#include(第三回仮面小説大会情報窓・非エロ部門,notitle) ---- 書いた人[[ウロ]] その8 「ねえねえ、バニラ、もう一回だけヒントを頂戴」 孤児院のキバゴが、縋るような瞳でバニラの肩にのしかかる、それを鬱陶しそうに、しかしまんざらでもなさそうに、バニラは意地悪い笑みを浮かべた。 「ダメ、ちゃんと考えて、もう一回よく考えてから、それでもわからなかったら僕に聞きに来なよ。わからないからすぐに楽をしたがるのは、悪い癖なんだ」 キバゴが不遜な扱いだ、と嘆く前に、ターキーの声が聞こえた。バニラはそれに応えるように大きく声をあげて、自分の机の上に置いてある勉強道具を片付ける。 「え?もういっちゃうの?」 「院長先生に屋根の修理をやってほしいって言われてるんだ、僕が進んでやるって言ったから、ソルトとピールと一緒に、屋根の修理。また後で戻ってくるから、その時までにない頭を捻って考えなよ」 バニラの揶揄を含んだ言葉に、キバゴは顔を紅潮させて憤慨した。 「なんだよ、自分がわかってるからって、そんな風に他人が必死になってわかろうとするのをそうやって嘲笑うみたいにさ、わかりやすいヒントをくれてもいいじゃないか、バニラの&ruby(りんしょく){吝嗇};、馬鹿」 零から想像して、導きだした答えを照らし合わせるのが勉強だ。少なくとも自分は吝嗇家でもなければ、人を虐めて楽しんでいるわけでもないと、バニラは自嘲気味にそう思った。長い木製の廊下を一歩一歩踏みしめながら、思う。一か月前は、自分がこんなことをしているはずなんてなかったのだと、昔の自分を思い起こして、自虐の笑みがこぼれた。 (僕は、取り戻すのにはまだまだ時間がかかりそうだな) まだまだ時間がかかるというのは、、果たしてその思いに対してのものか、まだ先にある自分の姿を思い描いたものなのか、バニラは思いながら、孤児院の外に出る。屋根の上を見上げると、ソルトとピールが笑いながら手を振っていた。一ヶ月間引っ張りだこにされていた分、妙にはなれていったような感覚があった。 「バニラ、早く上がっておいでよ」 バニラは頷き、ぐ、と足に力をこめた。エモンガという種族は、少し飛びたいと思い足に力を込めることで、案外高く跳べるものだと、バニラが知ったのは、ずいぶん後のことだった。それまで木々を跨いで飛んでいた自分が、何とも原始的な動きをしているのだと思った。 「やっほー」 「久しぶり、いや、姿は見てるし、部屋も同じだけど、こうして一緒になるのはずいぶん久しぶりな気がしたから、うん、久しぶりだ」 ピールはのんびりと手を振り、ソルトが感慨深く頷く。三者三様の思いを乗せて、屋根の雨漏りの修理に取り掛かる。 「また雨漏りするなんて、ずさんな修理してたんだなぁ」 「さあね、僕たち修理することなんてしなかったから、たぶん一か月前、ううん、ずっと前の僕たちなら、修理することに興味関心なんて湧かなかったし、他人に無頓着だったし」 「おいおい」ソルトは苦笑気味に釘を打ちつけた。「勝手に複数形にしないでくれよ、僕たちはちゃんとみんなと接してたぞ」いった後に、そう言えばと思い返す。自分は朝の早い時間にピールと二人で体を動かして、言いたい放題言っていた覚えがあり、あまり否定的な意見を言える身ではないと思い返すが、黙っておいた。 「そりゃひどいな、自分たちは違うって言って逃げようとするのは、精神的に卑怯な人の考えじゃないのか?」 バニラは苦笑して、まがった釘を叩いて直す。新しい釘を使うよりも、やすりで磨いて、まがった釘を使った用が経済的にも出費かかさむことがないとターキーは言った。本当にそうなのか疑わしいことがあったが、この孤児院が経済的に厳しいのは周知の事実であったし、それを否定することも無かったので、恐らく間違ってはいないのだと思った。 「バニラちょっと遅れてきたみたいだけど、何かやってたの?」 「んー」バニラは直した釘をピールに渡しながら、頭をポリポリと掻いた。「勉強教えてた。わからないって言う子、結構多いからさ、僕が勉強できるから、教えてあげた方がいいのかなって」 「ふぅん……バニラ、変わったね」 「うん、僕もそう思う」 昔の自分ならば、他人に対して機嫌を伺ったり、何かを教えるなどということはしなかっただろう。それは孤児院に来た時、そしてずっと貫いてきたものがあったからかもしれない。それは「抜け出す」という思いが最も大きかったと、自覚していた。 「バニラは、今でもここから「抜け出したい」って思ってるんだっけ?」 おっとりと笑って、ピールはソルトが打ち付けたところの反対側の個所に釘を打ち込む。「抜け出したい」という言葉を聞いて、バニラはばつの悪そうな顔をした。それは何か、自分に対して引け目を感じる時や、自分の言葉に恥じ入るような、そんな顔をしていた。 「変わるって約束したんだ。ペパーと約束した。だから僕は変わりたかった。僕、孤児院にいた時は考えもしなかったんだ、他人の想いとか、相手がどう考えてるとか、興味無かったし、多分、これから先も興味なんてないんだろうなって思った。閉塞した場所から抜け出そうって思ってて、ソルトとピールに夢があることだって言われて、ちょっと優越感に浸ってたのかも」 ソルトは小さく咳をした。笑い声を隠すような、妙な音が夕暮れの空に響く。夏が終わりを告げるような、寂しい秋の風がさっと吹き抜けて、バニラ達をゆるりと撫上げる。屋根の上から景色を一望すれば、一歩、ほんの一歩踏み出すだけで、都会へ行けるものだと、思っていた。都会に行き、胡散臭い道具やらを見て笑い。大道芸を堪能し、夜にはラムネをあおり、華やいだ町から離れ、自分の長屋へ帰る。この孤児院からはなれたらということを毎回のように考えては、儚い希望だと諦めていた。それゆえに、「抜け出したい」という思いは強くなる一方だった。あの時の、窓から見える都会へ続く道へ手を伸ばす行為、後ろ髪を引かれ、何かもどかしいものを感じていた時の自分は、すでにきれいさっぱりとなくなっていた。 「僕は、ここで自分がやれることをやって。胸を張って「出ていける」用になりたい。僕――ううん、僕だけじゃない、ソルトも、ピールも、ほかの子供たちだって、そうなれるし、きっとなるんだろうなって思う」 「へぇ、バニラらしくないね、いい意味で、だけれど」 「うん、僕もそう思う」苦笑しながら直した釘をソルトに渡して、天を仰ぐ。「なんでだろうね、前はこんなこと思わなかった。自分がこんなところにいるのが非業の運命だって、因果律を呪ったりもした。でも孤児院にいるポケモン達は自分と同じだって思って、自分だけがこういう目にあってるんじゃないのなら、自分は自分の力でこの束縛から抜け出して見せると思って、自分のためにすべてを注いだ。ソルトとピールが友達になってくれたとき、ほんとは嬉しかったけど、でもそれでも自分を貫いた。ここから「抜け出せる」なら、友達の付き合いも、好きな人も、安い損害だって思ってた。ここから出ることさえできれば、またいくらでも補修できるからね、そんなもの」 ぎ、と釘が曲がる音がした。ソルトは何か忌み言葉を聞いたように瞳を細め、そして曲げてしまった釘を見て、しまったと顔に手を当て、溜息をついた。バニラはそんなソルトを見て、自分の発言が問題だ、ということに気がつかないわけがなかった。