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空の特攻隊! 世界を救った救助隊 の変更点


忘れた頃に更新される、そんな物語、空の特攻隊第6話でございます。
今話はこの作品のオリジナルなストーリー展開となりますので、探検隊シリーズ原作をお好きな方は閲覧にご注意下さい。

目次は[[こちら>ポケダン空の探検隊IF 空の特攻隊! 目次]]

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 ……聞かされてたとは言え、今朝の朝礼からもう私のやる気は最低まで落ち込んでた。なーんであいつ等がこのギルドの朝礼に並んでるのか、本気で問い質したいわ。

「以上で今日の朝礼は終わりなんだけど、散会する前に紹介しておくヨ。前に来て貰えるカナ?」
「おぅ。クックック……」
「ムカつく……こんな場じゃなかったら一発殴ってやるのに」
「気持ちは分かるが落ち着けキーネ」
「だ、大丈夫? なんかキーネからこう、怖いオーラみたいのが出てる気がしてきたんだけど……」

 今この場に私の同族が居たら、波導なり波紋なりを感じ取って怯えてたかもね。あー、イライラする。

「あーっと、こ、今度の遠征に是非参加したいって事で、親方様も許可したドクローズの3匹だよ。今日から遠征までの間、ギルドに馴染んでもらう為にも一緒に生活してもらう事になったんで、よろしくね」
「そういう訳だ。短い間だが、よろしくな」
「ケッ!」
「ヘッヘッヘ……」

 まぁ、そんな事になっちゃったらしくて、朝から見たくも無い顔を見せられてる訳。なんでプクリン親方も、寄りにも寄ってこいつ等を参加させるかなぁ?

「そ、そういう事だからよろしくね! 以上解散!」

 ハーモの一言で朝礼は終わり。で……ニヤニヤしながらドクローズがこっちに来た。腹立つわぁ……。

「ブレイブだったな? お前達も、よろしく頼むぞ? クーックックック!」
「……ギルドの方針だからね。但し、覚えておきなさい?」
「なんだ? 言ってみろ」
「私達の邪魔をすれば、ギルドの決定を無視してでも、私はあんた達を叩き潰すから。忘れない事ね」
「へっ! 強がったってそんな事出来るわ……け……」
「なんだったら、今すぐ畳んであげようか?」

 余裕な顔して話し掛けてきたけど、私が本気で言ってるって分かったみたいね。3匹共、顔色真っ青にして仲良くしようとか言って逃げて行ったわ。はあーぁ……。

「やれやれ……俺達、というかキーネへの意趣返しのつもりなのか知らないが、厄介な事になったな」
「まぁ、今ので釘は刺したからすぐにどうこうしてくる事は無いと思うけどね」
「す、すぐに喧嘩が始まるかと思って私はヒヤヒヤしたよ……」
「そこまで短気なつもりは無いってば。ま、なっちゃったものは仕方無いし、気持ち切り替えて今日も頑張ろっか」
「うん……でも無理はしないでね、キーネ? 僕もガディさんもキーネの味方だから」

 あちゃぁ、皆に随分心配させちゃったかな? いけないいけない、しっかりしないとね。

「あ、それでブレイブの皆に今日の仕事でちょっとお願いがあるんだよね」
「お願い? 何かあったの?」
「実は……おーいダグー」

 ハーモが呼んだら、地面がぽこっと盛り上がってダグが顔を出した。なんだろ? 何かお願いに関係あるのかな?

「実は今日、ダドリが急用で居なくてね。いつもの掲示板の更新をダグにやってもらう事になったんだ」
「すいません、父さんたまにこういう事あるんです……」
「へぇー。……あれ? じゃあダグさんがいつもやってたギルドの見張り番はどうするんですか?」
「恐らくだが、それが俺達への頼みの内容なんじゃないか?」
「正解だよ。申し訳無いんだけど、他の弟子はもう今日の仕事予定が決まっちゃってて、ダグの代わりが居ないんだ。で、まだ予定が決まってない君達にお願い出来ないかと思ったんだよ」

 あぁ、そういう事ね。別に難しい事は無いだろうけど、確かあれって相手の足の形で判別してたよね? 知らないと難しいんじゃないかな?

「受けてもいいけど、慣れてない私達がやっても大丈夫なの?」
「あぁ、下から見ても大体上のポケモンが何かは見えるから大丈夫ですよ。はっきり見えるのが足型だから誰の足型って言ってるだけなんで」
「そ、そうなの? ならまぁ……受けてみる?」
「ふむ、俺は別に構わないが、3匹も必要か?」
「えーっと、扉を開ける役と確認する役の2匹居れば大丈夫かな。3匹でやってもらってもいいけど、誰か1匹は退屈しちゃうかもだね」
「そっか……んー、どうしよっか?」
「あ、なら今日はキーネに休んで貰おうか。ほら、昨日はルガンさんが手伝ってくれたけど、ブレイブとしてはキーネが1匹で頑張ったようなものだし」
「それもそうだな……俺も異論無いし、いいんじゃないか?」

 あら、なんだか流れでまた私が休みな感じになっちゃった。別に気にしなくてもいいんだけどね。
そうしようよってアークにも促されちゃったし、まぁいいかなって事で今日はアーク達に任せる事にしちゃった。ま、危ない事とかは無いだろうし、ギルドに居るんだから大丈夫よね。
って事で早速アーク達はダグの説明を聞き始めたよ。けど、そうなると困るのが私なのよね。せっかくお休みって言われたのに1匹で探検に行くのも不味いかなと思うし、かと言って大人しくじっとしてるのも性分じゃないしなぁ。

「んー……ハーモ、今日もこの前みたいにアシスタント、する?」
「うーん、正直今日はアシスタントしてもらう程忙しい事が無いんだよね。キーネはいつも頑張ってるし、今日はゆっくりしても罰は当たらないんじゃないかい?」
「そうかもだけど、なんかじっとしてるって勿体無い気がするんだよね。体を休めるのも大事だって言うのは分かってるつもりなんだけどさ」

 仕方無いし、少しタウンの方にでも顔出そうかな? なんて考えてる時だった。

「わーい! 友達友達ー!」
「ふぇっ!? な、何?」
「あ、親方様のいつものだね。多分知り合いが来たんだと思うよ」

 こ、こんなに突発的だったのね……ビックリして変な声出ちゃったわ。はいそこルガン、珍しいもの聞いてほくそ笑まない!
で、どうやらプクリン親方は出掛けるみたいね。ウキウキしてるのが見てるだけで分かるわ。

「ふんふふーん♪ あ、キーネだ!」
「へ? わ、私?」
「うん! 皆から聞いたけど、キーネって頑張り屋さんなんだよね。それにすっごく強いって!」
「それ程でもないけど……」
「それ程でもない者が、こんな短期間にゴールドランクになれる事はまず無いのは確かだよ。しかし親方様、キーネがどうかしたのですか?」
「うんとね、今日時間があるなら、僕と一緒にお出掛けしない? お散歩お散歩♪」

