ポケモン小説wiki
林檎のかたち の変更点


こちらの作品は、2016/05/03のけもケット5にて頒布された[[wiki本2>ポケモン小説wikiアンソロジー2発行のお知らせ]]に寄稿したものになります。
&color(red){官能小説です。};

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 エメラルドみたいに淡く透き通ったゼラチン質、その中をふよふよと浮き沈みするリンゴ。艶めいて光る赤い表皮の真ん中を、ぴしり、と縦に亀裂が走った。熟れた果肉が崩れてできたくぼみから、とろり、琥珀色の蜜が溢れ出す。空腹でもないのに、私はなぜかそこから目が離せなかった。乾ききってしまった喉奥を唾が勝手に流れ落ちていく。釘付けになっている私をあざ笑うように、とろとろに熟した蜜は流動質のゼリーに舐めとられるみたいに吸収されていった。
「スピカにしちゃあ悪くない目利きだったんじゃないかな。なかなか美味しかったよ」
 振り向きつつ発せられた彼の声に、慌ててかぶりを振った。いけないいけない、何を考えているんだ私は。夕方過ぎから調子がおかしい。頭ははっきりしないし、体はみょうな熱を帯びている。垂れかけたよだれを、慌てて白衣の袖でぬぐい取った。
「んン? 何だい、その物欲しそうな顔は。スピカも食べたかったのかい」
「ち、違いますっ! そんな恥ずかしい顔、してませんからねっ」
 もうほとんど溶けて芯だけになってしまった赤い果実。ゼラチンから弾き出されたそれは、金属質の床に落とされぬちゃり、と嫌な音を立てた。ひねくれた笑顔が私を見下ろしている。
「そんなに食べたいならそれ、あげるよ」
「いらないですよこんな食べ残しなんて! だいいち、そのリンゴも朝ご飯の木の実も、全部私が取ってきたものじゃないですかっ。薄暗い研究所に閉じこもってないで、たまには外に出たらどうです。ランクルスだからあまり動かないでいいとはいえ、こんな生活を続けていれば体がなまってしまいますよ、クルイ博士!」
「ボクは博士じゃない、発明家だ。本来なら博士はスピカの方だろう。そんな区別もつかないのかい、ドクター・ピカチュウ?」
 ドクター、のところにクセのあるイントネーション。イチョウの葉のように割れた口の端を釣り上げ、クルイ博士は意地悪そうに笑ってみせた。彼が口を動かすのは、いつだって私に嫌味を言うときだけなのだ。



&size(22){林檎のかたち};


文:[[水のミドリ]]
挿絵:[[シーレさん>https://mobile.twitter.com/crepix]]


 スクラップエリアの奥の奥、人間たちの使わなくなった列車がしまってある倉庫の二階。隠し扉の裏から繋がるエレベーターを降りたところに、クルイ博士の研究所はある。ひと目を避けて作られた部屋、その中央に鎮座する作業台から彼はほとんど離れない。
「スピカ、準備室からコライダーを持ってきておいてくれた?」
「はいはい。まったく、ひと使いが荒いんですから」
「ん? 何か言ったかい?」
「何でもありませんよ」
 電気袋を伝う汗を袖で拭い、ずれた学士帽をかぶり直した。博士の発明したらしい大型の扉に頼まれた装置を取り付ける。ごうん、と何かが作動したみたいで、よくわからない計器がモニターに数値を弾き出し、電極の間を飛び交う電磁パルスが薄暗い室内を照らし出した。床に散乱するのは中身を使い切った薬瓶、人間の書いた研究書物、何日も前の食べ残し。欠けたフラスコの中にはひと目見て体に悪いと分かる鮮やかなピンク色のカプセル。……今朝飲まされた液体を思い出してしまった。
「博士、読み終わった本は本棚に戻してくださいよ。だらしないところをお客さんに見られて私、いっつも恥ずかしいんですからね。足の踏み場もないじゃないですか。……聞いています、博士?」
「大丈夫、ボクは浮いているからね。そんなに嫌なら、スピカが自分で片せばいい。それとボクは発明家だ」
「はー……もうっ!」
 博士は私を助手なんかと考えてくれていない。割り振られた仕事は専ら研究に関係のない雑用ばかり。食糧を持ってこさせたり、部屋の掃除だったり。あとは依頼をしに来る来客の対応か、それもなければ外にいるギアルたちと遊んでこい、なんて厄介払いする。
 いつになったら私を一人前扱いしてくれるんだろう。これでも彼の助けになる自信はある。瓶底眼鏡の端から実験に没頭する博士の背中をちらっと見て、彼の捨てたリンゴの芯をつまみ上げた。
「そういえば博士、私が朝に飲んだ試作薬、効き目があるのかいまひとつ実感が湧かないんですけど……。恥ずかしがり屋を直す薬だなんて、本当ですか? 引っ込み思案の私のために作ってくださったんでしょうけど……ちょっと、心配です」
「スピカは文句ばかり言って……どうせボクのことなんて信用していないんだろう?」
「そんなこと!」
「ふぅン、どうだかね。効能があるかどうか調べるから、ホラ、こっち来て。体の力を抜いて、ボクに体重を預けて?」
「こう、ですか?」
 言われるまま彼のゼラチンに腰かける。白衣越しに伝わるひんやりとした滑らかさが心地よい。予想よりもぷよぷよしていて弾力があり、少し力を加えた程度では崩れそうにないみたいだった。
 いつも遠巻きにその小さな背中を見ていただけだから、博士に直接触れるのは初めてかもしれない。いや、ゼリーの部分は彼の体と言えるのか曖昧な気もする。毎日顔を合わせているはずなのに、こんなにも近いって意識してしまうと体に芯が通った。背中越しに、博士の息遣いが聞こえてくるようだった。
