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空色の眸に竜が飛ぶⅡ の変更点


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作者:[[朱烏]]

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前章⇒[[空色の眸に竜が飛ぶⅠ>空色の眸に竜が飛ぶ]]


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**&ruby(ふけまち){更待};の月・一 [#Sm76fmY]

 快い風が鼻をくすぐる。春草の、かすかに青っぽく、始まりを感じさせるにおい。
 私は眠りから覚めた。春眠がなんとやらというが、ここ三日ほどは随分と目覚めがいい。眠りが浅かったり、時間そのものが短かったりと、以前までは良質な睡眠というものから遠ざかっていた。
 心にわだかまっていた不安や怖れといったものが、三日前の出来事を経たことで、少なからず払拭できたように思う。
 ジルガは、口先だけでなく、私のことが本当に好きなのだと証明したことで、一番最悪な可能性――ジルガとその取り巻きが私をハメるために一計を案じ、私はそれにまんまと引っ掛かった――は排除できた。
「……考えただけでも恐ろしいわね」
 あのまま、輪姦されることを覚悟した。もし本当にそうなっていたら、私は――
「おはようございます、ルル様」
 草原に座っている私の前に、見下ろすようにウララが立っている。その両腕には、幾つかの色づいた木の実を携えていた。
「おはよう。早いわね」
「そんなことはありませんわ。ルル様が寝坊しているだけです」
 ウララは私に木の実を一つ差し出す。モモンの実――甘い味を好む私を熟知した選択。
「ありがとう」
 触角で受け取ったそれを一口囓った。
(あれ……)
 甘くない――? 食べたことのある味だが、モモンの味ではない。
 昨夜、帰り際にジルガからもらった木の実の味だ。見間違えたのかと思い、囓った木の実を観察するが、どこからどうみてもモモンの実だ。
「どうかいたしましたか?」
「え……いや、何でもないの」
 取り繕うように、もう一口囓った。――今度は、ちゃんとモモンの味がした。
(――恋って難儀ね)
 知覚が交際相手の存在に引きずられている。こんな調子だと、またぶり返してきそうだ。
「お隣、失礼しますね」
 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ウララは私の隣に腰を下ろした。木の実を横に置き、私の顔をじっと見つめている。
「……私の顔に何かついてる?」
 黙りこくったままのウララの真意を測りかね、私は首を少し横に傾げて、困惑の色を示した。
 心臓の鼓動が速くなる。ジルガとの関係は当然群れに知られてはいけないが、ウララに至っては絶対に隠し通さなければならない。
 私の遠出が少し増えただけで、持ち前の鋭い勘で恋仲のポケモンがいると看破したのだ。もっとも、そのときはジルガに恋をしているなんて自分でも思ってもみなかったが。
「ウララ?」
「……久しぶりに、毛繕いをして差し上げても?」
「毛繕い……? そ、そうね。もちろん構わないわ。ありがとう」
 また何か勘づかれたのかとどぎまぎしていたが、ただの取り越し苦労だったらしい。それでも、珍しい提案をしてくるウララに一切の警戒心を抱いていないといったら嘘になる。
「では……」
 ウララは、私の体をひょいと抱き上げる。――抱き上げる?
「ウララ?」
「ん? 何か?」
 フラージェスの体は、しなやかさはあっても特別膂力に秀でているわけではない。だがウララは、私の重さなど意に介することなく簡単に持ち上げてしまった。
 地面に腰を下ろしたウララの、鼠径部を底としたお腹から膝までの屈曲したラインに、私の尻が収まる。この体勢って――
「ウララ、その……毛繕いってこういう感じでやるものだった……あ」
 頭を優しく撫でられる。耳の付け根から先まで、ウララの&ruby(てぐし){手櫛};がすっと通り、顎から首までくすぐるように左手が触れた。
「毛並みが、本当に美しくなられましたね」
 その両手は、私を愛でるように、そして慈しむように体の処々に触れていく。想像していた毛繕いのそれとは感触が異なって、こそばゆい気持ちになる。
