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災いに見初められし者 の変更点


writer is [[双牙連刃]]
&color(Red){警告!}; この作品には官能表現が使われています!(&color(White){人×ポケ};)
読まれる際は、官能表現が嫌いか、作者の駄目さに耐えられるかを十分吟味して下さい。(駄目ならすぐにバックボタンを!)
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 木々の隙間から覗く青い空に白い雲が千切れたように数個見える。
この分なら下山するまでは天候が変わる事は無さそうだ。
地面を蹴りながら僕は空を眺める。いつもの事だ。
趣味が無かった僕が、友人の勧めで始めた登山。といっても、ロープやらピッケルやらが必要な本格的な物ではない。
ある程度整地された登山道を頂上に向かって歩く。ごくごく一般人が行なえるタイプの登山さ。
それでも見られる物は多くある。じゃれあう小さなポケモン、自然が豊富な場所にしか咲かない花、そして、都会じゃ見れない高くて遠い空。
どれもが普段はお目に掛かれない。日常の生活の中で、ついつい目をやる事を忘れてしまったもの達。
それを思い出させてくれるこの登山を僕は気に入り、暇を作っては山に向かうようになっていた。
もちろん整地されているとはいえ危険が無い訳じゃない。本来ならパートナーポケモンの一匹でも連れてくるのが常識。
何せ、野生のポケモンは出てくる。じゃれてるのを見れるくらいだから。そんなじゃれあってるような小さなポケモンならその辺に転がってる石で追い払えるから問題無い。
問題は成長して進化なんかしたポケモン。これに襲われたら人間一人ならあっという間に生命の危機だ。
それでも今までは彼等のテリトリーを侵害しない事で事無きを得ている。だから僕はポケモンを連れていない。元々がトレーナーやブリーダーじゃ無かったから。
最初の頃は勧めてくれた友人と一緒だったりしたが、今はもっぱら一人。それでも何事も無かった。
そう、今までは……。

「あれ?」
 いつもは緑と青しかない道の先、一点だけ違う色が視界に入った。
陽光を反して煌く白。遠くて何があるのかは分からなかった。でも、吸い込まれそうなその白に、僕の目は奪われていた。
近付いていくとその全貌が明らかになってきた。
ふわりとした白い毛、すらりとしていて余計な肉の付いていない四肢、黒い額から伸びる、冷たい水に濡れたような輝きを放つ角。
本で一度お目に掛かったことがある。災いポケモンと呼ばれている……アブソルといったかな? そのポケモンがそこに居た。
近付いてみて分かった。そのアブソルはこちらを向いていた。
おかしい。確か、図鑑で見たアブソルの瞳は、血を連想させるような紅だったはず……。
でも、こちらに視線を向けているアブソルの瞳は、若草を思わせるような翠緑色を湛えていた。
まるで翡翠のような瞳……純粋な美しさを持つそのアブソルを、僕はただ見つめていた。
向こうも僕を見つめたまま、動く様子は見受けられなかった。

 アブソルに気を捕られていて僕は自分に危険が迫っているのに気付かなかった。
刹那、僕の体に強い衝撃が走った。
「がっ!? ぐはっ……」
 僕の体はそのまま横に生えていた木に叩きつけられた。
僕が居た場所にいたのは、前歯が異様に目立つ鼠の様なポケモン、ラッタ。
こいつが僕に体当たりを仕掛けたらしい。鋭い前歯を僕に向けている。
翡翠の瞳を持つアブソル同様、これもまたおかしな現象だった。
僕は人が作っていった道上に居たのだ。このラッタのテリトリーを侵害するような事はしていない。
では何故僕はこのラッタに襲われたのか? さっぱり分からない。
木に頭をぶつけてしまい視界が揺れる。揺れながらもラッタの行動は理解出来た。僕に近付いてくる。
体当たりを食らった左脇腹がズキンと痛む。折れてはいないにしろ、かなりの痛みが僕を襲う。それに加えて頭のダメージ。動けそうに無い。
ラッタは依然、僕に近付いてくるのを止めない。そうか、このラッタは僕を食事にしようとしているんだ。
せり出した前歯の奥の口から涎が流れているのを確認して、僕の意見はその答えに到達する。
一体何故僕は襲われ、そしてこのラッタの食う肉塊にならなければならなくなったんだろう。訳は僕にも分からない。
ふと思い出した。アブソルに出会った者には災いが降りかかる、と。これは、その災いなのだろうか?
意識が薄れてきた。打ち所があまりよろしくなかったらしい。
せめて最後に、僕に災いとやらを贈って来たポケモンをもう一度見ようと、僕は首を僅かに動かしアブソルの方に視線を送った。
視界が霞んでいく中、僕は見た。あのアブソルがこちらに駆け出しているのを……。

 どの位意識が無かったんだろう? 目を閉じたままだけど、僕は気が付いた。
僕の頬を少しざらついた物が撫でている。湿り気があってかなり柔らかい。
そっと目を開いた。飛び込んできたのは白。綺麗な毛が僕の目の前にあった。
横に軽く目をやれば、僕の頬に触れていた物を理解出来た。
全体が黒い顔。その口から伸びる舌が頬を撫で上げる。そして……翠緑の瞳が僕を見つめていた。
「ア、ブソル? あれ、ラッタは?」
 僕の声が聞こえたようだ。頬を舐めるのを止め、隣に座ったままこちらを見ている。
首を動かして辺りを見回す。茶色を僕の瞳が捉えた。襲ってきたラッタだ。
違うのは、そのラッタが倒れている事。その背には刃物で切られたような傷が出来ている。
こんな事を気を失った僕が出来る訳がない。何より刃物なんて果物ナイフ一本たりとも所持していない。
だとすれば……。
「君が助けてくれたの?」
 僕は自然と口を開いて聞いていた。相手はポケモン、それも野生のだ。こちらの言っている事なんて分かる訳は無い。
「アブ」
 僕の予想とは裏腹にアブソルはそう一言。驚いた。
「僕の言ってることが……分かるの?」
「アブ」
 間違いなく返事をされている。一言鳴いて首を縦に振る。
これが誰かトレーナーが居て、人に慣れていたりするポケモンなら割と普通かもしれない。だけど周りに人は居ない。僕とこのアブソルだけだ。
つまりは、異様に賢い野生のポケモン……という事かな? ポケモンに詳しい訳では無いから分からないけど。
何にせよ命拾いが出来たらしい。いや、これから奪われる可能性も無くはないか。何せ、まだ野生のポケモンが隣で座っているんだから。
本来なら逃げ出すべき。なんだけど……何故だろう? アブソルの瞳からは襲うような様子は見て取れなかった。寧ろ優しさを感じる……。
「お礼、言わなくちゃね。助けてくれてありがとう」
「アブ!」
 嬉しそうに笑い黒い尻尾を振り出した。此処まで完璧に人の言う事を理解出来るのか。もう一度僕は驚いた。
頬に触れようと手を伸ばしてみた。アブソルは警戒する事無くその手に擦り寄ってきてくれた。
柔らかな毛に僕の手は包まれた。心地良い触り心地だ……。
撫でてあげるとアブソルも目を細めて更に擦り寄ってきた。気持ちが良いようだ。
暫くは嬉しそうなアブソルの様子を見ていた。でも此処は野外。あまり一つの所に長居するのは良くない。
まだ頭の芯にふらつきは残っているけど、立ち上がるくらいは出来るだろう。
木にもたれ掛かった状態から起き上がろうとする。横からアブソルが支えてくれたお陰で難なく立つ事が出来た。
野生のポケモンにこれほど助けられるなんて、正直驚きっぱなしだ。