バニラは静かに息を吸い、勿論、と付け足しながら話を続けた。 「それはずっと心の中で思ってたことで、いまさら否定することはない。こういう言葉を聞くと、二人とも嫌な思いをするけど、今だからこういうことを言えるんだと思う。僕はそう思ってたんだってこと、そう、ペコーに会うまでは」 「自分の考えを改めることができたのは、あの子に会えたから?」ピールは興味深そうに、俯き影を落としたバニラの顔を伺うように覗き込む、見れば、ほとんど修理は終わっていて、ソルトも先ほどの言葉の続きを待つように、直した屋根の上に座り込み、バニラを見据えていた。「そうだね、僕はペパーにあって、変わろうって思った。自分の屁理屈やくだらない思考よりも大切なものを、思い出させてくれたから」 「大切なもの?」 「うん、大切なもの」 何の関係もなく、ただ朝靄のように漠然としていた自分が忘れていた大切なもの、踏ん切りをつけることができずに、後ろ髪を引かれるように進退極る状態の自分、そんな自分が忘れていたものを、ペパーはあの不思議な出来事の中で思い出させてくれた。 思えば不思議だった。最初に見たあのときは、二人は眠っていたからわからなかったのかもしれないが、三人一緒にいるときに、最初に見えたのは自分だけだった。そして屋敷を散策する時も、ペパーが見たものを最初に見たのは自分であったし、それに尾を引くように二人にも視界で認識したような節があった。自分がなぜ最初に見えたのか、その謎はいまだにわからないが、何となくなぜか、という思いは頭に浮かんでいた。 「大切なものっていうのは――?」 ソルトがその言葉を待つように、そわそわと体を動かした。何かを待つ時は、興味があるものを見るように体を余所余所しく動かす、それは言葉を待つ時も同じであると思い、バニラは苦笑した。 「愛だよ」 ピールとソルトは、呆けたようにバニラを見つめて、思い出したように吹きだした。バニラはその反応をする二人を訝しげな瞳でねめつけて、ぷく、と頬を膨らませた。 「なんだよ、まじめに話してるのに」 「まじめに話すことじゃないよそれ」 バニラはむっつりとした顔をして、打ち直した釘を渡したが、もう既に修理が終わっているということを思い出して、ますます羞恥心が増幅した。行き場のない視線を右往左往させて、結局視線は自分の手の中に納まる。しかし、思い直したように、ゆっくりと視線を森へ続く杣道に移し、そこからなぞっていく。自分達が進んでいった道を見据えると、若干の下り坂に、カーブを描いた道なり、そして道の先々に立ちふさがる造林が視野を遮っているような獣道。その先へ行くと、妙にぽっかりと開けた場所がある。視力のいいバニラは、目を細めると、そこにはソルベが見える。薄水色の彼女の体は、何かを調査するようにあたりをきょろきょろと見渡している。こちらが見ていることに気がついたのか、にこりと笑い、右前肢を大きく上げて、左右に振る。視力のいい者同士、お互いに小さく、そして大きく手を振りながら、言葉ではない挨拶を交わす。 「どうしたんだい?」 「何か見えるの?」 「ソルベさんが見えた。何かしてるみたいだったよ、あの屋敷があった周辺で」 そう、と言って、ピールは目を細めてみるが、彼女は視力があまり良くないのか、何かを見ようと頑張っている姿が見えたが、結局数回瞬いただけで、何かをとらえることはできなかったようで、首をしきりに捻っていた。 「見えないなぁ、視力いいね、バニラ」 「うん、視力はいいよ。最近になってからますます上昇したみたい、結構遠くまでなら見渡せる」 へえ、とソルトも感嘆の声を上げた、見ることができない者同士、お互いに驚愕しあいながら、ソルベが何をしていたのかを問いかける。 「ソルベさん何してたの?」 「わからないけど、なんか調査してたみたい。あの辺り――僕たちがいなくなって、現れたところだし。話を聞いたときに、僕立ち二日間もいなくなってたらしいじゃない。調べるのは当然じゃないかな」 ペパーと一緒に消えてしまったマヨヒガ。そこに残ったものは、不自然に危害を加えられた一本の木。シスターや院長先生に秘密にしながら、もう一度三人で屋敷があった場所に行ってみると、その不自然な木を見つけた。それは鞭で叩かれ、鋭い切れ味のもので横に薙がれた後、電撃を浴びたような状態で残っていた。それを見たときに、あの屋敷の出来事は、夢でも幻でも何でもないことを認識した。 「僕たちは、確かにあそこにいたんだなぁ」 「私たち、ちゃんと無事にここに戻ってくることができたんだね」 ソルトとピールは、まるで夢のような出来事のように思い起こしながら、修理した屋根から少し離れた場所へと座り直す。バニラもそれに続いて、座り直したところで、もう一度息を吸い、言葉を吐き出す。 「さっきの話の続きだけどさ――」 「なんだよ、愛情物語ならもう間に合ってるよー」茶化すように言って笑うピールに、バニラは淀んだ瞳を向けて、口を窄める。「まじめに聞いてほしい」 そう言われて、彼女の目を見た。淀んでいるのは、自分たちがまじめに取り合おうとしないから、だと思っているが、ピールはまじめに取り合えば、何かまた、あの屋敷のことを聞くようで、頭がそれを拒絶しているような気がした。おそらくソルトもそう思っているのかもしれない。話の腰を折るのは、理性が押しとどめているから、間違っていると思っても、どうしてもあの屋敷のことを思い起こすことはしたくない、そんな気がした。だが、バニラの目は淀んで、焦点をつかめなかったが、それでも有無を言わさないような意志を強く持っていた。 「……わかったよ、聞くよ」 「――僕はさ、あの時、あの屋敷で二人を置いてきぼりにして、ペパーの愛を探した。自分のことよりも、先に他人のことを考えるなんて僕自身がびっくりした。ただ単に似ているからって、そんな単純な行動原理でもなかったような気がした。そして、彼に対して、彼の父母が注いだ愛情を見つけたとき、僕は彼を救ったんじゃなくて、自分も何か大切なことを思いだしたんだ。それは――素直になること。それ以上に、他人の思いに気がつくことだったのかもしれない」 ピールとソルトは黙りこくる。朝早い時間に、子供たちは自分達に役回りを押し付けていると愚痴を溢した自分達、一人で素振りをしていた時に、自分たち以外の孤児院の子供たち、シスター達は、役回りを押し付け、猿芝居を演じている。そして、自分達はその蚊帳の外にいるのだと、勝手に思い込んだあの日。何かを恥じ入るように、無意識に俯いて、両手で顔を覆う。少し体が震えたのは、きっと寂しい後ろ風が、背中を撫でたからだと思う。 「マヨヒガから抜け出して、ソルベさんや院長先生が本気で心配してくれて、ほんとに怒ってくれて、僕はすごく悲しい気持ちと、凄く嬉しい気持ちでいっぱいだったんだと思う。こんなにも心配してくれて、あんなにもつっけんどんだったのに――って」 覆った視界から、温いものが溢れているのに気がついて、ピールは息をついた。なぜこんな気持ちになるのだろうと、それは、自分たちもバニラと同じように、以前はこの孤児院やシスター達、院長先生に対して、何か侮るような、馬鹿にするような感情を持っていたんだと、そう思った。 ――あのおばさんたちはああやって何かと僕をくさすんだから ――孤児院ぐるみの猿芝居……だね 心の中で思い出すのは、自分たちの会話。