 散歩ねぇ? 別に構わないけど、また唐突ね。退屈しかけてたし、悪くはないかな。

「いいけど、私でいいの? ハーモやルガンも居るけど……」
「だいじょぶだいじょぶ! それじゃあハーモ〜、お出掛けしてくるねー」
「は、はぁ……とりあえず親方様と一緒だから大丈夫だと思うけど、一応気を付けて行ってきてねキーネ」
「了解。じゃ、行ってくるね」

 気を付けても何も散歩だしね? 危ない事は無いでしょ、多分。
プクリン親方と一緒に外に出ると、ギルド前にある足型確認用の格子からアークの声がしてちょっとビックリしたわ。出掛ける事を伝えられて丁度良かったけどね。

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そのまま十字路まで降りてきたけど……ん? この辺りじゃ見掛けないポケモンがタウンに向かってきてるわね。

「居た居た、おーい!」
「プクリン親方、あれが友達?」
「僕の事はプーでいいよ♪ うん、あれが友達! ギルドを立てる為にお仕事してる時に知り合ったんだー」

 へぇ、親方もそういうのをして今のギルドを建てたのね。で、あの2匹はその時に知り合ったと。なら結構古い知り合いって事になるのかな?
あ、向こうも気付いたみたいね。こっちに駆け寄ってきたわ。

「プクリン!? 俺達の事を知ってるって事は、友達サークルのプクリンなのか!?」
「うん! そうだよー!」
「うわぁ、久しぶりー! いつの間にか友達サークルにもポケモン広場からも居なくなってたから心配したんだよ?」
「ごめんねー? でも、夢を叶えられそうだったから、お店も代わってもらってこっちに来たんだー」
「夢? あぁ、そう言えば前に、探検家や探検隊を育てるギルドって言うのを作るのが夢だって言ってたっけ。じゃあ……」
「夢は叶って、今はギルドで親方って呼ばれてるのー! 凄いでしょ!」

 ……盛り上がってるなぁ。当然、面識の無い私は蚊帳の外なんだけどね。まぁ、大人しくしてようか。

「へぇー。……あれ? その後ろのリオルは?」
「ん? あ、私? 私はそのプクリンのギルドでお世話になってる探検隊の1匹で、キーネです。よろしく」
「そうだったのか。じゃあ俺達も自己紹介だな。俺はバシャーモのエン、救助隊ポケモンズのリーダーをやらせてもらってる」
「私はメガニウムのミドリ。同じくポケモンズで、エンのパートナーよ。よろしくね」

 ふぅん、どうやら悪いポケモンでは無さそうね。それに、実力もなかなかってところかしら。
でも……救助隊? 探検隊じゃなくて? そっちは聞いた事無いなぁ。

「ん、どうかしたかい?」
「あぁいえ、救助隊って言うのに聞き馴染みが無かったんで、ちょっと気になって」
「あーそっか、こっちだと救助隊より探検隊の方が有名だもんねー。僕もそれでこっちに来たんだよー」
「そうなんだ。えっと、救助隊って言うのはね、困ってるポケモンを助ける事を仕事にしてるポケモンの事なんだ」

 ……聞いた限りだと、なんだかギルドでやってる依頼やお尋ね者退治と似たような事をしてるみたいね。いや、寧ろプクリン……プー親方が修行の一環で救助隊みたいな依頼なんかを受けるようになったって言うのが正解かな?

「そうだなぁ……探検隊と救助隊の明確な違いは、主な目的って点かな」
「聞いた限りだと、救助隊の目的はあくまで困ってるポケモンを助ける事で、探検隊は探検が主要な目的だから、その違いかな」
「救助隊が不思議のダンジョンに入るのは、困ってるポケモンがそこに居る、若しくはポケモンを困らせてる原因がダンジョンにある場合だからね」
「探検隊は色んな物を見つけたり手に入れる為にどんどんダンジョンに入るもんねー」
「確かにそう聞くと別物ね。なるほど」
「救助隊の依頼の中には、ダンジョンから帰れなくなった探検隊の救助なんてお仕事もあるんだよ。まぁ、滅多に無いけどね」

 寧ろその仕事が頻繁にあったら、探検隊なんて名乗れなくなるでしょ……私達も、そんな情けない事にならないように気を付けないとね。
さて、大体聞かされて分かったけど、その救助隊の2匹がなんで今日はここに? この辺で何か依頼があれば、ギルドの方に依頼が来そうなものだけどね。

「それで、2匹は今日はどうしてここに? やっぱりお仕事で?」
「いや、そもそも俺達は隣の地方で活動してるんだ。こっちに来たのは今日が初めてだよ」

 隣の地方……へぇ、海を渡って来たんだ。私も旅をしてた時は色々行ったけど、一番長く居るのはやっぱりここかなぁ。

「ん? こっちに来たのは今日が初めてで、しかも仕事じゃないって……なら、一体どんな目的で?」

 あら、聞いたら2匹が神妙な顔して見合ってる。これはひょっとして、薮蛇だったかな?

「……話してもいいのかな?」
「うん……いや、プクリンもキーネちゃんも探検隊って言う事なら、協力して貰えるかな」
「協力? どうかしたのー?」
「実は、郵便を配達してくれるペリッパーからある噂を聞いてね。2匹とも、こっちにあるキザキの森という場所の事を知らないかな?」

 キザキの森? それって確か、暴走する前にガディが探検してたって言うところだった筈。場所までは知らないけど。

「うん、知ってるよー。今日も行こうと思ってたんだー」
「え、そうだったの?」
「うん! 実はね? キザキの森が変になっちゃったって話を聞いたんだ。だから、どうなってるか見に行こうと思ってたんだー。危なかったら、皆に行ってもらうのも止めないとだしねー」

 へぇ……ちょっと見直しちゃった。親方って何やってるか分からなかったけど、こうして皆の為に危ないかもしれない所を調べてたんだ。
けどこれ、ひょっとして私……軽く騙されつつ巻き込まれてない? 散歩って聞いてたから鞄とか持って来てないんだけど?
物言いたげな目で親方を見たら、舌ペロッて出してウインクされた。うんこれ有罪だわ。

「あ、あのねぇ……」
「だってー、1匹で行くの寂しかったんだもん。ダメ?」
「はぁ……もう出て来ちゃってるし、仕方ないか。付き合うよ」
「やったー! キーネありがとー♪」
「あ、あの……つまりあなた達、これからキザキの森に行くの?」
「流れ的に、そんなるかな?」
「うん! 頑張ろーね!」
「丁度良いや。それ、俺達も同行していいかな? このタウンに立ち寄ろうとしたのも、道案内をしてくれる探検隊が居ないか、居なかったらキザキの森の場所だけでも聞く為だったんだ」

 でしょうね。じゃないと何の為に聞いたのか意味が分からないし。けど、わざわざ森を調べる為に海まで渡ってくるなんて……酔狂と言うかなんと言うか?
ま、とにかく話は纏まったし、詳細は向かいながら話そうって事になったから、タウンから出発になったわ。あまり遅くなっちゃわないといいんだけどね? アークやガディが心配しちゃうし。
さて、えーっと? プー親方とエンさん、それにミドリさんと私って言う即席チームでキザキの森を目指してるんだけど……2匹からまた不思議な話を聞かせて貰ってるところよ。