「アブぅ……」
 僕が立ち上がったのを確認してアブソルは空を仰いだ。つられて僕も空を見上げた。
さっきまであんなに晴天だった空が、暗い灰色の雲に覆われていた。
不味い、雨が降る。これだけ厚く暗い雲ならばそれなりに強い雨になるだろう。
生憎雨具なんて用意してきていない。雨に降られるのは非常に不味い。急いで下山しようにも中腹程度までもう登ってきている。急いだところで無駄だろう。
不意に服の裾を引っ張られた。見ればアブソルが咥えて引っ張っている。
「アブ!」
 何処かへ……連れて行こうとしているのかな? 裾を放し木々の隙間を進もうとする。
僕が立ち尽くしていると、振り向いて一鳴きした。付いて来いって事、だな。
僕はまだふらつく足に鞭打ってアブソルの方へ駆け出した。
時折此方を振り返りながらアブソルは進む。僕はそれに付いていく。
道を逸れているのはかなり危険な事だ。下手をすれば遭難。分かっていながらも僕はアブソルに付いて行った。

 見えてきたのは木で出来た小屋。明らかに誰かが作ったものだが、外壁が多少傷んでいるところを見ると、どうやら無人の小屋らしい。
扉もある。人が作ったものに間違いは無さそうだ。もしや山小屋の名残?
アブソルは壁に出来た穴から中に入って行った。どうやら此処に連れて来ようとしていたようだ。
入るべきだろうか? 選択している暇は無い。雲はなおも暗さと重さを増している。雨が降るのも時間の問題だ。
意を決して僕は小屋の扉を開けた。中にはもちろんアブソルが居る。
小屋に入り扉を閉める。同時にふわっと埃が小屋の中に舞った。それ程酷くは無いのが幸いだ。
中には薪や毛布、ついでに囲炉裏のような物まであった。間違いなく山小屋の類いだったようだ。
部屋の隅に目をやると、小さく木の実が積んであった。おそらくはアブソルが集めた物だろう。割と新鮮そうだから。
これなら雨宿りにならもってこいだ。雨漏りの心配はあるけど。
「君の棲家なのかい?」
「アブ」
 一応聞いてみた。木の実が用意されている時点でそうではないかと思ってはいたけど。
「そう……少し休ませてもらってもいいかな?」
「アブぅ!」
 家主が居る以上許可無くどかどかと入るのはどうかと思う。たとえそれがポケモンでもだ。
で、快く承諾を得られた事だし、休ませてもらうか。
少し肌寒い……囲炉裏? もある訳だし火でも点けれないかな。
薪を囲炉裏の方へ運んで適当に組む。後は火種となる物があれば良いんだけど……あった。ポケットの中にマッチが入っていた。ただし一本だけ。
失敗はできない。薪にダイレクトでは火は起きないだろうから更に紙が必要だな。
背負っていたリュックから、もしもの時に利用できるかと思って持ってきてた新聞紙を取り出した。備え有れば憂い無しだ。
アブソルが見守る中、何とか無事に火を点ける事には成功。赤々とした炎が何とも温かい。
ほっと一息ついた所で、一つだけある窓に目をやってみた。やはり相当の雨が降っている。もし下山しようとしていたら間違い無くびしょ濡れだ。
アブソルはと言うと……囲炉裏を挟んだ向こう側からこちらを見ている。襲われないのは今までの感じから分かるが、何とも変な感覚だ。
念頭にあるのは、このアブソルは野生のポケモンであるという事。なのに何故こんなにも僕の事を助けてくれるのだろう? 分からない。
アブソルをぼぅっと見つめていると、アブソルの顔が少し紅くなったような気がした。まさか、ねぇ。
きっと炎の所為でそう見えただけだろう。そう結論付ける事にした。
体が温まった所為か眠くなってきた。此処には襲われるような心配は無いし、ポケモンが入ってくればアブソルが追い返すだろう。
僕は何の根拠も無い憶測をしながら、少しずつ瞼を閉じていった。

 体を包む温かさが眠る前と違う……?
違和感を覚えて僕の意識は覚醒された。やはり、何かが違う。
眠る時僕は、壁にもたれ掛かり囲炉裏の方に足を伸ばしていた。ゆえに、温かさを一番に感じるのは足からになる。
ところが今は全身満遍なく温かい。おまけに言うと足は右足だけジーパンが濡れていて少し冷たい。
……なんでジーパンが濡れているんだ? 小屋の中に居るのに。
雨漏り……だったらもっと雨水が跳ねて左足も濡れるはず……。
しかも何かが擦り付けられているのか、さっきから濡れる位置が上下にずれる。
体の感覚は大体通常に戻った。でもまだ目まで脳からの信号がいかない。瞼が開かない。
眠っている脳に今度は音が届いた。

 くちゅ……くちゅ……。
 はぁ……はぁ……。

 最初の音は足の辺りから、擦り付ける動きとほぼ同じ間隔で聞こえてくる。
次に聞こえた……息遣いだと思われる音は左耳の近くから聞こえる。
結論から言うと、僕の上になにやら動物が乗っているようだ。そして、僕が予想する通りなら目を開けて最初に入ってくるのは……白。
閉じていた瞼がやっと開いた。予想の通りだ。僕の体はアブソルによって覆われていた。だけど……。
「なっ……」
 思わず声を上げてしまってた。それ程驚くべき状況が僕の目には飛び込んできていた。
僕の声に驚いたのかアブソルの体が軽く跳ねた。寝ていると思って油断したんだろう。
驚くべき状況というのは……、アブソルが、僕の右足に自分の股間を擦り付けていた。
見ただけでは気付かなかったけど、右足からの感触で僕は理解した。
僕と同じ性であれば、なきゃいけないモノの反応が伝わってこない。だけど右足は濡れている。
その事が示す意味は一つ。アブソルは……異性だ。


