ポケモン小説wiki
呂子明即興小説 神様VS人間の底力 の変更点


作者 言わなくてもお分かりでしょう?(書いてあるから)




<注意>
 この作品には、いわゆる伝説のポケモンたちが出てきます。が、かなりフザケタ扱いをされていますので、そういったのが不快な方はお読みにならないことをお勧めします。また、即興で拵えた作品ゆえ、誤字脱字があるかもしれませんが、平にご容赦。






「失われた20年」という言葉がある。それは、長い間、なかなか景気が回復しないことをさした言葉である。それは、人間界だけにとどまらなかった。
 ここは、とある祠。
(最近は、お布施が少ないですねぇ……。出雲の総本部になんて言い訳しましょうか……)
 その粗末な祠には賽銭箱が、置いてあり、これが収入源だった。当初は回収していたらしいのだが、回収すると、悉くひどい目に遭うとかで、人間どもは恐れて遂に回収しに来なくなった。ポケモンが現金を使うのがおかしい? 中には人間の姿になって、人間と同じ生活しているポケモンもいるとか、いないとか聞く。もしかすると、これをお読みの諸氏の近くにもいるやもしれない。
 その祠には「知恵の祠」とあり、ここに勤めているのが「知識の神様」とか言われているポケモン・ユクシーだった。普段は姿を見られないように透明であるため、その姿を確認することはできない。見られたとしても、記憶を消してしまう能力で何とでもなる。
 この祠、受験シーズンともなると、噂を聞きつけた人間がやってきてそれなりに繁盛するのだが、そうではない季節は閑古鳥が鳴いている。今の季節、受験シーズンまではまだ日数があり、大きな収入は見込めなかった。
(やっぱり、こちらか営業しましょう。それしかない!)
 透明になって、儲け……ではなく、お布施なり喜捨の種を探すもどうも成果が上がらない。
 とある、アパートの側を通ると、中では、ノートを見返す青年がいた。どうも、大学の小テストが近いらしい。
(これは、いい儲けの種を見つけました……。試験といっても、受験だけではありませんね)

 さて、そのアパートの中。その部屋の主、結城は、明後日に行われる試験勉強に勤しんでいた。この試験ですべてが決まってしまうわけではないが、それでも、成績を決めるうえで、重要な参考資料となってしまうため、単位をとるためには、良い成績をとることが必須であった。
 すると、そいつは突然現れた。
「どうも、こんにちは!」
 突然、現れた生き物にキョトンとする結城。
「おーい、ナイル。何か来たぞ」
 その青年はポケモンと一緒に暮らしていた。しかも、ドラゴンタイプ。
「『何か』って何って、ええ?」
(フライゴンを従えているとか、これは、いい獲物……ではなく、お客に巡り合えましたね)
 だが、ユクシーは結城がポケモンに関する知識が恐ろしいほどに乏しいことまでは知らなかった。ナイルがいろいろと説明をするのだが、どうにも要領を得ない。
「『知識の神様』? 菅原道真か、コイツは? 大宰府に飛ばされたショックで、こんなメロンパンみたいな姿になっちゃったのか、藤原時平も罪深いやつだな」
 と、勝手な解釈をする。おまけに、結城は信仰心が薄く、神様だとか仏様などというものは信じていなかった。もっとも、これは結城に限ったことではなく、他の神様もその点では苦労しているらしい。いちいち説明するのが面倒になってきたので、ユクシーは単刀直入に切りだすことにした。
「私は、お布施を求めて、こうして全国津々浦々を回っているわけでして……」
 そういって、ユクシーは、持ってきたハンディサイズの賽銭箱を差し出した。
「ん?『お布施』って言った、今?」
「はい」
「『神様』って、言っときながら、仏教用語を使うってどうなの? そんなメロンパンみたいななりをして、本当に神様なのか?」
(面倒くさいなぁ……。可哀想だけど、このフライゴンをぶっ飛ばせば、少しは信じてくれますかね)
「そうですね、いきなり『神様』だといっても、信じてもらえないかもしれないですね、ならこれならどうでしょう?」
 成り行きを見守っていた、ナイルは脚を払われて、床に叩きつけられた。全くの不意打ちであったため、ナイルは咄嗟に対処ができなかった。
「……とまぁ、こんな念動力はほんの朝飯前でしてね」
「ふーん、まあ、そこまで言うんなら、それ相応の知識も持ってるわけでしょ? だったら、これを正しく読んでよ。もし正解できたら、相応のお布施を払おう」
 結城は、何やら紙に書いて、ユクシーに渡した。つまりは、知識勝負を挑んだのである。ナイルは結城の魂胆が分かっていたが、さっき、いきなりぶっ飛ばされたこともあり、何も言わなかった。
(『旧中山道』? ふふ、簡単じゃないですか『相応のお布施』はいただきですね)
「これは『きゅうなかせんどう』と読むのですね。まあ、この程度は知識の神にとって……」
「違うよ」
(そ、そんなバカな!?)
「これは『いちにちじゅうやまみち』と書いてあるんだよ、神様のクセに引っ掛け問題にまんまとかかるとはね。さ、時間の無駄だから、お引き取り願おうか、メロンパン」
 と、結城は取り付く島もない。元より、お布施をくれてやるつもりなどさらさらなかった。
(強硬手段に出ますか……)
 ユクシーと結城の目があったかと思うと、結城の、ノートを見る表情が変わった。さっきまでやっていたことの記憶が全くと言っていいほど消えてしまったのである。
「試験範囲の記憶をもとに戻すこともできます……。手数料が必要になります」
 そう言って、ユクシーは領収書を差し出した。これも、商売道具の一つである。領収書には「試験範囲の記憶代として、¥10000」とあった。
「た、高すぎるぞ!」
「神を散々愚弄したので、追加料金がかかっています」
「ふざけるな!」
「払わないと、元に戻りませんよ」
「ふん、別にいいわ、そんなもん!!」
「じゃあ、せいぜい頑張ってください。気が変わったら、所定のお布施をもって、祠まで来てください」
 ユクシーは姿を消し、侵入するときに開けたベランダの窓から出ていった。