「森が、止まってる?」
「あぁ、キザキの森を中心に、そう広くない範囲で異常が起きてるらしいんだ」
「見たポケモン曰く、森から色が無くなって、風が吹いても何をしても木の葉が揺れたりしないし、朝露が葉から落ちて空中で止まってるのを見たって言う話なのよ」
「へー、僕が聞いたのもそんな話だよ。まるで、森の時間が止まっちゃったみたいだー、なんてね」
「時間、時……か」

 初仕事の時、ハーモから聞いた話で時が狂うなんてのを聞いたのを思い出したわ。……まさかねぇ?
でも、暮らしてるポケモンには今の所影響は出てないらしいわ。けどそんな事に急になったら不気味だし、それで噂が広まったみたいね。

「俺達も最初は気に留めて無かったんだけど、複数のポケモンから話を聞いちゃってね。流石に気になって、時間を作って調べに来たんだ」
「なるほどねぇ……けど、言っちゃ悪いかもしれないけど、そんな厄介事に自分から関わろうなんて、変わってますね?」
「ず、ズバリ言ってくれるねキーネちゃん。まぁ、性分かな。また世界に大変な事が起こりつつあるとかだったら、黙ってもいられないし」

 世界と来ましたか。また大層な物を挙げるねぇ……幾ら救助隊って言っても、世界を救うなんて言い出さないでよ?

「ふっふーん、キーネ? ポケモンズが世界なんて言って不思議そうにしてるね?」
「え? あ、まぁね」
「じゃあ教えてあげる! 結構前に、世界中で異常気象が起きたの、キーネは覚えてる?」
「異常気象? ……あー、そう言えば何年か前に天候が滅茶滅茶になった事あったあった」

 その頃私はまだ旅の身空で、気候がマシな所を探して流離ってたわ。あれ、いつの間にか収まってたのよね。

「あの事件を解決したのがね、今此処に居るポケモンズの2匹なんだよ! 凄いよねー!」
「え、あれを? まさかぁ」
「嘘じゃないよー。だって僕その時、2匹が拠点にしてるポケモン広場ってとこに居たもーん」
「あの時は大変だったねー。あれを引き起こしてる原因だって間違われて追われたり、原因が分かったら今度はそれを解決に向かったり」
「同じ事をやれって言われたら、今はもう勘弁してもらいたいけどね」

 えーっと……え、今の話って本当なの? 嘘ぉ? けどそうだとすると、この2匹は世界を救った救助隊って訳? それが本当だったら、今私凄いポケモン達と肩を並べて探検に向かってるって事になるのね……ある意味、自慢話にはなるかな?
あ、その事件を解決してからは特に大変な問題も無く、名声もあるから一流の救助隊として活躍してるんだって。仮に本当に世界を救ってるとしたら、これ以上無い名声だろうね。

「そう言えば、一緒に居たって事はプクリンとキーネちゃんもチームなの?」
「いいえ、今日はたまたま。散歩に行かないかって最初は誘われたんだけど、流れでそのまま付いて来てるだけだよ」
「あぁ、さっきのはそう言う事だったんだ」
「なんだぁ、プクリンもこんな可愛い子と一緒になるなんて隅に置けないなーって思ってたのになぁ」

 そういう切り口で来ましたか。そもそも今日初めて一緒に行動する相手に、幾ら親方でも特殊な感情なんて湧かないよ。
けど、そういう観点で行けば……気になっちゃう辺り、私も一応牝の子だったって事かな。

「こっちは隅に置けないような事は無いですけど……其方はどうなんですかぁ?」
「え、其方って……お、俺達!?」
「しか居ないじゃないですか。さっきはパートナーって言ってましたけど、その前に来るのは仕事上の、ですか? それとももっと別な字だったりして……」
「えー? キーネどう言う事ー? ポケモンズの2匹はすっごく仲良しなんだよー? 僕が最後に聞いた時はね、エンの家で一緒に暮らし始めたんだって!」
「わ、わーわー! プクリン急に何言うの! わ、私達はそういうのじゃないの!」
「おやおやぁ? プー親方は一緒に暮らしてるって言っただけなのにその慌てようって事は……ご馳走様って事ですね」
「あ、あぅ……」
「その……あはは、参ったな」
「薮を突けば、こう言う薮蛇に噛まれちゃう事もありますよ。ふふっ」

 親方は何の事ー? なんて言いながら首を傾げてるわ。子供っぽいとは思ってたけど、変に擦れちゃってる私なんかよりずっとピュアだわね。
あぁ、擦れてるとは言っても、私だってそういう経験は無いから体はピュアだよ。まぁ、危なかった時は無かったとは言わないけど。牝が1匹で旅してて、あまつさえ悪党に絡んでいくとなったら多少はね?
ま、他ポケの恋路を邪魔する奴は、ポニータに蹴られて地獄に落ちろってね。野暮な事言うのはここまでにしましょうか。
茹だったみたいに赤くなった2匹に軽く謝って、世間話にシフトしていく事にしたわ。これ以上揶揄っちゃ可哀そうだしね。
途中休憩を挟みながら、親方が持ってた地図を確認。ちゃっかり自分は用意してるんだから、もう。

「はいキーネ! セカイイチだよー!」
「あぁうんありが……うわ、大きいねこのリンゴ」
「セカイイチって言ってね、僕の大好物! すっごく美味しいんだよー。ポケモンズにも、はい!」
「いいのかい? 助かるよ」
「美味しい物は皆で食べないとね。友達友達ー」
「あ、それ久々に聞いたかも。友達サークルに貴方が居た時は必ず聞けたのにね」
「その友達サークルって、一体なんなんですか?」
「んーとね、不思議のダンジョンで探検隊とか救助隊がやっつけたポケモンにね、たまにだけど、正気に戻って一緒に探検したいって言ってくるポケモンが居るんだよね。そういう感じで友達になったけど、あんまりいっぱいのポケモンで探検するのは大変になっちゃうでしょ? だからそういうポケモンは友達サークルで休んでもらうの!」

 ふぅん、そんな事あるんだ。まぁ、同じような感じで仲間になったガディが私達には居るから、なんとなく分かるよ。
で、ポケモンズも利用してたんだけど、今はギルドみたいな詰め所を建てて、そっちで仲間のポケモンは働いたり休んだりして貰ってるらしいわ。儲かってるのねぇ。
話を聞きつつ貰ったリンゴを齧る。あ、甘くて美味しい。それにこの大きさなら、暫くお腹は減らずに済みそうね。……本当にお腹空いてる時ならね。

「どぉキーネ、美味しい?」
「うん。けど一個食べちゃうと、私にはちょっと多いかも。あ、親方半分食べてくれないかな? まだ食べてないよね?」
「いいの!? わーい、半分こー! 仲良し仲良しー!」
「ははっ、その分だと、ギルドの親方っていうのになっても楽しくやってるみたいだね」
「けどなんだか意外だわ。プクリンのお弟子がキーネちゃんみたいな落ち着いた子なんてね? もっとこう、個性的なポケモンがなってるイメージだわ」

