*&color(red){有明の真実};&color(purple){ 〜三日月の影〜}; [#p6f39885] http://nanos.jp/braccky/album/1/5/?guid=ON=%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0in%E7%A0%B4%E3%82%8C%E3%81% ※シクル編なので(?)グロは結構入ると思います… 苦手な方はお戻り下さい。また、これも後に修正が幾つか入ると思います。どうか御了承下さい。 [[スペード]] [[紅き雫、伝う黒鎌]] ---- 僕は何時も1人だった。 友達も家も、そして──親も。 僕は産まれてすぐ人気(獣気?)の無い森に捨てられた。だから生き物は1人で生きていくものなんだと、最初はそう理解してた。 でも…真実は実に無情だった── ある時僕はお腹が空いて、木の実を採ろうとした。でも高くて届かなかった。仕方無いから他をあたろうと思って、木から降りようとしたら、木の下に珍しく誰かが居た。森に捨てられてた本で見た事がある。ギザギザのしま馬、ゼブライカとシママっていうポケモンだった。 ゼブライカは、僕の居る木とは反対側の木の実に向かって弱い電撃を飛ばして、木の実を落とした。凄いなぁ、って見てたら、その実をシママが食べ出した。でも、手柄を横取りされているのに、何でかゼブライカは怒らない。おかしいなぁと思って木から降りて、声を掛けてみた。どうして自分の手柄を食べさせてるの?って。 ゼブライカ達は何故か僕を見た途端血相を代えて逃げていった。何でだろう、と頭が?で一杯になった時、後ろの茂みから巨大な犬の身体に虎柄がある、ふさふさのウインディが出てきた。 そのウインディはお前のせいで獲物を取り逃がしたと言ってたけど、僕は余計に混乱した。木の実が採りたいなら、普通に採ればいいのに、なんで隠れてたのかな?もう頭の中が訳が解らなくなりそうで、理由を問い詰める様に聞いたら… ウインディは僕に沢山教えてくれた。僕ぐらいの子供には普通親がいて、さっきのシママみたいに面倒をみてくれるものなんだと。親っていうのは自分を産んでくれた一番大事な家族なんだと。家族以外にも、普通は同じ種類の獣と友達になったり、群れをなしたりするものなんだと。僕は何一つ知らなかったし、持ってもいなかった。そしたら、ウインディはこう言った。 ──つまりお前は、捨てられたんだ、と。 捨てられた、その意味の深さを知った時、僕はどんな顔をしていただろう。 悲しくて、切なくて、辛かった。目からは水が溢れ出してきた。 他にもウインディは自分や僕の様なポケモンは身体が大きくなると木の実だけでは足りなくなり、草食系なポケモンの肉を食べなくてはならない、草食のポケモンもそれが普通だと理解しているから逃げるんだ、と話してたけど、僕の耳にはもう何も入らなかった。 ウインディと別れて一月、僕は必死に食糧を探してた。 あの後もウインディは精神崩壊した僕に、親切に色々教えてくれた。あの時は耳に入ってなかった筈なのに、僕は沢山の物事を覚えていた。お蔭で、立ち直った後の生活は困らない筈だった。 でも、立ち直るまで何も口にしていなかった僕は、強い空腹に必死で食糧を探した。でも、木の実を見付けても、技もまだろくに覚えて無かったから採れないし、運よく採れても完全に空腹を満たすのには無理があった。 人恋しさに他の肉食ポケモンに養子にしてほしいと頼んだりしたけど、災いポケモンの僕を育ててくれるポケモンは誰一人いなかった… 空腹と長時間の移動に疲れた僕は一本の木の根元に座り込んだ。 大きくお腹が鳴る。やっぱり木の実だけじゃ全然効果がない。でも、僕はどうしても他のポケモンを食べる事に踏ん切りがつかなかった。命を奪う行為を拒絶した。ましてや狩りの仕方すら解らないのに、捕まえられる筈が無い。