writter is [[双牙連刃]] 今更!? 感がマックスな馬鹿作者、帰って参りました。 それに伴って、完全に作品を一新するために光の日々もリニューアルであります! 設定等が若干変わったりしておりますので、どうぞご了承くださいませ! はい、突然始まりますよ。お楽しみ頂けたら幸いであります! ---- 生き物はな、何かを食べないとそのうち餓死というのを迎えるんだよ。 それはポケモンも例外じゃない。そして俺も例外じゃあない。断食も流石に5日を過ぎりゃ、動くのも億劫になってくるぜ。 野良をやってる俺が飯にありつくには、自然に生ってる木の実を見つけるか、ちょいと人様のところに忍び込んだりするしかない。 が、それをやっちまうと色々めんどくさい。なるたけ目立ちたくないんだよな、ちょいと理由があって。 つー訳で木の実を見つけられるのがベストなんだが、そうそう見つかるもんじゃねーんだわこれがまた。 木の実の生る木自体は見つかるんだよ。が、肝心の実が無いのばっかなんだよ。そりゃあ俺以外の野生のポケモンも食料を求めてるし、世間のポケモントレーナーも見つけたら持っていっちまう。そんで木だけが残るって訳だ。 はぁーあ、流石にこれ以上何にも食べないのが続くと行動出来るかどうかに問題が発生する。やっぱどっかに忍び込むかぁ。 ん? あれは……。 「おい! ここは俺達の縄張りだぞ!」 「お前野生のポケモンじゃないなー? いじめてやるー!」 うぉぉぉぉ! オレンの実だぁぁぁぁぁ! じゃなくて、一匹のイーブイがポチエナ2匹に絡まれてる。どうやらこいつ等の縄張りに入っちまったようだな。 おーおー泣きそうになっちまってるぞ。大方、気まぐれに散歩に出て、ここに迷い込んじまったってところだな。 まぁ、現在の俺的には、そのイーブイの先にあるオレンの実が大変欲しい物である訳だよ。……ま、同族のよしみだ、ついでに助けてやるとするかね。 「ちょいと御免よー」 「へ?」 「な、何だお前! こいつの仲間か!?」 「全然関係無いね。ただ、そこの木の実採るために出てきただけだ。が、邪魔するってんなら払わせてもらうぜ?」 ま、こんだけ啖呵切ってやったらこっち狙うわな。たるいなぁ、ま、ポチエナ程度に疲れる事はありえねぇが。 さて、軽く捻って飯にするとするか。単調に突っ込んできて噛み付こうとするなんて、まだまだなってないな。 軽ーく一匹を捌いて、もう一匹の頭に前脚を振り下ろす。 「ふぎゃ!?」 「もう一度だけ言ってやるよ……邪魔するって言うなら、払うぞ?」 「うぅ……こ、このぉ!」 体当たりねぇ……ま、押さえつけてる奴を助けようとしてやったんだろうが、それは勇気から来る行動じゃあない。ただの無謀だぜ? 空いてるもう一方の前脚で、言ったとおり払ってやった。俺の種族的に、本来はこんな事は出来ない。力よりも早さが遥かに高いからな。 が、俺はちょこっと異常でね、こんな事も出来ちまうわけよ。おー、手加減はしたが結構飛んだな。 「んぎゃあ!」 「ったく、相対する相手の強さを測れるようになるのは野生で暮らす上で必須の能力じゃねぇのか? その辺を先に教えるべきだと俺は思うぜ?」 「あんたみたいのがしゃしゃり出てくるとは思ってなかったんでね……うちの息子を放してもらおうか?」 草むらに隠れて、もう一匹居るのは分かってたんだよ。やれやれ、もう少し早く出てきて助けてやればいいのにな。 こいつ等の親、か。まぁ、グラエナだからそうだろうな。 別にこれ以上何する気も無いんでね、踏みつけてる奴ももう解放したよ。おぉ、一目散にグラエナのところに走っていった。 「うえーん、お母さん~」 「まったく、こういう時は逃げなさいって言ったでしょ?」 