ポケモン小説wiki
燻ぶる炎に新たな輝きを の変更点


writer is [[双牙連刃]]

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「ソウ、リィ、どっちも準備出来たか?」
「バッチリっス!」
「僕も大丈夫。始めよう、ライト」

 庭ではソウとリィが対峙している。今回俺はこいつ等の組み手の審判さ。
ルールは簡単、相手に五回タッチした方の勝ち。で、一回タッチされる度に仕切り直しで再スタートってなってる。
戦闘指南も、たまにやってやってる内に実戦形式の物に移行した。話聞くだけよりも、体動かした方が経験になるからな。
どっちも真面目に話聞くし、分からないところは補足で説明してやったり見せたりしてるからなかなか面白い事になるだろう。

「改めて言う必要は無いかもしれんが、相手にダメージを与えるのが目的じゃない。技を出したらペナルティで2ポイント相手に入るからな」
「うぃっス!」
「よし、始め!」

 ちょっと教官って奴をイメージしてみた。こういうのやるなら、その方がらしいだろ?
先手必勝と言わんばかりにソウはリィ目掛けて特攻。リィは、それを迎え撃つ形を取っている。初手は、リィが取るな。

「もらったっスー!」
「僕がね」

 振り下ろされるソウの腕を、リィは最小限の動きで避けた。そして、その腕にあっさりと触れてみせる。

「ほい一本。リィの先制だ」
「ありゃ!?」
「ソウ兄ぃ駄目だよ? 迎え撃とうとしてる相手に真正面から行ったら、簡単に反撃されちゃうよ?」
「う~、そうだったス~」

 うむうむ、ちゃんと思い出しながら組み手をやってるみたいだな。教えた甲斐があったってもんだよ。
能力的に不利だが、リィには知識と記憶力、そして再現能力がある。最後のは何かって? この組み手の中で見れるだろうさ。
リィ達が並び直したんで第二戦始め。ふむ、ソウも反省したからか、まずは様子を見合う静かな立ち上がりになったな。
ソウもリィも相手にフェイントを掛けながら、相手にどう接近するかを窺ってるってところかな。こういう出方の読み合いは本来トレーナーの役目。だが、ポケモンが出来ても百益あって一害無し。柔軟な思考を養う為には絶対必要さね。
おっと、リィが動いた。一気に距離を詰めて、ソウの手が届く位置まで進んだ。さて、どうするんかな?

「うにぃ、引っかからないッスよ!」

 腕を横に振ってソウは応戦。が、リィは急停止。腕は空を掻いた。

「よし!」
「油断大敵ッス!」
「え? わっ!」

 横に跳んだリィは、ソウの体が流れるのを誘導したかったようだ。が、ソウはそれに乗らなかった。リィの足元を狙って、さっき振った腕を返す。
それに驚いてリィは跳んで回避しちまった。はは、まだ詰めに甘さがあるのはしょうがないか。

「タッチッス! これでイーブンッスね」
「しまったぁ~」
「ソウもよくやったじゃねぇか。リィの狙い、読めたのか?」
「リィっちは賢いッスからね。確実にタッチ出来る様に動くと思ったから、大振りしないようにしたッス!」
「ソウ兄ぃなら、目の前まで行けば体が流れると思ったんだけどなぁ」
「どっちもお互いの事を知ってんだ。それも加味して戦略を練らないと、裏を掛かれちまうぜ?」

 しかしどうして、どっちもなかなかに動けるじゃねぇか。俺がちょこっと教えただけなのにこれだけやれるんだから、経験積めばどっちもまだまだ強くなりそうだ。
こんな調子で組み手は進んでいった。一進一退、まさにその言葉が当てはまる良い勝負だぜ。
そして、リィが1ポイント優勢な状況で第八戦。そろそろどっちも疲れてくる頃かね。

「これ、結構しんどいッス~」
「実戦じゃないにしろ勝負は勝負。考えながらやればそれだけ疲労もするさ」

 ん、今の俺の一言にリィの耳が僅かに揺れた。何か、思いついたな。
俺の掛け声に合わせて、今度は両者が同時に動いた。一気に勝負を決めに行くつもりらしい。
が、それならリーチ的にもリィは不利。さて、どうする?