 結城の怒りは収まらなかったが、だからといって、どうにもならなかった。残る手段は、あの忌々しいメロンパンに屈して1万円を払うか、今からシャカリキになって、試験範囲を勉強し直すかだった。結城は後者を選んだ。
「試験は明後日なんでしょ、間に合うの?」
 ナイルは心配するが、結城は食事の時間も風呂も寝る時間も限りなく削って、何とかすると言いだす。
「あんなメロンパンみたいなやつに屈したとなれば、結城家末代までの恥だ!」
「食事は、どうするのさ」
「自分のは何とかする、お前は、冷凍食品があるだろ、電子レンジに入れるだけだから、それで何とかしろ。ちょっとくらい栄養バランスが偏っても死にやしない」
「……分かったよ」
 
 一方、その頃、ユクシーは自分がいつもいる祠とは別の祠にいた。
「いやはや、人間の癖に神を愚弄するとはね、まあ、明後日が楽しみですよ。あ、会った時の記憶を消していませんでした。ま、いっか」
「そううまくいくかな……」
 意志の神・アグノムはあとで、様子を見に行くことにした。時として人間はとんでもない力を発揮するものだと知っていたからだ。
 
 結城は、持っているすべての時間を勉強に費やした。トイレに行かないわけにはいかなかったが、風呂には入らなかった。それだけ時間が惜しいのである。要点をまとめ、頭に叩き込む。この繰り返しだ。睡眠時間も限界まで削った。途中力尽きて居眠りしてしまったが、それでも1時間にも満たなかった。
 かくして、試験が行われ、結城は自信に満ち溢れていた。一問だけしくじりをしたかなという場所があった。記述問題で満点がもらえなかったとしても、それでも要点は抑えたので、かなりの点数はとれているだろう。情報が漏れるのを恐れたのか、大学側に問題用紙は回収されてしまったうえ、解答用紙も返却されなかったので、正確な点数は分からなかった。しかし、感触はよかった。
 
「ほらね、言った通り」
「うう……。でも諦めませんよ」

 試験が終わった翌々日、ユクシーは再び結城のもとに現れた。大学に忍び込んで、結城の試験の詳しい結果を知っていたからである。
「先日の試験の結果ですが、100点中89点でしたよ。まあ、よく頑張ったと思います」
「で? 今度は何しに来た?」
「私が来なければ、シャカリキになって、あそこまで良い点数は取れませんでした。よって、報酬の方を……」
「やかましい!!」

 おわり



#pcomment

トップページ   編集 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.