「だってぇ~」 「ま、俺もこれ以上何かする気は無い。このチビスケも、面倒だが俺が連れて行く。それで手打ちにしてくれや」 「仕方ないね……ところで、そのおチビさんはどっかの人間付きだろうけど、あんたは?」 「ははっ、野良やってるサンダースなんて珍しいだろ? おっと、悪いがこいつもついでに貰っていくぜ。腹減ってしかたねぇんだ」 「まったく、こんな事になるなら狩りの練習なんかさせるんじゃなかったわ。持ってきな、縄張り荒らしさん」 そんじゃありがたく。四個生ってるところの一個だけ貰ってくんだ、他の縄張り荒らしよりは良心的だろさ。 さて、木の実は採って……あのグラエナに連れて行くって約束した以上、このイーブイも連れていかないとな。 「おい、チビスケ。お前がここに居るのは迷惑なんだ、これ以上怖い思いしたくないなら俺の上に乗んな」 びくっとはしたが、大人しく従った。聞き分けが良い奴は嫌いじゃないぜ。これで大泣きとかされたらすっげぇめんどくさいからな。 俺が払ったポチエナを介抱してるグラエナを尻目に、さっさとこの場を立ち去ろう。野生には野生のルールがある。これ以上あいつ等に迷惑を掛けるのは俺としても心苦しいんでな。 やれやれ、やっぱり泣いてはいるか。時々鼻啜ってるのが聞こえてくる。めんどくせぇなぁ。 とりあえずこの辺は他のポケモンの気配は無い……。一回下ろすか。 「ほれ、下りれ」 目からぽろぽろ涙は出てるが、泣き喚いたりはする気が無いらしい。大人しく俺の前でお座りしてやがる。 とりあえず、オレンの実を半分だけ頂く。一個丸々いきたいところだけど、しゃあないか。 「ほい、もう半分はやるから泣き止みな」 おっ、実を差し出してやったら、前脚で涙拭って食べ始めた。なんだ、結構肝は据わってんな。 ちょこっとずつ齧って食べてる。別に急いで何かする事も無いし、少々休むかね。 ん~、こいつ、どうすっかな? このまま放置したら間違いなくまた絡まれるよな。しかし、人間には会いたくないんだよなぁ。 「なぁチビスケ、お前のトレーナーは? そこの近くまでは送ってやってもいいぜ?」 いや、首横に振るだけじゃなんだか分からんっちゅうに。もしかしてこいつ、トレーナーのところから逃げてきたのか? うーん、でもイーブイじゃあ野良で生きてくのは難しいだろ。せめて進化してれば違うが、この辺じゃあなんにもなれんだろ。 「お前、トレーナーから逃げてきたのか? これからどうするんだよ?」 あ、俯いた。何にも考えないで飛び出してきたみたいだな。ははっ、まさか俺みたいな馬鹿が他にも居るとは思わなかったぜ。 しかし、俺には他の奴の世話をしてやってるような余裕は無い。自分が生きていくのにも苦労してるところなんだからな。 「言っておくが、俺はお前のお守りをしてやるような余裕無いからな? こればっかりは泣いたってどうにもならんぞ?」 やっぱりまたべそかきだしたか。うーん、どうすっかなぁ。 この近くに、もちろん人間の町がある。ここは、そっからちょいと離れた林の中だからな。その町の入り口辺りまではサービスで送ってやるとするか。 「分かった分かった、俺は世話出来ねぇから、とりあえず人間の町の近くまで送ってやる。そこからどうするかはお前次第だ、前のトレーナーが嫌なら、自分で良さそうなトレーナーを探せ。それくらい自分で出来るだろ?」 ぐぬぅ、また首は横振りか。こいつぁ、人間全部がダメって奴か? が、ここで俺が妥協したら、こいつの為にも俺の為にもならない。ちょいと強めに言うか。 「だったらここでサヨナラだ。お前がどうなっても俺は知らんし、そうそう助けてくれるポケモンが居ると思うなよ?」 うわ、露骨にショック受けられた。んなに頼られてもマジで困るっての。 涙目になって寄ってきた。