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欲しいものが(ry の変更点


作者:[[DIRI]]

*欲しいものが(ry [#qda94429]

**欲しいものが手に入るまで僕はいつまでもそれを追いかけ続けるだろう、要するに愛したことが伝わることが僕の願い [#z13f30a0]

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 どのくらい昔だったのか、覚えていない。と言うよりも忘れようとして忘れた。
 僕は、何だっただろうか、確か両親とどこかへ出かけていた。
 そのときの感情も意識して忘れた、思い出すとまた発作のように自分の腕を食い千切ろうとしてしまうかもしれない。
 それでも時々ふと思い出そうとしているのは、僕が物足りていないからだろう。

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 身体が痛い。
 外傷とかそういうものじゃなく、筋肉が軋むような痛み。腰とか足とかが特にその痛みが強い。けれど、僕はただ一心にその行為を続ける。
 目の前の雌に、自分の一物を抜いては挿し込み、抜いては挿し込み。
 鼓動が、これ以上早くなると心臓が爆発するのじゃなかろうかと言うぐらいに早い。けれど構うことなく、雌の九本の尻尾のうちのいくつかを両腕に抱え込み支えにしながら、ピストン運動を続ける。
 部屋の中は、僕と彼女の体温で蒸し暑い。それに独特のにおいも満ちている。けれど二匹しかいないこの部屋で、誰がそんなことを気にするのだろうか。少なくとも、僕は気にしていない。気にしたことはない。
 激しく、子供の僕にすれば体力の限界に近い辺りでかなり激しく腰を動かし、ただ、ただ、求めるものを、僕が欲しいものを得るために、雌の膣に硬くなった僕を突き入れる。
 荒い僕の呼吸と、僕の腰の動きはリンクする。僕の腰の動きと、彼女の荒い呼吸は同調する。彼女の荒い呼吸と、幸せそうな嬌声は同期する。
 その嬌声を聞くと、僕は少し幸せだった。彼女は僕を感じてくれている、それがわかるから。
 彼女の背に馬乗りになって、彼女を自分の支配下に置いた。そういう嬉しさはしばらく前に失せた。
 今では当たり前、そう、当然のこと。
 僕はそのために、彼女といる。大好きな、大好きな、僕の二番目の母さん。
 愛してる。心の底から。
 親子としても、愛してる。友達としても、愛してる。異性としても、愛して、愛している。
 僕が後背位で彼女を犯すようになったのは、ほんの二ヶ月ぐらい前。
 それまでは、彼女が僕を下にして騎乗位で犯してくれた。
 母さんの騎乗位にかかると、僕はほんの数分で意識が遠のいていってしまう。
 僕が母さんに初めて犯された時は、母さんが不満そうにしていたから、次からは僕も頑張った。
 意識が遠くなっても、何とか気を失わないように頑張り、母さんの騎乗位にも、三回までなら耐えられるようになった。
 何度か、五回ぐらい耐えたことがある。
 そのときは、母さんがご褒美と言って体中の舐めさせてくれた。
 そうなった時は、僕は夜が明けるまで母さんの身体を舐め回して、胸にしゃぶりついて、乳首を吸う。
 母さんの身体は、何と言うか言葉で表現しがたいが、感覚を率直に文字にするとしたら“美味しい”。
 前戯も母さんは自分で済ませて、さっさと交尾に入るから、僕が触れたのはほんの数える程度の回数だけ。
 僕はまだそれで構わないから良いんだけれど、そのうちに母さんが何もしなくても全て終わらせられるようにはなるつもりではある。
 母さんの秘部から溢れ出す愛液が、僕が腰を動かすたびに、ぽたぽたと床に落ち、僕と母さんの内股に沿って流れ落ちる。
 今日僕は、一日で何度絶頂を迎えただろうか。
 ――きっと、十数回ぐらいは果てただろう。
 そして、もう一回、それに数が付け加えられる。

 「っあ、あぁぁ……」

 情けない声と一緒に、僕の身体はびくんびくんと痙攣した。
 その痙攣で、母さんの膣を突くことも忘れない。
 深く呼吸をしながら僕は母さんから離れると、ぐったりとそのまま倒れた。
 所で、僕はまだ大人じゃない。
 だから僕には子供を作るなんて能力があるわけがない。
 こういう生活をしている上では、非常に都合の良い体だ。
 僕が、それに母さんが。
 いつかは、僕にだってそういう能力が備わる時期が来るのだろうけど、まだ先の話だ。
 とりあえず、今はそんなことを気にする必要はない。


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――――――
――……

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 「ウルく~ん、一緒に帰ろう?」

 学校の帰り道、僕は大抵そう呼び止められる。
 呼び止めるのは女子、時々男子もいた。
 そういった連中は、呼び止められた瞬間に僕の六つある尻尾が苛々と揺れていることに気付くべきだと思う。切実に。
 けれど……僕は学校の中での“キャラクター”を守らなければならない。
 学校と言う社会では、キャラクターを守ることが暗黙として古くから成り立っている。
 僕がそれを守るのは、その暗黙を無視した輩がどうなるのか簡単に想像がつくから。
 それに耐えうる精神力など持ってはいない。というより、普通に生きていく時点でかなり精神を削っているのでそこに回す余裕などない。

 「うん、じゃあ送っていくよ。あっちだったよね?」

 僕は努めて笑顔を浮かべながら、同級生のポチエナに返事を返す。
 彼女はどうにも僕に“並々ならない感情”を抱いているらしい。
 最近特に彼女が僕に接近してくるケースが多いので、非常に手を焼いている。
 第一、僕はこの学校に転校してきてから一ヶ月そこそこ。そんな僕が彼女の家の場所まで把握しているとなるとかなり重症のような気がする。
 僕は学校で、所謂“二枚目”のポジションにいる。
 男子達も何も言ってこないというのが少し気になるところではあったが、大方女子が怖いのではなかろうか。小学校の低学年などは大抵男子より女子の方が力的に強い。
 というのも連携力と“先生に告げ口する”と言う小学生の&ruby(タブー){禁忌};に近い技を惜しげもなく使うからだろうが、今はどうでも良い。
 僕は、自分で言うのもなんだが所謂美形だ。いや、強いて言えば中性的、女の子にも見える整った顔立ちと言うべきだろうか。学校の面食い女子達からしてみれば所謂“可愛い男子”だ。
 それで、転向してきて悪いイメージを植えつけるのも何だったので、出来るだけクラスメイトには好意的に接していた。
 八方美人と言われる可能性を否めないが、運良く“優しい”とか“頼れる”みたいな印象を持たれたらしい。加えてこの馬鹿騒ぎしまくる年頃にしては落ち着いていて頭も切れるから、女子から“完璧な男”見たいな風に見られているようだ。
 いつもつるむ男友達も出来ていたので、そういう連中は僕がそういった面を持っているだけの少年だと言うことぐらいわかっているはずだが、この歳の男子女子の間にはとてつもなく深い溝があるので易々と飛び越えようとしてくる女子がおらず、勘違いされっぱなしだ。
 ちなみに、その溝を勇気を持って飛び越えてきた女子は勢い余ってそのまま僕に告白すると言う暴挙に出るわけだが、僕は総スルーを決め込んでいた。
 騒がれるのが面倒だから、と言うのは前の学校でひしひしと感じたこと、二度とごめんだ。最初は――こういった話が好物の小学生だから――騒がれもしたが、今では「またか」と言われんばかりの状態である。
 諦めずに何度も僕に言い寄る子もいる。さすがに惨めなので、OKしようかとも思ったが、また面倒なことになりそうなので心を鬼にして断り続けていた。
 が、今僕の隣でぺちゃくちゃと家族の話をしているこのポチエナは、僕の気を知りもしないで深い溝の上をひょいひょい行き来する猛者である。
 話を聞くに、四匹兄弟で一匹だけ雌だからということで、溝などどこへやららしい。
 つまり他の女子達が僕に“勢い余って”告白していた中、このポチエナは溝を飛び越える速度やら何やらをきちんと制御できているために緩やかに僕にアプローチし続けることが出来るようだ。
 彼女の親は頑張って四匹も子供を作る必要があったのか原稿用紙一枚分の反省文を書いてもらいたい気持ちだ。