内側で思ったこと。それらがすべて思い起こされて、重いものが圧し掛かる感覚に見舞われた。深く溜息をついて、ゆっくりと目をこすり、眥を下げ、唾を飲み下す。ソルトの方へ目を向けると、同じように、自分の行いに対して後悔するような、戻って修正をしたいような、そんな顔をしていた。根は同じように考えているのだろうと思い、ますます、自分たちは似たり寄ったりの仲間たちだと思い、苦笑が漏れる。 「本当に心配してくれている人がいるんだって、本当に大事に思っててくれたんだって、窮屈で閉塞な世界を与えられて、自分たちは檻みたいな場所に閉じ込められているんだって、だれもそう思ってないのを見て、皆は飼いならされているんだって、勘違いした。僕は、ソルベさんの思ってた通りに――子供だったんだ」 「子供」 子供と大人の境界線は、個々で違いがある。他人がいう境界線と、自分が思う境界線、二つの意味は似ているようで、まるで違う、自分でこうだと思うことと、他人の言葉で考える境目。バニラ達は後者だ。自分たちで大人と子供の境界線を思っていた。バニラは自分のことはもう立派な大人だと勝手に思い込んでいた。自分は知識を持ち、こんな閉塞した場所で不満を垂れて、それでも何もしない孤児院の子供たちとは違うと――シスター達の心配や、愛にも気がつかずに、自分のしたいことをして、好き勝手に振舞っていた自分自身。それが「特別」だと思い込んで、迷惑など顧みもしなかった自分。間違っていると気がついたのは、ペパーを、ペパーの残滓を見て、両親を見たときだった。愛されているとわかったペパーは、本当に未練を残すことなく消えていったのだと、その時、自分は愛されていたのに、その愛をはねのけて、窮屈な場所に閉じ込める鬱陶しい存在程度に認識していた自分。取り戻せるのかどうかは、自分次第だった。 「僕は自分のことを大人だって勘違いしてた。でも違うんだ。子どもなんだ。精一杯背伸びをして大人ぶってる、理屈ばかりの子供なんだって。屁理屈をこねる大人は咎められない、理屈をこねまわす子供は悪い子供だって言われる、でも、どっちも正しくないんだ。感情よりも理性をぶつけても、何も進展しない、生意気だって思われても仕方がない、だけど屁理屈をこねる大人もいけないんだって。一か月、院長先生を見てて、やっぱりそういうのもいけないんだって思えたから」 一ヶ月間院長やシスター達の手伝いを見ていて、バニラは他人と関わっていることは、大人も子供も関係なく、自分のことを素直に伝えられなければいけないのだと、知った。 「すごいよね、笑っちゃうよね、こんな簡単なことに気がつかなかったんだもの。僕、子供でよかった。こんな大人だったら、僕はきっとだれにも相手にされなかったんだろうなって、思ったよ」 「たぶん、僕も相手にされなかったと思う」 「私も、きっと相手にされないよ」 三者三様、同じような思いを口にする。バニラの言葉を聞きたくなかったのは、恐らく自分たちが無意識に、そう思いたくないという気持ちが上澄みに残っていたのかもしれない。しかし、そんな思いは今は綺麗に消えていた。 「やっぱり僕たち、似た者同士だから友達になれたのかな?」 「違いないかもね」苦笑して、屋根から見える景色を、三人で同じ目線に合わせた。屋敷の残滓を追い、今までのことをありありと思いなおす。 「そう言えばさ、あの洋館の入り口の門扉、籠目紋様だったよね」 ソルトが思い出したようにぽつりと、何気ない言葉を口にした。籠目紋様という不思議な言葉を聞いて、バニラとピールは顔を合わせて、首を傾げた。 「魔を払う紋様だよ。六芒星って知ってる?」 「ロクボウセイ?」バニラが首を傾げる。ピールはふむ、と思案顔になり、やがて何かを思い出したように、両手をポン、と叩いた。「ダビデの星?」 「異国の言葉ではそういうらしいね、ほら、ペパーが入れないって言ってたあの入口。あれはさ、門扉を閉じている時は籠目紋様になるような装飾が施されてたなぁって」 そう言えば、とバニラは思い出した。門扉が通れないと言ったペパーは、あの時自分は家に入れないと言った。それはあの門扉が、魔を払う紋様を装飾した、退魔の門になっていたからなのか、と思った。自分たちは、生きている存在、そしてペパーは死んでしまった存在。だから退魔の紋様を嫌い、家に入れなかったのだろう。 「……なんで退魔のダビデを紋様にしたんだろうね」 「――もしかしたら、それって両親の思いやりじゃないのかな」 少し思案して、一つ思い起こすようにバニラが言葉を口にした。幽霊になってしまった彼の頭の中に強く焼き付いて、思いが形になったあのマヨヒガがその当時のものをそのまま投影したものなら、そう思える気がすると、バニラはひとりごちた。 「思いやり?」 「魔を払うことが、思いやりなのかな?」 ほとんど独り言のような言葉だったが、二人とも耳に拾っていた。バニラは興味深げにその言葉の続きを聞きたがるような顔をした二人を見て、あくまで自分の思い込みだ、とだけ告げて、話を続けた。 「ペパーは自分の記憶がなくなって、自分が幽霊だってことに気がつかなかった。でも家のこと、両親ことだけは強く焼き付いた。それはその家に思い出があって、その家の中にいる両親に、愛情を受けて育てられたからこそ、その思いだけは忘れることがなかった。だけど、自分は外にいた。どうしてかわからずに、思い出の残る家に入ろうとしても、退魔の紋様が邪魔をして入れない、彼は魔術的なものに疎かったから、どうして入れないのかわからなかったんだ。おそらくあの洋館に裏口とか、そういうものがあったとしても同じように魔除けの紋様とかがつけられていたんだと思う。それはおそらく、両親が自分たちの行為をしてしまったときに、自分たちを封じ込めるため、そして、ペパーを家に近づけさせないために、あの紋様を急遽に作ったのかもしれない。いつか出ていく息子が、絶対に戻ってこないように、自分達の悪を分かっていながら、自分達ではもう止められないところまで来てしまったから、だから最後の頼みの綱として、退魔の文様を付けたんだと思う。愛する息子を――自分達という魔物から遠ざけるために」 「……だけど、結局は自分達の息子だと気がつかずに、手をかけてしまった」 「だから、もしペパーの強い思いが残って、また家を作り出してしまった時も、絶対に入らないようにかぁ……やっぱりペパーは、愛されてたんだね」 「だから、これは僕の思い込みだって。でも、もしほんとなら、本当に息子のことが好きなんだって思えるじゃない。死後の残滓からも遠ざけて守ろうとするなんて、愛されている証拠だって、思う」 言ってから、開けた荒涼の大地を見据える、いつの間にかターキーがソルベの隣にいて、何かを話しこんでいるように見えたが、さすがに何を話しているかを聞こえるほど、耳は良くなかった。二人が立っている場所は、自分達が入り込んだ、不思議な不思議な家。おそらく、自分達にしか見えなかったのだろう。そして、その体質が最も近しいのが、バニラだっただけの話だ。あの洋館にあったものは、両親の息子に対する強い愛、そして自分達のしたことに対する、懺悔、後悔、そして息子を手にかけてしまったという悲しみ。さまざまなものが混ざり合い、あの洋館を、強い強い思いで残したのだろう。 