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無限廻廊 の変更点


作:[[ハルパス]]

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*無限廻廊 [#hb00898d]



注意!この小説はダーク寄りです。グロテスクな描写はありませんが、
・&color(white){監禁};
・&color(white){無理矢理};
・&color(white){近親相姦};
以上の表現が含まれますので、苦手な方はご注意ください。
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*無限廻廊 [#hb00898d]



「ん……」
 僅かに鼻にかかった吐息と共に、彼女は落ち着かない眠りから覚めた。この場にもし彼女以外の誰かが居たのなら、多分「おはよう」と声をかけているところだろう。尤も、窓も時計もないこの部屋では、今が夜なのか朝なのか、そもそも今日が何月何日なのかさえもわかりはしないのだが。
 彼女はゆっくりと手をついて起き上がると、自分の周囲を見回した。決して広くはない部屋の中には、今自分が寝ているベッドがひとつ、そしてオレンなど数種類の木の実と水差しが置かれた戸棚がひとつ、隅の方に置かれた簡易トイレ、調度品はそれだけだった。彼女から見て右端にある扉は、この部屋と外界を結ぶ唯一の場所だが、今は厳重に施錠されていた。金庫用の頑丈な鍵は格闘タイプのポケモンでさえ、一度外から鍵をかけてしまえば、こじ開ける事は困難を極めるだろう。眠りにつく前と何ら変わりない、見飽きた光景に彼女は溜息をついた。
 彼女はのろのろとベッドから這い出した。毎日取り換えられているシーツから、洗剤特有の、人工的だが仄かな良い香りが漂う。一面に広がる花畑を連想させるその匂いに、彼女は分厚い壁に阻まれた外の世界を想った。ある日突然奪われた、光に満ちた世界を。&ruby(かぶり){頭};を振る彼女を、天井の隅に添えつけられたカメラが見ていた。
 まだ眠気の抜けない足取りで彼女は歩き、戸棚から陶器の水差しとコップを取り出す。眠っている間に注ぎ足されたのか、水差しには新鮮な水がなみなみと満たされていた。
 水差しの取っ手を持ちあげ、傾ける。とくとくと軽やかな音を立てながら、コップの中に透明な水が注がれていく。適度なところで彼女は水差しを置き、コップの水を一息に飲み干した。乾いた体が潤っていく感覚を味わいながら、ふう、と息をつく。
 その時。
 突然彼女の身体に緊張が走った。こめかみから垂れた房がぴんと立ち、見えない何かを――正確には、この牢獄に近付いてくるある人物を感じ取る。彼女は意識を集中させて、その人物の動きを見極めようとした。その人物は手に何かを持っているようだった。
 あまりに意識を集中しすぎたせいだろうか。人物自体に気を取られ、当の本人が部屋のすぐ前まで来ていた事に気づいていなかった。彼女は唐突に静寂を破った物音に飛び上がった。
 物音の正体。それはがちゃり、と重く空気を軋ませる金属音。はっとして振り向くと、ダイヤル式の鍵を開けた彼が部屋の中へと入ってきたところだった。彼女よりも一回り以上背の高い彼は、手にした小さな紙袋を脇に置き、それからゆっくりと顔を上げた。
「おはよう。よく眠れたかい、リアン」
 無機質な空間にはまるで不釣り合いな、穏やかで優しい声が響いた。リアン、と呼ばれたリオルは声の主を改めて認め、「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。幼さの残る顔が恐怖に染まる。
「やだっ……来ないでよ……」