 どうすれば良いんだろう? 僕は女性と付き合った事なんて無い。女友達なら居るが……。
いや、目の前に居るのはポケモン。この場合は、人間の異性との付き合い方とは勝手が違うか? というかそんなことを考えている場合じゃない。
今の状況は気まずい。ポケモンとはいえ、自分を慰める行為を見られたと分かればどう思う? 胸中穏やかではいられない筈だ。
胸に押されるような力が掛かる。僕の胸にはアブソルの両前足が置かれているから、起き上がろうとしているようだな。
上体を起こした事でアブソルの表情が僕の前に現れた。涙を……流している。

 うっ……ぐすっ……ひっく……。

 見られた所為? それとも、別の理由から?
翡翠の瞳が涙に濡れて、悲しげに揺れている。
その瞳があまりにも悲しげで、切なくて……僕は……。
「ごめんね……」
 謝りながら、ふわりと包むようにアブソルを抱き締めていた。
嗚咽と共に震える体を、僕は抱き締め続けた。次第にアブソルも落ち着いてきたのか、リズムが穏やかなものに変わっていく。
もう嗚咽も聞こえない。体の震えも無くなったようなので僕はアブソルを放した。
アブソルの顔を正面に持ってくると、その頬は紅に染まっていた。
「ごめんね。君を泣かせてしまって」
 僕はもう一度アブソルに謝った。さっきまでの涙の理由はおそらく僕が原因だから。
でもアブソルは首を横に振った。謝る必要は無いという事かな?
「じゃあ、なんで泣いちゃったのかな?」
 この問いにアブソルは俯いてしまった。そうか、喋れれば答えようがあるが、アブソルは喋れる訳が無い。
これは僕のうっかりだ。イエスかノー、これで答えられる質問をしなければ。
「えっと……見られた所為で、僕に嫌われると思った?」
 ……自分でも何を聞いてるのかと呆れた。もっと他に聞く事があると思う。寒かったのか、襲う気だったのか、とか。
とりあえず僕の問いにアブソルはコクンと頷いた。涙の理由はそれらしい。
「つまり、君は僕の事がその、好きに……なっちゃったの?」
 本当に何を聞いてるんだろう。常識はずれな事が起こり過ぎて軽いパニック状態なのかもしれない。
アブソルは頬だけでなく顔全体を紅くしながら、恥ずかしそうに頷いた。つまりはイエス。自分でもよくアブソルの変化が分かるな、と思う。
していた行為は、半ば僕への求愛……に近い意味から、かな?
ど、どうしよう。ポケモンから好かれるとは夢にも思わなかった。それもおそらくライクでは無くラブ。
法律等で規制はされていないだろうけど、周りの目はどうだ? おかしな者を見る目になる筈だ。ポケモンと……愛し合うなんて。
「ア、ブぅ……」
 アブソルが何かを望むような目で僕を見つめている。この状況で望んでいるのは……僕との交わり、だろうか。
許される行為なのだろうか? 伝記に近いものだが、昔読んだ事のある本の事を思い出した。
その本の一節に、『昔は、ポケモンも人も一緒だった』という節があるのを今も何故か覚えている。
種族は違えど、心を持ち、誰かを愛する事に壁は無い。そういう事を伝える言葉だったのかなと今になって思い返してみた。
僕は……命を救われ、ここまで助けてくれて、しかも僕の事を想ってくれているアブソルの事を……。
好きに、なってしまったのかもしれない……。

 アブソルは静かに僕に顔を寄せてくる。
動けない。アブソルの重みが掛かっている所為もある。だけど、一番の理由はその瞳。
見つめられるだけで、逃げようなんて考えが消される。ただ、静かに……その瞳を見つめていたくなる。
そのまま、僕の唇とアブソルの唇は重なった。
温かい。そして、柔らかだ。
アブソルは目を閉じて、口付けの心地良さをゆっくりと味わうように僕の唇に吸い付いてきている。
各言う僕も、アブソルの唇の柔らかさに酔っていた。このまま、続けていたい。
ゆっくりと、ただゆっくりと流れた時間が終わり、僕達はまた向き合う。ことは無かった。
アブソルが僕の首筋に顔を近づけていき、そして……。
「ふあっ、あぅ……」
 牙を当てないよう優しく噛み付いてくる。首からの刺激に僕は少しだけたじろいだ。
だって、そこに本気で噛み付かれれば僕は絶命する。そういう恐怖が潜在的にあるからの萎縮。
声をあげた事にアブソルは驚いたようだ。アブソル的には普通の行為だったのだろうか?
こちらを見ながら少し首を傾げている。疑問符が浮かんでいる顔が可愛いかもしれない。
「ごめん、ちょっと驚いたんだよ」
 それを聞いて、しまったとでも言いたげな顔をした後、今度は噛んだ辺りを優しく舐め始める。
ぬるりとした感覚が首に伝うたびに、ぞくぞくっとした刺激が全身に走る。
あぁ、電気が流れるような刺激が走るたびに僕の自制心がほつれる。この快感に流されてしまいたくなる。
だけど……。
「ちょっ、ちょっと……待って……」
 砕けかけた理性を束ね直し喉を振動させる。まだ僕には聞きたい事があるから。
アブソルが舐めるのを止め、また顔がこちらを向いたのを確認して僕は続けた。
「君、他の仲間は? 一緒に居ないの?」
 拙い知識ではあるが、一応図鑑で仕入れている情報を基にした質問。
図鑑の中でのアブソルの説明では、