 うん、ミドリさん大体合ってる。私達以外の弟子って皆個性的だからね……いや、ハーモやベルゥさんは普通か。
リンゴはミドリさんが葉っぱカッターで無事切って貰って、私と親方、それとエンさん達も半分こして食べてるわ。親方には一個食べなくていいの? って聞いたんだけど、今はこうがいいのって言うから、それで納得したわ。
さてと、十分に情報交換も休憩もしたし、そろそろ動き出しますか。キザキの森は、もう少し歩いた先にあるみたいだしね。
しばらく歩いて、噂話の答えが分かった。森が色を失って止まってる……半信半疑、と言うか7割信じてなかったけど……。

「こ、これは……」
「事実は小説より奇なり、なんて言うけど……ここまでだと、逆に現実か疑いたくなるわね」
「も、森が……灰色になってる」

 森に着いた筈の私達を迎えたのは、灰色の森だった。本当に、森が色を失うなんてね。

「うわぁ……なんだか怖いね。皆、十分気を付けて行こうね」
「了解。……触った感じ、葉や草の手触りがする石、とでも言えばいいのかしらね、これ」
「こんなのを見るのは、ポケモンになってからも始めてだな……」
「えぇ、この水滴も、まるで石が宙に浮いてるみたいだわ。でも、どれだけ押しても動かないみたい」

 なんかエンさんの言葉に引っかかりを感じたけど、今は置いておく事にしたわ。生まれてとかじゃなくて、ポケモンになってから、ねぇ?
にしても異様な光景だわ。本当に、ある一瞬で森が止まってるって感じ。しかもただ止まってるんじゃない、全ての物がその場に固定されて何をしても動きも壊れもしない。自然な現象やポケモンの仕業とは思えないわ。

「あ、木の実! ……と思って拾おうと思ってもそれも出来ないわね」
「現地調達出来ない以上、持ち込めた道具を使っていくしかないですね」
「幸い、ポケモンの気配は少ないみたいだ。森がこんな状態じゃ、無理も無いか」
「! エン危ない!」
「ちぇいさぁっ!」

 親方が見つけた、エンさんに飛び掛かってきたポケモンは私が飛び蹴りで迎撃したわ。ヘルガーか、ミドリさんに行ってたら危なかったかもね。

「うわわ!? な、何っ?!」
「ふぅっ、油断大敵ですよっと」
「キーネちゃん凄いわ! プクリンが声を掛けると同時に動けちゃうなんて!」
「わーい! やっぱりキーネについて来て貰って良かったー! 凄い凄ーい!」
「ま、これくらいならね。ケガとかは……大丈夫ですね」
「あぁ、ごめん。気を付けてるつもりではあったんだけど……しっかりしなきゃな」
「無理も無いですよ。森に入ってからの違和感に、今ので答えが出ましたし」
「? どう言う事?」
「音、だよね? 2匹共、気付いてたー? こうやって話す声とかは聞こえるけど、足音とか殆どしなくなってるんだよー」

 ……驚いたわ。親方、気付いてたのね。
そう、この森に入ってから、音が異様に少ないの。足音もそうだけど、何より草や木に触れた音がしないのが厄介だわ。何かが隠れててもガサリとも音がしないんだもん、してたらさっき程度の奇襲なら、いつもなら親方が気付く前に迎撃してただろうしね。
これも異常の一環なんだろうけど、結構厄介だわ。ま、空気は幸い変化無いようだから、風切り音とかは分かるだけ救いはあるかな。

「気付かなかった……これは、プクリンとキーネちゃんと一緒に来て正解だったな」
「本当ね。2匹共、よくそう言うのに敏感に気付けるね?」
「状況把握と索敵は、探検隊にとって必須の能力だからですかね。ポケモンの迎撃にしても、探索にしても、周りが見えなきゃ見つかる物も見逃しちゃうし」
「救助隊って、救助するポケモンへなるべく最短で向かうのがお仕事だから、感覚の使い方が違うんだろうねー」

 そりゃ、ダンジョンなんて危険なところでの救助、なんて事してるのに他にまで気を割いてる余裕は無いだろうし、あって襲ってくるポケモンに多少気を付ける程度じゃないかな。
つまり、日頃の癖の違いよ。それがダメなんじゃなくて、得手不得手の話って事。多分、特定の何かを迅速に見つけるとかなら、この2匹の方が早いよ。現に今のこの森の状況をサクサク調べていくしね。

「これまでの森の様子からして、森が枯れてるのとは違う状況だな」
「枯れてるだけなら、物を動かせないなんて事が起きる訳無いもんね。森が止まってるって言うのは当たってたんだ」
「けど原因が分からないな……ポケモンの仕業にしても、規模が大き過ぎる。それに、仮にこれがポケモンの仕業だとして、森に暮らすポケモンや俺達に影響が無いのはなんでだろ?」
「……仮説を立てるなら、これをやったポケモンが、自分まで止まっちゃうのを避ける為にポケモンを対象から外した、なんて事も考えられるけど、これだけの事が出来てしかもその力を自由自在に操れるポケモンが、自分だけを力の対象から外すとか出来ないとは思えないしねぇ」
「うーん……僕ね? これがどうして起きてるか、もしかしてって思ってる事があるんだよねー」

 親方? え、こんな変な状況に心当たりがあるの? マジで?
流石と言うかなんと言うか……でも、まだ確証が無いから、話すのはもうちょっと待ってねって言われたわ。そう言われちゃうと、無理に聞き出す訳にもいかないか。どうやらこのまま奥に向かえば分かるらしいし、とにかく行ってみるとしようか。
襲ってくるポケモンを軽くあしらいながら、奥へ奥へと足を進める。うん、指揮しながらじゃない戦闘なんて久々かなぁ。3匹共かなり探索慣れしてるから、私が迎撃に徹すれる。本来私、こう言うのの方が得意だしね。

「せい、やっ! っとぉ……うん、快調快調」
「いやぁ、驚きっ放しだな。キーネちゃんがここまで強いなんて」
「これでも腕には自信あるんで、カバー出来るだけはやらせてもらいますよ」
「でもキーネ、あまり無理しちゃダメだよー? 僕達だって居るんだからね?」
「そーよ? これでも伝説のポケモンとだって戦った事もあるんだから。もっと頼っても良いよ?」
「へぇ、伝説のポケモンと……流石に私もそんなのを相手にした事は無いなぁ」
「したくない、ではないんだね」

 必要ならやる、程度だけど……興味が無いとは言わないわ。伝説のポケモンと張り合えるなんて、強さとしての指標としては十分だもん。今どのくらいやれるかは気になるところだわ。
さてさて、大分進んできた筈だけど、まだ親方の確証になる物は見つかってないみたいね。一体何を探してるんだか?

「うーん……違ったのかなー?」
「かなり奥まで来たとは思うんだけど、プクリンの探し物って、一体何なんだい?」
「えっとねー……! あれって……」

 あ、あれ、いきなりプー親方が走り出した。何か見つけたのかな?
急いで追うと、森の中の拓けた場所に出た。……な、なんだろあれ? 何かが、宙に浮いてる?