 「ね、ウル君? 私達噂になってるよ。知ってる?」
「エリーちゃんと同じで耳は良いからね。知ってるよ」

 苦笑しながら僕はポチエナのエリーの問いに答える。噂と言うのは要するに「あの二匹付き合ってるんじゃないか?」とか言う類のもの。
 こういう話は小学生に限っては女子だけでなく男子もするから自然と僕の耳にだって入ってくる。小学生は声が大きいものだ。

 「やになっちゃうよ、そんな根も葉もないデマ」

ここに防衛線を張るのが僕の主流。流れに乗って向こうが赤っ恥を晒す事態を防ぐ、とても両者に利益のある話術だと思う。

 「そんなに嫌?」

上目遣いでそう問いかけてくるこのエリーと言う少女は、僕の苛々を加速させる何かを根本に秘めているらしい。

 「ん、いや、ん~っと……僕は今のところ女の子に興味はないからさ。友達としてエリーちゃんのことは好きだけど、そういう風に噂されるのはちょっと心外だなって……」

キャラクターに沿えば、これが限界だ。これなら嫌われ者を演じた方が楽かもしれない。

 「そっか。なら別に良いんだけどね。良かった~、ウル君に嫌われてなくて」

お前の腹は見えているぞ、とは言えないのが僕の辛いところだ。

 エリーの家は、僕が直帰する場合の道からすると大回りをする形になる。と言っても、それほどたいした回り道でもないが。

 「それじゃあ、また明日。バイバイ」

バイバイ、とこちらからも別れの挨拶を返し、僕はさっさと帰っていった。
 エリーは正直なところ、僕の苦手なタイプだ。あまり馴れ合う……と言うか構い合う関係というのは僕にとって非常に苦痛だ。もちろん、彼女のことを可愛い子だと思わないわけではない、苦手なタイプだし気が強いが、にっこりと笑っているエリーはとても可愛らしい。
 恋愛云々に僕の思考が向かないのは、母さんがいるから。母さんが僕の一番大切な人だから、母さん以外はいなくたってどうでもいい。
 母さんを救うために百匹の友達が死ぬことになったとしても僕は一切躊躇わない。といっても百匹はおろか十匹も友達といえるような奴はいないが。
 さあ、家に着いた。木造の古い一軒家。母さんが一ヶ月前に買ったぼろい家。僕と母さんにとって都合の良い、そんな家だ。僕等は、一般人からしてみたら“変態”の一言で社会的に抹殺できる存在だから。

 いつかここを離れて逃げる時には証拠も全て燃やしていける場所だ。

 「ただいま」

誰もいない家に帰宅の挨拶をして、僕は荷物をテーブルの上において水を飲む。
 しゃべるのは得意じゃない、得意じゃないと言うか、長く話すのが苦手だ。それ故にエリーの相手はとても疲れる。もっとも他の女子も似たようなものだが。
 乾いた喉を潤したあとは、さっさと宿題を済ませてしまう。後に残せば母さんと愛し合う時間が削られてしまうから。
 小学校の低学年の問題など、よほど馬鹿だと言われている奴でさえ簡単に解くことが出来る。足し算と掛け算の順番を間違う間抜けもいるが。
 宿題も終わった、あとは母さんが帰るのを待つだけ。退屈だ。
 ゲームとかそういうものは買ったことがない、本はあいにく&ruby(ルビ){振り仮名};が振っていないと読めない。
 こういうときばかりは友達がいればと思う。エリーみたいなのはごめんだが、馬鹿をやらかせる男友達なら歓迎だ。ここに来る前いたところではガーディの友達と火遊びで&ruby(ぼや){小火};を起こして母さんとか近所の人からこっぴどく叱られたこともあるが、そういう思い出が出来たので今でも彼とは友達だと僕は勝手に思っている。僕にしては珍しいことだ。
 そうだ、最近家庭科の時間で料理実習をした。丁度良い手慰みにもなるし、仕事から帰ってきた母さんにまた家事という仕事をさせないですむ。そう思うと僕の行動は早かった。

 「ただいま」

母さんが帰ってきた。いつもなら飛びついて、深く深くキスをするところだが、あいにく今は手が離せない。
 僕が返事だけ返して飛びついてこないのを不審に思ったのか、母さんは心配そうに僕を呼びながらキッチンを覗いてきた。

「あら、料理してるの?」
「うん。この間学校でハンバーグの作り方習ったから」

へぇ、と感心したように返事をしながら母さんは僕の手際を見に来た。
 僕は何でもそつなくこなせる自身がある。だから母さんも特に何も言わなかった。

「今日は僕が夕飯作るから、母さんは休んでて良いよ」

そのときだけ僕は振り返って母さんの顔を見た。
 とても嬉しそうな顔をしている。

 「ありがとう、ウル。ホントに良い子ね」

そう言って母さんは僕の頭を少し乱暴に撫でた。母さんは清楚と言うよりはがさつ……大分活発に行動するタイプの人だから、そういうのも慣れっこだ。
 そうやって撫でられるのが、僕にとってはかなり快感だ。背中がぞくぞくする。
 興奮を押し殺しながら僕は黙々と夕飯作りに勤しんだ。

 僕の作ったハンバーグは、母さんにはとても好評だった。どうも僕からするとシナモンを入れすぎたような気がしたが、母さんは味付けが濃いものとかを好むので丁度良かったらしい。
 さて、お腹は満たされた。
 僕は食器を片付け終えると、母さんに飛び掛る。そのまま母さんを押し倒すと、首筋に僕は吸い付いた。母さんが短く息を吐く。
 そっと母さんの胸に手を這わせ、優しく、撫でるように柔らかな乳房を揉む。じっくりと、十数分も時間をかけて。
 この時点で、僕のモノは完全に勃起していて、快感に酔いしれたいと本能が叫んでいた。けれどまだ、我慢だ。愛し合うには僕が母さんにもっともっと、愛を注がなくては。もっともっと母さんを気持ちよくさせてから。

 「ウル……今日はありがとうね」

母さんは荒くなってきた呼吸の合間に言った。

「お礼に、今日は好きなだけ……私を食べて良いわ」

我慢できない。
 返事を返す前に、僕は母さんの中に一気にモノを突き入れていた。母さんは食べて良いって、そう言ったもん。''今日は好きなだけ''、って。
 僕が腰を前後に、激しく動かすたびに、母さんが叫ぶ、そう快感に喘いでいる。喘いでる母さんって、何でそんなに綺麗なんだろう。もう本当に食べてしまいたいぐらいに思う。

 「かっ、母さんっ……! 愛してるっ、愛してるよぉっ」
「あっ、あっ、あんっ!」

僕は一匹で愛を叫ぶ。母さんは喘いでる。それでも十分、返事がなくたって僕がこんなに愛してあげてるんだから、母さんだって僕のことを愛してる。
 愛してなきゃ、僕と&ruby(セックス){交尾};なんてしてくれるはずがない。こんなに僕が交尾してるんだから、母さんだって僕が母さんを愛する以上に僕を愛してる。僕が何度交尾しても、母さんは嬉しそうにそれを受け入れてくれてたもの。

 「あっ! うぅ……」

僕は果てた。モノはびくびくと跳ね、身体はそれに合わせて痙攣する。このとき、射精は出来ないから母さんが僕の遺伝子を受け入れてくれないと言うことだけが今のところ心残り。だが後数年経ったら、母さんを何度も何度も孕ませることができる。
 十数秒、オーガズムに酔いしれたあとは、再び交尾を始める。
 愛してる、愛してる、僕は母さんを愛してる。母さんがいなければ僕はどうなっていたことか。だから母さんを愛してる。母さんと結婚したい、母さんを孕ませて、母さんとの間に子供を作りたい。何匹も、何十匹も、何百匹だって良い。母さん、母さん、大好きだ。

 明日も学校があるなんてことも忘れて、疲れ果てて自然に眠ってしまうまで僕は母さんと愛し合っていた。

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 「酷い顔してるね、休んだ方が良いんじゃないの?」

翌日の学校でエリーは挨拶を跳び抜かして開口一番こう言ってきた。
 気を遣ってくれる女子がこのエリーだけしかいないと言うのも妙な話だ、つい最近まで廊下を歩けばさりげなくストーカー行為に勤しむ女子が数匹はいたと言うのに。