 ベッドを挟んで彼と向かい合ったリアンは、なんとか彼と距離を取ろうと後ずさる。必死なリアンを見て、彼は苦笑した。
「リアン、どうして逃げるの? この僕がそんなに怖いかい? ああそれとも、リアンは鬼ごっこがしたいのかな?」
 あくまでも優しい口調のまま、彼は少しずつ、一歩一歩リアンに歩み寄る。本気で追いかければすぐにでも追いつくというのに、彼はあえてそうしなかった。
 彼が一歩近付けばリアンは一歩後退し、背後が壁になれば彼の隙を窺って、一目散に反対側へと逃げ走る。そんなリアンの反応が彼には楽しくて仕方がないのだろう。その証拠に、彼の穏やかな表情はどこか、逃げ場のない獲物を追い詰める肉食獣のそれに似ていた。
「つーかまーえた」
 しばらく追いかけまわした後、ようやく彼はリアンを追い詰めた。部屋の隅で蹲るリアンを、覆いかぶさるようにして抱き締める。リアンは一瞬びくりと震えたものの、逃げ切れない事を悟ったのか抵抗はしなかった。初めの頃より随分大人しくなったリアンを見て、彼は満足げに微笑む。しばらくの間、彼は何も言わずにリアンの柔らかい感触を楽しんでいた。
「……そうそう、今日学校でね」
 リアンを抱き締めたまま。ふと思い出したかのように彼が話し始めた。
「リアンのお友達の――ほら、プラスルのユティちゃん、あの子が心配そうに僕に話しかけてきたよ。『ショットさん、リアンちゃんはまだ見つからないの?』って」
 何がおかしいのか、彼は、ショットは「あはは」と軽い笑いを洩らした。その笑い声を聞いて、リアンの首筋の毛が逆立った。聞きなれたはずの笑い声は、今はもう恐怖の対象でしかない。
「リアンはずっとここに、僕の所に居るのにね? 一応いつものように『ああ、僕もすごく心配してるんだ』って答えたけど。笑いを堪えるのに苦労したんだよ」
 ショットは目を細め、抱き締めたリアンの背を愛おしそうに撫でた。慈しむような、けれども酷く官能的な手つきで。そうしてまたほとんど独り言のように、ショットは語り続ける。
「全く。こうも誰も僕の事を疑わないと、逆に滑稽だと思わないかい? ――まぁ、“妹が行方不明になって悲嘆に暮れる兄”を演じていれば、当然の事かもしれないけど」
 リアンの兄であるルカリオは、また「あははっ」とおかしそうに笑った。
「お兄ちゃん……こんな事、もう止めてよ。早くここから出して」
 ショットの腕の中で、リアンはぽつりと呟いた。幾度となく繰り返したその言葉は僅かに震えていた。
「うーん。それはできないよ、リアン」
 首を傾げ、ショットは少し困ったような顔をした。
「だって、外に出たら悪い虫がついてしまうじゃないか。……あのジュプトルのように」
「……! セル君に何かしたの!?」
 ショットの言うジュプトルとはリアンの同級生で、彼女が付き合っていた相手だった。お互い好き合ってはいるが、真面目なセルは俺達にはまだ早いからと言って、二人は身体を繋げた事は一度もなかった。悪い虫どころか、二人は至極純粋な仲だったのだが、ショットにはそんな事実は二の次らしい。彼にとってはあくまでも“付き合っている”事が問題なのだ。
「いや、何もしてないよ。可愛い彼女を失って悲しみに打ちひしがれる様を眺めるのは、とても愉快だったけどね」
 口調は穏やかだが、吐き出される言葉は明らかな狂気を孕んでいた。いつから兄は狂ってしまったのか、とリアンが悲しむ間もなく、ショットは緩い動きでリアンの耳を甘噛みした。ぞわり、と何かが滲む感覚。
「リアンには……僕がいれば十分だ」
 ぞっとするほど低く、甘く粘つく毒の声で呟いた。
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 いつからだろう。リアンを妹ではなく、女の子として意識するようになったのは。
