ポケモン小説wiki
永遠の棺 の変更点


*&color(#e06bad){永遠の棺}; [#ycbe6d89]

&color(red){訳の解らない表現が多々あります};ので、苦手な方は此方からお帰り下さいorz

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作者:[[トランス]]

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私は死んでいる。

第一声でこんな事を言うのはおかしいだろうが、紛れもない事実なのだから伝えておく。しかし、私が居るのは“あの世”では無い。今も“この世”で生活している。何故か?見知らぬ私なんかの話を聞きたいのか?変わっているな。
まぁいい。ならば、何故私が此処に居るか、話す事にしよう。

あれは今から約3年前の事だ──

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…私は何故こんな所に居るのだろう?目を覚ますと、何時もの見慣れた木製の天井は無く、かわりに所々色彩の斑(まだら)な鼠色の空が拡がっている。少しばかり肌寒さを感じさせる風も吹いている。どう考えても、其処は屋外だった。
が、何故屋外に居るのだろう。私は酒は苦手で喩え上司に誘われようとも断っていたから、酔って倒れたりはしない。昨晩は妻と挨拶を交わし家の布団で眠りについたのをハッキリと憶えている。誰かに運び出されたんだろうか、とも考えたが、こんな山奥の墓場に何もせず置いていく様な手の込んだ悪党や悪戯をする子供は流石にいないだろう。
一体何故、とグズついた空を見上げていた時、遠くの方で僅かに声が聞こえた。声のした方へと脚を運ぶと、まだ新しい1つの墓石の前に、数人の人だかりが有った。よく見ると、それは皆私の知る者達だった。墓石の正面には妻の姿も有った。誰が亡くなったのだろうか、皆泣き崩れていて、私の存在に気付いていない。こういう場面で声を掛けるのは非常識な気がしたが、仕方が無い事だ。私は妻達の方へと寄り、声を掛けた。
…しかし、反応がない。妻も大分耳が遠くなったな、と思いつつ、今度は大きく息を吸い、親が子を軽く叱りつける時の様な音量で声を発した。

…何故だ?誰1人此方に見向きもしない。余程ショックだったのだろうか。私は高まる焦燥を抑え付け、もう一度声を描けようと息を吸い込んだ。
しかし、妻の呟きを聞いた瞬間、私はその息を吐き出す事が出来なくなった。

「あぁ…どうして先に逝ってしまったの…あなた…」

…暫く経ってから、私の脳味噌は妻が可笑しくなったんだと結論を出した。何故なら、私は此処に居るのだから。妻のすぐ側に居るのだから。何を世迷い言を言っているんだ、と墓石に彫られた名にふと視線を移す。

…信じられなかった。其処に刻まれていた姓は、紛れもなく私と同じものだったのだ。

そんな、まさか。

私は、死んだのか?

ならば、今此処に居る私は誰なんだ?

様々な思いが交錯し、頭の中が滅茶苦茶になる。しかしそれでいながら、信じられない、信じたくない思いがまだ残留している様で、私は喉が壊れんばかりの声で妻の名を呼んでいた。

しかし、その声は届かない。

──もう、二度と。

それを考えると、私は涙を流さずにはいられなかった。熱い雫が私の頬を伝い地面に落ちていく。その雫でさえ、妻には届かない。只、それが悲しくて悔しくて。私は声を上げて涙を流し続けた。

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「…奥さん、もう行きましょう。」

どのくらい泣いていたのか解らない。妻に対して掛けられた言葉に、私は我に返った。顔を上げると、私の墓石の前で私と同じ様に泣き崩れていた妻が顔を上げ、数秒私の墓石を見つめた後、ゆっくりと頷いていた。
その頷きは、私にとっては本当に、非常にゆっくりと映った。まるでスローモーションの様に。

ふらりと立ち上がる妻。妻は涙に濡れた虚ろな瞳を灰色の空へ向け、そして再度私の墓石の方へ向き直ると、酷く悲しみに満ちた表情で、小さく呟いた。

──さよなら。と。

待ってくれ。私は此処に居る!必死でそう呼び掛ける。
しかし、その声は届かない。
ふらふらと去っていく妻。嫌だ。私を1人にしないでくれ。そんな気持ちではち切れそうになった私は、既に壊れてしまった喉で必死に妻を呼び、妻の背を追い、手を伸ばす。




…私は、夢を見ているんだろうか。

妻の肩へと伸びた私の腕は、妻の肩を貫いた。私の腕が、妻の肩へ入り込んでいる。しかし、妻は平然と、いや、何事も無かったかの様に、ふらふらと歩いていってしまったのだ。私の腕が妻の肩から抜け露になる。血液も、何も付着していない。そして妻の肩も、正常そのものの華奢な状態のままだった。
私は決して妻を傷付けようとしたのでは無い。ただ、妻の肩を掴もうとしただけだったのだ。しかし、焦っていた私は妻との距離を測り違え、肩に手が触れてしまう筈だった。しかし、私の腕は、あろうことか妻の肩を…すり抜けた。