「スピカは……ボクのこと、どう思っているのさ?」
「いきなりどうしたんですか?」
「なんでこうして毎日飽きずにボクの研究所まで遊びに来てるんだってこと」
「それはもちろん、一日も早く博士に認められて、ポケパークのみんなの役に立つ研究がしたいからです!」
「やっぱりみんなのため、か」
「そのために私はこうして――⁉」
 寄りかかっていた壁がパッと消えたかのように、背中を支えてくれていた弾力が無くなった。え? と振り返る間もなく、私の体は薄緑の膜にめり込んでいく。慌てて手足をじたばたさせるももう遅い、かえってゼリーの侵食を早めてしまう始末だ。
「ちょっとま、待ってください! さっき取り込んだ夕食のリンゴ、そのまま消化していたじゃないですか! 私も溶かして食べるつもりですか⁉」
「大丈夫ダイジョーブ。ボクを信頼してくれてるんじゃないの?」
「そうですけど……急に柔らかくなってこれ、どういう仕組みなんですか? あ、服の中にまで……!」
 背中から私を抱きかかえるように、液状化したゼラチンの逞しい腕が回される。べちゅん、と顔の左半分と下半身が捕らえられ、そこから毛皮を包む冷ややかな感触がじわじわと広がってくる。痛みこそなかったものの、まるでよだれを垂らしたモンスターに丸呑みにされるみたいで背筋が凍った。
「あの、これ、ちょっと――博士ぇ!」
「ダイジョーブだって。捕って食われるワケじゃないんだし」
 水あめの貯められた壺に足を滑らせてしまったように、毛皮の一本一本に粘液が絡みまとわりつく。何とか呼吸だけでも保とうと、鼻が覆われる前に大きく息を吸いこみ、目をぎゅっと閉じた。
 海に飛び込んだみたいな浮遊感。足がすくわれ、宙に浮いた。何かに捕まろうと両手を掻き回すと、ゲルから飛び出した手足としっぽが固定され貼り付けられたみたいに動けなくなった。
「目、開けてごらん。息もできるから」
「そんなわ――もがご!」
 反射的にツッコもうとした途端、口内に流れ込んでくる大量のゲル。むせ返しそうだったけど、そうするとさらに内側に入り込んできそうで、なんとか堪えた。これ、私の中のどこまで入ってきているんだろう。考えようとして、やめた。
 不思議なことに、本当に息がつまることはなかった。というより、息を止めていても苦しくならない。まるでへその緒から酸素を直接送られている胎児みたいに、肺の中に空気が満ちてくる感覚。口からこぼれた呼気が、連なる気泡となって天井へと抜けていった。
 おそるおそる目を開けると、一面が薄緑に覆われた研究室が見えた。本もフラスコも電磁パルスも、全てが半透明のレースを纏いドレスアップされている。首を回して後ろを振り返ると、ゲンガーみたいにいやらしい笑みを浮かべる、剥き身になった姿の博士が。
「薬の効果がしっかり表れていれば、何されても恥ずかしくないはずだからね。それを今から確かめるよ。……こうやって、ね」
「な――」
 今まで広がるように延びていただけだったゼラチンが、まるで意志を持った液状の生物のようにうごめいた。ズボンのウエストが引っ張られたかと思うと次の瞬間、ずり、と躊躇なく引き下ろされ、お尻が博士の目の前にさらけ出された。
「な、ななな何してるんですかあっ⁉」
「別に恥ずかしくないでしょ、もともと服は着てなかったんだし」
「それは、そう、ですけど……っ⁉」
 裾から靴もろとも左脚を通され、脱ぎかけのしどけない格好にさせられる。丸襟シャツとカーディガンもおへそまでいっぺんに捲られた。毛皮を晒すのは久しぶりで、肩越しに覗きこむ博士の視線で熱がこもるけれど、かろうじてまだ恥ずかしくは……ない。
 輪郭を確かめるように、ぬらぬらの体液が蠕動する触手みたいに全身の毛皮をくまなく舐め回す。まるでたくさんの手で按摩されているようなむずがゆさ。どうにか慣れようとしていると、追い打ちをかけるように穴という穴に入り込んできて、思わず身をよじらせてしまう。耳、鼻、喉の奥、ありとあらゆる粘膜を――って。
「ひゃ、そ、そこは……!」
「ンー? ここはなんだっていうンだい?」
「~~~~~っ‼」
 博士ってば、絶対分かっててやってる! 丸裸にされた下半身に這いずるゲルの圧迫感に、私は声にならない悲鳴を上げていた。
「んン、聞こえなかったな。真っ赤になってないでさァ、ココはなんなのか、ちゃんとその口から教えてくれよ」
「ば、バカなこと言わないでくださいっ! 降ろして、早く!」
「ボクに対してバカって……キミも偉くなったモンだねェ」
 軽口をたたく間にもあそこへの刺激はどんどん露骨になっていき、ついに割れ目を押し開いてゲルが中に潜り込んできた。……こんなの、恥ずかしいとかいう問題じゃない! 混乱する頭を何とか抑えこみ、私は両頬の電気袋から軽く火花を散らしてみせた。
「これ以上やったら、は、ぁふ、博士でも反撃しますからねっ!」
「喘ぎながら脅されても……全然怖くないんだけどサ」
「このっ……ひゃあ⁉」
 電撃を放とうとした瞬間、狙ったように耳の奥をくすぐられた。力の抜けた隙をつき、くぱぁ、と開かれたおまんこめがけてゼリーが無遠慮にぎゅうぎゅう押しこめられる。内側から揉みしだかれる荒々しさに、はしたない声を漏らし電圧を下げてしまった。
「やめてぇ、やめてください、は、やぁ、恥ずかしぃっ……」
「薬が効いていればそんなことないはずなんだけど……。もうちょっと頑張ってみようか」
「ぁう、痛い、ですっ!」
 みちり、と。