「あったー! 時の台座だー!」
「時の……台座?」
「うん! でも……やっぱり、ここにある筈の物が無くなっちゃってる。森が変になっちゃったのはその所為だね」
「ここにある筈の物って……プクリン、一体何なの?」
「うん……この時の台座はね、ある物を置いておく台なんだ。そう、ここに無くちゃいけない物……時の歯車をね」

 時の、歯車……それって、何なの?

「あれ? 皆知らないかなぁ?」
「私は心当たり無いかな」
「俺も知らないな……ミドリ、分かる?」
「確かだけど……時の神様が色々なところに置いて、世界の時間を正しく流れるようにしてるって昔話に出て来たのが、そんな名前だったかな?」
「正かーい。僕も探検で何回か見た事あるんだけど……こんな風に、歯車が無くなっちゃってるのは初めて。歯車を外すと、とても良くない事が起こるって言うのは探検隊でも広く知られてる事でね、どんな悪い事をする探検隊でも、時の歯車にだけは手出しをしないくらいなんだー」

 そんな暗黙のルールみたいのがあったのね……けど、この森ではその禁が破られた。そして、森はこうなったと……繋がった、とも言えなくもないのかな?

「けど、本当はこんな事が起こる筈無いんだ……時の歯車には、それを守ってるポケモンが必ず居る筈なんだ。だから、外して持っていくなんて……」
「出来る筈が無い、か。私は実物を見た事がある訳じゃないからなんとも言い難いけど、実際ここの歯車は外されてる。それは間違い無いんだよね?」
「うん……」
「なら、やるべき事は一つね。歯車を奪ったポケモンを見つけ、ここに歯車を戻す」
「けど、俺達が来るのが遅過ぎた……この森の噂が立って、もう一週間は経ってる。追うにしてももう手掛かりが……」
「いいえ、あるわ。この特殊な状況だからこそ、追えなくても手掛かりを探す事が出来る」

 まぁ前提として、この森の異常が歯車を外した途端に起きたって仮定が要るけどね。
誰かが歯車を外したなら、この宙に浮いてる台座に誰かが近付いて、歯車を奪った筈。となれば、必然的に……! ビンゴ!

「親方! それかエンさん達でもいいわ。何か、色を付けられる木の実か何か無いかな?」
「それなら僕、お手紙書く為のインクとかあるよー!」
「オッケー。うん、紙もあるみたいね。ならこうして……」
「キーネちゃん、それは?」
「親方の説明が正しければ、この台座に近付くポケモンは滅多に居なかったのよね? そんな中で……っと。こんな足跡が、この台座の近付くあるのは不自然じゃない?」

 不自然な草の凹み、それの淵にインクを塗って紙を当てたら、我ながらなかなか綺麗に足型の淵枠が取れたわ。本当なら泥とか詰めて固めて、しっかり足型を取りたかったけどね。

「そうか! 歯車を外した時に時間が止まったとすれば、台座の近くの足型は歯車を奪ったポケモンの物になるって事か!」
「ご明察。この感じは……足の形は、エンさんに少し似てるかもしれませんね」
「前に2本の爪で、後ろのこれも爪……うん、なるほど確かに」
「って事は、盗んでいったのは鳥ポケモン?」
「んー、どうだろ? 違う気がするなー。鳥ポケモンなら、もっと細いような足型になるんじゃないかなぁ?」
「でしょうね……まぁ、ここで分かるのはこれくらいかな。後手掛かりになりそうなのは……!」

 上? 何か……居る。
見上げると、空の青の中にぽつんとオレンジ色のポケモンが浮いてた。この感じ……確かガディと対峙した時の感覚に似てるわね。

「? キーネちゃんどうし……」
「来る……皆、注意して。かなり不味い相手だわ」

 向こうもこっちに気付かれた事が分かったみたいね。勢い付けて、真っ直ぐに突っ込んできたわ。

「来た! 皆下がって!」
「うぉぉ!?」
「ひゃあぁ!? 何!? 何なの!?」
「これって、まさか!?」
「まさか、でしょうね。気配だけで毛皮がビリビリする感じ……油断すると、軽ーく倒してくれそうだわ」

 並大抵のポケモンじゃないのは明白。種族は分からないけど、恐らくこいつが、ここの歯車を守っていたポケモンなんだろうね。

「キュォォォ……」
「降りてきた、けど……動かない?」
「油断しないで。気を抜いたら……」
「話は、出来るかな……? 俺達はここの調査に……」
「エン、ダメ!」
「ちぃっ!」

 ちょっとは警戒して欲しかったなぁ。まぁ、しょうがないか。

「ちょっと失礼!」
「うわっ!?」

 不用意に近付いたエンさんに、奴が腕……って言っていいのかしら? オレンジと青色の触手みたいな腕を伸ばしてきた。無防備では受けさせられないし、やるしかないわね。
触手がエンさんを捉える前に、私がエンさんに体当たり。これでエンさんは大丈夫。後は私が防御して耐えないとね。

「くぅぅっ! ……つぅぅ、ガッチリ防御したつもりだけど、衝撃強過ぎだっての」
「キーネ、大丈夫!?」
「なんとか、ね」
「ご、ごめん! 俺が油断した所為で」
「話は後。どうやらあちらさん、私達の事を敵だって認識したみたいね。ここから先は、カットには入れないかな」
「フゥゥ……フォアァァァァァ!」

 雄叫びを上げるだけで空気が震える。本気、出してくるみたいね。
触手状だった腕が巻き付いて、一つになったと思ったら腕になった。どういう体してんのよ一体。
こっちに伸ばした腕の前に光弾が出来てる。感じからして、エスパータイプかな? うっはぁ、相性最悪なんだけど。

「全員散開! 纏まってたら良い的だわ!」
「うおぉ、り、了解!」
「ひゃああ! あ、危ないなぁもぉ!」
「皆落ち着いてよく見て! 避けられない攻撃じゃないよ!」

 親方もエンさん達も、回避は大丈夫ね。なら攻め手なんだけど……光弾の撃ち出しが速くて、距離を詰め難い。こっちも遠距離攻撃で相殺出来ればいいんだけど、私がそれをやっちゃうと後がなぁ。

「これで、どうよ!」

 あれは……マジカルリーフ! ミドリさん特殊技使えたのね、助かるわ。
威力は……よしよし、上回ってはいないけど相殺出来てるわね。けど片手で出す光弾で防がれちゃってる。もう片手をなんとか出来れば……!

「僕も行くよー! はぁぁぁ……たぁぁぁぁぁぁ!」
「っとぉ!? 何これ、ハイパーボイス!?」
「グゥゥ!?」
「! 今なら……踏み込める!」

 あれは、光の壁? なんでもいいわ、隙が出来た! エンさんに続いて、私も踏み込める!

「これでも、喰らえ!」
「フゥッ!」
「避けた!?」
「逃さない!」

 エンさんの出したブレイズキックは、奴が後ろに飛び退いて外れ。けど、私の追撃までは捌き切れないわね。
接敵して、ボディに掌打5発。更に踏み込んで発勁も叩き込んでやろうとしたけど、先に奴の拳が向かって来たから後退。深追いは、自爆行為ね。

「ふぅ、これだけやって掌打5発か……」
「けど打ち込めた。奴も少しは弱っ……て……」

 ない、みたいね。なんでも無さそうにこっちを睨みつけてるわ。やっぱり技を捻じ込まないとダメそうね。

「大丈夫、繰り返せば倒せる筈だよ」
「そうね。それそれー!」

 親方とミドリさんの攻撃がまた奴を捉える。……変ね? 動かなくなった?
ジッとしたかと思ったら、奴が光に包まれた。今度は何をするつもり?