「あのマヨヒガにあったのは、辛い想いと、愛する記憶だったんだね」 「辛い想いは確かに思い起こしたくないことだけど、間違えたことに対する後悔、懺悔、あらゆる思いを、愛した息子から受けて、父母は人に戻ることができた」 「家族の絆と、息子と両親の愛、やっぱり、一番色濃く残ったのは、それなんだね」 それを見ることができなかったのが、ちょっと残念だ、と口溢して、何かを払拭したように、ピールはかぶりを振った。 「私――この孤児院が好き。窮屈でも、退屈でも、そんなの私たちで変えていけばいいって、そう思えなかったのが、知識の無さだよね」 「僕も好きだよ。他人だったとしても、隔たりがあっても、そんな他人に対して、本当の両親みたいに接してくれる、自分が今まで思ってたことが、凄く矮小な気持ちなんだって、わかった」 ソルトとピールは、立ち上がり、大きく伸びをした。バニラは二人の言葉を聞いて、何かを吹っ切ったように、清々しい顔をした。 「僕も、大好きだ。シスターがいて、院長先生がいて、ソルトがいて、ピールがいて、孤児院の皆がいて、本当にいい場所なんだって、今なら思える。経済的に苦しくても、他人同士のくだらない猿芝居だと思われても、ここが僕たちの「家」なんだって。――僕は、やっぱり、立派に自立して「出ていける」用になりたい」 「うん、私もそうなりたいな」 「僕も、そうなれるように、努力したい」 でも、とバニラはもう一度、最後に一瞬だけ、マヨヒガのあった場所に目を移す。数瞬の瞬きの後に、ゆっくりと視線を戻して、滑るように屋根から飛び降りた。ソルトとピールもそれに続く。 (僕は待ってる。君とまた会えることを) 今生の別れだと思った。絶対に、もう会うことはないと思っていた。理性でそう思っていても、心のどこかで、また会えると思いたくて、最後の最後、本当に消えてなくなる瞬間まで、また会いたい、と言ったあの言葉に、偽りはなかった。彼女は、もう一度彼に会いたいと、心から思う。こんなにも変われたのは、君のおかげだと、君が教えてくれたんだと、あって、もう一度伝えるために。 その思いを心のうちにしまい込み、シスター達の声が聞こえる中、宵が深くなる前に家路につこうと思った。闇の中には悪鬼が跋扈する。しかしけして、悪鬼だけではないのかもしれないと、彼女は思い、微笑んだ。 周辺を捜索し、昔の出来事を村の図書館で調べて、もう一度現場を散策する。もう終わったことだというのに、妙な引っ掛かりを感じてしまい、ソルベにも煩わせるような行為をさせてしまったことを、何とも申し訳ない気分であたりを見回す。もう宵が深くなりつつあるのを確認しているが、まだ何か、調べることがありそうだった。それは頭で考えているわけではない、直感の類だった。 「院長先生。もう終わりにしませんか」ソルベが心配そうに声をかける。それがわかっていても、ターキーはもう少しだけ、と首を横に振る。「調べたことは確かに不気味でしたが、数百年前の出来事です、そんな昔の異形が、今この場所にあるなんて考えるのは、とてもじゃないですが正気の沙汰とは思えません」 彼女の言い分もわかっているが、それでも、とターキーは目を細める。実際に、子供たちはいなくなっているのだ。それに気がつかなかったのも、その正気の沙汰とは思えない何かの超常現象によって引き起こされたものだとしたら、辻褄は合う。 「院長先生、少し休みませんと、お体に触ります。バニラ達が、悲しみますよ」 「……そうだな」 ぐ、と縋るように足に食いついて、憂えた瞳を向けられて、まるで何かに憑かれたかのような動きをぴた、と止める。近くにあった切り株に腰をおろして、息をつくと、摩訶不思議な世界から一気に夏の夜の底冷えするような大地に放り出されたような感覚に戻った。 「ソルベちゃん、話をまとめよう」 「もう何度もまとめましたが、それでもまだまとめますか?」 「頼む」 半ばあきれたような溜息を洩らして、わかりましたとソルベはたっぷりと黒い文字で埋め尽くされた紙の束を取り出した。ゆっくりと文字をなぞりながら、何度も何度も、先ほどから聞かれた言葉を反芻するように、ターキーに対して話しだす。 「この場所には、数百年前に一つの洋館が立っていました。おそらく宿泊施設として機能していたのだと、昔の文献には書いてありましたね。そして、その宿には不穏な噂が漂っていました。こんな辺鄙な場所に造られたにも関わらず、なぜか商売は繁盛し、とても豪勢な宿にどんどん変わっていったという不思議な現象。それは果たして、正規の儲けで改築したものなのか、それとも――強盗や詐欺まがいの方法で改築したものなのか」 何度も聞いた言葉だったが、恐らく後者の方が正しいのだろうとターキーは思う。闇に跋扈する者は、何かの闇を抱えるものだと、直感がそう言っていた。 「さて、なぜそのような不当な噂が流れだしたのか、それは宿に泊まったものの家族からの声でした、息子が帰ってこない、娘が帰ってこない、その宿に文を送ってみても、ご家族は宿を出た、という答えしか返ってこなかったからですね。これはおかしいと思い始め、そして調査に踏み出そうと、警が動き出した時――その洋館は、突然燃えて、三人の遺体が見つかったそうです。シャンデラと、ランクルスと、ランプラー。宿屋の主人とその息子だという結果が出たときに、火災が起きたのは、無理心中だったのかもしれないということでカタがつきました。しかし警は納得しませんでした。不穏な噂が漂い始めたときに、急に燃えてなくなった洋館、調べて見れば何かが見つかる、そうに違いないと思いましたが、お上は終わった事だと、そしてもう掘り起こすことでは無いと。そういい伏せられて、警はそれ以上何かを物申すこともなく、この不気味な事件は一家の無理心中として葬られました。このあたりで起こった大きな事件は、これだけだったので、恐らくこれが一番今回の失踪に関わっている、でしたよね」 「ああ」 「本当にそうなんですかね……」 「なら君はどう説明するんだ?あの不思議な家事は、あの謎の木の裂傷は、自然現象と言い切るには、あまりにも不自然だと思わないか?」 「確かに……ですが、そんな昔の出来事が子供たちを引いたという話の方が、よほど信じられませんよ」 ソルベは何度もそれを説明したが、ターキーは頑として思考を曲げようとはしなかった。意固地になってこんなことをしても、何の意味もないと思い、ソルベはどう説得しようかと思案に暮れていた。 (……だけれど)ソルベは思案顔をするターキーから視線をそらして、頭を回転させる。不審な宿屋の事件、子供たちの失踪。確かに何かがおかしいということは、ソルベ自身も気が付いていた。不審な炎も、バニラ達の失踪も、まるで一つの出来事を関連付けるかのような順序で起こっていた。そこまで考えて、ソルベは漆黒の虚空を見やる。(――マヨヒガ)遠くから古きに伝わる、不思議な伝承を思い起こす。家に残った思いが、家なき後も家を造る、そこに迷い込むものは、その家の思いに強く引かれるものだ。それはまるで、闇の中で跋扈するものが手招きをするように。(バニラ達は……この昔の出来事に引かれたということ)そう考えると妙に納得できるような気がした。謎の客の失踪や、なぜか繁盛した屋敷。おそらく後ろ暗い思いが積み重なり、宿は燃え尽きた後も、その場に残滓を残し、淀んだものを留まらせていたのかもしれない。