 肉と肉とが裂ける感覚。まだ雄を受け入れたことのない部分が無理やり拡げられていく。痛みはそれほどでもなかったけれど、こんな形で博士に初めてを奪われたと思うと涙が出た。
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 ゲルの腕が動かされて、博士と向かい合うように体全体がぐるり、と転がされる。大股開きであそこを博士に見せつけるような格好にさせられると、顔からオーバーヒートを吹き上げそうになる。
「へぇ……。中はこうなってるんだ。知らなかったなァ」
「ひっ……ぐす、ぅ、うぅっ……‼」
 見られてる。おまんこから子宮の入り口までをゲルで透かされて、博士の視線で串刺しにされている。膣壁に並ぶ襞のひとつひとつが、じっくりと調べられているようだった。ひとの弱みを握ったように歪む表情、それを見ただけでカッと全身に熱が回り、私は身悶えして口をぱくぱくさせるしかなかった。
 彼のゼラチンに取り込まれた時点で気づくべきだった。身動きできないように拘束されて、実験台に載せられていたんだって。
「ナカが物欲しそうにひくついているけど、なんだ、とんだ淫乱な子だったんだな。パークを救った後はさぞかし仲間と放蕩したんだろう? いつもひっついて回っていたミジュマルとポカブの男の子、ずいぶんとキミを慕っていたようだったからねェ」
「そ、そんなことないに決まってるじゃないですかっ! 私は博士がしゅぇ⁉」
 膣に入り込んだ粘液が圧力を取り戻して、肉襞のでこぼこに吸着するよう形を変えた。ほんの少しうごめかされただけで、今まで味わったことのないような灼ける疼きが込み上げてくる。心なしか、下腹部の毛皮がうっすらと盛り上がっているように見える。
「淫乱じゃないって言うならさァ、耐えてみせてよ?」
「待って、博士、正気に戻って……ぁあっ‼」
 入り込んだゲルが、張りつめたまま内部を行き来する。ビンに残ったジャムをこそげ取るように執拗な動き。青筋立つ鋼のような雄槍なら慣れない痛みは凄まじかっただろうけど、不定形のゲルは痛覚を刺激することなく、奥底に眠る愉悦だけをじわじわと呼び起こしてくるみたいで。気づけば力の入らない腰をがくがく打ち震わせ、蜜をにじませたおまんこをせがむようにぱくぱくさせていた。
 敵意を込めた非難の視線も、こんな状態ではどうしても棘を抜かれた丸いものになってしまっていて。力いっぱい睨みつけても、にやついた博士を小さく吹き出させただけだった。
「我慢しているの、バレバレだよ? 日ごろからそんな恥ずかしい顔で雄を誘ってるんだね。本当は気持ちよくて、声を抑えるのも精いっぱいなんだろう?」
「そんなこと、あっ、ないですって、ふゃっ!」
「……じゃあさ、まだまだ平気なんだヨねェ?」
「だ、め、ですってばぁっ! ……ゃああぁぁっ‼」
 お尻の方をひやっとした流動が束になってつついてくる。ここまでくればもう、次に何をされるのかだいたい想像がついてしまった。
 蜜壺をほじられ力の入らない肛門の狭い隙間を縫うように流れ込んでくる粘着質の奔流。腸内で小さな卵くらいのダマを作り一気に引き抜かれると、自分でも驚くくらい高い声が出た。
「気持ちいんだろう? 前の穴とうしろの穴を同時に攻められて、何も考えられなくなって涙とよだれを垂れ流して喜んでさ。それをボクに見られてさらに興奮するんだ。……やらしいんだぁ」
「ひゃああっっ‼ やめ、あっぁ、お腹のなか、擦れて……っ⁉ ふゃぁあああッッッ‼」
 おまんことお尻に噛り付いたゲルが交互にずり合わされると、ほとばしる快感に意識が千切れかけた。……このままじゃ壊れちゃう! 懇願した目で博士に訴えかけようとすると、じれつく視界に短い両脚のあいだから突出した彼のピンクのモノが映った。
 いつの間にいきり立たせていたんだろう、もどかしく揺り動かされるペニスは収まる鞘を探し求めて、ゲルとのわずかな摩擦からでも快楽を得ようと悶え苦しんでいた。か細い吐息を絞り出し全身を強張らせて、私に突きつけた先端の小さな穴をぷっくりと開かせたかと思うと。
「んぅっ……、あぁ、出る、うぅっ……‼」
「――かっ、は……‼」
 私の体を嬲っていたゲルの動きが、突然止まった。水風船が割れたみたいに、内臓を押し上げていたゼラチンが弾け膨圧をなくしていく。同時に、おまんこの奥の奥に種を植え付けようと、はかなく痙攣する彼のペニス。けれどその間には距離があって。まき散らされた精液は、私に届くことなくアーチを描いたままゲルに囚えられた。肩で息をつく博士が力なく手で掻き混ぜると、白濁は波に揺られたように代謝されて見えなくなった。
「はー……うん、実験は失敗だったね。あんなに恥ずかしそうにしてさ、薬の効果は全く表れていなかったよ。また新しいものを開発しないと」
 役目を終えたゲルが、すっかり拡げられた私の穴から流れ出る。ほんのりと赤く泡立ったそれは、じりじりと熱の引いていく私の頭に、純潔を奪われたという事実をしっかりと再確認させてくれて。途方もない虚無感に、拘束の解かれた手足を動かす気にもなれなかった。
 ふと見ると、さっき博士に溶かされて芯だけになったリンゴが、白衣のポケットからこぼれ落ちてゲルのあいだをすうっと漂っていた。食べ終わったら残りはただのゴミ、甘い蜜を吸われ果肉を剥ぎ取られ、骨だけになったそれはぞんざいに吐き捨てられる。私はその食べ残しだ。博士に良いように貪られ、気まぐれに遊び飽きられたらぽいっとお払い箱にされる。博士が遠く、遠くなっていく。手を伸ばしても決して届かないところに行ってしまう。
 そんなのは――そんなのは、絶対にイヤ!