「動かない……? なんにせよ、チャンス!」
「あ、エンさん待……」

 私が言う前に、エンさんは奴に飛び込んでいった。それに合わせて、ミドリさんと親方は技を止める。さっきはこれで捉えられたけど……。

「はあぁ! ……な?」
「あ、あれ!?」
「あれは……」

 奴の姿が……変わってる!? なんかさっきまでよりがっしりした姿になってるし!
エンさんのキックは、分厚くなった腕に完全に防がれちゃってる。多分、ミドリさんや親方の攻撃も防がれたみたいね。

「……ハァッ!」
「しま、ぐはぁ!?」
「エン!? 大丈夫!?」
「不味い、あの姿でも攻撃出来るんだ! やらせる、かぁ!」

 エンさんは奴のあの分厚くなった腕での薙ぎ払いがお腹に直撃。さらっと見た感じ、命に別状は無さそうだけど……お腹の中の物を吐いちゃったみたいだし、すぐには動けないわね。
当然そうなると、ミドリさんはエンさんを助けに行く。が、固まれば奴は嬉々としてそこを狙うわよね。ま、させないけど。
どうやらこれは防御に特化した姿ってところかしら。こっちの攻撃は通らないけど、相手の攻撃もさっきまでに比べたら消極的だわ。
ならとことん手を出し続けるわ。私の推測からして、さっきまでのが攻撃特化の姿。エンさんが一時的にダウンしちゃった今、あれに戻られるとちょっとばかし辛い。最悪、エンさん達を庇って全員やられてはいさようならって言うのも考えられる。だったら変身なんてする時間を与えないわよ。

「親方はミドリさんと一緒にエンさんをここから遠ざけて!」
「う、うん!」
「フォァ!」
「させるかバカ!」

 どうやっても纏まった方を先に始末したいのか、3匹を狙おうとする。動きが遅いから、私が先に攻撃する事でカットしてるけどね。
けど、手をこまねいてるのはこっちも同じ。素手で殴ったり蹴ったりしたらこっちが痛いくらいだし、発勁もこの腕で防がれたら気が通らないだろうし……やり難い相手ね。

「さぁて、どうしたもんかな」
「フゥゥ……」

 相手も狂ってるのかと思ったけど、存外こっちをよく見てるわ。手を出してきてくれるなら、カウンターで発勁を捻じ込んでやるんだけど、それをさせないようにこっちから手を出すまではガッチリガード、か。硬直状態だわ。
この状態を打破する方法、無くは無いのよね。まぁ、ほぼ勝ち目の無い賭けをするようなものだけど。
上手く行けば、奴を倒せる。が、私は今日もう行動不能になる。これは絶対。
失敗すれば、奴を倒せない上に私は戦闘不能、更に一歩間違えば私が命を落とす。実際、前にそれで生死の境を行ったり来たりした事あるし。
だから、本気で本当に奥の手って奴。それを今する必要は……無い事を祈るわ。

「そうするには……今奴を倒さないとね!」
「…………」

 にしても、本当に動かないわね。まあ、奴からすれば飛び込んできたのを迎撃すればいいだけだし。私としても、時間を稼げば親方とミドリさんが戻ってくるだろうから構わないんだけどね。ま、これは奴も気付いてるだろうけど。
不意に、奴がガードを解いた。諦めた? いや……違う。また奴が光に包まれた。元の姿に戻る気? だとしても、この隙を逃す手は無いわね。

「我慢勝負は私の勝ちよ!」

 発勁を練りながら飛び込んで、捉えた。……筈だったんだけど、居ない。私の発勁は空を切って、奴が居る筈のところには……何も居なかった。

「な……!」

 もう一瞬気付くのが遅かったら、危なかったかな。後ろを振り返るようにしながら防御体制に入った私が、衝撃を受けるのにはほんの一瞬しか時間無かったし。
防御して弾かれて、体制を整える。何から攻撃を受けたのか……まぁ、大体予想は出来るわね。

「つぅ……やれやれね。また随分スマートな姿になったじゃない」
「シャアッ!」

 な、速い! なるほど、力と守りを削って速さを取ったって訳ね。ギリギリ攻撃を弾くのが間に合ってるけど、目で動きを追える限界に近いかな。

「全く、嫌な事ばかり出来る奴、ね!」
「シュウゥゥ……」

 攻撃に回ろうにも、速くて捉えられない。どうやら本気で私を潰しに来たみたいかな。嫌になるわぁ。

「キーネ、大丈……うわぁ!?」
「親方、今こっち来ちゃダメ! 巻き込まれる!」
「シャァァァ!」

 これで言葉が通じれば説得なりなんなりを試みるとこだけど、それは無理。となれば、是が非でも倒すしかないのに攻撃が当たらない。打開策は……奴を上回る速さ、かな。
出来なくはない。あ、さっきの奥の手とは別の方法でね。まぁ、こっちも使えば暫く動けなくなるのは変わらないけど。ま、命に関わる事はこっちには無いけどね。
けど、準備時間が要る。力を溜めて集中する時間が……。

「たぁぁぁぁぁぁ!」
「!? 親方?!」
「クゥッ?!」
「キーネが頑張ってるのに、見てるだけじゃ親方失格だもんね。キーネ、何かやりたい事あるんなら、ちょっとだけなら僕が頑張るよ!」
「……分かった、お願い!」
「うん! よーし、キーネには触らせないよー!」

 正直この提案は助かるけど……やっぱり親方、奴の動きを捉え切れてない。のに何故か直撃は避けたり躱したり出来てる。何故!?
でもあまり保ちそうじゃないし、早く準備しなきゃ。集中して……。
体を流れる波導に意識を向けて、循環を確認。掴めたら、その流れを速めるように、体の隅々まで余す事無く満たすように流していく。
波導活性……一時的に自分内の波導の循環を加速させる事での限定自己強化! と言うか使ってない体の余力を強制的に行使出来るようにするの。僅かな時間だけだけどね。

「親方お待たせ! 離脱して!」
「わ、分かった!」
「ヌゥ!?」
「気付くのが……遅い!」

 循環終了、一気に決める! と言うか決めないとダメ! ようは無理矢理体のリミッター外してるだけだから、切れたら揺り返しで全身ボロボロになるのよ。瀕死になる代わりに全能力最大強化って事ね。
よし、奴の動きを余裕で追える、少しゆっくりに感じるくらいだわ。なんてゆっくり観察してる場合じゃない、畳み掛けさせてもらうわ。
ボディへの一撃を皮切りに、次々に打撃を叩き込む。打つ度に体が軋む。けど奴の体だって、打たれた通りに曲がり、ダメージを受けてる。倒れる前に、倒す!