どうやら、ここで俺と別れるのがヤバイっつー事は分かってるようだな。 「……町まで行くか?」 今度は首を縦に振った。……すまねぇな、訳有りな俺の傍に居るよりは全然安全なんだよ。 また身を屈んで、チビスケを背に乗せてやる。やれやれ、町に近付くのはかなりリスキーだな。長居は出来ねぇぞ。 チビスケを乗せて歩き出したのはいいんだが、めっさ沈んでるな……顔が背中に当たってるのが分かる。何か話でもしてやるかね? 「チビスケ、お前喋れないのか? ほら、名前とかよ」 ……無言かよ。これは喋れないって判断するべきか? 「やれやれ、喋れるようにならないと色々不便だぞ? チビスケ」 「……リィ」 「ん?」 「名前、リィ」 うぉぉ! なんだよ喋れんじゃねぇかよ。リィ、か。へぇ~、悪くない名じゃないか。 「ははは、そうか、リィか。悪いな、さっきからチビスケって呼んじまって。俺はライトだ。短い間だがよろしくな」 「ライ、ト?」 「そう、ライトだ」 これは、俺が俺自身に付けた名だ。意味は光、だったと思う。なんで光かって? ぱっと思いついたのがそれだっただけさね。 リィの喋り方からして、あまり喋り慣れてはいないようだ。でも、喋れるってのが分かっただけマシだな。完璧に独り言を喋るよりはマシだ。 「ライト、野生のポケモン?」 「ん? そうだぜ。といっても、色んなところをフラフラしてるがな」 「お話、聞いてみたい」 「話か……まぁいいぜ。町までの間だぞ?」 「うん」 話しかけられたのにも驚いたが、結構積極的じゃないか。話ねぇ……それなりに笑い話になりそうなのはありそうかな。例えば、ちょいとサンドパンの群れにちょっかい出したら全力で追いかけられて、笑いながら逃げ回ったりした事とかな。 ゆっくりと歩きながら今までの笑い話をしてやったら、だんだん相槌も増えてきた。なーんだ、さっきまでは警戒してたから喋らなかっただけか。 俺も一匹で居た時間、いい加減長いからな……たまにこうして話し相手が居るのは悪くない。情が移って辛くないかって? これもまた思い出って事で処理できるから心配はねぇ。 「ライトって、凄い」 「そうか? そう言うなら、お前だって結構凄いだろ。トレーナーのところから抜け出してきてこんなところに居るんだから」 「……凄くない。逃げてきただけだもん」 「逃げてきた?」 「人間、怖い……」 怖い、か。ま、分かってはいたけど、ろくなトレーナーに出会わなかったみてぇだな。巡りあわせってのは怖いもんだ。 俺も人間は好きじゃねぇ。怖いとは思わないがな。っていうか人間のトレーナー付きのポケモンに負ける気がせんし。 でも、人間全部が悪い奴じゃない事も知ってる。だから、なるべく接触したくないんだ。傍に居たくなりたくないから。 「お前のトレーナーって酷い奴なのか?」 「分からない。色んな人間のところ行って、最後に居たところから逃げてきた」 「なんだ、じゃあ、よく知らない奴から逃げてきたのか」 「だって、人間だもん」 「人間にも色々居るんだ。もしかしたら、リィが思ってるような人間じゃなかったかもしれないぜ?」 「そう、なの?」 「まぁ~、言い切れないけどな」 そんな事話してたら、人間の町の近くまで来た。これ以上近付いたら、流石に人間の目に触れる可能性が出てくるか。 「そら、着いたぞ」 「え? あ……」 「お前はさ、自分だけでトレーナーから逃げられるくらい勇気あるんだ。その勇気、ちょっとだけ人間の傍に居る為に使ってみ。その人間が嫌だったら、また逃げ出しちまえばいいんだし」 「ライト、行っちゃうの?」 「あぁ、これ以上は野良の俺は行けねぇ。……ん?」 なんだ? 人間のトレーナー……だな。えらく焦った様子で何か探してるみたいだ。 