「頭使わない接近戦なら負けないッス!」
「それは、どうかな?」

 な、なんか一瞬リィが俺に見えたぞ。言い回しとか、俺にそっくりだったぜ。
ソウの腕の一振りを、リィは見切って避ける。が、初戦ですぐに触れられたからか、警戒してるソウの返しも早い。
しかし、それにリィが触れる事は無かった。僅かな動きで、全てを避けていく。あれは……最初の授業で俺がソウにやって見せた動きだ。

「め、目の前に居るのに全然当たらないッス~」
「ほらほら、反撃してこないと僕がポイントしちゃうよ? それとも、もうギブアップ?」

 挑発まで……あぁ、これがリィの再現力。今までに見た動きなんかを、トレースしちまうんだよ。
これ、やられた方にはたまったもんじゃねぇよな。スラスラっと相手は自分の攻撃を避けるのに、自分は攻め手を緩められない。もし今ソウが引こうとしたら、その一瞬で勝敗が決まる。その一瞬を見逃すなって、俺はこいつ等に教えてきたからな。
が、このまま攻撃を繰り返しても、ソウは限界になる。踏んだり蹴ったりだぜ。
これをやろうとする度胸が無きゃ出来ないことだがな。まったく、リィの根性も見上げたもんだぜ。
さっきまでの疲労もあるソウに、いつまでも腕を振る力は無い。見てるだけでもう限界だって分かるぜ。汗びっしょりだ。

「ひぃっ、はぁっ、うぎぃ~!」
「はい、お疲れ様」
「あ、ふぎゅ!?」

 大きくソウの体が流れたのを見計らって、トンッ、とリィはソウの頭にタッチしてそのまま後ろに跳んだ。

「勝負あり。リィの勝ちだな」
「ふぅ……よし」
「うぐぅ~、なんか最後の、師匠とやってるみたいだったッスよ~」
「まぁ、ライトの真似したからね。でもこれ、凄いドキドキするよ……あんまりやりたくないかな」
「相手にくっ付いたままってのはあまりよろしい状況じゃあねぇ。出来たらかなりのメリットはあるが、大抵は先にこっちがやられる。過信し過ぎるなよ、リィ」
「うん。分かった」

 しっかし、幾ら手加減してる状態でやってたとはいえ、まさか俺の動きを完全にトレースするとはな……センスってのは恐ろしいやねぇ。
さて、それじゃあ組み手はこれで終わりにするとして、疲れてるこいつ等を乗せて家に戻るとするか。
開けたままにしてた窓からリビングに戻って、まずはソウを下ろす。体が温まってるからか、ついでにリィも下りてソファーの上に座った。

「今日の結果だが、どっちも俺の教えた事は頭に入ってるみたいだな。リィの勝ちではあったが、ソウも良かったぜ」
「マジッスか!? 疲れたけど、師匠に褒めてもらえて嬉しいッス!」
「僕はまだまだかな……タッチするだけの組み手だからなんとかなったけど、実際の勝負じゃパワー負けしちゃうだろうし」

 ストイックだのぉ、勝って兜の緒を締めよとは言うが、今のリィはちょいと絞め過ぎだな。

「今はまだそこまで気にするこたぁ無ぇよ。それに、リィはどっちかと言うと相手から距離を取って戦ったほうがしっくりくるだろ。違うか?」
「うーん、確かに」
「ならそれに特化するって道もある。焦らないで行こうぜ」

 頭を撫でてやったら、嬉しそうに尻尾が揺れた。そう、リィの力はこれから花咲いていくんだ。間違った強さじゃない、本当の強さって奴を教えてやらないとな。
なんかソウの奴も羨ましそうに見てきたから撫でてやった。まったく、ちゃっかりした弟子が出来たもんだぜ。どっちも嬉しそうにしやがってよぉ。

「あれ? もう訓練終わったの? 私も少しやりたかったんだけどなぁ」
「おぉレンか。ん? それは?」
「あ、これ? 作ってみたの。よかったら食べてみてよ」

 レンが持ってきた皿の上には、ドーナツやらポフィンやらが小さな山を作ってた。へぇ、菓子作りもやってるのか。美味そうだ。
俺は別に味でも食材でも好き嫌いは無い。野良やってた役得かねぇ? 選り好みして食いもん探してる暇無かったからな。
って事なんで早速一個ドーナツをば。……うん、普通に美味い。んだが?

「どぉ? 美味しい?」
「あぁ、美味いぜ。でもなんか……」
「おー美味いッス~! 流石レンの姉貴!」
「ほんとだ、美味しい」

 言おうとしたら遮られちまった。些細な事なんだが、なんかちょっと変わってる気がしたんだがな?