 ウララは昔から私に毛繕いをしてくれた。だが、憩いのコミュニケーションという意味よりも、身だしなみというものにさして頓着していなかった頃の私を見咎めたウララが、仕方なく私の毛並みを整えているという意意味合いのほうに重きが置かれていた。
 ウララの首まわりに咲き誇る赤い花の豊かな芳香が、痛いくらいに香ってくる。香りを常に制御しているウララにしては、著しく主張が強い。
 私の両前脚が、優しく握られる。自分とはまったく異なる構造をしている私の前脚が&ruby(いた){甚};く気に入ったらしいウララは、ずっと肉球や爪や甲を親指で押したり擦ったりといった具合で、もはや毛繕いというより愛玩しているだけの様相だ。
 今の私は一切抵抗することなくウララのなすがままになっていて、それは体勢も相まってジルガにされているときと同じような心持ちになる。
「愛しの殿方も、ルル様にこのようなことをしているのですか?」
 びくりとして、耳がぴんと張った。
「や、やめてよ、愛しの殿方とか、そんなんじゃ……」
「あら、すっかり認めてしまったと思っていたのに……相変わらず素直じゃないのですね。まあ、そのようなところが、わたくしがルル様をお慕いする理由の一つなのですけど」
「……意地が悪いわ。私のこと虐めてそんなに楽しい?」
「まさか、虐めるなんてとんでもありませんわ。恋に右往左往しているさまは、確かに見ていて微笑ましいですが」
「ほら、やっぱり」
「むくれないでくださいな。わたくしたちの美しくて可愛いルル様が恋に心躍らせている姿を見て、わたくしも、みんなも、とても喜ばしく思っていますわ」
 私のことを自分ごとのように喜んでくれる仲間たちを想うと、もちろん嬉しい。嬉しいのだが――申し訳なさが先立つ。
「ルル様を見て色気づいてきた子もちらほらいて、立ち聞きしてみれば、丘向こうに凜々しい&ruby(おとこ){雄};の子がいて一緒に楽しくお話してきただとか、ピクニックに誘われたけどどんなふうにめかしこんでいけばいいのかを相談していたりだとか……いよいよわたくしたちの群れも春めいてきましたわ」
 きゃあきゃあと色めき立っている仲間たちの様子が目に浮かぶ。恋の一つや二つをしてみたいと思っている年頃の子たちも、悪属性どもとの闘争で、色恋沙汰から遠ざかってしまっていたことだろう。
「いい方と結ばれてタマゴができる子もいるのでしょうね。そのあとに群れから離れるのか、戻ってくるのかはわかりませんけど……」
「……そうね」
 私たちの率いている群れの顔ぶれは、決して固定されているわけではない。入ってくる子もいれば出ていく子もいる。雄と結ばれるとなれば、入れ替わりもさらに促進されていく。
 唯一変わらないのは、変わってはいけないのは、群れの柱である私とウララだろう。&ruby(フェアリー){妖精};たちが安心できる場所を作ることが私たちの務めだ。
 恋にうつつを抜かしても、群れの中心である自覚がブレていなければ問題はない。暗黙裡の了解事項。
「ねえ、ウララ。例えば、もし群れの中に、悪属性と恋仲になった子がいたら……どうする?」
「ルル様、わたくし、非現実的なことを考えるのは止すことにしていますの。……だって、時間の無駄でしょう?」
 ウララの言葉の端がわずかに刺々しくなった。寛ぎの時間に、わざわざ不穏な質問を投げかけた私が悪いのだが、それでも聞かずにはいられない。
「本当にあり得ないと思う?」
「ヤツらがどれだけ卑劣で愚鈍で悪辣非道なのかは、いつも言い聞かせておりますの。考えただけで悍ましいですわ」
 ウララの手が私の頭の上で止まる。かすかに震えていた。
「それでももし、ヤツらと通じている子がいたとするならば、追放もやむなしでしょうね」
 淀みなく言い切ったウララの表情を窺い知ることはできない。いや、振り向けばわかることなのだが、知りたくない。きっと、憎悪を滾らせた顔をしている。
 ウララは私がこの群れに生まれ落ちるよりも前からここにいた。フラベベだったウララが、悪属性のポケモンにいたぶられて傷ついていたところを、先々代のリーダーが保護し、この群れに居着いたと聞く。
 ウララはこの群れの誰よりも悪属性を憎んでいる。悪&ruby(タイプ){属性};という言葉にすら、アレルギーをもっているがごとく過敏に反応するのだ。