そして、その積もったものが一つの家を作り、バニラ達はそこに招き入れられた。そう、「客」として―― そこまで考えて、ぞっと背筋に寒いものが走る。あまりにも非科学的で、情緒が欠落したような考え方だったが、ターキーや自分が納得する考え方は、そのくらいしか浮かばなかった。 そう考えると、バニラ達が戻ってこれたのは、奇跡なのかもしれない。マヨヒガに迷い込んだものは、多くがその欲望に取りつかれ、そして命を散らす。不幸なものが多いから、伝承になる。バニラ達が出ることができたのは、彼女達の思いが、マヨヒガの留まった淀みを払ったのだろうと、ソルベは推測した。 しかし、こんな場所に来てしまったのは、彼女たちの責任でもあるが、自分達にも責任がないとは言い切れないと、ソルベは少し唇を噛みしめた。 「院長先生は、マヨヒガ――というものをご存じですか?」 「マヨヒガ?……ああ、知っているとも、昔の伝承に伝わる、無人の屋敷のことだろう?」 その通りです。とソルベは告げると、自分の考えを話した。この屋敷の事件は後ろ暗いものが淀んで、この場所に家を作り出した。そして、そこにバニラ達は引かれていったという考え。そして、彼女たちはそこに迷い込んだからこそ、自分達に姿が見えることなく、その淀みの中を彷徨い、そして――抜け出せたのだということ。 「おそらくですが、私たちが気がつかなかったのは、その淀みが、彼女たちの存在を隠していたからなんだと思います」 「……確かに、それだと事件との関連性もある。だが、なぜバニラ達だったんだ」 「それは、私たちにも非があるのかもしれません」 子供たちを危険な場所から遠ざけることは、一歩間違えれば安全な場所に閉じ込めるということになる、夜は危険だ。何が跋扈しているかわからない。その危険を孕んだ場所から子供たちを遠ざけること、そう意識して、守るという思いとともに、いろいろな行動を制限してきた。しかし、それはもしかしたら、子供たちにとって嫌な思いが鬱積するだけだったのかもしれないと、ソルベは思いなおす。 事実、バニラ達はいなくなった。これは彼女達が言いつけを守らなかったということにも非があるかもしれないが、自分達の言葉が、行動が、知らず知らずのうちに嫌な思いを鬱積させてしまったのではないかと。 「俺達にも非があると……」 「子供は奔放です」ソルベは改めるように言葉を呟く。「自由で、白にも黒にも染まることができます。私たちは、そんな自由な子供たちから、知らず知らずのうちに、自由を奪っていったのかもしれません」 「しかし、危険から遠ざけるために――」 「そうです、危険から遠ざけるという言葉、間違ってはいませんが、私たちがついて、いろいろなものを見聞きさせることや、さまざまなものに触れさせて完成を刺激したりすれば、今回のような出来事は起こらなかったのかもしれません」 ターキーは言葉に詰まった。危険から遠ざけること、そして守ること、大切なことだし、大好きな子供たちをそんな目にあわせられないという思い。しかし、実際はどうだろうか、バニラ達は失踪し、見つかったが、それは自分達が閉じ込めてきたせいで、彼女たちの心の中にため込んだものが爆発したのかもしれない。それに気がつくことができずに、遠く離れて行ってしまう子供たちの姿を思い、首を横に振る。 「危険から守ることと、閉じ込めることは、一歩違えば、隣り合わせなのかも知れないな」 「はい、私もそう思います」 ソルベはいい、無言で両の前肢を合わせ、祈るように大地に膝をつく。まだ、もしこの場に淀みが残っているのなら、すべてが消えて、成仏するように。思い残しがなく、逝って欲しいと祈り縋る。ターキーも無言で、両手を合わせ、しばらく荒涼とした大地を見つめ、祈りをささげる。何のための黙祷かわからないが、こうした方がいい様な気がした。 「もう行きましょう。終わったことです。これから変えていければ、いいのですし」 「ああ、そうだな」 結局のところ、彼女達が失踪した経緯はわからなかった、調べて見て、そういう憶測だと思うしかなかったが、この場に何かしらの淀みが残っているのならば、この場所に祈りを捧げ、子供たちを近付けないようにすることしか、今のターキーたちにはできることがそれくらいしかなかった。 しばらくその場にとどまり、あたりを見渡す。宵が深くなる前に孤児院に戻ろうと踵を返した時、茂みが揺れた。揺れた、と思っただけかも知れない。もしかしたら、風で揺れたのかもしれないと思ったが、もう一度、揺れた。不審に思い、視線を移動させると、造林の間に生える下ばえの雑草が、規則的に動いている。そこから何かが草の根をかき分けて、この場所に出ようとしている印象を持ち、ターキーは静かに身構える。 「院長先生」 「大丈夫だ、後ろに隠れて」 ターキーはゆっくりと、しかし確実に歩を進める。宵が深くなるころに現れるものは大概が何か恐ろしいものだ。瓦斯灯の明かりも届かないこの場所では夜闇に紛れて何をしたとしても、それを見る者は少ない。だからこそ、夜は恐ろしい。 「何者だ」ターキーの問いかけに、びくり、と体を震わせたのか、茂みが大きく揺れた。姿が見えないが、何やら不審な明かりのようなものが見えた。滴るような紫色、暗がりの中で、ぼうっと湧き上がるそれは、とてもよく映えていた。「……」茂みの向こうの主は、沈黙を保っていたが、やがて茂みから、すぅ、と姿を現した。す、と金色の双眸が細められる。歳の頃はわからない。あけどないほど若い様でもあり、意外に年嵩であるような気もした。その姿は、まるで蝋燭のそれであり、何か不思議なものを見つめる瞳が、ターキーとソルベを交互に見やる。煌々とした明かりは、頭の天辺から、唆すように燃えて揺れる。 「君は――何者だ」 「……僕、は、だぁれ?」 院長先生、と声を出したのはソルベだった。こんな時間に夜歩きをするのは、よほどの理由でもなければあまり見ない光景だった。それ以前に、ブチブチと切れるように放った蝋燭の言葉が、記憶が欠如してしまったのだろうかと思わせるには十分すぎる言葉だった。 「先生、ヒトモシです」 「ヒトモシ?」 「蝋燭の姿をしたポケモンです、霊や思いのある場所によく集まる、ゴーストタイプのポケモンですね」 ターキーは唾を飲み込んだ。淀みが残っているかもしれない場所に現れたポケモンとしては、あまりにも背筋が戦慄するような情報だった。 「ここは、どこ?お父さん、お母さん?僕を――ペパーを置いて、行かないで」 こちらの様子に気が付いているのか、それとも気が付いていないのか、一人ごちるように呟き、金色の瞳から温いものが溢れて、周りを見渡す。ターキーとソルベは、お互いに顔を見合せて、警戒を少しだけ解いた。 「この――子供?……いや、子供だな」 「記憶をなくした、孤児、ですかね」 お互いに思うところを吐露し、再度ペパーとつぶやいたヒトモシを見る。自分の名前や、両親のことは覚えているのだろうか、それでも、そこにいないものを掴むように、両親のことを口に出し、自分の手を無いものにのばす姿は、糸が切れた傀儡のようにぽっかりとして――虚無が巣食っていた。 「院長先生、どうします?」 「決まっているさ」 ターキーはわかっているとばかりに頷いて、ペパーをやさしく抱き上げた。 