何か叫んでる。……リィ? リィの名前を呼んでるのか? 「あ、あの人間……」 「もしかして、そうか?」 「うん、逃げてきた人間」 ほう、一生懸命にリィの事を探してる辺り、なかなか良い奴そうじゃないか。あれなら、任せても大丈夫だろう。 問題はリィか……俺にしがみついてきやがって、見るだけでこんなに怯えるもんなのか? 一体、何が……。 「うーん、やっぱり怖いか?」 震えて声も出ないか、参った、ちょっと甘く見てたな。リィの対人恐怖症は想像の斜め上を行く深度でリィの心に刺さってるらしい。 でもこのままじゃ、俺が動けないしなぁ。どうする? リィに、あいつが信用に値するかどうかを分かってもらえばいいんだよな? いや、俺も見た目と様子からだけで判断してるから曖昧だけど。 しゃあねぇ、ここは大サービスするしかないか。話まで聞いちまった船だ、力になってやりてぇとは思うし。 「ならリィ、俺と一緒にあいつのところに行くんだったらどうだ?」 「え?」 「で、どんな奴か俺と一緒に見てみるんだ。それで嫌な奴だったら、俺が倒してやるからよ」 「でも、いいの?」 「このまんまじゃ、どっちにしろ俺から下りてくれねぇだろ?」 「……ごめん」 交渉成立。……人間にこっちから接触しようとするのは何時ぶりだったかな? どれ、品定めと行こうか。 リィの名前を呼び続ける人間の前に躍り出る。はぁ、やっちまってからちょっと後悔。やっぱり人間の前には出たくねぇなぁ。 「おい、お前」 「うわっ!? さ、サンダース!?」 「このイーブイに見覚えはあるか?」 「え? あー、リィ! 良かったぁ……元気そうで」 額の汗を手で拭いながら、心底安心したような声を上げた男……演技なんかではなさそうだな。 リィはまだ、顔を俺の首の周りの毛に埋めてて見てないな。まぁ、声は聞こえてるからよし。 「もー、心配した……」 「おっと止まれ」 「へ? っていうか、なんで見知らぬサンダースがリィをおぶってるんだ?」 「そこの林の奥で、野生のポチエナに襲われかけたのを俺が助けた。ったく、自分のポケモンに逃げられるなんざトレーナー失格だな」 「うっ、痛いところをぐりぐり抉ってくるな。でもその通りだよなぁ……ごめんな、リィ……」 ほう、本気で謝ってる。まぁ、人間としては合格にしてもいいかもな。 「だってよ、どうだ? リィ」 「……もうちょっとだけ、行かないでいてくれる? ライト」 「お望みなら」 お、リィが自分から俺の上から降りた。あ、でも俺の前で止まるんですね。ちょっと震えてるところを見ると、精一杯の勇気を振り絞ってるところなんだな。 「あ、あの、人間、さん」 「うぉぉ!? り、リィが話してくれた!?」 「お前は黙ってろ」 「ひぃ!? は、はい……」 忙しない奴。俺の睨みで怯んだからいいけどよ。 「ぶ、ぶたない?」 「え? ぶたないって、リィの事を?」 「う、うん」 「ぶつわけないよ! なんでそんな事しなきゃならないのさ!」 「ほ、本当?」 「本当に本当! 約束してあげるよ!」 お、リィの震えが治まってきた。どうやらあいつが、今の一言を心から言ってるのが分かったようだな。聞いてた俺でも分かったし。 「な? 人間も、色々だろ?」 「う、うん。ライトの言った通りだった」 「なら、もう大丈夫か?」 「が、頑張ってみる」 「よく言った」 なら、もう俺は必要無いだろう。さっさと立ち去るか。 リィの小さな背を軽く突いて、俺は踵を返す。本当にほんのちょっと間になったが、割と楽しめたし、その礼分くらいは働いたよな? 「ラ、ライト!」 「忘れな、俺の事は。お前はトレーナーの居るポケモンに戻って、俺は野生のポケモン。もう会う事も無いだろうさ」 「ちょ、ちょっと待てって!」 