「でもよかったじゃないか、ここまで吹っ切れれば、もう何も恥ずかしいことなんてありゃしない。スピカがここで得られることはもうないよ。どこへ行っても引っ込み思案に悩まなくて済む。こんな薄暗い研究室じゃなくても、キミを受け入れてくれるところはいくらでもあるだろう。ボクのことなんてきれいさっぱり忘れて――」
 ばちん。
 ほっぺたの電気袋をショートさせる。もちろん感電しないように電圧は低め。飛び散った電流はゲルの中を分散し不規則に伝い、一瞬だけゼラチン全体を淡い琥珀色に輝かせた。溢れる想いを胸に睨みつけると、ひるんで固まっている博士の揺らぐ目と合った。
 そうだ、自分でも知らないようなところまでいじり倒されたんだ、もう博士の前で恥ずかしがることなんてない。今しか言えない想いを全力でぶつけてしまえ。
 気力を振り絞り、私は叫んでいた。
「博士のバカっ、大バカ、アンポンタン! こんなことまでされて、まるっきり忘れるなんてできるはずないじゃないですか! 今までも散々振り回されて、愛想を尽かしていたらとっくに来なくなってますよっ。……私がこんなに好きだってアピールしているのに、なんで気づいてくれないんですか⁉」
「え……え? だってボク、スピカにひどいことたくさんしてきたのに……?」
「わざと嫌われるようなことをして博士が私を遠ざけているの、気づかれていないと思っていたんですか? 透けて見えるくらいバレバレですからね。ほかのポケモンの理解なんていらないみたいな素振りして、突き離して、分厚い鎧で身を守って、博士の本心には絶対に触れさせてくれない。今だってほら、私をゼラチンでくるんでぴったり抱き合っている気になっているけれど、本当はただ臆病なだけ。私がこれ以上近づけないように拘束しているだけでしょう! みんなのために研究がしたい、なんて言っていますけど、私がどんな思いであなたについて行っているか、分からないほど鈍いわけでもないですよね⁉ わたしの好きって気持ちは、マジックガードなんかじゃ防げないんだから‼」
 私と博士を隔てるゼラチンをずいと掻き泳ぐと、彼の小さな体を抱きしめた。一張羅の白衣がはだけ、お気に入りの学士帽も浮いてしまったけれど、そんなことは気にならなかった。ぶるん、と震えた隙をついて、無防備に空いた口の中に優しくキス。
 ああ、本当はこんな味なのね。ぐいぐい詰め込んできたゲルとは味も柔らかさも大違いじゃない。
「初めて、だよ、こうやって誰かと触れ合うの。スピカの舌、熱くて本当に火傷しちゃいそうだ。……キミの気持ちは嬉しいけど、こんなボクには釣り合わないから、もっといいひとを――」
「もうっ、素直になってくださいってば!」
「……うん、ありがとう、ごめんね、ありがとう……‼ ぅぅううぅっ、うわあああぁぁ~~~~~ん‼」
 博士は私の胸に顔をうずめて、泣きに泣いた。泣き方を忘れたひとが、二十年間貯めたのと同じ涙の量だった。ゲルの水分が奪われてしわしわになってしまうのではと心配になるくらい、彼は心の底から泣きじゃくった。


「ボクみたいな不定形のポケモンはね、自分と外の世界とを隔てる境界線が曖昧なんだ。キミは毛皮の内側がキミで、外側は外の世界だろう? ランクルスはそう簡単に線引きができないんだ。スピカが毛皮の上から白衣を羽織るみたいに、ボクは体全体を緑のジェルで覆っている。この部分はね、ボクであってボクじゃない。ここから内側は自分で、外側は自分じゃないって感覚が、はっきりしていないんだ。ジェルは外の環境から身を守るだけじゃなくて、食べ物を溶かして栄養を吸収することもあれば、粘着質に変性してキミを包み込むことだってできるのさ。そんなことをしていると、自分が何者かってことが、ときどき分からなくなる」
 眉間に皺を寄せて思いつめる彼の背中をさすってあげると、うん、ありがとう、と力なく笑った。疲れたように見つめ返してくる瞳は、もう震えてはいなかった。あれから三十分は泣き通してようやく激情も涙腺も収まって、ひとつひとつ言葉を選び出して喋れるくらいには落ち着いたみたいだった。私はというと、突然のスコールでできた水たまりに首を突っ込んで危うく溺れるところだった。気づいた博士が涙を代謝させてくれたおかげで助かったんだけれど。
「自分でもよくわからない自分を、どうしてほかのポケモンが理解できると思う? ボクは半端に理解されること――同情されることが怖かった。ユニランだった頃はそれで悩んだし、苦しんだ。すぐにかっとなって、気遣ってくれる周りの子たちを攻撃した。だけど強がったってしょうがなくって、ダブランになるとみんなを好きな気持ちも大きくなっていて、ふたつの脳が対極のことを考えてまるで自分が分裂しているみたいだった。ランクルスになっても歩み寄ってくれるみんなをことごとく拒絶して、ひとり研究室に閉じこもった。傷つけられることを恐れて、ジェルで体を包み込んで、気が狂ったフリまでしてさ。ボクは、ボクは本当に意地が悪い。半年前にスピカが現れて、暗い部屋からボクを引きずり出してくれた。そのうえポケパークを救った後も『みんなの役に立つ研究がしたい』なんて言って、一生懸命ついてきてくれているのにさ。そんなキミにさえ理解されることを拒んで、そのくせ勝手に好きになって、だからいっそう傷つけられるのが怖くなって、恋愛経験もないからどうすればいいのかわかんなくて、キミの気持ちを試すようなことばかりして。揚げ句に弄ぶのも愛情表現なんだって自分を丸めこんで、好きだって気持ちを押し付けて、無理やりひどいことまでした。……最低だ、ボクは本当に最ッ低なヤツだよ」
 彼の両目からはじき出された涙は、ゼラチンに包まれて大きな水の球になってふよふよ漂っていた。博士の中に長年わだかまっていた好きや嫌い、くやしさやさみしさ、もどかしさ、それに祈りにも似た清純な感情。そのすべてが溶け出してできた涙にそっと指をくぐらせると、私の毛皮にくっついて雫の形になる。強く押せば、不定形の水の泡はほかのものとぶつかり、ひとつの大きな塊になった。