おわりがき 昨日と今日で非常に騒がしいのは、何か変化が起きているのだと、バニラは興味深げに子供たちの噂話を耳に拾う。 「どうしたの?」 「んー、噂話が聞こえるからさ」 ピールの言葉に、バニラはくすりと微笑む。せせこましく動き回る子供たちが大量に集められて、ひらけたとこから日差しに炙られ、熱がこもって汗が自然にぬめりを帯びて、流れだす。何か大事なことがあると、ターキーは孤児院の外に子供たちを集める。夏の終わり、秋の始まりだというのに日差しは土を炙り、人を炙り、焼けるような思いを積もらせる。 「しかし暑いね、サウナみたい」 「いいじゃん、都会じゃお金払ってそういうところに行くんだって。お金もかからずに汗かけるよ」 「ばぁか」手で顔を仰ぎながら、バニラは苦笑する。「あっちじゃ生存競争厳しいんじゃない?こんな泥臭いサウナにお金掛けられないってば」 うふふ、とピールが軽くバニラの頭を小突いた。そんな仕草を鬱陶しそうに払いながら、バニラはきょろきょろとあたりを見渡す。 「それより、聞いた?」 「うん?」バニラは首を傾げる。後ろから新しい声が割って入る。ソルトは手で汗を拭い、指先で顔に影を作る。「なんかさ、新しい孤児の子供がここに来たらしいよ。皆で歓迎しようって、そういうことじゃないかな」 「へェ」 バニラは興味深げに瞳を細めた。いったいどんなポケモンだろうか、小さいのか、大きいのか、かわいいのか、かっこいいのか、妙な想像を膨らませながら、ソルトの言葉の続きを待った。 「よくわからないけど、噂話の種とか、ニュースの鮮度は高いからね」 「何言ってんだよ、そんなのありがたがって話す人いないでしょ。せいぜい一週間くらい噂になって、お仕舞いとかじゃない?」 確かにと笑って、山の稜線を炙る太陽の熱気を影を作ったソルトの後ろに回りながら、ふう、と一息ついた。体中が汗みずくになっている自分を見て、おおよそ女性の立ち振る舞いのそれとは違うものだと笑う。女性は静謐で敬虔だなどと言われているが、もちろんそれは古臭い一般論にすぎない。最近の女性はよく笑ったり泣いたり、男性と何ら変わらないくらいぶっきらぼうな性格の人もいる。そのあたりも個性だと思いつつ、院長先生が表れるのを待って、顔を扇ぐ手の動きを若干速めた。 「おっそいなぁ、院長先生」 「待つこともまた、話題が増えることの楽しみ、なんて思えないかな?」 「こんなくそ暑い中つっ立たされたら、五分もたたないうちに日射病で病院に搬送だ」 ピールは苦笑して、口から軽めの水をバニラに向けて発射した。突然の行動に避ける間もなく、バニラは水鉄砲の直撃を浴びて、体中が水浸しになった。 「気分はどう」あっけらかんと聞いてくるピールに、むっつりとした表情を張り付けたバニラは水でぬめった体を翻して、ばつの悪そうな顔をした。「微妙」 「おや、涼しくなりたそうな顔をしてたし、こんなふうに水をかけられても笑っていられるのが大人の余裕、ってやつじゃない?」 「いきなり水かけられて笑っていられるやつがいたら、そりゃ頭おかしい人だ。今度やったら殴るからね」 「冗談だよ。でも、ちょっとすっきりしたでしょ」 多少はすっきりしたが、何やらねっとりとしたものが張り付いて、とれないような気分も頭に張り付く。微妙なもどかしさの中、大きめのタオルをピールが抛って渡した。 「ごめんね、水をいきなりかけたことは謝るよ。でも暑いって思ってたら、変化が楽しめないかなって思ってつい」 そういうピールは、両手を合わせてへこへこと頭を何度も下げた。そんな風に謝る彼女が、なんだかおかしく見えた。頭の先から足の指の間まで、タオルを使って付着した水をふきとる。ずいぶんと体温低下したところで、ターキーが子供たちの前にやってきた。 「えー、孤児院のみんな。今日はお知らせがあります」 ターキーは一呼吸おいて、ゆっくりと子供たちを見渡した。抜けている子供はいないか、それを調べるのが、癖になってしまった。仕方ないと言えば仕方ないが、半永久的に自分勝手な行動はしない方がいいと、バニラ達は心の中で反省した。俯いてあまり顔を上げないようにしているが、声はしっかりと聞こえる。あまり顔を合わせたくないのは、ほとんど自分達が関わって苦労を重ねたということに対しての、謝罪と申し訳ない気持ちの表れなのかもしれないと自問した。 「今日は皆に、新しい仲間ができます」 来た。という感覚がした。新しい変化が、この孤児院にやってくる、それが何なのか、誰なのか、自分達が孤児院にやってきたことを思い出し、あの時の期待をゆっくりと膨らませる。体中が歓喜に震え、新しい仲間を一目見んと、全員が顔をやってくる仲間の方へと向ける中、バニラはソルトの肩によじ登る。 「莫迦、重い、視界が狭まるじゃないか」 「いいじゃないか見れないんだから、ちょっとはてつだ――って……」 バニラは硬直した。何なんだと思いながら、呆けたように口をあけて、何か信じられないものを見たようなバニラの目線の先に顔を向けると――体が強張った。何か信じられないものを見たように、視界が細めれられ、瞬く。他の子供たちは新しい仲間を歓迎するように、にこやかに笑って声を上げる。ピールは不審に思い、二人の見る先に視線を移し――固まった。 「この子は自分の名前と両親のこと以外覚えていないそうだ」揺らめく紫は、昼間でもよく燃え盛り、彼と出会った夏の宵――その情景をありありと思い起こさせる。彼は最初、あの窓辺で悲しげな瞳を燻らせていた。「記憶喪失ということも相まって、まだまだ見たことのないものや、聞いたことのないものも多くあるだろう」彼と出会い、そして成り行きで冒険のような散策が始まった。最初のうちは好奇心と自分が外に出たということに対して、興奮していたような節があった。しかし、だんだんと真実を知るにつれて、自分の思いの愚かさを知った。それを教えてくれたのも、あの夏の出来事だった。「そういうことも含めて、皆、仲良くやってあげて欲しい」すべてを知って、彼の本当の思いを伝えて、もう一度会う約束をした。他人の空似とは思えないほどの、彼によく似たそのヒトモシは、少し恥ずかしそうに頬を紅潮させて、おずおずと頭を下げた。 「さ、自己紹介をしてくれ」 「あ、あの、はじめまして。僕――」 気がついたら肩に乗っていた重みが消えたと思い、ソルトはバニラが子供たちの塊をかき分けて、ターキーと、その横にいるヒトモシの方へ向かっている、なんだと思う不審げな子供たちの声。院長先生が目を細めてバニラの方を見ている。しかし、彼女はそんな視線や不審な言葉など気にも留めずに、彼女が再会を約束した。彼の双眸を視界に捉える、驚いたような瞳が見開かれ、揺らめいた炎は少しだけ委縮した。 「ペパー」 バニラはペパーに抱きついて、強く強く抱きしめた。あの屋敷の重みが、また腕の中に戻ってきた、再開ができたということに対して、涙が溢れた。 「あ、あの……どうして、僕の名前」 「よかった。また君と会えて、本当に良かった……」 ただただ涙を流す彼女を見た孤児院の子供たちは、不思議なものを見たようにきょとんとした。ターキーも普段からは見られないような彼女の姿を見て、眥を吊り下げた。ソルトとペパーは、彼女の約束は無意味ではなかったんだと思い、苦笑交じりに拍手を送った。それはまるで、友達というよりも、恋人の再会のように見えた。 