 「いや、昨日夜遅くまで母さんとね……」
「お仕事の手伝い?」
「そんなとこ」

むしろあれは僕の仕事だが。

 「なんて言うかさ、その、ママとパパはあんまり言うなって言ってたけど、ウル君とウル君のママってあんまり似てないよね?」

さすがに大人は事情ぐらい知っているだろう、母さんが僕の母さんになった理由を。

「母さんはね、僕の本当の母さんじゃないんだ。だからだよ」
「えっ、そうなの?」

エリーの表情は驚きから崩れない。普通そのあとは申し訳なさそうな顔をすべきじゃないのか。
 いや、まぁ、エリーなら仕方ない。そういう子だ。それでもさすがにそれ以上深くは聞いてこなかった。聞いて来たら相手が女の子でも殴り倒していたと思う。

 そのあと嫌なことを思い出して、本当に体調を崩したので僕は早退した。母さんは仕事から抜け出せなかったので、保険の先生に家まで送ってもらって、僕はベッドに寝ていた。
 しばらくすると、背筋がぞくぞくとし始め、僕は無意識に腕の毛をむしっていた。ベッドが僕の体毛で栗色になっていくが、無意識の僕はそれに気付かなかった。
 チャイムが鳴ったことで我に返った僕はようやくそれに気がついた。
 慌てて僕は念のためにといつもそばにおいてある&ruby(ジアゼパム){鎮静剤};と&ruby(パキシル){抗鬱剤};を飲み込み、ベッドの上の毛をゴミ箱に投げ捨てて玄関に向かった。

 「ウル君大丈夫? 朝もぐったりしてたから心配してたのに本当に早退しちゃうなんて思ってなかったよ」
「それよりまだお昼だけど、どうして君の家より遠い僕の家にエリーちゃんが来てるの?」

さすがに突っ込みをこらえ切れなかった。
 聞くところ、クラス全体の勧めで僕のところへ行けと言う事になったらしい。仮病まで使わせるとはあのクラスの連中はいずれ痛い目を見るべきだと思う。
 とりあえずエリーをリビングに通し、椅子に座らせた。やたらきつい消臭剤の香りが彼女の表情を少し歪ませたが、これは防衛の上で仕方ないことなので詫びれる気は一切ない。

「クラスのみんなが寄せ書きしてくれたよ」
「長期入院したわけでもないのに大げさだなぁ……」

僕はあくびをしながら言った。ジアゼパムは飲むと意識が朦朧として眠くなってくる。

 「みんなったら、私がウル君と家で二人っきりだからって何か期待してるみたいなのよね~」
「キスとか?」
「ちょっ、変なこと言わないでよ」

日ごろのささやかな仕返しだ。まぁ、別に彼女の赤くなった顔を見て楽しいわけではないが。
 薬のせいで朦朧としているため、僕は皮膚が見えている腕のことなどすっかり忘れていた。それにエリーが気付くと、彼女はとたんに心配そうな顔になる。

「その腕、どうしたの?」

そこまで聞いて、後は覚えていない。薬のせいだ。
 気がついたら、僕は自分のベッドの上で黒いものを見ていた。
 僕の部屋に黒いものなんて置いてないから、驚いて飛び起きたら、エリーがそれに驚いて短く悲鳴を上げた。

「う、ウル君! 良かった、起きてくれて……。急にふらふらして倒れたから心臓止まっちゃうかと思うぐらいびっくりしたよ……」

さすがに、いくら気がない相手とは言え泣きながら言われると堪える。学校じゃないからキャラに沿う必要がないとしても。

 「ごめん、大丈夫だよ。薬のせいで眠くなっちゃっただけだから」
「ホント……? 平気なの?」
「うん」

まだめそめそと泣き続けるエリー。よしてくれ、君はそういう女々しい子じゃないと思ってたのに。
 仕方なく、僕はぎゅっとエリーを抱きしめた。また驚いて声を上げるエリーだったが、今度は気が動転して呆然としている。

「ごめんね、エリーちゃん。僕、君には泣いて欲しくない。だから泣き止んでよ」

返事はなく、相変わらずエリーはボーっとしている。まぁ、泣き止んではいるわけだ。
 視線を時計に向けるとそれなりに時間が経っていて、彼女の家の門限も近いはずだ。仮病を使って学校をサボったことぐらい親に伝わっているだろうから、門限破りのダブルパンチは避けさせてやりたいところだ。突き詰めた原因は僕なのだから。
 このぼんやりしている女の子を飛んで帰らせるには、文字通り羽を生やしてやればいい。

 「ありがとう、エリーちゃん。僕のこと心配してくれて。お礼に……」

僕はエリーにそっとキスをした。後から思えば頬の方がよかったのではないかと思うが、今となっては遅い。
 癖でディープキスまで持って行きそうになるが、さすがにそこまでいくと僕の立場が危ういのではっと思いとどまった。
 さらに呆けてしまったエリーに刷り込むように「もう遅いから帰ったほうがいい」と促して玄関まで見送る。そして彼女は数歩ぼんやりとしたまま歩いた後、僕の方を振り返り、それに僕が笑顔を投げかけてやると体育の時間でも見たことがない速度で飛んで帰って行った。
 それをまだ少しふわふわしている感じが残ったまま見つめ、僕は唇を拭った。

「……なんか甘かったな……」

母さんとするキスとはまた違う感じだった。
 その後、母さんが帰ってきて云々。精神的な問題なのでまず体の方から休めた方がいいということで、その日から数日母さんと愛し合えなくなった。
 苦痛ではない。僕は母さんと交尾したいわけではない。ただ愛し合いたいだけだから。けれど看病できるようなものではないのが僕の病気だ。薬だけ飲ませてあとはいつも通り。
 母さんは僕を愛してくれてる、ということが、交尾以外で実感できないのも事実だった。いや、親としては母さんがとても優しくて責任を持った――僕と交尾していると言う事実を除けばの話だが――女性だと言うのはわかっているが、何と言うべきか迷うところだけれど、所謂“無償の愛”とかいうもの、それを僕が感じるレベルで受けている感じがしない。
 子供だからまだそういうものの感受性に疎いのかもしれないけれど、僕と母さんが触れ合う、肉体的干渉以外の場合においてはどこかラインが引かれている気がした。
 だからこそ、僕は母さんが僕を愛してくれる交尾を何よりも優先させたいわけなのだけれど、僕の身体や心が壊れて、愛し合うことが出来なくなったら本末転倒だから仕方が無い。
 僕は子供だから、愛が欲しくて仕方が無い。好意じゃなくて、愛だ。そういうわがままを見せないのが僕の性分だけれど、内心誰よりも愛を渇望している。
 親から、本当の父さんや母さんからはもう愛されることがないから、だから母さんみたいな他の誰かから愛をもらって、本来貰い受けるはずだった愛を満たすのが僕の生き様だ。