 ――私とウララが大いに異なっている部分だ。私が悪属性を忌避するのは、生まれたときからこの群れの中にそのような雰囲気が共有されていて、それが自然なことなのだと何一つ疑わずに信じて育ってきたからに他ならない。
 実際、悪属性に接してみれば彼らの厭な部分はいくらでも目につき、妖精たちが悪属性どもと対立し忌み嫌うのも道理であると、自身に確立された価値観をより強固なものにした。
 今だって――ジルガこそ特別かもしれないが、他の悪属性たちと仲良くするなど到底無理だと思っている。昨夜だってジルガが憤怒しなければ、私に薄汚い欲望をぶつけていたはずだ。
 まあ、あなたの言うとおり、あり得ないことは考えてもしかたがないわね、と話題を転換する。
「ウララこそいい殿方とやらはいないの? 私ばっかりつつかれてちゃ不公平だわ」
「そうですわねえ……ルル様も恋をしているなら、わたくしもいいひとを探してみようかしら」
 にわかに声の調子が明るくなり、私への毛繕いも再開される。手櫛は横っ腹の毛並みを掻き始めた。
「でも、わたくしは自分の恋路よりも、ルル様のお相手が気になってしかたありませんわ。わたくしに紹介してくださるのはいつになるのでしょう」
「私のことは別に……ひゃぅッ!?」
 ウララの指先が、私の腹に並んでいる小さな突起に触れた。
「この時季にルル様の体がこんなふうになるなんて、よっぽどのことですわ。いったいどんな殿方がルル様を夢中にさせているのですか?」
「ちょっ、ウララ、ほ、ほんとに怒るわよっ……!」
 しばらく会わないと告げられたからには、ジルガのことを考えないようにしている。そうでないと、勝手に股ぐらが濡れたり、乳房が張ったりで、まともな生活ができなくなる。
 だが、ウララはそんな私の事情などお構いなしに、腹を撫でたりつついたりして、私の劣情を煽る。
「それとも、わたくしに言えない相手なのでしょうか?」
「た、ただ想いを寄せてるだけで、まだちゃんとした関係じゃないから……ッ……時期が来たら話すわ……んぅっ」
 二列に並んだ乳をつうっと指でなぞられる。突起の上を指が通過するたびに、私の体はぴくんと跳ねた。
「それならいいのですけど」
 もはや毛繕いの範疇を逸している。私は息を荒げて、あたりを見渡す。こんな姿、仲間に見られたくない。幸いなことに、そばには誰もいなかった。
(あ……)
 じわりとした感触。ジルガの逸物を前にしたときの、背徳的な高揚感。ダメだ――完全に濡れてる。
「酷いわ、ウララ」
 私は恨めしい顔で彼女を睨む。流石のウララもこれはやり過ぎたと反省したようで、
「ごめんなさい、少し調子に乗ってしまいました」
 と言って謝罪し、私を後ろからぎゅっと抱きすくめた。それが余計に、一昨夜にジルガが私にしてくれた抱擁を思い起こさせ、私の心を切なくさせる。
「みんなの様子を見てきますわ」
 ばつが悪くなったのか、それとも単に毛繕いに満足しただけなのか、ウララは私を地面に下ろして、ごきげんよう、と手をひらひらと振りながら丘を下っていった。
 私は彼女のせいで火照った体を落ち着かせようと深呼吸するが、そのたびにウララが置き去りにした鮮烈な残り香が鼻腔をくすぐり、昂ぶりがぶり返すという八方塞がりの状態だった。
「ジルガ……」
 いつの間にか――首元から伸びる&ruby(リボン){触角};が、股間に伸びていた。
(こんなことに使ったコトなんて一度もないのに……我慢できないっ)
 丘の上に生えている木の陰に急いで隠れる。誰にも見られていないことを確認し、木に背中を預けて投げ足に座った。
 触角を改めて股ぐらに伸ばした。明るい時間に見る自らの股間は、ジルガに見せるのも憚られるほど濡れそぼっていた。ジルガがやたら責めてくる陰核とやらも隆起していて、雄のソレほどではないにしろ存在感がある。
(ここを擦れば……気持ちよくなれる……)
 ジルガに快楽の味わい方は嫌というほど教え込まれた。――味わったが最後、もう二度と戻れない。
 触角の先で、張り詰めた陰核に触れる。それだけで、ぴりっとした快感が脳髄の神経を発火させた。
 たったの四日で、ジルガに私の大事な部分を開発されてしまったことを、否が応でも理解させられる。
 無我夢中で陰核を擦る。じわじわとした快楽が股ぐらから両脚に広がって、もともと荒げていた息は呼吸困難かと見まがうほど浅く熱をもっていた。