「最低です。本当にあなたって方は、どうしようもなく最低なひとなんですから」
「ッ……」
 ぴくり、と両肩を震わせ、叱られた子供みたいにナイーブな上目遣いで見返してくる。これ以上私が針でつつけば、再び涙腺を破裂させてしまいそうだった。
「でも、最低だっていいじゃありませんか。博士の発明がなければ、ポケパークはダークライの悪夢に引きずりこまれて消滅していました。周りのみんなをどうとも思っていないのなら、この世界を救う発明なんて考えようともしないはずですもん。本当は誰よりも優しい心を持った方なんだって、私知っていますから。ひとりのポケモンとして尊敬しています。あなたは……どうなんですか?」
「ボクはそんな優しいヤツじゃない。スピカが好きな世界を守ろうとしただけなんだ。――ボクの大好きなスピカを悲しませるわけにはいかないから」
「……そんな恥ずかしいこと、よくサラッと言えますね」
「だって、大好きなんだもん。スピカは……どうなの? ボクのこと、嫌いになっちゃった?」
「そんなはずないじゃないですか、もうっ。今までも、これからもずっと大好きですからね、クルイ博士」
「……うんっ」
 胸に顔をうずめてくる博士の体をぎゅっと抱きしめると、彼も力強く抱きしめ返してくれる。今なら、彼に受けたひどい仕打ちも全部許せてしまえるような気がした。これほどにまで私を想ってくれたひとがいただろうか? 抱き合っているだけで心があったかくなってくる。もう少しだけでいいから、このままこうしていたい。
 ずれた眼鏡の端から、彼がゼラチンの太い腕を動かすのが見えた。作業台の上から欠けたフラスコをさぐり当てると、頭上でためらうことなくひっくり返した。鮮やかなピンク色のカプセルがいくつかこぼれ落ち、ぼとぼとっ、と私を包むゼラチンに沈み込んでくる。
「……なんですか、この薬は?」
「気分が盛り下がっちゃったからね、今朝君に飲ませた試作品と同じ効果の催淫薬だよ。奥手な性格を直すのには、大胆になるのが手っ取り早いと思ってさ。即効性がないみたいだったから、それも追加してお昼のうちにカプセルを作っておいた。きっとすぐに効果が出るよ。両想いだって分かったら嬉しくなっちゃってさ……もういっかい、いいよね?」
 ああ、なるほど。夕方過ぎから調子が良くなかったのは、そういうワケだったのね。朝方彼に飲まされた液薬が、じわじわと効いてきていたってことだったのか。恥ずかしさに抗おうとしても、どうりで体に力が入らないはずだ。ゼラチンの中でほどけるように溶け出していく十錠ほどのカプセルを眺めながら、私はぼんやりと考えていた。
 え、待って。今なんて? 何が催淫薬で、何がもう一回なんだって?
 答えを聞く前に、体の奥底からカーっと熱が込み上げてきた。
 溶け出した薬のいかがわしい成分が、全身の粘膜を通してゼラチンから私の体へと働きかける。
「ああ……大好き。愛してるよ、スピカ」
 甘い言葉が耳に届くだけで、ぞくぞくと震えるようだった。顔をあげれば、緑のフィルターを通してでも分かるほど紅潮している彼の顔。とろんとした目つきで短い腕を伸ばし、シャツの隙間から私の毛皮をさすってくる。触れられたところが、早く熱を開放してほしいと疼き訴える。
「ちょ、ダメ、博士の……バカぁ!」
 少しでも彼を理解できたとうぬぼれていた自分を、瞬く間に後悔した。あんな感動的な雰囲気になって、どうしてこうなるの⁉ 彼が心を開いてくれたところで、私には到底考えつかない突飛な思考回路をしていることに変わりなかったのだ。
「スピカ……はぁ、スピカってばぁ」
「せめて明日にしましょ? ね、博士……んっ⁉」
 胸のあたりに、じっとりと押し付けられる熱感があった。いつの間にはだけさせたんだろう、鎖骨まで捲り上げられたシャツとカーディガンの下に顔をこすり付けるようにして、彼は私の毛皮を舌でまさぐっている。ゼラチンの対流でじわじわと弱い刺激を送り続けられていたからか、はたまた大量に盛られた媚薬のせいか、すでに勃ち上がった私の胸の突起を舌先で探り当てると、おねだりするように突っついてきた。
「ひわわっ⁉ な、なにやってるんですか‼」
「おっぱい……ぁは、スピカのおっぱい、ずっとこうしてみたかったんだ」
「えぇ……」
「だめ……かな?」
 意外だった。普段そんな目で私を見てくれていたなんて。いつも意地悪ばっかりしていた彼が、素直になって甘えてくれた。それだけでなんだか愛おしくなって、つるつるした大きな頭を抱きかかえる。年上であるはずなのに、彼を優しく包み込みたいと思ってしまうこの気持ちはなんだ。
「博士のヘンタイっ。……でも、ダメって言ってもしたいんですよね?」
「いい、ってこと?」
 こくん、とためらいがちに頷くと、しゅんとしぼんでいた彼の表情がぱっと明るくなった。
 もうすっかり自己主張して丸く膨らんでいる乳首に、じっとりと湿った唇が押し付けられる。唾液をまんべんなくまぶし、何度か唇で転がすと、吸盤みたいに吸い付いてきた。
「おっぱい……はぁ、おっぱい飲みたいよぉ」
「ひゃぁっ⁉ そんなことしても、はぅっ、何も出てきませんからねっ!」
 ちゅうちゅう、ちゅぱちゅぱ。わざと音を立てているみたい。乳離れしていない人間の幼児のように乳首をこね回し、ミルクを求めていた。芯の硬くなった突起を舌で弾かれたり、口をすぼめて強く吸われるたび、ぴくっと身震いしてしまう。それに味を占めたのか、よがる私の表情と吐息を窺いながら、舌先で転がす感覚を楽しんでいるみたいだった。
「んぁ、美味しい、スピカのおっぱい美味しいよ。いつまでもこうしていたいよぉ」
「やっ、博士、出てないでしょ、いっ、そんなこと言わないでいいですからっ。はぁ、恥ずかしい……」