 翌日から再び学校に行くことになったのだけれど、なぜか僕はその日からエリーと交際を始めた事になっていた。そのことに気がついたのが、間抜けなことに一週間も経った後だった。
 無論僕はエリーに問いただすのだが、反論できない言葉が飛び出てきたので僕には容認することしか出来なくなっていた。曰く、「女の子のファーストキスは特別なものなんだよ?」
 女子に“特別”とか“大事”とか言わせると、男子としてはもはやその事柄は断崖絶壁の上に建つ鉄壁の要塞ぐらいに手の出しようが無い。ひょうきん系の人気者ならその限りじゃないが、あいにく僕はジョークを飛ばすことも稀なキャラで通っている。
 それにしても本当に腹立たしいのが、僕の腕に包帯が巻いてあったこととかをいつも以上に心配してくるエリーの態度に僕が気づかなかったと言うこと。僕は人の変化に敏感な方だが、エリーの態度はなんだか今まで見てきた中でも特殊な方だったので気づかなかった。
 本当にエリーという子は厄介な子だ、僕にどれだけストレスを溜めさせれば気が済むのか。
 その日から僕はジアゼパムとパキシルを常備するようにした。ストレスで理性が飛んだら大事だ。まぁその状態になった時僕に薬を飲むほどの余裕があるとは思えないが、先生なりが対処してくれるだろう。
 あくる日、給食の前の時間。その時間は図画工作だった。
 本棚を作ってみようと言うことらしい。僕の家にはあまり本が無いが、まぁ、母さんが仕事の時に使うファイルでも立てるのに使ってくれるだろう。必要が無いなら物置にしまうだけだ。
 こういう授業は多分、田舎の方が多いのではないだろうか。都会よりも物品の調達が困難だし、手先が器用だったほうが田舎では過ごしやすいだろう。
 けれど当然こういう授業では面倒を省きたくなる馬鹿が出てくるものだ。そしてそいつのせいで僕はこの学校の連中からひとつ線を引かれることになった。
 板を&ruby(のこぎり){鋸};で切って必要な大きさにする作業を面倒だと思う奴が、半分ぐらいまで切った後にこのままへし折ったら良いんじゃないかと言い出した。賛成する奴が二、三匹いるのは言い出したそいつがそれなりに面白くて人気のある奴だからだ。
 普通先生が聞きつけて無精しないでちゃんと切れと諌めるところだが、先生は今用具室に引っ込んでいる。

 「いや、やめといた方がいいと思うよ。多分切り口が滅茶苦茶になると思うし」

僕が理性を働かせて言ってやった。多分そいつも冗談半分だったのだろうが周りの数名が僕の意見に同調すると、何となく面白くなかったのか向きになってやってやると言い出した。
 まぁ、工作室で笑いが起きるだけだから僕は別に止めない。先生から怒られるのもそいつだ。
 僕は苦笑とため息でそいつの無茶を見届けてやることにした。と言ってもそいつが同じ班なのだから仕方ないというのもあるが。
 みしっ、と気の軋む音がする。作業台の端に板を置き、一匹が板を動かないように支えて言い出したそいつが板を折ろうと体重をかけている。
 僕は、心臓がどきりと跳ね上がったのを感じた。
 ぎちぎち、みしみしと板は耐え、そしてただ軋むだけ。その音を聞くたび、僕は鼓動が早くなっていくのを感じていた。
 目の前に、誰かいる。か、母さんだ。母さん、僕の本当の、母さん。嫌、嫌、嫌だ、この光景。嫌だ。やめろ、消えろ。
 エリーが僕のことを気遣うようなことを言う声が聞こえる。けれど僕は目の前にある光景に全てを奪われていた。
 母さんが転ける。

 ばきばきっ。木の板はついに折れた。
 その瞬間に、僕の目の前にいた母さんは、それを助けようとした父さんと一緒に死んだ。

 「ああああぁぁぁぁ!!!!」

僕は絶叫し、工作室が僕の声以外は聞こえ無くなる。全ての視線が僕に向いていた。それでも僕は絶叫することをやめずに、狂ったように叫び続けていた。


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――……

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 目が覚めたときには、病院にいた。白い天井が見える。首を動かして窓の外を見ようとしたら、鉄格子があって外がよく見えない。
 よく知っている。患者が逃げないようにするため、そして飛び降りて自殺しないようにするため。そのための鉄格子だ。
 頭がずきずきと痛む。頭の中にミサイル針でも喰らっている気分だ。

 「平気?」

声をかけてきたのはエリーだった。何故こんな所にいるのか。まぁ、他にも色々聞かなければならないこともあるので、彼女がここにいるのは都合がいい。どうせあの時だって僕の側から離れなかったに違いないだろうから。
 まずは、彼女の腕に巻かれた包帯についてだ。

 「これ? ウル君が暴れだした時に押さえつけようとしたら突き飛ばされて鋸でざっくり」
「え、ごめん、大丈夫?」
「私よりウル君のほうが重症でしょ?」

さすがに怪我までさせてしまったのは本当に申し訳ないと思う。けれど彼女はまるでそんな傷などないかのように、僕のことを心配する。
 そのあと、僕はあのあとどうなったのかをエリーに聞いた。どうやら、先生はおろおろするだけで役立たずだったらしい。エリーが全部解決したのだそうだ。
 どこまで本当か定かではないが、絶叫しながら暴れまわる僕を数匹の男子と共に押さえつけ、教室に置いてきてしまった薬を――僕にその気が無いにせよ彼女と言うことになったのだから、いつも近くにいるはずだと思い「僕の様子がおかしくなったら薬を飲ませて欲しい」と頼んでおいた――クラスメイトに取りに行かせ、暴れる僕に薬を飲ませたそうだ。

 「それでー、その、ウル君があんまり暴れるから薬を飲ませるのに最終手段使っちゃった」
「何? 殴って黙らせたとか?」
「ちーがーうーよ、そのー、口移しっ」

漫画じゃあるまいし。そう言いたい所だがそれで助かった身なので文句を言う義理はない。しかし冷静になればクラスメイトの注目のど真ん中でそんなことをしたことになる。

 「まぁ、薬は飲ませてくれたわけだし、ありがとうね」
「だって、彼女だもん」

赤くなってもそう言う彼女はなかなかませていると思う。そういう部分は可愛らしい。

 「それで、どのくらい経ったの? 一日かその辺?」
「二週間は経ってるよ、毎日来てたけどいっつもお薬で寝てた」

よほど僕が暴れたに違いない。その間母さんはどうしたのだろうか。

 「実はウル君気が触れて死んだんじゃないかとか色々噂立ってるよ。一応毎日私がお見舞いに行ってるってみんなに言っといたけど」
「二週間いなかったらそんな噂も立つよね。今は落ち着いてるけどまた暴れるかわかんないし、学校にはもうしばらく行けないかな……」
「無理はしなくていいよ、私がウル君のこと変な風に言う奴ぶっ飛ばしとくからゆっくり良くしていけばいいよ」

この子は、小学生なのだろうか? 僕の知る小学生ではないように思える。僕もそう言われる類だろうが、この子は僕がからかえば顔を赤くするような&ruby(うぶ){初心};さはあるが、まるで大人のように落ち着いていて、しっかりとしている。
 その年齢では稀にしか見ることの出来ない神妙な面持ちで彼女は僕に問いかける。

「ウル君の病気って、何なの? ここ、普通の病院じゃないでしょ?」
「……一応、僕の彼女だから教えてあげるけど……これは言いふらさないでね?」
「うん、約束する」

約束を反故にした場合僕は即行で彼女をフるつもりだ。

 「僕の病気はね、体のどこが悪いとかそういうものじゃないんだ、それは何となくわかってると思う。僕の病気って言うのはね、心の病気。&ruby(PTSD){心的外傷後ストレス障害};って言うんだけど……わかんないよね?」

彼女は頷く。この言葉は大人になればそれなりに一般常識なのではないだろうか。

「簡単に言うと、トラウマだよ。もっと簡単に言えば……思い出したり考えたりするだけでものすごく嫌な気分になることってあるでしょ? それに心が耐え切れない病気」
「よくわかんない、嫌なことって寝たら忘れちゃうから」
「君ならそうだろうね」

僕はくすくすと笑った。

 「忘れられないんだ、忘れたくても。忘れたと思ってても、ふとした拍子にその光景が目の前に現れて……パニックになって、あんな感じになっちゃう」

エリーはゆっくりと何度か頷きながら、何か言いたそうにしていた。それを促してやると、少し迷ってから彼女は僕に聞く。

「その“ふとした拍子”ってどんなときなの?」
「トラウマに関連するような何かを感じたとき、かな」
「じゃああの時は……」
「“音”、だよ」

首を傾げるエリーに、僕は心の傷を話すことにした。

 僕が、もっともっと小さかった時。そのときはまだ僕の本当の両親は健在だった。
 とても仲が良かった。田舎に住んでいたからどこかへ遊びに出かけたりすることはなかなかなかったけど、三匹で近くの森を散歩していた。
 昼間はとても明るかったし、うっそうとした森ってわけでもなかったから、安全だった。安全なはずだった。
 散歩の途中、僕は足に棘みたいなものが刺さってしまって、母さんに診てもらっていた。
 それで、少し立ち止まっていたんだけれど、そこに芯が腐っていた木が折れて倒れ掛かってきた。
 母さんはそれに気付いて僕を突き飛ばした、けどこのままじゃ母さんが潰される。父さんが母さんを助けに向かった。
 間に合わなかった。母さんを助けようとした父さん諸共、木に押しつぶされて死んだ。
 その瞬間が、僕の脳裏に焼きついてしまって離れない。目を瞑っただけでもそれを思い出しそうになる。