 早くに両親を亡くしてしまった僕らにとって、リアンは唯一の家族で、そして唯一の“護るべきもの”だった。
 僕が護ってあげなきゃ。小さなリアンには、もう僕しかいないんだから。そんな純粋な保護欲は、時を経るにつれてだんだんと変質していった。
 成長するに従い、どんどん可愛くなっていくリアン。無邪気に笑うリアンを見て、僕の中でいけない感情が芽生えるのを感じたのは、多分僕が中学に入って間もなくの頃だったと思うけど、今となってはもう正確な時期はわからない。とにかく、気がつけば僕は、リアンを一人の女の子として見るようになってしまっていた。
 それでも、頑張って自分を、感情を抑えてきた。僕達は血の繋がった兄妹なんだ。たとえ想いが伝わらなくたって、僕らは兄妹っていう特別な、不変の絆で結ばれているんだ。僕が無理矢理にでも想いを遂げれば、リアンを傷つけてしまう。だから。そう言い聞かせて耐えてきたのに、あの日を境に僕の努力は水の泡となった。
「お兄ちゃん、私ね、好きな人ができたの!」
 ある日、リアンは嬉しそうに僕にそう告げた。
「……え?」
 リアンは今なんと言った? 思考が追い付かずに僕は固まってしまった。心の奥で何かが崩れていくような、重い音が聞こえた気がする。それは張りつめていた糸が切れたというよりは、伸びきったゴムがついに耐えきれず、ぶつんと千切れてしまうような。静かに、だけどはっきりと、修復不可能なほどに崩壊していく不協和音。
「同じクラスのね、ジュプトルのセル君っていうの! セル君ね、すごく優しくて――」
 はにかみつつも目を輝かせて話すリアンに、胸がまるで鋼鉄の手で掴まれたかのように痛くなった。息が詰まりそうで、苦しくて、リアンの言葉の続きもろくに耳に届かない。
 どうして?
 僕の中で色んな疑問が渦巻き、弾けては消えていく。
 どうして? リアンには僕しかいないはずなのに。リアンを一番愛しているのは僕なのに。その瞳に映っていいのは僕だけのはずなのに。どうしてリアンは、僕以外の男の話を楽しそうにするの? どうしてリアンは僕から離れていってしまうの?
 不安で眠れない日々が続く中、僕はたっぷりと悩んだ挙句にある事を考えついた。
 そうだ。リアンをどこかに閉じ込めてしまえば良いんだ。そうすればリアンに触れるのも、話をするのも、瞳に映るのも僕だけになる。リアンを完全に僕だけのものにする事ができるんだ。考えれば考えるほど、それは素晴らしい案に思えた。
 僕は早速その日から、計画を実行するために手を尽くした。両親が残してくれたこの家には、都合よく物置として使われていた地下室があったから、そこを利用する事にした。毎晩、リアンが完全に寝入ったのを確認してから、僕は気づかれないように地下室へ赴いた。散らかり放題だった地下室を片付け、綺麗に掃除して、新しいベッドと戸棚を運び込んだ。休日には防犯グッズが置かれている店に通い、頑丈な鍵と監視カメラを購入して、設置した。
 着々と準備を整えている間に、リアンの“好きな人ができた”は“付き合い始めた”に変わっていったけど、僕にはもう気にならなかった。ともすれば殺意にまで発展しそうなの嫉妬の感情は、なかったと言えば嘘になるけど、あと少しでリアンを僕だけのものにできると思えば我慢できた。
 ようやく完成したこの部屋に、リアンを閉じ込めてからもう何日も経つ。もちろん僕らの通う学校では、生徒に行方不明者が出たって大騒ぎになった。だけども、一応学校では優等生で通してある僕が疑われる事は一切なかったし、逆にたったひとりの妹がいなくなって悲しみに暮れる、気の毒な被害者として見られていた。
 だってそうだろう? 一体誰が、実の兄が妹を閉じ込めているなんて思い至る? 一体誰が、血の繋がった兄妹が禁断の関係になっているなんて想像する?