「へへ、美味しかった? だって、レオ君」
「そ、そうか?」
「へ!?」
「レオ兄ぃ? なんでエプロンしてるの? っていうか、人間さんと一緒に学校ってところ行ったんじゃないの?」

 実は俺、知ってたんだよ。今日はレオがあの男にわざわざ頼んで、家残り組になったのをな。で、理由もちゃんと聞いてた。
しかしまさか、レンに家事を習いたいから残らせてくれ~なんて言ったのには驚いたぜ。前に風呂場で気絶してたのがよっぽど悔しかったそうだ。

「なるほど、これ、レオが作ったのか」
「分かるのか?」
「レンの味付けにしちゃあ甘みが強めだと思ったんだよ。レンの味付けは素材の味を生かすために、少し薄めに付けてるだろ?」
「すごーい、ライトそんなのも分かってたんだ」
「むぅ、気付かなかったな」
「ま、作ってるところ見てないと、断定は出来なかったがな」


 ソウとリィが固まってる。そんなに驚く事か? 美味いのに変わりはないし、俺はもう一個頂こう。
食ってる俺の姿をレオがじーっと見てる。いや、めっちゃ食い難いんだが。

「どうかしたか?」
「い、いや、レンが言ってた事も間違いではないと思ってな」
「ふーん、さしずめ、自分が作った物を美味しそうに食べてもらえるのは嬉しい事だってところか?」
「あはは、やっぱりライトは分かってるね」

 レンもソファーに座って、皿の上に乗った山に手を伸ばす。照れて頬を掻いているレオってのもなかなか新鮮で良いもんだな。

「ほら、ソウもリィも呆けてないで食えよ。疲れてる時は甘いもんが一番だぜ」
「はっ、意外な情報過ぎて頭の処理が間に合わなかったッス」
「でも美味しいし、レオ兄ぃも料理上手なんだね」
「俺は別に上手い訳じゃない。レンの教え方が上手かった訳でだな」
「そうかなぁ? レオ君熱心だったし、上手だったと思うよ?」

 おわぁ、レオの顔がレッドゾーンだ。このままじゃ火ぃ出るぞ火。火事なんて洒落にならんぞ。
とにかく今は、菓子でも摘みながらゆっくり休むとするかね。そうだな……休み終わったらレンの戦闘指南でもするかね。

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 ……手持ち無沙汰になっちまった。いやな、レンの組み手の相手をしようと思ったんだが、その役をソウとリィに取られちまった。色んな相手とやってみたいんだとよ。
で、俺は終わった後の評価をする為にリビングの窓の辺りでそれを見てる事になった。まぁ、あいつ等の自主性に任せるか。
今はリィがレンにルールを説明してる。見立てでは、レンはあの中で一番動ける。ルカリオは伊達じゃないってな。

「隣、いいか?」
「別に構わないぜ。片付け、終わったのか?」
「殆どはレンが済ませてくれてたのでな、すぐに終わった」
「そっか」

 珍しいな、レオの奴が俺の隣になんて座るのは。何時もならこういう時でも俺に近付いてくる事無いのに。
窓の桟に腰掛けて、ゆったりと庭を眺めるレオなんて、これも初めて見るぞ。今日は随分様子が違うな?

「これから何が始まるんだ?」
「組み手……って言うか模擬戦だな。攻撃じゃなくタッチしたら1ポイントで仕切り直しってルールだ」
「なるほど、リィへの配慮という事か」
「あぁ、流石にイーブイ対ルカリオやザングースじゃ実戦形式だと辛いだろ」
「確かに」

 こうして見ると、こいつも俺やレンとあまり変わらないんだな。いつもは取り締まり役って感じで、言っちゃあ悪いが古風な軍人な感があるんだが。
おっ、まずはレン対ソウでやるみたいだな。レンも構えると様になるじゃねぇか。

「しかし、俺達が居ない間にこんな事をやってたとは。通りでソウが、『これからはガンガン強くなるッス!』なんて主殿に意気込む訳だ」
「なんだあいつそんな事言ってたのか? これで強くなるかは分からんっていつも言ってるってのに」
「ん、始まったか」

 リィの合図で真っ先にソウが動き出した。が、さっきのリィとの組み手の時と同じようにあっさり返されてる。学習しろよ。
レンにも指南はしてるんだ、んな手じゃ返されるのは分かってるだろうに……。
二本目、立ち上がりはさっきの組み手とこれまた同じか……レンが接近してソウがそれを阻止。……おぉ!? バックステップしたと思ったら跳びあがってソウの背中にタッチした! レンもやるねぇ。