『過去、災いをもたらす者として多くのアブソルが捕らえられた。
 それゆえか、捕らえられなかったアブソルは人から逃れるため、
 群れにて山奥にその姿を消した。』

 そう綴られていた。
これをそのまま正解だとすると、このアブソルにも仲間が居るはず。それならば人間なんかと交わってはいけない。
命の恩人が辛い境遇に立たされるのは僕としても望まない、だからの質問。
アブソルの答えは……俯きがちになりながら頷いた。
僕の質問は『一緒に居ないのか?』と聞いたので、イエスという事は居ないという事だな。
「じゃあ、君は、はぐれたの?」
 こう考えるのが自然だよね。僕には図鑑での知識以外はほとんど無いんだから。
でもアブソルの答えはノー。はぐれた訳では無いという。
どういう事だ? もともと一匹なのか?
いや、そんな筈は無い。ポケモンだって動物だ。子を産まなければ生命を未来に繋げられない。
アブソルは他のポケモンにも恐れられるとも聞いた事があるし、(これはトレーナーをしている友人からの情報)
同属が居なければ子を授かる事が出来なくなってしまう。もしかして……。
「群れを……追い出された、とか?」
 僕の言葉にアブソルの体がビクンと震えた。同時に目に涙が溜まりだしている。
当たってしまったようだ。ポケモン同士でもそんな事が……。
僕がそう考えた理由は、特徴的なその瞳。
おそらく、アブソルの瞳は赤。図鑑の通りの色なのだろう。
だけど、こいつの瞳は翠緑。先天的なことでこうなったんだと思うけど。
その瞳ゆえに、異端な者として群れを追われた。そんな所ではないかと思ったのだ。
出来れば、当たってほしくはなかったけどさ。

 孤独。

 ずっと、この山で独りぼっちで、周りの者に謂れの無い恐怖を抱かれ……。
辛かったんだね。その美しい瞳には、悲しい情景がたくさん刻まれているんだろうな。
「……ずっと、寂しかった?」
 僕のこの一言が、アブソルの溜め込んでいた物の封を切った。
声のならない嗚咽と共に、先ほどとは比べ物にならないほどの涙が流れて、僕の上着を濡らしていく。
僕は、涙するアブソルをただ見つめていた。
さっきみたいに抱き締める事は出来る。だけど、ちょっと違う気がしたんだ。
抱き締めてしまうと、アブソルは落ち着いてきてしまう。涙もそこで落ち着きはするだろう。
でも僕は……悲しい涙は全部流してしまった方がいいと思う。
悲しみが全部抜けてしまえば、新しい物を心に満たしていけるから……。

 どのぐらいの時間が経ったんだろう。窓から見える外はすっかり暗くなっている。
雨音は静かになり、小雨になった事を僕は理解出来た。
日が沈む前に帰る予定だったから時計を持ってきていないのはミスだったな。まぁ、明日も休みだから心配は無いけど。
小雨といえば、アブソルの方も大方泣き止んだのか、僕の胸の辺りに顔を埋めたまま静かになっている。
そっと手をアブソルの頭の上に置く。そして、自分の出来るだけの優しい語調でアブソルに問い掛ける。
「もう大丈夫? 今は、僕が傍に居てあげる」
 力を込めずにさらさらとしたアブソルの毛を撫でる。もう落ち着いているとは思うけど、念の為にね。
アブソルは動かない。眠ったりしていないとは思うけど……。
不意にアブソルが顔を上げた。と思ったら僕の唇に温かさが伝わってきた。
アブソルの行動に驚いて僕は口を開いてしまっていた。それがいけなかった。さらに温かく湿った物が口の中にずるりと入ってくる。
「ふぐっ、うぅ!?」
 声を出そうにも塞がれているのに出るわけが無い。僕が目を白黒させている間にも口の中の物は行動を開始してくる。
ぬるりとした触感が口の中を動き回る。まるで口の中全てを調べる……いや、全てを自分の物に塗り替えるようにといった方が正しいかもしれない。
もちろん入っている物の正体に僕は気が付いている。というか口付けを交わしている時点で一つしかない。アブソルの舌であるのは明白。
アブソルの舌が動き、口腔内にアブソルの唾液が擦り付けられ、流し込まれる。口が、アブソルによって満たされていく。
成す術が無い。今まで泣いていたアブソルを突き離す事なんて出来ないし、かといって良心や理性の呵責によって自分から舌を動かす事も出来ない。
口の中はもうアブソルのでいっぱいだ。正直言うと吐き出してしまいたい。それほどに濃厚に、入念に口腔を掻き回されてしまった。
満足したのか、口からアブソルの舌が抜き取られた。が、口は放してくれない。
もしかして、自分の唾液を僕が飲み込むのを待っている? 息はとりあえず鼻から出来ているからまだ苦しくは無いが、どうする?
飲むしかないだろう。第一、先手を打たれている以上僕に選択権は無い。
そのまま喉を鳴らして口に溜まった唾液を飲み下す。僅かな甘みを感じるとろりとした感触が喉を通り過ぎていった。
「アブぅ~」
 満足げに顔を上げるアブソル。僕はどんな顔でアブソルに映っているんだろう。そして、アブソルの胸中では、僕はどんな存在なのだろう?
いやいや、そんな事を考えている場合じゃない。でも、考えが纏まらない。目の前のアブソル以外が霞んでいく。体がジワリと熱くなっていく。
どうした事だ? 唾液を飲んだ所為? 僕の体に何が起こっている?
「ア……ブ……ソル……何を……した……の……?」
 息が苦しい。体が熱い。熱い! 熱い!! 熱い!!!
「落ち着いて。一時的な事だから」
 耳に入って来たのはなだめるような声。アブソルの鳴き声じゃない。でも、音感はアブソルの物のような?
「聞こえているようね。初めてやったから成功するか半信半疑だったけど……うまくいったみたいね」
 高めの女性の声が続ける。僕には理解が出来ない。その声は……アブソルが口を動かす度に聞こえる。 

 依然、体の中を熱が暴れ回っている。くぅ、おかしくなってしまいそうだ!
「あ、がぁ、ぐぅ! ……」
「ごめんなさい、苦しいかもしれないけど少し待ってね? 私、もう我慢出来なくて」
 そう聞こえた後、アブソルが股間をまた僕の足にあてがった。間違いない、今聞いているのはアブソルの声だ! なんでこんな事が?
「私の力を貴方に少しだけ送り込んだの。それで、貴方は今、私達の声を聞く事が出来るわけ」
 僕の顔が疑問符でいっぱいなのを理解してか、アブソルが説明してくれた。アブソルの力? それって一体?