「君とまた会いたくて、君のおかげで変わることができて――僕は、僕はっ」 最後は言葉にならなかった。こんなにも変わった自分を見せたかったのに、ただ泣き虫になった自分を見せてしまった。それでもあふれるものは止まらなかった。抱きついて、泣きつかれて、ペパーは困惑したように、それでもどこか何かを懐かしむようにはにかんだ。 「……よくわかりませんけど、僕も、また会えて嬉しいです。――そんな気がします」 夕暮れの空を、屋根の上から見上げる。この日を最後に、ラムネはまた来年の夏まで姿を消すだろう。そう考えると一気に飲んでしまうのがもったいない気がして、四人はちびちびとラムネを煽る、すっきりするような炭酸が弾けて、口の中を潤し、今までのことを思い出させるような刺激を感じた。 「どう、一週間がたったけど、もう慣れたかな?」 「はい」ペパーはラムネを煽りながら、嬉しそうに微笑む。「わからないこともありましたけど、バニラさんたちが教えてくれたおかげです」 「バニラでいいよ」彼女は微笑むと、半分ほど飲んでしまったラムネを、遠くの大地に透かして、そこから覗き込む。あそこにあったものが、今の自分を作ってくれたのだと、不思議な気分になった。 「バニラさん」 「バニラでいいってば」 そんなやり取りに、ピールとソルトがお互いに笑い合う。「いうこと聞いておいた方がいいよ。バニラお姉さんは怖いからね」それにつられるように、ピールも口にする。「まぁ、そこまで気にすることもないと思うけど、敬語を使うのが失礼だって時もあるから、ね」 二人の言葉を聞いて、少しだけ顔を顰め、バニラはつん、とそっぽを向いてしまった。黄昏が山の稜線を照らし、夕暮れ時の物憂い雰囲気を一気に心に押し入れるような気分だった。 「ええと、じゃあ、バニラ。バニラはどうして、この屋根に上ると――同じ場所を見てるの?」 それは純粋な興味の質問に聞こえたし、何やら探りいれるような言葉にも聞こえた。なんでだろうね、と軽い返しをして、夕焼けに赤く照らされた荒涼とした大地を見下ろす。そこにはかつて、自分がいて、ソルトがいて、ピールがいて――ペパーがいた。二日間だけの不思議な冒険だったが、その二日間で、自分は、自分達は変わることができた。変わろうと思えた。変わるきっかけをくれた人に会うことができた。今までのことを走馬灯のように思い出し。目尻から少しだけ、涙が溢れた。 「意地悪しないで、教えてよ」 「そんなに知りたい?」 「うん」すっかり中身が空になったラムネの瓶を振り回して、ペパーは嬉しそうにバニラの膝の上に座った。中に入ったラムネ玉がからからと寂しい音を立てて、夏が終わることを告げる。鳥ポケモン達の喧騒。蟲ポケモン達のさざめき。すべてを思い起こさせる音が、ラムネの瓶から奏でられる。 「そうだね、僕は、いや、僕たちは、あそこで不思議な出来事に出会ったんだ」 「ピールさんと、ソルトさんも?」 「ピールでいいですよ」 「ソルトでいいかなー」 バニラの真似をするような二人を見て、ペパーはごめんなさい、とはにかんで、わかりました。と笑う。 「ピールも、ソルトも、バニラと同じことがあったの?」 「うん、そうだよ」ピールはそれを懐かしむように、残ったラムネを全てあおると、一息ついた。後ろから子供たちとシスター達の喧騒が聞こえてくる。恐らく孤児院で行われる祭りの、山車を作っているのだろう、持ちやすいように、ここは強く。そんな声が聞こえて、くすりと微笑んだ。「私たちも、バニラと同じ場所にいて、同じような思いを体験したの。ちょっと悲しくて、すっごく感動した、そんな体験だよ」 「ねえ、そのお話、聞かせてくれない?」 「聞きたいの?」 ソルトが意地の悪い顔をした。 「聞きたい聞きたい。僕、もっともっといろんなことを知りたいから」 バニラは苦笑した。彼とは似ても似つかないほど明るく、奔放で無邪気な、好奇心が旺盛の――彼の生まれ変わり。 似ても似つかないが、雰囲気や顔つき、まるでその顔を切り取って張り付けたような、その姿は、他人というにはあまりにも似すぎていて、記憶をなくした本人ではないかと疑ってしまう。 (でも、もういいんだ、そんなこと考えなくても、変わった僕は――これからペパーにいっぱい、見てもらえるんだから) 「うん、わかった、じゃあ僕とピール、ソルトが順番に話すから、ちゃんと聞いててね、時間が遅くなったら、続きは明日。それでいい?」 「うん」 「じゃあ、まず僕が話そうかな。あれはね……一か月前の、夜の出来事だったかな」 その家は、地底の泥の中から浮上したような印象を受けた。 孤児院からはるかに離れた辺境、下り坂を降りた荒涼とした大地に残っていた。栄えた宿の残滓。侵食するものと堆積するものとの鬩ぎあいの中で緩やかに成長を続けてきた感覚がした。その家の中――水際、中の中枢に張り巡らされた、淀んだ思いと、策謀、そして惨劇。自然の摂理を裏切るように、家は爆発的な増長を始めた。 家の中に渦巻いた。それは欲望。そして、悲しみ。陸地が肥大していく以上の速度で、その家の思いは泥が積み重なるように増長していった。それを止めるすべはなく、そしてそれがすべて積み重なった時――あっさりと崩れ落ちた。 それはあらゆる後悔、懺悔、そして絶望。様々なものが綯い交ぜになり、堰を切ったように燃え上がる。ゆるゆると燃える様は、人の心の現れ。それはまるで泥の干潟が、果たして陸であるのか、海であるのか判然としない様に似ていた。欲望と悲しみの趨勢が確定せず、積み上がったものは、一つの終焉を迎えて跡形もなく消え去る運命だったのかもしれない。その終焉の中、最後に生まれたものは、限りのない愛だった。ある者が限りなく与えた、ある者が尽きることなく与えた。その渦中に、彼らはいた。 その姿を見た時に、自分たちの姿を重ね合わせた。愛されていたことに気がつかずに、無意味な時間を過ごした自分達は、謳歌していたと錯覚し、恥言ったような気分になる。変わろうと思えるだろう方だろうか、変わることができただろうか。 ――否、変化とは常にあらわれるもの。彼女たちは、その変化に気がつかなかっただけなのだ。そして、今はその変化を、しっかりと噛みしめて生きている。それを教えたのは、摩訶不思議な家――マヨヒガ。 彼女達は、自分を変えてくれたきっかけを、意気揚々と話す。ある夏の出来事を――一つの宵の物語を―― ――愛する家族の、悲しい物語を。 ――自分達を変えてくれた。不思議な家の物語を。 終幕 ---- あとがき 仮面を剥がしたらただの変態が現れるとはよく言ったものですが、私は変態、もちろん、この小説を読んでくださった皆さんもその仲間に入る予定の人かもしれません(ェ このお話は大人びた子どものわがままな思考が、一つの物語を通して成長するという過程をざっくばらんに切り捨てて、適当に簡略化したお話でございます。簡略化しなかったら200000字オーバーしてたのでさすがに簡略化するしかないじゃない(ryこの物語の主人公は誰でもない、群像劇の形で読んでいただければと思いますが、実質的な主人公はエモンガのバニラであるのかも知れません、一番外に渇望して、そして一番自分の考えを根本から見つめ直した彼女が主人公なんじゃないかなぁとは私は思います。フタチマルのピール、ジャノビーのソルト、この二人はその気持ちに少し便乗しただけでしょう。