「つぁぁぁぁぁぁぁ!」
「グォ、ァァァァ!?」
「ふっ……飛べ!」

 打ち上げる一撃。奴は今の私について来れてないから、無防備に受けて空を仰いだ。……次で、終わりね。
追撃で奴の胸に手をついて、地面に叩き付ける。固定した状態での活性発勁。これで倒せなかったら私はお手上げだわ。

「これで、終わりだぁ!」
「!?!?!?」

 捻じ込んでやった気が奴の体を貫いて、痙攣を起こさせる。やり過ぎ……たかな?

「ガッ……ァ……」
「……息は、残ったわね。よか……ぐっ、う!」

 ……安心したと同時に、強化が切れた。痛い、イタタタタタ! 体、体が千切れるぅ!

「うっ、ぐぁぁぁぁぁ!」
「き、キーネ!? どうしたの!?」
「あっ、うっ、がぁぁ……」

 正直もう息して体が少し動くだけで痛い。何度も体が切り裂かれてる感覚とか言えばいいのか、とにかく痛過ぎて動けない。痛くて頭がキンキン言ってるわ。
これが、波導活性。私が編み出した、使っちゃいけない技の一つ。使っちゃいけない理由はこの通り、使えば最後、当面私は使い物にならなくなるから。
なんとか痛みを堪えながら、仰向けに体を横たえる。……あぁ、心配してくれてるのね。不安そうな親方が私を覗き込んだわ。

「大丈夫……じゃなさそうだね」
「ちょっと……暫く、動けない、かな」
「分かった。とりあえず、まずは寝てて」
「あいっ! つぅぅ……そう、させてもらうわ」
「うん。それで……」
「おーい! だ、大丈夫!?」
「済まない! 奴は……キーネちゃん!?」

 ミドリさんと、エンさんも戻れるだけ回復したのか、戻ってきたわね。これなら、私が動けなくても多分大丈夫かな。
ポケモンズの2匹も慌てて駆け寄ってきてくれた。まぁ、ピクリとも動けなくなってるのを見たら、誰だって心配するか。
親方が何があったかを説明してくれて、2匹も理解してくれたみたい。今揺すられたりしたら多分痛みで昇天させられそうだから、そっとしておいてくれて助かるよ。

「もう、どうしてそんな無茶を……」
「キーネが無茶してくれなかったら、きっと僕や2匹が危なかったんじゃないかな……それくらい、このポケモンは危険だった」
「キーネちゃん、君は一体……」
「……少しだけ、他のポケモンより強くなりたいってだけの、ただのリオルですよ。ぐっ、ぅっ」
「無理に喋らないでいいよ。一生懸命、僕達の事を守ろうとしてくれたのは分かってるから」

 それが分かってくれてるなら、まぁいいか。我ながら、イレギュラーな存在だって自覚はあるからね。
さて、首動かしたくないから見れないけど、私の隣で伸びてる奴は大丈夫かしらね? 誰かに確認してもらおうか。

「ところで、隣の奴はどうなってます? 息はあると思いますけど」
「あっ、そうね。えっと」
「……心配は、無用だ」

 えっ、しゃ、喋った? ひょっとして、正気に戻ったのかな?

「体が、動かない。私は、戦闘をしていたんだな」
「うん。君は、この森の歯車の守護者だね?」
「その通りだ。私は、デオキシス。この森を守護し、時の歯車を見守る者……だった」

 デオキシスか、聞いた事無いポケモンね。けど守護者だって言われたら納得。二度戦いたい相手ではないわね。

「僕はプー。この森の異常を調べに来たんだ」
「そうだったか……狂化暴走していたとは言え、襲いかかった事を詫びよう」
「って事は、はっきりじゃなくても覚えてるみたいね。なら、私も謝らないと」
「不要だ。君が止めてくれなければ、私は取り返しのつかない事をしていただろう。……済まなかった、相当な無茶をしたようだな」
「まぁ、ね。デオキシスだっけ。正気になったんなら、この森で何が起こって、今どうなってるか……教えてもらえる?」
「そうだな……私が知り得た限りだが、協力しよう」

 話しながら少し回復したのか、隣のデオキシスはふわりと体を浮かせて、また光に包まれた。なった姿は、最初の接敵した時の姿みたいね。
親方がまず聞いたのは、何故森がこんな状態になったか。これは予測通り、時の歯車がここから持ち出されたのが原因らしいわね。

「時の歯車は、時を調律する要。あればその周囲の時を制御、修復しているが……外された所為でこの森に時の歪みが一気に流れ込み、森の時間が停止してしまった」
「時の、歪み?」
「各地に発生している空間の歪み、あれが歪めているのは空間のみに非ず。時もまた、徐々に歪められ……狂い、停止へと向かわせているのだ」

 ……やれやれ、今日は休日になる筈だったのに、こんな重大な話を聞くような事になるとはね。
空間の歪み、これは不思議のダンジョンの事だわね。それがそんな危険な物だって、誰も思ってないだろうね。
けど、その異常は各地にある歯車が正常に機能してれば、大きな異常にならないよう制御されてるんだって。なるほど、確かに手出しなんか出来ない、しちゃいけない訳だわ。

「なら、ここの歯車が無くなってしまったら、この森とこの周囲は……」
「……しばし待っていてくれ」

 そう言って、デオキシスは空に昇っていく。何する気なんだろ?
浮いたデオキシスが力を溜めて……周囲に拡散させた? 凄い、空に光のカーテンみたいのが伸びていく。綺麗……。あ、戻ってきた。

「これで、暫くは進行を抑えられる。定期的に、思念のオーロラで森を包む必要はあるが」
「凄〜い! 流石、歯車の守護者だね」
「……歯車を奪われてしまった私は守護者として失格だが、事態の収拾には尽力しよう」
「それよ! そんな大事な歯車、一体何処の誰が奪っていったの!?」
「それは、分からない。どうやら私が森の治安維持の為にこの場から離れている際に、歯車は持ち去られてしまったんだ。済まない」

 うーん、悪党についての情報は無しか。そう都合良くは行かないものね。

「うん、実行犯について分からなかったのは残念だけど、頑張りに対する報酬としては十分な情報かもね」
「だね。ギルドに戻ったら、この森は今危険な状態にあるから入らないようにって皆に伝える事にするよ」
「感謝する」
「私達も、一旦詰所に戻って、今の話を力を貸してくれそうなポケモンにしてみるわ。もしかしたら、何か分かるかも」
「そうだな。ネイティオ辺りに聞けば、何か分かるかも知れない」

 其々に次の行動の指針は決まったし、今回の探検はこんなところかな。あ、一応足跡の事はデオキシスに伝えたよ。時が止まった日にそんなポケモンが居なかったか、デオキシスも調べるって約束してくれたのは有難いね。
さて帰ろうかって事になって、私は親方がおんぶしてくれる事になった。まだ動けないけど、まぁ揺れに耐えられる程度までは休ませて貰ったしね。

「リオルのキーネ、と言ったか」
「ん? どうかした?」
「君に、最大の感謝を。君の一撃が、私を蝕む闇を吹き飛ばしてくれた」
「困った時はお互い様ってね。ま、私も久々に手応えのある相手と戦えて、ちょっと楽しかったし」
「た、楽しいって……キーネちゃんも変わったところあるわねぇ」
「けど、キーネちゃんが居てくれて本当に助かったな。俺達とプクリンだけで来てたらどうなってたか」
 「こうして話が出来る状態には出来なかったかもね。じゃ、戻ろっか」
「森の出口までだが、送ろう。さらばだ、勇敢な探検隊よ」

 おぉ、体が浮かんだかと思ったら、テレポートしてくれたみたい。ち、着地の衝撃で痛かったのは我慢しておこう……痛いよぅ。

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っと、大分森で時間使っちゃったから、大分日も傾いて来ちゃったか。帰る頃は夕方か、暗くなってからかな?