 パキシルが効いているのか、何とかパニックを起こさずに僕は彼女へ話すことが出来た。その間、エリーは何とも言えない、例えるなら寂しそうな表情をしていた。

 「じゃあ、板の割れる音が木の折れる音に聞こえたんだ?」
「うん……」

音の媒体は同じものなのだから当然だろう。僕は意識してその&ruby(トラウマ){心的外傷};を忘れようとしていたので、そこに気を回すことが出来なかっただけだ。

 「心配しないで、そのトラウマのことは忘れていいよ。私がずっとウル君の側にいて注意しといてあげるから」

その言葉に僕はきょとんとした。

「彼女だもん、彼氏にそのくらいぐらい尽くさなきゃ」
「でも、僕は……」

君の事を好きで彼氏になったわけじゃない。

 「わかってる、私わがままだもん。でも私がウル君のことを好きなのはホントのこと。ウル君は何もしてくれなくていいから」

献身的。それがぴったりと言うか、それ以外にいい言葉など見つからない。この子は本当に、僕が思っている以上に大人で、そして素晴らしい女性らしい。

 「ねぇ、エリーちゃん」

僕はゆっくりと彼女に問いかけた。

「僕のこと、どのくらい好き?」

 この質問は、子供らしい質問であると思うかもしれない。でも、僕にとってはとても重要なことのひとつだった。エリーは少し考えてから、少し恥ずかしそうに僕に言う。

「言葉じゃ、上手く言えないよ。でも、うん……その、あ、愛、してる……よ?」
「愛してる?」

 愛してる。確かに彼女は、エリーはそう言った。僕を愛してると、そう言った。

 「ご、ごめんね、その、子供が言うようなことじゃないよね」

僕から視線を逸らしつつ、エリーはそう言う。僕はベッドから身を乗り出して、彼女の頬にキスをした。

「え……?」
「ありがとう、エリー」

 僕の行動と言葉で呆けてしまったエリーだったが、看護師さんが面会時間が終わったと伝えると、そそくさと帰っていってしまった。
 僕の行動が何であるのか。それは、純粋に彼女に好意を抱いた、それだけのこと。
 母さん一辺倒だった僕だが、エリーは僕のことを好きだといわずに''愛してる''と言ってくれた。

 僕にとって愛は、どれだけあっても飽和状態にはならない。僕は愛に飢え、注がれることに果てしなく貪欲なだけ。
 エリーは注いでくれる。僕が彼女に何を与えるわけではなく。僕に愛を注いでくれる。
 それなら、僕からも彼女に愛を与えれば、彼女はもっともっと僕を愛してくれることだろう。

 「僕も愛してるよ、エリー」



 これは浮気になるのだろうか? 母さんは僕を愛してくれているのに、僕は母さんだけでなく他の雌を愛している。僕はただ愛して欲しいだけ、それだけだけれど、それが浮気になるというのなら僕は罪深い雄なのではないだろうか。
 けれど、今得ている愛を、それを手放すことなんて僕には到底出来るはずが無い。僕は愛に飢えている。愛を得るためならなんだってする。罪がどうしたというのか。

 「あと一週間は様子を見なきゃいけないそうよ」

夕方、母さんはそう言って僕の頭を撫でた。さすがに今は乱暴ではない。

「毎日お見舞いに来てくれる友達がいるそうね。その子のためにも問題なくすごせればいいけど」

エリーとの事を知られたら、母さんからそんな言葉が聞けるかどうかは定かじゃない。
 けど、確かに学校を休み続けていると言うのはいただけない。僕は休みたくて学校を休むことはなかった。勉強がしたいとかではなく、他の誰かに劣ってしまうのが嫌だっただけだ。学校を休めばその分他のクラスメイトから置いていかれてしまう。
 僕はなるべく問題を起こさないように、エリーや母さんが来たとき以外は何にも干渉しないようにしていた。その方がストレスとなるものも無くて落ち着いていられる。
 エリーが学校の宿題やらを持って来てくれるので、専らそれで時間を潰していた。頭をひねるようなものでもないので、プリントの隅の方に落書きでもしながらのんびりとやっておけばいい。
 母さんは毎日来るわけではない、元々忙しい仕事をいつも定時で終わらせて帰ってきているだけで、本来なら残業があるはずだ。僕の世話が一時的にでもないのなら、仕事を少しぐらい優先するのだって当たり前だろう。僕もそれについては仕方ないと思っている。
 エリーはその点毎日やってくるので僕にとってはとても都合のいい相手だった。
 彼女は僕を愛してくれる、それも僕が望む以上に。それがたまらなく嬉しい。
 僕らの関係は日ごとに親密になっていった。とりあえず、彼女にキスをしてもぼんやりしていることはなくなった。

 「明日から多分、また学校に行けると思う。何かちょっと怖くなってきたな……」

僕は少し思っていることをエリーに打ち明けた。エリーが僕の見舞いに毎日来ていることはクラスの全員が知っているだろうから、僕が異常者のような扱いをされるのではないかと思ったのである。

「大丈夫、私がウル君に変なこと言う奴懲らしめてるから」
「君って本当に……」

献身的。そう言おうと思ったが、口に出す少し前でそれをためらった。

 「本当に、口より先に手が出るタイプだよね」
「えー、それ褒めてないよね?」

献身的という言葉は、何となく不釣合いな気がして僕は適当に言葉を紡ぎだした。

 「それじゃあ、また明日。明日は学校でね」
「うん」

軽くキスをして別れの挨拶に。エリーとのキスは、いつも甘い味がする。
 母さんとのキスでそういうものを感じたことはなかった。
 どうしてエリーは僕の思うことをことごとく覆してくるのだろうか。


――――――――
――――――
――……

----


 時は過ぎ、僕等は中学生になっていた。
 エリーのおかげで僕はクラスメイトから少し神経質に扱われるようになったぐらいで、大して浮くこともなく学校生活を続けることが出来た。
 彼女のことは自分でも想像していた以上に好きになっていた。母さんは僕の精神病のことがクラスメイトに知られた時に引っ越そうかと提案してきたが、僕はエリーのためにそれを拒否したぐらいだ。
 それでも、僕は母さんと愛し合うことはやめなかった。前にも言ったが、僕は愛に貪欲だ。手に入れたそれをみすみす手放しはしない。

 「んっ、はぁ……はぁ……」

母さんとの交尾は僕が成長するにつれて激しくなっていく。ただピストン運動を繰り返していただけの単調なものではなく、体位を変え、愛撫を交え、濃厚に絡み合う。
 そして成長した僕は、身体も大人になっていた。
 仰向けに倒れる母さんの上にまたがり、胸を手で揉みながら腰を動かす僕。小学生だったときより力も強くなっているから、腰を動かすたびに小気味いい音がする。
 そのたびに洩れる母さんの嬌声が、僕を興奮させる。
 正面から抱きつくように母さんを犯し、その柔らかい胸を揉み、愛して愛して、愛し続けた。

 「母さん、母さんっ! 愛してるっ、愛してるよっ!」

母さんは喘ぐだけ。昔から、変わらない。

 「あっ、あっ、あんっ! もっと、もっと激しく!」

母さんがそういうなら、僕はそれに従う。僕が愛を注いであげる。
 腰の動きをさらに早く。右手で母さんの尻尾を扱き、左手で胸を揉み上げ、もう片方の胸を舐め、しゃぶりつく。