 クチュリ、と音を立ててアブソルが動き出す。
自分の大事な所を僕の右足に押し当てて、ゆっくりとした前後運動。
動くたびに立てられるクチャクチャと聞こえる音。アブソルの顔を見れば、妖しげな笑みを浮かべながらその行為に勤しんでいる。
僕の中で蠢く熱が、それまでの行き場無く全身を巡っていた状態から変化していく。
全身が熱いのは変わらないが、特に、僕のモノに熱が集中していく。早くここから開放しろと言わんばかりに。
「んっ! はぁ……。貴方のももう我慢出来ないって言ってるみたいね」
「ち、がぁっ! うぅぅ!」
 熱によって理性が溶かされていく中、僕はまだ、本能に全てが蝕まれてしまう事に抵抗していた。
好きだという気持ちはある。だが、種族が違う。踏みとどまれ!
なけなしの理性の叫びが僕の暴走を水際で食い止めている。
「我慢しないで? 私に、貴方を見せてほしいな……」
 その最後の砦を壊そうと、アブソルの甘い囁きが僕の脳に送られてくる。
正直、一言一言が優しくて、理性が溶けるスピードを加速させる。
「体に着ている物、取って」
 アブソルが服を脱ぐように催促してきた。しかし、それをしてしまえば僕はアブソルの操り人形と化してしまう気がする。
意思では脱ぐなと訴えているのに、自然と手が自分の上着のボタンに掛けられている。体はもう、本能によって動かされていたんだ。
アブソルは、僕がボタンに手を掛けたのを確認して僕の上から降りた。僕はスルスルと迷うこと無く上着とシャツを脱ぎ捨てていた。
そして、ズボンと下着も同時に下ろす。ついに僕の理性は本能に負けた。もう、止められそうに無い。
裸になった僕にアブソルが飛びついてきた。素肌に触れるアブソルの毛はくすぐったかったが、密着したその温かさは心地良かった。
そのまま床に組み倒され、床に寝転ぶと同時にアブソルは、僕の体を舐め回し始めた。
位置を徐々に下げながら、僕の体が其処にあることを確かめるように唾液を擦り付けていく。僕はその行為にただ善がる事しか出来なかった。
そして……舐めるのを止め、アブソルが顔を浮かす。目の前には硬くなった僕のモノがある。
しげしげと見つめられるのは恥ずかしい。だけど、拒む言葉が出せぬほど僕は息が上がっていた。
しばらくしてから、モノにぬらっとした舌が当てられた。
「あっ、ふぅっ!」
 拍子で声が出る。それでも舌の動きは止まらず、舐め上げるのは止まない。
「はぁう! だっ! やめっ!」
 途切れ途切れでしか喋る事が出来ない。強い刺激で、頭の中が白く塗り潰されていく。
アブソルは舐めるのを止めず、そのまま自分の口の中へ一気に含んだ。
柔らかい肉壁に包まれた所為で達しかけた僕は、咄嗟に自分の愚息の根元を抑えていた。残された理性の最後の抵抗だ。
アブソルが僕のモノを舐め回す。吸う。先端の割れ目を舌で攻め立てる。

 ぺちゃっ、くちゅっ、じゅるっ

それでも僕は放さなかった。達せない苦痛を自分に強いているのは分かるけど、僕は、アブソルを自分の欲で汚してしまうのが嫌だったんだ。
翡翠の瞳、光沢を纏う白い毛、そして苦難に苛まれながらも優しい笑顔を称えるその顔を。

 一向に放さない僕の手を見て、アブソルが怪訝そうな顔をしながら口を放して僕の顔を見る。
物欲しげな視線を送ってくるアブソルに、僕は話しかける事は出来なかった。単に息が荒過ぎてだけど。
「ねぇ、どうして出してくれないの? 私は出しても怒ったりしないよ?」
 綺麗な声が僕に問いかける。あぁ、僅かばかり回復した冷静さを持って聞くとやはり不思議だ。その声の持ち主はポケモンなのだから。
「君を、汚したく、ない……」
 何とか喋る事も出来るようになった。熱の殆どが愚息の方に集まったお陰かな?
アブソルが悲しい思いをしてきたと思うと、更なる苦痛に変わりかねない行為をしたくなかった。
真剣な一言と捉えてくれたのか、アブソルはうっすらと目に涙を溜め、にっこりと笑ってくれた。
「優しい人。私から逃げずにいてくれたし、私を信じてくれた。凄く嬉しかったんだよ? 貴方になら……どんな事されても、いいよ?」
 ふわり、そう表現するのが正しい。アブソルは浮かせていた体を僕に預け、静かに目を閉じた。
温かい。けど、体温というより心に触れた温かさとでも言うんだろうか。満たされるような、そんな温かさ。
胸にもたれ掛かってきたアブソルを、優しく包み込んであげた。僕の心も届くように……。
「また、抱き締めてくれたね。とっても嬉しい……」
 耳元で囁かれた言葉。それを聞いたら僕も嬉しくなってしまった。
愚息は放してしまったが、大きな波は過ぎて小康状態に入ったようだ。抑えなくても出る事は無いだろう。
耳元での囁きが続きの言葉を紡いできた。でも、それは……。
「お願いがあるの。あのね? 私も『お預け』のままなんだ。だから……貴方にしてもらいたいなぁ」
 こんな要望だった。甘く、とろけてしまいそうな表情が鮮明に脳へと刻まれていく。
なるほど、最初は僕が起きた所為で中断。二回目は僕のモノを奉仕した所為で中断していたんだった。それは確かに辛い。
「分かった。出来るだけの事はしてみる」
 聞きたい事は山ほどって表現でも足りない程あるけど、それを先に済ませてしまう方が賢明そうだ。

 ……『とんでもない事を勢いだけで了承してしまった』冷静になった僕の脳が最初に弾き出した文章だ。
床に仰向けに寝る僕の目の前には、全く隠す事の無いアブソルの恥部がさらけ出されている。
今までの理性の努力は全て水泡に帰した。アブソルを満足させた後、僕は正常でいられる自信が無い。
今でさえ目の前から来る異性の香りにクラクラとしているのに……。
「ねぇ、早くぅ」
 尻尾を揺らしながらこっちを見て催促をしてくるアブソル。出来るだけの事はすると言ってしまった以上、やるしかない。
秘部の輪郭を右の人差し指で優しく撫でていく。それまでの行為で周りの毛はじっとりと湿っている。
それから徐々に中心へと円を描くようにして愛撫を繰り返す。アブソルの口からは細くだが喘ぎを吐き出しているのが聞こえてきた。
そして、ついに僕の指はアブソルの割れ目を直に撫で始めた。
「っあ! うくっ! ひゃう!」
 喘ぎは愛撫の度に大きくなり、アブソルに快感を与えられているのを僕に伝えてくれた。
その声、トロトロと蜜を流す秘裂、見ているだけで……聞いているだけで僕の中の恋慕の情が掻き立てられ、更にアブソルを求める感情に火を注ぐ。
もっと声を聞くにはどうすれば良いか。その答えを導き出し、僕の指は行動する。
「きゃう!? 中、にぃ!?」
 クプリと音を立てた後、僕の指はアブソルの中へと侵入した。指先だけでも、その柔らかさと締め付けを味わうには十分だ。
さらに指を奥へと進め、根元まで入れた後は周りを探るように動かす。もちろん傷付けないように。