「うーん……これは、今日はタウンにお世話になって、帰るのは明日にするか」
「賛成。色々あって、なんだか疲れちゃった」
「分かった事もいっぱいだしねー。キーネは大丈夫?」
「こうやって乗ってる分にはね」
「分かった、何かあったら言ってね。よーし、タウンに帰ろー!」

 機嫌良さげな親方を見てると、重い話で沈んだ気分もちょっとは軽くなる気がしてくるわね。
そうだ、帰る間暇だし、ちょっと気になってる事聞いちゃおうかな。エンさんのあの発言についてね。

「エンさん、少し気になった事があるんですけど……」
「うん? なんだい?」
「森に入った時に、ポケモンになって、って言ってたのが気になってまして。なんだかまるで、ポケモンになる前があったみたいだなーっと」
「あぁ……そう言ってたっけ。もう随分こっちにも馴染んだと思ったけど、根っこは根っこ、か」

 恐らくだけど……エンさんは……。

「信じられないかもしれないけど、俺は………元々バシャーモ、いや、アチャモだった訳じゃない。この世界には居ない、じゃないな。この地方には居ない人間……ヒトだった」

 やっぱり、そう来たか。なんでだろう、そう言うんじゃないかなって思ってた。ヒト、人間……アークの過去に繋がるかもしれないものの一つ。

「キーネちゃん、あんまり驚いてない? やっぱり信じられないよね、エンがヒトだったなんて」
「信じられない反面、こんな珍奇な出会いが2回もあるなんてって言うのがもう半分ってところですかね」
「2回目? それってどういう事だい?」

 聞く以上、こっちの事情も話さないとね。これでアークに似た状態なら、アークについてもまた何か分かるかもしれないし。
エンさんは私の話を真剣に聞いてくれてる。……親方の耳も反応してるから、聞き耳は立ててるみたいだわ。

「記憶喪失……それに、人間だった筈だと言った、か。確かに、俺に近い状況なのかもしれないな」
「なら、また星が……?」
「いや、その予兆は何も起きてない。仮にそのニャース君が俺に近い理由でこの世界に来たんだとしたら、星の落下とは違う理由だろうな」
「えーっと、つまりどういう事で?」
「あぁ、ごめんごめん。実は、俺がこの世界に来たのには理由があったんだ。来たと言うか、正確に言えば呼ばれたって言った方がいいかな」

 呼ばれた? つまり、何かがエンさんをこっちの世界に連れて来たって言う事?

「何が俺を呼び出したのか、それは分からない。ひょっとしたら、滅びを回避したい世界の意思、みたいなものに呼ばれたのかもしれないな」
「それはまたどうして?」
「俺が呼ばれた理由、果たした役目は……この世界に落ちようとしている星、隕石の落下を阻止する事だったからさ」
「来る時に話した異常気象、あれは今エンが言った星が近付いて来ていたのが原因で起きてたんだよー」

 は? ほ、星? 隕石が降って来てたって……エンさんやミドリさんの表情からして、本当の話みたいね。

「あの時は、沢山のポケモンの協力で俺は役目を果たせた。って、ごめん、話が逸れちゃったね」
「あぁいえ、大丈夫です」
「何が言いたかったかと言うと、俺と同じように呼び出されたとしたら、多分そのニャース君にも何かしらの役目があるんだと思う。んだけど……」
「それを知る為のアークの記憶は無し、結局そうかどうかの裏付けが得られないから振り出しに戻る、か」
「うぅん、力になれなくてごめん。なんだか今日の俺、ダメダメだな」
「ほ、ほら、そんな日もあるよ。元気出して、ね?」

 ……なるほど、良いコンビだわ。聞いた限りだと、ミドリさんはエンさんがこの世界に来た時からずっと相棒を務めてきたみたいだし、そりゃあ生涯のパートナーになっちゃう訳だわね。
にしても役目、か。アーク……そんなものを背負っちゃってるのかな。まぁ、仮に本当にヒトだったら、だけどね。

「あ、でもこれだけは伝えておくよ」
「え? あ、はい」
「もしそのニャース君が俺と同じだとしたら……この世界にまた、何かが起ころうとしているんだと思う。そして、それにニャース君は立ち向かわないとならなくなる筈だ。……出来る事なら、力になってあげて欲しい」
「……エンさんにとっての、ミドリさんみたいに、ですか?」
「え!? あ、いや、私みたいにかどうかは別としてね!?」
「ふふっ、ちょっと揶揄っただけですよ。でもそうですね、私なりにはなりますけど、そのつもりです」
「うん! 聞いちゃったからね、何かあったら僕もお手伝いするよ!」

 助かる援軍だね。ま、なるべく頼らないようにはするつもりだけど……なんて、この様じゃあ言えないか。
……今の話を聞いて、もう一つ、疑問が出来た。ヒトからポケモンになったなんてイレギュラーであるエンさんは、この世界にとって本来は異物。緊急事態で呼び出されはしたんだろうけど、その役目が終わったら。終わったら……。
いや、止めよう。今ここにエンさんは居る。それが、きっと答えなんだ。そう思っておく事にしよう。

「はぁ……なんだか色々あって疲れちゃったなぁ。私、本来は今日お休みだった筈なんだけど」
「ご、ごめんね? 巻き込んじゃって、一番頑張ってもらっちゃって」
「ははっ、じゃあ今度、何か埋め合わせしてもらおうかなー」
「う、埋め合わせー? セカイイチならあげれるよ!」
「んー……ま、考えておくわ。そのセカイイチってリンゴは、一個貰って食べるより半分こして食べた方が美味しいしね」
「! あははは、うん! 友達友達ー!」

 結局仲良いんだねーなんてミドリさんに言われながら、4匹で笑いながらの帰り道。なんだか、アークとガディの顔が見たくなっちゃった。情けない姿はあんまり見せたくないし、もうちょっとおんぶして貰って休んだら、自分の足で歩こうかな。
けど、親方との探検も、なんだかんだ悪くなかったな。そうだ、今度もっと普通な探検に出掛ける時にまた誘ってもらおうか。ゆっくりのんびり、楽しみながら出来る探検の時にでも、ね。

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と言う事で、親方活躍回&原作探検隊の前作、救助隊シリーズの主人公&パートナーゲスト回でございました。何処かで活躍させたい、登場させたいと言う作者のワガママから生まれたサブストーリー、如何でしたでしょうか。
回り始めた運命の歯車と、アークとキーネの物語、次の更新は何時になるかは未定ですが……またお付き合い頂けましたら幸いにございます!

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