やはり主人公はバニラですね。群像劇なので誰が主人公と浮いうわけではありませんが、実質一番主人公主人公をしていたのはバニラでしょう。 今回のお話はちょっと変なテイストの話でしたが。これはもともと遠野物語というお話集の中にある、マヨヒガという伝承を個人的にアレンジしたものになっております。マヨヒガというのは人の思いがこもった家のことであり、人の欲を試すような場所であるとも言われているようですが、真意はわからないですね。もう一つの殺人狂の家族のお話は、なんかの話に乗っていたものを参考にさせてもらいました。何の話かは忘れた。ですが、そういうことをしちゃった者たちには、必ずばつが待っている。その罰というのは作為的に作られたように見えて、最後の最後でペパーが自分の身を犠牲にしてでも、作為的に二人に罰を与えたというシュールでカオスな結末になっています。こんな結末で大丈夫かと思いましたが。この物語はそういうお話なので結果的にそういうのにしました。 作中に現れた扉の問題ですが、これは一つ一つに問題を設置して、一つ一つのエピソードを細かく描写しようとか思ってましたが、時間が時間なのと、あとそんなことしたら絶対飽きると思ったのでばっさり切り捨て。こういうのは自分には向いてないと実感した瞬間でした。 最終的には彼女達はペパーの思いが間違っているとはっきり言い切りましたが、一番彼の心の深淵まで深く入り込んでいたのはバニラだけでした。これは二人が似た者同士であるからかもしれませんね。個人的見解では全く似てないと思います。書いた本人が言うのだから間違いないはず。 最初はこう書こうこう書こうとか思いながら、これ以上はやっぱり無理だとか考えて、頭によぎったのは辞退の言葉。こんなんやっぱり無理だわと思って辞退しようかと思いましたが、なんだか参加したくせにダメじゃないかと思い、どれだけ変になってもいいから、最後までやり遂げないと思い筆を進めました。最後の方とかかなり無理やりでしたが、それはその名残です。扉の紋様とかそんなん知るかよレベルですねすいません。 最後になりますが、この物語を読んでくださった人、というより呼んでくれた人がいるかどうかすら微妙ですが、楽しんでいただければと思います。そして妙な好奇心で無人の家に入らないでね。閉じ込められちゃうよ、家の残滓に。ウェヒヒヒ 以下、コメント返信です。 まず、発想が面白かったです。ほかのどの話よりも引き込まれました。 こどもたちの成長、ペパーの秘密等、見(魅)せる部分がよくわかってるなあと思いました。 個人的に気になったのは、序盤のテンポが少々悪かったことです。それでも、非エロ投稿作品の中では一番面白かったので投票させていただきました。 (2011/08/25(木) 08:46) うへぇ、ありがとうございます。発想は書くときに昔々あるところになんて突っ込みどころ満載にしようかと思いましたが、さすがにやめました。序盤どころか終盤も中盤もテンポ悪いです。それでも一番面白いなどと言っていただきありがとうございますorz 独特の雰囲気に惹きつけられました。 ペパーの満たされない思いがマヨヒガを作り出し、三人を誘い込んだわけですが。 結果そうしてペパーの満たされない思いの真意を知ることが出来て、三人も孤児院での振る舞いを省みてそれぞれに思うことがあったみたいですね。 何はともあれ、色々と勘繰りながら、想像を巡らせながら、読ましていただきました。 (2011/08/25(木) 13:24) 独特の雰囲気ですか、そんなに独特でしたら書いたかいがあるというものです。満たされない思いに引き込まれて、大人な子供たちは何を思ったのか、そのあたりを中心的に書こうと思ったので、いろいろ考えながら駆けて楽しかったです。そんなに勘ぐらずにうはwww何これバロスwwwwくらいの軽さで見てもいいのよ。そういうお話だし(ry ありがとうございます 孤児院の三匹が出会ったペパーと一緒に屋敷へ足を踏み入れ、少しずつそこでの真実に向かっていく様子が良かったです。 ペパーが全ての出来事を知って、屋敷が燃え上がっていくシーンは鳥肌が立ちました。 (2011/08/25(木) 17:19) 最初は好奇心から踏み入れた場所かもしれませんが、意外なところで迷い込んでしまいましたね。脱出するために、無事でいるために、真実を知るために、それらもすべて欲望の塊ですが、そんな風になっても諦めない子供たちを等身大に描いたつもりですタブンネ。 こっちも鳥肌ものでした。書いていてまさかだろ!!と思わせられたら嬉しいなぁと思ってました。ありがとうございます。 タダで読んで良いのかと思うほど面白かったです。 キャラを人間に差し替えて、どこかの短編集に紛れ込ませても違和感がないかもしれないと思いました。 (2011/08/25(木) 19:37) タダで読めます。それほどまでに面白いと思っていただいてまこと恐悦至極にございます。そんなに深く考えてませんでしたが、そう思っていただけたのなら作者としては嬉しい限りでございます。ありがとうございました。 長編作品と言うこともあり読みきるのには時間がかかりましたが、読み終わった時の感慨深さは凄かったです。 様々な表現、言葉が詰め込まれていて、辞書片手で読み進めていました。 最後の締めくくり方は非常に感動物で素晴らしかったです! (2011/08/26(金) 10:53) 長編作品の中にやたら散りばめられていた変な言葉にそれほどの情熱を注いでいただいてありがとうございます。やっぱりちゃんと意味をかいておかないといけませんでしたね、申し訳ございませんでした。ラストは私もお気に入りです。そう言っていただけると書いたかいがあります。ありがとうございました。 長い話だけど、全く飽きなくて面白かった。 (2011/08/26(金) 16:17) そう言って抱けると幸いです、長すぎて読む気なくす物語を描いてたら作者としては本末転倒、ですが物語に引き込まれれば飽きなくていい。その言葉を頂けたことに感謝いたします。 ありがとうございました。 形あるものと向き合うことで、形のない自身の心と向き合っていく。 物事と向き合うことの大切さを思い出させてくれる。そんな作品だと思いました。 (2011/08/31(水) 18:56) ありがとうございます。物事に向き合うことは簡単そうに見えてとても難しい、そう思っていただいたら作者としてはやった、という思いでいっぱいです。ありがとうございました。 多くの要素が話の中に詰まっていて、読み応えがありました (2011/09/01(木) 19:34) 多くの要素が話の中に詰まっていて、読み応えがありました (2011/09/01(木) 19:34) 多くの要素は詰めすぎたかなぁと思いました。もうちょっと冷たいという思いをぐっと我慢して減らしましたが、それでも読みごたえがあると言っていただいてありがとうございます。もうちょっとざっくばらんにする方法も必要ですね、精進します。 ありがとうございました。 以上、8名の方、投票ありがとうございました。 最後に、仮面大会を開催していただいたrootさんに、最大級の感謝をこめてもう一度。ありがとうございました!!! By[[ウロ]] ---- #pcomment