 「あぁんっ! そう、良いわよもっとしてぇ!! あぁっ!」
「だ、ダメっ、母さん! もうっ……!」

僕は限界だった。昔と比べて大分持ちこたえるようにはなったが、限界が来ないわけではない。
 僕は果て、反射的に腰を突き出した。それに応じるように、母さんの膣が僕のモノをきつく締め付けてくる。
 僕と母さんは何度か痙攣したあと、繋がっていた場所を離す。
 少しだけぬめり気のあった液体が短く糸を引き、まだ繋がっていたいと言っていたが、すぐに切れる。

 「今までで一番良かったわ……でも……」
「でも、何……?」

満足そうな表情をしている母さんの表情は一瞬曇ったように見えたが、すぐにもとの表情に戻り、なんでもないと言う。母さんがそう言うならそうなんだろう。

 「僕もすっごく気持ちよかった。僕がイった時に母さんがぎゅって締め付けてきて……」
「ウフフ、その時私もイっちゃったのよ。一回目でウルにイかされるなんてちょっと悔しいわ」
「母さんったら……」

僕が母さんをすぐに満足させることが出来た、初めての日だ。
 でも、僕は満足できていない。
 ぎゅっと母さんを抱きしめ、未だに治まらない肉棒を母さんに突き入れる。急にそんなことをしたからか、母さんは甲高い声で悲鳴を上げた。
 そのまま、母さんを犯し続けた。準備が出来ていなかった母さんは、僕が今まで見たことが無いくらい何度も果て、淫らで綺麗な表情をしていた。
 僕も、何度も果てた。けれど、僕は母さんを犯し続けていた。愛がどうとか、そういうのよりも先に、身体を求めていた。母さんの、雌の身体を。
 僕がおそらく、三回目ぐらい果てた時、母さんは涙を流し、喘ぎ続けるせいで閉じない口から涎を垂らしながら悲鳴を上げる。

「ウルっ、もっ、もう、やめてっ! そんなに出されたら、妊娠しちゃうぅっ!」

 僕ははっとして、母さんから離れた。妊娠? 僕が、母さんを妊娠させるなんてこと……。
 僕は、そうだ、身体はもう大人になりつつあるんだった。失念していた。僕に自覚はなかったが、果てた時、射精していたらしい。
 何となくショックで、何となく嬉しかった。これで母さんと子供を作れる。
 そんなことを思いながら、疲れ果てた僕は母さんをぎゅっと抱きしめながら目を閉じた。



 翌日。何事もない、いつもの朝。
 母さんが朝食を作っていて、僕がおはようと挨拶をし、母さんがおはようと返す。朝食を食べ、母さんが仕事に出かけ、僕も学校へ向かう。
 いつもの朝だった。
 違ったのは夕方。僕が帰ってきたときのこと。
 リビングはいつも通り、誰もおらずがらんどうとしている。違ったのは、テーブルの上に手紙があったこと。その重石に、母さんの着けていたイヤリングが置いてあったこと。

 '''ウルへ'''
 '''私はあなたをここへ置き、違う場所へ行くことにしました。あなたを置いていくには理由があります。'''
 '''昨晩、あなたと交わった時、あなたは私の中にあなたの愛を残しました。私にはそれを育むことが出来ません。'''
 '''なぜなら怖いからです。あなたは私との血の繋がりは無いけれど、親と子だからです。あなたを引き取って一ヶ月と経たない内に、あなたと強引に交わった私が偉そうなことを言うのはとてもおかしなことだと思いますが、それでもです。'''
 '''あなたが私のことを、そこが知れないほどに愛してくれていたのは重々承知しています。私がそうなるように育てたのです。私もあなたと同じ孤児でした。だから愛に飢えていた。成長して、同じ孤児だったあなたを引き取ったのは、愛してくれる相手が欲しかったから。'''
 '''それは、感情のことでもありました。しかし、成長していた私は、もっと肉体的に愛して欲しいと願っていました。だからこそ、子供を作る能力がまだ備わっていない子供であるあなたを選んだのです。'''
 '''昔、心を開いてくれなかったあなたを、私は半ば強引に犯しましたね。その日ばかりの関係で、多くの雄と夜を共にした私でしたから、あなたを満足させるには十分な技術は持っていました。'''
 '''あの時の言葉を覚えていますか? あの時私は、「交尾は愛し合っていないと出来ないこと。だから、あなたと交尾している私は、あなたのことを愛している。だから私のことも愛して欲しい」と、そう言いました。'''
 '''あれはあなたを、あなたが私を無条件で愛してくれるよう調教するために吐いた嘘です。'''
 '''あの時、私はあなたを愛していませんでした。ただ、肉欲を発散したいがため、年端もいかない小さな子供の肉棒に貪りつく惨めで醜い雌でしかありませんでした。'''
 '''けれど、けして昨日まであなたを愛していなかったわけではありません。'''
 '''あなたが私と交尾している時、「愛してる」と、そう言ってくれることが嬉しかったですし、可愛らしいあなたのことは愛していました。'''
 '''けれど、あなたが望むほどのことであったかは定かでありません。私の感覚としては、あなたは所詮、“愛用の玩具”であったように思います。'''
 '''私が満足いくまで、必死になって私へ愛を注いでくれるあなた。その姿が、私にとっては癒しでした。快感でした。'''
 '''私は愛されている。こんなに必死になって私を満たそうとしてくれる人がいるのだと、私は酔っていたのです。'''
 '''けれど、あなたは私の思う以上に、私を愛していたのですね。'''
 '''子供であるあなたとなら、どれだけ交わっても私が身篭る心配など無い、だから安心して交わることが出来る。それが私があなたを引き取った理由でしたから、これからどうするべきかをまず考えました。あの時言い淀んだのはそれなのです。'''
 '''そのあと、あなたは何度も何度も、私を犯しました。とても怖かったです。私はあなたをこんな風にしてしまったのかと思うと悲しくなりました。'''
 '''あなたのあの時の眼は、まるで&ruby(けだもの){獣};で、私に自分の遺伝子を残すため、自らの欲望を満たすためだけに行動しているように見えました。'''
 '''私は、自分で子供を産み、育てる気などまるでありませんでした。だから、私はあなたから逃げたいのです。あなたから子を宿らされてしまう前に。'''
 '''自分勝手なことは、よくわかっています。言い逃れする気もありません。私を憎んでください。私を蔑んでください。惨めな雌だと哀れんでください。'''
 '''あなたは私と違い、立派な子のはずです。ですから一匹で置いていってしまってもきっと大丈夫だと思います。'''
 '''お金のことは心配しないでください。こんな雌の金は嫌かもしれませんが、毎月あなたが少しくらい遊んでも生活に困らないほどのお金を送ります。'''
 '''それでは、あなたに愛され、今からはあなたに憎まれる雌は去ります。どうか体と、そして心の健康に気をつけてください。'''
 '''あなたの二番目の母より'''

 '''P.S'''
 '''私の愛用していたイヤリングを置いていきます。'''
 '''苦しい時は、それを見て私のせいにしてください。そうする権利があなたには十分にあるはずです。'''
 '''あなたから逃げはしましたが、あなたのことは今でも愛しています。'''
 '''では、二度と会うことはないでしょう。さようなら。'''

 「笑えるよな、ホントに……。僕ははなから利用されてたのか……」

失笑しか出来なかった。僕にはこれからどうするとかそういうことを考えることが出来なかった。ただ失ったものの事、母さんのことを考えることしかできなかった。




 「ウル君……? ねぇ、大丈夫……?」

玄関の方からエリーの声が聞こえる。僕はベッドにうずくまったまま動かない。
 足音が近づいてくる。僕は動かない。

「どうしたの? 一週間も学校に来ないなんて……」

ドアの向こうから声が聞こえる。……僕は動かなかった。
 ドアが開いて、エリーが入ってくる。

「……ちゃんと食べてる? やつれてるよ」

僕は何も答えない。しゃべる気になれなかった。

 「おばさんも最近見かけないし、みんな心配してるんだからね」
「僕には関係ない……」
「関係ないこと無いでしょ、みんな友達だし……」
「僕に友達なんていないよ」
「そんなこと言わないの。ほら、何か作ってあげるからベッドから出て」