「ほぉ、レンがこういった事をしてるのは始めて見たが、やるじゃないか。おまけに、ソウの動きも良くなっている」
「へぇ、流石エース、よく見てるじゃねぇか」
「がむしゃらに相手に突っ込んでいくだけだったからな、その頃に比べればよく考えて動くようになった」

 そりゃあ戦績が伸びない訳だ。まったく、そういうのはあの男がきちんと反省してソウに教えることだろうが。なってないな。
おや、様子を見ていたレオがおかしい。どうにも寂しそうな印象を受けるのだが?

「皆、変わり始めているようだな。確実に、前へ」
「少なくともあいつ等は強くなろうとしてる。俺は、それをちょいと押してやってるだけさね」
「……なぁ、ライト。俺は、強いか?」

 ……本当にどうしたんだ? いやに弱気というかなんというか、不安そうな声に俺が驚いたぞ。
そうだな、間違いなく戦力はこの家一番だ。実戦経験もあるし、状況判断なんかも悪い点は見られない。うん、確かに強い。

「手合わせしてるから分かるが、間違いなく強い部類だぜ」
「そうか……」

 本当にしおらしいなぁ。なんかピリッとしてないレオはらしくなくて違和感が凄ぇぞ。組み手は見なきゃならんが、悩みがあるなら聞いてやるか。

「らしくねぇじゃねぇか。どうしたよ?」
「自分でもよく分からん。ただ、最近思うのは、俺は主殿の力になれていないのではないかという事なんだ」

 ふむ、思ったよりも深刻そうだな。真面目に聞いてやらないと、不味い事になっちまうかもしれねぇ。
重い溜息を一つ吐いて、レオは言葉を紡ぎ始める。表情は、明らかに暗くなりだしてる。

「俺は最初から今の主殿の手持ちだった訳じゃない。元々は父君のポケモンだった」
「あいつの親父の?」
「あぁ、主殿がトレーナーを志すようになった時に、力になってやってくれと父君から頼まれ、今に至っている」

 そうだったのか、ちょっと意外な事実だ。親からとはいえ、もらったポケモンって事になる訳か。

「だから俺は、主殿の力になれるように振舞おうとしてきた。ただ、強くと」
「実際あいつは、レオの事を頼りにしてるじゃねぇか。出歩く時は大体連れて歩いてるし」
「でもそれは、結果として戦力の偏りを生んでしまっている。それでは、トレーナーとしての主殿にはマイナスな筈だ」

 なるほど、それが力になれてないって事か。言いたい事はなんとなく分かるぜ。
この家のポケモンは、タイプバランスとしては悪くない。が、強さに差が大きいのは俺も感じてた。とやかく言う気は無かったがな。
それをレオも悩んでたって事か……まったく、忠義に厚いというかなんというかなぁ。

「そんならそれを言ってやればいいじゃねぇか」
「俺は主殿に仕える身、意見をしていいのか分からないんだ」

 ふーん、あいつの事を立ててやりながらも、それで良いのか考えてたんだな。それも結構しんどいよなぁ。
とか何とか思ってたら、レンのストレート勝ちで組み手が終わってる。ま、ソウには相手が悪かったか。

「……別に、難しく考えなくていいんじゃねぇか?」
「何?」
「フロストなんかがそうだが、タメ口聞いてもあいつは特に気にしてないだろ? あいつは、ポケモンだとかトレーナーだとか、そんな分け隔てをしてない。言ってみれば、素直に聞くと思うぜ」
「だが、それでいいのか? 主従の関係が成り立たないトレーナーなんて……」
「形なんて決まったもんじゃねぇんだよ。他がそうだって言っても、それが答えって訳じゃねぇ。面白ぇじゃねぇか。自分の手持ちと相談して強くなっていくトレーナーってのもよ」

 少しだけ驚いたような顔をしたが、レオの顔に僅かな笑みが浮かんだ。ちっとは気晴らしになったかね?
そう、トレーナーとしてのあり方にも、トレーナーとの付き合い方にも答えなんて無い。自分が思うままに、納得のいく形を探していけばいいんだ。
ま、俺みたいな放浪者が言っても説得力が無いだろうけどな。