 にゅぷ……くぷっ……ぐちゃ……

 胎内を異物が動く感覚にアブソルは身をよじり反応してくれた。喘ぐ声も高くなり、心地良く僕の耳に届く。
一度は押さえ込むことが出来た欲情がまた僕の体を支配していく。さらに、悪戯心まで目を覚ましてしまいさっきより始末が悪い。
空いていた左手で僕はあるものを捕らえた。秘部の上方、豆粒位の大きさの突起を。
きゅっと摘まんだ直後に、アブソルの体が痙攣を起こした。何が起こったのかと不思議そうに僕の顔を見ている。
その、不安の混ざった表情に笑顔を送り、僕はくりくりと左手を動かした。
強く目を閉じ、快感に耐えるように歯を食いしばっってしまった。その口の端からは涎が零れている。
強く目を閉じ、快感に耐えるように歯を食いしばってしまった。その口の端からは涎が零れている。
指で弄るのが少し痛そうかな? だったら……。
左手を放し、手が離れてほっとしているアブソルに追い討ちを掛ける。今度は、舌だ。
「うわあああぁぁぁ! ひゃあああああ!」
 舌を豆に這わせるのと同じくして、休んでいた右手の指もまた中で動き出す。
不意打ちとして決まったそれに、アブソルは悲鳴を上げた。可哀相か?
アブソルの両前足が自分の下腹部を押しているのが見える。もしかして、さっきの僕と同じ理由だろうか。
それともアブソルも迷っているのか? このまま人間と事を起こすことに……。
そんな考えが頭をよぎり、僕の欲情と悪戯心がなりを潜めた。
舌の動きを止め、秘裂から指を抜き取る。

「ごめん……」
 僕は自然と謝っていた。お腹を抑えるアブソルの姿に耐えられなくて……。
アブソルは息を整えながらも訳が分からないと問いたげな顔をこちらに向けてきた。
「どうして……止めちゃうの? もう、疼いて仕方ないのに……」
 涙を瞳に溜め込んで問いかけてくる。その様子に僕の中で矛盾が生まれた。
「えっと、必死にお腹を抑えていたから、僕はてっきりしたくないのかと……」
 僕の返事を聞いてアブソルはきょとんとしてしまった。そして、上体を起こして自分の前足が何処にあるか確認した後、慌てたように弁解を始めた。
「あ、ああとこれは、さっきので力が入っちゃった所為でなっちゃった事であって、私が嫌だからやった訳じゃないの!」
 前足をぶんぶんと振りながら訳を話す姿が何とも可笑しかった。
僕は早とちりをしてしまったようだ。こんなに必死にならせた事の方が今は申し訳ない。口には出さないけど。
「だから……早くイかせて! このままじゃおかしくなっちゃう!」
 涙目でこんな事を懇願されるとは……、予想していなかったから驚いた。
僕は笑ってアブソルの背を優しく叩き、元の体制に戻るように促す。
それに従って、顔を明るくしてアブソルが秘部を僕の目の前に晒す。恥ずかしさは無いようだ。
何度もお預けにしてしまった。罪悪感が胸に拡がる。慌てて引き止めようとするほどに僕との行為を望んでくれていたとは……。
後ろ足の間、自らの蜜によって濡れきったそこがひくひくとしながら僕を待っている。
待たせたお詫びだ。僕はそこに口を宛がい、拓いたそこに舌を挿し込む。
「くうっ! 来て、くれたああぁぁぁ!」
 体を仰け反らせ、快感に溺れていくアブソル。その様子を見ながらも、舌を動かすのは止めない。
舌にねっとりとした肉壁が当たってくる。舌を締め付けられるのも悪くない。
そんな中、先ほどのアブソルとのキスが脳裏によぎる。濃厚にして、自分を我が物にしようとするようなあのキス。
今度は僕がアブソルを自分の物にしたい。衝動というのは怖い。そう念じた時には僕はもう動き出していた。

 ぐちゃっ! べろっ、じゅるる!

 流れてくる愛液を吸い取りながら、アブソルの一番大事で、敏感な部分に唾液を擦り込む作業。
押し付けられる快感にアブソルは全身を痙攣させている。僕の足に涎が流れてきているから、口からは相当量が流れ出ているんだろう。
一際大きな痙攣がアブソルに起こった。達するようだな。
口を膣にぴったりと押し付け隙間が出来ないようにした後、舌をぐいっと奥に押し込んだ。
「出ちゃっ! ううううぅぅぅぅ! ふにゃあぁぁぁぁぁぁ……」
 口の中に大量の愛液が流れ込んでくる。余さず飲み込んで……と言いたい所だが、流石に量が多すぎて口から漏れてしまう。
それでも大部分を喉を鳴らして飲んでいく。なんというか、欲望を加速させる味だ。美味しいとは言わないけど。
出した所為で力が抜けてしまったのか、体に触れるアブソルの感覚がしんなりとした気がする。
愛液の洪水も大人しくなった。最後に、ぽたぽたと滴る一滴を舌で掬った。
「きゅあ! まだ……敏……感……だからぁ……ダメぇ……」
 力無く僕の一舐めに講義をしてきた。そんなつもりじゃなかったんだけど。
「大丈夫。そんなにがっつかないよ」
 安心させるために一声掛けた。相当疲れたみたいだな。
自分の体を起こして、アブソルのお腹の下に腕を通して抱き起こし、こちらに顔を向けてもらう。
その顔は涙、鼻水、涎でぐちゃぐちゃになっていた。
そんなさまざまな液が混ざり合った物を僕は舐め取って綺麗にしていく。こっちがポケモンになった気分だ。
「こんなの……汚いよ……」
「君のなら大丈夫だよ。それに、綺麗な顔をもっと見たいからね」
 僕の一言でアブソルの頬に薔薇が咲く。翡翠の瞳に薔薇色の頬。なかなか良いコントラストだな。
「どう? 満足出来た?」
「出来たけど……まだ、貴方を貰ってないから」
 少しの休憩。それが終われば僕達は……。