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「ひっ、あ……」
 白い空間に、艶めいた声が響いていた。
「ふふ……ちょっと触っただけなのに、もう濡れてるよ、リアン」
 小さなリアンを背後から抱きかかえ、組んだ足の上に座らせながらショットは笑った。リアンの肩に顎を乗せ、華奢な身体を腕の中に閉じ込めるような体勢で、彼女の肢体を弄る。
 つ、と軽く秘裂に這わせた指を、ショットはわざとリアンに見せつける。蛍光灯の明かりの下、黒い指先は粘液を纏い、テラテラと光っていた。
「や、やだぁっ……」
 卑猥な光景に、リアンは真っ赤になって顔を逸らす。まだ初々しさの抜けないその仕草が、余計に彼を煽る事になるとも知らずに。
「ちゃんと見てよ、リアン。君から出たものだろう」
 ショットは愛液に濡れた指でリアンの頬をなぞった。粘性の高い液体を柔らかい毛に擦り付けるような、そんな指の動き。ショットは更に言葉でも追い討ちをかける。
「ねぇ教えて。いつからリアンは、こんなやらしい子になったの?」
「それはっ……お兄ちゃんがっ……!」
 早くも泣きそうな声で、リアンは精一杯の抗議をした。
 ここに連れてこられてから、処女だったリアンは毎日のようにショットに抱かれた。必死に泣き叫び、抵抗しても、リオルの彼女がルカリオの彼に力で敵うはずもない。あんなに優しかった兄は、行為となるとまるで&ruby(たが){箍};が外れたかのように、無垢なリアンの身体を暴いていった。何を言っても無駄だった。
「僕が? 人のせいにするなんて、リアンはいけない子だなぁ」
 ショットは優しい口調で言った。けれどもリアンは知っている。否、思い知らされている。穏やかな雰囲気の裏に隠された、彼の本性を。
「あ……ごめんなさいっ……」
「いけない子には、おしおきしなきゃ。ね?」
 慌ててリアンは謝罪したが、ショットは聞き入れなかった。半ばひっくり返すようにリアンの両足を持ちあげると、それを片腕だけで支え、固定する。大切な部分が丸見えのかなり羞恥を煽る姿勢だった。リアンは目尻に涙を浮かべて首を振った。
「ひっ、恥ずかしい、よぉっ……」
「うん、恥ずかしいね」
「――ッ!」
 あまりの恥ずかしさに半泣きになって訴えたリアンだったが、ショットはあっさりと肯定した。その方が、より精神的に優位に立てるのを彼は知っていたのだ。
 押し黙ったリアンを見て、ショットは嗜虐的な笑みをより深くする。予め持ってきていた紙袋をごそごそと漁り、取り出したそれをリアンにかざした。
「な、何……?」
 透き通ったピンク色の、一見卵のような物体。本物の卵と違うのは、その物体から細長いコードが伸びている事だった。俗にローターと呼ばれるものだが、そういった知識に乏しいリアンにはそれが何かわからない。ただそれが自分を狂わせ、啼かせる為に使われる淫靡な道具だろうという事は理解できた。そうでなければ、ショットがあんなにも嬉々として自分に見せつけるわけがない。
「さ、始めるよ?」
 にこやかにショットは宣言して、ローターをリアンの秘所に押し当てた。まだスイッチは入れずに、秘裂の周りを円を描くようになぞる。冷たいローターが熱を持った秘所に触れた瞬間、リアンの身体がぴくりと跳ねた。
「んあ、やだ、怖いっ……」
 得体の知れない道具を押しつけられ、不安げにリアンは口走る。同時に縋るような目で兄を見上げた。
「そんな目で見てもだーめ。これはおしおきなんだから」
 ショットは何の前触れもなくローターのスイッチを入れた。まずは、弱。
「うきゃああっ!」
 いきなり襲ってきた快感に、リアンは甲高い叫びを洩らした。振動するピンクの機械は、本人の意思とは無関係に快感を引き摺り出していく。ショットは先ほどと同じようにゆっくりとローターを動かし、口元を歪ませながらリアンの様子を窺った。