そう言い聞かせている為、行動出来なかった。 大きく溜め息を吐いた時だった。何人かの話し声が聞こえて、少しずつ近付いて来る。僕は慌てて茂みに隠れた。肉食ならともかく、草食のポケモン達に恐怖心を与えたくなかったからだ。 現れたのは複数の子ポケモン達、エレキッド、コノハナ、スコルピ、プルリルだ。子ポケモンと言っても僕と同い年ぐらいだけど。どうやら遊んでいるらしく、その場から中々動かない。逃げ出そうにも、そこは森のひらけた場所だったから、迂闊に動いたら逆に見付かっちゃう。どうしよう、と悩んでたら、最悪な事にまたお腹が大きく鳴っちゃった!当然、至近距離のエレキッド達に聞こえない筈もなく、僕は見付かった。皆驚いた顔をしてる。僕は少しでも恐怖を和らげようと後ずさった。そのせいで、あんな事になるなんて… 後ずさった僕を見て、エレキッド達は不思議そうな表情に変わった。何か皆で話始めたと思ったら、なんと僕に近付いて来た!常識破りな行動に反射的に僕もまた後ずさった。すると、エレキッド達は不敵に笑った。 「ほらなコイツ、オレ達を襲えねぇんだよ」 「親も近くにいないみたいだな、よし…」 突然!エレキッド達は僕を取り囲んだ。僕はどうする事も出来ずに只立ち尽くす。 「おい、お前!オレ達をストーカーとはいい度胸じゃねーか!」 「え…?ストーカー?ち、違うよ、僕は…」 「肉食だからってオレ達をなめるなよ!オレ達のチームワーク見せてやる!」 訳が解らない、そう言おうとした瞬間、脇腹に衝撃が走った。突然の痛みに僕は目を瞑る。そのまま僕は右側に投げ出される。そのまま地面に落ちるかと思ったら、全身に熱を感じた。それは熱さを通り越して、凄まじい痛みに変わって全身を刺激する。 &size(20){「あ゛あ゛ぁぁぁッ!!!」}; 溜まらずに叫んだけど痛みは消えない。液状の熱は僕の身体を包み込み、また僕を押し飛ばした。薄く目を開くと、スコルピがこっちに尻尾を向けていた。ぶつかる寸前で尻尾を僕に叩き付けてきた。勢いよく叩き飛ばされた僕は地面をバウンドして、エレキッドの前に倒れた。 全身に痛みを感じる。コノハナの目覚めるパワー、プルリルの熱湯、スコルピのはたき落とす。いきなりの連続攻撃に、僕の頭は混乱していた。見上げると、エレキッドが僕を嘲笑うように見下ろしていた。 「何で…?何でこんな事するの…?僕は何もしてないよ…?」 「ふん、何言ってんだよ。お前にとってオレ達は獲物だろ?これは正当防衛だ。数で天敵に立ち向かってるだけだ。」 「ち、違うよ!僕は──」 そこまで言った時、エレキッドは僕のお腹を蹴り上げた。息が詰まって、声が出せなくなる。威力の弱いけたぐりでも、悪タイプの僕にとっては物凄い苦痛になる。ほんの少し浮いた身体が重力に従ってまた落ちた途端、喉の奥から凄い勢いで何かが込み上げてきて、僕は激しく咳き込んだ。 「うぇっ、ゲホッ、ゲホッ…!」 口の中に嫌な味が広がる。何も食べてなかったのが幸いだった。酸っぱい臭いが鼻を突いてきて、また吐き気が込み上げる。何とか抑え込み、僕はまたエレキッドを見上げた。エレキッドは他のポケモン達に話し掛けていた。 「これは襲ってきた奴を追っ払う練習にもなるぜ!皆、一気にやるぞ!」 「「「おおー!!」」」 その後は殆ど袋叩きにされた。全身に絶えず痛みが走る。 「止めて、やめてよぉ!」 必死に頼んでみるけど、全く聞き入れてくれない。 何で?どうして?疑問だけが膨らむ。 僕は何もするつもりは無かった。只僕を見て怖がらせたく無かっただけ。なのに、正当防衛?おかしいよ…これは正当防衛なんかじゃない!れっきとしたイジメだ! 何で、何で僕だけがこんなめに遭うんだ。親にも見捨てられて、虐められて、僕の存在を理解してくれる人は誰もいない。なのにコイツらには親がいて、友達がいて、仲間がいて! 不公平だ。こんなのおかしい。