「確かに、面白いかもしれないな。まったく、常識をことごとく蹴散らしていく奴だ」
「はっ、何かに縛られるのは嫌いなんでね」

 リィとレンが組み手をしてるのをゆっくりと眺める。どっちも相手の動きを見て、読んで、互角にやり合ってる。流石なもんだ。

「しばらく、こうして家に残っているのも良いかもしれないな」
「あぁ。美味い菓子が食えるんなら、俺はそれでも構わないぜ」
「はは……ああいった事をやるのも悪くないと思った。レンに本格的に教わってみるか」
「そりゃあいい。ポケモンだって戦うだけが能じゃねぇんだし、レンにしても助かるだろ」

 牡が家事をやっちゃいけないって法は無い。レオが新たな才能に目覚めたんなら、それはそれで良いと思うぜ。
空を仰ぐレオの顔が、いつもよりもずっと良い顔だ。どうやら、吹っ切れたと思っていいだろう。
っと、庭の三匹が俺達の事を呼んでる。接戦だったが、レンとリィの組み手はレンに軍配が上がった。次は俺達にも付き合えって事みたいだな。

「行くか、レオ」
「よし、この家のエースの実力、改めて認識させてやるとするか」

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 夕方になり、あいつが学校から帰ってきた。トレーナーズスクール、か。優秀なトレーナーを育成するのが目的だかなんちゃらで立てられた学校らしくて、あいつはそこに通ってるんだ。

「ただいま~。いやぁ、レオが居ないとやっぱりきついわ~」
「お帰り、ご主人」
「お帰りなさいませ」

 何故挨拶がレオとレンだけなのか、種明かしをしよう。って言っても、ソウは疲れて俺の上で寝てて、その上で更にリィが寝てるってだけなんだがな。俺? 元々言う気が無い。
寂しげにこっちを見てきやがったか……ちっ、面倒だが言ってやるか。

「お疲れさん」
「冷たい、流石ライト冷たい! もっと俺を受け入れて!」
「あぁ、お断りだ」

 落ち込ませたところで、さっさとフロスト達を出すように言ってやる。いじけながらも、三つのボールが投げられて、三匹のポケモンが姿を現す。
出てすぐにフロストが俺のほうを見た。が、上に載ってるものを見て溜息をついてる。残念、俺に乗って一休みは無理だぜ。

「ただいまです~」
「僕お腹空いたよー。レン姉ちゃんご飯ー」
「出来てるよぉ~」
「よーし、そんなら晩飯にしようか!」

 そういう事なら、ソウとリィも起こすか。揺すってやれば起きるだろ。

「おーい、ソウとリィも起きれー」
「んが? あ、ご主人お帰りッス!」
「んん? あ、もう夕方なんだ」
「……あんた、重くないの?」
「それをお前が言うかよフロスト……」

 ソウ達が降りたのを見計らって今度はフロストが乗ってくる。いや、だから飯だって言ってんだろうが。何故に乗る。
仕方ないからフロストを乗せたままテーブルについた。……はは、食い終わった後に、こいつ等が驚く顔が目に浮かぶぜ。
レオ、そわそわしたらバレるって。特に俺の上に居る奴なんかはその辺の嗅覚が鋭いから、あんまりおかしな事すると目ぇ付けられるぜ。
各種料理がテーブルに並べられ、それぞれに食事を始める。うん、やっぱりいつもより濃い目にはなってるが、良い味付けだ。
おっと、隣で食いだしたフロストも気付いたか? ちょっとばかし不思議そうな顔をしてる。

「あら? 美味しいのはいつもの事だけど、何か変えたのかしら?」
「さ~てな。今はよ~く味わって食おうぜ」
「あんたなんか知ってるわね? 教えなさいよ」
「食事が終わったら分かるって」

 納得いかないって顔に書いてあるが、大人しく食事に戻った。こりゃ、飯終わったらベッド確定だな。やれやれ。
そろそろ皆食べ終わったみたいだ。さっ、レンがあいつに話しかければ種明かし開始だぜ。

「ねぇご主人、今日のご飯どうだった?」
「ん? 美味いに決まってるじゃないか。じゃなかったらこんなに早く食べないって」

 随分とホッとした顔したなレオの奴。内心、美味くないって言われたらどうしようかとハラハラしてたって訳か。

「よかったね、レオ君」
「あ、あぁ」
「え? なんでレオが出てくるんだ」
「お前が今食ってた料理、作ったのレオだぜ」

 いやぁ、固まったな。呆けたまま固まったからアホな面してるぜ。
フロストも目を見開いて固まってる。やっぱり誰でも驚くよなぁ。

「うはぁ、あの時の俺っち達と同じ反応ッス」
「ま、マジで? レオ作なのこの飯?」
「は、はい。といっても、レンが居なかったら作れはしませんでしたが」
「凄いです! 私、まだレンさんに教わってもこんなに美味しく作れませんよ!」

