中で大噴火を起こした。
ガクガクと全身を震わせながら己の欲を流し続ける。
精子をキュウコンに吸われる中、幸福感に包まれて僕の五感は消滅していく。最後に聞こえたのは自分の荒い呼吸だった。


日の光が瞼越しに目を焼く。重たい睡魔を抱えながら目を開けるとそこは見慣れた天井だった。今、僕は自分の寝慣れたベッドで寝ているのだ。
「起きたか」
不意に声がして身体を起こす。グレッグルがあの気色の悪い笑みを浮かべながら立っていた。
「ククク、昨日は随分と楽しかったみたいじゃないか」
「なにが……っ!!」
それを聞いて頭の中に昨日の光景が蘇ってくる。身体にベッタリと張り付いた毛と雌の匂いがそれを裏付けていた。
今日くらいは変態でいい、冷静になった今思えば冗談じゃない。
「キミのせいで僕がどんなに酷い目に合ったか!……」
「そんな恐い顔すんなよ。お前のことを誰がここまで運んできてやったと思ってるんだ?」
そんなことを訊く位だからこいつに運ばれたことは明白だ。この変態にも醜態を晒していたのだ。
「…君だろ」
「ご名答。へたれなブラッキー君が心配になってな、あの住所にいったら雌達に囲まれてお前が気絶してたんだよ。それに困ってたから俺が引き取ってきたわけ。感謝してくれよ。俺よりもでかいお前を運ぶの大変だったんだからな」
随分と自慢げに喋るこいつに沸々と怒りが湧いてくる。全ての元凶はこいつだ。
「あの美人のキュウコンから聞いたんだけどさ、お前馬鹿じゃねえの?俺が芸術のサイトなんて見るわけないだろ。キュウコンも驚いたらしいが俺も驚いたよ。まあ、あんなに俺のことをおかしい奴呼ばわりするお前が、あんなにノリノリだったから変だとは思ったけどよ」
下品に笑うこいつに技を繰り出すために力を溜める。
「久しぶりに可愛い仔だったからやりすぎちゃったって反省してたぞ、それとまた来てくれだってさ。そんときは俺も一緒に行くからな。あと、お前の可愛い寝顔みてたら俺もムラムラして思わず一発抜いちまったぜ、グフフフ」
それを聞いた瞬間、頭の中で何かが爆発した。
「グレッグル…」
「ん?なんだ礼なら要らないぞ。あえて言うならお前と一回寝てみたい。ケツでも胸でも感じるように開発されただろ?ククク」
「くろいまなざしぃぃぃ!!!」
昨日と今までの分もまとめてグレッグルに技をかけるとそのまま死んだように倒れた。結構な時間は動けないだろう。微かにその笑みが揺らいだ。
まるで蛇に睨まれたなんちゃらの状態だ。
ベッドから降りて強い日差しを受ける窓際にあいつを蹴り飛ばした。むぎゅ、とか声を上げて日差しにストライク。
「お、おい俺は乾燥肌なんだ、こんなとこにいたら死んじまうよ」
「そう、それは楽しみだ。僕はシャワーでも浴びて回復してくるよ」
シャワールームに向かう中グレッグルの悲痛な叫び声がきこえてくる。いい気味だ。ギリギリまで乾燥させてそれから水をかければ元に戻るだろう。別に本気で殺すつもりはない。
グレッグルの行言った通り”気持ちがいい所”に間違いはなかった。また来てくれ、か。それならば有料でももう一回ぐらい行ってみようかな。

勿論グレッグルには内緒で。


気づかぬ間にやはり僕は変態になっていた。
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あとがき


最初はとりあえず四足歩行+白とのギャップ(液的な意味で)を持たせたくてとりあえず黒色のポケモンを使いたかったんですが。ヘルガーとかグラエナだと肝心なお腹の毛が黒じゃないと言うことでブラッキーを使わせて頂きました。
さすがブラッキーパワー。キャラに助けてもらったこともあって三位という好成績で終えました。

投票してくださった方。読んでくださった方。本当にありがとうございました。
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