 エリーから促されるがまま僕はリビングまで行き、椅子に座ってテーブルを見つめていた。埃が少し積もっている。
 しばらくして、エリーが簡単な料理を持ってくる。僕は食欲が湧かなかったが、食べなくてはエリーが納得しないだろうから嫌々口に運んだ。

 「どうしたの、話してみて」

話すことなんて無いと素直に言うことができず、僕は口の中のものを咀嚼し続けた。

「私に言えないような事って、おばさんのことだよね」
「君には関係ない」
「関係なくない。おばさん、いなくなっちゃったんでしょ?」

さすがに噂は立っているか。

 「心配しないで、誰かに言ったりしないから。安心して」
「僕はそんな心配してるんじゃないよ。今更何がどうなろうがどうでもいい」
「ウル君って昔からそう。おばさんのことになると何も考えられなくなるみたい」

否定はしない。自分でもそんなことは十分にわかっている。

 「おばさんに何があったの? いや、ウル君に何があったのか教えて欲しい。私はウル君の恋人だから」

まっすぐに目を合わされるのは僕にとって辛い。僕には後ろ暗いことがあるからそういうのは苦手だった。

 「僕は何も話したくない」
「何で?」
「話したら君は僕から離れるから」
「そんなこと無い。大丈夫だから話してよ」

そんな訳無い。僕が内に秘めていることを彼女に打ち明ければ確実に彼女は幻滅する。目に見えている。

 「約束する、絶対に私はウル君から離れたりしないから」
「口約束なんて僕にはいらないんだよ! どうして君はそうやってなんでもかんでも簡単に約束できるんだよ! 僕は母さんから裏切られたんだぞ! 僕がどれだけ母さんを愛してたか君は知らないだろ? それなのに僕は母さんに裏切られて捨てられたんだ! 口約束なんて信用できるか!!」

僕はテーブルを飛び越えてエリーを床に押さえつけていた。そのときの僕の感情は、怒り以上に悲しみが強かった。
 エリーは少し苦しそうにしながら僕のことを下から見つめながら、再び口を開く。

「そんなこと言って、何したって今のウル君は誰も信用したりしないでしょ? そのくらい私だってわかるよ、大好きな人から裏切られて」
「わかったような口利くなよ! そういうのが一番むかつくんだよ!!」

黙らせようと僕は彼女の首に手を置き首を絞めた。彼女は苦しそうな表情で暴れ始めたが、僕はさらに締め付けた。
 しばらくして、彼女は動かなくなった。

 「……エリー?」

我に返った僕は、目の前にいるポチエナの少女に声をかけた。返事は返ってこない。

 「……そんな、僕、エリー!」

僕は彼女の肩を揺さぶり、意識が戻ってこないかと祈った。しかしそれも無い。

 「嫌だ、嫌だ! 君がいなくなったら誰が僕を愛してくれるんだよ!? それに僕は……また……」

また、誰かを殺してしまったのか。


 僕がトラウマを抱えているのは事実、両親が倒木に潰されて死んでしまったこと。けれど、僕にはさらに辛く思うところがあった。
 あの時、母さんが僕を助けようと僕を突き飛ばしたとエリーには話したが、本当は僕が母さんを突き飛ばしたのだ。
 あの時僕の機嫌は悪かった。それで僕を撫でようとした母さんの手を跳ね除け、突き飛ばした。その結果母さんは倒れてしまい、母さんに手を貸そうとした父さんも潰されてしまった。
 僕が殺したも同然、幼いながらにそう思い、そして僕の心にある黒い部分になった。そいつはトラウマにかみ合って、僕の心を蝕んでいく。


 僕は床に頭を叩きつけていた。絶叫しながら、エリーの傍らで。
 壊れてしまう寸前だった。僕には何もない、僕には何も残されていない。誰も僕を愛してくれないし、愛した人を失った理由は僕自身だった。僕はもう、死んでしまえばいい。楽になれる、もう生きている理由すらない。

 「ウル君……?」

僕は止まった。傍らのエリーを見ると、小さくむせながら僕の方を見ていた。
 僕は彼女を抱き上げて、きつく抱きしめた。

「ごめん、ごめんエリー。僕てっきり君を……」
「大丈夫……。ウル君はもっと苦しんだんでしょ?」

本当にこの子は、どうして僕にここまで尽くせるんだろうか。
 それでも何度も僕は謝って、彼女を抱きしめた。彼女はむしろ嬉しそうに笑っている。

「私はウル君のこと愛してるから、何されても平気だよ。だから話してみて。私に出来ることなら何だってしてあげる」

僕は彼女に打ち明けていた。母さんとの事も何もかも全部。もう僕の生きている意味が彼女しかないことを僕は理解していたから。
 彼女は僕の話をじっと聞いていて、口を挟むこともしない。僕の話が終わったとき、彼女は僕のことを抱きしめた。

「ちょっとは驚いたけど、気にしない。ウル君は愛して欲しかっただけなんだもんね。形はちょっと歪んでたかもしれないけど、愛情表現なんだから仕方ないよね」
「君は僕に幻滅しないの?」
「しない。良い悪いで言ったら悪いかもしれないけど、それに誘導してたのはウル君のお母さん。私にとっては関係の無い人だから」

僕の考えをことごとく覆す、こんな娘の事を僕は愛している。

 「僕は、今まで愛情表現を交尾でしか出来なかった。他の事で母さんから愛されてるって思ったことって少なかったから」

そこまで言ってエリーを見ると、彼女は少し目を逸らした。

「言いたいことって大体想像つくんだけど……」
「……僕には君しか生きる意味が無いんだよ」

彼女はもっと目を逸らして、顔を真っ赤にしていた。

「……一回だけね、少なくとも大人になるまでは」



 ベッドの上にエリーは仰向けになって、頬を染めながら僕を見つめている。とても可愛らしい。

「あ、あんまりこういうのってよくわかんないけど、激しくはしないでよね?」
「こうなった以上保障はできないかな。でもきっと大丈夫」

一度エリーの唇にキスをして、彼女に覚悟を決めさせると、僕はもう一度彼女にキスをした。
 僕に合わせるように、彼女は舌を絡めてくる。心なしか彼女も積極的なような気がする。数分ディープキスで舌を絡めあっていたが、そろそろ僕も興奮してきたのでそれをやめる。ねっとりとした唾液が糸を引き、僕らの荒い息で何度か揺れた後に切れる。
 エリーは既に顔を真っ赤にして、興奮しきっていた。潤んだ瞳で僕を見つめてくるので、何となくいじめたくなるが、初めての相手にそれはさすがに酷だろう。
 僕は少し微笑みかけて、エリーの胸に手を這わせた。大人ではないから成長しきっていない、けれど将来有望そうな乳房を優しく撫で、ゆっくりと揉む。

「ひゃぅっ」

切ない声が漏れ、僕はそれに興奮する。どうやら僕にはSの気があるらしい。
 エリーの顔は上気していて呼吸も荒く、今まで性欲の処理すらしたことが無いのだろうと思われる。そんなエリーの首を舐め、胸を揉む手の片方を、彼女の秘部に持っていく。
 最初少し抵抗するようにもがいたが、僕が秘部を撫でてやるとびくりとして僕の成すがままになる。ゆっくりと表面を撫で、触られる感覚に慣らしてから僕は指を一本中に入れる。
 またびくりとし、彼女は僕に困惑したような視線を向けてきたが、くすくすと笑いながら僕は指を動かし始めた。

「ひっ、ぁっ、ウル君っ」
「刺激に慣らしてるんだよ。気持ちいいでしょ?」

彼女の答えを聞く前に、指をもう一本入れて刺激を強くする。

「あっ、やっ……」
「初めてなら慣らしとかなきゃ」

少し彼女の視線が恨めしそうな感じになったが、その感じも悪くない。
 しばらくそれを続けて、愛液が溢れて十分秘部が潤ったと思った辺りで、僕は彼女の股に顔を埋めた。それに対して彼女がリアクションをとる前に、僕はクリトリスに吸い付く。
 刺激が急に来たため、彼女はびくりとして腰を浮かせながら果てた。腰がぴくぴくと痙攣している彼女は、少し離れて眺めてみると可愛らしくて、滅茶苦茶にしたくなる。そう、滅茶苦茶に愛したくなる。