 舌足らずに上げる甘い悲鳴、乱れていく、年齢の割には幼い身体。鼻につく甘ったるい香りに、すぐにでも自身を挿入したくなるところを彼はぐっと堪えた。可愛い妹が善がる姿を、もっともっと眺めていたかった。
「ひぅ、あっ、んあぁっ」
 強制的な快感に、びくびくと小刻みに震えるリアン。不意にショットは悪戯っぽい目になり、充血した秘芽にローターを喰い込ませた。
「ふにゃぁぁぁっー!」
 敏感な部分に容赦なく送り込まれてくる刺激に、リアンは耐えられなかった。可愛らしい嬌声をあげて、達してしまう。一瞬遅れてぷじゅっと大量の愛液が吹き出し、ショットの手を濡らした。力の抜けた身体では大した抵抗もできないだろうと、ショットは持ちあげていたリアンの両足を下ろしてやった。予想通り、リアンは足を閉じる気配すらなく、ぜぇぜぇと荒い息を吐くばかりだった。
「あーあ、イッちゃったね」
 達したばかりのリアンを労わる事無く、ショットは濡れて蕩けた秘所にローターをぐいっと突っ込んだ。しかもご丁寧にも、スイッチを弱から強に切り替えて。
「は、うぁあっ!? も、無理ぃ……!」
 リアンの悲鳴はまるで無視して、蠢くそれを奥へ奥へと押し込んでいく。ピンク色の塊がコードを残して完全にその身を潜めると、ショットは愛液塗れの手を口元へ持って行った。赤い舌で、ぺろりと蜜を舐め取る。
「ふふ……おいしいよ、リアン」
「やぁ、お腹の、中ぁっ……きゅうん、動いてっ……ああぁっ!」
 リアンは急いで胎内の異物を取り出そうとしたが、伸ばした両手は呆気無くショットに捉えられ、右手だけで軽く抑えられてしまった。哀れなリオルは為す術も無く、胎内を暴れまわる機械に翻弄され続けるしかなかった。
 生き物ではない機械は疲れもしなければ手加減もしない。彼女が達しようが、哀願しようが、お構いなしに変わらぬ刺激を送り続けるだけだ。その間ショットはリアンの無防備な胸に手を伸ばし、ぴんと立った胸の飾りを嬲って新たな責め苦を与えていた。
 終わらない、延々と続く快楽の螺旋。強すぎる快感は逆に苦痛でしかない。
「ふあ、また、イッちゃっ……ひ、ああぁぁっ!」
「残念だね、リアン……」
 リアンがもう何度目かわからない絶頂を迎えた頃、ショットがぽつりと呟いた。もはや理性など一欠片もなく、まともな思考すら働かなくなったリアンは惚けた瞳でショットを見上げた。
「君の可愛い様子をもっと眺めていたかったけど……。ごめんね、僕の方がもう限界だ」
 ショットは秘所からちょろりとはみ出したコードを掴むと、一息に引き抜いた。
「うっきゅぅぅ!?」
 秘所が勢いよく抉られ、それだけでリアンは軽く達してしまった。ようやく激しすぎる快楽から解放されて、ぐったりとその場に横たわる。しかし彼女に休んでいる暇は与えられなかった。
「何休んでるの? 本番はこれからだよ」
 ショットは、今度は向かい合わせになる形でリアン抱え直す。すっかり昂った自身を、リアンの秘所に宛がった。
「おねが……やめ……」
 弱々しい声で、リアンは途切れ途切れに哀願したが、やはりショットは気に留めなかった。
 直後、ずぶりとそれがめり込んだ。
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 違う。こんな事がしたいんじゃない。
 僕の下で悶えるリアンを見て、ほとんどなくなってしまった理性が、頭の片隅でそう言った。
 本当はこんな事がしたいんじゃないんだ。無理に身体を繋げて、リアンを泣かせて傷つけても何も得られない。そんな事をしてもこの手に残るのは虚しい温もりと、その場しのぎの快楽だけだ。一番欲しいのはリアンの心。大切な妹の愛情。それが痛いほどわかっているのに。
 けれど、理性の叫びは表層の自分にまでは届かない。
「ねぇリアン、気持ち良いんでしょ? リアンのここは、僕のを咥え込んで離さないよ?」
「ひ、あんっ、言わ、ないでぇっ……」
 違うんだ。本当はもっと、優しくしてやりたい。むしろ身体の関係を持たずに、綺麗なままのリアンを愛してやりたかったのに。でも、こうやって閉じ込めていると、僕だけのものだって証をその無垢な身体に刻みつけたくて、狂ったように犯してしまうのも事実だった。