「今更かもしれないけど、本当に僕でいいの? 僕は……『人』だよ?」
「そんなの関係ないよ。私は全てに拒まれてきた。でも……『あなた』は、私を拒まなかったもの。私も貴方を受け入れたいの。……いくよ」
 僕はやはり仰向けのまま、アブソルが僕に覆い被さるという状況は変わらなかった。
僕からの最後の確認。それにアブソルは答えてくれた。僕を、受け入れたい、と。
もう一人の『僕』の準備は完了している。というか、達しかけたのを無理矢理抑え込んでいただけだから、先程のアブソルの様子を見ていた所為ではち切れんばかりに天を仰いでいる。
アブソルが僕と己とを合わせている。そして、入口に触れる。ヒクヒクとしているのが伝わってくる。
「熱い。焼かれちゃいそうな位……」
「え、あ、う、ぼ、僕は結局、まだ一度も出してないから……」
「ふふっ、そうだったね。じゃあ、凄く熱いの、頂きま~す……」
 ゆっくりと、僕の分身がアブソルの中へと消えていく。先端が収まり、そこで動きが一時止まった。
痛いのを必死に耐えているのか、辛そうな表情が目の前にある。
苦しみを和らげるには気を紛らわせるのが一番かな? この場合は……。
アブソルの唇に自分のを重ねる。きゅっと閉じられていた目が開き、僕の目を見た。
少し痛みも穏やかに出来ただろうか。強張っていた顔が落ち着いてきたのが僕にも見て取れた。
繋がっている所にも変化が起こった。アブソルが腰を下げるのを再開したんだ。
でも、再開したのに沈むのが止まる。何かにぶつかって。
戸惑うアブソルが目の前に居る。もしかして、知らないのだろうか?
「あ~っと、なんで止まっているかは、分かってる?」
「う、うん。分かってるんだけど、痛そうだな、って」
 なるほど。痛いのは生物全てが嫌な事だよな。破瓜と言うのは聞く所によると恐ろしく痛いらしいし。(誰に聞いたかは詮索しないでほしい)
「それなら此処で止める事も出来……」
 言い切る前に前脚で口を塞がれてしまった。止めるという選択肢は無いようだ。
アブソルの顔が意を決した表情に変わり、ぐっと重みが掛かった。
「うっああ! 痛っ!」
 パツンっ、そんな感じだろうか。僕のモノはそこを突破し、アブソルの更なる奥へと誘われ見えなくなった。
ぎっと目を瞑って痛みに耐えるアブソル。涙が伝わり頬が濡れる。それが僕の胸を締め付ける。本当に良かったんだろうか?
そんな考えとは裏腹に、僕の息子は喜びに震えていた。アブソルに包まれていることを。
「あぁっ、貴方のが中で震えてる……痛いけど、嬉しい!」
 痛みはもう引いてきたのだろうか。涙目ながら嬉しそうな笑顔がそこにある。
一方の僕は動いてもいないのに達しかけているのを必死に耐えていた。挿入後すぐに出してしまっては情けない気がしたから。
そんな様子に勘付いたのか、口元に妖しい笑みを浮かべながらアブソルが腰を上げる。
肉壁で温められていた愚息が外気に触れると涼しく感じる。まぁ、その涼しさも一瞬のものであったけど。
腰の動きが反転。勢い良く僕のモノはまたアブソルに飲み込まれる。
「うあっ! そんな事したらぁ!」
「あっ! この感じ、すごぉい! 貴方に貫かれてるぅ!」
 奥まで一気に挿れたことに二人(正確には一人と一匹)は別々に叫ぶ。僕は耐える苦痛から、アブソルは一つとなった快感から。
休む事無くアブソルは動き出す。ゆっくり腰を持ち上げては、一気に降ろす。まるで僕がそこをえぐっている事を楽しむように。
限界が近かった僕はされる度に呻き声を上げていた。けれど持ち前の精神力で達するのだけは回避している。自分で射精を抑え込むほどの精神力を嘗めてくれるな。

 じゅぶっ、ぐちゅっ、ずぶっ!

 段々と肉と肉がぶつかり合う速さが増していく。アブソルの口からも甘い喘ぎ声が躊躇う事無く溢れ、だらしなく舌を出しながら上下運動を続ける。
達したい。というか、十分に僕は我慢したよな。もう、出してしまってもいい筈だ。
いや待て、ここまで我慢したんだから、せめてアブソルがイくまで耐えろ! それ位の意地はある筈だ!
訳の分からない脳内会議が僕の中では行なわれていた。我慢か、開放か。でも、そんな事はもうどうでも良くなりつつある。
下から僕もアブソルのことを突き上げる。気持ち良い。ただただ、気持ちが良い。
アブソルの動きと僕の突き上げによって、僕達は快楽に身を任せる二匹の獣と化していた。理性の入り込む余地など無い。
膣の動きが不意に変わった。絞るようなきつい締め付けの後、そこからまた大量の愛液が撒き散らされる。アブソルが絶頂を迎えたようだ。
離れたくないと言わんばかりにアブソルが抱きついてくる。強い締め付け、そしてこの抱擁。後はもう一方通行だ。
「くぅぅ、あっ!」
 僕の精液がアブソルの中に放たれる。深く繋がっていたから、子を宿す宮へも流れ込んでいる事だろう。
「おなかがぁ! あふいよぉ! わらひ、溶けちゃうぅ!」
 呂律の回らない声が小屋の中に響く。僕は息を吸うのがやっとで声なんか出せなかった。
僕のモノからはまだまだ止まる事無く精が吐き出される。当然といえば当然なのかもしれない。あれだけの刺激を受けながらも、これが始めての射精なのだから。
中を満たしきったのか、繋がった隙間から精液が溢れ出した。その色は、白濁としてはいるが、血が混じりピンクになっている部分もあった。
その色を見て僕は思い出す。アブソルは処女だったのだ。それが、初回でこんな量の精液を迎え入れてしまって大丈夫なのだろうか。
出してしまった後に考えてもどうしようもない。諦めて……責任の取り方でも考えよう。
「もうおにゃかいっぱい~、おにぇがい、ぬいてぇ~」
 ふやけてしまった様な声でアブソルがそう懇願してきた。どうしよう、正直言うとまだ出ている。でも、抜いてと言われてしまった以上抜くしかないか。
体を再度起こして今度はアブソルに仰向けになってもらい、ぐぶりと音を立てながら僕のモノをアブソルから抜き去る。待ってましたと言わんばかりに白濁とした液がアブソルの膣から溢れてきた。
僕の愚息はまだ出したりないようで、その先端からは溢れた液と同じものがまだ出ている。
「まだでてたんら~。じゃあ、わらしがもらう~」
「えっ!? ちょっと、うあっ!」
焦点の合っているのか怪しい目をしたアブソルが僕のモノを咥えて吸い上げる。