 「酷いよ、急にそんなことして……」
「こういうの慣れてないんでしょ? だったら気持ちよさも少しはわかってなきゃ」

彼女の頭を優しく撫でながら、僕はそう言う。エリーは不機嫌な顔もせず、僕の下半身に視線を移す。

「それ……」
「母さん以外の人に見られるのは初めてだけど……」
「……なんだろ、見てると本能的にうずうずする」

意外と破廉恥なことを言う彼女に僕は苦笑した。
 僕のモノは既に勃起して、脈打っていた。興味津々と言った様子で見られるとさすがに少し恥ずかしいが、これから彼女とこれでひとつになるのだから問題ない。

「ねぇ、その、私もウル君がしたみたいにしてみていい?」

この娘は全く。

「いや、いいけど……」

そう言うと、彼女は遠慮なく僕のモノにしゃぶりついてきた。
 急に来るので飛び上がりそうになったが、僕のものを完全に口の中にほおばって、舌で舐め、吸ったり顔を前後させたりしながら彼女は僕のモノを扱く。卓越してはいないけど、激しいその攻撃に僕は興奮して、絶頂する寸前だった。
 僕は無理矢理エリーを引き剥がし、少し興奮が収まるのを待った。

「えらく積極的だね……」
「ほら、大人になるまではこういうのの本番ってしちゃいけないと思うから、こっちでウル君を満足させられるようにしておきたいなって」
「自分でするから良いよそういうの」
「それじゃあ私がウル君を愛してる証明にならないでしょ?」

 その言葉を引き金にして僕はエリーに抱きつき、彼女の耳元で最後の確認をすると、ゆっくりと欲望で膨張しきった肉棒を彼女の中に挿入していった。
 彼女の秘部は初めてではあるが、僕が十分に刺激を与えて慣らしておいたので問題なく僕のモノを受け入れていく。最初こそ、僕は彼女に気遣う理性を残してはいたが、途中から我慢できなくなって、肉棒を一気に根元まで突き入れた。

「やあぁっ! ぁっ……」

悲鳴と同時に、エリーは僕に抱きついてきて、僕はそれに腰を動かすことで応えた。

 「あっ! あっ! あっ! あっ!」
「エリー、どう? 気持ち良い?」
「あっ、んっ、気持ち良いっ……! あぁっ!」

彼女は腕だけでなく、足でも僕にしがみついてきて、僕はもっと激しく動く。
 肉棒が彼女の膣を擦り、それだけでなく僕は首筋を舐め、胸を揉み、尻尾を扱く。彼女は快感に喘ぎ、がくがくと震える。

「あっ、ああっ!! あああぁっ!!」
「あはは、イっちゃったの?」

身体をびくびくと痙攣させながら、彼女は僕にしがみつき、モノをきつく締め付ける。僕はいったん休憩してやることにした。

 「こ、こんな……気持ちいいんだね……」
「まぁ……僕は気持ちよさ目的じゃないけどね。それより、痛かったりしない?」

僕は繋がったまま、僕等を繋ぎとめている腰に目をやった。若干血が出ているのが見える。

「そこまで痛くはないよ、それに今は……ね?」
「そっか。じゃあ、もっと激しくしてみようか」

体勢を変え、彼女が四つん這いになっている後ろから僕は腰を振った。

 「あっ! ゃあっ! 激しっ……」
「ちょっと手加減してるぐらいだよ……。ほら、行くよ。しっかり踏ん張ってね……。ふっ……!」
「あっ! あぁっ!! ああっ!! ああああっ!!!」

さっきまでの正常位より、後背位の方が僕らの体形的には動きやすいし、それに体も密着する。さっきよりも激しく動き、深く体の中に僕を受け入れることになったエリーは、またすぐに果てた。

 「タフだね、こんなに何回もイけるって……」
「ウル君はどうなの……」
「僕はまだ一回もイってないよ。一晩で四回か五回はいけるかな。……そのくらい、愛し合おうね」

彼女がげんなりした顔をしたが、まぁ、初めてなのだから仕方ない。今日のところは一度で終わらせてやろう。
 彼女が絶頂の余韻から冷め切らないうちに、また僕は腰を動かし始めた。彼女も喘ぐばかりでなく、モノを締め付けてきたりして僕が絶頂に至るのを促す。
 そして、数分そうやっていた辺りで僕にも限界がやってくる。

「え、エリーっ、イくっ、僕もイくよっ……!」
「はあっ、あっ! いいよっ、ウル君っ……!」

ぐっと彼女の膣の奥のほうまで肉棒を突き入れながら、僕は果てた。

 「あ、愛してるっ、エリーっ!」
「あぁぁっ!!」

愛の言葉を吐きながら、肉棒は精子をエリーの中に注ぎこむ。

「あっ、熱いの、入って、きて……」

エリーは果てながらも、自身の中に注ぎ込まれる精液を感じているようだった。
 僕等は荒い呼吸を一分ほどで少し整え、僕はモノを彼女の秘部から抜く。

「……エリー、ほら……愛の証……。垂れて来てる」

倒れたエリーに少し強引気味に秘部を見せて、僕の精子があふれ出てきているのを見せ付ける。僕はこれでもかというほど愛してやったのだぞと見せ付ける。
 恥ずかしそうに表情を歪めたエリーは、僕の顔を見上げて囁いた。

「……答えてなかったね。私も愛してるよ、ウル君」

僕は、彼女を襲ってしまった。


――――――――
――――――
――……

----


 「ウル君、ほら遅刻するよ!」
「ごめん、ちょっと遅くまで勉強してて……」

エリーから叱られながら、僕は通学路を走っていた。
 彼女は二回戦に至ったことを初めこそ怒っていたものの、少ししてからすぐに機嫌を直して許してくれた。
 僕は今、必死に勉強している。というのも、将来エリーに楽をしてもらいたいからだ。僕はエリーと愛し合った日に、彼女を将来嫁にもらおうと決心した。そのために僕は頑張っている。

 「……成績優秀でスポーツ出来ても、身だしなみがダメじゃ面接で落ちるんじゃない?」
「イヤリングは面接の時ははずすよ。まぁ、推薦ももらえると思うし心配することないと思うけどね」

イヤリングは、例のイヤリング。僕は女々しいところがあるから捨てられないのも仕方が無い。
 まぁ、それよりも今は、エリーと愛し合っていることが一番重要なんだけれど。
 欲しいものが手に入るまで僕はいつまでもそれを追いかけ続けるだろう、要するに愛したことが伝わることが僕の願い。僕の欲しいものは愛だった。追いかけて追いかけて追いかけ続けていた。
 けれど、母さんは僕に追うだけ追わせて、僕の愛を拒んだ。だから、僕の愛をちゃんと受け入れてくれる、そんなエリーのことを僕は心から愛している。
 愛したことが伝わって、彼女も僕を愛してくれる。これ以上望むことはあるだろうか。
 ある。もっと愛が欲しくなる。でもそれは、体の関係がある愛とかじゃない。彼女が僕に与えてくれるような、優しい愛情。きっと将来、僕の子供が、僕に与えてくれるだろう。僕はそれも追いかけ続ける。
 さぁ、今日も頑張って生きていこう。エリーのため、愛のため。


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あとがき

うわぁ、優勝しちゃったよ……
こんにちは、放置してたDIRIです。どうにも官能を書く気力が湧かず、他のサイトでモンハンの小説書いてました
第三回仮面小説大会を12票獲得して優勝いたしました。何だか申し訳ない気持ち
何故申し訳ないかというと、作品投稿最終日の日に全部を書き終える予定だったのに、家族旅行のため四日前に急いでここまで書き下ろしたからです
本来ならもっと長くなる予定だったのに、他の大会参加者様にも投票してくださった方にも申し訳ないと思います
評価されたことはとても嬉しいのですが、何となく気持ちが素直にそれを受け止める事が出来ません
まぁ、とにかく、この作品が評価された事を素直に喜んで、放置してしまっていた作品たちの続きを書こうと思います
けれど、私も進学して忙しい身ですので、かなりのローペース更新になるかと思いますが、そこはご容赦くださいませ
では、また
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