「あ、はぁっ、んあぁっ、ふあっ」
 疲れきったリアンは、虚ろな目でただ喘ぎ続けた。まるで人形のようなリアンを見て、絶望にも似た罪悪感に胸が締め上げられる。だけど、そんな彼女を可愛いと思っている自分も確かにいた。
 ああ、僕は一体どうすればよかったのだろうか。
 何処の誰ともわからない奴に妹を奪われるくらいなら、無理にでも自分だけのものにしてしまおうとして。リアンを閉じ込めた日の夜、僕は彼女を犯してしまった。護るべき存在だったはずの、彼女の純潔を奪ってしまった。
 あの時の僕は。身体を繋げれば、リアンは僕に依存してくれるんじゃないかと、酷く稚拙な幻想を抱いていた。一方的な愛情なんて、暴力以外の何者でもないというのに。
 快楽に染め上げて、僕の存在を刻みつければ、リアンの心を手に入れる事ができるんじゃないかと、酷く利己的な感情に支配されていた。身体の悦びは心の悦びだと、愚かで都合の良い勘違いをしていた。彼女はあんなにも僕を拒んでいたというのに、だ。
 僕がリアンを手に入れようとするほど、愛そうとするほど、リアンは僕から遠のき、傷ついてしまう。抜け出せない、無限廻廊。
「ひゃあうっ! い、いやぁ……!」
「っ!」
 嫌。鼓膜を通して脳へと流れ込んでくる、拒絶の言葉が僕に深く突き刺さる。反射的に苛立ちが湧き上がり、僕は目の前で揺れるリアンの胸を鷲掴みにした。
「嫌、じゃないだろっ……!」
 先端を指の間に挟んで、強すぎるくらいに捏ね回す。弾力のある胸を、形が変わってしまうのではというくらいに揉みしだいた。
「ふわぁんっ! ひあ、あぁっ」
 ――手に入らないのなら、いっその事、彼女を壊してしまおうか。
 不意におぞましい考えが脳裏を掠めた。それは矛盾した感情だって、自分でもわかっている。
 妹を護りたい自分と、彼女を傷つけて喜ぶ悪魔のような自分。
 愛したくて、でもそれは決して認められない愛で、ただ愛したくて。
 わからない。僕は何がしたいんだろう。何をするべきなんだろう。何が、したかったんだろう。
「リアンっ……!」
 堪らなくなって、僕はリアンに口付けた。できるだけ、狂った僕ができ得るだけ優しく。それは傷つけてしまった妹への、せめてもの償いなのかもしれない。――所詮、自己満足に過ぎないけれど。
 舌を侵入させ、絡ませて、互いの唾液を交換する。溢れる吐息でさえ愛おしむように、深く、深く。精一杯の愛情を込めて、彼女に気持ちを伝えようとした。急に僕の目の辺りから、何か熱いものが零れ落ちた気がしたけど、あれは一体何なのだろう?
「お兄、ちゃん……?」
 熱い何かがリアンに落ち、涙で濡れた頬を伝い流れた、ほんの一瞬。リアンの瞳が生気を取り戻したように見えた。恐怖でも絶望でも快楽でもなく、純粋に僕だけを映したように見えた。でも、それが真実なのか、幻覚なのか、それすらももうわからない。次の瞬間にはリアンの瞳に光は見られなかったし、第一僕は自分自身でさえ信用できなくなっているのだから。
「リアン、リアンっ……! 愛、してる……!」
 彼女の唇を啄みながら、想いをぶつけるかのように一心に腰を打ちつける。「愛してる」、その言葉は何時になったらリアンに届くのだろう。
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 出口の見えない思考を放棄するかのように、僕は妹の中で果てた。




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後書き
第一回仮面小説大会に出したもの。
かなり嗜好が分かれそうな内容ですが、それでも3票も頂きました。
投票して下さった方々、ありがとうございました!

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