これが、何を意味するのか。











私は、本当に死んでしまったのか…









私はもう既に妻を追う気力を失っていた。“死”という事への絶望感や恐怖心に苛まれ、脚を動かす事が出来なくなった。
徐々に小さくなっていく妻の背中。消えていく足音。落ちていく雫。

小柄で、頼り無いところが好きだった。控えめな笑顔が好きだった。泣きながら怒る姿が好きだった。落ち込む私を励ましてくれる姿が好きだった。

妻の全てが、大好きだった。
その全てに触れられるこの世界が、大好きだった。妻は私にとって、世界そのものだった。

──もう、そのどれにも、触れる事は出来ない。


それから私は、誰にも届かぬ声を上げ、何時までも泣き叫んでいた…

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そうして今に至る訳なのだが、あの後どう立ち直ったのかはよく憶えていない。この3年の間、私が一体何をしていたか、全く判らない。判っているのは、“死”という現実を突き付けられている事だけだ。
が、私が成仏出来なかった理由は紛れも無く妻との関係にある。一周忌にも顔を出さなかった妻は、恐らく二度と此処へやって来ないだろう。

…霊は成仏出来なければどうなってしまうのだろうか。一生この世をさ迷い続けるのか、はたまた意思などが消滅し、消えて無くなってしまうのか。

それだけは嫌だった。消えてしまうだなんて酷すぎる。一生さ迷う事になるのなら、せめて妻の側に居てやりたい。しかし、何故か墓場から出ようとすると、妙な力に引き戻され、一歩も出る事が出来ないのだ。霊は其処かしこを徘徊出来るものだと思っていた手前、非常にショックだった。

──このままでいたら、私はどうなってしまうのだろう。


妻にッ…!会いたい…!私の…私の魂一部だった、妻にもう一度会いたいッ…!!

私は既に自らが死んだ事を認めていた。しかし、あんな顔で…あんな哀しみに満ちた顔で別れるだなんて、御免だった。
消えてしまうのならば、忘れてしまうのならば、せめて、せめて笑って別れたい。妻が、彼女が幸せな事を確認して、別れたかった。

…気付けば私は、墓場の出口へと歩を進めていた。が、私は今の自分が何をしようとしているのか理解出来た為、驚きはしなかった。寧ろ、その意志に乗っていたのかも知れない。

透き通った脚へ力を込め、強く地を蹴り上げる。頬に風が当たらない妙な感覚は未だに慣れていない。構わず私は脚を動かした。
途端に襲ってくる違和感。心を掴まれる様な、感情を惑わされる様な感覚が、私の身体を駆け巡る。それでも私は、必死でその嫌悪感を抑えつけ、妻の元へと続く道を駆けていく。このままいけば、妻に会う事ぐらいは出来るかもしれない。私はそんな淡い期待を持ち始めた。
──しかし、次の瞬間にいとも簡単に消し飛ばされた。

視界の隅に木々が流れて行く連鎖が途端に停止する。が、私は決して歩を休めてはいない。更には、先程消えていった筈の木々が再度視界の隅に姿を表し、先程とは逆方向へと消えていった。
私の身体が、勝手に来た道を辿っているのだ。いくら脚を動かそうとも、私の身体は何かに掴まれた様に引き戻されてゆく。
やがて、私の身体は、元の墓場の出口へと戻されてしまった。


…あの時と似た様な絶望感が、私を支配する。どんなに足掻いても、どんなに叫んでも、どんなに想っても。もう妻には届かないのではないか、という諦めに近い感情が、じわじわと拡がってくる。
しかしその時、私に一筋の光が差した。

──そんなにあの人間に会いたいのか──

腹の底に響く様な、太く、深い声が、空気を震わせた。
驚き振り返ると、深紫の靄が空間から沸き出していて、その内から何かが少しずつ這い出してくる。少しずつ露になるその姿を見て、私は驚愕した。
堅そうな黄金色の鎧に、朱と黒の縞模様の腹。
黄色の棘の生えた蛇の様な身体、6つの漆黒の翼の先には紅い棘が生えている。それは徐々に姿を変え、6つの脚を生やし、翼が繋がり一対の巨大な翼へと変化してゆく。
やがて、それは私の目の前へとゆっくり降り立った。それは──この世とこの世の裏側、つまりあの世を往き来する事が出来ると言われるポケモン。破れた世界、謂わば反転世界という場に巣食う主。自称、命の神。
反骨ポケモン、ギラティナだった。


続く

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ギラティナが命の神て…どういう事やねん!!←とこの世とあの世を往き来出来るというのは私の勝手な設定です。

やはりポケモンが出ていないのは不味いので、ちょこっと更新しました。

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苦情や質問は此方にお願い致します。アドバイスも大歓迎で御座います。

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