何で僕が。僕が何をした?何で、何で、&size(20){何でッ!!!}; 酷い異臭に、僕は我にかえった。嫌な感触に身体を見ると、白い体毛に真っ赤な液体が沢山着いていた。目を見開いた僕の視界に、他の何かが飛び込んできた。 首から上が無くなった、コノハナらしき胴体。グシャグシャに潰れ、原型を留めていない紫色の何か。割れた水風船の様な物体。 どれも全て、ハッキリした存在が解らない。でも、残りの物体は、嫌と言うほどその存在が理解出来てしまうものだった。 お腹を裂かれて内臓を晒し、両手両足、そして頭が切り分けられ、顔面を潰されている。それでも、あの忌々しい角だけはしっかり残っている。 本来の姿は見る影も無いが、それは明らかにエレキッドの無残な死体だった。 突然見違えた姿に変わったポケモン達。そして、身体中が真っ赤に染まった自分。 これが何を意味するのか、頭の悪い僕でも十分理解出来てしまった。 ──あの時、すぐあの場所から離れていれば。 あんな所で休みさえしなければ、こんな事にはならなかったのに…! でも、身体は正直だった。尋常じゃない血の臭いに、僕のお腹が悲鳴を挙げた。 そういえば、食糧を探してたんだっけ。そんな場違いな事を思いだし、ふと足元の残骸に目を移す。 ──コイツらが悪いんだ。天敵の僕に近寄って来た方が悪いんだ── 気付くと僕は残骸に近付いていた。でも、もう僕は気にならなかった。 コノハナの胴体に食らい付く。口の中に、初めて血の味が広がる。生暖かいのは嫌だったけど、味はそんなに嫌では無かった。顎に力を入れると、コノハナの身体は簡単に折れ曲がって、また血が溢れ出してきた。 僕は夢中になって食べていた。途中、僕は自然に笑っていた事に気付く。 もう何も考えられない。でも、とっても心地いい感覚が、僕を支配していた。 ──この時はもう既に、僕は狂っていたんだと、今の僕は感じた。 ◆ 冷たい風に頬を撫でられ、僕は目を覚ます。まだ寝惚け眼の視界に映るのは、紅葉しすっかり姿を変えた森と、その風に煽られ高い空を舞う枯れ葉。 あれから幾らか年の経った秋。僕は少しは成長して、住居を手に入れたけど、未だに仲間は存在しない。大樹の幹にぽっかりと口を開けた空洞で、僕はぼんやり天を見上げていた。お腹の鳴る音で、現実に引き戻されてしまったが。 正直食糧はそこらじゅうに存在する。でも、確かにあの日以来他の獣の肉を食べるようになったとはいえ、やはり命を奪う行為は苦手で実際食べている量は少ない。その為すぐにお腹が空いてしまう。2、3日食事を抜いていた僕の身体も流石に限界らしい。僕は音を挙げる身体を起こし、秋の森の中へ足を踏み出した。 結構な時間が過ぎたが、こんな時に限って獣が全く見付からない。ふぅ、と溜め息を吐くと同時に、お腹が一層大きな音をたてた。仕方無いだろ、と文句を言う身体に言い聞かせていると、何やら激しく葉が揺れる音が耳に付いた。風が揺らす音とは明らかに違う。気になった僕は音のする茂みに近寄った。だんだんと音の正体が露になる。でも、それが何なのかを理解した瞬間、僕は眼を見開き釘付けになってしまった。 音のした茂みの向こうには、沢山のデルビル達とそれに囲まれる僕の同族──アブソルが見えた。 僕は始め、飢えた悪魔達が同じ肉食獣を襲っていると思った。でも、明らかに何かがおかしい… 雌だと思われるアブソルはデルビル達に無理矢理仰向けの体勢にさせられていて、群れのリーダーと思われるヘルガーがアブソルの下半身のすぐ側で腰を屈め妙な格好になっている。幸いヘルガーの真後ろだった為見なくて済んだのだが、ヘルガーが何をしているか九割方理解してしまった。 ヘルガーが腰を動かす度、アブソルの目から涙が伝い落ちる。必死で抜け出そうと四肢を動かすも、地面に押し付けられている為あまり効果は無い。悲鳴を上げようにも口も塞がれていて完全に身動きが取れないらしい。 