「あん? お前に呼び止められる謂れは無ぇ」 うわ、そのまま立ち去ろうとしたら回り込んできやがった。うぜぇ。 「なんだよ? 俺は飯探しに行くんだ。どけ」 「いやいや~、野生のポケモンが、それもサンダースなんてレアなポケモンが居るのに逃がすなんて、そんなのトレーナーとして悔しいだろ?」 「……一応言っておくが、お前が俺を倒せる可能性は、お前がこの町を一本指逆立ちしながら一周するくらいありえない事だぞ?」 「そんなん出来るか!」 「そういう事だ。それでも挑んでくるなら……全滅を覚悟しろ」 固唾飲んでら。ま、俺の凄みをまともに受けて無事で居られる奴は滅多にいねぇよ。あ、因みに今のは1%くらいの力だ。 リィのトレーナーって事だからの出血大サービスだぜ。これで引かないなら俺は本気で容赦しない、全力で排除するぞ。ま、手加減して一撃で気絶させるくらいにするけど。 「ふ、ふふふ、挑みもしないで野生のポケモンから逃げ出すなんてトレーナーの名折れ! 行くぞ、レオ!」 「やれやれ……それは勇敢さでもなんでもない。ただの無謀だぜ?」 面倒だが、仕方ないし付き合ってやるか。あ、リィがさりげなくこっちサイドに居る。展開についていけないから避難してきたみたいだな。 出てきたのはバクフーンか。まぁ、そこそこだな。 「む? 戦闘ですか、主殿」 「あぁ、頼むよレオ。相手は野生のサンダース、捕まえたいんだ」 「分かりました。手加減をしていきます」 「なぁ、終わったか? いい加減仕掛けるぞ?」 「ふん、幾らスピードが速かろうが力はそう無いのだろう? 一撃喰らったところで、俺は倒せんぞ」 「どうだか?」 待ってやらなくても良かったんだが、それだとあまりにも立つ瀬が無さ過ぎるから待ってやってんだ。感謝してほしいもんだぜ。 「レオ、火炎放射だ!」 「受けてみろ!」 「あぁ、いいぜ」 レオって呼ばれたバクフーンの口から一直線に火炎が俺に向かってくる。ま、避けるまでもないか。 お、結構あっちぃ。ついでに毛に付いた埃が燃え散るから丁度いいや。 「どうだ! って……え?」 「なっ……」 「ん? なんだ、背中のほうの毛も炙ろうと思ったんだがな?」 「直撃、したよな?」 「したぜ?」 開いた口が塞がらないってか? あ、俺の毛って普通じゃなくてな。一般的なサンダースが持ってる特長が無い代わりに、おっそろしく特殊タイプの技に抵抗力があんだ。どうやら、常にそういう特性のある電流が流れてるらしい。 さて、そんなら反撃するかね。 「おい、よーっく見てろよ?」 「へぁ?」 「なっ、消え……ぶごほぉ!?」 「だから見てろって言ったろ?」 まぁ、一瞬で目の前に来られて、腹に前脚突き立てられたら無理だわな。ほい、一丁上がり。 あ、電光石火でも神速なんて技でも無いぞ? ただ後ろ足に力入れて地面を蹴っただけ。 崩れるように倒れて、そのままボールに戻っていったと。ははっ、もう呆然とするしかないわな。 「よぅ、まだやるか?」 「む、無理……」 「だろうな」 「ライト、凄い!」 おぉ、振り向いたらリィから尊敬の眼差しが。や、止めてくれくすぐったい。 こんな化け物じみた力を尊敬しちゃあいけねぇよ? 持ったら持ったで苦労しかねぇんだから。 「ははっ、おっかねぇだろ?」 「? なんで? 凄いけど、怖くはなかったよ?」 「さっきの見てか?」 「うん、ライトが本気じゃないの、分かった」 へぇ……なかなかセンスは良さそうだな、リィ。育て方によっちゃあ、かなり化けそうだぜ。 ま、今真っ白になってるこいつにゃあリィの力を引き出すのは無理だろうがな。ふむ、そう思うとちょい勿体無いな。 「まぁいい。じゃ、俺は行くぜ。達者でな、リィ」 「……本当に、行っちゃうの?」 