『&ruby(ソコ){陰核};だけならまだ足りない。教えてやっただろう?』
 重低音の甘い幻聴が聞こえた。
「うん……ッ」
 &ruby(ナカ){膣内};にいい場所があって、ジルガはいつもあの凶悪な肉棍棒でそこをゴリゴリと擦ってくるのだ。
 私がもっているのは、細くて薄い触角だけだけど、あの得がたい快楽が少しでも欲しい。
 陰核を擦りながら、もう一本の触角を蜜壺に引き入れる。ジルガの極太な肉棒を受け入れたがためにすっかりと緩くなってしまったそこに、触角を&ruby(い){挿入};れることなど造作もない。
(お腹の側……その辺にたぶん引っ掛かるところが……ッ!?)
 びん、と背骨が痺れた。見事に、当たった。ジルガに散々苛め抜かれたその場所は、ジルガが私を屈服させるために押すスイッチと成り果てていた。この場所を擦られたら、私はジルガの吐精を受け止めるために子宮口を降ろすしかなくなるのだ。
「っん゛ん゛っ……ッ」
『すっかり淫乱だな、ルルは。俺のチンポのこと考えるだけでマンコびしょびしょになるもんなァ』
「う゛るさい、誰のせいで……ッ!」
 乱暴に陰核も膣内も擦って、洪水みたいに愛液は溢れ出て、もう空の色も草原のにおいもわからなくなって、唯一考えられるのはジルガに肉棒を突き立てられているときの幸福だけ。
「あ゛っ……」
 ばちん、と白く視界が弾けた。
「……ぅ……ぉ……」
 横倒しに、重力に任せるままに倒れた。体の芯から引き抜かれたように、ぐったりとする。口からは曖昧で不明瞭な、言葉ですらないものが垂れ流しになり、股ぐらからは小水とも愛液ともつかない何かが零れ出す。
(………………)
 乱高下していた景色のピントが次第に合ってくる。――空の色は相変わらず青くて、草原のにおいは爽やかだ。
「はぁ……はぁ……」
 頭が少しすっきりした。甘い切なさが、波が引くように溶けていく。
(……なんだか、不自由だな)
 ジルガに心を縛られている。立場は自由な振る舞いを許さない。冷静になるほど、今の自分は難しい状況に立たされていることを痛感する。
(本当に私は上手くやれるんだろうか)
 器用でも、要領がいいわけでもない私が、自分に関わりのあるすべてのひとの気持ちも裏切らないままに過ごしていくことなんて――やはり無理がある。
 先延ばしにするしかない。その先に待っているのが瓦解だとしても、私にそれを止めるすべはない。
「ジルガ……」
 今、どうしているのだろうか。普段は群れの中でどんな振る舞いをしているのだろう。何を食べ、何を考えているのだろう。
 離れている今も、私のことを想ってくれているのだろうか。それとも、全然別のことを考えているのだろうか。
(……私だけが、ジルガに執着している気がする)
 健やかな青空の下、私の気持ちは土砂降りのようにただただ気が滅入ってくばかり。
 周囲の目がないことを確認しては、覚えたての自慰に耽り、現実逃避をした。
 すべての時間が止まって、私とジルガの時間だけが進めばいいのにと、実現しえない願いを切に思う。




(続く)

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***更新履歴 [#5Ef1fcs]

2021/10/19 『更待の月・一』更新
2021/05/09 『第四夜・三』更新
2021/05/02 『第四夜・二』更新
2021/03/18 『第四夜・一』更新
2021/02/28 『第三夜・二』更新
2021/02/21 『第三夜・一』更新
2021/02/08 『第二夜』更新
2021/01/28 『第一夜』更新
2021/01/24 『序幕』更新

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6月に更新する~とかいっておいて4ヶ月くらい遅れましたね……
原稿で忙しかったんです(言い訳)
とりあえず年内にあと4回は更新したいです!!!!


よかったら拍手ください!⇒ &htmlinsert(like);



感想、誤字脱字報告等ありましたらどうぞ↓
#pcomment(空眸竜飛のコメントログ,10,below)
#pcomment(空眸竜飛のコメントログ,20,below)

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