 じゅるるる、じゅるっ

 最後の一滴まで搾り取るようにアブソルは飲んでいく。それによってやっと僕の射精は収束を迎えられるようだ。
とんでもなく長い射精だった……。お陰で、僕の体力と精力の殆どを消費してしまったようだ。
最後にアブソルが僕のモノを綺麗にするように舐めてくれている。が、心地良さはあるものの、僕のモノが反応する事は無かった。残弾ゼロである。

 夜の帳の降りた小屋の中、男女(雌雄)が交わった残り香を洗い流すために僕は窓を開けた。
本当に備えあれば憂い無しだ。リュックの中の着替えを着て、僕は一息付く事が出来た。
アブソルが僕の物を注ぎ込まれた自分の秘部を見つめている。その顔は満足そうだ。
「これで私は心も体も貴方の物だね」
 再びの妖しい笑み。だが、それを見ると……というか、アブソルの顔を見ていると気持ちが落ち着く。どうした事だろう?
「えへへっ、ごめんなさいね? 会ったばかりでこんな事しちゃって。でも、どうしてもしたくなっちゃったんだ。気持ちも伝えたかったし」
「気持ち? あっ、そうだ! その前に聞かなきゃいけない事があったんだった」
「なぁに? 何でも答えてあげるよ」
 あれ? 最初に声が聞こえるようになった時はもっと大人びたような感じだったような?
それはまずは置いといて、この今の状況を作り出している『声が聞こえるようになった』事について聞かなければ。
「僕に何をしたの? どうして僕に君の声が聞こえるように?」
「あぁ、それね。私達ポケモンは姿も鳴き声も違うのに会話が出来ているでしょ?」
「そうなの?」
「あ、貴方は人間だったわね。そうなの。それはね、声の宿る気持ち……みたいな物を聞き取れるからなのよ」
 隣に座るアブソルが続ける。声に宿る気持ち? 要するに言霊という奴だろうか?
「で、今の貴方は私がその力を分けてあげたから私の声が聞けるの」
「そんな事が出来るんだ」
「出来るのは私だけ。アブソルではね。この瞳と同じく、生まれつき私に与えられた力、『スキルスワップ』でね」
「スキル……スワップ?」
 聞いた事が無いワードを出されてもちんぷんかんぷんだ。現状だって非現実的なのに。
「本来なら自分と相手の特性を入れ替えるだけの技なんだけど、私のは特別でね、特性以外の能力でも出来るみたいなのよね」
「へぇ~……え? 入れ替えるってことは……」
 僕も何か能力を入れ替えられてるって事だよな? でも別に変わった所はないし?
「貴方からは『喋る力』 口の動かし方かな? 今やってるこれをお借りしてるわ」
 なるほど。確かに最初は「アブ」としか口は動かしてなかったのに、今は流暢に動いている。
「なるほど、声が聞こえるようになった経緯は分かったよ。しかし、なんで僕にそんな事を?」
 そう聞くと少し頬を染めながらアブソルは俯いてしまった。若干モジモジしている気がする。
「……お話しがね? したくなっちゃったんだ。その、最初に見つめ合ったときに」
「最初?」
「ほら、あの、貴方がラッタに襲われる前。私が姿を見せてるのに逃げなかった人間て貴方が初めてだったから」
「ああ、あの時!」
 確かに遠かったけど、見つめ合っていたと言われればそうかもしれない。
「その後ラッタに貴方が襲われてビックリしちゃった。まぁ、何か危険があるから私の角も反応したんだけど」
「そっか、あの時君があそこにいたのは……」
「災いの気配を感じてなの。あの時は助けるのが遅れてごめんなさい」
「いや、僕は生きてる。それで十分だよ」
 僕が読んだ図鑑は嘘だったのか? アブソルが災いを招くなんて……全然違うじゃないか。
いや、図鑑は合ってるんだな。勝手に履き違えたのは僕。
図鑑には『災いが降りかかる』とだけ書かれていた。アブソルがどうこうするとは書かれてなかったじゃないか。
一瞬でも疑って、悪い事したなぁ。
「ねぇ? どうしたの? もう質問は終わり?」
 顔を覗き込まれて驚いた。待たせた僕が悪いんだけどさ。
「あ、うん。とりあえずはもういいよ」
「あれ? どうして私がこんなことまでしたかは聞かないんだ。話す気だったのに」
 うん、凄く大事な事を聞かない所だったよ。これは聞かないと。
「……教えてくれる?」
 僕の声を聞いてアブソルがニッコリと微笑む。見ていると、心にじんわりと温かい何かが沸き起こる。これは……。
「最初は、何で逃げないか聞きたいだけだったの。でも、近くで見ると貴方がその、か、カッコ良くて」
「へ!?」
 自分で言うのも空しいけど、僕はモテる方じゃない。並位ではあるとは思うけど。
「正直に言うと、一目惚れです!」
「は、へ!?」
 ポケモンが一目惚れ、僕も似たようなものか。アブソルの瞳に惹かれてたし。
「ふぅ、これが私の最初の気持ち。で、しちゃったのはね? その後貴方が優しくしてくれるから、もっと一緒に居たくなっちゃったの」
 顔を紅くして告白してくれたアブソルがどうにも可愛い。って、ちゃんと聞かなきゃ。
「と言いますと?」
「今、私の中は貴方のでいっぱい。この責任は?」
 そういう事か。でも、人とポケモンで子は成せる物なのだろうか?
いや、それ以前の問題で、人と交わったポケモンが野生で生きていける訳は無いよな。他のポケモンに襲われかねない。
それすらも言い訳、か。僕が、アブソルの事を求めている。心の温かさはきっと、アブソルへの愛なんだろうな。
気持ちの整理はした。そして、答えは一つだけなんだ。
アブソルの目の前へと移動してアブソルを見据える。何も言わずに移動したから少し驚いているようだ。
でもね、気持ちを伝えるだけならきっと、言葉なんて必要ないんだ。
目の前のアブソルを僕はありったけの気持ちを込めて抱き締める。




――――僕の隣に、ずっと居てくれるかい?

――――私の隣に、居てくれますか?




 僕は、これからも山を登る。
どんなに高くても、どんなに困難でも構わない。
逃げ出さずに、ただ前へと進もう。
僕を見初めてくれた、君と共に―――― 
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後書き〜
セリフをあまり使わないコメディじゃない作品を作りたくなり、出来ましたのがこれです。
コメディチックな作品の方が作り易いんですが……こういうのも書いてみたいなぁ〜なんて思ってまして、はい。
面白みに欠けていたら申し訳ない!

終わり方であえなく撃沈! 中途半端だなぁ。
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修正点、誤字等がありましたらお教え下さい。
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