 口ではイヤイヤ言っているものの、すっかり火照ってしまった私の体はさらなる刺激を求めていて。左の乳首に吸い付かせたまま彼を抱き寄せると、短い手でたどたどしく胸を揉んでくる。ミルタンクのようにふっくらとした丘にはなっていないけれど、敏感な場所には変わりないみたいで。形をなぞるように這い回っていた彼の手が強く練るように動かされると、体のぞわぞわがいっそう大きくなった。
「可愛い、ちゅぅ、かわいいよスピカ、んちゅ、ボクにはない毛皮も、眼鏡から覗くくりくりの目も、ハート型のしっぽも……はむっ、ぜんぶぜんぶ魅力的だよっ……‼」
「はぅ、そんなに言わなくても……あっ! いいですってっ」
 応じ返すように、彼のぷにぷにした体に沿って右手を滑らせ、すでにスリットから剥き出しになったモノに触れた。もどかしそうに動く腰、痛そうなほど張りつめた彼のペニスは、裏筋を優しく握ってあげただけでゼリーとは別の粘っこい体液を染み出させてきた。
「わ⁉ な、なにやってるのぉ?」
「ホラ、足で隠さないでください。おっぱい吸いながらこんなに硬くして、博士ってばイヤラシイんですね」
「す、スピカのエッチ! ヘンタイ!」
「博士に言われたくはないですよ」
 胸を吸われたまま、熱くおののく陰茎に指を絡ませる。先端をくにくにと弄ってあげると、瞬間体が強張った。んぁっ、と女の子みたいに喘いで彼が私の胸から口を離せば、押し寄せる快感に必死に耐えている可愛い顔が露わになる。
 見せつけるように指を開くと、粘りを帯びた透明液が銀の橋をかけた。さっと目をそらし、ゼラチンを掻き回して粘液の糸を切ろうとする博士。ついにやけてしまう。きっといま、私はかなり意地の悪い顔をしているんだろう。
「これじゃまるで、お守りされている赤ちゃんみたいです」
「うぅ、だって、だってぇ……んあぁ、すごい、刺激、つよいよぉ……ンあぁッ‼」
 周囲のゼラチンも一緒に包み込むように握り、なるべく擦れる面積を増やしてあげる。しゅ、と勢いをつけて撫でおろせば、んあぁ、甘い声が張りあがった。感じている表情を見つめていると、恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして口をつぐんでしまう。だというのにさっきよりもペニスは硬くなっていて、しゅ、しゅ、しゅ、と擦る動きに合わせて腰を動かし押し殺した喘ぎ声を漏らすんだから、ずいぶん素直になったものだ。
「出したいときに出していいんですよ、ガマンしないでください。恥ずかしがらないで、思いっきり甘えちゃってください」
「う、ん……」
 体を前のめりに傾けて口許に胸の先端を近づけてあげると、待ちわびたとばかりに吸い付いてくる。あっ、と漏らした私の喘ぎをごまかそうと、玉のような先走りを漏らすペニスを上から包み込むように握り直した。反応の良かった裏筋を、優しいリズムで何度も何度も撫で下ろしさすり上げる。せき立てるような激しい動きではないけれど、乳房を覆う唇の痙攣が隠しきれない興奮を伝えてきて。おっぱいを吸いながらペニスを扱かれるのが好きな彼もどうかと思うけど、それを許してしまう私も私だ。乳首への一心不乱な愛撫だけで、私の股の茂みは湿り気を取り戻していた。
 いつの間にかお漏らししてしまったみたいに、突然掌に溢れ出る生暖かいとろみ。ゼリーとも先走りとも異なった感触の、毛皮に染み込む粘っこさ。こぽこぽと湧き出る泉のように、勢いこそないものの見せつけられた時よりもかなりの量が溢れてくる。手に収まりきらなかった白濁が、ゼリーの中を漂い白衣にくっついて尾を引いている。その量の多さが私の手が気持ちよかったからなのか、それとも心を許してくれたからなのかは分からないけど、私は嬉しくなっていまだ胸に顔をぐりぐりしてくる彼の頭を優しく撫でた。
「よしよし、いっぱい出せましたね。いい子いい子」
「ううぅ、すぴかぁ、好きだよ、こんなこと頼めるの、すぴかだけだよ……」
「分かっていますから。私も博士じゃなきゃこんなこと頼まれたってできません。博士なら……何されたって嫌じゃありませんから」
「うん、ありがとう、大好き。じゃあさ、その……もっと、したいな」
「ふふ、博士ってば本当に甘えんぼさんなんですから」
 どちらからともなく重ねられる口と口。重厚な彼の舌が小さな私のものを絡めとると、にゅるにゅると揉みこむように擦りあわされる。不器用でお世辞にも上手いとは言えないキスだけれど、舌先を震わせて一途に私を求める必死さが愛おしい。なんて油断していると、電気袋の裏をまさぐられて頭の中がショートしそうになった。
 私の弱点を見つけた、とばかりに崩れるあどけない意地悪顔。困ったように笑い返しても、博士が見逃してくれるはずもなく。再度舌を交わらせると、ほっぺたの裏を散々撫でまわされた。最後には彼の唾液がゼリーと一緒に流れ込んできて、まるで柔らかい木の実を口移しされているみたい。
 すっ、と嫌な予感がした。博士の変なスイッチが入ってなければいいんだけれど……。毒気が抜けたやんちゃなイタズラは、ある意味恐ろしい。子供心からの好奇心で、私の反応を際限なく求めてくるとしたら。
「ぷは、はー、スピカのその顔、すっごく可愛いよ。んぁ、もっと気持ちよくなってる表情も……見てみたいな」
「はぁっ、博士、ダメですからね? あまり悪ふざけすると、ぁ、ほんとに怒りますからねっ」
「分かってるよ、うぅ、スピカの怒った顔は……怖いんだもん」
「そんなこと言われたら、ぁふ、怒るに怒れないじゃない、もうっ……ひゃ、あっ……‼」
 上目遣いで私の反応を確かめながら、博士はキスする位置を徐々にずらしていく。うなじ、鎖骨、散々いじめられた乳首、おへそ。首下までたくし上げられたシャツに隠れる脇のくぼみにまで手を伸ばし、全身を撫で回す。柔らかい唇とぷにぷにの指先が敏感なところを這い回るたび、くすぐったさの間にゆったりと押し寄せる官能の波に揺らされる。そしてそれは、これから引き起こされる快感の高波を想像させてくれて。