「見ただろ、俺の力。こいつは危険過ぎる。俺が誰かトレーナー付きになったら、そいつの為に俺はこの力を使わなきゃならねぇ。それが俺は嫌なんだよ」 「じゃあ、ボールに入らなきゃいいの?」 「んなトレーナー居ないだろ? 自分の言う事聞かないポケモンを傍に置くトレーナーなんて聞いた事ねぇよ」 ん? リィが男に近付いていった。おぉ、話しかけられて正気に戻ったか。いや、まさか、リィ? うわ、めっさ驚いてる。そしてこっち見てる。いや、ちょっと、おい? げっ、トレーナーの奴こっち来た。 「な、なぁ! 捕まえないなら一緒に来るって本当か!?」 「ちょっ、おいリィ! こいつになんて言った!?」 「えっと、ボールに入れないなら、来てくれるかもしれないって」 来てくれるかもしれないがなんで確定の情報に変換されたぁぁぁぁ! いや、ニュアンス的に近い事言った俺も悪いけどよ!? 「あ、あのな、語弊があったようだから言っておくが、俺はお前についていくなんて一言も言ってないからな?」 「そ、そこをなんとか! ほら、リィもお前の事気に入ってるみたいだし!」 「うん、もっと、ライトとお話とかしたい」 「そう言われてもなぁ……」 うぅっ、見つめられるのが反則的に辛い。そりゃあ、俺も話しながら、こいつと一緒に居るのも悪くないかなぁなんてちょこっと思ったけどよ……。 「あのな、俺はさっき見せた通り化け物だぞ? それに、ボールに収めないって事がどう言う事か分かってるんだろうな?」 「うっ、それは……」 「ライトは、化け物なんかじゃないよ」 「え?」 「ライトは、ライトだよ」 「リィ……」 くっそずりぃよその一言は。揺らいじまったじゃねぇか。 ……試しに、しばらく居てみるか? さっきの条件を押し付けるなら、何時でも俺は野良に戻れる、というか野良のままなんだし。 「……おい、アホ面」 「ふご!?」 「さっきの守れるなら、しばらく居てやってもいいぞ。ただし、お前の手持ちになる訳じゃないから命令の類は聞かないし、戦闘にも参加しねぇ。それでもいいなら、な」 「ライト……」 「うぐっ、でも二度と会えないようになるよりは遥かにいいか……うん、それでいい!」 「そんなら、しばらく世話になってやるか」 やれやれ、妙な事になっちまったが、しばらく食うのに困らなくなったと思えばそれはそれでいいか。 ったく、嬉しそうにしやがって。この化け物の何処がそんなにいいんだか? 「これでいいのか、リィ?」 「うん! まだ一緒に居られるんだよね」 「ま、こいつ次第だな」 「へぁ!? レオを回復させてやらなきゃ!」 おそっ。大丈夫かよ? おっと、手綱をしっかり握るためにダメ押ししとくか。 「因みに、俺を手持ちに加えたかったら、せめて手加減した俺の一撃を耐えられるポケモンを育てろよ? それ以外は論外だぜ」 「あ、あれを!?」 これでしばらくちょっかい出してこないだろ。そのほうが楽だぜ。 おっと、リィが飛び乗ってきやがった。やれやれ、俺の背中の上もお気に入りってか? とんだ物好きを助けちまったもんだぜ。 ま、せいぜい居られる間は楽させてもらうとするかいね。 ---- 一応、コメントエリア! 一応、コメントエリア! そして[[二話目>同居者の殆どがポケモンの一軒家ってどうなのよ?]]へ #pcomment IP:219.115.200.118 TIME:"2012-05-04 (金) 16:05:50" REFERER:"http://pokestory.rejec.net/main/index.php?guid=ON" USER_AGENT:"Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0)"