 賛辞の雨に照れたバクフーンが一匹。よかったな、レオ。

「これは流石に驚いたわ。それで味付けが濃かったのね」
「そういう事。隠れてた才能が芽を出したってところかね」
「レオ兄ちゃんが作ったんだー。おかわりー」
「よし、今持ってくる」

 嬉々としてるぜ。こいつは、第二のレン役はレオに決まりだな。
おっと、男が何か考え出したぞ。レオの飯の美味さに、何か閃いたか?

「これは……形振り構ってる場合じゃないな」
「どうしたよ?」
「俺もレンに家事を教わる! そして、飯くらい作れるようになる!」
「いや、ご主人は止めておいたほうがいいよ」

 にこやかにレンが断った。まぁ、あの時の惨状を見れば断りたくもなるわな。いちいちキッチンを壊滅されてたらたまったもんじゃねぇ。
涙目になられても、こればっかりはレンに賛成だ。満場一致で。

「な、なじぇ? 俺に何が足りないって言うんだ?」
「総合的に全て」
「……誰か、俺に居場所を下さい……」

 そんなもんは知らんな。自力で勝ち取れ。ま、この個性豊かなメンツに勝てる見込みは万に一つも無いがな。
おかわりを要求したプラス以外は食事が完了。そして俺はフロストに捕まった。予想通りっちゃあ通りだな。

「あんた何したのよ? レオが料理をするなんて」
「俺は何もしてねぇよ? あいつが自主的にやってみようと思ったんだし」
「ほんとー? なーんかあんたが来てから皆色々変化があるみたいだし、今回も何かしたんじゃないの?」
「そうだな……あれは、俺もちっと関係してるかね」

 レオが、男に真剣な表情で話をしてる。恐らく昼間の事だろうな、男がえらく驚いてるぞ。
男が目を瞑って唸り、そして頷いた。これであいつの懸念の一つも減っただろう。
っと、こっちに来たな。まぁ、事情を知ってるのが俺なんだからそうなるか。

「その分だと、結果は上々か?」
「あぁ、明日からは俺も交代でこの家に残るようになった。ついでに、しばらくは俺抜きでバトルに挑戦してみるとの事だ」
「え、それって、あたし達の負担大きくなってない?」
「あいつがトレーナーとして強くなる為ってこった。まぁ、諦めろ」
「あんた関係無いからってさらっと言わないでよ!」
「ぐぇ、く、首! 首絞まってる入ってるって!」

 後ろからがっちりホールドされたら、幾らなんでも成す術がねぇ。落ちる事は無いだろうがきっつい。
しかもなんか押し付けられてるんだが。お前、羞恥心を持て羞恥心!

「くく、はははは……」
「わ、笑った? ハヤトが居るところでは笑わないレオが?」
「あぁ、気を張るのも止めた。気楽に暮らしてるそいつを見てたら、馬鹿らしくなったんでな」
「やっぱりあんたの所為じゃないの! この~!」
「わ、笑ってないでフロストを止めてくれよレオ!」
「嫌だな。お前には黒星を付けられたままだから、たまにはそういう目に遭ってるのを見てるのも悪くない」

 こ、この野郎、昼間に真面目に悩み相談を受けてやったってのになんて仕打ちだ!
……でも、しかめっ面してるより笑ってるほうがずっといい。ようやく気兼ね無く笑えるようになったようだし、今回は気にしないでやるか。
騒いでる俺達を中心に、他の奴等も笑い出したみたいだ。しょうがねぇ、今だけは道化をやってやるとするかね。

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 さて、新・光の日々も七話目でございます。前の光の日々を抜いたかな? もう完全に別の物語になってるのは気にしないでやって下さい。
前話へは[[こちら>穏やかで、少し熱くて]]
前話へは[[こちら>穏やかで、少し熱くて]] 次話は[[こちら>僕の、可能性]]

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IP:219.115.200.118 TIME:"2012-06-03 (日) 01:40:11" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?cmd=edit&page=%E7%87%BB%E3%81%B6%E3%82%8B%E7%82%8E%E3%81%AB%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E8%BC%9D%E3%81%8D%E3%82%92" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0)"

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