「は、博士ぇ、ひどいです、あんまりイジワルしないでくださいよぉ……!」
「んー、何のことかナ? してほしいことはほら、自分の口で言わなくちゃ」
「あの、だから、はぁっ……! そろそろお、お……おまんこも、はぅ、いじってくだ……⁉ ――‼」
 股のあいだに湿った違和感。目を向ければ、私の秘所はイチョウ型の口にすっぽりと覆われて見えなくなっていた。彼の顔がこんなにもおまんこの近くにある。それだけで穴を掘って隠れたくなるのに、博士は茂みに鼻頭を押し付けすんすんにおいを嗅いでくる。恥ずかしさに悶絶する私を目だけでクスッと笑うと、博士はひと思いに――吸い上げた。
「ひゃあああぁぁっっ⁉」
「わ、すご……。ここ、吸うたびに甘いお汁が染み出してくるよ? おっぱいじゃないのに、面白いの」
「ひゃあっ、ば、バカっ! 変なこと言わな――ひぁああぁっ‼」
 クリトリスに舌が引っかけられ、最も敏感な部分を守っていた包皮がどかされる。露わになった陰核を乳首代わりに吸われると、途方もない激感が脳髄を貫いた。断続的な胸への愛撫、ペニスから吐き出された濃厚な精液、そしてつたないながらも一生懸命なキス。散々焦らされてきゅんきゅん疼くおまんこへのご褒美に、甘いよがり声を抑えられるはずもなく。びくんっ、と腰を跳ね上げ背中をのけ反らせて、膣口から蜜の飛沫を噴き出した。軽くイっちゃったみたい。
 もったいないとばかりに溢れ出た愛液をじゅるじゅる啜る博士。にゅるり、とおまんこに舌が滑り込んで、膣内に溜まったハニーミルクを掻き出していく。執拗にこすり合わされる粘膜と粘膜、果てて甘い余韻に浸っていた蜜壺に電撃が走った。視界がせわしなく点滅し、かろうじて繋ぎ止めていた理性も吹き飛んでいった。恥ずかしさなんてどこへやら、気づけば私は腰をはしたなく突き出し、切なくひくつく子宮口まで弄ってもらおうと彼の頭を押さえつけていた。
 欲しい。もっと、もっともっと欲しい。無意識のうちに体は、ゲルでもなく舌でもなく、確固とした博士の熱と質量を求めてしまっていて。
「だめです私、はあぁ、これ以上恥ずかしくされたら死んじゃいますっ‼ だから……お願い、ですからぁっ……‼」
「うん……‼ ボクも、もう我慢できないよぉっ……‼」
 しっぽを彼の腰に回し持ち上げると、すっかり回復して焼きごてのように熱くなった陰茎が内股に這わされる。敏感にされたおまんこに沸き立つ汗のような先走りをしたたらせた先端があてがわれると、はやる期待に過呼吸みたいに息が乱れた。浮力が邪魔をして突き入れるのを何度か失敗したけれど、私がしっぽで彼の腰を引き付けてあげると、びくびく脈打つペニスはおまんこを掻き分けあっさりといちばん奥を突き上げた。
「ひゃ……っぁああああぁッ‼」
「うゃ、だめ、これ、ぁ、抑え、きかな……っ!」
「――え」
 ぐじゅ。……じゅぶ、ずちゅ、ばちゅばちゅばちゅっ。
 意識が飛ぶかと思った。
 初めて迎え入れた肉棒のたぎりや質感を確かめる暇もなく、勢い込んだ博士はペニスをねじ込むや否や腰を振りだしてしまった。もういちどキスしながら初めて繋がった喜びを分かち合ったりしたかったのに。
 なんて文句も突き抜ける快楽に弾き飛ばされてしまう。ゲルを巻き込んだ激しい抽挿運動は、ねちっこい水音を立てていっそう興奮を昂らせた。体にゼラチンを詰められたのと同じ感覚で、気持ちよさが次から次へと送り込まれ張り裂けそうになる。頭が淫乱に染められてゆき、もう何も考えられない。きっと顔にも出ちゃってるんだろう。恥ずかしい。恥ずかし過ぎて死にそうなのに、心はどんどん満たされてくる。
「かお、んぁっ、その顔すっごいかわいいよスピカ……‼ 気持ちいっ、んあぁ、これ、すご、しゅごいぃぃぃ……‼」
「わた、私も、あっ、博士のキモチイイですっ……‼ ぁぁあっ、もっと、もっとお願い……しますぅっ‼」
「うんッ‼」
 経験がない分、博士は全力で私に愛を注ぎこんでくれる。激しく体ごとぶつかるその勢いは、私に体毛がなければぱんっ、と湿った音を響かせたと思うくらいに。おまんこが押し潰されるほど腰を何度も勢いよく叩きつけられる。ばちゅん、と最奥が突き破れそうになるくらい迷いないペニスの挿入と、ずりゅずりゅと膣壁を擦り下ろす抽出が交互に私を攻めいさむ。
「で、出ちゃうっ‼ うぁ、好き、スピカ、すき、すぴ……んふぁああっ、スピカっ、だ、だいすきだよぉっ‼」
「あ、にひゃっ! 博士、すき、私も大好きです、あっ、きて、ください、博士っ、はか、あ、っぁああああああ‼」
 熱にうなされたような甘い唸り声を絞り出し、体のいちばん奥深いところに猛々しいペニスをぎゅっと押し当てられる。膨れ上がった先端を頬ずりするように子宮口へぐりぐりとねじ付けられると、あ、あ、あ、と全身を小刻みに痺れさせて、すぐ後に来る途方もない恍惚に期待して蜜壺を激しく搾り上げてしまう。博士は私にぴったりとしがみついて動かなくなり、次の瞬間、子宮口に食い込んだペニスがしなるように爆発した。
 びゅーっ、びゅうっ、びゅくびゅくびゅくっ。
「――――ッッ‼」
 どくん、と大きく脈動するたび、博士の想いがお腹の中を満たしてゆく。子宮の奥底に叩きつけられる特濃の精液、その熱量に思わずお腹に手を添える。全身に広がる甘い幸福感、少し遅れて体を包む倦怠感。ちゅぽ、とやわくなったペニスが膣から引き抜かれると、先端から泡付きの白糸が垂れ、名残惜しそうにおまんことの間に橋を架けた。それはまるで私と博士が心までしっかりと結び付いているみたいで。とろとろに上気した顔で見つめあっていると、自然と顔がほころんでしまう。ああ、愛おしい。満足気な彼の頬をそっと撫でる。抱きかかえて、頭も一緒に撫でてあげる。
「はぁっ、はー、よかった。いろいろありましたけど私、こうして博士と一緒になれて、今とっても幸せですっ」
「えへへぇ~、ボクもとーっても幸せだよぉ。……もう、限界、寝させてぇ?」