僕は咄嗟にアブソルを押さえ付けている一人のデルビルに当て身を喰らわせた。当て身を受けたデルビルは勢いよく吹き飛び木に激突した。一斉に猟犬達の視線が僕に向けられる。反射的に身体が動いてしまった。今更後戻りは出来ない。 僕は飛び掛かってくるデルビル達に向けて鎌を勢いよく振るう。鎌から離れた斬撃が猟犬達を切り裂いた。最近覚えたばかりだった鎌鼬。自信は無かったが上手く急所に当てられたらしい、一撃で瀕死に出来たようだ。身体に降り注ぐ鮮血に少なからず不快感を覚える。身体が汚れるのはあまり好きじゃない。そんな事を考えていると、突然周囲を熱気が包んだ。ヘルガーの放った火炎放射を避け、一気に決めようと僕は走り出す。ヘルガーは連続で火炎放射を放ち攻撃してくる。炎の間を縫ってある程度接近し、地を強く蹴り跳躍する。そのままタイミングを合わせながら宙返りし、僕を見上げて唸るヘルガーに向けて硬化した尻尾を振り下ろす!するとヘルガーも素早く身体を回して同じ様に硬化した尻尾で攻撃を防いだ。アイアンテール同士がぶつかり合い、火花が飛び散る。やがてヘルガーが力を込めて僕を弾く。宙に投げ出されながらも何とか体勢を立て直し着地する。 するとヘルガーは挑発的な笑みを浮かべ口を開いた。 「てめぇ中々やるじゃねぇか。そんなに力があるのにこんな事に使うなんて勿体ねぇなぁ」 「僕の勝手でしょ?寄って集って強姦する様な人を懲らしめちゃいけないの?」 僕も笑って言い返す。ヘルガーは鼻で笑うとまた僕に突進してきた。全身に炎を纏い、徐々に加速しながら突っ込んでくる。僕は口にエネルギーを集めヘルガーに向けて打ち出す。ヘルガーはニトロチャージを発動させたまま同じ様にシャドーボールを放ち打ち消すと僕に急接近してきた。僕はあえて避けずに四肢を突っ張らせて防御する体勢を取った。 僕の鎌状の角とヘルガーの角が激突する。全身が炎に包まれヒリヒリと痛む。ぶつかった衝撃で後方に押されたが、何とか持ちこたえて反撃に出ようとした…その時。ヘルガーが素早く僕から離れ強力な炎を吐き出した。ニトロチャージでスピードの増した攻撃に手負いの僕が避けられる筈もなく、先程とは比べ物にならない強力な炎が僕を包み込んだ。 「ッッ──!!」 身体中がとんでもなく熱い。周りは全て炎で包まれ何も見えない。焼かれた草木から立ち上る煙が肺に入り込み呼吸も儘ならない。 尋常じゃない熱さと息苦しさ。僕は悲鳴すら挙げられない。全身の焼け腫れる痛みと呼吸困難で意識が朦朧としてきた…もうだめだ、そう思った時、突然炎が途切れた。見ると、倒れていた雌アブソルがヘルガーに捨て身タックルを決めていた。もろに受けたヘルガーはふらつき僅かに怯んで、攻撃が途切れたのだった。こんなチャンスは無い。僕は痛む身体に鞭打って一気にヘルガーへ突っ込む!そしてそのまま突き上げるように下から上へ角を振るい、ヘルガーを一閃した。 何故か解らないけど僕はメガホーンを覚えていた。後から解ったけど遺伝が関係するらしい。 効果抜群に近いダメージを負ったヘルガーはその場に倒れた。取り敢えずほっとする…と。 「イタタタ…」 煉獄の効果で酷い火傷を負った身体が緊張が途切れると同時に悲鳴を挙げた。流石にダメージが大きかった。必死に痛みを抑え込もうとしていると、視界に雌アブソルが入ってきた。華奢な体つきをしていて、鈍感な僕でも可憐に見える。首に赤いリボンを巻いていて一層可愛らしい。腰には小さな鞄を提げている。 アブソルは心配そうな目付きで僕を見つめた。 ──それが、サイアとの出会いだった。 to be continued… ---- シクルの性格と話し方が滅茶苦茶に…別人みたいですね(汗) [[有明の真実 〜三日月の影〜 弐]] ---- 宜しければアドバイスやコメントをお願いします。 #pcomment(コメント/有明の真実 影,,above);