「あ、はい博士……って、え、私を降ろしてから……ってちょっと、眠るのも早過ぎないですか⁉」
 ふわふわと移動したかと思うと突然、浮力を失くしたようにゲルのゆりかごがはじけ培養装置の中へ流れ込んでいく。装置の蓋が閉まるか閉まらないかのうちに、博士の穏やかな寝息が聞こえてきた。
 急に静まり返った研究室で博士のベッドに閉じ込められて、私はようやく大きく息をついた。
 思い返してみれば、今日はとんでもない一日だった。恥ずかしがり屋を直す薬だと騙され媚薬を飲み、火照った体を博士のゲルで一方的に辱められた。恥ずかしすぎて振り切れた勢いのまま告白して、告白し返され、ずっと押し殺してきたコンプレックスを泣きながら吐露され、狂いそうになるほど愛し合った。もともと両想いだったのになんでこんなに遠回りしたのか、全部が終わった後だと不思議で仕方ない。まぁそれは明確で、素直になれない者どうしだったから、なのだけれど。ともかくもうそんなことはどうでもいい。全身全霊でありったけの愛を注いでもらって、体がふわふわ浮いてしまうくらい幸せなんだから。
 安心したような博士の寝顔は遊び疲れたやんちゃっ子みたいに満ち足りていて。そういえば、胸を吸いながらいじられている時の恥ずかしそうにしていた顔も、こんな感じだったっけ。あのいたいけさにきゅんとして、ついつい意地の悪いことを言っていたような気がする。
 ……あ、なるほどね。そういうことだったんだ。
 大好きなひとが困ってぎこちなく笑ったり、恥ずかしそうに頬を染めたりしている表情を見てみたいっていう気持ちも、わかる。ついつい意地悪してしまうことも。
 それに、すごく恥ずかしい顔でも、博士になら見られてもいい。むしろ、頬を真っ赤にして見つめあうのが、心から揺さぶられるくらいあんなに嬉しいことだったなんて。
「……もうっ、博士のバカ」
 思わず呟いていた。静かに膨らむ頬を指でつっつくと、んん~、と大きな口をむにゃむにゃさせる。夢の中でも私と一緒だったらいいな。
 規則的に繰り返される博士の鼓動を胸に確かめてから、体力の尽きた私もゆるゆると意識を手放した。


 媚薬を手に嬉々として研究所を去ってゆくゴチルゼルを見送って、私と博士は並んでひとつ大きく伸びをした。聞くと彼女は博士の古くからの理解者で、あまり仲の良くなかった私には隠して依頼をしていたみたいだった。私の知らない秘密をちょっと淋しく感じたけれど、すべてを分かったような微笑みで「クルイを助けてくれたんでしょ? ……ありがとうね」なんて耳打ちされれば、顔を火照らせて口をつぐむことしかできなかった。倉庫の採光窓から差し込んでくる薄茜の夕陽が、透明に世界をひたしていた。
 お礼にと置いていった包みを開くと、中から出てきたのは真っ赤に熟れたリンゴ。そのひとつを手に取って夕陽にかざすと、博士はうっとりとため息をついた。
「リンゴはね、スピカのほっぺみたいでずっと好きだったんだ」
「よ、よくそんな恥ずかしいこと言えますねっ」
「んン? いいじゃない、ボクとキミしか聞いてないよ」
 言いながら、いとおしそうに赤い果実の形をなぞる。私自身が撫でられているようで、ちょっとこそばゆい。短い両手で持って大切そうにひと口かじると、はにかみつつ手渡してくれる。リンゴよりも赤く染まった頬を隠すように、私は街に沈んでいく夕陽の方を向いた。空いたくぼみの側にそっと歯を立てると、とろり、と甘酸っぱい蜜が口いっぱいに広がってくる。
「スピカには本当に感謝してるよ、だからさ……今晩も甘えていいかな?」
 抱きしめるようにして、背中からゼリーの腕が回される。ぷにぷに弾くその太い腕に抱きつくと、思いのほか温かい。彼の鼓動が直接伝わってきているみたいだった。
「断るはずもありませんけど、もうあんな薬は使わないでくださいよ? 今思い出しただけで恥ずかしくて潰れちゃいそうです」
「も、もちろんだよ!」
「もういちどアレ、やってあげますから。……恥ずかしいの、我慢して」
「ほ、ホント⁉ やったぁ!」
 ぬぷり。体重を預けていた私の背中がゼラチン質に沈み込む。白衣も眼鏡もみつ編みも、全身が宙に浮かび上がり、彼とひとつになる。ゲルを泳ぎ薄黄緑の体に抱きついてその形をしっかりと確かめると、私は両頬のリンゴをぎゅっと押し当てた。





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あとがき

wiki本2に寄稿した作品、公開の許可が出ていたらしいので。偉大な先人たちとタイトルを並べたんだなぁって、今になってつくづく感無量です。シーレさんの描かれた挿絵に小説をつけるという形で書きました。ステキすぎる挿絵、ゲルで拘束され脱がされている感じとか、ぐいぐい詰め込まれている感じとか、というかゲルの透明感と浮遊感すごい。ピカチュウ涙が浮かび上がる表現とか、それから一方的なんだけど傷つけないようにしてるランクルス博士の表情やばいね?
 そんな挿絵のすばらしさにかまけて、小説はかなり急ぎ足でした。ランクルス博士を好きになってもらわないと濡れ場がただただ面白くないのですが、たぶん挿絵のお陰で大丈夫だろうと。不定形のゲルと実体のある体を併せ持つランクルスなら、スライム攻めと抱き合ってのラブラブも両立できるすごい! 胎児モチーフな彼なので赤ちゃんプレイもとい授乳手コキがやりたかったのです。おっぱい愛でたの初めてでした。
 シーレさんとお会いしたときにお話ししたのですが、ランクルス♂×ドクターピカチュウで偶然ふたりともポケパーク2を意識してかいていたってのはなかなか面白いエピソードでした。あの引きこもり博士すき。
 最後に。本を手にとっていただいた方、ありがとうございました。
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